説明

経路探索装置、経路探索方法及び経路探索プログラム

【課題】太陽光による逆光の影響を最小にすることが可能な経路探索装置を提供することを課題とする。
【解決手段】経路探索装置は、複数の地点の夫々を示す複数のノード、ノード間を結ぶ道路を示す複数のリンクを含む地図データを備える。経路探索装置は、調査エリア内の地図上の複数のリンクの夫々について、カメラの撮影方向の単位ベクトルと太陽光の入射方向の単位ベクトルの内積を算出し、経路を構成するリンクについての内積の和を算出し、内積の和を基にルート評価値を算出する。経路探索装置は、調査エリア内の複数の経路のうち、最もルート評価値が高い経路を出力表示する。これにより、移動体に設置されたカメラから風景を撮影する場合における太陽光による逆光の影響を最小にすることが可能な経路を示すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図上における道路の経路を表示する経路探索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置などに搭載される地図データには、信号機、及び、交通規制看板などの道路標識について、その位置情報や内容情報が記録されており、ユーザは、ナビゲーション装置の表示画面上に表示された地図を見ることで、信号機や道路標識の位置や内容を予め知ることができる。
【0003】
この信号機や道路標識の位置情報や内容情報は、調査員が、実際に車両などの移動体で道路を走行しながら信号機や道路標識を含む風景を撮影する走行調査を行うことによって得られる。この走行調査によって得られた位置情報や内容情報が地図データに組み込まれる。走行調査の方法としては、例えば、調査員は、車両内部に車両前方に向けてカメラを設置し、当該車両が道路を走行している間中、当該カメラを用いて車両前方の風景を連続的に撮影するといった方法がとられる。
【0004】
しかしながら、上記の方法では、太陽が車両前方に位置してカメラのフレーム内に入るときには、逆光となってしまうため、カメラは信号機や道路標識といった対象物を的確に撮影することができなくなってしまう。
【0005】
なお、以下の特許文献1には、車両検知装置において、太陽の方向を検知する装置が設けられると共に、受光素子の前面に偏光板が設けられており、太陽の方向を検知する当該装置からの情報を基に当該偏光板を制御することで、車両の側面や窓からの太陽の反射光を打ち消す技術が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−50697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、例えば、選択された調査エリア内の複数の道路を走行調査するために、移動体に設置されたカメラから風景を撮影する場合において、太陽光による逆光の影響を最小にすることが可能な経路探索装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、カメラを搭載した移動体が通過する地図上の経路を出力する経路探索装置であって、複数の地点の夫々を示す複数のノード、前記ノード間を結ぶ道路を示す複数のリンクを含む地図データと、調査エリアが入力される入力手段と、前記調査エリア内の地図上の複数のリンクの夫々について、前記カメラの撮影方向及び前記カメラに対する太陽光の入射方向を算出し、前記カメラの撮影方向の単位ベクトルと前記太陽光の入射方向の単位ベクトルの内積を算出する内積算出手段と、前記調査エリア内の前記地図上の複数の経路の夫々について、前記経路を構成するリンクについての内積の和を算出し、当該内積の和に基づいてルート評価値を算出するルート評価値算出手段と、前記調査エリア内の複数の経路のうち、最も前記ルート評価値が高い経路の経路情報を出力する出力手段と、を備える。
【0009】
請求項5に記載の発明は、複数の地点の夫々を示す複数のノード、前記ノード間を結ぶ道路を示す複数のリンクを含む地図データを用いて、カメラを搭載した移動体が通過する地図上の経路を出力する経路探索方法であって、調査エリアが入力される入力工程と、前記調査エリア内の地図上の複数のリンクの夫々について、前記カメラの撮影方向及び前記カメラに対する太陽光の入射方向を算出し、前記カメラの撮影方向の単位ベクトルと前記太陽光の入射方向の単位ベクトルの内積を算出する内積算出工程と、前記調査エリア内の前記地図上の複数の経路の夫々について、前記経路を構成するリンクについての内積の和を算出し、当該内積の和に基づいてルート評価値を算出するルート評価値算出工程と、前記調査エリア内の複数の経路のうち、最も前記ルート評価値が高い経路の経路情報を出力する出力工程と、を備える。
【0010】
