経路探索システム、経路探索端末及び経路探索方法
【課題】環境負荷及び交通渋滞の増加量を縮小できる経路探索システムが望まれる。
【解決手段】経路探索端末から自動車又は自動二輪車の経路探索に関する情報の提供要求を受信し、経路探索端末からの提供要求に含まれる情報を取得し、当該取得した情報から自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する自車及び他車の環境負荷値を算出処理する環境負荷算出手段を設け、当該手段の算出値に基づき経路探索することとした。
【解決手段】経路探索端末から自動車又は自動二輪車の経路探索に関する情報の提供要求を受信し、経路探索端末からの提供要求に含まれる情報を取得し、当該取得した情報から自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する自車及び他車の環境負荷値を算出処理する環境負荷算出手段を設け、当該手段の算出値に基づき経路探索することとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷を考慮し、最適経路を探索する経路探索システム、経路探索端末及び経路探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の経路探索システムは、様々な事象を考慮して作られている。事象としては、旧来からの、現在地から目的地までの最小距離や最小時間、高速道路の優先度合い等があり、また、沿道環境等の環境に対する事柄も考慮されている。
【0003】
環境を考慮した経路探索システムや経路探索端末では、過去に収集された交通情報と、リアルタイムに収集する交通情報を元に、自車が環境に与える影響を算出し、当該影響が少ない経路を算出する。
【0004】
このような、環境を考慮した経路探索システムや装置の例としては、特許文献1及び2が挙げられる。
【0005】
特許文献1には、ITS(高度道路交通システム)として、道路周辺の環境を各種センサで計測し、また、通行する車両を検出し、車両が通行することによって悪化する道路周辺の環境を計測可能とすると共に、環境が一定値以上悪化した場合に、規制や課金を行なうことで、道路の周辺環境が悪化することを防ぐ沿道環境監視システム及び方法が記載されている。
【0006】
特許文献2には、出発地から目的地までの経路探索に自車が排出すると考えられる温室効果ガスを算出し、当該排出するだろう温室効果ガスが最小となる経路を算出する経路探索装置が記載されている。また、温室効果ガスを測定するセンサを自車に設け、実測した値を参酌して、自車が排出するだろう温室効果ガスが最小となる経路を算出する経路探索装置が記載されている。
【0007】
また、一般に、道路(リンク)毎の旅行時間や渋滞情報等の交通情報を送信する交通情報システムも知られている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−230685号公報
【特許文献2】特開2005−030823号公報
【非特許文献1】交通工学:森北出版 河上省吾,松井寛(1987)
【非特許文献2】自動車走行時の燃料消費率と二酸化炭素排出係数 土木技術資料, Vol.43, No.11, pp.50-55:大城温, 松下雅行, 並河良治, 大西博文(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、関連する経路探索システムや装置では、環境に対する配慮が充分ではない。
【0010】
例えば、特許文献1に記載された沿道環境監視システムでは、当該沿道環境監視システムが設置された道路の沿道環境のみを考慮する為、規制等によって当該道路を通行しない車両が別の道路等を通行する時に、迂回経路等に与える悪影響を勘案していない。これは、一部の道路の周辺環境を配慮する為に、その他の道路の周辺環境を悪化させてしまうことに繋がる。また、迂回することで、新たに発生する環境負荷を考慮していない。
【0011】
特許文献2に記載された経路探索装置では、自車が排出するだろう温室効果ガスを算出して経路を探索する為、自車が排出する温室効果ガスのみを考慮している。即ち、自車が他者(他車)に与える影響を勘案していない。これは、道路リンクを自車が走行することで、当該リンクの旅行時間(走行速度)が増減するため、算出される温室効果ガスの排出量は正確とは言えない。更に、自車が新たに道路リンクを走行することで、同一道路リンクを走行する他車から排出される温室効果ガスの増加量を何ら考慮していない。即ち、自車が道路リンクを走行することによって温室効果ガスの排出による環境負荷の増加を過小に評価している。
【0012】
本発明の目的は、経路案内の対象である経路探索端末を設置した車両等が交通流に加わることで発生する、環境負荷及び交通渋滞の増加量を軽減できる経路探索システムを提供することにある。
【0013】
尚、本明細書では、例として自車が交通流に加わることによって増加する交通混雑が引き起こす環境負荷量を、経路探索の処理で用いるリンクコストとする。リンクコストの具体例としては、1台の車両(自車)が増えることで発生する、道路全体の車両走行台時の増加量、1台の車両(自車)が増えることで発生する、道路全体の温室効果ガス(CO2)排出量の増加量を指す。ここで、車両走行台時とは車両の台数×走行時間を表す。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の経路探索システムは、経路探索端末から自動車又は自動二輪車の経路探索に関する情報の提供要求を受信し、当該要求に応答して経路探索に関する情報を送信する経路探索システムにおいて、前記経路探索端末からの提供要求に含まれる情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段で取得した情報から、経路を要求された自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷、及び、他の自動車及び自動二輪車の環境負荷を算出処理する環境負荷算出手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、経路案内の対象である車両等が交通流に加わることで発生する、環境負荷及び交通渋滞を縮小できる経路探索システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の第1の実施の一形態を図1ないし図11に基づいて説明する。
【0017】
図1は、実施の一形態の経路探索システム10を例示する構成図である。本実施の一形態の経路探索システム10は、交通情報システム20からリアルタイムの交通情報を取得し、経路探索端末30からの経路探索リクエストに応じて動作する。
【0018】
尚、経路探索システム10は、説明を明瞭にする為に、探索サブシステム100と情報提供サブシステム200の2つのサブシステムに分け説明する。
【0019】
探索サブシステム100は、リアルタイムに取得される交通情報や、過去に収集された統計交通情報、道路状態等の道路ネットワーク情報等を取得して、リンクコスト算出部110等を用いてリンクコスト情報、エコルート経路情報を算出し、エコルートの探索処理を行うサブシステムである。
【0020】
尚、リアルタイム交通情報とは、交通情報システム20より取得したリンク単位(道路単位)での最新の交通情報である。
【0021】
統計交通情報とは、過去に収集された交通情報を統計処理して得られたリンク単位(道路単位)での各曜日/各時刻別の交通情報である。
【0022】
道路ネットワーク情報とは、リンク(道路)の各種情報である。例としては、交差点でのリンク(道路)の接続情報、リンク(道路)の種類、リンク(道路)の長さなどが挙げられる。
【0023】
リンクコスト情報とは、エコルート探索処理で用いるリンクコスト(環境負荷)の情報である。
【0024】
エコルート経路情報とは、環境負荷が考慮された経路の情報であって、例えば、自車が排出量するCO2量が最小となる経路である自車CO2最小経路の情報や、1台の車両が増えることで、増加する道路全体の車両走行台時を最小とするような経路の情報である第1のエコルート経路情報、1台の車両が増えることで、増加する道路全体のCO2排出量の増加を最小とするような経路の情報である第2のエコルート経路情報である。
【0025】
エコルート探索処理とは、入力された情報に基づきリンクコストを算出してダイクストラ法などを用いた経路探索処理である。尚、詳細については後述する。
【0026】
情報提供サブシステム200は、経路探索端末30の情報提供要求(リクエスト情報)に応じ、探索サブシステム100から出力されるエコルート経路情報、及び、記憶部に記録されている地図情報を取得し、地図の画像情報であるエコルート地図情報、及び、環境負荷を示す各種数値情報であるエコルート数値情報を算出する。
【0027】
交通情報システム20は、一般的なリアルタイムの交通情報を送信する交通情報システムである。例としてはプローブ情報システム、VICS(登録商標)などである。
【0028】
経路探索端末30は、カーナビゲーションシステムの端末や、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)、パーソナルコンピュータなどの情報処理端末である。
【0029】
図2は、経路探索端末30の構成例を示すブロック図である。経路探索端末30は、一般的な情報処理端末であって、例えば図2の構成を取る。
【0030】
経路探索端末30は、各種演算処理を行う制御部と、基本制御プログラムが格納されているROM(Read Only Memory)と、情報を一時記憶や、各種動作に用いるプログラムが展開されて記録されるRAM(Random Access Memory)と、通信ネットワークを介し経路探索システム10との通信を行うためのネットワークインタフェイスと、情報の入力に用いられる入力部と電子画面を表示する表示部を含む情報を出力する出力部と、各種プログラムや情報が記録される補助記憶装置310とで構成される。
