説明

繊維芽細胞増殖促進剤

【課題】 繊維芽細胞増殖促進効果及び/又はコラーゲン産生促進効果に優れる組成物を提供するとともに、その組成物を含有する飲食品、化粧品、皮膚外用剤および医薬品を提供する。
【解決手段】 クリプトキサンチン及び/又はそのエステル体を含有することを特徴とする繊維芽細胞増殖促進効果及び/又はコラーゲン産生促進効果を有する組成物であって、クリプトキサンチン及び/又はそのエステル体は温州みかん、温州みかんの酵素処理物及び温州みかんの溶媒抽出物からなる群から選ばれる1以上のものに由来するものであり、具体的には温州みかんの搾汁残渣の凍結乾燥物を粉砕した後、エタノールを用いて抽出された抽出液に由来するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品、化粧品、皮膚外用剤又は医薬品に用いることができる繊維芽細胞増殖促進効果及び/またはコラーゲン産生促進効果を有する組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚の表皮及び真皮は、表皮細胞、繊維芽細胞、及びこれらの細胞外にある皮膚の構造支持体である細胞外マトリックス(コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等)により構成されている。これら皮膚組織はターンオーバーサイクルにより日常的に新しく生まれかわることで、皮膚の水分保持、柔軟性や弾力性の維持のほか、外敵の侵入を防ぐ等の効果を発揮する。しかしながら、種々の外的、内的要因や加齢は、表皮組織の正常なターンオーバーサイクルを乱したり、細胞外マトリックスの主要成分であるコラーゲン等の産生量の減少、分解、変性を促すことがある。その結果、皮膚バリア機能の低下による水分率の低下、柔軟性、弾力性の喪失がおこり、肌荒れ、しみ、しわの形成等の老化現象をひきおこす。
【0003】
繊維芽細胞は皮膚の表皮と真皮の境目にある基底層に存在し、分裂により形態を変化させながら皮膚の上層に移動し、最後には角質細胞となり皮膚から剥離する。基底層の繊維芽細胞が表皮に移動して剥離するまでにはおよそ28日を要する。すなわち皮膚はターンオーバーを繰り返しており、約4週間で新しい細胞から成る皮膚に生まれ変わる。このサイクルは繊維芽細胞の増殖が悪化することで変化し、結果として皮膚が病的な様相を呈することが知られている。逆に言えば、繊維芽細胞が健全増殖することで皮膚が健康に保たれるともいえる。
【0004】
繊維芽細胞の増殖は、加齢や外的要因、摂取する栄養素などにより変化し、様々な食餌因子が繊維芽細胞の増殖を促進することが報告されており、海藻類などから得られるマイコスポリン様アミノ酸(例えば、特許文献1参照)や動物由来のペプチド(例えば、特許文献2参照)、植物の抽出物(例えば、特許文献3参照)などが挙げられる。
【0005】
一方、細胞外マトリックスの主要成分であるコラーゲンは、通常のたんぱく質に比べてターンオーバーに要する時間が長く、老化に伴い、そのサイクルはさらに遅くなるといわれており、ターンオーバーサイクルが遅くなると、コラーゲン自体の変性(老化)が進み、皮膚の柔軟性、弾力性の低下(硬化)につながる。コラーゲンが老化すると、構造支持体としての機能が低下するため、皮膚基底部にあり、皮膚組織のターンオーバーを支える線維芽細胞の増殖、分化、移動が妨げられ、皮膚組織のターンオーバーサイクルはさらに遅くなるという悪循環に陥ると考えられている。
【0006】
このような考えのもと、コラーゲンの産生を促す種々の試みがなされてきた。例えば、コラーゲンの減少はコラーゲンで補給するといったもの(例えば、特許文献4参照)、コラーゲンの代謝活性(コラゲナーゼ活性)を高めるといったもの(例えば、特許文献5参照)、コラーゲンの産生を促すといったもの(例えば、特許文献6参照)などが挙げられる。
【0007】
これらの効果は動物や植物から分離・同定された物質に由来するものであるが、カロテノイドが上記の効果を有することはこれまでに知られていなかった。
【特許文献1】特開2007−016004号公報
【特許文献2】特開2007−001981号公報
【特許文献3】特開2003−034631号公報
【特許文献4】特開2003−238597号公報
【特許文献5】特開平07−2699号公報
