説明

絶縁性被膜の形成方法および半導体装置の製造方法。

【課題】 化学酸化膜形成法により、厚膜の絶縁被膜形成にも応じることの可能な半導体への絶縁性被膜の形成方法並びにそれを用いた半導体装置の製造方法を実現する。
【解決手段】 酸化性溶液内に、表面に酸化シリコンを含む被膜形成用基材とシリコン又はシリコン含有固体またはシリコンを含む膜で覆われた固体とを浸漬して、前記酸化性溶液の沸点以下の温度で加熱して、前記基材上に稠密な酸化シリコン膜を形成することにより、被処理用シリコン基板1上に厚膜の酸化シリコン膜4を化学的形成法で実現して、絶縁性被膜の形成並びにそれを用いた半導体装置の製造を実用的短時間で達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性被膜の形成方法並びにそれを用いた半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体、例えばシリコン(Si)の基板の表面に絶縁膜の二酸化シリコン(SiO)等の酸化ケイ素主体の被膜を形成する技術は、Siの基板を直接高温加熱して、表面に二酸化シリコン(SiO)膜を形成する熱酸化法、シラン(SiH)等のシリコン化合物の気体からSiの酸化物を生成して堆積する化学的気相成長(堆積)法(CVD法)が広く知られており、とりわけ、液晶用ガラス基板上での多結晶あるいは非晶質シリコンの薄膜にMOSトランジスタ等の機能素子を形成する際の絶縁膜(例えばゲート絶縁膜)の形成には、数百℃の比較的低温で被膜形成の可能なCVD法による酸化ケイ素主体の被膜形成技術が用いられている。
【0003】
一方、本発明者は、シリコン(Si)の基板を酸化性溶液に浸漬して、同基板の表面に化学的酸化膜を直接形成する,化学酸化膜形成法を既に提案しており、この場合、シリコン(Si)の基板を40重量%またはそれ以上の高濃度硝酸、とりわけ濃度68重量%の共沸硝酸に浸漬して、最大でもその沸点温度(公称値121.7℃)程度の低温で、同基板の表面に高性能なSiO等の酸化ケイ素主体の被膜を直接形成している(特許文献
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−311302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の化学的気相成長(堆積)法(CVD法)では、シラン等のシリコン化合物を数百℃の気相から分解生成した微細粒子状SiOを多結晶シリコンあるいは非晶質シリコンの薄膜上に堆積形成する際の被膜密度並びに膜厚制御が重要で、MOSFET等のゲート絶縁膜に用いるには、表面の平滑性、ピンホールやパーティクルの排除など、膜質の一層の高性能化に課題がある。
【0006】
一方、酸化シリコン膜の化学的形成法、例えば、40重量%またはそれ以上の高濃度硝酸にシリコンの基板を浸漬して、同基板の表面を直接酸化して、同基板の表面に高性能な二酸化シリコン主体の被膜を形成する場合、十数ナノメートル(nm)あるいはそれを超える厚膜の被膜形成には長時間の工程を要し、その実用化には幾多の課題が想定される。
【0007】
本発明の目的は、上述の酸化シリコン膜の化学的形成法に改良を加えるもので、厚い絶縁被膜の形成に対応可能な絶縁性被膜の形成方法並びにそれを用いた半導体装置の製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の絶縁性被膜の形成方法は、沸点以下の温度の酸化性溶液内に、酸化シリコン膜形成用基材とシリコン又はシリコン含有固体もしくはシリコンを含む膜で覆われた固体とを浸漬して、前記基材上に稠密な酸化シリコン膜を形成することにあり、これにより所望膜厚の絶縁被膜形成を実現することができる。
【0009】
本発明の絶縁性被膜の形成方法は、酸化性溶液又は酸化ケイ素源を含む酸化性溶液内に、沸点以下の温度で、珪酸ガラス,石英ガラスもしくは石英からなる組成物,又はSOGの組成物固体もしくはシリコンの酸化物固体とともに半導体基材を浸漬して、前記半導体基材の表面に酸化シリコン主体の絶縁性被膜を形成することにあり、これにより、所望膜厚の絶縁被膜形成を実現することができる。
【0010】
