説明

緩衝装置及び金属製カバー

【課題】振動緩衝作用が向上される緩衝装置を提供し、遮音性能が向上される金属製カバーを提供する。
【解決手段】緩衝装置21は、取付用ボス10に取り付けられるボルト7が挿通する挿通穴を有し、ボルト7を外囲する略環状の緩衝材40と、ヒートインシュレータ3を保持する第1保持部43と、緩衝材40を保持する第2保持部44と、第1保持部43と第2保持部44とを連結する連結部45とを備え、第2保持部44、連結部45及び第1保持部43が、取付用ボス10側からこの順序で設けられているグロメット41と、緩衝材40を軸線方向両側からそれぞれ隙間を有して挟む一対のフランジ部28、4を相互に連結し、緩衝材40との間に半径方向に隙間を有する連結部27とを備えるカラー部材22とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例として、カバー類やハウジングなどを、振動や熱を発生する部材に装着するために用いられる緩衝装置、及びそのような緩衝装置を用いて、例として内燃機関のエキゾーストマニホールドに取付けられ得る金属製カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、このような金属製エキゾーストマニホールドカバーやハウジングの一例であるヒートインシュレータが用いられている。このようなヒートインシュレータは、例として、自動車のエンジンに装着されているエキゾーストマニホールド付近を覆い、エキゾーストマニホールドからの熱や騒音がエンジン周辺へ伝播することを抑制するようにしている。このようなヒートインシュレータは、ボルトなどのネジ部材によってエキゾーストマニホールドに取付けられている。
【0003】
図2は本従来技術の基礎となる構成を示す自動車などの車両のエンジン1の正面図であり、図40は従来技術の断面図である。以下、図2及び図40を併せて参照して、従来技術について説明する。エキゾーストマニホールド2が、燃焼排ガスを排出するために、エンジン1の側面に取付けられている。エキゾーストマニホールド2に、このエキゾーストマニホールド2を覆ってヒートインシュレータ3が取付けられている。
【0004】
ヒートインシュレータ3は、エキゾーストマニホールド2の内部を脈動する燃焼排ガスが通過することによりエキゾーストマニホールド2から発生する熱や騒音がエンジン1周辺へ伝播することを抑制するために装着されている。このため、ヒートインシュレータ3は、図40に示されるように、それぞれ金属板からなるインナー4とアウター5によって、断熱性を有する制振材6が挟まれた構成を有している。この制振材6として、無機繊維質或いは無機多孔質の材料が用いられる。
【0005】
このようなヒートインシュレータ3をエキゾーストマニホールド2に取付けるための構造は、図40を参照して、以下のように説明される。即ち、ヒートインシュレータ3には、ボルト7を挿通するための挿通穴8が設けられ、円板状のワッシャ9が配置される。前記ボルト7が、ワッシャ9とヒートインシュレータ3に通され、エキゾーストマニホールド2の取り付け用ボス10にねじ付けられる。これにより、エキゾーストマニホールド2にヒートインシュレータ3が取り付けられる。
【0006】
上述した従来技術のヒートインシュレータ3の一例として、下記特許文献1に開示されているエキゾーストマニホールドインシュレータが知られている。特許文献1のエキゾーストマニホールドインシュレータは、2枚の鋼板の重ね合わせから構成されている。
【0007】
このような構成のエキゾーストマニホールドインシュレータは重量が重く、エキゾーストマニホールドからボルトなどを介して伝達される振動によるエキゾーストマニホールドインシュレータの振動の運動量が大きくなる。これにより、エキゾーストマニホールドインシュレータのボルトなどへの取付け部位にクラックが生じやすくなり、耐久性が低いという問題が発生する。
【0008】
また、このようなエキゾーストマニホールドインシュレータにおいて、遮音性能を向上しようとする場合、板厚を大きくしてエキゾーストマニホールドインシュレータにおける騒音の透過の程度を抑制することが考えられるが、この場合、前述したように重量が増大することになる。従って、このような従来技術で遮音性能を向上することが困難であるという問題点がある。
【0009】
また、上記従来技術は、更に、以下のような問題点を有している。即ち、ヒートインシュレータ3が、図40に示されるように、エキゾーストマニホールド2に取付けられる場合、エキゾーストマニホールド2から発生してボルト7を伝達する振動に関して、図40に矢符A3で示されるような、ボルト7の軸線と交差する方向への振動成分は吸収されることが困難であり、このような振動成分の伝播により、ヒートインシュレータ3が共振を発生したり、ヒートインシュレータ3のボルト7の取付部位周辺に金属疲労を生じる。これにより、騒音の増大や、ヒートインシュレータ3におけるクラックの発生などの問題点が生じ、ヒートインシュレータ3の品質に問題が生じる。
【0010】
また、エキゾーストマニホールド2から発生する熱に関して、エキゾーストマニホールド2からヒートインシュレータ3への輻射熱以外に、ボルト7を介してヒートインシュレータ3に熱が伝達される。
【0011】
図40に示されるヒートインシュレータ3において、ボルト7がワッシャ9に直接接触し、ワッシャ9はヒートインシュレータ3に直接接触しているので、エキゾーストマニホールド2からの熱がヒートインシュレータ3に伝わりやすい。これにより、ヒートインシュレータ3の温度が上昇し輻射熱が増大して、例としてボンネット内のエンジン1の周辺の補器類やダクト類、ハーネス類に熱による損傷を与えやすくなり、ヒートインシュレータとしての品質に問題を生じる。
【0012】
このような問題点を解決しようとする技術の一つとして、図41に示す技術が考えられる。図41は、ヒートインシュレータ3をエキゾーストマニホールドなどに取り付けるために用いられる緩衝装置11を示す断面図である。以下、緩衝装置11の構成について説明する。
【0013】
ヒートインシュレータ3の挿通穴8にカラー12が装着されている。カラー12は、筒状の連結部13と、連結部13の両端にそれぞれ一体に形成され、半径方向外方に広がる一対のフランジ部14、15とを含んでいる。フランジ部14、15の相互の距離はヒートインシュレータ3の厚さよりも大きく形成され、各フランジ部14、15とヒートインシュレータ3との間に、例としてステンレス鋼繊維などからなるフェルト状体やステンレス鋼のエキスパンドメタルなどからなる制振シート16、17がそれぞれ装着される。
【0014】
即ち、カラー12のフランジ部14、15は、ヒートインシュレータ3を挟んだ一対の制振シート16、17を挟み保持している。ボルト7は、カラー12に通されてエキゾーストマニホールド2の取り付け用ボスなどにネジ付けられる。これにより、ヒートインシュレータ3はエキゾーストマニホールド2に緩衝装置11を介して取り付けられる。
【0015】
この技術では、ボルト7からカラー12に伝わった振動は制振シート16、17に伝達され、制振シート16、17のボルト7の軸線方向に沿う圧縮・復元作用によって吸収される。これにより、この技術では、ボルト7からヒートインシュレータ3に伝達される振動が抑制される。
【0016】
一方、このような図41に示す技術において、制振シート16、17の経年変化や自重などにより、制振シート16、17がへたってくる。これにより、制振シート16、17の圧縮・復元特性が低下し、振動の抑制作用が低下するという問題点が想定される。また、制振シート16、17は前記無機繊維やエキスパンドメタルなどから形成されるため、時間経過と共に繊維が分解して飛散するという問題点が想定される。これらの点で、図41に示される技術は、振動緩衝作用に関する品質が低いという問題点が考えられる。
【0017】
更に、このような問題点を解消しようとする更に他の従来技術として、例えば下記特許文献2に示される緩衝装置が知られている。図42は特許文献2に開示されている緩衝装置11bの断面図である。以下、図42を参照して、この従来技術の緩衝装置11bについて説明する。既に説明済みの部分と対応する部分には同一の参照符号を付し、新たな説明を省略する。
【0018】
緩衝装置11bは、ボルト7を外囲して設けられるステンレス鋼などから形成される略環状の緩衝材18と、アルミニウム合金から形成され、断面が略S字状の結合用部品であるグロメット20とを備えている。グロメット20は、エキゾーストマニホールド2の取り付け用ボス10などにネジ付けられるボルト7が挿通する挿通穴19を有している。
【0019】
グロメット20は、ヒートインシュレータ3を保持するために、円環状の金属板の内周縁が外周側に折り返された形状の第1保持部20aと、緩衝材18を保持するために、円環状の金属板の外周縁が内周側に折り返された形状の第2保持部20bと、第1保持部20aと第2保持部20bとに亘って屈曲して形成され、ヒートインシュレータ3と緩衝材18とを、第1保持部20a及び第2保持部20bを介して連結する連結部20cとを備えている。また、緩衝材18の内周とボルト7との間に、亜鉛メッキ鋼板から形成されるカラー12が設けられている。カラー12と緩衝材18との間には、ボルト7の軸線方向及び半径方向に隙間が設けられている。
【0020】
このような構成を有する緩衝装置11bにおいて、エキゾーストマニホールド2から発生してボルト7を伝達する振動は、緩衝材18及びグロメット20を介してヒートインシュレータ3に伝達される。この振動は、緩衝材18とグロメット20との作用で減衰される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開平10−266850号公報(第0011段落、図1)
【特許文献2】特開2002−235800号公報(第7−8頁、第17図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかし、このような従来技術は、以下に説明する問題を有している。ボルト7が取り付けられる取り付け用ボス10は、図42に2点鎖線で示されるように、グロメット20と重なる大きさに形成されることが多いことが知られている。このような場合、グロメット20と取り付け用ボス10とが接触するので、この接触による騒音が増大する。また、この接触により、時間経過によりグロメット20の取り付け用ボス10との接触部位が摩耗し、破損に至ることが想定される。これにより、緩衝装置11bの品質に問題が生じる。
【0023】
また、カラー12、緩衝材18及びグロメット20の前記各材料の相違に基づいて、グロメット20の表面のアルミニウムと緩衝材18のステンレス鋼との間で、両者のイオン化傾向の差による電流が発生し、グロメット20及び緩衝材18に電食が発生する場合がある。これにより、グロメット20及び緩衝材18が破損する恐れがある。これによっても緩衝装置11bの品質に問題が生じる。
【0024】
本発明は、従来技術の上記エキゾーストマニホールドインシュレータや緩衝装置の有する問題点を解決しようとして成されたものであり、その目的は、摩耗による破損や電食の発生が防止され、振動緩衝作用が格段に向上される緩衝装置を提供し、遮音性能を格段に向上される金属製カバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
請求項1記載の発明の緩衝装置は、ボルトなどのネジ部品を用いて相互に連結される複数の対象部材間に配置され、振動源になる一方対象部材からの他方対象部材への振動の伝達を緩衝する緩衝装置であって、前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、前記ネジ部材を外囲して設けられる略環状の緩衝材と、前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、前記他方対象部材を保持する第1保持部と、前記緩衝材を保持する第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する連結部とを備え、前記第2保持部、連結部及び第1保持部が、前記一方部材側からこの順序で設けられている結合部材と、前記ネジ部材と前記緩衝材との間に配置され、前記緩衝材を軸線方向両側からそれぞれ隙間を有して挟む一対のフランジ部と、前記一対のフランジ部を相互に連結し、前記緩衝材との間に半径方向に隙間を有する連結部とを備えるカラー部材とを含むことを特徴としている。
