説明

置換カルコゲノアセン化合物及び該化合物を含有する有機半導体デバイス

【課題】有機半導体デバイスに用いることのできる置換カルコゲノアセン化合物を提供するとともに、該化合物を用いた、キャリア電界効果移動度が十分な有機半導体デバイスを提供する。
【解決手段】式(1)で表される置換カルコゲノアセン化合物。


(式中、
W、X、Y及びZは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子を表す。
及びRは、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルコキシ基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基、炭素数2〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキニル基、炭素数7〜36のフッ素原子を有していてもよいアリール基又は炭素数5〜34のフッ素原子を有していてもよいヘテロアリール基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換カルコゲノアセン化合物及び該化合物を含有する有機半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
オクチルトリクロロシラン処理されたSiO/Si基板に、式(1a)で表される置換カルコゲノアセン化合物を昇華して、薄膜が得られることが非特許文献1に記載されている。そして、該薄膜を含有する有機半導体デバイスは、20℃におけるキャリア電界効果移動度として0.04cm/Vsを示すことも非特許文献1に記載されている。

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Ying Liu, Ying Wang, Weiping Wu, Yunqi Liu, Advanced Functional Materials 19,772-778 (2009) Table 2.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のカルコゲノアセン化合物を用いた有機半導体デバイスのキャリア電界効果移動度は十分ではなく、さらにキャリア電界効果移動度を向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは、有機半導体デバイスに用いられる置換カルコゲノアセン化合物について鋭意検討した結果、以下の本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明によれば、下記[1]〜[11]が提供される。
[1] 式(1)で表される置換カルコゲノアセン化合物。

(式中、
W、X、Y及びZは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子を表す。
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルコキシ基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基、炭素数2〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキニル基、炭素数7〜36のフッ素原子を有していてもよいアリール基又は炭素数5〜34のフッ素原子を有していてもよいヘテロアリール基を表し、
該アリール基は、フッ素原子を有していてよいアルキル基、フッ素原子を有していてよいアルコキシ基又はフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基を有するアリール基であり、該ヘテロアリール基は、フッ素原子を有していてよいアルキル基、フッ素原子を有していてよいアルコキシ基又はフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基を有するヘテロアリール基である。)
[2] 前記W、X、Y及びZが、硫黄原子であることを特徴とする、[1]に記載の置換カルコゲノアセン化合物。
[3] 前記R及びRが、炭素数8〜26の、フッ素原子を有していてもよいアルキル基を有するフェニル基であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の置換カルコゲノアセン化合物。
[4] 前記R及びRが、炭素数8〜26の、フッ素原子を有していてもよいアルコキシ基を有するフェニル基であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の置換カルコゲノアセン化合物。
[5] 前記R及びRが、炭素数2〜20の、フッ素原子を有していてもよいアルキル基であって、R及びRが同一であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の置換カルコゲノアセン化合物。
[6] 前記R及びRが、炭素数2〜20の、フッ素原子を有していてもよいアルコキシ基であって、R及びRが同一であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の置換カルコゲノアセン化合物。
[7] 前記R及びRが、炭素数6〜24の、フッ素原子を有していてもよいアルキル基を有するチエニル基であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の置換カルコゲノアセン化合物。
[8] 遷移金属触媒及び塩基の存在下、
式(2)で表される化合物と、

(式中、
W、X、Y及びZは、それぞれ独立に、酸素、硫黄、セレン又はテルル原子を表す。
及びQは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はトリフラート残基を表す。)
式(3)で表される化合物を反応させる工程を含む、前記式(1)で表される置換カルコゲノアセン化合物の製造方法。