請求項6に記載の発明は、複数の地点の夫々を示す複数のノード、前記ノード間を結ぶ道路を示す複数のリンクを含む地図データと、調査エリアが入力される入力手段と、を備えるコンピュータにより実行される、カメラを搭載した移動体が通過する地図上の経路を出力する経路探索プログラムであって、前記調査エリア内の地図上の複数のリンクの夫々について、前記カメラの撮影方向及び前記カメラに対する太陽光の入射方向を算出し、前記カメラの撮影方向の単位ベクトルと前記太陽光の入射方向の単位ベクトルの内積を算出する内積算出手段、前記調査エリア内の前記地図上の複数の経路の夫々について、前記経路を構成するリンクについての内積の和を算出し、当該内積の和に基づいてルート評価値を算出するルート評価値算出手段、前記調査エリア内の複数の経路のうち、最も前記ルート評価値が高い経路の経路情報を出力する出力手段、として前記コンピュータを機能させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の1つの観点では、カメラを搭載した移動体が通過する地図上の経路を出力する経路探索装置は、複数の地点の夫々を示す複数のノード、前記ノード間を結ぶ道路を示す複数のリンクを含む地図データと、調査エリアが入力される入力手段と、前記調査エリア内の地図上の複数のリンクの夫々について、前記カメラの撮影方向及び前記カメラに対する太陽光の入射方向を算出し、前記カメラの撮影方向の単位ベクトルと前記太陽光の入射方向の単位ベクトルの内積を算出する内積算出手段と、前記調査エリア内の前記地図上の複数の経路の夫々について、前記経路を構成するリンクについての内積の和を算出し、当該内積の和に基づいてルート評価値を算出するルート評価値算出手段と、前記調査エリア内の複数の経路のうち、最も前記ルート評価値が高い経路の経路情報を出力する出力手段と、を備える。
【0012】
上記の経路探索装置は、例えば、パーソナルコンピュータであり、カメラを搭載した車両などの移動体が通過する地図上の経路を出力するためのものである。経路探索装置は、複数の地点の夫々を示す複数のノード、前記ノード間を結ぶ道路を示す複数のリンクを含む地図データを備える。また、経路探索装置は、入力手段と、内積算出手段と、ルート評価値算出手段と、出力手段と、を備える。入力手段は、例えば、マウスなどの座標指示デバイスやキーボードであり、調査エリアを入力するためのものである。内積算出手段は、前記調査エリア内の地図上の複数のリンクの夫々について、前記カメラの撮影方向及び前記カメラに対する太陽光の入射方向を算出し、前記カメラの撮影方向の単位ベクトルと前記太陽光の入射方向の単位ベクトルの内積を算出する。ルート評価値算出手段は、前記調査エリア内の前記地図上の複数の経路の夫々について、前記経路を構成するリンクについての内積の和を算出し、当該内積の和に基づいてルート評価値を算出する。出力手段は、前記調査エリア内の複数の経路のうち、最も前記ルート評価値が高い経路の経路情報を出力する。このようにすることで、経路探索装置は、前記移動体に設置されたカメラから風景を撮影する場合における太陽光による逆光の影響を最小にすることが可能な経路を示すことができる。
【0013】
上記の経路探索装置の一態様は、前記ルート評価値算出手段は、前記内積の和を、前記経路を構成するリンク数で割った値を前記ルート評価値として算出する。これにより、経路によってリンク数に大きな差がある場合などにおいても、逆光の影響を最小にすることが可能な経路を示すことができる。
【0014】
上記の経路探索装置の他の一態様は、前記入力手段には、前記移動体に対するカメラの設置角度が入力され、前記内積算出手段は、前記移動体に対するカメラの設置角度と、前記移動体の進行方向とに基づいて、前記地図上におけるカメラの撮影方向を算出する。これにより、カメラの設置角度に拘らず、逆光の影響を最小にすることが可能な経路を示すことができる。
【0015】
上記の経路探索装置の他の一態様は、前記入力手段には、調査日及び調査時間帯が入力され、前記内積算出手段は、前記調査日及び前記調査時間帯に基づいて、前記カメラに対する太陽光の入射方向を算出する。これにより、逆光の影響を最小にすることが可能な経路をより正確に示すことができる。
【0016】
本発明の他の観点では、複数の地点の夫々を示す複数のノード、前記ノード間を結ぶ道路を示す複数のリンクを含む地図データを用いて、カメラを搭載した移動体が通過する地図上の経路を出力する経路探索方法は、調査エリアが入力される入力工程と、前記調査エリア内の地図上の複数のリンクの夫々について、前記カメラの撮影方向及び前記カメラに対する太陽光の入射方向を算出し、前記カメラの撮影方向の単位ベクトルと前記太陽光の入射方向の単位ベクトルの内積を算出する内積算出工程と、前記調査エリア内の前記地図上の複数の経路の夫々について、前記経路を構成するリンクについての内積の和を算出し、当該内積の和に基づいてルート評価値を算出するルート評価値算出工程と、前記調査エリア内の複数の経路のうち、最も前記ルート評価値が高い経路の経路情報を出力する出力工程と、を備える。この方法によっても、前記移動体に設置されたカメラから風景を撮影する場合における太陽光による逆光の影響を最小にすることが可能な経路を示すことができる。