【0026】
請求項2記載の発明の緩衝装置は、請求項1の発明において、前記結合部材とカラー部材との少なくともいずれか一方はアルミニウム合金から形成され、前記緩衝材は鉄合金から形成され、前記緩衝材の表面に皮膜が形成され、前記皮膜はイオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含んで構成されていることを特徴としている。
【0027】
請求項3記載の発明の緩衝装置は、ボルトなどのネジ部品を用いて相互に連結される複数の対象部材間に配置され、振動源になる一方対象部材からの他方対象部材への振動の伝達を緩衝する緩衝装置であって、前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、表面に皮膜が形成され、前記皮膜はイオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含んで構成され、前記他方対象部材を外周付近で半径方向に変位可能に挟む相互に積層された鉄合金から形成される板状の複数の緩衝材と、前記ネジ部材と前記緩衝材との間に、前記緩衝材に対して半径方向及び軸線方向に変位可能に配置され、前記複数の緩衝材を軸線方向両側からそれぞれ隙間を有して挟む一対のフランジ部と、前記一対のフランジ部を連結する連結部とを備えるカラー部材とを含むことを特徴としている。
【0028】
請求項4記載の発明の緩衝装置は、ボルトなどのネジ部品を用いて相互に連結される複数の対象部材間に配置され、振動源になる一方対象部材からの他方対象部材への振動の伝達を緩衝する緩衝装置であって、前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、表面に皮膜が形成され、前記皮膜はイオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含んで構成されている、前記他方対象部材を外周付近で半径方向に変位可能に挟み、前記外周部付近は自由振動を行う自由端とされている鉄合金から形成される相互に積層された板状の複数の緩衝材と、前記ネジ部材と前記緩衝材との間に、前記緩衝材に対して半径方向及び軸線方向に変位可能に配置され、前記複数の緩衝材を軸線方向両側から挟む一対のフランジ部と、前記一対のフランジ部を連結する連結部とを備えるカラー部材とを含むことを特徴としている。
【0029】
請求項5記載の発明の緩衝装置は、ボルトなどのネジ部品を用いて相互に連結される複数の対象部材間に配置され、振動源になる一方対象部材からの他方対象部材への振動の伝達を緩衝する緩衝装置であって、前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、表面に皮膜が形成され、前記皮膜はイオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含んで構成され、前記他方対象部材に結合される結合部と、前記他方対象部材及びネジ部材から離反した領域であって屈曲変位が許容される振動部とを備える鉄合金から形成される緩衝材を含むことを特徴としている。
【0030】
請求項6記載の発明の緩衝装置は、ボルトなどのネジ部品を用いて相互に連結される複数の対象部材間に配置され、振動源になる一方対象部材からの他方対象部材への振動の伝達を緩衝する緩衝装置であって、前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有する略円筒形の基部と、前記基部の半径方向外方に一体に連なり、半径方向外方に向かうに従い軸方向に沿う相互の距離が減少する一対の摺動面を有する摺動部とを有するスペーサと、前記スペーサの半径方向外方に配置され、半径方向外方側から半径方向内方側に向かうに従い、軸方向に相互に間隔をあけて配置される一対の挟持片を備え、前記一対の挟持片は、半径方向内方側において、前記スペーサの前記摺動部を軸線方向の相互に反対側から弾性的に挟むバネ性を有する材料からなると共に、前記スペーサとの間で少なくとも半径方向の相互変位が許容される挟持部材と、
前記挟持部材の半径方向外方側端部付近を保持する第1保持部と、前記他方対象部材を保持する第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する連結部とを備え、前記第1保持部、連結部及び第2保持部が、前記一方部材側からこの順序で設けられている結合部材とを含むことを特徴とする。
【0031】
請求項7記載の発明の緩衝装置は、請求項6の発明において、前記スペーサにおいて、摺動面は、半径方向に沿って比較的平滑なテーパ面として構成され、摺動部と基部との境界付近には軸線方向に隆起した段差部が形成され、前記挟持部材の半径方向内方側端部付近には、前記段差部と間隔をあげ、挟持部材の半径方向内方側への変位時に、前記段差部に係合可能な隆起部が形成されている場合である。
【0032】
請求項8記載の発明の緩衝装置は、請求項6の発明において、前記スペーサにおいて、摺動面は、半径方向外方に凸状の円弧面として構成されている場合である。
【0033】
請求項9記載の発明の緩衝装置は、請求項2〜8のいずれかの発明において、前記金属または金属化合物は、亜鉛または亜鉛化合物であることを特徴としている。
【0034】
請求項10記載の発明の緩衝装置は、請求項1の発明において、前記緩衝材は、少なくとも、Al:含有量6〜10重量%と残部Feとを含んで構成される制振合金体を含んで構成される場合である。
【0035】
請求項11記載の発明の金属製カバーは、相互に交差する方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成された1枚または複数枚のアルミニウム合金板を含んで構成され、立体形状をなす金属製カバーであって、前記立体形状の外周部の少なくとも一部分にフランジ部を有し、前記フランジ部を含む押し潰し対象部位の前記コルゲート形状が潰されて略平板形状に形成され、前記相互に交差するいずれか一方の方向が前記立体形状を構成する主要な稜線相当部位に対して交差する方向に定められていることを特徴としている。
【0036】
請求項12記載の発明の金属製カバーは、請求項11の発明において、内燃機関及び/またはその排気経路に、下記構成要素(a)、(b)及び(c)を含む緩衝装置を介して装着されることを特徴とする。
【0037】
(a)ボルトなどのネジ部品を用いて相互に連結される複数の対象部材間に配置され、振動源になる一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、前記ネジ部材を外囲して設けられる鉄合金から形成される略環状の緩衝材と、(b)前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、前記他方対象部材を保持する第1保持部と、前記緩衝材を保持する第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する連結部とを備え、前記第2保持部、連結部及び第1保持部が、前記一方部材側からこの順序で設けられている結合部材と、(c)前記ネジ部材と前記緩衝材との間に配置され、前記緩衝材を軸線方向両側からそれぞれ隙間を有して挟む一対のフランジ部と、前記一対のフランジ部を相互に連結し、前記緩衝材との間に半径方向に隙間を有する連結部とを備えるカラー部材。
【0038】
請求項13記載の発明の金属製カバーは、請求項12の発明において、前記結合部材はアルミニウム合金から形成され、前記緩衝材は鉄合金から形成され、前記緩衝材の表面に皮膜が形成され、前記皮膜はイオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含んで構成されていることを特徴とする。
【0039】
請求項14記載の発明の金属製カバーは、請求項13の発明において、前記金属または金属化合物は、亜鉛または亜鉛化合物であることを特徴とする。
【0040】
請求項15記載の発明は、請求項12の発明において、前記緩衝材は、少なくとも、Al:含有量6〜10重量%と残部Feとを含んで構成される制振合金体を含んで構成される場合である。
【発明の効果】
【0041】
請求項1記載の発明によれば、一方対象部材からの振動は、ねじ部材、カラー部材、緩衝材および結合部材を経て他方対象部材に伝達される。また、結合部材の第2保持部、連結部及び第1保持部は、振動源になる一方部材側からこの順序で設けられている。即ち、第1保持部は、緩衝材に関して前記一方対象部材と反対側に位置している。
【0042】
従って、一方対象部材のネジ部材に関する取付け部位が、前記結合部材と重複する半径方向の大きさを有する場合でも、一方対象部材の取付け部位が、結合部材やこの結合部材に保持されている他方対象部材と接触する事態が防止される。これにより、上記接触による騒音の増大が抑制される。
【0043】
また、前記取付け部位と結合部材や他方対象部材との接触を想定した場合、この接触により、結合部材の前記取付け部位との接触部位が摩耗し、破損に至ることが想定される。本発明では、このような破損の発生を防止している。これにより、緩衝装置の品質が格段に向上されている。
【0044】
請求項2記載の発明によれば、前記緩衝材の表面に、イオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含んで構成される皮膜が形成されている。また、結合部材とカラー部材との少なくともいずれか一方はアルミニウム合金から形成されている。従って、本発明において、請求項1に関する作用効果に加え、緩衝材と少なくともいずれか一方がアルミニウム合金から形成される結合部材及びカラー部材との間のイオン化傾向の差が低減される作用効果が実現される。これにより、結合部材及びカラー部材の少なくともいずれか一方と緩衝材とにおける電食の発生が抑制される。この点においても、緩衝装置の品質が格段に向上される。
【0045】
請求項3記載の発明によれば、板状の緩衝材は、表面にイオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含む皮膜が形成されている。従って、緩衝材が接触するカラー部材などがイオン化傾向が鉄あるいは鉄に近い金属から構成される場合でも電食の発生が防止され、緩衝装置の品質を各段に向上することができる。
【0046】
請求項4記載の発明によれば、他方対象部材を外周付近で半径方向に変位可能に挟み、その外周部付近は自由振動を行う自由端とされている鉄合金から形成される相互に積層された板状の複数の緩衝材の表面には、イオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含む皮膜が形成されている。従って、本発明においても、請求項3で説明した作用効果と同様な作用効果を実現することができる。
【0047】
請求項5記載の発明によれば、他方対象部材に結合される結合部と、前記他方対象部材及びネジ部材から離反した領域であって屈曲変位が許容される振動部とを備える鉄合金から形成される緩衝材の表面には、イオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含む皮膜が形成されている。従って、本発明においても、請求項3で説明した作用効果と同様な作用効果を実現することができる。
【0048】
請求項6記載の発明によれば、一方対象部材で発生する振動は、スペーサ、挟持部材および結合部材を介して他方対象部材に伝達される。本発明において、スペーサの半径方向外方側の摺動部は、挟持部材の一対の挟持片で弾性的に挟持されている。スペーサと挟持部材とは半径方向に相互変位が許容されている。従って、スペーサが半径方向に沿って振動すると、挟持部材とスペーサは、一対の挟持片がスペーサの摺動部に沿って半径方向に相互に変位する。これにより、スペーサの半径方向に沿う振動は、スペーサと挟持部材との半径方向の相互変位で吸収される。
【0049】
また、挟持部材は、バネ性を有している。従って、スペーサの軸線方向の振動は、挟持部材の軸線方向の振動で吸収される。
【0050】