(式中、
は、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルコキシ基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基、炭素数2〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキニル基、炭素数7〜36のフッ素原子を有していてよいアリール基又は炭素数5〜34のフッ素原子を有していてもよいヘテロアリール基を表し、
該アリール基はフッ素原子を有していてよいアルキル基、フッ素原子を有していてよいアルコキシ基又はフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基を有するアリール基であり、該へテロアリール基はフッ素原子を有していてよいアルキル基、フッ素原子を有していてよいアルコキシ基又はフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基を有するヘテロアリール基である。
及びRは、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリールオキシ基を表し、R及びRが結合してホウ素原子とともに環構造を形成していてもよい。)
[9] [1]〜[7]のいずれかに記載の置換カルコゲノアセン化合物と高分子有機半導体材料とを含有する組成物。
[10] [1]〜[7]のいずれかに記載の置換カルコゲノアセン化合物又は[9]に記載の組成物を含有する薄膜。
[11] [10]に記載の薄膜を有する有機半導体デバイス。
[12] 有機トランジスタである、[10]に記載の有機半導体デバイス。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有機半導体デバイスに用いることのできる置換カルコゲノアセン化合物を提供することができる。また、該化合物を用いた、キャリア電界効果移動度が十分な有機半導体デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明における有機トランジスタの一つの態様を説明する断面図である。
【図2】本発明における有機トランジスタの一つの態様を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
前記式(1)で表される置換カルコゲノアセン化合物(以下、「化合物(1)」と記すことがある。)に含まれるW、X、Y及びZは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子を表し、有機半導体デバイスのキャリア電界効果移動度の観点から、好ましくは、W、X、Y及びZがいずれも硫黄原子である。
【0011】
前記R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルコキシ基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基、炭素数2〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキニル基、炭素数7〜36のフッ素原子を有していてもよいアリール基又は炭素数5〜34のフッ素原子を有していてもよいヘテロアリール基を表し、
該アリール基は、フッ素原子を有していてよいアルキル基、フッ素原子を有していてよいアルコキシ基又はフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基を有するアリール基であり、該ヘテロアリール基は、フッ素原子を有していてよいアルキル基、フッ素原子を有していてよいアルコキシ基又はフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基を有するヘテロアリール基である。
【0012】
前記R及びRで表される炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキル基としては、直鎖状、分枝状、環状のいずれでもよい。
【0013】
フッ素原子を有しないアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、2−ヘキシルオクチル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−ヘキシルデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、n−ペンタコシル基、n−ヘキサコシル基、n−ヘプタコシル基、n−オクタコシル基、n−ノナコシル基及びn−トリアコンチル基等が挙げられ、
好ましくは、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、2−ヘキシルオクチル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、2−ヘキシルデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基及びn−イコシル基が挙げられ、
さらに好ましくは、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−ヘキシルオクチル基、3,7−ジメチルオクチル基、n−ノニル基、n−デシル基及び2−ヘキシルデシル基が挙げられる。
フッ素原子を有するアルキル基の具体例としては、上記のフッ素原子を有しないアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置き換わったものが挙げられる。
【0014】
前記R及びRで表される炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキル基としては、フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルキル基が好ましく、フッ素原子を有しない炭素数2〜20のアルキル基がさらに好ましい。
【0015】
前記R及びRで表される炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状、環状のいずれでもよい。
【0016】
フッ素原子を有しないアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−ヘキシルオクチルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、2−ヘキシルデシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基、n−ヘンイコシルオキシ基、n−ドコシルオキシ基、n−トリコシルオキシ基、n−テトラコシルオキシ基、n−ペンタコシルオキシ基、n−ヘキサコシルオキシ基、n−ヘプタコシルオキシ基、n−オクタコシルオキシ基、n−ノナコシルオキシ基及びn−トリアコンチルオキシ基等が挙げられ、
好ましくは、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−ヘキシルオクチルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、2−ヘキシルデシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基及びn−イコシルオキシ基が挙げられ、
さらに好ましくは、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−ヘキシルオクチルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基及び2−ヘキシルデシルオキシ基が挙げられる。
フッ素原子を有するアルコキシ基の具体例としては、上記のフッ素原子を有しないアルコキシ基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置き換わったものが挙げられる。
【0017】
前記R及びRで表される炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルコキシ基としては、フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルコキシ基が好ましく、フッ素原子を有しない炭素数2〜20のアルコキシ基がさらに好ましい。
【0018】
前記R及びRで表される炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基としては、直鎖状、分枝状、環状のいずれでもよい。
【0019】
フッ素原子を有しないアルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピチオル基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、シクロペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、シクロヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−ヘキシルオクチルチオ基、n−ノニルチオ基、n−デシルチオ基、2−ヘキシルデシルチオ基、n−ウンデシルチオ基、n−ドデシルチオ基、n−トリデシルチオ基、n−テトラデシルチオ基、n−ペンタデシルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基、n−ヘプタデシルチオ基、n−オクタデシルチオ基、n−ノナデシルチオ基、n−イコシルチオ基、n−ヘンイコシルチオ基、n−ドコシルチオ基、n−トリコシルチオ基、n−テトラコシルチオ基、n−ペンタコシルチオ基、n−ヘキサコシルチオ基、n−ヘプタコシルチオ基、n−オクタコシルチオ基、n−ノナコシルチオ基及びn−トリアコンチル基等が挙げられ、