【0017】
本発明の更なる他の観点では、複数の地点の夫々を示す複数のノード、前記ノード間を結ぶ道路を示す複数のリンクを含む地図データと、調査エリアが入力される入力手段と、を備えるコンピュータにより実行される、カメラを搭載した移動体が通過する地図上の経路を出力する経路探索プログラムは、前記調査エリア内の地図上の複数のリンクの夫々について、前記カメラの撮影方向及び前記カメラに対する太陽光の入射方向を算出し、前記カメラの撮影方向の単位ベクトルと前記太陽光の入射方向の単位ベクトルの内積を算出する内積算出手段、前記調査エリア内の前記地図上の複数の経路の夫々について、前記経路を構成するリンクについての内積の和を算出し、当該内積の和に基づいてルート評価値を算出するルート評価値算出手段、前記調査エリア内の複数の経路のうち、最も前記ルート評価値が高い経路の経路情報を出力する出力手段、として前記コンピュータを機能させる。この経路探索プログラムをコンピュータに実行させることにより、上記の経路探索装置を実現することができる。
【実施例】
【0018】
[経路探索装置]
(装置構成)
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。図1に、本発明の実施例に係
る経路探索装置100の全体構成を示す。
【0019】
経路探索装置100は、例えば、パーソナルコンピュータであり、システムバス11と、CPU(Central Processing Unit)12と、メモリ13と、キーボード14と、マウスなどの座標指示デバイス15と、ディスプレイ16と、プリンタ17と、データベース18より構成される。ここで、キーボード14、座標指示デバイス15は、入力装置である。また、ディスプレイ16、プリンタ17は、出力装置である。CPU12は、経路探索装置100全体を制御し、入出力装置の制御を行う。
【0020】
CPU12、メモリ13、データベース18は、システムバス11に接続される。キーボード14、座標指示デバイス15、ディスプレイ16、プリンタ17も、図示しないインタフェースを介してシステムバス11に接続される。ここでいうメモリ13は、いわゆるメインメモリであり、本実施例に係る経路探索プログラムが記憶されている。また、データベース18には、例えば、日本全国における電子データ化した地図データが記憶され、当該地図データでは、道路は、複数のノードと、当該ノード間を結ぶリンクから構成されるベクタデータの形式で表現されている。
【0021】
調査員は、信号機や道路標識の位置情報や内容情報を収集するために走行調査を行う。調査員は、この走行調査を行う前に、本実施例に係る経路探索装置100を用いることで、走行調査を行う場合における信号機や道路標識を撮影するのに最適な経路、具体的には、なるべく太陽光による逆光の影響を受けない撮影を行うことのできる経路を予め知ることができる。
【0022】
調査員は、まず、キーボード14や座標指示デバイス15を用いて、CPU12に対し、経路探索プログラムを起動させる命令を行う。CPU12は、命令を受け取ると、メモリ13に記憶されている経路探索プログラムを起動する。
【0023】
経路探索プログラムが起動すると、ディスプレイ16には、撮影を行うカメラの車両に対する設置角度、調査日、調査時間帯、調査エリアを入力することのできるメニュー画面が表示される。調査員は、キーボード14や座標指示デバイス15を用いて、ディスプレイ16に表示されたメニュー画面に対し、撮影を行うカメラの走行車両に対する設置角度、調査日、調査時間帯、調査エリアを夫々入力する。
【0024】
CPU12は、調査エリアの範囲の地図上の道路について、カメラの走行車両に対する設置角度、調査日、調査時間帯を基に、なるべく太陽光による逆光の影響を受けない撮影を行うことのできる経路を割り出して、ディスプレイ16に当該経路を表示する。具体的には、CPU12は、太陽光による逆光の影響を最小にすることのできる、出発時刻、出発点、経路をディスプレイ16に表示する。
【0025】
(経路探索方法)
次に、本実施例に係る経路探索方法について具体的に述べる。図2、図4は、走行調査が行われるときの車両の模式図を示している。図2において、カメラ21は、車両20に取り付けられ、車両20が走行している間、車両20の外部の風景を撮影する。図2に示す例では、カメラ21の撮影方向Vcは、車両20の進行方向と同じ方向であるとしている。また、「Sun」で示した図形は太陽を示すものであるとし、「Vs」は、カメラ21に対する太陽光の入射方向を示すものであるとする。