【0031】
補助記憶装置310には、経路探索端末30全体の処理動作を行なうOS(Operating System)、経路探索システム10に経路探索に関する情報の提供を要求するリクエスト送信プログラム311、経路探索に関する情報を受信する経路情報受信プログラム312、利用者に対して電子画面を表示する画面表示プログラム313、電子的な地図情報314などが記録されている。
【0032】
尚、補助記憶装置31に変えて、RAMの記憶領域を用いても良いし、他の媒体を用いても良い。
【0033】
このような構成において、実施の一形態の経路探索システム10は、経路案内の対象である経路探索端末を設置した車両等が交通流に加わることで発生する、環境負荷及び交通渋滞を縮小できる。
【0034】
次に、実施の一形態の経路探索システム10の動作について説明する。
【0035】
図3は、経路探索システム10と経路探索端末30との処理の流れを示すシーケンス図である。経路探索システム10は、経路探索端末30の情報提供要求に応じ、環境負荷を算出する環境負荷算出手段と、環境負荷の少ないルートであるエコルートを探索する経路探索手段、経路探索端末30に経路探索端末に関する情報を送信する情報送信手段を提供する。
【0036】
経路探索システム10の情報提供サブシステム200は、経路探索端末30に対して、エコルートの経路探索処理のリクエスト受付を通知する(ステップS301)。尚、リクエストの受付通知の例としては、目的地や現在地の入力画面や、リクエスト受信準備済みの通知、リクエスト情報の送信フィーマットの情報などである。
【0037】
経路探索端末30は、リクエスト可能であることを判別し、エコルートの経路探索要求(経路探索に用いる情報の要求)をリクエスト情報として送信する(ステップS302)。
【0038】
情報提供サブシステム200は、リクエスト情報を受信し、エラーチェック等の確認処理を行い、探索サブシステム100にリクエスト情報を転送する(ステップS303)。
【0039】
探索サブシステム100は、リクエスト情報を受信し、当該情報と交通システム20から取得したリアルタイムの交通情報等に基づき、リンクコスト(環境負荷の値)を算出し、エコルートの探索処理を行い、エコルート経路情報を出力する(ステップS304)。
【0040】
探索サブシステム100は、情報提供サブシステム200にエコルート経路情報を送信する(ステップS305)。
【0041】
情報提供サブシステム200は、エコルート経路情報を受信し、経路探索端末30のリクエストに対する応答として、エコルート経路情報に基づいてエコルート地図情報とエコルート数値情報とを算出し、経路探索端末30に送信する(ステップS306)。
【0042】
経路探索端末30は、エコルート地図情報、エコルート数値情報を受信し、自らが有する表示手段等を用いて、操作者に当該情報を通知する(ステップS307)。尚、操作者は、通知された情報に基づき、エコルートを認識して当該ルートにそって移動する。
【0043】
上記の一連の動作により、実施の一形態の経路探索システム10は、経路案内の対象である経路探索端末30を設置した車両等が交通流に加わることで発生する、環境負荷及び交通渋滞を縮小できる。
【0044】
図4及び図5を用い、探索サブシステム100が行なうエコルートの探索処理について説明する。エコルートの探索処理は、一定時間毎に処理を行なうバッチ処理と、経路探索端末30から経路探索リクエストを受けた場合に処理を行なうリアルタイム処理とに分けることができる。説明を明瞭にする為、別々に分け説明する。尚、バッチ処理は、経路探索リクエストを受けた場合にリアルタイム処理と共に処理しても良く、情報処理装置としての効率化の為に、このような形態を取る。
【0045】
図4は、探索サブシステム100で行なわれるバッチ処理を示すフローチャートである。尚、バッチ処理は、交通情報システム20から取得するリアルタイムの交通情報が更新に合わせて定期的に行なえばよい。
【0046】
探索サブシステム100は、交通情報システムからリアルタイム交通情報、統計交通情報、道路ネットワーク情報を取得する(ステップS401)。
【0047】
探索サブシステム100は、各リンクのリンクコストを求めて、リンクコスト情報を算出する(ステップS402)。リンクコストを算出する処理については後に詳説する。
【0048】
探索サブシステム100は、システムの停止要求があるか否か判断する。停止要求が無い場合はバッチ処理を継続し、有る場合はシステムを停止する(ステップS403)。
【0049】
図5は、探索サブシステム100で行なわれるリアルタイム処理を示すフローチャートである。
【0050】
探索サブシステム100は、情報提供サブシステム200からエコルートの経路探索のリクエスト情報(図3のステップS303参照)を受けた場合に、エコルート経路情報を情報提供サブシステム200に送信(図3のステップS305参照)する。リクエスト情報には、経路探索を開始する出発地点及び目的地点、出発時刻などが含まれる。尚、経路探索端末30が設置される車両等の情報を含んでいても良い。
【0051】
探索サブシステム100は、バッチ処理で算出したリンクコスト情報と道路ネットワーク情報、リクエスト情報を取得する(ステップS501)。
【0052】
探索サブシステム100は、取得した各種情報に基づき、経路の探索処理手段を用いて環境負荷の少ない経路の探索処理を行う(ステップS502)。経路の探索処理については後に詳説する。
【0053】
探索サブシステム100は、エコルート経路情報を情報提供サブシステム200に送信する(ステップS503)。
【0054】
尚、エコルート経路情報に含まれる自車CO2最小経路情報、第1のエコルート経路情報及び第2のエコルート経路情報は、出発地点から目的地点までの経路の位置(形状)情報と旅行時間値、CO2排出量値、第1のエココスト値(1台の車両が増えることで、増加する道路全体の車両走行台時)、第2のエココスト値(1台の車両が増えることで、増加する道路全体のCO2排出量)、走行距離値などの数値情報で構成される。
【0055】
図6は、探索サブシステム100が各リンクのリンクコスト情報を算出するリンクコスト算出処理を示すフローチャートである。
【0056】
探索サブシステム100は、リンクコストを算出する対象リンク及び対象内容を設定する(ステップS601)。
【0057】
探索サブシステム100は、取得済みのリアルタイム交通情報、統計交通情報、道路ネットワーク情報等を用いて、算出式に従いリンクコスト(環境負荷)を算出する。また必要に応じてリンクコストを合算処理する(ステップS602)。ここでは、リンクコスト情報として自車CO2(二酸化炭素)リンクコスト情報、第1のエコルートリンクコスト情報、第2のエコルートリンクコスト情報の3種類のリンクコストを例示する。尚、リンクコストは例示するリンクコスト以外でもかまわない。
【0058】
探索サブシステム100は、全ての対象リンク及び対象内容のリンクコストを算出処理したか識別し、全ての算出処理が終了するまで処理を繰返す(ステップS603)。
【0059】
各リンクのリンクコストについては、下記の表1及び表2に示す。リンクコストは、表2の計算式に基づき入力された各種情報を演算処理して算出する。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
尚、自車CO2リンクコスト(EF)は、非特許文献1で求められているガソリン乗用車の走行速度vとCO2排出量EFとの関係を示している。
【0063】
下記に表2に示した記号の意味を示す。
va :リンクaにおける、自車が走行すると想定される旅行速度(km/h)
EFa:リンクaにおける、CO2排出量(g-CO2/km)
ta :リンクaにおける、ある時刻での旅行時間(リアルタイム交通情報もしくは統計交通情報)
qa :リンクaにおける、ある時刻での交通量(台/時間)
【0064】
各リンクコストを算出に用いるta、va及びqaは、下記のとおりである。
【0065】
taは入力されるリアルタイム交通情報もしくは統計交通情報である。
【0066】
vaはta及びリンクaにおけるリンク長laよりva = la / taによって算出する。
【0067】
qaは以下の2通りの方法で算出方法を挙げる。
【0068】
一つ目の方法は、BPR関数(1)を利用して、米国道路局(Bureau of Public Roads)で使用されている交通量と旅行時間の関係を表す数1で示す関数を用いて交通量を算出する。
【0069】
【数1】
【0070】
ここで、各変数は、下記のとおりである。
ta :任意のリンクaにおける旅行時間(リアルタイム交通情報もしくは統計交通情報)
ta0 :任意のリンクaにおける自由走行速度で走行したときの旅行時間
qa :任意のリンクaにおける交通量
α,β:パラメータ推定値
ca :任意のリンクaにおける可能交通容量
ta0、α、β、caはこれまでの交通工学の研究成果より適切な値を引用する。
【0071】
二つ目の方法は、k-v式を利用し、あるリンクの交通密度kと車両走行速度の関係であるk-v曲線(数2)及び 交通量q、空間平均速度v、交通密度kの基本式(数3)を用いて交通量を算出する。
【0072】
【数2】
【0073】
【数3】
【0074】
ここで、各変数は、下記のとおりである。
va : 任意のリンクaにおける、自車が走行すると想定される速度(km/h)
vaf : 任意のリンクaにおける、自由走行速度で走行したときの速度(km/h)
kaj : 任意のリンクaにおける、飽和交通密度
ka : 任意のリンクaにおける、交通密度
尚、vaf、kajは交通工学で一般的な適切な値を用いる。
【0075】
図7は、探索サブシステム100で行なわれる経路の探索処理を示すフローチャートである。探索サブシステム100は、リンクコストの算出処理で算出したリンクコスト情報や収集済みの各種情報を用いて、エコルート経路情報を算出する。尚、本図では、例示したリンクコストである自車CO2リンクコスト情報、第1のエコルートリンクコスト情報、第2のエコルートリンクコスト情報を用い説明する。また、経路探索処理のアルゴリズムは、ダイクストラ法、ラベル修正法などの一般的な経路探索処理を用いれば良い。