本発明の絶縁性被膜の形成方法は、酸化性溶液又は酸化ケイ素源を含む酸化性溶液内に、沸点以下の温度で、珪酸ガラス板,石英ガラス板もしくは石英板,又は表面にSOG組成物の固体もしくはシリコンの酸化物の固体を有するシリコン源基板とともに半導体基材を浸漬して、前記半導体基材の表面に酸化シリコン主体の絶縁性被膜を形成することにあり、これにより、所望膜厚の絶縁被膜形成を実現することができる。
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法は、酸化性溶液又は所定の酸化性溶液中に予め珪酸ガラス,石英ガラスもしくは石英からなる組成物又はSOGの組成物もしくはシリコンの酸化物を溶解させた処理液内に、沸点以下の温度で、半導体基材を浸漬して、前記半導体基材の表面に酸化シリコン主体の絶縁性被膜を形成する工程をそなえたことにあり、これにより、所望膜厚の絶縁被膜を有した半導体装置を実現することができる。
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法は、酸化性溶液又は酸化ケイ素源を含む酸化性溶液内に、沸点以下の温度で、珪酸ガラス板,石英ガラス板もしくは石英板,又はSOG組成物もしくはシリコンの酸化物を含む基板とともに被処理半導体基材を浸漬して、前記半導体基材の表面に酸化シリコン主体の絶縁性被膜を形成する工程をそなえたことにあり、これにより、所望膜厚の絶縁被膜を有した半導体装置を実現する。
【0013】
本発明の半導体装置の製造方法は、酸化性溶液又は酸化ケイ素源を含む酸化性溶液内に、沸点以下の温度で、珪酸ガラス板,石英ガラス板もしくは石英板,又はSOG組成物もしくはシリコンの酸化物を含む基板とともに被処理半導体基材を浸漬して、前記半導体基材の表面に酸化シリコン主体の絶縁性被膜を形成する工程をそなえたことにあり、これにより、所望膜厚の絶縁被膜を有した半導体装置を実現することができる。
【0014】
本発明において、前記酸化性溶液は、硝酸、過塩素酸、硫酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、アンモニア水と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と硝酸との混合溶液、王水、硝酸とケイフッ化水素酸との混合溶液および沸騰水の群から選ばれた少なくとも1つが利用される。
【0015】
また、本発明において、前記半導体基材には、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、炭化珪素、II‐VI族化合物又はIII‐V族化合物のいずれかの単体もしくは複合物が用いられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、沸点以下の温度の酸化性溶液内に、酸化シリコン膜形成用基材とシリコン又はシリコン含有固体もしくはシリコンを含む膜で覆われた固体とを浸漬して、前記基材上に稠密な酸化シリコン膜を厚膜で実用的短時間、かつ高スループットで実現できる。
【0017】
本発明によると、酸化ケイ素源を含む酸化性溶液、又は所定の酸化性溶液内に、珪酸ガラス,石英ガラスもしくは石英からなる組成物又はSOG組成物又はシリコンの酸化物とともに半導体基材を浸漬して、厚膜で絶縁性被膜の形成を実用的短時間、かつ高スループットで実現できる。
【0018】
本発明によると、酸化性溶液又は所定の酸化性溶液中に予め珪酸ガラス,石英ガラスもしくは石英からなる組成物又はSOGの組成物もしくはシリコンの酸化物を溶解させた処理液内に、沸点以下の温度で、半導体基材を浸漬して、前記半導体基材の表面に酸化シリコン主体の絶縁性被膜を形成する工程をそなえたことにより、前記半導体基材の表面に所望膜厚の絶縁性被膜を持つ半導体装置を実用的短時間に、かつ高スループットで実現できる。
【0019】
また、本発明によると、酸化性溶液又は酸化ケイ素源を含む酸化性溶液内に、沸点以下の温度で、珪酸ガラス板,石英ガラス板もしくは石英板,又はSOG組成物もしくはシリコンの酸化物を含む基板とともに被処理半導体基材を浸漬して、前記半導体基材の表面に酸化シリコン主体の絶縁性被膜を形成する工程をそなえたことにより、所望膜厚の絶縁性被膜を有した半導体装置を実用的短時間、かつ高スループットで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明実施例1で用いた製造装置の概略構成断面図である。