【0026】
図3は、カメラ21の撮影方向Vcが車両20の進行方向と同じ方向であるとしたときのカメラ21によって撮影される風景の一例を示す模式図である。
【0027】
図3に示すフレーム25内には、道路26と信号機27が撮影されている。走行調査では、このように、道路26に沿った風景をカメラ21で撮影し続けることによって、調査員は、道路26に設けられている信号機や道路標識の位置情報や内容情報を収集する。
【0028】
しかしながら、図3に示すように、フレーム25内に太陽が入って撮影された場合には、逆光となってしまうため、撮影された風景は全体的に白っぽく写ってしまうこととなる。このとき、調査員は、撮影された風景から道路26上に設けられた信号機や道路標識を認識できなくなってしまうことがある。このような逆光の影響は、カメラ21に対する太陽光の入射方向Vsが、カメラ21の撮影方向Vcと対向する方向となるに従い大きくなり、太陽光の入射方向Vsが、カメラ21の撮影方向Vcと同じ方向となるに従い小さくなる(図4参照)。
【0029】
図5は、太陽光の入射方向とカメラの撮影方向の関係を示した模式図であり、カメラの上空から地上方向を見た平面図として示している。図5において、太陽は、カメラ21を中心として45°間隔で表示されている。太陽光の入射方向Vsは、紙面に対し平行な方向であるとする。太陽の表示位置に記された数値は、太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルとカメラ21の撮影方向Vcの単位ベクトルの内積の値を示している。カメラ21の撮影方向Vcの単位ベクトルと太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルの内積は、カメラ21の撮影方向Vcと太陽光の入射方向Vsの間のなす角の余弦と等しくなる。従って、図5に示すように、太陽光の入射方向Vsが、カメラ21の撮影方向Vcと対向する方向となるに従い、当該内積の値は−1に近づき、太陽光の入射方向Vsが、カメラ21の撮影方向Vcと同じ方向となるに従い、当該内積の値は1に近づくこととなる。
【0030】
本実施例に係る経路探索装置100は、調査員により入力された地図データの調査エリア内の複数のリンクの夫々について、カメラ21の撮影方向Vcの単位ベクトルと、カメラ21に対する太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルとの内積を算出する。そして、経路探索装置100は、調査エリア内の複数の経路の夫々について、経路毎に当該経路を構成するリンクの内積の和を求めた後、当該内積の和を、当該経路を構成するリンク数で割ったルート評価値を算出する。
【0031】
図6は、道路地図の一例を示す模式図であり、上空から地上方向を見た平面図として示している。図6に示す道路は、地点A〜Dのノードと、地点Aと地点Bの間、地点Bと地点Dの間、地点Dと地点Cの間、地点Cと地点Bの間の夫々を結ぶリンクより構成される。一例として、経路探索装置100における、地図データの調査エリア内の地図上の道路が図6で示されるものであった場合の具体的な動作について述べる。なお、説明の便宜上、図6における太陽の位置は、静止しているものとし、カメラに対する太陽光の入射方向Vsは、紙面に対し平行で地点Bと地点Cを結ぶリンクに対して垂直な方向であるとする。また、カメラの撮影方向Vcは、車両進行方向と同じ方向に向けたもの、即ちリンクに沿ったものであるとする。
【0032】
本実施例に係る経路探索装置100は、まず、調査エリア内の複数のリンクの夫々について、カメラの撮影方向Vcの単位ベクトルと太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルの内積を算出する。
【0033】
地点Aから地点Bに向かうリンクでは、太陽光の入射方向Vsと地点Aから地点Bに向かう方向の間のなす角が45°となっているので、太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルとカメラの撮影方向Vcの単位ベクトルの内積は0.7となる。地点Bから地点Cに向かうリンクでは、太陽光の入射方向Vsと地点Bから地点Cに向かう方向の間のなす角が90°となっているので、太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルとカメラの撮影方向Vcの単位ベクトルの内積は0.0となる。
【0034】
地点Cから地点Dに向かうリンクでは、太陽光の入射方向Vsと地点Cから地点Dに向かう方向の間のなす角が180°となっているので、太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルとカメラの撮影方向Vcの単位ベクトルの内積は−1.0となる。地点Dから地点Cに向かうリンクでは、太陽光の入射方向Vsと地点Dから地点Cに向かう方向の間のなす角が45°となっているので、太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルとカメラの撮影方向Vcの単位ベクトルの内積は0.7となる。