好ましくは、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、n−ペンチチオル基、イソペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、シクロペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、シクロヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−ヘキシルオクチルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、シクロオクチルチオ基、n−ノニルチオ基、n−デシルチオ基、2−ヘキシルデシルチオ基、n−ウンデシルチオ基、n−ドデシルチオ基、n−トリデシルチオ基、n−テトラデシルチオ基、n−ペンタデシルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基、n−ヘプタデシルチオ基、n−オクタデシルチオ基、n−ノナデシルチオ基及びn−イコシルチオ基等が挙げられ、
さらに好ましくは、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−ヘキシルオクチルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、n−ノニルチオ基、n−デシルチオ基及び2−ヘキシルデシルチオ基が挙げられる。
フッ素原子を有するアルキルチオ基の具体例としては、上記のフッ素原子を有しないアルキルチオ基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置き換わったものが挙げられる。
【0020】
前記R及びRで表される炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基としては、フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルキルチオ基が好ましく、フッ素原子を有しない炭素数2〜20のアルキルチオ基がさらに好ましい。
【0021】
前記R及びRで表される炭素数2〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキニル基としては、直鎖状、分枝状、環状のいずれでもよい。
【0022】
フッ素原子を有しないアルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1−ヘプチニル基、1−オクチニル基、1−ノニニル基、1−デキニル基、1−ウンデキニル基、1−ドデキニル基、1−トリデキニル基、1−テトラデキニル基、1−ペンタデキニル基、1−ヘキサデキニル基、1−ヘプタデキニル基、1−オクタデキニル基、1−ノナデキニル基、1−イコシニル基、1−ヘンイコシニル基、1−ドコシニル基、1−トリコシニル基、1−テトラコシニル基、1−ペンタコシニル基、1−ヘキサコシニル基、1−ヘプタコシニル基、1−オクタコシニル基、1−ノナコシニル基、1−トリアコンチニル基、(トリメチルシリル)エチニル基、(トリエチルシリル)エチニル基及び(トリイソプロピルシリル)エチニル基が挙げられ、
好ましくは、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1−ヘプチニル基、1−オクチニル基、1−ノニニル基、1−デキニル基、1−ウンデキニル基、1−ドデキニル基、1−トリデキニル基、1−テトラデキニル基、1−ペンタデキニル基、1−ヘキサデキニル基、1−ヘプタデキニル基、1−オクタデキニル基、1−ノナデキニル基、1−イコシニル基、(トリメチルシリル)エチニル基、(トリエチルシリル)エチニル基及び(トリイソプロピルシリル)エチニル基等が挙げられ、
さらに好ましくはエチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1−ヘプチニル基、1−オクチニル基、1−ノニニル基、1−デキニル基、1−ウンデキニル基、1−ドデキニル基、1−トリデキニル基、1−テトラデキニル基、1−ペンタデキニル基、1−ヘキサデキニル基、(トリメチルシリル)エチニル基、(トリエチルシリル)エチニル基及び(トリイソプロピルシリル)エチニル基が挙げられる。
フッ素原子を有するアルキニル基の具体例としては、上記のフッ素原子を有しないアルキニル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置き換わったものが挙げられる。
【0023】
前記R及びRで表される炭素数2〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキニル基としては、フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基が好ましく、フッ素原子を有しない炭素数2〜20のアルキニル基がさらに好ましい。
【0024】
前記R及びRで表されるアリール基を構成する全ての炭素数は7〜36、好ましくは、8〜26である。キャリア電界効果移動度がさらに向上するためである。
前記R及びRで表されるアリール基が有する「フッ素原子を有していてよいアルキル基」は、前記の「フッ素原子を有していてよいアルキル基」と同様のものが例示され、フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルキル基が好ましい。
前記R及びRで表されるアリール基が有する「フッ素原子を有していてよいアルコキシ基」は、前記の「フッ素原子を有していてよいアルコキシ基」と同様のものが例示され、フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルコキシ基が好ましい。
前記R及びRで表されるアリール基が有する「フッ素を有していてよいアルキルチオ基」としては、前記「フッ素原子を有していてよいアルキルチオ基」と同様のものが例示され、フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルキルチオ基が好ましい。
【0025】
前記R及びRで表されるアリール基は、「フッ素原子を有していてよいアルキル基」、「フッ素原子を有していてよいアルコキシ基」又は「フッ素原子を有していてよいアルキルチオ基」を有するアリール基であるが、該アリール基としては、「フッ素原子を有していてよいアルキル基」、「フッ素原子を有していてよいアルコキシ基」又は「フッ素原子を有していてよいアルキルチオ基」を有するフェニル基、「フッ素原子を有していてよいアルキル基」、「フッ素原子を有していてよいアルコキシ基」又は「フッ素原子を有していてよいアルキルチオ基」を有する1−ナフチル基、「フッ素原子を有していてよいアルキル基」、「フッ素原子を有していてよいアルコキシ基」又は「フッ素原子を有していてよいアルキルチオ基」を有する2−ナフチル基等を挙げられ、キャリア電界効果移動度の観点から、該フェニル基が好ましい。
また、前記R及びRで表されるアリール基としては、好ましくは、「フッ素原子を有していてよいアルキル基」又は「フッ素原子を有していてもよいアルコキシ基」を有するアリール基であり、より好ましくは、「フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルキル基」を有するアリール基又は「フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルコキシ基」を有するアリール基であり、中でもより好ましくは、「フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルキル基」を有する炭素数8〜26のアリール基又は「フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルコキシ基」を有するアリール基である。
【0026】
前記R及びRで表されるヘテロアリール基の「ヘテロアリール基」とは、アリール基の芳香環に含まれる炭素原子の少なくとも1つが、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子などのヘテロ原子に置き換えられた基を意味し、
例えば、チエニル基、フリル基、チアゾリル基、チエノ[3,2−b]チエニル基、ジチエノ[3,2-b:2´,3´-d]チオフェン基、フロロ[3,2−b]フリル基、チエノ[3,2−b]フリル基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾ[b]フリル基等が挙げられ、キャリア電界効果移動度の観点から、好ましくは、チエニル基、チエノ[3,2−b]チエニル基、ジチエノ[3,2-b:2´,3´-d]チオフェン基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾ[b]フリル基が好ましく、とりわけ、チエニル基が好ましい。
【0027】
前記R及びRで表されるヘテロアリール基を構成する全ての炭素数は5〜34である。
前記R及びRで表されるヘテロアリール基が有する「フッ素原子を有していてよいアルキル基」は、前記の「フッ素原子を有していてよいアルキル基」と同様のものが例示され、「フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルキル基」が好ましい。
前記R及びRで表されるヘテロアリール基が有する「フッ素原子を有していてよいアルコキシ基」は、前記の「フッ素原子を有していてよいアルコキシ基」と同様のものが例示され、「フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルコキシ基」が好ましい。
前記R及びRで表されるヘテロアリール基が有する「フッ素を有していてよいアルキルチオ基」としては、前記の「フッ素原子を有していてよいアルキルチオ基」と同様のものが例示され、「フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルキルチオ基」が好ましい。
【0028】
前記R及びRで表されるヘテロアリール基としては、キャリア電界効果移動度の観点から、好ましくは、「フッ素原子を有していてよいアルキル基」を有するチエニル基であり、より好ましくは、「フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルキル基」を有するチエニル基であり、中でもより好ましくは、「フッ素原子を有していてもよい炭素数2〜20のアルキル基」を有する炭素数6〜24のチエニル基である。
【0029】
前記化合物(1)としては、例えば、表1〜9で示される化合物を挙げることができる。なお、表中で用いられているR´及びR´はそれぞれ、前記R及びRの構成要素の一部である。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
【表4−1】