【0076】
探索サブシステム100は、自車CO2リンクコスト情報に基づき、自車CO2最小経路を探索処理し、自車CO2最小経路情報を算出する(ステップS701)。
【0077】
探索サブシステム100は、第1のエコルートリンクコスト情報に基づき、第1のエコルートを探索処理し、第1のエコルート経路情報を算出する(ステップS702)。
【0078】
探索サブシステム100は、第2のエコルートリンクコスト情報に基づき、第2のエコルートを探索処理し、第2のエコルート経路情報を算出する(ステップS703)。
【0079】
ここで、各経路情報は、自車の移動によって発生する環境負荷と、自車が設定されるリンクを通行することによって、他車が影響を受け発生させる環境負荷、更には、自車が設定されるリンクを通行することによって発生する周辺環境が発生させる環境負荷を合算して、当該合算値が少ない経路(統合された環境負荷が少ない経路)を環境に優しい経路(エコルート)として算出される。尚、環境負荷の合算は、リアルタイム処理で行なってもよいし、バッチ処理で行なってもよい。
【0080】
図8及び図9を用い、情報提供サブシステム200が行なうエコルートの情報提供処理について説明する。エコルートの情報提供処理は、経路探索端末30からエコルートの経路探索要求(リクエスト情報)を受信し、探索サブシステム100に送信するするリクエスト受信処理と、探索サブシステム100で算出されたエコルートの探索処理の結果を受信し、経路探索端末30に送信するエコルート情報送信処理で構成される。
【0081】
図8は、情報提供サブシステム200で行なわれるリクエスト受信処理を示すフローチャートである。
【0082】
情報提供サブシステム200は、経路探索端末30からのリクエスト情報の受信を識別し、リクエスト情報を受信した場合に次ステップに移行する(ステップS801)。尚、経路探索端末30が送信したリクエスト情報には、出発地点の位置情報、目的地点の位置情報、出発時刻情報等が含まれる。尚、経路探索端末30が設置される車両等の情報(例えば車種や排気量、温室効果ガスの排出量)を含んでいても良い。
【0083】
情報提供サブシステム200は、受信したリクエスト情報を解析し、出発地点の位置情報、目的地点の位置情報、出発時刻情報等を取得する(ステップS802)。
【0084】
情報提供サブシステム200は、エラーチェックや補足情報を追加し、探索サブシステム100が読取り可能な形式のリクエスト情報に変更する(ステップS803)。
【0085】
情報提供サブシステム200は、変更したリクエスト情報を探索サブシステム100に送信する(ステップS804)。
【0086】
図9は、情報提供サブシステム200で行なわれるエコルート情報送信処理を示すフローチャートである。
【0087】
情報提供サブシステム200は、エコルートの探索処理で処理した結果であるエコルート経路情報(例えば、自車CO2最小経路情報、第1のエコルート経路情報、第2のコルート経路情報)を受信する(ステップS901)。尚、エコルート経路情報は出発地点から目的地点までの経路の位置(形状)情報と旅行時間値、CO2排出量値、第1のエココスト値、第2のエココスト値、走行距離値などの数値情報で構成される。
【0088】
情報提供サブシステム200は、エコルート経路情報を演算処理しエコルート地図情報とエコルート数値情報を作成処理する(ステップS902)。
【0089】
エコルート地図情報とは、エコルート経路情報における経路の位置(形状)情報及び経路探索システム10で管理される地図情報により、地図上に経路情報を点や線で描く画像処理により作成された経路探索端末30に適する様に処理された画像情報である。
【0090】
エコルート数値情報とは、エコルート経路情報における数値情報より作成された経路探索端末30に適する様に整理された数値情報である。例えば、表形式やCSV形式である。
【0091】
情報提供サブシステム200は、経路探索端末30にエコルートの情報である経路探索に用いる環境負荷に関する情報(エコルート地図情報及びエコルート数値情報)等を送信する(ステップS903)。
【0092】
次に、経路探索端末30の動作を説明する。経路探索端末30の動作は、経路を探索するときに経路探索システム10に経路探索に関する情報をリクエストするリクエスト処理と、リクエストの応答を受信し、利用者に提示する応答処理とに分けられる。
【0093】
図10は、経路探索端末30で行なわれるリクエスト処理を示すフローチャートである。
【0094】
経路探索端末30の制御部は、リクエスト送信プログラム311に従い、情報提供サブシステム200が送信するリクエスト受付許可情報を受信処理し、経路のリクエストが可能か識別する(ステップS1001)。
【0095】
経路探索端末30の制御部は、リクエスト送信プログラム311や画面表示プログラム313に従い、操作者が入力する目的地情報や現在位置情報を取得する(ステップS1002)。
【0096】
経路探索端末30の制御部は、リクエスト送信プログラム311に従い、取得した各種情報を情報提供サブシステム200にリクエスト情報として送信する(ステップS1003)。
【0097】
図11は、経路探索端末30で行なわれる応答処理を示すフローチャートである。
【0098】
経路探索端末30の制御部は、経路情報受信プログラム312に従い、情報提供サブシステム200からリクエスト応答として送信される経路探索に用いる環境負荷に関する情報を含むエコルートの情報(エコルート地図情報及びエコルート数値情報)を受信する(ステップS1101)。
【0099】
経路探索端末30の制御部は、画面表示プログラム313に従い、受信したエコルート地図情報及びエコルート数値情報を用いて、提供された環境負荷を考慮した複数の経路の情報を表示部に表示する(ステップS1102)。
【0100】
経路探索端末30の制御部は、操作者の経路確定処理を待ち受け、経路確定の後、確定された環境負荷の少ない経路のナビゲーションを開始する(ステップS1103)。
【0101】
尚、経路探索端末30が出発地点や目的地点等の各座標を入力する際に用いる地図情報は、経路探索端末30に格納しても良いし、経路探索毎に情報提供サブシステム200から受信しても良い。
【0102】
上記の説明のとおり、実施の一形態の経路探索システム10によれば、リンクコストを算出して当該リンクコストを用いて経路を算定する為、周辺環境(道路網)全体に対して環境負荷増加量の小さい経路を案内可能となる。
【0103】
具体的な例としては、各道路リンクに対して自車が加わることにより発生する、自車及び他車から発生する環境負荷を算出し、総合的に負荷を最小にする経路を探索可能となる。
【0104】
また、実施の一形態の経路探索システム10によれば、過去に収集された日時や天候に応じて蓄積されたリンク毎の交通情報と、リアルタイムに収集される交通情報を利用して、環境負荷量を算出する為、案内時刻の交通状況にあわせて蓄積された情報を修正しながらより正確に環境負荷量を算出可能とし、経路案内を実施する道路網上の交通状況に逸早く対応して、精度良く環境負荷の増加の小さい経路を探索できる。
【0105】
同じく、交通渋滞を予測して回避可能である為、渋滞の発生しにくい(環境負荷が少ない)経路を探索可能とできる。
【0106】
また、自動車等の特性を考慮した経路案内を行なうことで、最適な経路(環境負荷が少ない)を案内できる。これは、例えば、当該経路探索システムを用いることで、利用者が移動速度の遅く温室効果ガスの排出が少ない車(環境負荷の少ない車)を利用することで一見環境負荷が低下する様に感じられるが、他の車の移動を阻害することで、渋滞の発生や、他車からの温室効果ガスの排出を増加させ、全体として環境負荷が増加することを防ぐことが可能となる。また、大型車等は環境負荷が大きい為、郊外を走る経路を優先的に案内することで、市街地の環境の悪化を防止できる。
【0107】
尚、上記実施の一形態は、経路探索システムで経路探索を行なったが、経路探索は経路探索端末で行なってもよい。このときは、経路探索端末が有する補助記憶装置に地図情報や経路探索プログラム(経路探索手段)を格納し、経路探索端末の制御部が、経路探索システムから経路情報の作成に用いる環境負荷に関する情報を取得し、経路探索プログラムに従い環境負荷の少ない経路を算出すればよい。
【0108】
尚、経路探索端末は、必ずしも車両と共に移動できる必要は無く、例えば、移動できない自宅のパソコンや街頭に設置される情報処理端末等であっても良い。
【0109】
また、上記実施の一形態の経路探索システムは、交通情報システムから交通情報を取得したが、経路探索システムが交通情報を収集する手段を持っても良い。また、経路探索システムは、統計交通情報のみを用いることでもエコルートの探索処理は行える。
【0110】
また、エコルートの探索処理のアルゴリズムは、ダイクストラ法、ラベル修正法などの一般的な経路探索処理のみだけでなく、例えば、右折時左折時に発生する環境負荷(右左折コスト)や通過する地域毎に定められた環境負荷率(地域コスト)を加味した経路探索処理を行っても良い。
【0111】
更に、交通情報として、統計や予測によって作成される予測交通情報を用いても良い。この場合には、経路探索システムは交通情報システムから予測交通情報を取得し、当該情報に基づきリンクコスト(環境負荷値)を算出処理すればよい。
【0112】
このように、リンク毎のリンクコストと、リンクを移動する経路探索端末の車両等及び他の車両、環境を加味して総合的なリンクコストを算出し経路探索に役立てることで、社会に与える環境負荷を低減し、また交通量を適時制御可能して交通渋滞を縮小できる。
【0113】
即ち、本発明によれば、経路案内の対象である車両等が交通流に加わることで発生する、環境負荷及び交通渋滞を縮小できる経路探索システムを提供できる。
【0114】