【0035】
地点Bから地点Aに向かうリンクでは、太陽光の入射方向Vsと地点Bから地点Aに向かう方向の間のなす角が135°となっているので、太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルとカメラの撮影方向Vcの単位ベクトルの内積は−0.7となる。地点Cから地点Bに向かうリンクでは、太陽光の入射方向Vsと地点Cから地点Bに向かう方向の間のなす角が90°となっているので、太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルとカメラの撮影方向Vcの単位ベクトルの内積は0.0となる。
【0036】
地点Dから地点Cに向かうリンクでは、太陽光の入射方向Vsと地点Dから地点Cに向かう方向の間のなす角が0°となっているので、太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルとカメラの撮影方向Vcの単位ベクトルの内積は1.0となる。地点Bから地点Dに向かうリンクでは、太陽光の入射方向Vsと地点Bから地点Dに向かう方向の間のなす角が135°となっているので、太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルとカメラの撮影方向Vcの単位ベクトルの内積は−0.7となる。
【0037】
本実施例に係る経路探索装置100は、調査エリア内の複数の経路の夫々について、経路毎に当該経路を構成するリンクの内積の和であるリンク評価値を求めた後、当該内積の和を、当該経路を構成するリンク数で割ったルート評価値を算出する。
【0038】
図7に示す図表は、図6に示す道路における複数の経路の夫々についてのリンク評価値を示している。複数の経路としては、図7に示すように、ルート1〜ルート8までの8つの経路が設定される。図7において、ルート名に隣接するかっこ内には、通過するノードの順番が記載されている。この複数の経路は、どの経路も必ず、全てのリンクを通過するものとなっている。図8に示す図表は、図6に示す道路における複数の経路の夫々についてのルート評価値を示している。
【0039】
図7に示すように、ルート1は、地点A→地点B→地点C→地点D→地点Bと辿る経路である。従って、ルート1のリンク評価値は、0.7+0.0+(−1.0)+0.7=0.4となる。同様にして、ルート2のリンク評価値は1.0、ルート3のリンク評価値は−1.0、ルート4のリンク評価値は−0.4、ルート5のリンク評価値は−1.0、ルート6のリンク評価値は−0.4、ルート7のリンク評価値は0.3、ルート8のリンク評価値は−0.3となる。
【0040】
図8に示すように、ルート1は、地点A→地点B→地点C→地点D→地点Bへと辿る経路であるので、リンク数は4となる。従って、リンク評価値たる0.4をリンク数たる4で割ることにより、ルート1のルート評価値は0.1となる。同様にして、ルート2のルート評価値は0.25、ルート3のルート評価値は−0.25、ルート4のルート評価値は−0.1、ルート5のルート評価値は−0.2、ルート6のルート評価値は−0.08、ルート7のルート評価値は0.06、ルート8のルート評価値は−0.06となる。
【0041】
即ち、ルート評価値は、夫々の経路を構成するリンクの内積の平均値である。従って、ルート評価値が大きい経路になる程、太陽光の入射方向Vsとカメラの撮影方向Vcの間のなす角の大きさが小さくなる場合が多くなる、即ち、太陽光の入射方向Vsは、カメラの撮影方向Vcと同じ方向に近づく場合が多くなり、逆光の影響は少なくなる。一方、ルート評価値が小さい経路になる程、太陽光の入射方向Vsとカメラの撮影方向Vcの間のなす角の大きさが大きくなる場合が多くなる、即ち、太陽光の入射方向Vsは、カメラの撮影方向Vcと対向する方向に近づく場合が多くなり、逆光の影響は大きくなる。
【0042】
従って、本実施例に係る経路探索装置100は、調査エリア内の複数の経路のうち、最もルート評価値が高い経路を、太陽光による逆光の影響が少ない撮影を行うことのできる経路としてディスプレイ16に表示する。図8に示す例では、最もルート評価値が高い経路は、ルート評価値が0.25となるルート2の経路なので、経路探索装置100は、ルート2の経路、即ち、地点A→地点B→地点D→地点C→地点Bへと辿る経路をディスプレイ16に出力表示する。
【0043】