【0034】
【表4−2】

【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
【表7】

【0038】
【表8】

【0039】
【表9】

【0040】
前記化合物(1)で好ましいものを表中の化合物番号で挙げると、
(1−1−1)、(1−1−2)、(1−1−3)、(1−1−4)、(1−1−5)、(1−1−6)、(1−1−7)、(1−1−8)、(1−1−9)、(1−1−10)、(1−1−11)、(1−1−12)、(1−1−13)、(1−1−14)、(1−1−15)、(1−1−16)、(1−1−17)、(1−1−18)、(1−1−24)、(1−1−25)、(1−2−1)、(1−2−2)、(1−2−3)、(1−2−4)、(1−2−5)、(1−2−7)、(1−2−8)、(1−2−9)、(1−2−10)、(1−2−11)、(1−2−12)、(1−2−13)、(1−2−14)、(1−2−15)、(1−2−16)、(1−2−17)、(1−2−18)、(1−2−24)、(1−2−25)(1−3−1)、(1−3−2)、(1−3−3)、(1−3−4)、(1−3−5)、(1−3−7)、(1−3−8)、(1−3−9)、(1−3−10)、(1−3−11)、(1−3−12)、(1−3−13)、(1−3−14)、(1−3−15)、(1−3−16)、(1−3−17)、(1−3−18)、(1−4−1)、(1−4−2)、(1−4−3)、(1−4−4)、(1−4−5)、(1−4−6)、(1−4−7)、(1−4−8)、(1−4−9)、(1−4−10)、(1−4−11)、(1−4−12)、(1−4−13)、(1−4−14)、(1−4−15)、(1−4−16)、(1−4−17)、(1−4−18)、(1−4−19)、(1−4−20)、(1−4−21)、(1−4−32)、(1−4−33)、(1−4−34)、(1−5−1)、(1−5−2)、(1−5−3)、(1−5−4)、(1−5−5)、(1−5−6)、(1−5−7)、(1−5−8)、(1−5−9)、(1−5−10)、(1−5−11)、(1−5−12)、(1−5−13)、(1−5−14)、(1−5−15)、(1−5−16)、(1−5−17)、(1−5−18)、(1−5−24)、(1−5−25)、(1−6−1)、(1−6−2)、(1−6−3)、(1−6−4)、(1−6−5)、(1−6−6)、(1−6−7)、(1−6−8)、(1−6−9)、(1−6−10)、(1−6−11)、(1−6−12)、(1−6−13)、(1−6−14)、(1−6−15)、(1−6−16)、(1−6−17)、(1−6−18)、(1−6−24)、(1−6−25)、(1−7−1)、(1−7−2)、(1−7−3)、(1−7−4)、(1−7−5)、(1−7−6)、(1−7−7)、(1−7−8)、(1−7−9)、(1−7−10)、(1−7−11)、(1−7−12)、(1−7−13)、(1−7−14)、(1−7−15)、(1−7−16)、(1−7−17)、(1−7−18)、(1−7−24)、(1−7−25)、(1−8−1)、(1−8−2)、(1−8−3)、(1−8−4)、(1−8−5)、(1−8−6)、(1−8−7)、(1−8−8)、(1−8−9)、(1−8−10)、(1−8−11)、(1−8−12)、(1−8−13)、(1−8−14)、(1−8−15)、(1−8−16)、(1−8−17)、(1−8−18)、(1−8−24)、(1−8−25)、(1−9−1)、(1−9−2)、(1−9−3)、(1−9−4)、(1−9−5)、(1−9−6)、(1−9−7)、(1−9−8)、(1−9−9)、(1−9−10)、(1−9−11)、(1−9−12)、(1−9−13)が挙げられ、
さらに好ましいものを挙げると、(1−1−1)、(1−1−2)、(1−1−3)、(1−1−5)、(1−1−7)、(1−1−8)、(1−1−9)、(1−1−10)、(1−1−11)、(1−1−12)、(1−1−13)、(1−1−14)、(1−1−15)、(1−1−16)、(1−1−17)、(1−1−18)、(1−2−1)、(1−2−2)、(1−2−3)、(1−2−5)、(1−2−7)、(1−2−8)、(1−2−9)、(1−2−10)、(1−2−11)、(1−2−12)、(1−2−13)、(1−2−14)、(1−2−15)、(1−2−16)、(1−2−17)、(1−2−18)、(1−4−2)、(1−4−3)、(1−4−4)、(1−4−5)、(1−4−6)、(1−4−8)、(1−4−9)、(1−4−10)、(1−4−11)、(1−4−12)、(1−4−13)、(1−4−14)、(1−4−15)、(1−4−16)、(1−4−17)、(1−4−18)、(1−4−19)、(1−4−20)、(1−4−21)、(1−4−32)、(1−4−33)、(1−4−34)、(1−5−1)、(1−5−2)、(1−5−3)、(1−5−5)、(1−5−6)、(1−5−7)、(1−5−8)、(1−5−9)、(1−5−10)、(1−5−11)、(1−5−12)、(1−5−13)、(1−5−14)、(1−5−15)、(1−5−16)、(1−5−17)、(1−5−18)、(1−6−1)、(1−6−2)、(1−6−3)、(1−6−5)、(1−6−6)、(1−6−7)、(1−6−8)、(1−6−9)、(1−6−10)、(1−6−11)、(1−6−12)、(1−6−13)、(1−6−14)、(1−6−15)、(1−6−16)、(1−6−17)、(1−6−18)、(1−7−1)、(1−7−2)、(1−7−3)、(1−7−5)、(1−7−6)、(1−7−7)、(1−7−8)、(1−7−9)、(1−7−10)、(1−7−11)、(1−7−12)、(1−7−13)、(1−7−14)、(1−7−15)、(1−7−16)、(1−7−17)、(1−7−18)、(1−8−1)、(1−8−2)、(1−8−3)、(1−8−5)、(1−8−6)、(1−8−7)、(1−8−8)、(1−8−9)、(1−8−10)、(1−8−11)、(1−8−12)、(1−8−13)、(1−8−14)、(1−8−15)、(1−8−16)、(1−8−17)、(1−8−18)、(1−9−2)、(1−9−3)、(1−9−7)、(1−9−8)、(1−9−9)、(1−9−10)、(1−9−11)が挙げられる。
【0041】
前記化合物(1)の製造方法としては、例えば、遷移金属触媒及び塩基の存在下、
式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)と記すことがある)と、

(式中、
W、X、Y及びZは、それぞれ独立に、酸素、硫黄、セレン又はテルル原子を表す。
及びQは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はトリフラート残基を表す。)
式(3)で表される化合物(以下、化合物(3)と記すことがある)を反応させる工程(以下、本工程と記すことがある)を含む製造方法を挙げることができる。