尚、経路探索システムは、管理する対象に合わせて規模を適時変更すればよい。例えば、大規模な交通システムに組み合わせるのであれば、ホストサーバやデータベースを設け、また冗長化し、既存のシステムとの整合性を図ればよい。また、一部地域や特定の場所内等の経路探索であれば、サブシステムを用いずとも一般的なサーバを用いて構築することも出来る。このときは、各種手段となるプログラムを記憶部に記録し、制御部をプログラムに基づいて、各種手段として機能させれば良い。また、必要に応じてROMやRAM、HDD等の記憶部を用いればそれで良い。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、車両のカーナビゲーションシステムに適応できるだけでなく、リンクコストを適切に変更すれば携帯電話等の人のナビゲーションにも利用できる。例えば、遊園地や観光案内、博物館案内、健康診断など、人ごみによって移動の阻害や待ち時間等が発生する環境であれば利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】実施の一形態の経路探索システム10を例示する構成図である。
【図2】経路探索端末30の構成例を示すブロック図である。
【図3】経路探索システム10と経路探索端末30との処理の流れを示すシーケンス図である。
【図4】探索サブシステム100で行なわれるバッチ処理を示すフローチャートである。
【図5】探索サブシステム100で行なわれるリアルタイム処理を示すフローチャートである。
【図6】探索サブシステム100で行なわれるリンクコスト算出処理を示すフローチャートである。
【図7】探索サブシステム100で行なわれる経路の探索処理を示すフローチャートである。
【図8】情報提供サブシステム200で行なわれるリクエスト受信処理を示すフローチャートである。
【図9】情報提供サブシステム200で行なわれるエコルート情報送信処理を示すフローチャートである。
【図10】経路探索端末30で行なわれるリクエスト処理を示すフローチャートである。
【図11】経路探索端末30で行なわれる応答処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0117】
10 経路探索システム
20 交通情報システム
30 経路探索端末
100 探索サブシステム(環境負荷算出手段、経路探索手段)
200 情報提供サブシステム(情報送信手段)
310 補助記憶装置
311 リクエスト送信プログラム
312 経路情報受信プログラム
313 画面表示プログラム
314 地図情報
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷を考慮し、最適経路を探索する経路探索システム、経路探索端末及び経路探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の経路探索システムは、様々な事象を考慮して作られている。事象としては、旧来からの、現在地から目的地までの最小距離や最小時間、高速道路の優先度合い等があり、また、沿道環境等の環境に対する事柄も考慮されている。
【0003】
環境を考慮した経路探索システムや経路探索端末では、過去に収集された交通情報と、リアルタイムに収集する交通情報を元に、自車が環境に与える影響を算出し、当該影響が少ない経路を算出する。
【0004】
このような、環境を考慮した経路探索システムや装置の例としては、特許文献1及び2が挙げられる。
【0005】
特許文献1には、ITS(高度道路交通システム)として、道路周辺の環境を各種センサで計測し、また、通行する車両を検出し、車両が通行することによって悪化する道路周辺の環境を計測可能とすると共に、環境が一定値以上悪化した場合に、規制や課金を行なうことで、道路の周辺環境が悪化することを防ぐ沿道環境監視システム及び方法が記載されている。
【0006】
特許文献2には、出発地から目的地までの経路探索に自車が排出すると考えられる温室効果ガスを算出し、当該排出するだろう温室効果ガスが最小となる経路を算出する経路探索装置が記載されている。また、温室効果ガスを測定するセンサを自車に設け、実測した値を参酌して、自車が排出するだろう温室効果ガスが最小となる経路を算出する経路探索装置が記載されている。
【0007】
また、一般に、道路(リンク)毎の旅行時間や渋滞情報等の交通情報を送信する交通情報システムも知られている。
【0008】
【特許文献1】特開2002−230685号公報
【特許文献2】特開2005−030823号公報
【非特許文献1】交通工学:森北出版 河上省吾,松井寛(1987)
【非特許文献2】自動車走行時の燃料消費率と二酸化炭素排出係数 土木技術資料, Vol.43, No.11, pp.50-55:大城温, 松下雅行, 並河良治, 大西博文(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、関連する経路探索システムや装置では、環境に対する配慮が充分ではない。
【0010】
例えば、特許文献1に記載された沿道環境監視システムでは、当該沿道環境監視システムが設置された道路の沿道環境のみを考慮する為、規制等によって当該道路を通行しない車両が別の道路等を通行する時に、迂回経路等に与える悪影響を勘案していない。これは、一部の道路の周辺環境を配慮する為に、その他の道路の周辺環境を悪化させてしまうことに繋がる。また、迂回することで、新たに発生する環境負荷を考慮していない。
【0011】
特許文献2に記載された経路探索装置では、自車が排出するだろう温室効果ガスを算出して経路を探索する為、自車が排出する温室効果ガスのみを考慮している。即ち、自車が他者(他車)に与える影響を勘案していない。これは、道路リンクを自車が走行することで、当該リンクの旅行時間(走行速度)が増減するため、算出される温室効果ガスの排出量は正確とは言えない。更に、自車が新たに道路リンクを走行することで、同一道路リンクを走行する他車から排出される温室効果ガスの増加量を何ら考慮していない。即ち、自車が道路リンクを走行することによって温室効果ガスの排出による環境負荷の増加を過小に評価している。
【0012】
本発明の目的は、経路案内の対象である経路探索端末を設置した車両等が交通流に加わることで発生する、環境負荷及び交通渋滞の増加量を軽減できる経路探索システムを提供することにある。
【0013】
尚、本明細書では、例として自車が交通流に加わることによって増加する交通混雑が引き起こす環境負荷量を、経路探索の処理で用いるリンクコストとする。リンクコストの具体例としては、1台の車両(自車)が増えることで発生する、道路全体の車両走行台時の増加量、1台の車両(自車)が増えることで発生する、道路全体の温室効果ガス(CO2)排出量の増加量を指す。ここで、車両走行台時とは車両の台数×走行時間を表す。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の経路探索システムは、経路探索端末から自動車又は自動二輪車の経路探索に関する情報の提供要求を受信し、当該要求に応答して経路探索に関する情報を送信する経路探索システムにおいて、前記経路探索端末からの提供要求に含まれる情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段で取得した情報から、経路を要求された自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷、及び、他の自動車及び自動二輪車の環境負荷を算出処理する環境負荷算出手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、経路案内の対象である車両等が交通流に加わることで発生する、環境負荷及び交通渋滞を縮小できる経路探索システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の第1の実施の一形態を図1ないし図11に基づいて説明する。
【0017】
図1は、実施の一形態の経路探索システム10を例示する構成図である。本実施の一形態の経路探索システム10は、交通情報システム20からリアルタイムの交通情報を取得し、経路探索端末30からの経路探索リクエストに応じて動作する。
【0018】
尚、経路探索システム10は、説明を明瞭にする為に、探索サブシステム100と情報提供サブシステム200の2つのサブシステムに分け説明する。
【0019】
探索サブシステム100は、リアルタイムに取得される交通情報や、過去に収集された統計交通情報、道路状態等の道路ネットワーク情報等を取得して、リンクコスト算出部110等を用いてリンクコスト情報、エコルート経路情報を算出し、エコルートの探索処理を行うサブシステムである。
【0020】
尚、リアルタイム交通情報とは、交通情報システム20より取得したリンク単位(道路単位)での最新の交通情報である。
【0021】
統計交通情報とは、過去に収集された交通情報を統計処理して得られたリンク単位(道路単位)での各曜日/各時刻別の交通情報である。
【0022】
道路ネットワーク情報とは、リンク(道路)の各種情報である。例としては、交差点でのリンク(道路)の接続情報、リンク(道路)の種類、リンク(道路)の長さなどが挙げられる。
【0023】
リンクコスト情報とは、エコルート探索処理で用いるリンクコスト(環境負荷)の情報である。
【0024】
エコルート経路情報とは、環境負荷が考慮された経路の情報であって、例えば、自車が排出量するCO2量が最小となる経路である自車CO2最小経路の情報や、1台の車両が増えることで、増加する道路全体の車両走行台時を最小とするような経路の情報である第1のエコルート経路情報、1台の車両が増えることで、増加する道路全体のCO2排出量の増加を最小とするような経路の情報である第2のエコルート経路情報である。
【0025】
エコルート探索処理とは、入力された情報に基づきリンクコストを算出してダイクストラ法などを用いた経路探索処理である。尚、詳細については後述する。
【0026】