【特許文献6】特開2003−212748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、繊維芽細胞増殖促進効果及び/又はコラーゲン産生促進効果を有する組成物を提供することを目的とする。また本組成物を含有する飲食品、化粧品、皮膚外用剤および医薬品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、カロテノイドの一種であるクリプトキサンチン及び/又はそのエステル体に良好な繊維芽細胞増殖促進効果及び/又はコラーゲン産生促進活性を有することを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち本発明は、クリプトキサンチン及び/又はそのエステル体を含有することを特徴とする繊維芽細胞増殖促進効果及び/又はコラーゲン産生促進効果を有する組成物を要旨とするものであり、好ましくは、クリプトキサンチン及び/又はそのエステル体が、温州みかん、温州みかんの酵素処理物及び温州みかんの溶媒抽出物からなる群から選ばれる1以上のものに由来するものである。さらに好ましくは、前記した本発明において、さらに、スフィンゴ脂質を含有するものであり、また好ましくは、クリプトキサンチン及び/又はそのエステル体とスフィンゴ脂質とが、温州みかん、温州みかんの酵素処理物及び温州みかんの溶媒抽出物からなる群から選ばれる1以上のものに由来するものである。
【0011】
別の本発明は、上記した本発明の組成物を含有することを特徴とする飲食品、化粧品、皮膚外用剤又は医薬品を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表皮の繊維芽細胞の増殖を促進し、同時に繊維芽細胞が産生するコラーゲン量を増加させることができる組成物を提供できる。また本発明の組成物を飲食品、化粧品、皮膚外用剤又は医薬品の形態で皮膚に取り込むことにより、皮膚のターンオーバーを促進し、皮下のコラーゲン量を増やすこととなり、肌荒れや加齢による肌の弾力性の低下などの皮膚異常を回復することができる。特に、本組成物の有効成分であるクリプトキサンチンを温州みかんから得ることにより、本発明の組成物を安価に簡便に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明におけるクリプトキサンチン及び/又はそのエステル体とは特に限定されるものではなく、例えばα−クリプトキサンチン、β−クリプトキサンチン及びこれらの脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸長も特に限定されるものではないが、例えばラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)などの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0014】
これらクリプトキサンチン及び/又はそのエステル体は、温州みかん、柿、パパイヤ、マンゴーなどに含まれていることが知られているが、本発明においてはその供給源として、生産量が多く、日本古来の果物である温州みかんに由来するものが好ましく、温州みかんは生の果実だけでなく温州みかんの加工品及びその中間体も用いることができる。加工品及びその中間体としては、温州みかんからジュースを絞った後の残渣、残渣の乾燥物、残渣の酵素処理物、温州みかんからの溶媒抽出物などを用いることができる。中でも残渣にセルラーゼなどの酵素を作用させた温州みかん残渣の酵素処理物は食物繊維が可溶化・除去により容積の減少が可能であり、好適である。またこの酵素処理温州みかん残渣の乾燥物はさらに好適である。
【0015】
温州みかんの搾汁残渣を得るには、温州みかんの果実を、インライン搾汁機、チョッパーヘルパー搾汁機、ブラウン搾汁機などにより搾汁した後、パドル型又はスクリュー型のフィニッシャーなどでろ過又は篩別、又は遠心分離により果汁を調製し残った搾汁残さを集めることにより調製される。
【0016】
温州みかんの酵素処理物を製造するために使用する酵素は、温州みかんに含まれる有機物、特に細胞壁などを構成する生体高分子などを分解することができるものであれば特に限定されず、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼ、マセレーションエンザイム(細胞壁崩壊酵素)などが用いられる。これらの中でも糖質加水分解酵素であるセルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、マレーションエンザイムが有効成分であるクリプトキサンチンを強化する効率が高いために好ましい酵素である。添加する酵素剤は、これらの精製酵素を用いてもよいし、これらの活性を示す微生物菌体や培養物、これらの粗精製物を用いてもよい。