このようにして、経路探索装置100は、移動体に設置されたカメラから風景を撮影する場合における太陽光による逆光の影響を最小にすることが可能な経路を示すことができる。また、経路探索装置100は、ルート評価値として、夫々の経路を構成するリンクの内積の平均値をとることにより、経路によってリンク数に大きな差がある場合などにおいても、逆光の影響を最小にすることが可能な経路を示すことができる。
【0044】
図6に示した道路地図の例では、説明のため、太陽の位置は、静止しているものとし、カメラの撮影方向Vcは、車両進行方向と同じ方向に向けたものであるとしていた。しかし、実際には、太陽の位置は時々刻々と変化するものであるため、太陽光の入射方向Vsは変化する。また、カメラの撮影方向Vcも、車両進行方向と同じ方向に向けられるとは限らない。
【0045】
太陽の位置は、日付と時刻によって決定されるものであるため、本実施例に係る経路探索装置100は、太陽の軌道を計算するプログラムなどを用いて、入力された調査日、調査時間帯を基に、当該調査日における日の出及び日の入り時刻、及び、日の出時刻と日の入り時刻の間に調査時間帯が存するのであれば、当該調査時間帯における所定時間毎(例えば10分毎)の太陽の位置を算出し、太陽光の入射方向Vsを算出する。このようにすることで、太陽の位置が時々刻々と変化しても、太陽光の入射方向Vsを算出することができる。経路探索装置100は、太陽光の入射方向Vsをこのようにして算出することで、逆光の影響を最小にすることが可能な経路をより正確に示すことができる。
【0046】
図9は、カメラを車両進行方向に対し垂直となる設置角度で取り付けた場合のカメラの撮影方向Vcの模式図を示す。図9の模式図は、図6の地点Aと地点Bを結ぶリンクの拡大図である。
【0047】
この場合、太陽光の入射方向Vsと地点Aから地点Bに向かう方向の間のなす角が45°となっているが、カメラ21は車両進行方向に対し垂直となる設置角度で取り付けられているので、太陽光の入射方向Vsとカメラ21の撮影方向Vcのなす角は、135°となる。従って、この場合、太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルとカメラ21の撮影方向Vcの単位ベクトルの内積は−0.7となる。
【0048】
本実施例に係る経路探索装置100は、入力されたカメラの車両に対する設置角度と車両の進行方向を基に、上記の様に各リンク毎にカメラの撮影方向Vcを算出して、太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルとカメラの撮影方向Vcの単位ベクトルの内積を算出する。このようにすることで、カメラの撮影方向Vcが車両進行方向と同じ方向とされなくても、太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルとカメラの撮影方向Vcの単位ベクトルの内積を算出することができる。これにより、経路探索装置100は、カメラの設置角度に拘らず、逆光の影響を最小にすることが可能な経路を示すことができる。
【0049】
(経路探索処理)
次に、本実施例に係る経路探索装置が行う経路探索処理の方法について図10に示すフローチャートを用いて説明する。図10は本実施例に係る経路探索処理を示すフローチャートである。
【0050】
調査員は、ディスプレイ16に表示されたメニュー画面に対し、撮影を行うカメラの走行車両に対する設置角度、調査日、調査時間帯、調査エリアを夫々入力する(ステップS11)。CPU12は、入力された調査日、調査時間帯を基に、当該調査日における日の出及び日の入り時刻、及び、日の出時刻と日の入り時刻の間に調査時間帯が存するのであれば、当該調査時間帯における所定時間毎の太陽の位置を算出し、太陽光の入射方向Vsを算出する(ステップS12)。
【0051】
CPU12は、入力された調査エリア内の道路を示す複数のリンクの夫々について、入力されたカメラの車両に対する設置角度と車両の進行方向を基にリンク上におけるカメラの撮影方向Vcを算出し、カメラの撮影方向Vcの単位ベクトルと太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルの内積を算出する(ステップS13)。従って、CPU12は、本発明における内積算出手段として機能する。
【0052】
次に、CPU12は、調査エリア内の複数の経路の夫々について、経路毎に当該経路を構成するリンクの内積の和であるリンク評価値を算出し、当該内積の和を、当該経路を構成するリンク数で割ったルート評価値を算出する(ステップS14)。従って、CPU12は、本発明におけるルート評価値算出手段として機能する。
【0053】