これにより、スペーサの振動は、スペーサと挟持部材とによって吸収され、一方対象部材からの振動が他方対象部材に伝達される程度を各段に抑制することができる。
【0051】
請求項7記載の発明によれば、請求項6の作用効果において、スペーサの摺動部と基部との境界付近には軸線方向に隆起した段差部が形成され、前記挟持部材の半径方向内方側端部付近には、前記段差部と間隔をあげ、挟持部材の半径方向内方側への変位時に、前記段差部に係合可能な隆起部が形成されている。
【0052】
従って、スペーサと挟持部材との半径方向の変位が大きくなる場合、スペーサの前記段差部と挟持部材の隆起部とが係合して、スペーサと挟持部材の過大な相互変位を阻止する。これにより、スペーサと挟持部材とが激しく衝突して両者が破損するなどの不具合の発生を防止することができる。
【0053】
請求項8記載の発明によれば、請求項6の作用効果において、スペーサの摺動面は、半径方向外方に凸状の円弧面として構成されている。従って、スペーサと挟持部材とが摺動しつつ相互に変位するとき、挟持部材の一対の挟持片は、円弧面をなす前記摺動面に沿って円滑に変位する。
【0054】
これにより、スペーサと挟持部材との半径方向の変位が大きい場合でも、スペーサと挟持部材とが衝突する事態が防止され、両者の破損などの不具合の発生を防することができる。
【0055】
また、前記一対の挟持片は、円弧面をなす摺動面に沿って円滑に変位するので、スペーサと挟持部材とは、半径方向に相互変位するに止まらず、スペーサの挟持部材との接触位置付近を中心に、軸線方向にも容易に変位可能になる。
【0056】
これにより、スペーサからの振動を格段に抑制することができる。
【0057】
請求項9記載の発明によれば、請求項2〜8のいずれかにおいて、前記金属または金属化合物は、亜鉛または亜鉛化合物である。亜鉛のイオン化傾向は、鉄よりもアルミニウムに近いので、本発明においても、請求項3で説明した作用効果と同様な作用効果を実現することができる。
【0058】
請求項10記載の発明によれば、緩衝材は上記のような制振合金体を含んで構成される。このような制振合金体は、通常のエキスパンドメタルやパンチングメタルよりも制振性が各段に向上されているう。従って、本発明の緩衝装置の制振作用を格段に向上することができる。
【0059】
請求項11記載の発明によれば、金属製カバーに形成されている複数のコルゲート形状の前記第1の方向が前記主要な稜線相当部位に対して交差する方向に定められているので、コルゲート形状が前記稜線相当部位を中心とする振動に対してリブの作用を実現する。
【0060】
一方、金属製カバーが振動源に対して装着されるとき、振動源からの振動の伝達により金属製カバーも振動する。この振動により金属製カバーが振動するとき、前記主要な稜線相当部位を中心にしてその両側の金属製カバーの部位がばたつくように振動しやすいことが知られている。
【0061】
本発明では、前記リブ作用により、金属製カバーの振動を抑制することができる。従って、金属製カバーのクラックの発生を防止することができ、金属製カバーの品質を格段に向上することができる。
【0062】
また、本発明において、前記立体形状を有する金属製カバーの外周部の少なくとも一部分にフランジ部が形成されているので、金属製カバーの振動時に、このフランジ部が振動に対するリブの作用を実現する。これによっても、金属製カバーの振動特性が改善される。
【0063】
また、本発明において、金属製カバーのフランジ部を含む押し潰し対象部位の前記コルゲート形状が潰されて略平板形状に形成されているので、金属製カバーの外周部の折り曲げ作業、穴あけ作業或いは刻印作業などを行う場合、作業対象部位を平板状の金属板と同様に取り扱うことができる。従って、このような構成を有する金属製カバーの製造上の作業性が向上される。
【0064】
請求項12記載の発明によれば、請求項11の発明の金属製カバーは、内燃機関及び/またはその排気経路に緩衝装置を介して装着される。従って、本発明は、前記請求項1、8の作用効果を併せ持つ作用効果を実現することができる。
【0065】
請求項13記載の発明によれば、請求項12の発明において、前記結合部材はアルミニウム合金から形成され、前記鉄合金から形成される緩衝材は、その表面にイオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物のいずれかを含んで構成される皮膜が形成されている。
【0066】
従って、本発明において、前記請求項12の作用効果に加え、緩衝材と結合部材との間のイオン化傾向の差が低減される作用効果が実現される。これにより、結合部材及びカラー部材の少なくともいずれか一方と緩衝材とにおける電食の発生が抑制される。この点においても、緩衝装置の品質が格段に向上される。
【0067】
請求項14記載の発明によれば、請求項13の発明において、金属または金属化合物は、亜鉛または亜鉛化合物である。亜鉛のイオン化傾向は、鉄よりもアルミニウムに近いので、従って、本発明において、請求項12の前記作用効果に加え、電食の発生が防止されて金属製カバーの品質が向上されるという作用効果を実現することができる。
【0068】
請求項15記載の発明は、請求項12の発明において、前記緩衝材が上述した制振合金体を含んで構成され、このような制振合金は制振性が格段に向上されているので、このような緩衝材を含む緩衝装置を用いて内燃機関などに装着される金属製カバーは振動の抑制作用効果が格段に向上される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施例の緩衝装置21の断面図である。
【図2】本発明の基礎となる構成を示すエンジン1の正面図である。
【図3】図2の切断面線X3−X3から見た断面図である。
【図4】カバー1の拡大正面図である。
【図5】図4の切断面線X5−X5から見た断面図である。
【図6】図4の切断面線X6−X6から見た断面図である。
【図7】図4の切断面線X7−X7から見た断面図である。
【図8】図2の切断面線X8−X8から見た簡略化した断面図である。
【図9】本実施例の特徴を説明する図である。
【図10】本発明の第2実施例の緩衝装置21aの概観を示す断面図である。
【図11】本実施例の原理を示す断面図である。
【図12】本実施例の原理を示す拡大断面図である。
【図13】本実施例の効果を示すグラフである。
【図14】本発明の第3実施例の緩衝装置21bの断面図である。
【図15】本実施例の対比例の断面図である。
【図16】緩衝装置21bの特徴を示す断面図である。
【図17】緩衝装置21bのバネワッシャ23、24の平面図である。
【図18】バネワッシャ23、24の斜視図である。
【図19】緩衝装置21bに対する対比例の斜視図である。
【図20】対比例の断面図である。
【図21】緩衝装置21bの一動作例を示す断面図である。
【図22】緩衝装置21bの他の動作例を示す断面図である。
【図23】緩衝装置21bの更に他の動作例を示す断面図である。
【図24】本実施例の作用を説明するグラフである。
【図25】第1実施例の変形例を示す断面図である。
【図26】本発明の第4実施例の緩衝装置21cの断面図である。
【図27】本発明の作用を説明するグラフである。
【図28】本実施例の緩衝装置21dの断面図である。
【図29】緩衝装置21dの平面図である。
【図30】本実施例に用いられるスペーサ90の正面図である。
【図31】スペーサ90の平面図である。
【図32】本実施例に用いられる挟持部材97の断面図である。
【図33】持部材97の平面図である。
【図34】本実施例の緩衝装置21eの断面図である。
【図35】緩衝装置21eの平面図である。
【図36】本実施例に用いられるスペーサ90aの断面図である。
【図37】スペーサ90aの平面図である。
【図38】本実施例に用いられる挟持部材97aの断面図である。
【図39】挟持部材97aの平面図である。
【図40】従来技術の断面図である。
【図41】緩衝装置11を示す断面図である。
【図42】緩衝装置11bの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
一方対象部材のネジ部材に関する取付け部位が、結合部材と重複する半径方向の大きさを有する場合でも、一方対象部材の取付け部位が、結合部材やこの結合部材に保持されている他方対象部材と接触する事態が防止される。これにより、相互の接触による騒音の増大が抑制される。
【0071】
また、金属製カバーに形成されているコルゲート形状の延びる第1方向が、金属製カバーの主要な稜線相当部位に対して交差する方向に定められているので、コルゲート形状が前記稜線相当部位を中心とする振動に対してリブの作用を実現する。このリブ作用により、金属製カバーの振動を抑制することができ、金属製カバーのクラックの発生を防止することができ、金属製カバーの品質を格段に向上することができる。
【実施例】
【0072】
本発明の各実施例について以下に説明する。
【0073】
(第1実施例)
図1〜図9に本発明の第1実施例を示す。
【0074】
図1は本実施例の緩衝装置21を用いた状態の概観を示す断面図であり、図2は本発明の基礎となる構成を示すエンジン1の正面図であり、図3は図2の切断面線X3−X3から見た断面図であり、図4は本発明の一実施例の金属製エキゾーストマニホールドカバー(以下、ヒートインシュレータという)1の拡大正面図であり、図5は図4の切断面線X5−X5から見た断面図であり、図6は図4の切断面線X6−X6から見た断面図であり、図7は図4の切断面線X7−X7から見た断面図であり、図8は図2の切断面線X8−X8から見た簡略化した断面図であり、図9は本実施例の特徴を説明する図である。
【0075】
以下、図1〜図9を参照して、本実施例が説明される。なお、図2は従来技術の項で参照され説明されており、再度の説明は省略される。図2が参照される場合は前述した参照符号が援用される。また、図2において、本発明の金属製エキゾーストマニホールドカバーの一実施例のヒートインシュレータ3はエンジン1に装着されるエキゾーストマニホールド2に取付けられている。
【0076】
このとき、エンジン1、エキゾーストマニホールド2及びヒートインシュレータ3を含んで複数の対象部材が構成され、本実施例の場合ではエキゾーストマニホールド2が一方対象部材、ヒートインシュレータ3が他方対象部材を構成し、ボルト7がネジ部材を構成する。また、本実施例において、ヒートインシュレータ3は、図3に示されるように、それぞれ金属板からなるインナー4とアウター5との間に、断熱性を有する制振材6が挟まれた構成を有している。
【0077】
以下、本実施例におけるヒートインシュレータ3について説明する。本実施例のヒートインシュレータ3は、図3に示されるように、比重が2.7程度のアルミニウム合金からなる一対の金属板(例として、T&N社製NIMBUSなど)4、5と、金属板4、5に挟まれた無機繊維などからなる耐熱性制振材(以下、制振材)6とが積層されてから構成され、エキゾーストマニホールド2の外観形状に沿って立体形状に形成され、図8に示されるように、側壁T1とこの側壁T1の端部全周を連結する頂部T2とを備えている。側壁T1と頂部T2とは鈍角θをなして連なっている。本実施例において、上記金属板4、5は、アルミニウム箔或いはアルミニウム合金箔、更にはアルミニウムやその合金からなる薄板を含むものとして説明する。
【0078】
本実施例のヒートインシュレータ3に用いられる前記金属板4、5は、図4〜図7に示されるように、隆起部57と谷部58とが交互に繰り返されたコルゲート形状59が第1方向A1に沿って延び、また、第1方向A1と交差する方向、好適には直交する方向である第2方向A2に沿って他のコルゲート形状が連なった形状を有している。隆起部57は、その長手方向に沿って、図4〜図7に示されるように、第1起立部60と第2起立部61とが谷部58から立上って交互に配列されている。また、前記谷部58は、図4〜図6に示されるように平坦部62と凹部63とが交互に配列されている。
【0079】
前記第1起立部60は、図5に示されるように、谷部58から略台形状に立上る一対の側壁64、65と、側壁64、65の先端が相互に連結されて形成される比較的平坦な頂部68とを含んで構成されている。第1起立部60は内曲しており、第1起立部60の基端部よりも先端部のほうが幅広になる。
【0080】
