説明

給水装置のポンプ運転制御方法およびその装置

【課題】本発明は、本発明のポンプ号機のローテーション運転を踏襲しながら各ポンプの積算運転時間の均一化させることが可能な給水装置のポンプ運転制御方法を提供する。
【解決手段】本発明のポンプ運転制御方法は、複数台のポンプ1a〜1cを、先発したポンプが停止すると、該先発ポンプを外してポンプ号機の順にローテーションさせて給水運転を行なうポンプ運転制御方法で、各ポンプ号機の運転時間をそれぞれ積算し、積算した時間から各ポンプ号機の積算運転時間t1〜t3のばらつき度n1〜n3を求め、得られた各ポンプ号機のばらつき度値n1〜n3が、予め設定されたポンプの比較値β以上のとき、次回の給水運転のローテーション時に、該当するポンプ号機をスキップさせる。これにより、ローテーション運転の制御を踏襲して、一層、各ポンプの積算運転時間の均一化が行なえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のポンプをローテーションさせながら運転する給水装置のポンプ運転制御装置およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや集合住宅などでは、ランニングコストの低減や故障代替を目的として複数台のポンプを並列に接続した給水装置を用いて給水することが行なわれている。このような給水装置の運転では、使用水量に応じて、ポンプの運転台数を減少させたり増加させたりする制御が用いられている。
【0003】
複数台のポンプを用いた給水装置では、従来より、先発するポンプ号機の負担を軽減させるために、先発したポンプ号機が停止すると、該先発ポンプを飛ばして、先発ポンプの次のポンプ号機から順にローテーションさせて運転することが行なわれている。
【0004】
ところで、各ポンプの寿命の偏りを抑えるため、各ポンプの運転時間は、均一化することが求められる。ところが、ポンプ号機を順にローテーションさせた場合でも、各ポンプ号機が運転する時期など関係から、各ポンプ号機は運転時間が大きくばらつく(偏り)。
【0005】
こうした大きな運転時間のばらつきを抑えるために、特許文献1に開示されているように、次回のローテーション時には、ローテンションの運転を行なわずに、積算運転時間の少ないポンプを先発させる制御が提案されている。
【特許文献1】特開2000−45982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、同制御は、給水装置の基本原則として用いられるローテーション運転の制御に、それとは全く異なる制御内容を組み込むために、ソフト的に複雑となりやすく、バグなどの不具合が発生しやすい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ポンプ号機のローテーション運転を踏襲しながら各ポンプの積算運転時間の均一化させることが可能な給水装置のポンプ運転制御方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、複数台のポンプを、先発したポンプが停止すると、該先発ポンプを外してポンプ号機の順にローテーションさせて給水運転を行なう給水装置のポンプ運転制御方法で、各ポンプ号機の運転時間をそれぞれ積算し、当該積算した時間から各ポンプ号機の積算運転時間のばらつき度を求め、得られた各ポンプ号機のばらつき度値が、予め設定されたポンプの比較値以上のとき、次回の給水運転のローテーション時に、該当するポンプ号機をスキップさせるようにした。
【0009】
請求項2に記載の発明は、給水装置の設置初期における偏りが発生しやすい状況下を避けるために、ポンプ号機のスキップは、各ポンプ号機の総積算運転時間が、所定の運転時間を越えるときのみ実行させ、通常のローテーション運転が行なわれるようにした。
【0010】
請求項3に記載の発明は、必要以上にポンプがスキップする回数を抑えるため、比較値には、ばらつき度の平均値を下限値として、同値にばらつきを抑える重みづけが施された値を用いた。
【0011】