情報提供サブシステム200は、経路探索端末30の情報提供要求(リクエスト情報)に応じ、探索サブシステム100から出力されるエコルート経路情報、及び、記憶部に記録されている地図情報を取得し、地図の画像情報であるエコルート地図情報、及び、環境負荷を示す各種数値情報であるエコルート数値情報を算出する。
【0027】
交通情報システム20は、一般的なリアルタイムの交通情報を送信する交通情報システムである。例としてはプローブ情報システム、VICS(登録商標)などである。
【0028】
経路探索端末30は、カーナビゲーションシステムの端末や、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)、パーソナルコンピュータなどの情報処理端末である。
【0029】
図2は、経路探索端末30の構成例を示すブロック図である。経路探索端末30は、一般的な情報処理端末であって、例えば図2の構成を取る。
【0030】
経路探索端末30は、各種演算処理を行う制御部と、基本制御プログラムが格納されているROM(Read Only Memory)と、情報を一時記憶や、各種動作に用いるプログラムが展開されて記録されるRAM(Random Access Memory)と、通信ネットワークを介し経路探索システム10との通信を行うためのネットワークインタフェイスと、情報の入力に用いられる入力部と電子画面を表示する表示部を含む情報を出力する出力部と、各種プログラムや情報が記録される補助記憶装置310とで構成される。
【0031】
補助記憶装置310には、経路探索端末30全体の処理動作を行なうOS(Operating System)、経路探索システム10に経路探索に関する情報の提供を要求するリクエスト送信プログラム311、経路探索に関する情報を受信する経路情報受信プログラム312、利用者に対して電子画面を表示する画面表示プログラム313、電子的な地図情報314などが記録されている。
【0032】
尚、補助記憶装置31に変えて、RAMの記憶領域を用いても良いし、他の媒体を用いても良い。
【0033】
このような構成において、実施の一形態の経路探索システム10は、経路案内の対象である経路探索端末を設置した車両等が交通流に加わることで発生する、環境負荷及び交通渋滞を縮小できる。
【0034】
次に、実施の一形態の経路探索システム10の動作について説明する。
【0035】
図3は、経路探索システム10と経路探索端末30との処理の流れを示すシーケンス図である。経路探索システム10は、経路探索端末30の情報提供要求に応じ、環境負荷を算出する環境負荷算出手段と、環境負荷の少ないルートであるエコルートを探索する経路探索手段、経路探索端末30に経路探索端末に関する情報を送信する情報送信手段を提供する。
【0036】
経路探索システム10の情報提供サブシステム200は、経路探索端末30に対して、エコルートの経路探索処理のリクエスト受付を通知する(ステップS301)。尚、リクエストの受付通知の例としては、目的地や現在地の入力画面や、リクエスト受信準備済みの通知、リクエスト情報の送信フィーマットの情報などである。
【0037】
経路探索端末30は、リクエスト可能であることを判別し、エコルートの経路探索要求(経路探索に用いる情報の要求)をリクエスト情報として送信する(ステップS302)。
【0038】
情報提供サブシステム200は、リクエスト情報を受信し、エラーチェック等の確認処理を行い、探索サブシステム100にリクエスト情報を転送する(ステップS303)。
【0039】
探索サブシステム100は、リクエスト情報を受信し、当該情報と交通システム20から取得したリアルタイムの交通情報等に基づき、リンクコスト(環境負荷の値)を算出し、エコルートの探索処理を行い、エコルート経路情報を出力する(ステップS304)。
【0040】
探索サブシステム100は、情報提供サブシステム200にエコルート経路情報を送信する(ステップS305)。
【0041】
情報提供サブシステム200は、エコルート経路情報を受信し、経路探索端末30のリクエストに対する応答として、エコルート経路情報に基づいてエコルート地図情報とエコルート数値情報とを算出し、経路探索端末30に送信する(ステップS306)。
【0042】
経路探索端末30は、エコルート地図情報、エコルート数値情報を受信し、自らが有する表示手段等を用いて、操作者に当該情報を通知する(ステップS307)。尚、操作者は、通知された情報に基づき、エコルートを認識して当該ルートにそって移動する。
【0043】
上記の一連の動作により、実施の一形態の経路探索システム10は、経路案内の対象である経路探索端末30を設置した車両等が交通流に加わることで発生する、環境負荷及び交通渋滞を縮小できる。
【0044】
図4及び図5を用い、探索サブシステム100が行なうエコルートの探索処理について説明する。エコルートの探索処理は、一定時間毎に処理を行なうバッチ処理と、経路探索端末30から経路探索リクエストを受けた場合に処理を行なうリアルタイム処理とに分けることができる。説明を明瞭にする為、別々に分け説明する。尚、バッチ処理は、経路探索リクエストを受けた場合にリアルタイム処理と共に処理しても良く、情報処理装置としての効率化の為に、このような形態を取る。
【0045】
図4は、探索サブシステム100で行なわれるバッチ処理を示すフローチャートである。尚、バッチ処理は、交通情報システム20から取得するリアルタイムの交通情報が更新に合わせて定期的に行なえばよい。
【0046】
探索サブシステム100は、交通情報システムからリアルタイム交通情報、統計交通情報、道路ネットワーク情報を取得する(ステップS401)。
【0047】
探索サブシステム100は、各リンクのリンクコストを求めて、リンクコスト情報を算出する(ステップS402)。リンクコストを算出する処理については後に詳説する。
【0048】
探索サブシステム100は、システムの停止要求があるか否か判断する。停止要求が無い場合はバッチ処理を継続し、有る場合はシステムを停止する(ステップS403)。
【0049】
図5は、探索サブシステム100で行なわれるリアルタイム処理を示すフローチャートである。
【0050】
探索サブシステム100は、情報提供サブシステム200からエコルートの経路探索のリクエスト情報(図3のステップS303参照)を受けた場合に、エコルート経路情報を情報提供サブシステム200に送信(図3のステップS305参照)する。リクエスト情報には、経路探索を開始する出発地点及び目的地点、出発時刻などが含まれる。尚、経路探索端末30が設置される車両等の情報を含んでいても良い。
【0051】
探索サブシステム100は、バッチ処理で算出したリンクコスト情報と道路ネットワーク情報、リクエスト情報を取得する(ステップS501)。
【0052】
探索サブシステム100は、取得した各種情報に基づき、経路の探索処理手段を用いて環境負荷の少ない経路の探索処理を行う(ステップS502)。経路の探索処理については後に詳説する。
【0053】
探索サブシステム100は、エコルート経路情報を情報提供サブシステム200に送信する(ステップS503)。
【0054】
尚、エコルート経路情報に含まれる自車CO2最小経路情報、第1のエコルート経路情報及び第2のエコルート経路情報は、出発地点から目的地点までの経路の位置(形状)情報と旅行時間値、CO2排出量値、第1のエココスト値(1台の車両が増えることで、増加する道路全体の車両走行台時)、第2のエココスト値(1台の車両が増えることで、増加する道路全体のCO2排出量)、走行距離値などの数値情報で構成される。
【0055】
図6は、探索サブシステム100が各リンクのリンクコスト情報を算出するリンクコスト算出処理を示すフローチャートである。
【0056】
探索サブシステム100は、リンクコストを算出する対象リンク及び対象内容を設定する(ステップS601)。
【0057】
探索サブシステム100は、取得済みのリアルタイム交通情報、統計交通情報、道路ネットワーク情報等を用いて、算出式に従いリンクコスト(環境負荷)を算出する。また必要に応じてリンクコストを合算処理する(ステップS602)。ここでは、リンクコスト情報として自車CO2(二酸化炭素)リンクコスト情報、第1のエコルートリンクコスト情報、第2のエコルートリンクコスト情報の3種類のリンクコストを例示する。尚、リンクコストは例示するリンクコスト以外でもかまわない。
【0058】
探索サブシステム100は、全ての対象リンク及び対象内容のリンクコストを算出処理したか識別し、全ての算出処理が終了するまで処理を繰返す(ステップS603)。
【0059】
各リンクのリンクコストについては、下記の表1及び表2に示す。リンクコストは、表2の計算式に基づき入力された各種情報を演算処理して算出する。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
尚、自車CO2リンクコスト(EF)は、非特許文献1で求められているガソリン乗用車の走行速度vとCO2排出量EFとの関係を示している。
【0063】
下記に表2に示した記号の意味を示す。
va :リンクaにおける、自車が走行すると想定される旅行速度(km/h)
EFa:リンクaにおける、CO2排出量(g-CO2/km)
ta :リンクaにおける、ある時刻での旅行時間(リアルタイム交通情報もしくは統計交通情報)
qa :リンクaにおける、ある時刻での交通量(台/時間)
【0064】
各リンクコストを算出に用いるta、va及びqaは、下記のとおりである。
【0065】
taは入力されるリアルタイム交通情報もしくは統計交通情報である。
【0066】
vaはta及びリンクaにおけるリンク長laよりva = la / taによって算出する。
【0067】
qaは以下の2通りの方法で算出方法を挙げる。
【0068】
一つ目の方法は、BPR関数(1)を利用して、米国道路局(Bureau of Public Roads)で使用されている交通量と旅行時間の関係を表す数1で示す関数を用いて交通量を算出する。
【0069】
【数1】
【0070】
ここで、各変数は、下記のとおりである。