(式中、
は、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルコキシ基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基、炭素数2〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキニル基、炭素数7〜36のフッ素原子を有していてよいアリール基又は炭素数5〜34のフッ素原子を有していてもよいヘテロアリール基を表し、
該アリール基はフッ素原子を有していてよいアルキル基、フッ素原子を有していてよいアルコキシ基又はフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基を有するアリール基であり、該へテロアリール基はフッ素原子を有していてよいアルキル基、フッ素原子を有していてよいアルコキシ基又はフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基を有するヘテロアリール基である。
及びRは、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリールオキシ基を表し、R及びRが結合してホウ素原子とともに環構造を形成していてもよい。)
【0042】
前記Rは前記Rと同様の意味を表し、同様のものが好ましい。また、前記R及びRが結合してホウ素原子とともに環構造を形成する場合は、R及びRが酸素原子を介して環を形成していてもよい。)
【0043】
前記R及びRの炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、1,2−ジメチルプロピル基等の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。
前記R及びRの炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
前記R及びRの炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
前記RとRが結合してホウ素原子とともに環構造を形成する場合、好ましい例としては、1,3,2−ジオキサボロラン環、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン環、5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン環、1,3,2−ベンゾジオキサボロール環及び9−ボラビシクロ3,3,1−ノナン環が挙げられる。
【0045】
前記本工程に用いられる遷移金属触媒としては、例えば、パラジウム触媒又はニッケル触媒が挙げられる。パラジム触媒としては、市販されているものを用いてもよいし、予めパラジウム化合物とホスフィン化合物を混合させて調製したものを用いてもよいし、パラジウム化合物とホスフィン化合物を、前記化合物(2)と前記化合物(3)を含む反応系に加えて、反応系中で調製してもよい。
【0046】
前記パラジウム触媒としては、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(アセテート)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロパラジウム(II)、ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(ジメチルフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス[トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン]パラジウム(II)、テトラキス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(1,1’−ジフェニルホスフィノフェロセニル)パラジウム(II)などが挙げられる。かかるパラジウム化合物は通常市販されているものが用いられる。
【0047】
前記パラジウム化合物としては、例えば、トリス(ジベンシリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)・クロロホルム付加体、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)ジクロロパラジウム(II)、(2,2’−ビピリジル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)クロロニトロパラジウム(II)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジクロロ(エチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロ(N,N,N’,N’−テトラメチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロ(1,10−フェナントロリン)パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナート、臭化パラジウム(II)、パラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ヨウ化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)等が挙げられる。かかるパラジウム化合物は通常市販されているものが用いられる。
【0048】
前記ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス(4−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリ(3−クロロフェニル)ホスフィン、トリ(4−クロロフェニル)ホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1,2−ジフェニルホスフィノエタン、1,3−ジフェニルホスフィノプロパン、1,4−ジフェニルホスフィノブタン、1,2−ジシクロヘキシルホスフィノエタン、1,3−ジシクロヘキシルホスフィノプロパン、1,4−ジシクロヘキシルホスフィノブタン、1,2−ジメチルホスフィノエタン、1,3−ジメチルホスフィノプロパン、1,4−ジメチルホスフィノブタン、1,2−ジエチルホスフィノエタン、1,3−ジエチルホスフィノプロパン、1,4−ジエチルホスフィノブタン、1,2−ジイソプロピルホスフィノエタン、1,3−ジイソプロピルホスフィノプロパン、1,4−ジイソプロピルホスフィノブタン、トリ−2−フリルホスフィン、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−ジ−tert−ブチルホスフィノ−2’−メチルビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−6’−ジメトキシ、1,1’−ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−メチル−ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,4’,6’−トリ−イソプロピル1,1’−ビフェニル、1,1‘−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,1’−ビス(ジ−イソプロピルホスフィノ)フェロセンなどが挙げられる。かかるホスフィン化合物としては、市販されているものを用いてもよいし公知の方法に準じて製造したものを用いてもよい。ホスフィン化合物の使用量は、前記パラジウム化合物1モルに対して、例えば、0.5〜10モルであり、好ましくは1〜5モルである。
【0049】
前記ニッケル触媒としては、例えば、ジクロロビス(1,1’−ジフェニルホスフィノフェロセニル)ニッケル(II)、ジクロロビス(ジフェニルホスフィノ)ニッケル(II)、ジクロロニッケル(II)、ジヨードニッケル(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(II)、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)等が挙げられる。
【0050】
前記遷移金属触媒の使用量は、前記化合物(2)1モルに対して、例えば、遷移金属触媒の金属原子が0.0005〜0.5モルの範囲となる使用量を挙げることができる。
【0051】
本工程に用いられる塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化タリウム、水酸化バリウム、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸タリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピペリジンなどが挙げられる。塩基の使用量は、前記化合物(2)1モルに対して、通常、0.5モル以上であり、好ましくは、1モル以上である。
【0052】
本工程は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド溶媒;ジメチルスルホキシド;N−メチルピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;水などが挙げられる。溶媒は単独で用いてもよいし2種以上を混合して用いてもよい。溶媒は脱気して用いることが好ましい。また、工程で用いる化合物(2)又は(3)の一部又は全てを溶媒に溶解又は懸濁させてから、窒素バブリング又は減圧等で脱気してもよい。溶媒の使用量は、化合物(2)1重量部に対して、例えば、0.5〜200重量部の範囲を挙げることができ、好ましくは2〜100重量部の範囲が挙げられる。
【0053】
本工程は、さらに、相間移動触媒の存在下で行ってもよい。相間移動触媒としては、例えば、テトラアルキルハロゲン化アンモニウム、テトラアルキル硫酸水素アンモニウム又はテトラアルキル水酸化アンモニウムなどの第4級アンモニウム塩等を挙げることができ、好ましくは、テトラ−n−ブチルハロゲン化アンモニウム、ベンジルトリエチルハロゲン化アンモニウム等が挙げられる。
【0054】
本工程は大気下でも可能であるが、窒素あるいはアルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
【0055】
本工程における反応温度としては、例えば、0〜200℃の範囲を挙げることができる。また、本工程の反応時間としては、例えば、1分〜96時間の範囲を挙げることができる。
本工程の終了後、例えば、得られた反応混合物と塩化アンモニウム水溶液とを混合し、必要に応じて水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理をし、得られた有機層を濃縮し、必要に応じてカラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶、リサイクルゲルパーミネーションクロマトグラフィー、昇華精製等の精製手段を行うことで、前記化合物(1)を得ることができる。
【0056】
前記化合物(1)を製造する方法としては、本工程に限定されず、前記化合物(3)の化合物の代わりに、式(4)、(5)、(6)または(7)で表される化合物(以下、化合物(4)、化合物(5)、化合物(6)、化合物(7)と記すことがある)を用い、本工程と同様に反応させる工程等を挙げることができる。
【0057】