一方、第2起立部61は、図6に示されるように、第1起立部60が概略幅方向に所定の程度押し潰されて形成され、平坦部62からそれぞれ立上る一対の側壁69、70と、側壁69、70の先端を相互に連結し、図6の下方側に凹状の凹部73とを含んで構成されている。このような各第2起立部61および凹部63は、複数のコルゲート形状59の延びる方向である前記第1方向A1と実質的に直交する方向である第2方向A2に沿ってそれぞれ断続的に連なるように形成される。
【0081】
従って、図5及び図6に示されるように、金属板4の隆起部57の内曲した内周部に、金属板5の隆起部57の突出部が嵌り込む。また、第2起立部61でも、側壁69、70は、その基端部よりも先端部が幅広であり、内曲した形状に形成されている。このような第2起立部61において、金属板4の第2起立部61の内曲した内周部に、金属板5の第2起立部61の突出部が嵌り込む。これにより、各金属板4、5は、何らの特段の固定具、締結具を用いることなく、相互に強固に固定されることができる。この相互固定は、金属板4、5の間に無機繊維などからなる前記制振材6を介在した場合でも同様に強固に行われる。これは、金属板4、5の相互結合が、両者の機械的な噛合い関係によるからである。
【0082】
ヒートインシュレータ3は、このような形状を有し、制振材6を間に挟んだ金属板4、5を、エキゾーストマニホールド2の外形形状に沿った立体形状にプレス加工することにより形成される。
【0083】
立体形状に形成されたヒートインシュレータ3の側壁T1の外周部には、前記コルゲート形状がプレス加工により押し潰されたフランジ78が形成される。このフランジ78は、図8に示されるように、ヒートインシュレータ3の内部側に折返されて折返し部79が形成される。
【0084】
この折返し部79を形成しない場合、ヒートインシュレータ3の外周部は、ブランキングされた金属板4、5の鋭利な切断端部が外部に直接露出した状態になる。従って、この折返し部79は、車両の製造工程におけるヒートインシュレータ3の車両エンジン2のエキゾーストマニホールド2への組付け工程において、ヒートインシュレータ3を持って作業する組付け作業者、或いは、製造後の車両のメンテナンスの際にヒートインシュレータ3を持つ可能性のある作業者や一般ユーザーが手指に創傷を負わないようにするものである。
【0085】
また、本実施例において、ヒートインシュレータ3の前記フランジ78、穴あけを行う部位、刻印を施す部位など、コルゲート形状を有する金属板4、5において、折返し加工、穴あけ加工及び刻印加工などを行う必要がある押し潰し対象部位は、当前記押し潰し対象部位のコルゲート形状がプレス加工などで押し潰され、略平板状に形成される。
【0086】
従って、フランジ78を含む押し潰し対象部位の前記コルゲート形状が潰されて略平板形状に形成されているので、ヒートインシュレータ3の外周部の折り曲げ加工、穴あけ加工或いは刻印加工などを行う場合、加工対象部位を平板状の金属板と同様に取り扱うことができる。
【0087】
言い替えると、これらの加工作業が行なわれる際に、コルゲート形状が残存している状態を想定すると、例としてプレス加工により前記折り返し作業が行なわれる場合、プレス加工による折り返し作業中にコルゲート形状が潰れる事態が当然に予想されるので、これらのコルゲート形状の潰れを想定したプレス用金型の設計が必要になり、折り返し作業でも多大の手間と工数を要することになる。
【0088】
これに対して、本実施例では、前記押し潰し対象部位を平板状の金属板と同等に取り扱うことができるので、ヒートインシュレータ3の製造上の作業性が各段に向上される。
【0089】
以下、図2及び図8を参照して、本実施例のヒートインシュレータ3の他の特徴について説明する。本実施例のヒートインシュレータ3は前述したようにエキゾーストマニホールド2の立体的な外観形状に沿った立体形状に形成されるので、ヒートインシュレータ3には図2及び図8に示されるように金属板4、5の屈曲部位である一つ或いは複数の稜線相当部位80が形成される。本実施例では、コルゲート形状59の長手方向である前記第1方向A1が、これら複数の稜線相当部位80のうちの主要な稜線相当部位80に交差する方向となるように、金属板4、5に対して立体形状へのプレス加工を施す。
【0090】
ここで、前記主要な稜線相当部位80とは、ヒートインシュレータ3の全体的な形状を特徴付ける比較的大きな曲率を有する折り曲げ部位が連続する部位である。即ち、ヒートインシュレータ3に形成される大小種々の折り曲げ部位のうち、ヒートインシュレータ3の外観形状を実質的に決定付ける比較的長寸に亘って延びる折り曲げ部位を指す。
【0091】
ヒートインシュレータ3がエキゾーストマニホールド2に対して装着されるとき、エキゾーストマニホールド2からの振動の伝達によりヒートインシュレータ3も振動する。この振動によりヒートインシュレータ3が振動するとき、前記主要な稜線相当部位80を中心にしてその両側のヒートインシュレータ3の部位が蝶の羽根のように大きく振動することが想定される。このような振動が発生すると、ヒートインシュレータ3の稜線相当部位80付近の部位が繰り返しの屈曲により金属疲労を生じクラックを発生しやすくなる。
【0092】
これに対して、本実施例では、ヒートインシュレータ3に形成されている複数のコルゲート形状59の第1方向A1が、前記主要な稜線相当部位80に対して交差する方向、好適には直交する方向となるように定められているので、コルゲート形状59が前記稜線相当部位80を中心とする振動に対してリブの作用を実現する。これにより、ヒートインシュレータ3の振動を抑制することができ、ヒートインシュレータ3のクラックの発生を防止することができ、ヒートインシュレータ3の品質を格段に向上することができる。
【0093】
また、前記稜線相当部位80の延びる方向に沿って発生する振動に対しては、前記第2方向A2に沿って断続的に延び、第1方向A1に沿って連なる図4〜図6に示される前記第2起立部61が、やはりリブの機能を実現して振動を抑制する。
【0094】
以下、本実施例に用いられる緩衝装置21について、図1を参照して説明する。本実施例の緩衝装置21は、ボルト7を外囲して設けられる、例としてステンレス鋼のエキスパンドメタルなどの平板状の材料から構成され、表面に例として、ダクロタイズド(商標名)処理による亜鉛皮膜が形成された略環状の緩衝材40と、アルミニウム合金から形成され、断面が略S字状の結合部材であるグロメット41を備えている。グロメット41は、エキゾーストマニホールド2のボルト用ボス10などにネジ付けられるボルト7が挿通する挿通穴42を有している。
【0095】
また、グロメット41は、ヒートインシュレータ3を保持するために、円環状の金属板の内周縁が外周側に折り返された形状の第1保持部43と、緩衝材40を保持するために、円環状の金属板の外周縁が内周側に折り返された形状の第2保持部44と、第1保持部43と第2保持部44とに亘って屈曲して形成され、ヒートインシュレータ3と緩衝材40とを、1保持部43及び第2保持部44を介して、ボルト7の軸線方向及び半径方向へ変位自在に弾性的に連結する連結部45とを備えている。
【0096】
本実施例において、連結部45は第1保持部43の屈曲部位から第2保持部44の屈曲部位とに亘る部位である。これら第2保持部44、連結部45及び第1保持部43は、エキゾーストマニホールド2側からこの順序で設けられている。
【0097】
また、緩衝材40の内周とボルト7との間には、亜鉛メッキ鋼板から形成されるカラー部材22が設けられている。カラー部材22は、筒部27と、筒部27の軸線方向両端に一体にそれぞれ形成されたフランジ部28、31とを含んで構成される。カラー部材22と緩衝材40とは、両者の間に、ボルト7の軸線方向及び半径方向に沿う隙間37が形成されるように形成され、配置される。
【0098】
以下、緩衝装置21の作用効果について説明する。緩衝装置21において、エキゾーストマニホールド2から発生してボルト7を伝達する振動は、カラー部材22、緩衝材40及びグロメット41を介してヒートインシュレータ3に伝達される。このとき、カラー部材22と緩衝材40との間に、ボルト7の軸線方向及び半径方向に沿う隙間37が形成されている。
【0099】
従って、ボルト7からカラー部材22に伝達された振動は、隙間37によってカラー部材22へ伝達される程度が大幅に抑制される。これにより、緩衝装置21の振動に対する緩衝作用が格段に向上され、ヒートインシュレータ3の振動抑制機能を格段に向上することができる。
【0100】
また、緩衝材40は、エキスパンドメタルなどの平板状の材料から構成されるので、容易にボルト7の軸線方向に湾曲運動することができる。従って、カラー部材22から緩衝材40に伝達された振動は、緩衝材40の上記湾曲運動に変換されて吸収される。この点でも、緩衝装置21の緩衝作用が向上され、ヒートインシュレータ3の制振機能が向上される。
【0101】
また、本実施例において、グロメット41の前記第2保持部43、連結部45及び第1保持部44は、エキゾーストマニホールド2側からこの順序で設けられている。即ち、第1保持部44は、緩衝材40に関して前記エキゾーストマニホールド2と反対側に位置している。
【0102】
従って、エキゾーストマニホールド2の取り付け用ボス10が、カラー部材22と重複する半径方向の大きさを有する場合でも、前記取り付け用ボス10が、グロメット41やこのグロメット41に保持されているヒートインシュレータ3と接触する事態が防止される。これにより、上記接触による騒音の増大が抑制される。
【0103】
また、前記取り付け用ボス10とグロメット41やヒートインシュレータ3との接触を想定した場合、この接触により、グロメット41の前記取り付け用ボス10との接触部位が摩耗し、破損に至ることが想定される。本実施例では、このような破損の発生を防止している。これにより、緩衝装置21の品質が格段に向上されている。
【0104】
また、本実施例によれば、前記緩衝材40の表面に、イオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い亜鉛皮膜が形成されている。カラー部材22は、亜鉛メッキ鋼板から形成され、グロメット41はアルミニウム合金から形成されている。従って、本実施例において、緩衝材40とグロメット41との間のイオン化傾向の差が低減される作用が実現される。これにより、グロメット41と緩衝材40とにおける電食の発生が抑制される。この点においても、緩衝装置21の品質が格段に向上される。
【0105】
(第1実施例の変形例)
本実施例の変形例として、図25に示されるように、グロメット41の第1保持部43を前述のように折り返さず、ヒートインシュレータ3の内周端に当接して固定するようにしてもよい。このような変形例においても、上記実施例の作用効果と同様な作用効果が実現されるのはあきらかである。従って、本実施例は、前記実施例と同様な作用効果を実現することができる。
【0106】
(第2実施例)
図10は本発明の第2実施例の緩衝装置21aの概観を示す断面図であり、図11は本実施例の原理を示す断面図であり、図12は本実施例の原理を示す拡大断面図であり、図13は本実施例の効果を示すグラフである。
【0107】
以下、図10〜図13を参照して、本発明の第2実施例の緩衝装置21aについて説明する。
【0108】
本実施例は前述の実施例に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付す。本実施例では、ヒートインシュレータ3をエキゾーストマニホールド2に取付けるに際して、図10に示される緩衝装置21aを用いる。緩衝装置21aは、カラー部材22と、カラー部材22に装着された厚さt1の緩衝材であるバネワッシャ23、24と、バネワッシャ23、24の外周縁にそれぞれ装着された円環状のグロメット25、26とを備えている。
【0109】
カラー部材22は、筒部27と、筒部27の軸線方向一端部に一体に形成されたフランジ部28とを含むカラー片29と、筒部27よりも大径の筒部30と、筒部30の軸線方向一端部に一体に形成されたフランジ部31とを含むカラー片32とを含んで構成される。筒部27を筒部30内に圧入して固定した状態で、各フランジ部28、31は、図10に示す距離L1を隔てるように構成される。距離L1は、