ta :任意のリンクaにおける旅行時間(リアルタイム交通情報もしくは統計交通情報)
ta0 :任意のリンクaにおける自由走行速度で走行したときの旅行時間
qa :任意のリンクaにおける交通量
α,β:パラメータ推定値
ca :任意のリンクaにおける可能交通容量
ta0、α、β、caはこれまでの交通工学の研究成果より適切な値を引用する。
【0071】
二つ目の方法は、k-v式を利用し、あるリンクの交通密度kと車両走行速度の関係であるk-v曲線(数2)及び 交通量q、空間平均速度v、交通密度kの基本式(数3)を用いて交通量を算出する。
【0072】
【数2】
【0073】
【数3】
【0074】
ここで、各変数は、下記のとおりである。
va : 任意のリンクaにおける、自車が走行すると想定される速度(km/h)
vaf : 任意のリンクaにおける、自由走行速度で走行したときの速度(km/h)
kaj : 任意のリンクaにおける、飽和交通密度
ka : 任意のリンクaにおける、交通密度
尚、vaf、kajは交通工学で一般的な適切な値を用いる。
【0075】
図7は、探索サブシステム100で行なわれる経路の探索処理を示すフローチャートである。探索サブシステム100は、リンクコストの算出処理で算出したリンクコスト情報や収集済みの各種情報を用いて、エコルート経路情報を算出する。尚、本図では、例示したリンクコストである自車CO2リンクコスト情報、第1のエコルートリンクコスト情報、第2のエコルートリンクコスト情報を用い説明する。また、経路探索処理のアルゴリズムは、ダイクストラ法、ラベル修正法などの一般的な経路探索処理を用いれば良い。
【0076】
探索サブシステム100は、自車CO2リンクコスト情報に基づき、自車CO2最小経路を探索処理し、自車CO2最小経路情報を算出する(ステップS701)。
【0077】
探索サブシステム100は、第1のエコルートリンクコスト情報に基づき、第1のエコルートを探索処理し、第1のエコルート経路情報を算出する(ステップS702)。
【0078】
探索サブシステム100は、第2のエコルートリンクコスト情報に基づき、第2のエコルートを探索処理し、第2のエコルート経路情報を算出する(ステップS703)。
【0079】
ここで、各経路情報は、自車の移動によって発生する環境負荷と、自車が設定されるリンクを通行することによって、他車が影響を受け発生させる環境負荷、更には、自車が設定されるリンクを通行することによって発生する周辺環境が発生させる環境負荷を合算して、当該合算値が少ない経路(統合された環境負荷が少ない経路)を環境に優しい経路(エコルート)として算出される。尚、環境負荷の合算は、リアルタイム処理で行なってもよいし、バッチ処理で行なってもよい。
【0080】
図8及び図9を用い、情報提供サブシステム200が行なうエコルートの情報提供処理について説明する。エコルートの情報提供処理は、経路探索端末30からエコルートの経路探索要求(リクエスト情報)を受信し、探索サブシステム100に送信するするリクエスト受信処理と、探索サブシステム100で算出されたエコルートの探索処理の結果を受信し、経路探索端末30に送信するエコルート情報送信処理で構成される。
【0081】
図8は、情報提供サブシステム200で行なわれるリクエスト受信処理を示すフローチャートである。
【0082】
情報提供サブシステム200は、経路探索端末30からのリクエスト情報の受信を識別し、リクエスト情報を受信した場合に次ステップに移行する(ステップS801)。尚、経路探索端末30が送信したリクエスト情報には、出発地点の位置情報、目的地点の位置情報、出発時刻情報等が含まれる。尚、経路探索端末30が設置される車両等の情報(例えば車種や排気量、温室効果ガスの排出量)を含んでいても良い。
【0083】
情報提供サブシステム200は、受信したリクエスト情報を解析し、出発地点の位置情報、目的地点の位置情報、出発時刻情報等を取得する(ステップS802)。
【0084】
情報提供サブシステム200は、エラーチェックや補足情報を追加し、探索サブシステム100が読取り可能な形式のリクエスト情報に変更する(ステップS803)。
【0085】
情報提供サブシステム200は、変更したリクエスト情報を探索サブシステム100に送信する(ステップS804)。
【0086】
図9は、情報提供サブシステム200で行なわれるエコルート情報送信処理を示すフローチャートである。
【0087】
情報提供サブシステム200は、エコルートの探索処理で処理した結果であるエコルート経路情報(例えば、自車CO2最小経路情報、第1のエコルート経路情報、第2のコルート経路情報)を受信する(ステップS901)。尚、エコルート経路情報は出発地点から目的地点までの経路の位置(形状)情報と旅行時間値、CO2排出量値、第1のエココスト値、第2のエココスト値、走行距離値などの数値情報で構成される。
【0088】
情報提供サブシステム200は、エコルート経路情報を演算処理しエコルート地図情報とエコルート数値情報を作成処理する(ステップS902)。
【0089】
エコルート地図情報とは、エコルート経路情報における経路の位置(形状)情報及び経路探索システム10で管理される地図情報により、地図上に経路情報を点や線で描く画像処理により作成された経路探索端末30に適する様に処理された画像情報である。
【0090】
エコルート数値情報とは、エコルート経路情報における数値情報より作成された経路探索端末30に適する様に整理された数値情報である。例えば、表形式やCSV形式である。
【0091】
情報提供サブシステム200は、経路探索端末30にエコルートの情報である経路探索に用いる環境負荷に関する情報(エコルート地図情報及びエコルート数値情報)等を送信する(ステップS903)。
【0092】
次に、経路探索端末30の動作を説明する。経路探索端末30の動作は、経路を探索するときに経路探索システム10に経路探索に関する情報をリクエストするリクエスト処理と、リクエストの応答を受信し、利用者に提示する応答処理とに分けられる。
【0093】
図10は、経路探索端末30で行なわれるリクエスト処理を示すフローチャートである。
【0094】
経路探索端末30の制御部は、リクエスト送信プログラム311に従い、情報提供サブシステム200が送信するリクエスト受付許可情報を受信処理し、経路のリクエストが可能か識別する(ステップS1001)。
【0095】
経路探索端末30の制御部は、リクエスト送信プログラム311や画面表示プログラム313に従い、操作者が入力する目的地情報や現在位置情報を取得する(ステップS1002)。
【0096】
経路探索端末30の制御部は、リクエスト送信プログラム311に従い、取得した各種情報を情報提供サブシステム200にリクエスト情報として送信する(ステップS1003)。
【0097】
図11は、経路探索端末30で行なわれる応答処理を示すフローチャートである。
【0098】
経路探索端末30の制御部は、経路情報受信プログラム312に従い、情報提供サブシステム200からリクエスト応答として送信される経路探索に用いる環境負荷に関する情報を含むエコルートの情報(エコルート地図情報及びエコルート数値情報)を受信する(ステップS1101)。
【0099】
経路探索端末30の制御部は、画面表示プログラム313に従い、受信したエコルート地図情報及びエコルート数値情報を用いて、提供された環境負荷を考慮した複数の経路の情報を表示部に表示する(ステップS1102)。
【0100】
経路探索端末30の制御部は、操作者の経路確定処理を待ち受け、経路確定の後、確定された環境負荷の少ない経路のナビゲーションを開始する(ステップS1103)。
【0101】
尚、経路探索端末30が出発地点や目的地点等の各座標を入力する際に用いる地図情報は、経路探索端末30に格納しても良いし、経路探索毎に情報提供サブシステム200から受信しても良い。
【0102】
上記の説明のとおり、実施の一形態の経路探索システム10によれば、リンクコストを算出して当該リンクコストを用いて経路を算定する為、周辺環境(道路網)全体に対して環境負荷増加量の小さい経路を案内可能となる。
【0103】
具体的な例としては、各道路リンクに対して自車が加わることにより発生する、自車及び他車から発生する環境負荷を算出し、総合的に負荷を最小にする経路を探索可能となる。
【0104】
また、実施の一形態の経路探索システム10によれば、過去に収集された日時や天候に応じて蓄積されたリンク毎の交通情報と、リアルタイムに収集される交通情報を利用して、環境負荷量を算出する為、案内時刻の交通状況にあわせて蓄積された情報を修正しながらより正確に環境負荷量を算出可能とし、経路案内を実施する道路網上の交通状況に逸早く対応して、精度良く環境負荷の増加の小さい経路を探索できる。
【0105】
同じく、交通渋滞を予測して回避可能である為、渋滞の発生しにくい(環境負荷が少ない)経路を探索可能とできる。
【0106】
また、自動車等の特性を考慮した経路案内を行なうことで、最適な経路(環境負荷が少ない)を案内できる。これは、例えば、当該経路探索システムを用いることで、利用者が移動速度の遅く温室効果ガスの排出が少ない車(環境負荷の少ない車)を利用することで一見環境負荷が低下する様に感じられるが、他の車の移動を阻害することで、渋滞の発生や、他車からの温室効果ガスの排出を増加させ、全体として環境負荷が増加することを防ぐことが可能となる。また、大型車等は環境負荷が大きい為、郊外を走る経路を優先的に案内することで、市街地の環境の悪化を防止できる。
【0107】
尚、上記実施の一形態は、経路探索システムで経路探索を行なったが、経路探索は経路探索端末で行なってもよい。このときは、経路探索端末が有する補助記憶装置に地図情報や経路探索プログラム(経路探索手段)を格納し、経路探索端末の制御部が、経路探索システムから経路情報の作成に用いる環境負荷に関する情報を取得し、経路探索プログラムに従い環境負荷の少ない経路を算出すればよい。
【0108】
尚、経路探索端末は、必ずしも車両と共に移動できる必要は無く、例えば、移動できない自宅のパソコンや街頭に設置される情報処理端末等であっても良い。