(式中、
は前記Rと同じ意味を表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
、Q及びQはハロゲン原子を表す)
【0058】
は前記と同じ意味を表す。
前記R、R及びRで表される炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基及びn−デシル基が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基及びn−ヘキシル基であり、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びn−ブチル基である。
なお、前記式(4)のR、R及びRは同一であることが好ましい。
【0059】
前記Q、Q及びQで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。好ましくは塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子である。
【0060】
前記化合物(1)を製造する他の方法としては、例えば、本工程と同様の遷移金属触媒及び塩基の存在下において、
式(8)で表される化合物(以下、化合物(8)と記すことがある)と、

(式中、
W、X、Y及びZは前記と同じ意味を表す。
は−BR、−SnR、−MgQ、−ZnQ及び−CuQを表わし、R、R、R、R、R、Q、Q、Qは前記と同じ意味を表す。複数存在するQは同一であっても異なっていてもよい。)
式(9)で表される化合物(以下、化合物(9)と記すことがある)とを、本工程と同様に反応させる工程を含む方法等を挙げることができる。

(式中、RおよびQは前記と同様の意味を表す。)
【0061】
本発明の前記化合物(1)は、真空蒸着プロセスで薄膜を形成させることができる。また、化合物(1)は有機溶媒への溶解性に優れることから、化合物(1)を有機溶媒へ溶解させた溶液を塗布する方法によって薄膜を形成させることができる。
ここで、有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、メシチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、フルオロベンゼン、アニソール等の芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1’,2,2’−テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、グルタロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;ジメチルスルフォキサイド、スルフォラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。有機溶媒は2種以上を混合溶媒にして用いることもできる。中でも、トルエン、キシレン、テトラリン、メシチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフランが好ましい。
【0062】
前記化合物(1)及び有機溶媒を含む溶液における化合物(1)の濃度としては、例えば、0.001〜50重量%の範囲を挙げることができ、好ましくは0.01〜10重量%の範囲が、より好ましくは0.1〜5重量%の範囲が挙げられる。該溶液には、式(1)で表される化合物は単独で使用してもよいし、酸化防止剤、安定剤、有機半導体材料、有機絶縁性材料等が含まれていてもよい。
【0063】
前記有機半導体材料としては、低分子材料でもよく、高分子材料でもよく、架橋反応が可能な場合は架橋していてもよく架橋していなくてもよい。好ましくは、高分子材料が挙げられる。具体例としては、ポリアセチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリトリアリールアミン誘導体、ポリキノリン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、フタロシアニン誘導体等が挙げられ、この場合、前記式(1)で表される化合物の含有量は、有機半導体材料100重量%に対して、10重量%以上が好ましく、20重量%以上になるように調整することがより好ましい。
【0064】
前記有機絶縁性材料としては、低分子材料でもよく、高分子材料でもよく、架橋反応が可能な場合は架橋していてもよく架橋していなくてもよい。好ましくは、高分子材料が挙げられる。具体例としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ナイロン、ポリイミド、環状オレフィンコポリマー、エポキシポリマー、セルロース、ポリオキシメチレン、ポリオレフィン系ポリマー、ポリビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー、生分解性プラスチック、フェノール系樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、及び各種ポリマーユニットを組み合わせたコポリマーなどが挙げられ、この場合、前記式(1)で表される化合物の含有量は、有機絶縁性材料100重量%に対して、10重量%以上が好ましく、20重量%以上になるように調整することがより好ましい。
【0065】
前記の化合物(1)及び有機溶媒を含む溶液の調製方法としては、有機溶媒に前記化合物(1)を、10〜200℃の範囲内の温度で、好ましくは20〜150℃の範囲内の温度で溶解することによって得ることができる。
【0066】
本発明の薄膜は、前記化合物(1)を含む薄膜であり、厚みは1nm〜10μm、好ましくは5nm〜1μmの薄膜である。
本発明の薄膜は発光性、半導体と同様の導電性を示す場合があり、それぞれ、発光性薄膜、導電性薄膜としても優れている。
【0067】
本発明の発光性薄膜とは、前記化合物(1)を含む薄膜であって、かつ、光や電気的刺激の条件下で発光する薄膜を意味する。発光性薄膜は、発光素子の材料として有用である。
【0068】
本発明の導電性薄膜とは、前記化合物(1)を含む薄膜であって、かつ、光や電気的刺激の条件下で導電性を示す薄膜を意味する。半導体と同様の導電性を示す導電性薄膜を特に有機半導体薄膜と称することがある。導電性薄膜は、後述の有機半導体デバイス等の材料として有用である。
【0069】
本発明の導電性薄膜及び発光性薄膜は、それぞれ、本発明の前記化合物(1)を材料として用いる以外は、従来公知の方法と同様に製造することができる。
【0070】
次に、有機トランジスタについて説明する。本発明の有機トランジスタは、本発明の薄膜を半導体層として含むものであり、該薄膜には本発明の置換カルコゲノアセン化合物である前記化合物(1)を含んでいるので、キャリア電界効果移動度を向上させることができ、10−3cm/Vs以上とすることができる。
ここでキャリア電界効果移動度は、パラメータアナライザー等を用いて測定したドレイン電流及びゲート電圧について、下記式(a)を適用することにより測定することができる。
Id=(W/2L)μCi(Vg−Vt) ・・・(a)
(式中、Idは電気的特性の飽和領域におけるドレイン電流を、Lは有機トランジスタのチャネル長を、Wは有機トランジスタのチャネル幅を、Ciはゲート絶縁膜の単位面積当たりの容量を、Vgはゲート電圧を、Vtはゲート電圧のしきい値電圧を、それぞれ表す。)
【0071】
本発明の有機トランジスタとしては、有機電界効果トランジスタが挙げられる。
有機電界効果トランジスタは、通常、ソース電極及びドレイン電極が半導体層に接しており、さらに活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられている。
【0072】
前記有機電界効果トランジスタの素子構造としては、例えば、
(1)基板/ゲート電極/絶縁体層/ソース電極・ドレイン電極/半導体層からなる構造;
(2)基板/ゲート電極/絶縁体層/半導体層/ソース電極・ドレイン電極からなる構造;
(3)基板/半導体層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層/ゲート電極からなる構造;
(4)基板/ソース電極・ドレイン電極/半導体層/絶縁体層/ゲート電極からなる構造;等が挙げられる。
上記各構造において、半導体層は本発明の薄膜を有し、該半導体層が複数層である場合、同一平面内に設けてもよいし、積層して設けてもよい。また、上記各構造において、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を、それぞれ複数設けてもよい。
【0073】
有機電界効果トランジスタにおける本発明の薄膜を半導体層として形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、分子線エピタキシャル成長法などの真空プロセスでの形成法が挙げられ、好ましくは真空蒸着法が挙げられる。
真空蒸着法とは、前記化合物(1)をルツボや金属ボート中で真空下、加熱し、昇華した化合物を基板もしくは絶縁体材料に蒸着させる方法である。
蒸着時の真空度は、1×10−1Pa以下、好ましくは1×10−3Pa以下である。
蒸着時の基板温度は0℃〜300℃、好ましくは20℃〜200℃である。
蒸着速度は、0.001nm/sec〜10nm/secであり、好ましくは0.01nm/sec〜1nm/secである。本発明の薄膜である半導体層の膜厚は、1nm〜10μmであり、好ましくは5nm〜1μmである。
【0074】