L1>2×t1 ・・・(1)

であるようにカラー片29、32の板厚などが選ばれる。従って、バネワッシャ23、24をカラー部材22に装着したとき、図12に示されるように、フランジ部28、31とバネワッシャ23、24との間には、隙間37が形成される。隙間37は、ボルト7の軸線方向に沿う長さL2

L2=L1−2×t1 ・・・(2)

を有する。また、各カラー片29、32を上記のように組み合わせることにより、フランジ部28、31と筒部33を有するカラー部材22が構成される。
【0110】
前記バネワッシャ23、24は、例として、金属板、パンチングメタル、エキスパンドメタル及び金網などの板状の材料のいずれかから形成される。本実施例では、一例としてエキスパンドメタルから形成される場合を想定して説明する。バネワッシャ23、24は略円環状に形成され、図12に示されるように、カラー部材22の筒部33の外径L3よりも大きく、フランジ部28、31の外径L4よりも小さな内径L5

L3<L5<L4 ・・・(3)

の挿通穴34が形成される。従って、このようなバネワッシャ23、24をカラー部材22に装着するために、カラー部材22は図10に示されるように2分割され、バネワッシャ23、24を例としてカラー片29に装着した後、カラー片32をカラー片29に圧入するようにする。このようにして、バネワッシャ23、24をカラー部材22に組付ける。これにより、前記隙間37は、ボルト7の径方向に長さ(L5−L4)を有する。
【0111】
バネワッシャ23、24には、図10に示されるように、外周にグロメット25、26が装着される。グロメット25、26は、例としてステンレス鋼板やアルミニウム合金などからなる円環状の金属板の外周を内方へ折り返して形成される。従って、グロメット25、26はバネワッシャ23、24の外周を包みこむように形成される。
【0112】
バネワッシャ23、24は、本実施例の場合、エキスパンドメタルから形成されており、切断されたままの状態では外周に鋭利な切断端部が突出することになる。このような切断端部付近をグロメット25、26で包み込むことにより、バネワッシャ23、24の外観上の美観を向上し、しかもばねワッシャ23、24を保持して作業する作業者の手指の創傷を防止するという効果を実現する。
【0113】
このようなグロメット25、26を装着したバネワッシャ23、24の間に、図10に示されるようにヒートインシュレータ3を挟みこんで保持する。このような緩衝装置21aが装着されたヒートインシュレータ3をエキゾーストマニホールド2に取り付けるには、カラー部材22の筒部33の内部にボルト7を挿通して、エキゾーストマニホールド2の取り付け用ボス10などにネジ付ける。このようにして、ヒートインシュレータ3がエキゾーストマニホールド2に取り付けられる。
【0114】
以下、本実施例の緩衝装置21aの作用について説明する。本実施例の緩衝装置21aによれば、エキゾーストマニホールド2から発生してボルト7を伝達する振動は、カラー部材22を介してバネワッシャ23、24に伝達される。このとき、カラー部材22の一対のフランジ部28、31とバネワッシャ23、24との間に隙間37が設けられている。これにより、カラー部材22とバネワッシャ23、24とが、ボルト7の軸線方向と平行な方向及び交差する方向へ相対的に変位することが許容されている。従って、ボルト7からの振動は、カラー部材22とバネワッシャ23、24との相対的な変位によって吸収され、バネワッシャ23、24への振動の伝達を抑制することができる。
【0115】
また、バネワッシャ23、24からの振動は、ヒートインシュレータ3に伝達される。このとき、バネワッシャ23、24は板状をなしているので、概略ボルト7の軸線方向に撓む。これにより、バネワッシャ23、24からヒートインシュレータ3への振動の伝達が抑制される。
【0116】
本発明者は、このような作用に関して実験を行い図13のグラフに示される測定結果を得た。図13の横軸は周波数、縦軸は振動の加速度である。曲線g1はカラー部材22のみの振動を測定した結果を示し、曲線g2は図29に示される構成の緩衝装置11のカバー3に伝達される振動を測定した結果を示し、曲線g3はカラー部材22とバネワッシャ23、24との前記隙間37がない試作品の振動を測定した結果を示し、曲線g4は本実施例における振動を測定した結果を示している。
【0117】
これらの測定結果から分かるように、図29に示されるフェルト状の制振シートを用いるよりも、本実施例の例としてエキスパンドメタルから構成されるバネワッシャ23、24を用いるほうが、エンジン1やエキマニ2から発生する振動の全周波数帯域での制振特性が改善されており、特に、本実施例におけるように、隙間37を設ける構成例が制振特性が改善されている。とりわけ、比較的低い周波数帯域における制振特性が改善されている。
【0118】
また、前記エキゾーストマニホールド2はエンジン1からの燃焼排ガスが流過するため熱源ともなっている。このような場合、ボルト7を伝達されるエキゾーストマニホールド2からの熱は、カラー部材22を介してバネワッシャ23、24に伝達される際に、カラー部材22の一対のフランジ部28、31とバネワッシャ23、24との間の隙間37により熱伝導が効率的に遮断される。これにより、エキゾーストマニホールド2からヒートインシュレータ3への熱の伝達も効率的に抑制される。
【0119】
これにより、本実施例において、振動源であるエキゾーストマニホールド2からヒートインシュレータ3への振動の伝達が効率的に抑制されるので、伝達された振動によってヒートインシュレータ3が共振したり、ヒートインシュレータ3のボルト7への取付部位付近に金属疲労が生じる事態を抑制することができ、騒音の増大や、ヒートインシュレータ3におけるクラックの発生などの事態を解消することができ、ヒートインシュレータ3の品質を格段に向上することができる。また、エキゾーストマニホールド2からの熱の伝達も効率的に抑制することができるので、この点でも品質を向上することができる。
【0120】
(第3実施例)
図14は本発明の第3実施例の緩衝装置21bの断面図であり、図15は本実施例の対比例の断面図であり、図16は緩衝装置21bの特徴を示す断面図であり、図17は緩衝装置21bのバネワッシャ23、24の平面図であり、図18はバネワッシャ23、24の斜視図であり、図19は緩衝装置21bに対する対比例の斜視図であり、図20は対比例の断面図であり、図21は緩衝装置21bの一動作例を示す断面図であり、図22は緩衝装置21bの他の動作例を示す断面図であり、図23は緩衝装置21bの更に他の動作例を示す断面図であり、図24は本実施例の作用を説明するグラフである。
【0121】
以下、図14〜図24を参照して、本実施例の緩衝装置21bについて説明する。
【0122】
本実施例は、前記第2実施例に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付す。また、図15〜図23では、説明の簡略化のために単一のバネワッシャ24とグロメット26のみを示す。本実施例の特徴は、第2実施例の緩衝装置21aにおいて、グロメット25、26を用いず、バネワッシャ23、24の外周を自由振動を行う自由端としたことである。
【0123】
本実施例の対比例として、第2実施例の緩衝装置21aを図15を参照して引用する。図15に示されるように、グロメット25、26の半径方向内方端部が、ヒートインシュレータ3の半径方向内方端部から突出する突出長さaと、フランジ部28、31の外周からヒートインシュレータ3の半径方向内方端部までの距離bに関して、バネワッシャ23、24の前記屈曲変位に寄与する部分の半径方向の長さcは、