請求項4に記載の発明は、各ポンプの積算運転時間の均一化させるのに好適な制御装置となるよう、複数台のポンプを、先発したポンプが停止すると、該先発ポンプを外してポンプ号機の順にローテーションさせて給水運転を行なうローテーション運転制御手段と、各ポンプ号機の運転時間をそれぞれ積算する積算手段と、積算した時間から各ポンプ号機の積算運転時間のばらつき度を求めるばらつき度判定手段と、得られた各ポンプ号機のばらつき度値と予め設定されたポンプの比較値とを比較する比較手段と、各ポンプ号機のばらつき度値が比較値以上のときに次回の給水運転のローテーション時に該当するポンプ号機をスキップさせるスキップ手段とを有した構成を採用した。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、ポンプ号機のローテーション運転を流用しながら、ポンプ号機間の積算運転時間のばらつきを抑えることができる、
したがって、ローテーション運転の制御を踏襲して、各ポンプの積算運転時間が均一化できる。これにより、ソフト的な複雑さやバグなどの不具合の発生を避けることができ、ポンプの制御装置に携わる労力を抑えることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、スキップ制御の規制により、給水装置の設置初期における偏りが発生しやすい状況下を避けることができ、一層、各ポンプの積算運転時間の均一化を図ることができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、比較値の設定により、必要以上にポンプがスキップするのを抑えることができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、ローテーション運転を流用して、各ポンプの積算運転時間の均一化が行なえる制御装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図1および図2に示す一実施形態にもとづいて説明する。
【0017】
図1は給水装置を示し、図中1a〜1cは複数、例えば3台の電動式のポンプである。なお、ポンプ1a〜1cは、例えば左側からn機号のポンプ、n+1機号のポンプ、n+2機号のポンプとしてある。これらポンプ1a〜1cの吸込部は、例えば開閉弁2a〜2cが介装された吸込管3a〜3cを介して、給水源、例えば受水槽などから延びる給水管4に接続されている。またポンプ1a〜1cの吐出部は、例えば逆止弁5a〜5cや開閉弁6a〜6cが介装された吐出管7a〜7cを介して、需要側、例えばビルや集合住宅などから延びる需要管8に接続されている。これにより、3台のポンプ1a〜1cが並列に接続されたポンプユニット9を構成している。但し、ポンプ1a〜1cの吐出側には、アキュームレータ10や流量センサ11a,11b,11cや圧力センサ12が接続されている。なお、13は、ポンプ1a〜1cの電源周波数を可変可能に制御するインバータを示す。
【0018】
インバータ13、流量センサ11a,11b,11cおよび圧力センサ12などは、ポンプ運転装置を構成する、例えばマイクロコンピュータで構成される制御部15に接続されていて、予め設定されている揚水マップにしたがい、流量センサ11a、11b,11cの流量信号、圧力センサ12の圧力信号で検出される需要具合に応じて、ポンプ1a〜1cが運転、例えば1台運転、2台、3台運転されるようにしてある。また制御部15には、各ポンプ1a〜1cの積算運転時間の均一化を図るために、ポンプ1a〜1cをローテーション運転させる制御が設定されている(本願のローテーション運転制御手段に相当)。同ローテーション運転は、先発したポンプの運転が停止すると、次のポンプ運転のときは、先発したポンプを飛ばして、先に進み次の号機のポンプから順に運転させるというパターンで、ローテーションを行なう制御である。
【0019】
この他、制御部15は、このローテーション運転を踏襲しながら、さらに各ポンプ1a〜1cの積算運転時間の均一化を促進させるスキップ制御が設定されている。
【0020】
すなわち、スキップ制御として制御部15には、
・ポンプ1a〜1cの各号機の運転時間t1〜t3を積算する機能(本願の積算手段に相当)、
・ポンプ1a〜1cの総積算運転時間T1を演算する機能
・積算運転時間t1〜t3と総積算運転時間T1とから、具体的には例えば「積算運転時間t1〜t3/総積算運転時間T1」なる式から、ポンプ1a〜1cの各号機の積算運転時間のばらつき度(n1,n2,n3)を求める機能(本願のばらつき度判定手段に相当)、
・得られた各ポンプ号機のばらつき度値と、予め設定された比較値となるスキップ判定値βとを比較する比較する機能(本願の比較手段に相当)、
・ばらつき度値が比較値以上のとき、次回の給水運転のローテーション時、該当するポンプ号機をスキップさせてローテーションさせるスキップ機能(本願のスキップ手段に相当)、
などが設定されている。
【0021】