有機電界効果トランジスタにおける本発明の薄膜を半導体層として形成する方法の異なる実施態様としては、前記化合物(1)が有機溶媒に対する溶解性に優れていることから、塗布成膜加工を例示することができる。塗布成膜加工とは、前述の有機溶液を調製し、該有機溶液を基板もしくは絶縁体層に塗布する工程を有する方法である。塗布する工程としては、例えば、キャスティング法、ディップコート法、ダイコーター法、ロールコーター法、バーコーター法、スピンコート法などの塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などが挙げられる。これらの工程は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0075】
前記塗布成膜加工して得られた有機溶媒を含む膜は、該有機溶媒を除去することで、本発明の薄膜を与える。除去方法としては、例えば、自然乾燥処理、加熱処理、減圧処理、通風処理又はこれらを組み合わせた処理等が挙げられる。操作が簡便である点で自然乾燥処理もしくは加熱処理が好ましい。加熱処理としては、例えば、大気下で放置もしくはホットプレートで基板加熱(例えば、40〜250℃、好ましくは、50〜200℃)する処理等が挙げられる。
【0076】
有機電界効果トランジスタにおける本発明の薄膜を半導体層として形成する方法の異なる実施態様としては、前記化合物(1)を溶媒に溶解させなくとも、化合物(1)を溶媒に分散させて、塗布製膜加工を行ってもよい。この場合の具体的な実施態様は、前述の化合物(1)と有機溶媒を含む有機溶液を、化合物(1)と分散溶媒を含む分散液に置き換えて処理すればよい。
【0077】
本発明の薄膜を半導体層として形成する方法としては、前記化合物(1)を有機溶媒で溶解させて得られる有機溶液を用いた塗布成膜加工が好ましい。
【0078】
本発明の有機電界効果トランジスタにおいて、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を構成する材料は、一般的な導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、及びリチウム/アルミニウム混合物、酸化アルミニウム、酸化モリブデン等が用いられるが、
特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、インジウム、ITO、炭素、及び酸化モリブデンが好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等も好適に用いられる。中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。これらの電極材料は単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0079】
電極の膜厚は、材料によっても異なるが、0.1nm〜10μmであればよく、好ましくは0.5nm〜5μmであり、より好ましくは1nm〜1μmである。また、ゲート電極と基板を兼ねる場合は上記の膜厚より大きくてもよい。
【0080】
本発明の薄膜に電極膜を形成する方法としては、公知の種々の方法が挙げられる。具体的には、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、熱転写法、印刷法、ゾルゲル法などが挙げられる。成膜時又は成膜後に、パターニングを必要に応じて行うことが好ましい。パターニングの方法としても、種々の方法を用いることができる。具体的には、フォトレジストのパターニングとエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法などが挙げられる。また、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷などの印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法などのソフトリソグラフィーの手法なども挙げられる。これらの手法は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合してパターニングを行うことも可能である。
【0081】
絶縁層としては、無機酸化物や有機化合物皮膜などの種々の絶縁膜を用いることができる。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられ、好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物が挙げられる。有機化合物皮膜としては、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、アクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、シアノエチルプルランなどが挙げられ、好ましくは、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコールが挙げられる。
これらの絶縁層材料は単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。絶縁層の膜厚は、材料によっても異なるが、通常0.1nm〜100μmであり、好ましくは0.5nm〜50μmであり、より好ましくは5nm〜10μmである。
【0082】
絶縁層の形成方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。具体的には、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、キャスト、バーコート、ブレードコーティングなどの塗布法、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェットなどの印刷法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法、CVD法などのドライプロセス法が挙げられる。その他、ゾルゲル法やアルミニウム上のアルマイト、シリコンの熱酸化膜のように金属上に酸化物膜を形成する方法などが挙げられる。
【0083】
基板としては、ガラス、紙、石英、セラミック、又はフレキシブルな樹脂の基板材料から構成された板又はシートなどが挙げられる。樹脂フィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)などが挙げられる。基板の厚さとしては1μm〜10mmが好ましく、5μm〜5mmがさらに好ましい。
【0084】
半導体層と接触する絶縁体層や基板の部分において、絶縁体層や基板上に表面処理を行ってもよい。半導体層が積層される絶縁体層上に表面処理を行うことにより、素子のトランジスタ特性を向上させることができる。表面処理としては、具体的には、ヘキサメチルジシラザン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、フェネチルトリクロロシランなどによる疎水化処理、塩酸、硫酸、過酸化水素水などによる酸処理、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどによるアンモニア処理、オゾン処理、フッ素化処理、酸素やアルゴンなどのプラズマ処理、ラングミュラー・ブロジェット膜の形成処理、その他の絶縁体等や半導体の薄膜の形成処理、機械的処理、コロナ放電などの電気的処理、繊維などを利用したラビング処理などが挙げられ、2種類以上を処理法を組み合わせて使用してもよい。
表面処理を行う方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法などが挙げられる。
半導体層上に樹脂もしくは無機化合物からなる保護膜を設けてもよい。保護膜の形成により、外気の影響を抑制してトランジスタの駆動を安定化することができる。
【0085】
本発明の有機電界効果トランジスタは、例えば、液晶表示素子、有機電界発光素子、電子ペーパー、センサー、RFIDs(radio frequency identification cards)などの有機半導体デバイスに使用することができる。有機トランジスタの具体的な構成としては、例えば、図1に記載の実施態様、図2に記載の実施態様などを挙げることができる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
NMRは、日本電子製のFX−270を用いて測定した。
【0088】
数平均分子量及び重量平均分子量は、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)によりポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。SECのうち移動相が有機溶媒であるゲル浸透クロマトグラフィーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)という。
【0089】
測定する高分子化合物を、約0.05重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPC(島津製作所製、商品名:LC−10Avp)に10μL注入した。GPCの移動相としてテトラヒドロフランを用い、2.0mL/分の流量で流した。カラムとして、PLgel MIXED−B(ポリマーラボラトリーズ製)を用いた。検出器にはUV−VIS検出器(島津製作所製、商品名:SPD−10Avp)を用いた。
【0090】
<実施例1:化合物(1−5−5):2,6−ビス(4−ヘキシルフェニル)チエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェンの合成>