ステップS13及びステップS14において、具体的には、CPU12は、各ノードのうち、所定のノードを開始ノード(出発点)として設定し、調査時間帯において、所定時間毎(例えば10分毎)に出発時刻を設定し、各出発時刻毎に全リンクを通過する経路検索を行う。CPU12は、経路検索を行う際に、出発時刻に対し、各リンクを通過するのに必要な時間を各リンクの通過の度に加算していくことにより、各リンクを通過するリンク通過時刻を算出する。CPU12は、各リンクの夫々について、入力されたカメラの車両に対する設置角度を基に当該リンク上におけるカメラの撮影方向Vcを算出すると共に、当該リンクに対応するリンク通過時刻における太陽光の入射方向Vsを算出して、カメラの撮影方向Vcの単位ベクトルと太陽光の入射方向Vsの単位ベクトルの内積を算出する。CPU12は、算出された内積を次々と加算していくことにより、1つの経路のリンク評価値を算出し、当該経路を構成するリンク数で割ったルート評価値を算出する。CPU12は、以上の操作を経路探索される全ての経路について行う。さらに、CPU12は、ステップS13及びステップS14の操作を全ノードの夫々を開始ノードとした場合について行う。即ち、この場合における調査エリア内の複数の経路とは、全ノードの夫々を開始ノードとした場合における、各出発時刻毎に経路検索された全ての経路を示す。
【0054】
そして、CPU12は、調査エリア内の複数の経路のうち、最もルート評価値が高い経路を、太陽光による逆光の影響が少ない撮影を行うことのできる経路としてディスプレイ16に出力表示する(ステップS15)。具体的には、CPU12は、最もルート評価値が高くなる、出発時刻、出発点(開始ノード)、経路をディスプレイ16に表示する。従って、CPU12は、本発明における出力手段としても機能する。
【0055】
以上に述べたように、カメラを搭載した移動体が通過する地図上の経路を出力する経路探索装置は、複数の地点の夫々を示す複数のノード、前記ノード間を結ぶ道路を示す複数のリンクを含む地図データと、調査エリアが入力される入力手段と、前記調査エリア内の地図上の複数のリンクの夫々について、前記カメラの撮影方向及び前記カメラに対する太陽光の入射方向を算出し、前記カメラの撮影方向の単位ベクトルと前記太陽光の入射方向の単位ベクトルの内積を算出する内積算出手段と、前記調査エリア内の前記地図上の複数の経路の夫々について、前記経路を構成するリンクについての内積の和を算出し、当該内積の和に基づいてルート評価値を算出するルート評価値算出手段と、前記調査エリア内の複数の経路のうち、最も前記ルート評価値が高い経路の経路情報を出力する出力手段と、を備える。これにより、車両などの移動体に設置されたカメラから風景を撮影する場合における太陽光による逆光の影響を最小にすることが可能な経路を示すことができる。
[変形例]
上記の例では、調査エリア内の複数の経路の夫々について、経路毎に当該経路を構成するリンク毎の内積の和であるリンク評価値を算出し、当該内積の和を当該経路を構成するリンク数で割った値をルート評価値としている。しかし、ルート評価値はこれには限られず、例えば経路を構成するリンク毎の内積の和自体をルート評価値として使用しても構わない。
【0056】
また、上記の実施例では、調査員が入力した移動体に対するカメラの設置角度と、移動体の進行方向とに基づいてカメラの撮影方向が算出されているが、カメラが移動体の進行方向と同一方向に固定設置される場合には、調査員によるカメラの設置角度の入力は不要となる。
【0057】
また、上記の実施例は、調査員が入力した調査日及び調査時間帯に基づいて太陽光の入射方向が算出されているが、日時毎の太陽光の入射方向の情報を外部から入手可能である場合には、調査員が入力した調査日及び調査時間帯における太陽光の入射方向の情報を外部から取得して利用することとしてもよい。
【0058】
なお、上記の実施例は、走行調査のために経路探索を行う場合についてのものであるが、本発明の経路探索装置は、このような走行調査に用いる場合に限られるものではなく、代わりに、例えば、一般的なナビゲーション装置に搭載されるとしてもよい。経路探索装置をナビゲーション装置に搭載することにより、当該ナビゲーション装置は、例えば、運転者が太陽光による逆光を受けることをなるべく少なくすることの可能な経路を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施例による経路探索装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】走行調査が行われるときの車両の模式図である。
【図3】カメラによって撮影される風景の一例を示す模式図である。
【図4】走行調査が行われるときの車両の模式図である。
【図5】太陽光の入射方向とカメラの撮影方向の関係を示した模式図である。
【図6】道路地図の一例を示す模式図である
【図7】複数の経路の夫々についてのリンク評価値を示す図表である。
【図8】複数の経路の夫々についてのルート評価値を示す図表である。
【図9】カメラの撮影方向を示す模式図である。