また、市販酵素も用いることができ、例えば、ペクチナーゼには、スミチームPX(新日本化学工業株式会社製)、スミチームSPC(新日本化学工業株式会社製)、ペクチネックスSRL(ノボザイムズジャパン株式会社製)、スミチームPMAC(新日本化学工業株式会社製)などを用いることができ、ヘミセルラーゼには、セルロシンGM5(エイチビィアイ株式会社製)、セルロシンHC(エイチビィアイ株式会社製)などを用いることができ、セルラーゼには、セルラーゼY−NC(ヤクルト薬品工業株式会社製)、エンチロンMCH(洛東化成工業株式会社)、セルラーゼR10(ヤクルト薬品工業株式会社製)、スミチームCAP(新日本化学工業株式会社製)、セルラーゼTP−3(協和化成株式会社)などを用いることができ、プロテアーゼには、プロテアーゼM(天野エンザイム株式会社製)、オリエンターゼ20A(エイチビィアイ株式会社製)などを用いることができる。
【0017】
これらの酵素は単独で用いてもよいし、2種類以上の酵素を混合して用いてもよい。
添加する酵素の量は、特に限定されず酵素の反応性に応じて添加すればよい。例えば、ペクチナーゼを用いた場合であれば、温州みかん100gに対して1〜100,000ユニットであることが好ましく、更に10〜10,000ユニットであることが好ましい。
【0018】
上記酵素を添加したのち、攪拌などにより酵素と搾汁残渣を均一に混合して酵素反応を進行させる。このときの反応温度としては、酵素が失活せず、かつ腐敗の起こりにくい条件、またクリプトキサンチンが喪失しない条件下で行うことが望ましい。具体的には、温度は0℃〜90℃、好ましくは0℃〜80℃、さらに好ましくは0℃〜70℃がよい。反応のpHとしては酵素の至適条件下で行うのが望ましいのは言うまでもなく、pH2〜12、好ましくはpH2.5〜8とするのがよい。反応時間は使用する搾汁残渣と酵素の量に依存するが、通常1〜48時間に設定するのが作業上好ましい。反応の際、この反応物を攪拌しながら反応を行ってもよいし、静置反応でもよい。
【0019】
酵素処理終了後、酵素処理された反応物そのままを用いてもよいし、なんらかの加工を行ったものを用いてもよい。具体的には、反応物を固液分離した残渣、固液分離した残渣を乾燥させたもの、固液分離せず反応物そのままを乾燥させたものなどを用いてもよい。また、酵素処理反応物を固液分離し、更に水を添加した後、再度固液分離することにより、酵素処理で生成した糖などの反応生成物を容易に除去することができる水洗浄法を用いると、不純物を簡単に取り除けるため好ましい。
【0020】
本発明における温州みかんの溶剤抽出物とは、温州みかん及び/又は温州みかんの酵素処理物から溶剤及び/又は超臨界二酸化炭素などを用いてクリプトキサンチンを含む成分を抽出したものである。抽出に用いる溶剤としては、原料である温州みかん又はその加工品よりヒト繊維芽細胞増殖促進及び/又はコラーゲン産生促進活性を持つ画分が得られ、本発明の効果を損なうものでなければいかなるものでもよい。また、一種類の溶媒を単独で用いても複数の溶媒を混合して用いてもよい。そのような溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、ポリエチレングリコール等のポリエーテル類、ピリジン類等が使用できる。これらうち、エタノールは抽出されるβ-クリプトキサンチンが多く好ましい。また、これらの有機溶媒で抽出する際には抽出効率をあげるために例えば水、界面活性剤等の添加物を本発明の効果を損なわない範囲で加えることができる。さらに、上記有機溶媒による抽出のほか、近年注目を浴びている技術である超臨界抽出法も利用することができる。
【0021】
更に、引き続いて加工を行い不純物類を取り除きクリプトキサンチンの純度を上げることもできる。例えば、濃縮、脱塩、分配精製、カラムクロマトグラフィーなどを用いることができる。また粉末化や乳化といった、抽出物の形状を変える処理も用いることができる。さらにこれらの方法を単独で行うばかりではなく、複数の方法を組み合わせて実施してもよい。
【0022】
本発明の組成物に含まれるクリプトキサンチンの量は特に限定されず、例えば組成物の質量100gに対し10pg〜10g含まれていればよい。中でも100pg〜1gが好適であり、10ng〜500mgは更に好適である。
【0023】
本発明の組成物は、クリプトキサンチン及び/又はそのエステル体の他に、スフィンゴ脂質を含んでいるとより効果が高まるため好ましい。スフィンゴ脂質は、スフィンゴシン塩基と脂肪酸が結合したものの総称であり、一般的にはセラミドとも呼ばれ、米、小麦などの穀物のほか、こんにゃく芋などの作物、りんごなどの果物に含まれることが知られている。本発明においては、温州みかんにもスフィンゴ脂質が含有されていることから、上述したクリプトキサンチンを取得する操作によってスフィンゴ脂質も同時に得ることができるため、温州みかんを原料とすることが好ましい。