【0109】
また、上記実施の一形態の経路探索システムは、交通情報システムから交通情報を取得したが、経路探索システムが交通情報を収集する手段を持っても良い。また、経路探索システムは、統計交通情報のみを用いることでもエコルートの探索処理は行える。
【0110】
また、エコルートの探索処理のアルゴリズムは、ダイクストラ法、ラベル修正法などの一般的な経路探索処理のみだけでなく、例えば、右折時左折時に発生する環境負荷(右左折コスト)や通過する地域毎に定められた環境負荷率(地域コスト)を加味した経路探索処理を行っても良い。
【0111】
更に、交通情報として、統計や予測によって作成される予測交通情報を用いても良い。この場合には、経路探索システムは交通情報システムから予測交通情報を取得し、当該情報に基づきリンクコスト(環境負荷値)を算出処理すればよい。
【0112】
このように、リンク毎のリンクコストと、リンクを移動する経路探索端末の車両等及び他の車両、環境を加味して総合的なリンクコストを算出し経路探索に役立てることで、社会に与える環境負荷を低減し、また交通量を適時制御可能して交通渋滞を縮小できる。
【0113】
即ち、本発明によれば、経路案内の対象である車両等が交通流に加わることで発生する、環境負荷及び交通渋滞を縮小できる経路探索システムを提供できる。
【0114】
尚、経路探索システムは、管理する対象に合わせて規模を適時変更すればよい。例えば、大規模な交通システムに組み合わせるのであれば、ホストサーバやデータベースを設け、また冗長化し、既存のシステムとの整合性を図ればよい。また、一部地域や特定の場所内等の経路探索であれば、サブシステムを用いずとも一般的なサーバを用いて構築することも出来る。このときは、各種手段となるプログラムを記憶部に記録し、制御部をプログラムに基づいて、各種手段として機能させれば良い。また、必要に応じてROMやRAM、HDD等の記憶部を用いればそれで良い。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、車両のカーナビゲーションシステムに適応できるだけでなく、リンクコストを適切に変更すれば携帯電話等の人のナビゲーションにも利用できる。例えば、遊園地や観光案内、博物館案内、健康診断など、人ごみによって移動の阻害や待ち時間等が発生する環境であれば利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】実施の一形態の経路探索システム10を例示する構成図である。
【図2】経路探索端末30の構成例を示すブロック図である。
【図3】経路探索システム10と経路探索端末30との処理の流れを示すシーケンス図である。
【図4】探索サブシステム100で行なわれるバッチ処理を示すフローチャートである。
【図5】探索サブシステム100で行なわれるリアルタイム処理を示すフローチャートである。
【図6】探索サブシステム100で行なわれるリンクコスト算出処理を示すフローチャートである。
【図7】探索サブシステム100で行なわれる経路の探索処理を示すフローチャートである。
【図8】情報提供サブシステム200で行なわれるリクエスト受信処理を示すフローチャートである。
【図9】情報提供サブシステム200で行なわれるエコルート情報送信処理を示すフローチャートである。
【図10】経路探索端末30で行なわれるリクエスト処理を示すフローチャートである。
【図11】経路探索端末30で行なわれる応答処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0117】
10 経路探索システム
20 交通情報システム
30 経路探索端末
100 探索サブシステム(環境負荷算出手段、経路探索手段)
200 情報提供サブシステム(情報送信手段)
310 補助記憶装置
311 リクエスト送信プログラム
312 経路情報受信プログラム
313 画面表示プログラム
314 地図情報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路探索端末から自動車又は自動二輪車の経路探索に関する情報の提供要求を受信し、当該要求に応答して経路探索に関する情報を送信する経路探索システムにおいて、
前記経路探索端末からの提供要求に含まれる情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段で取得した情報から、経路を要求された自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷、及び、他の自動車及び自動二輪車の環境負荷を算出処理する環境負荷算出手段を有する
ことを特徴とする経路探索システム。
【請求項2】
経路探索端末に経路情報の作成に用いる情報を送信する経路探索システムにおいて、
前記経路探索端末で指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷を算出すると共に、前記指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する周辺環境及び/又は他の自動車又は自動二輪車におよぼす環境負荷を算出する環境負荷算出手段と、
前記環境負荷算出手段の算出する算出結果から環境負荷に関する情報を作成する手段と、
を有することを特徴とする経路探索システム。
【請求項3】
経路情報を経路探索端末に送信する経路探索システムにおいて、
前記経路探索端末で指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷を算出すると共に、前記指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する周辺環境及び/又は他の自動車又は自動二輪車におよぼす環境負荷を算出する環境負荷算出手段と、
前記環境負荷算出手段の算出する算出結果から環境負荷に関する情報を作成し、当該環境負荷に関する情報に基づいて経路を探索する経路探索手段と、
前記経路探索手段が探索した経路の情報を経路情報として前記経路探索端末に送信する経路送信手段と
を有することを特徴とする経路探索システム。
【請求項4】
前記環境負荷は、排出される温室効果ガスの量によって定められることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一記載の経路探索システム。
【請求項5】
前記環境負荷は、交通渋滞の量によって定められることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一記載の経路探索システム。
【請求項6】
前記経路探索端末は、自動車又は自動二輪車に設置されるカーナビゲーション端末であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一記載の経路探索システム。
【請求項7】
前記経路探索端末から受信する情報の提供要求には、車種の情報又は車種が排出する温室効果ガスの情報が含まれることを特徴とする請求項1ないし6の何れか一記載の経路探索システム。
【請求項8】
前記環境負荷は、排出される二酸化炭素であることを特徴とする請求項1ないし7の何れか一記載の経路探索システム。
【請求項9】
前記経路探索端末で指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷の算出を、リンク毎に蓄積された時刻別の情報を使用し、前記経路探索端末で指定された自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷量と、前記経路探索端末で指定された自動車又は自動二輪車の移動に伴って同一リンクを走行する車両が受ける速度変動に伴って発生する環境負荷量とを合算することによって算出することを特徴とする請求項1ないし8の何れか一記載の経路探索システム。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れかに記載された経路探索システムから、経路探索に用いる環境負荷に関する情報又は経路情報を受信し、当該受信した情報を経路の算定処理に用いる処理手段を有することを特徴とする経路探索端末。
【請求項11】
経路探索端末と、前記経路探索端末からの情報提供要求に応じて前記経路探索端末に経路情報の作成に用いる情報を送信する経路探索システムとを用いて行なわれる経路探索方法であって、
前記経路探索システムは、
前記経路探索端末で指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷を算出すると共に、前記指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する周辺環境及び/又は他の自動車又は自動二輪車におよぼす環境負荷を算出する環境負荷算出手段と、前記環境負荷算出手段の算出する算出結果から環境負荷に関する情報を作成する手段とを有し、
前記経路探索端末からの情報提供要求に応じて、前記経路探索端末に経路情報の作成に用いる情報として前記環境負荷算出手段で算出した環境負荷に関する情報含む情報を作成することを特徴とする経路探索方法。
【請求項12】
経路探索端末と、前記経路探索端末からの情報提供要求に応じて前記経路探索端末に経路情報を送信する経路探索システムとを用いて行なわれる経路探索方法であって、
前記経路探索システムは、
前記経路探索端末で指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷を算出すると共に、前記経路探索端末指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する周辺環境及び/又は他の自動車又は自動二輪車におよぼす環境負荷を算出する環境負荷算出手段と、前記環境負荷算出手段の算出する算出結果から環境負荷に関する情報を作成し、当該環境負荷に関する情報に基づいて経路を探索する経路探索手段と、前記経路探索手段が探索した経路の情報を経路情報として前記経路探索端末に送信する経路送信手段とを有し、