また不安定要素となる必要以上のポンプ号機のスキップを避けるための工夫として、制御部15には、この他、
・スキップ制御の実行は、各ポンプ号機の総積算運転時間T1が、所定の運転時間であるポンプ号機の積算運転時間が偏りやすい時期に相当するポンプ設置初期の積算運転時間である設定初期時間αを越えたときだけとする機能が設定されている(その際は通常のローテーション運転)。
【0022】
さらに同じ目的の工夫として、スキップ判定値βには、ばらつき度の平均値を下限値とした、同平均値を越える値[例えば(n1+n2+n3/ポンプ台数)+K(ばらつきを抑える重みづけをなす定数)]が用いてある。
【0023】
つぎに、給水装置の作用を図2に示すフローチャートにしたがい説明する。
【0024】
今、使用水の需要により、給水装置が、当該装置の設置を終えた初期から、給水運転が開始されたとする。このとき、ポンプ1a〜1cの総積算運転時間T1(今までの各ポンプ号機1a〜1c)は、未だ設定初期時間αに到達していないから、ステップ1のように各ポンプ号機を通常のローテーションで運転させる。これにより、先発ポンプがポンプ1aであると、要求される水量や圧力により、まず、ポンプ1aが運転し、さらに能力が必要である状況になる場合、次の号機のポンプ1bが稼動し、さらにそれでも能力が求められる場合、次の号機のポンプ1cが稼動するという、使用水量の状況に応じたパターンで運転が行なわれる。
【0025】
この間、制御部15は、ステップ2,3に示されるように各ポンプ号機(1a〜1c)の運転時間t1、t2、t3を積算、さらにポンプ1a〜1cの総積算運転時間T1を求めている。
【0026】
設定初期時間αは、特にポンプ積算運転時間t1、t2、t3の偏りが大きく発生しやすい傾向のある装置初期の積算時間値から定められている。制御部15は、この設定初期時間αを、総積算運転時間T1が越えるまでは、ステップ5に示されるようにポンプ1a〜1cを通常のローテーションで運転させる。ここでは、必要以上にスキップ運転を行なう回数が増えることがないようにする配慮から、ポンプ積算運転時間t1、t2、t3の偏りが大きく発生しやすい傾向のときは、スキップ制御に至らずに、通常のローテーション運転を行なわせる。通常のローテーション運転は、先発するポンプ号機の負担を軽減させるために、先発したポンプ号機が停止すると、先発ポンプから次のポンプ号機を先発させて運転することをいう。
【0027】
設定初期時間αの間は、先発ポンプの停止の度、こうした先発ポンプが順番に代わるローテーション運転が行なわれる。
【0028】
総積算運転時間T1が設定初期時間αを越えると、制御部15は、ステップS6に示されるように各ポンプ1a〜1cの運転時間のばらつき度n1,n2,n3を求める。n1,n2,n3は、例えば「各号機の積算運転時間/総積算運転時間」なる与式の演算で求まる。つまり、総積算時間に対する各号機の積算運転時間の占める割合で算出される。
【0029】
さらに制御部15は、各号機の積算運転時間に基づいて、同積算運転時間に見合った所定のスキップ判定値βを設定していく。例えば「(n1+n2+n3/ポンプ台数)+K」なる与式の演算で定まる。つまり、必要以上にスキップ運転を行なう回数が増えることがないようにする配慮から、スキップ判定値βは、(n1+n2+n3/ポンプ台数)で得られる平均値にK値を加えて、スキップ判定値βを平均値以上の値としている。
【0030】
続いて制御部15により、ステップS8に示されるようにばらつき度n1,n2,n3とスキップ判定値βとをそれぞれ対比する処理が行われ(「n1−β」、「n2−β」、「n3−β」)、スキップする号機を判定する。
【0031】
対比した結果、スキップ判定値βより大きい数値と演算された号機のポンプは(>β)、ステップS9に示されるように、次回のローテーション運転のとき、スキップする対象の号機のポンプと判別される。そして、その号機のポンプをスキップするというローテンション運転が行なわれる。例えば次回、ポンプ1bが先発ポンプをとしたローテーションである場合、例えばスキップされる号機のポンプが先発ポンプ1bであると判定ときは、先発ポンプ1bを飛ばして、ポンプ1cから始まるローテーション運転が行なわれる。
【0032】
こうしたスキップ制御が行なわれると、ローテーション運転だけでは、ばらつきの多い各号機の積算運転時間は、一層、ばらつきが抑えられる。
【0033】