【図10】本実施例による経路探索処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
11・・・システムバス
12・・・CPU
13・・・メモリ
14・・・キーボード
15・・・座標指示デバイス
16・・・ディスプレイ
17・・・プリンタ
18・・・データベース
100・・・経路探索装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを搭載した移動体が通過する地図上の経路を出力する経路探索装置であって、
複数の地点の夫々を示す複数のノード、前記ノード間を結ぶ道路を示す複数のリンクを含む地図データと、
調査エリアが入力される入力手段と、
前記調査エリア内の地図上の複数のリンクの夫々について、前記カメラの撮影方向及び前記カメラに対する太陽光の入射方向を算出し、前記カメラの撮影方向の単位ベクトルと前記太陽光の入射方向の単位ベクトルの内積を算出する内積算出手段と、
前記調査エリア内の前記地図上の複数の経路の夫々について、前記経路を構成するリンクについての内積の和を算出し、当該内積の和に基づいてルート評価値を算出するルート評価値算出手段と、
前記調査エリア内の複数の経路のうち、最も前記ルート評価値が高い経路の経路情報を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする経路探索装置。
【請求項2】
前記ルート評価値算出手段は、前記内積の和を、前記経路を構成するリンク数で割った値を前記ルート評価値として算出することを特徴とする請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項3】
前記入力手段には、前記移動体に対するカメラの設置角度が入力され、
前記内積算出手段は、前記移動体に対するカメラの設置角度と、前記移動体の進行方向とに基づいて、前記地図上におけるカメラの撮影方向を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の経路探索装置。
【請求項4】
前記入力手段には、調査日及び調査時間帯が入力され、
前記内積算出手段は、前記調査日及び前記調査時間帯に基づいて、前記カメラに対する太陽光の入射方向を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の経路探索装置。
【請求項5】
複数の地点の夫々を示す複数のノード、前記ノード間を結ぶ道路を示す複数のリンクを含む地図データを用いて、カメラを搭載した移動体が通過する地図上の経路を出力する経路探索方法であって、
調査エリアが入力される入力工程と、
前記調査エリア内の地図上の複数のリンクの夫々について、前記カメラの撮影方向及び前記カメラに対する太陽光の入射方向を算出し、前記カメラの撮影方向の単位ベクトルと前記太陽光の入射方向の単位ベクトルの内積を算出する内積算出工程と、
前記調査エリア内の前記地図上の複数の経路の夫々について、前記経路を構成するリンクについての内積の和を算出し、当該内積の和に基づいてルート評価値を算出するルート評価値算出工程と、
前記調査エリア内の複数の経路のうち、最も前記ルート評価値が高い経路の経路情報を出力する出力工程と、を備えることを特徴とする経路探索方法。
【請求項6】
複数の地点の夫々を示す複数のノード、前記ノード間を結ぶ道路を示す複数のリンクを含む地図データと、調査エリアが入力される入力手段と、を備えるコンピュータにより実行される、カメラを搭載した移動体が通過する地図上の経路を出力する経路探索プログラムであって、
前記調査エリア内の地図上の複数のリンクの夫々について、前記カメラの撮影方向及び前記カメラに対する太陽光の入射方向を算出し、前記カメラの撮影方向の単位ベクトルと前記太陽光の入射方向の単位ベクトルの内積を算出する内積算出手段、前記調査エリア内の前記地図上の複数の経路の夫々について、前記経路を構成するリンクについての内積の和を算出し、当該内積の和に基づいてルート評価値を算出するルート評価値算出手段、前記調査エリア内の複数の経路のうち、最も前記ルート評価値が高い経路の経路情報を出力する出力手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする経路探索プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−315799(P2007−315799A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143048(P2006−143048)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(595105515)インクリメント・ピー株式会社 (197)
【Fターム(参考)】