【0024】
本発明の組成物に含まれるスフィンゴ脂質の量も特に限定されず、例えば組成物の質量100gに対し10pg〜10g含まれていればよい。中でも100pg〜1gが好適であり、10ng〜500mgは更に好適である。
【0025】
また本発明の組成物には、本発明の効果を維持・促進しうる他の成分を混合してもかまわない。混合可能な物質としては、例えば抗酸化剤、ビタミン類、コラーゲン、スクワラン、大豆レシチン、卵黄レシチン、ナイアシン、ナイアシンアミド、ヒアルロン酸、プラセンタエキス、ソルビトール、キチン、キトサン、及び種々の植物抽出物等が挙げられる。これらの混合量については、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されるものではない。
【0026】
本発明の飲食品とは、上記組成物を配合した、食料品、飲料品、嗜好品、サプリメント等、経口で摂取するものを指す。その形態は特に限定されるものではなく、パン類、麺類等主菜となりうるもの、チーズ、ハム、ウインナー、魚介加工品等副菜となりうるもの、果汁飲料、炭酸飲料、乳飲料等の飲料、クッキー、ケーキ、ゼリー、プリン、キャンディー、ヨーグルト等の嗜好品等とすることができる。また、サプリメントとしての形態も特に限定されるものではなく、錠剤、カプセル、ソフトカプセル、栄養ドリンク状の形態をとることもできる。
【0027】
組成物の配合量は特に限定されるものではなく、例えばクリプトキサンチンが組成物の質量100gに対し10pg〜10g含まれていればよい。中でも100pg〜1gが好適であり、10ng〜500mgは更に好適である。またスフィンゴ脂質の量も特に限定されず、例えば組成物の質量100gに対し10pg〜10g含まれていればよい。中でも100pg〜1gが好適であり、10ng〜500mgは更に好適である。
【0028】
本発明の化粧品とは、上記組成物を配合した化粧水、乳液、ファンデーション、口紅などを指す。
【0029】
組成物の配合量は特に限定されるものではなく、例えばクリプトキサンチンが組成物の質量100gに対し10pg〜10g含まれていればよい。中でも100pg〜1gが好適であり、10ng〜500mgは更に好適である。またスフィンゴ脂質の量も特に限定されず、例えば組成物の質量100gに対し10pg〜10g含まれていればよい。中でも100pg〜1gが好適であり、10ng〜500mgは更に好適である。
【0030】
また本発明の皮膚外用剤又は医薬品とは、上記組成物を配合したローション、クリーム、軟膏、スプレー、貼付剤(材)などの形状のものを指すが、その形態は特に限定されるものではなく、本発明の目的とするヒト繊維芽細胞増殖促進及び/又はコラーゲン産生促進効果を発揮しうるものであればいかなる形態でもかまわない。
【0031】
組成物の配合量は特に限定されるものではなく、例えばクリプトキサンチンが組成物の質量100gに対し10pg〜10g含まれていればよい。中でも100pg〜1gが好適であり、10ng〜500mgは更に好適である。またスフィンゴ脂質の量も特に限定されず、例えば組成物の質量100gに対し10pg〜10g含まれていればよい。中でも100pg〜1gが好適であり、10ng〜500mgは更に好適である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
クリプトキサンチンの測定は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。HPLC装置として、島津製作所製LC−10Aを用い、ウォーターズ社製ResolveC18(φ3.9×150mm)カラムを接続し、メタノールを等量加えた試料を導入した。移動相には、メタノール:酢酸エチル=7:3、カラム温度30℃、流速1.0ml/min、検出波長450nmで含有量を分析した。
【0034】
スフィンゴ脂質(セラミド)の測定は、検出器として蒸発型光散乱検出器(ELSD)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用した。HPLC装置として、島津製作所製LC−10Aを用い、GLサイエンス社製Intertsil Sil 100−5(φ4.6×150mm)カラムとアステック社製ELSD検出器(Alltech 500)を接続した。試料はクロロホルム:メタノール=2:1(v/v)に溶解して導入し、溶出溶媒にはクロロホルムとメタノール:水=95:5(v/v)の2液によるグラジェントを用いた。カラム温度は35℃、流速は1ml/min、ドリフトチューブ温度は85℃、ガス流速は3.2SLPMであった。