【図2】本発明実施例1のMOS構造による電圧−電流特性図である。
【図3】本発明実施例1のMOS構造による電気容量−電圧特性図である。
【図4】本発明実施例1のMOS構造のPMA処理後の電圧−電流特性図である。
【図5】本発明実施例1のMOS構造のPMA処理後の電気容量−電圧特性図である。
【図6】本発明実施例1のMOS構造のSiO/Si構造のTEM像断面図である。
【図7】本発明実施例2における酸化処理の時間と生成膜の厚さとの関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、本発明を、実施の形態である実施例装置により、図面を参照して詳細に述べる。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態として、シリコン(Si)基板上に二酸化シリコン(SiO)膜を形成する方法で使用した製造装置の主要部の概略断面図であり、この製造装置を使用して、第1段階で、被処理用シリコン基板1を配置する処理槽2内に、酸化ケイ素源を含む第1溶液と高濃度の酸化性第2溶液との混合液3を調製して加え、第2段階で、この混合液3に被処理用シリコン基板1を投入して接触させて、前記被処理用シリコン基板1の表面に二酸化シリコン膜主体の厚い化学酸化膜4を成長させる。
【0023】
上記混合液3の調製に当たっては、図1には示さないが、高濃度の酸化性溶液中に被処理用シリコン基板1とともに例えばSOG形成のSi基板を同時に処理槽2内に配置して、SOG組成物あるいはシリコン酸化物源を溶液中に溶解させて処理液として用いることができる。
【0024】
実施の処理過程を詳しく述べると、通常の手法で形成されたSOGを高濃度の硝酸に溶解して混合液3として調製した,濃度70重量%の硝酸(HNO主体の水溶液)を用いて、この混合液3をフッ素系樹脂製の処理槽2内で約120℃に加熱して、これに被処理用シリコン基板1を投入した状態で10時間浸漬による酸化処理を続けて、前記被処理用シリコン基板1の表面に二酸化シリコン(SiO)主体の厚い化学酸化膜4を成長させた。化学酸化膜4の厚みは、エリプソメトリーでの判定により、2.6nmであることがわかった。
【0025】
前記シリコン基板1の表面での化学酸化膜4の成長は、成長膜厚が時間経過に対応して概ね直線的に増加することが認められた。溶液中での酸化種によるシリコン基板1の表面の酸化作用と上記添加溶液からの液相析出作用とが相互に進行し、したかって、この技術を用いて、工業的に十分実施可能な工程の実現及びその工程管理により、二酸化シリコン(SiO)主体で、厚さ十数nmの化学酸化膜を安定に形成できることがわかった。
【0026】
なお、本実施形態では、濃度70重量%の高濃度硝酸(水溶液)にSOGを溶解した混合液3を用いた例で述べたが、高濃度硝酸に代わる溶液として、過塩素酸、硫酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、アンモニア水と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と硝酸との混合溶液、硝酸とケイフッ化水素酸との混合溶液、王水および沸騰水の群から選ばれた少なくとも1つの水溶液で、好ましくは沸点以下の温度に加熱されたその水溶液を用いることが可能である。
【0027】
本発明の実施例で使用の半導体面への酸化膜形成装置を用いて、被処理用シリコン基板1を,処理槽2内の酸化ケイ素源含有溶液と高濃度の酸化性溶液との混合溶液(以下、混合液)3に接触させて、前記シリコン基板1の表面に二酸化シリコン主体の厚い酸化シリコン膜4を成長形成できるようにすればよいが、このとき、上記混合液3は、予め,石英または珪酸ガラスを濃度40〜60重量%の硝酸に溶解した酸化ケイ素源含有の第1溶液と濃度70重量%以上の高純度硝酸の第2溶液との混合で調製しておき、この混合溶液に被処理用シリコン基板1を浸漬した状態で加熱、好ましくは沸点以下の温度に加熱して、硝酸濃度が概ね68重量%の共沸状態に維持されるようにするのが好ましい。
【0028】