c=b−a ・・・(4)

となる。
【0124】
一方、本実施例の緩衝装置21bにおいては、図16に示されるように、バネワッシャ23、24の外周の振動がグロメット25、26によって規制されていないので、バネワッシャ23、24の前記屈曲変位に寄与する部分の半径方向の長さdは、

d=b ・・・(5)

となる。従って、

d>c ・・・(6)

であり、本実施例の緩衝装置21bのバネワッシャ23、24を用いると、バネワッシャ23、24の屈曲変位を行うボルト7の径方向の長さを大きく設定することができる。
【0125】
即ち、本実施例において、バネワッシャ23、24は例としてエキスパンドメタルからなる概略板状の部材であり、図17及び図18に示されるように、バネワッシャ23、24の自然状態の内径e、外径fと、屈曲状態のバネワッシャ23、24の内径e、外径f1とには、

f1<f ・・・(7)

の関係が成立するのに対し、図19及び図20に示されるように、バネワッシャ23、24の自然状態の内径e、外径fおよびグロメット25、26の外径hと、屈曲状態のバネワッシャ23、24の内径e、外径f1及びグロメット25、26の外径h1とに関して、外径h、h1は相互にほぼ等しくなる。
【0126】
これは、バネワッシャ23、24の外周がグロメット25、26で固定されており、しかもグロメット25、26は、前述したように例としてステンレス鋼などの比較的硬質な材料から形成されているからである。
【0127】
従って、本実施例の緩衝装置21bに用いられているバネワッシャ23、24は、図21〜図23に示されるように、カラー部材22の軸線方向に沿って自由に屈曲変位し、バネワッシャ23、24の湾曲の程度が格段に増大される。
【0128】
従って、エキゾーストマニホールド2から発生してボルト7を伝達する振動は、カラー部材22を介してバネワッシャ23、24に伝達される。このとき、本実施例において、バネワッシャ23、24の湾曲の程度が格段に増大されているので、前記振動は、バネワッシャ23、24の前記比較的大きな撓み変形によって効率的に吸収され、ヒートインシュレータ3への伝達を抑制することができる。
【0129】
本件発明者は、このような作用に関して実験を行い、図24のグラフに示される測定結果を得た。図24の横軸は周波数、縦軸は振動の加速度である。曲線g5はバネワッシャ23、24にグロメット25、26を装着した第2実施例の緩衝装置21aの振動を測定した結果を示し、曲線g6は本実施例における振動を測定した結果を示している。
【0130】
これらの測定結果から分かるように、第2実施例の緩衝装置21aは、前述したように従来技術に比較して顕著な作用効果を達成しているが、本実施例の緩衝装置21bは、第1実施例よりも更に顕著な制振特性を達成している。
【0131】
即ち、緩衝装置21bにおいては、エキゾーストマニホールド2からヒートインシュレータ3への振動の伝達が効率的に抑制されるので、伝達された振動によってヒートインシュレータ3が共振したり、ボルト7のヒートインシュレータ3への取付部位付近に金属疲労が生じる事態を抑制することができ、騒音の増大や、ヒートインシュレータ3におけるクラックの発生などの事態を解消することができ、品質を格段に向上することができる。
【0132】
また、本実施例では、板状をなすバネワッシャ23、24を用いているので、振動伝達時に湾曲変形する。この湾曲変形によって振動が吸収される。従って、バネワッシャ23、24が無機繊維などからなるフェルト状の材料からなる場合と比較し、経年変化や自重などにより緩衝材がへたる状態になって圧縮・復元特性が低下し、振動の抑制作用が低下するという事態が防止される。また、フェルト状の材料の場合に、時間経過と共に繊維が分解して飛散するという問題点が想定されるが、本実施例では、このような事態も防止される。
【0133】
これにより、エキゾーストマニホールド2からヒートインシュレータ3への振動の伝達が効率的に抑制されるので、この点によっても、上述した作用効果と同様な作用効果が達成される。
【0134】
(第4実施例)
図26は本発明の第4実施例の緩衝装置21cの断面図である。以下、図26を参照して、本実施例について説明する。
【0135】
本実施例は前述の各実施例に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付す。本実施例の特徴は、前記各実施例において用いられたバネワッシャ23、24の少なくとも一方を使用し、用いられたバネワッシャ23、24の少なくとも一方を、ヒートインシュレータ3にスポット溶接や任意の固定手法により固定する。以下の説明では、一例として、バネワッシャ24のみを用いる場合を想定する。
【0136】
本実施例では、ヒートインシュレータ3をエキゾーストマニホールド2に取付けるための取付構造として、以下の構成が用いられている。即ち、ヒートインシュレータ3には、ボルト7を挿通するための穴径jの挿通穴8が設けられており、挿通穴8を覆うように、バネワッシャ24が配置され、バネワッシャ24は前記挿通穴8の周辺における結合部46でヒートインシュレータ3にスポット溶接やリベットなどの手法で固定される。このバネワッシャ24に形成された挿通穴34に前記ボルト7を挿通して、エキゾーストマニホールド2の取り付け用ボス49などにねじ付け、エキゾーストマニホールド2にヒートインシュレータ3を取付ける。
【0137】
このとき、バネワッシャ24の径kのボルト7によってエキゾーストマニホールド2の径mの取り付け用ボス49との間で固定される固定部分47と前記結合部46との間の屈曲変位による自由振動を行う領域である自由振動部48の半径方向距離が、バネワッシャ24のバネ性による自由振動が、前述したような制振作用に充分寄与できる程度の距離となるように、ヒートインシュレータ3の挿通穴8の穴径jと、ボルト7の径kおよび取り付け用ボス49の径mとは、それぞれ適宜な寸法に選ばれる。
【0138】
このような構成の緩衝装置21cにおいても、バネワッシャ24の撓み変形による緩衝作用が実現されるので、上記各実施例で説明した作用効果と同様な作用効果が実現される。
【0139】
また、前記各実施例の緩衝装置21、21a、21b、21cのいずれにおいても、前記緩衝材40を、少なくとも、Al:含有量6〜10重量%と残部Feとを含んで構成される制振合金体から、或いはこの制振合金体を含む合金材料から形成されるようにしてもよい。
【0140】
このような制振合金体として、例として株式会社アーバンマテリアルズのFe−Al系制振合金を用いることができる。制振合金は、Al含有率が6〜10重量%であり、その他、Feおよび不可避的不純物(Si0.1重量%以下;Mn0.1重量%以下;その他C、N、S、Oなど併せて0.1重量%以下)を含んで構成される。また、制振合金体の結晶の平均粒径が300〜700μmの範囲内にあることを必須とする。この制振合金体の板厚は、一例として、0.1〜1.0mm程度のものが用いられる。
【0141】
このような制振合金体は強磁性材料であるので、その主な振動減衰機構は、磁壁の非可逆移動に伴う磁気・機械的履歴損失によるものになる。
【0142】
本件発明者は、典型的な対比例として鋼板、前記制振合金体、通常のサンドイッチタイプ制振鋼板の3点に関して、振動の減衰能になる減衰係数をそれぞれ計測した。その結果が、図27のラインL1、L2、L3に示されている。このように、本件発明者は、制振合金体が通常の金属板よりも格段に制振性が向上されていることを確認した。
【0143】
(第5実施例)
以下、本発明の第5実施例の緩衝装置21dについて説明する。
【0144】
図28は本実施例の緩衝装置21dの断面図であり、図29は図28の緩衝装置21dの平面図であり、図30は本実施例に用いられるスペーサ90の正面図であり、図31はスペーサ90の平面図であり、図32は本実施例に用いられる挟持部材97の断面図であり、図33は挟持部材97の平面図である。本実施例は前述の各実施例に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付す。
【0145】
本実施例の緩衝装置21dは、ボルト7が挿通する挿通穴100を有し、摩擦係数が比較的低く硬度が高い例として金属材料などから形成されるスペーサ90を備える。スペーサ90は、上記挿通穴100が形成された略円筒形の基部91と、基部91の半径方向外方に一体に連なり、半径方向外方に向かうに従い軸方向に沿う相互の距離が減少する一対の摺動面93、94を有する摺動部92とを有している。
【0146】
前記摺動面93、94は、円錐台形の側面の形状を有し、半径方向に沿って比較的平滑なテーパ面として構成されている。スペーサ90において、摺動部92と基部91との境界付近には、ボルト7の軸線方向に隆起した段差部99がそれぞれ形成されている。
【0147】
スペーサ90の半径方向外方には、例としてステンレス鋼のエキスパンドメタルなどの平板状のバネ性を有する金属材料から構成され、表面に例として、ダクロタイズド(商標名)処理による亜鉛皮膜が形成された略環状の挟持部材97が配置されている。挟持部材97は、半径方向外方側から半径方向内方側に向かうに従い、軸方向に相互に間隔をあけて配置される一対の挟持片95、96を備える。挟持片95、96は、半径方向内方側において、スペーサ90の摺動部92を軸線方向の相互に反対側から弾性的に挟むように構成されている。
【0148】
また、各挟持片95、96の半径方向内方側端部付近には、前記スペーサ90の段差部99と半径方向に間隔L10をあけて、挟持部材97の半径方向内方側への変位時に、段差部99に係合可能な隆起部98がそれぞれ形成されている。スペーサ90と挟持部材97とは、このような構成を有することにより、少なくとも半径方向の相互変位が許容されている。
【0149】
挟持部材97の半径方向外方には、例として、アルミニウム合金から形成され、断面が略S字状の結合部材であるグロメット41を備えている。グロメット41は、エキゾーストマニホールド2のボルト用ボス10などにネジ付けられるボルト7が挿通する挿通穴42を有している。
【0150】