【0035】
実施例1
温州みかんの搾汁残渣を凍結乾燥物し、ナイフ式粉砕機(Retsch社、GM200)にて5分間粉砕後、300メッシュの篩を通過する粉砕物(組成物1)を得た。組成物1中のβ-CX濃度はフリー対換算で200μg/g、セラミド濃度は500μg/gであった。
【0036】
実施例2
温州みかんの搾汁残渣の凍結乾燥物をナイフ式粉砕機(Retsch社、GM200)にて5分間粉砕し、300メッシュの篩を通過する粉砕物を回収した。前記粉砕物20gに500mlのエタノールを添加し、室温で2時間かくはん後、ろ過を行い、ろ液(組成物2)を得た。組成物2中のβ-CX濃度はフリー対換算で5μg/ml、セラミド濃度は10μg/mlであった。
【0037】
実施例3
温州みかんの搾汁残渣の凍結乾燥物をナイフ式粉砕機(Retsch社、GM200)にて5分間粉砕し、300メッシュの篩を通過する粉砕物を回収した。前記粉砕物50gに500mlのエタノールを添加し、室温で2時間かくはん後、ろ過してみかん抽出液を得た。
【0038】
得られた温州みかん抽出液100mlに100mlの10%(w/v)γ-シクロデキストリン水溶液と300mlの蒸留水を加えて室温で30分撹拌した後、凍結乾燥・粉砕して組成物3を得た。組成物3にはβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で1.0mg/g、セラミドが2.5 mg/g含まれていた。
【0039】
実施例4
温州みかんの搾汁残渣の凍結乾燥物をナイフ式粉砕機(Retsch社、GM200)にて5分間粉砕し、300メッシュの篩を通過する粉砕物を回収した。前記粉砕物50gに500mlのエタノールを添加し、室温で2時間かくはん後、ろ過して得られたみかん抽出液を減圧濃縮した。濃縮物を100mlのエタノールに溶解後、不溶物をろ過して清澄な抽出液を得た。この抽出液5mlを1Lの1,3-ブチレングリコールと混合して組成物4を得た。組成物4にはβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で1.0mg/L、セラミドが2.5 mg/L含まれていた。
【0040】
試験例1〔培養細胞に対するβ-クリプトキサンチンとセラミドの効果〕
ヒト繊維芽細胞(NHDF:東洋紡ライフサイエンス)の培養には血清濃度が0.5%の低血清培地を用いた。
NHDFをフラスコに3000個/cm2の密度で播種し、5%炭酸ガス下,37℃暗所で24時間培養した。細胞がフラスコに生着したことを確認後、試料添加培地に交換し2日ごとに培地を交換しながら培養を継続した。
【0041】
試料添加培地に交換後、3,5,11日後の生細胞数を発色試薬(CCK8:同仁堂)により測定し、相対細胞数を比較した。また48時間のコラーゲン産生量を培地中に遊離したI型プロコラーゲンC末端ペプチド(PIP)をPIP測定キット(宝バイオ)で測定した。なお、試料にはβ-クリプトキサンチン(終濃度25ng/ml :EXTRATHINTASE社)とグルコシルセラミド(終濃度50ng/ml Avanti Polar Lipids社)のどちらか一方又は両方を使用し、対照として試料無添加での試験を実施した。
【0042】
その結果、β-クリプトキサンチンにはNHDFの増殖促進効果とコラーゲン産生促進効果が認められたが、グルコシルセラミドにはこれらの効果は認められなかった。一方、β-クリプトキサンチンとセラミドの両方の添加によるNHDFの増殖促進効果とコラーゲン産生促進効果はβ-クリプトキサンチンを単独で与えた場合よりも高まっていた(図1,2)。
【0043】
試験例2〔培養細胞に対する温州みかん抽出物の効果〕
試験例1と同様の試験を組成物2添加の培地で実施した。すなわち、組成物2を無菌環境下でフィルター滅菌して無菌抽出物を得、これを培地容積に対し1/2000量を添加(終濃度:β-クリプトキサンチン2.5ng/ml、セラミド5ng/ml)して試料添加培地とした。なお、試料無添加培地で同様の試験を実施して対照とした。
【0044】
その結果、対照に比べ、組成物2の添加によりNHDFの増殖とコラーゲン産生量が増大していた(図3,4)。
【0045】
試験例3〔3次元皮膚モデルに対する効果〕
ヒト再構成皮膚モデル(LSE-high:東洋紡ライフサイエンス)を、組成物2を1/4000量添加した培地(終濃度:β-クリプトキサンチン1.25ng/ml、セラミド2.5ng/ml)を用いて7日間培養した。培養後、表皮部分を剥離し、ホルマリン固定後に組織切片を作成した。また試料無添加培地で同様の試験を実施して対照とし、表皮の厚み(角質部分を除く)を比較した。