したがって、スキップ制御により、各号機の積算運転時間t1,t2,t3が均一化でき、各ポンプ1a〜1cの寿命を均一化することができる。しかも、スキップ制御は、既存のローテーション運転の制御を一部変更するという、既存のローテーションを踏襲して行なわれるので、新たに別体な制御を用いるのに比べ、ソフト的な複雑さやバグの発生は避けられる。そのため、給水装置における最適な制御ができる。しかも、スキップ制御は、既存のローテーションを流用するから、ポンプの制御装置に携わる労力を抑えることができる。
【0034】
特にスキップ制御は、総積算運転時間T1が、設定初期時間α(所定運転時間)を越えるときのみ実行させると、給水装置の設置初期における偏りが発生しやすい状況下を避けることができ、一層、各号機の積算運転時間t1,t2,t3の均一化を図ることができる。そのうえ、スキップ判定値β(比較値)として、各号機の積算運転時間のばらつき度の平均値を下限値とし、同値にばらつきを抑える重みづけを施した値を用いたことにより、必要以上にポンプをスキップする回数を抑えながら、各号機の積算運転時間t1,t2,t3の均一化を図ることができる。
【0035】
なお、以上は、ローテーション運転やスキップ制御について述べたが、制御部15の設定により、ポンプ故障時は、スキップ制御よりも代替運転するポンプを優先させる。また並列(同時)運転及び3台以上の同時運転の場合についても、スキップ制御よりも、両運転を優先させたりする制御が実行され、良好な給水運転が継続できる。
【0036】
但し、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施しても構わない。一実施形態では、3台のポンプを並列に接続したポンプユニットを用いた例を挙げたが、これに限らず、4台以上のポンプを並列に接続したポンプユニットに適用しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る給水装置を、制御装置と共に示す図。
【図2】同制御装置で行なわれるローテーション運転を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0038】
1a〜1c…ポンプ、15…制御部(ローテーション制御手段,積算手段,ばらつき度判定手段,比較手段,スキップ手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のポンプを、先発したポンプが停止すると、該先発ポンプの次のポンプ号機から順にローテーションさせて、給水運転を行なう給水装置のポンプ運転制御方法において、
前記各ポンプ号機の運転時間をそれぞれ積算し、当該各ポンプ号機の積算運転時間のばらつき度を求め、得られた各ポンプ号機のばらつき度値が、予め設定された比較値以上のとき、次回の給水運転のローテーション時に、該当するポンプ号機をスキップさせる
ことを特徴とする給水装置のポンプ運転制御方法。
【請求項2】
前記ポンプ号機のスキップは、前記各ポンプ号機の総積算運転時間が、所定の運転時間を越えるときのみ、実行されることを特徴とする請求項1に記載の給水装置のポンプ運転制御方法
【請求項3】
前記比較値は、前記ばらつき度の平均値を下限値として、同値にばらつきを抑える重みづけが施された値であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の給水装置のポンプ運転制御方法。
【請求項4】
複数台のポンプを、先発したポンプが停止すると、該先発ポンプの次のポンプ号機から順にローテーションさせて、給水運転を行なうローテーション運転制御手段と、
前記各ポンプ号機の運転時間をそれぞれ積算する積算手段と、
前記積算した時間から各ポンプ号機の積算運転時間のばらつき度を求めるばらつき度判定手段と、
得られた各ポンプ号機のばらつき度値と予め設定された比較値とを比較する比較手段と、
各ポンプ号機のばらつき度値が比較値以上のときに次回の給水運転のローテーション時に該当するポンプ号機をスキップさせるスキップ手段と
を具備してなることを給水装置のポンプ運転制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−115822(P2008−115822A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302008(P2006−302008)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000148209)株式会社川本製作所 (161)
【Fターム(参考)】