前記経路探索端末からの情報提供要求に応じて、前記経路探索端末に経路探索手段で探索した経路情報を送信することを特徴とする経路探索方法。
【請求項13】
前記環境負荷は、排出される温室効果ガスの量によって定められることを特徴とする請求項11または12記載の経路探索方法。
【請求項14】
前記温室効果ガスは、二酸化炭素であることを特徴とする請求項13記載の経路探索方法。
【請求項15】
前記環境負荷は、交通渋滞の量によって定められることを特徴とする請求項11または12記載の経路探索方法。
【請求項16】
前記経路探索端末は、自動車又は自動二車に設置されるカーナビゲーション端末であることを特徴とする請求項11ないし15の何れか一記載の経路探索方法。
【請求項17】
前記経路探索端末で指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷の算出を、リンク毎に蓄積された時刻別の情報を使用し、前記経路探索端末で指定された自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する発生する環境負荷量と、前記経路探索端末で指定された自動車又は自動二輪車の移動に伴って同一リンクを走行する車両が受ける速度変動に伴って発生する環境負荷量とを合算することによって算出することを特徴とする請求項11ないし16の何れか一記載の経路探索方法。
【請求項1】
経路探索端末から自動車又は自動二輪車の経路探索に関する情報の提供要求を受信し、当該要求に応答して経路探索に関する情報を送信する経路探索システムにおいて、
前記経路探索端末からの提供要求に含まれる情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段で取得した情報から、経路を要求された自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷、及び、他の自動車及び自動二輪車の環境負荷を算出処理する環境負荷算出手段を有する
ことを特徴とする経路探索システム。
【請求項2】
経路探索端末に経路情報の作成に用いる情報を送信する経路探索システムにおいて、
前記経路探索端末で指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷を算出すると共に、前記指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する周辺環境及び/又は他の自動車又は自動二輪車におよぼす環境負荷を算出する環境負荷算出手段と、
前記環境負荷算出手段の算出する算出結果から環境負荷に関する情報を作成する手段と、
を有することを特徴とする経路探索システム。
【請求項3】
経路情報を経路探索端末に送信する経路探索システムにおいて、
前記経路探索端末で指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷を算出すると共に、前記指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する周辺環境及び/又は他の自動車又は自動二輪車におよぼす環境負荷を算出する環境負荷算出手段と、
前記環境負荷算出手段の算出する算出結果から環境負荷に関する情報を作成し、当該環境負荷に関する情報に基づいて経路を探索する経路探索手段と、
前記経路探索手段が探索した経路の情報を経路情報として前記経路探索端末に送信する経路送信手段と
を有することを特徴とする経路探索システム。
【請求項4】
前記環境負荷は、排出される温室効果ガスの量によって定められることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一記載の経路探索システム。
【請求項5】
前記環境負荷は、交通渋滞の量によって定められることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一記載の経路探索システム。
【請求項6】
前記経路探索端末は、自動車又は自動二輪車に設置されるカーナビゲーション端末であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一記載の経路探索システム。
【請求項7】
前記経路探索端末から受信する情報の提供要求には、車種の情報又は車種が排出する温室効果ガスの情報が含まれることを特徴とする請求項1ないし6の何れか一記載の経路探索システム。
【請求項8】
前記環境負荷は、排出される二酸化炭素であることを特徴とする請求項1ないし7の何れか一記載の経路探索システム。
【請求項9】
前記経路探索端末で指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷の算出を、リンク毎に蓄積された時刻別の情報を使用し、前記経路探索端末で指定された自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷量と、前記経路探索端末で指定された自動車又は自動二輪車の移動に伴って同一リンクを走行する車両が受ける速度変動に伴って発生する環境負荷量とを合算することによって算出することを特徴とする請求項1ないし8の何れか一記載の経路探索システム。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れかに記載された経路探索システムから、経路探索に用いる環境負荷に関する情報又は経路情報を受信し、当該受信した情報を経路の算定処理に用いる処理手段を有することを特徴とする経路探索端末。
【請求項11】
経路探索端末と、前記経路探索端末からの情報提供要求に応じて前記経路探索端末に経路情報の作成に用いる情報を送信する経路探索システムとを用いて行なわれる経路探索方法であって、
前記経路探索システムは、
前記経路探索端末で指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷を算出すると共に、前記指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する周辺環境及び/又は他の自動車又は自動二輪車におよぼす環境負荷を算出する環境負荷算出手段と、前記環境負荷算出手段の算出する算出結果から環境負荷に関する情報を作成する手段とを有し、
前記経路探索端末からの情報提供要求に応じて、前記経路探索端末に経路情報の作成に用いる情報として前記環境負荷算出手段で算出した環境負荷に関する情報含む情報を作成することを特徴とする経路探索方法。
【請求項12】
経路探索端末と、前記経路探索端末からの情報提供要求に応じて前記経路探索端末に経路情報を送信する経路探索システムとを用いて行なわれる経路探索方法であって、
前記経路探索システムは、
前記経路探索端末で指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷を算出すると共に、前記経路探索端末指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する周辺環境及び/又は他の自動車又は自動二輪車におよぼす環境負荷を算出する環境負荷算出手段と、前記環境負荷算出手段の算出する算出結果から環境負荷に関する情報を作成し、当該環境負荷に関する情報に基づいて経路を探索する経路探索手段と、前記経路探索手段が探索した経路の情報を経路情報として前記経路探索端末に送信する経路送信手段とを有し、
前記経路探索端末からの情報提供要求に応じて、前記経路探索端末に経路探索手段で探索した経路情報を送信することを特徴とする経路探索方法。
【請求項13】
前記環境負荷は、排出される温室効果ガスの量によって定められることを特徴とする請求項11または12記載の経路探索方法。
【請求項14】
前記温室効果ガスは、二酸化炭素であることを特徴とする請求項13記載の経路探索方法。
【請求項15】
前記環境負荷は、交通渋滞の量によって定められることを特徴とする請求項11または12記載の経路探索方法。
【請求項16】
前記経路探索端末は、自動車又は自動二車に設置されるカーナビゲーション端末であることを特徴とする請求項11ないし15の何れか一記載の経路探索方法。
【請求項17】
前記経路探索端末で指定される自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する環境負荷の算出を、リンク毎に蓄積された時刻別の情報を使用し、前記経路探索端末で指定された自動車又は自動二輪車の移動に伴って発生する発生する環境負荷量と、前記経路探索端末で指定された自動車又は自動二輪車の移動に伴って同一リンクを走行する車両が受ける速度変動に伴って発生する環境負荷量とを合算することによって算出することを特徴とする請求項11ないし16の何れか一記載の経路探索方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−156634(P2009−156634A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332723(P2007−332723)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、総務省「プローブ情報を活用した動的経路誘導システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(000232092)NECソフト株式会社 (173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、総務省「プローブ情報を活用した動的経路誘導システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(000232092)NECソフト株式会社 (173)
【Fターム(参考)】
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