その結果、試料の添加により表皮層の厚みが増しており、繊維芽細胞が活性化していたことが推察された(図5)。
【0046】
実施例4〔美容用飲食品:ソフトカプセルの製造〕
次に示す製法により、本発明の美容用飲食品の一態様であるソフトカプセルを製造した。
成分 配合量(100g中)
1)組成物1 50g
2)サフラワー油 50g
製法:1)と2)を均一に混合後、ゼラチン、蜜蝋などからなるソフトカプセル包材内に300mg/錠で充填する。
【0047】
実施例5〔美容用飲食品:タブレットの製造〕
次に示す製法により、本発明の美容用飲食品の一態様である美容タブレットを製造した。
成分 配合量(100g中)
1)組成物2 5000mg
2)マルチトール 50.0g
3)結晶セルロース 31.0g
4)ショ糖脂肪酸エステル 8.0g
5)ビタミンC 10.0g
6)甘味料 適量
7)酸味料 適量
8)香料 適量
製法:1)から8)を均一に混合して、常法により顆粒状にした後、0.5g/錠で打錠する。
【0048】
実施例6〔美容用飲食品:ドリンクタイプの製造〕
次に示す製法により、本発明の美容用飲食品の一態様である美容ドリンクを製造した。
成分 配合量(100mL中)
1)組成物3 200mg
2)ハチミツ 320mg
3)環状オリゴ糖 600mg
4)甘味料 適量
5)酸味料 適量
6)保存料 適量
7)香料 適量
8)水 残余
製法:8)に1)から7)を順次添加する。
【0049】
実施例7〔口紅の製造〕
次に示す製法により、本発明の化粧品の一態様である口紅を製造した。
成分 配合量(10g中)
1)組成物4 0.5g
2)キャスターオイル 7.5g
3)キャンデリラワックス 2.0g
4)カラーラント 適量
5)保存料 適量
製法:2)と3)を容器に入れ、温浴中で溶解・撹拌し、十分に混合されたら1)と3)と4)を加えて全体が均一になるよう撹拌混合し、容器に入れて固化させる。
【0050】
実施例8〔皮膚外用剤〕
次に示す製法により、本発明の化粧品の一態様である皮膚外用剤を製造した。
成分 配合量(100g中)
1)組成物4 2.0g
2)ビーズワックス 28g
3)グレープシードオイル 70g
製法: 2)と3)を容器に入れ、温浴中で溶解・撹拌し、十分に混合されたら1)を加えて全体が均一になるよう撹拌混合し、容器に入れて固化させる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】β−クリプトキサンチン及び/又はセラミドの繊維芽細胞増殖促進効果を示す図である。
【図2】β−クリプトキサンチン及び/又はセラミドのコラーゲン産生促進効果を示す図である。
【図3】温州みかん抽出物の繊維芽細胞増殖促進効果を示す図である。
【図4】温州みかん抽出物のコラーゲン産生促進効果を示す図である。
【図5】温州みかん抽出物の再構成皮膚モデルへの効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリプトキサンチン及び/又はそのエステル体を含有することを特徴とする繊維芽細胞増殖促進効果及び/又はコラーゲン産生促進効果を有する組成物。
【請求項2】
クリプトキサンチン及び/又はそのエステル体が、温州みかん、温州みかんの酵素処理物及び温州みかんの溶媒抽出物からなる群から選ばれる1以上のものに由来するものである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
さらに、スフィンゴ脂質を含有する請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
クリプトキサンチン及び/又はそのエステル体とスフィンゴ脂質とが、温州みかん、温州みかんの酵素処理物及び温州みかんの溶媒抽出物からなる群から選ばれる1以上のものに由来するものである請求項3記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする化粧品。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−297216(P2008−297216A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141880(P2007−141880)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】