また、グロメット41は、ヒートインシュレータ3を保持するために、円環状の金属板の内周縁が外周側に折り返された形状の第1保持部43と、挟持部材97を保持するために、円環状の金属板の外周縁が内周側に折り返された形状の第2保持部44と、第1保持部43と第2保持部44とに亘って屈曲して形成される連結部45とを備えている。
【0151】
本実施例において、連結部45は第1保持部43の屈曲部位から第2保持部44の屈曲部位とに亘る部位である。これら第2保持部44、連結部45及び第1保持部43は、エキゾーストマニホールド2側からこの順序で設けられている。また、ヒートインシュレータ3の緩衝装置21dが装着される部位には、透孔が形成される。この透孔の周囲部分は、前述した略平板形状の押し潰し対象部位であり、押し潰し部3aが予め形成されている。従って、前記グロメット41の第1保持部43は、この押し潰し部3aを保持する。
【0152】
以下、緩衝装置21dの作用効果について説明する。緩衝装置21dにおいて、エキゾーストマニホールド2から発生してボルト7を伝達する振動は、スペーサ90、挟持部材97及びグロメット41を介してヒートインシュレータ3に伝達される。
【0153】
このとき、本実施例において、スペーサ90の半径方向外方側の摺動部92は、挟持部材97の一対の挟持片95、96で弾性的に挟持されている。スペーサ90と挟持部材97とは、前述したように半径方向に相互変位が許容されている。従って、スペーサ90が半径方向に沿って振動すると、挟持部材97とスペーサ90とは、一対の挟持片95、96がスペーサ90の摺動部92に沿って、相互に摺動しつつ半径方向に相互に変位する。これにより、スペーサ90の半径方向に沿う振動は、スペーサ90と挟持部材97との半径方向の相互変位で吸収される。
【0154】
また、挟持部材97は、バネ性を有する一対の挟持片95、96から構成されている。更に、一対の挟持片95、96は、スペーサ90の摺動部92を弾性的に挟持し、摺動部92に固定されていない。従って、スペーサ90の軸線方向の振動により、スペーサ90は挟持部材97に対して、相互に摺動しつつ軸線方向に振動変位することができる。更に、スペーサ90はバネ性を有する金属材料から形成されているので、スペーサ90の軸線方向の振動により、挟持部材97が軸線方向に沿って湾曲して振動する。
【0155】
これらにより、スペーサ90の軸線方向の振動は、スペーサ90と挟持部材97との相互の摺動を伴う相互変位、および挟持部材97自身の変位によって吸収され、ボルト7の振動がヒートインシュレータ3に伝達される程度を格段に抑制することができる。
【0156】
また、本実施例において、グロメット41の前記第2保持部44、連結部45及び第1保持部43は、エキゾーストマニホールド2側からこの順序で設けられている。即ち、第1保持部43は、挟持部材97に関して前記エキゾーストマニホールド2と反対側に位置している。
【0157】
従って、エキゾーストマニホールド2の取り付け用ボス10が、グロメット44と重複する半径方向の大きさを有する場合でも、前記取り付け用ボス10が、グロメット41やこのグロメット41に保持されているヒートインシュレータ3と接触する事態が防止される。これにより、上記接触による騒音の増大が抑制される。
【0158】
また、前記取り付け用ボス10とグロメット41やヒートインシュレータ3との接触を想定した場合、この接触により、グロメット41の前記取り付け用ボス10との接触部位が摩耗し、破損に至ることが想定される。本実施例では、このような破損の発生を防止している。これにより、緩衝装置21dの品質が格段に向上されている。
【0159】
また、本実施例によれば、前記挟持部材97の表面に、イオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い亜鉛皮膜が形成されている。従って、挟持部材97が、前述したようにステンレス鋼板から形成され、グロメット41がアルミニウム合金から形成されている場合でも、挟持部材97とグロメット41との間のイオン化傾向の差が低減される作用が実現される。これにより、グロメット41と挟持部材97とにおける電食の発生が抑制される。この点においても、緩衝装置21dの品質が格段に向上される。
【0160】
また、本実施例において、スペーサ90には段差部99が形成され、一対の挟持片95、96には隆起部98がそれぞれ形成されている。従って、スペーサ90と挟持部材97との半径方向の変位が大きくなる場合、スペーサ90の段差部99と挟持部材97の隆起部98とが相互に当接、係合して、スペーサ90と挟持部材97の過大な相互変位を阻止する。これにより、スペーサ90と挟持部材97とが激しく衝突して両者が破損するなどの不具合の発生を防止することができる。
【0161】
(第6実施例)
以下、本発明の第6実施例の緩衝装置21eについて説明する。図34は本実施例の緩衝装置21eの断面図であり、図35は図34の緩衝装置21eの平面図であり、図36は本実施例に用いられるスペーサ90aの断面図であり、図37はスペーサ90aの平面図であり、図38は本実施例に用いられる挟持部材97aの断面図であり、図39は挟持部材97aの平面図である。本実施例は前記第5実施例に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付す。
【0162】
本実施例の特徴的な構成は、前記第5実施例で用いられたスペーサ90及び挟持部材97に代えて、以下に説明する形状と構成のスペーサ90a及び挟持部材97aを用いたことである。
【0163】
本実施例のスペーサ90aは、上記挿通穴100が形成された略円筒形の基部91と、基部91の半径方向外方に一体に連なり、断面形状が半径方向外方に向かって凸状の円弧面を形成する摺動面92bを有する摺動部92aとを有している。更に詳しくは、前記摺動面92bは、外周面の形状が図36に示されるように、1/4円弧面を有する各円弧面93a、94aをそれぞれ有している。
【0164】
スペーサ90aの半径方向外方には、例としてステンレス鋼のエキスパンドメタルなどの平板状のバネ性を有する金属材料から構成され、表面に例として、ダクロタイズド(商標名)処理による亜鉛皮膜が形成された略環状の挟持部材97aが配置されている。挟持部材97aは、半径方向外方側から半径方向内方側に向かうに従い、軸方向に相互に間隔をあけて配置される一対の挟持片95a、96aを備える。挟持片95a、96aは、半径方向内方側において、スペーサ90aの摺動部92aを軸線方向の相互に反対側から弾性的に挟むように構成されている。
【0165】
また、各挟持片95a、96aの半径方向内方側端部付近には、前記第5実施例における挟持部材97における隆起部98のような特段の隆起形状は形成されていない。
【0166】
本実施例の緩衝装置12eは、前記各実施例における作用効果と同等な作用効果を実現できると共に、本実施例に特有の下記の特段の作用効果を実現することができる。
【0167】
本実施例の緩衝装置21eにおいて、スペーサ90aの摺動面92bは、半径方向外方に凸状の円弧面として形成されている。従って、スペーサ90aと挟持部材97aとが摺動しつつ相互に変位するとき、挟持部材97aの一対の挟持片95a、96aは、円弧面をなす前記摺動面92bに沿って円滑に変位する。
【0168】
これにより、スペーサ90aと挟持部材92aとの半径方向の変位が大きい場合でも、スペーサ90aと挟持部材92aとが衝突する事態が防止され、両者の破損などの不具合の発生を防することができる。
【0169】
また、前記一対の挟持片95a、96aは、円弧面をなす摺動面92bに沿って円滑に変位するので、スペーサ90aと挟持部材92aとは、半径方向に相互変位するに止まらず、挟持部材92aは、スペーサ90aの挟持部材92aとの接触位置付近を中心に、軸線方向にも容易に変位可能である。
【0170】
従って、挟持部材92aは、スペーサ90aとの間で半径方向に変位して、スペーサ90aからの振動の半径方向成分を吸収する。また、挟持部材92aは、スペーサ90aに対して、軸線方向に容易に変位して、スペーサ90aからの振動の軸線方向成分を吸収する。これにより、緩衝装置21eは、スペーサ90aからの振動を格段に抑制することができる。
【0171】
本発明は、前記各実施例に限定されるものはなく、本発明の精神を逸脱しない範囲で広範な変形例を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0172】
一方対象部材のネジ部材に関する取付け部位が、結合部材と重複する半径方向の大きさを有する場合でも、一方対象部材の取付け部位が、結合部材やこの結合部材に保持されている他方対象部材と接触する事態が防止される。これにより、この接触が発生した場合に想定される騒音の増大が抑制される。本発明の緩衝装置は、本発明の実施例の箇所で説明した自動車のエンジン以外にも、広範な技術分野における用途にも適用できる
また、金属製カバーに形成されているコルゲート形状の延びる第1方向が、金属製カバーの主要な稜線相当部位に対して交差する方向に定められているので、コルゲート形状が前記稜線相当部位を中心とする振動に対してリブの作用を実現する。このリブ作用により、金属製カバーの振動を抑制することができ、金属製カバーのクラックの発生を防止することができ、金属製カバーの品質を格段に向上することができる。これにより、熱、振動、騒音の遮蔽が求められ、しかも軽量が要求される多種類のカバー類に広く適用されることができる。
【符号の説明】
【0173】
1・・・エンジン
2・・・エキゾーストマニホールド
3・・・ヒートインシュレータ
7・・・ボルト
10・・・ボルト用ボス
21、21a、21b、21c、21d、21e・・・緩衝装置
22・・・カラー部材
23、24・・・バネワッシャ
25、26、41・・・グロメット
27・・・筒部
28、31・・・フランジ部
33、45・・・連結部
37・・・隙間
40・・・緩衝材
41・・・グロメット
43・・・第1保持部
44・・・第2保持部
46・・・結合部
48・・・自由振動部
54・・・フランジ部
59・・・コルゲート形状
80・・・稜線相当部位
90、90a・・・スペーサ
91・・・基部
92、92a・・・摺動部
93、94、92b・・・摺動面