経験によると、珪酸ガラス,石英ガラスもしくは石英等の酸化ケイ素源を濃度40〜60重量%の硝酸に浸漬しておくと、硝酸中に珪酸ガラス,石英ガラスもしくは石英等の酸化ケイ素源が溶解する度合いが最も高く、一方、被処理用シリコン基板1の表面に化学酸化膜の形成される条件は、硝酸濃度68重量%に維持される場合の,いわゆる共沸状態において最も安定である。このことから、上記混合液3は、予め,珪酸ガラス,石英ガラスもしくは石英等の酸化ケイ素源を濃度40〜60重量%の硝酸に溶解した酸化ケイ素源含有の溶液を調合しておき、これに被処理用シリコン基板1を浸漬した状態で沸点以下の温度に加熱継続して、硝酸濃度が68%の共沸状態に維持されるように工程を管理するのが酸化シリコン膜形成に好適である。
【0029】
実際においても、RCA洗浄液で洗浄を施した単結晶シリコンウェーハを被処理用シリコン基板1として、これを珪酸ガラス,石英ガラスもしくは石英等の酸化ケイ素源と並べて同時に,濃度40〜60重量%の硝酸に浸漬した状態で沸点以下の温度に加熱継続して、硝酸濃度が68重量%の共沸状態になった時点からこの共沸状態を10時間程度維持して、上記被処理用シリコン基板1の表面に約12nmの均一厚さのSiO被膜の形成を行うことは経験的に可能であった。
【0030】
上記混合液3は、予め,適度な濃度の硝酸に石英または珪酸ガラス、あるいは高純度の酸化ケイ素を溶解して調製した酸化ケイ素源含有の第1溶液と濃度68重量%以上の高純度硝酸の第2溶液との混合溶液で準備調製しておき、この混合溶液に被処理用シリコン基板1を浸漬した状態で加熱して、硝酸濃度が概ね共沸濃度の68重量%に到るように維持する工程で管理するのが適当である。
【0031】
次に、本発明の第1の実施形態で得た,前記被処理用シリコン基板1の表面に二酸化シリコン(SiO)主体の厚さ約2.6nmの化学酸化膜4上にAl電極を形成した,Al/SiO2/Si三層でなる,いわゆるMOS構造で、その電気特性をみると、図2が、MOS構造ダイオードによる電圧(V)−電流(I)特性図、図3が電気容量(C)−電圧(V)特性図である。
【0032】
そして、さらに、Al電極形成後水素5%の窒素雰囲気中360℃で20分加熱処理(以下、PMA処理と言う)して作成したAl/SiO2/Si三層でなる,いわゆるMOS構造での電気特性をみると、図4のMOS構造ダイオードによる電圧(V)−電流(I)特性図、および、図5の電気容量(C)−電圧(V)特性図で示すように、電気特性の顕著な改善が認められる,高性能特性が得られた。
【0033】
図6は、上記実施例装置における化学的形成の酸化シリコン膜(SiO)とシリコン(Si)との界面SiO/Si構造の透過型電子顕微鏡(TEM)による像断面図である。このTEM像では、左端側から順にシリコン(Si)1、化学的に形成された酸化シリコン膜(SiO)4およびAl膜5の電極の各構成を示している。このTEM像からも酸化シリコン膜(SiO)4の均一性が確認される。
【0034】
また、本実施例では、溶液が硝酸に限らず、硝酸に代わる主体溶液として、過塩素酸、硫酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、アンモニア水と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と硝酸との混合溶液、硝酸とケイフッ化水素酸との混合溶液、王水および沸騰水の群から選ばれる少なくとも1つの水溶液を用いることもできる。
【実施例2】
【0035】
本発明の第2の実施形態として、図1には示さないが、高濃度の酸化性溶液中に被処理用シリコン基板1とともに例えばSOG形成のSi基板、詳しくは、シラザンあるいはポリシラザンの塗布物から生成した固体の被膜を有するSi基板を同時に処理槽2内に配置して用いることができる。シラザンあるいはポリシラザンは、シリコンや窒素などからできている有機性シラザン化合物を有機溶媒に溶かして基板、たとえばSi基板やガラス基板上にスピンコーティングで塗布、乾燥させて、200℃以下の常圧下、オゾン等の反応で分解し、SiOなどのシリコンの酸化物に転化することのできる素材で、SOGに利用されている。本実施例では、シラザンあるいはポリシラザンの塗布物から生成した固体の被膜をシリコン源として利用する。なお、上記シリコン源としては、上記シラザンあるいはポリシザランを所定基板上に塗布して乾燥させた被膜、すなわち、SiOなどのシリコンの酸化物に転化する前の被膜を用いることが可能であった。
【0036】
実施の処理過程を詳しく述べると、被処理用シリコン基板1とともに、通常の手法で形成されたSOG、例えば、シラザンあるいはポリシラザン素材のスピンコートによる塗布物から生成した固体の被膜を有するSi基板を同時に濃度70重量%の硝酸(HNO主体の水溶液)に浸漬して、フッ素系樹脂製の処理槽2内で約120℃に加熱した状態で10時間浸漬を続けて、前記被処理用シリコン基板1の表面に二酸化シリコン(SiO)主体の厚い酸化シリコン膜4を成長させた。酸化シリコン膜4の厚みは、図7に示したように、経時とともに増加し、6時間の浸漬処理で約9nmであることがわかった。
【0037】
本実施例で使用のSOG生成の固体を有するSi基板に代えて、その基板を珪酸ガラス,石英ガラスもしくは石英を含む組成物の固体、セラミック、さらには耐酸性のフィルムを選択して用いることができる。
【0038】
例えば、濃度70重量%の硝酸(HNO主体の水溶液)に、シラザンあるいはポリシラザンを塗布して乾燥して形成した被膜(SOG)を有するシリコン板と、これに対面させてシリコン基板を設置し、沸点近傍まで加熱し、沸騰寸前の状態を維持して、酸化性溶液を緩やかに蒸発させる。
【0039】
また、酸化性溶液に、ポーラスシリカを塗布して形成した被膜(SOG膜)を有するシリコン板(または石英ガラス)と、これに対面させて試料のシリコン基板を設置し、沸点近傍まで加熱し、沸騰寸前の状態を維持して、酸化性溶液を緩やかに蒸発させる。
【0040】
さらに、酸化性溶液に、硼素と燐を各3%含むCVD膜を形成したシリコン板または石英ガラスと、これに対面させて試料のシリコン基板を設置し、沸点近傍まで加熱し、沸騰寸前の状態を維持して、酸化性溶液を緩やかに蒸発させる。
【0041】
共沸硝酸に、シラザンあるいはポリシラザンを塗布したシリコン板または石英ガラスと、これに対面させて試料のシリコン基板を設置し、沸点近傍まで加熱し、沸騰寸前の状態を維持して、酸化性溶液を緩やかに蒸発させる。
【0042】
酸化性溶液に、シラザンあるいはポリシラザンを塗布したシリコン板または石英ガラスと、これに対面させて試料の炭化珪素基板を設置し、沸点近傍まで加熱し、沸騰寸前の状態を維持して、酸化性溶液を緩やかに蒸発させる。
【0043】
石英またはパイレックス(登録商標)容器の内壁にシラザンあるいはポリシラザンを塗布した固体の被膜を形成した後、この容器に酸化性溶液と試料のシリコン基板を投入して沸点近傍まで加熱し、前述と同様に酸化性溶液を緩やかに蒸発させる。
【0044】
フッ素系樹脂製容器内で、裏面にシラザンあるいはポリシラザンを塗布して形成した固体の被膜を有するTFT用ガラス基板を、酸化性溶液の中に投入して沸点近傍まで加熱し、前述と同様に酸化性溶液を緩やかに蒸発させることにより薄膜トランジスタ用多結晶Si膜上に稠密な酸化シリコン膜を形成する。
【0045】
反応過程に関していえば、酸化性溶液を加熱することにより、試料のシリコン基板等の表面に稠密な酸化シリコン膜が薄く形成されると同時に、シリコンを含む素材(または被膜)から酸化性溶液中にシリコンが珪酸として溶解する。さらに加熱を続けることにより、溶液あるいは溶液の水分が減少して、溶解した珪酸が過飽和状態になり、この飽和珪酸の脱水縮合反応により、該試料基板上にさらに厚い酸化シリコン膜が形成されるとみられる。
【0046】
以上に、本発明を実施例のシリコン基板を用いる半導体装置及びその製造方法により詳細に述べたが、同様の構成を持った半導体デバイス、すなわち、MOSTFT,MOS構造キャパシタ,MOS構造メモリー,さらにはこれらと同等の機能を持つ各種電子装置が対象となって、それらの装置におけるゲート絶縁膜やフィールド絶縁膜ならびにそれらの製造方法に応じて適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、シリコン基板等のシリコン主体半導体の表面に酸化ケイ素主体の厚い化学酸化膜を成長形成して利用する電子デバイスを初めとして、かかる酸化ケイ素主体の厚い化学酸化膜の絶縁体ないしは誘電体としての機能を持たせて利用する種々の電子装置において、装置、その装置の製造方法、さらにはその製造方法で用いる酸化性薬液としても適用することができる概念である。
【符号の説明】
【0048】
1 被処理用シリコン基板
2 処理槽
3 酸化ケイ素源含有溶液と高純度硝酸との混合溶液(混合液)