99・・・段差部
97・・・挟持部材
95、95a、96、96a・・・挟持片
98・・・隆起部
T1・・・側壁
T2・・・頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトなどのネジ部品を用いて相互に連結される複数の対象部材間に配置され、振動源になる一方対象部材からの他方対象部材への振動の伝達を緩衝する緩衝装置であって、
前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、前記ネジ部材を外囲して設けられる略環状の緩衝材と、
前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、前記他方対象部材を保持する第1保持部と、前記緩衝材を保持する第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する連結部とを備え、前記第2保持部、連結部及び第1保持部が、前記一方部材側からこの順序で設けられている結合部材と、
前記ネジ部材と前記緩衝材との間に配置され、前記緩衝材を軸線方向両側からそれぞれ隙間を有して挟む一対のフランジ部と、前記一対のフランジ部を相互に連結し、前記緩衝材との間に半径方向に隙間を有する連結部とを備えるカラー部材とを含む
ことを特徴とする緩衝装置。
【請求項2】
前記結合部材とカラー部材との少なくともいずれか一方はアルミニウム合金から形成され、前記緩衝材は鉄合金から形成され、前記緩衝材の表面に皮膜が形成され、前記皮膜はイオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含んで構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項3】
ボルトなどのネジ部品を用いて相互に連結される複数の対象部材間に配置され、振動源になる一方対象部材からの他方対象部材への振動の伝達を緩衝する緩衝装置であって、
前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、表面に皮膜が形成され、前記皮膜はイオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含んで構成され、前記他方対象部材を外周付近で半径方向に変位可能に挟む相互に積層された鉄合金から形成される板状の複数の緩衝材と、
前記ネジ部材と前記緩衝材との間に、前記緩衝材に対して半径方向及び軸線方向に変位可能に配置され、前記複数の緩衝材を軸線方向両側からそれぞれ隙間を有して挟む一対のフランジ部と、前記一対のフランジ部を連結する連結部とを備えるカラー部材とを含む
ことを特徴とする緩衝装置。
【請求項4】
ボルトなどのネジ部品を用いて相互に連結される複数の対象部材間に配置され、振動源になる一方対象部材からの他方対象部材への振動の伝達を緩衝する緩衝装置であって、
前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、表面に皮膜が形成され、前記皮膜はイオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含んで構成され、前記他方対象部材を外周付近で半径方向に変位可能に挟み、前記外周部付近は自由振動を行う自由端とされている鉄合金から形成される相互に積層された板状の複数の緩衝材と、
前記ネジ部材と前記緩衝材との間に、前記緩衝材に対して半径方向及び軸線方向に変位可能に配置され、前記複数の緩衝材を軸線方向両側から挟む一対のフランジ部と、前記一対のフランジ部を連結する連結部とを備えるカラー部材とを含む
ことを特徴とする緩衝装置。
【請求項5】
ボルトなどのネジ部品を用いて相互に連結される複数の対象部材間に配置され、振動源になる一方対象部材からの他方対象部材への振動の伝達を緩衝する緩衝装置であって、
前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、表面に皮膜が形成され、前記皮膜はイオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含んで構成され、前記他方対象部材に結合される結合部と、前記他方対象部材及びネジ部材から離反した領域であって屈曲変位が許容される振動部とを備える鉄合金から形成される緩衝材を含む
ことを特徴とする緩衝装置。
【請求項6】
ボルトなどのネジ部品を用いて相互に連結される複数の対象部材間に配置され、振動源になる一方対象部材からの他方対象部材への振動の伝達を緩衝する緩衝装置であって、
前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有する略円筒形の基部と、前記基部の半径方向外方に一体に連なり、半径方向外方に向かうに従い軸方向に沿う相互の距離が減少する一対の摺動面を有する摺動部とを有するスペーサと、
前記スペーサの半径方向外方に配置され、半径方向外方側から半径方向内方側に向かうに従い、軸方向に相互に間隔をあけて配置される一対の挟持片を備え、前記一対の挟持片は、半径方向内方側において、前記スペーサの前記摺動部を軸線方向の相互に反対側から弾性的に挟むバネ性を有する材料からなると共に、前記スペーサとの間で少なくとも半径方向の相互変位が許容される挟持部材と、
前記挟持部材の半径方向外方側端部付近を保持する第1保持部と、前記他方対象部材を保持する第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する連結部とを備え、前記第1保持部、連結部及び第2保持部が、前記一方部材側からこの順序で設けられている結合部材とを含む
ことを特徴とする緩衝装置。
【請求項7】
前記スペーサにおいて、摺動面は、半径方向に沿って比較的平滑なテーパ面として構成され、摺動部と基部との境界付近には軸線方向に隆起した段差部が形成され、
前記挟持部材の半径方向内方側端部付近には、前記段差部と間隔をあげ、挟持部材の半 径方向内方側への変位時に、前記段差部に係合可能な隆起部が形成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の緩衝装置。
【請求項8】
前記スペーサにおいて、摺動面は、半径方向外方に凸状の円弧面として構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の緩衝装置。
【請求項9】
前記金属または金属化合物は、亜鉛または亜鉛化合物である
ことを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の緩衝装置。
【請求項10】
前記緩衝材は、少なくとも、Al:含有量6〜10重量%と残部Feとを含んで構成される制振合金体を含んで構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項11】
相互に交差する方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成された1枚または複数枚のアルミニウム合金板を含んで構成され、立体形状をなす金属製カバーであって、
前記立体形状の外周部の少なくとも一部分にフランジ部を有し、前記フランジ部を含む 押し潰し対象部位の前記コルゲート形状が潰されて略平板形状に形成され、
前記相互に交差するいずれか一方の方向が前記立体形状を構成する主要な稜線相当部位に対して交差する方向に定められている
ことを特徴とする金属製カバー。
【請求項12】
内燃機関及び/またはその排気経路に、下記構成要素(a)、(b)及び(c)を含む緩衝装置を介して装着されることを特徴とする請求項11に記載の金属製カバー。
(a)ボルトなどのネジ部品を用いて相互に連結される複数の対象部材間に配置され、振動源になる一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、前記ネジ部材を外囲して設けられる鉄合金から形成される略環状の緩衝材と、
(b)前記一方対象部材に取り付けられる前記ネジ部材が挿通する挿通穴を有し、前記他方対象部材を保持する第1保持部と、前記緩衝材を保持する第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する連結部とを備え、前記第2保持部、連結部及び第1保持部が、前記一方部材側からこの順序で設けられている結合部材と、
(c)前記ネジ部材と前記緩衝材との間に配置され、前記緩衝材を軸線方向両側からそれぞれ隙間を有して挟む一対のフランジ部と、前記一対のフランジ部を相互に連結し、前記緩衝材との間に半径方向に隙間を有する連結部とを備えるカラー部材。
【請求項13】
前記結合部材はアルミニウム合金から形成され、前記緩衝材は鉄合金から形成され、前記緩衝材の表面に皮膜が形成され、前記皮膜はイオン化傾向が鉄よりもアルミニウムに近い金属または金属化合物の少なくともいずれかを含んで構成されている
ことを特徴とする請求項12に記載の金属製カバー。
【請求項14】
前記金属または金属化合物は、亜鉛または亜鉛化合物である
ことを特徴とする請求項13に記載の金属製カバー。
【請求項15】
前記緩衝材は、少なくとも、Al:含有量6〜10重量%と残部Feとを含んで構成される制振合金体を含んで構成される
ことを特徴とする請求項12に記載の金属製カバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate


【公開番号】特開2010−14278(P2010−14278A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214081(P2009−214081)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【分割の表示】特願2003−431359(P2003−431359)の分割
【原出願日】平成15年12月25日(2003.12.25)
【出願人】(391061831)三和パッキング工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】