4 酸化シリコン膜
5 Al膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点以下の温度の酸化性溶液内に、酸化シリコン膜形成用基材とシリコン又はシリコン含有固体もしくはシリコンを含む膜で覆われた固体とを浸漬して、前記基材上に稠密な酸化シリコン膜を形成することを特徴とする絶縁性被膜の形成方法。
【請求項2】
前記基材が単結晶シリコン,多結晶シリコン,非晶質シリコン,炭化珪素,II‐VI族化合物又はIII‐V族化合物,又はセラミックでなる請求項1に記載の絶縁性被膜の形成方法。
【請求項3】
酸化性溶液又は酸化ケイ素源を含む酸化性溶液内に、沸点以下の温度で、珪酸ガラス,石英ガラスもしくは石英からなる組成物,又はSOGの組成物固体もしくはシリコンの酸化物固体とともに半導体基材を浸漬して、前記半導体基材の表面に酸化シリコン主体の絶縁性被膜を形成することを特徴とする絶縁性被膜の形成方法。
【請求項4】
酸化性溶液又は酸化ケイ素源を含む酸化性溶液内に、沸点以下の温度で、珪酸ガラス板,石英ガラス板もしくは石英板,又は表面にSOG組成物の固体もしくはシリコンの酸化物の固体を有するシリコン源基板とともに半導体基材を浸漬して、前記半導体基材の表面に酸化シリコン主体の絶縁性被膜を形成することを特徴とする絶縁性被膜の形成方法。
【請求項5】
前記酸化性溶液が硝酸、過塩素酸、硫酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、アンモニア水と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と硝酸との混合溶液、王水、硝酸とケイフッ化水素酸との混合溶液および沸騰水の群から選ばれた少なくとも1つからなる請求項1〜4のいずれか1つに記載の絶縁性被膜の形成方法。
【請求項6】
酸化性溶液又は所定の酸化性溶液中に予め珪酸ガラス,石英ガラスもしくは石英からなる組成物又はSOGの組成物もしくはシリコンの酸化物を溶解させた処理液内に、沸点以下の温度で、半導体基材を浸漬して、前記半導体基材の表面に酸化シリコン主体の絶縁性被膜を形成する工程をそなえた半導体装置の製造方法。
【請求項7】
酸化性溶液又は所定の酸化性溶液に珪酸ガラス,石英ガラスもしくは石英からなる組成物、又はSOGの組成物もしくはシリコンの酸化物を溶解させた処理液内に、沸点以下の温度で、半導体基材を浸漬して、前記半導体基材の表面に酸化シリコン主体の絶縁性被膜を形成する工程をそなえた半導体装置の製造方法。
【請求項8】
酸化性溶液又は酸化ケイ素源を含む酸化性溶液内に、沸点以下の温度で、珪酸ガラス板,石英ガラス板もしくは石英板,又はSOG組成物もしくはシリコンの酸化物を含む基板とともに被処理半導体基材を浸漬して、前記半導体基材の表面に酸化シリコン主体の絶縁性被膜を形成する工程をそなえた半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記酸化性溶液が硝酸、過塩素酸、硫酸、オゾン溶解水、過酸化水素水、塩酸と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と過酸化水素水との混合溶液、アンモニア水と過酸化水素水との混合溶液、硫酸と硝酸との混合溶液、王水、硝酸とケイフッ化水素酸との混合溶液および沸騰水の群から選ばれた少なくとも1つからなる請求項6〜8のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
酸化ケイ素源を含む酸化性溶液、又は酸化性溶液中に珪酸ガラス,石英ガラスもしくは石英からなる組成物,又はSOGの組成物もしくはシリコンの酸化物を溶解して含む処理液の中に、半導体基材を浸漬して、前記半導体基材の表面に絶縁性被膜を形成することを特徴とする絶縁性被膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−87458(P2010−87458A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25764(P2009−25764)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(594056384)
【Fターム(参考)】