反応容器において、室温(約20℃)下、2,6−ジブロモ−チエノ[3,2−b] チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン(文献Advanced Functional Materials Vol.19,P.772,(2009)を参考にして合成)(2.0g、4.88mmol)、4−ヘキシルフェニルボロン酸ピナコールエステル(文献Tetrahedron Letters,Vol.47、P.8313,(2006)を参考にして合成)(3.79g、13.16mmol)、2.0Mの炭酸ナトリウム水溶液(66mL)及びテトラヒドロフラン(200mL)の混合液を20分間窒素バブリングした後、テトラキストリフェニルホスフィン(0.113g、0.098mmol)を加え、13時間還流させた。その後、得られた溶液を室温まで冷却し、析出した沈殿物を濾過した。濾紙上の残留物を水およびエタノールで洗浄することにより化合物(1−5−5)(2.41g、4.21mmol、収率84%)を得た。
H−NMR(270MHz、CDCl:CS=1:4):δ(ppm)=7.51(d,J=7.8Hz,4H)、7.42(s,2H)、7.19(d,J=8.1Hz,4H)、2.65(t,J=7.8Hz,4H)、1.71−1.61(m、4H)、1.42−1.29(m,12H)、0.94(t,J=6.5Hz,6H).
elemental anal:calcd for C3436:C71.28、H6.33;found C70.96、H6.30.
【0091】
<実施例2:化合物(1−6−5):2,6−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)チエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェンの合成>

実施例1で使用した4−ヘキシルフェニルボロン酸ピナコールエステルの代わりに、4−へキシロキシフェニルボロン酸(Combi−Blocks inc.製)を用いて、実施例1と同様な操作を行うことにより、化合物(1−6−5)(123mg、83%)を得た。
HRMS(EI):604.1576(M+).Calcd for C3436:604.1598.
【0092】
<合成例1:4−(2−ヘキシルデシル)アニリンの合成>

反応容器において、窒素気流下、マグネシウム(0.96g、39.6mmol)及びテトラヒドロフラン(5.5mL)の混合物に、室温にて、ジブロモエタン触媒量)を加えた。さらに、テトラヒドロフラン(22mL)を加えたのち、1−ブロモ−2−ヘキシルデカン(文献Journal of the American Chemical Society Vol.127,P.4286,(2005)を参考にして合成)(10.1g、33.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液(6mL)を滴下した。その後、得られた混合物を4時間還流させ、対応するグリニャール試薬(2−ヘキシルデシルマグネシウムブロミド)を調製した。
反応容器において、窒素気流下、ZnClの1.0Mジエチルエーテル溶液(シグマアルドリッチ社製、33.0mL、33.0mmol)に、室温にて、上記で得たグリニャール試薬(2−ヘキシルデシルマグネシウムブロミド)を加え、2時間30分間攪拌し、系中で対応する亜鉛試薬(0.204M)を調製した。
反応容器において、窒素気流下、4−ブロモアニリン(関東化学社製、3.37g、19.6mmol)、酢酸パラジウム(0.044g、0.20mmol)、S−Phos(シグマアルドリッチ社製、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル、0.16g、0.39mmol)及びテトラヒドロフラン(30mL)の混合液に、室温下、上記で得た亜鉛試薬(0.204M、96mL、19.6mmol)を滴下し、13.5時間攪拌した。その後、塩化アンモニウム水溶液、ジエチルエーテルを加え、有機層を抽出した。水および飽和食塩水による洗浄、硫酸ナトリウムでの乾燥後、エバポレーターにて濃縮することにより粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)によって精製することにより、4−(2−ヘキシルデシル)アニリンを(5.57g、17.5mmol、収率89%)を得た。
H−NMR(270MHz、CDCl):δ(ppm)=6.92(d,J=8.1Hz,2H)、6.61(d,J=8.1Hz,2H)、3.53(s,2H)、2.41(d,J=7.0Hz,2H)、1.56−1.47(m、1H)、1.35−1.15(m、24H)、0.90−0.85(m、6H).
HRMS(EI):317.3071(M+).Calcd for C2239:317.3083.
【0093】
<合成例2:4−(2−ヘキシルデシル)ヨードベンゼンの合成>

反応容器において、合成例1で合成した4−(2−ヘキシルデシル)アニリン(8.0g、25.2mmol)及び水113mLの混合液に、室温下、濃硫酸(13.4mL、24.7g)を加えた後、5℃まで冷却した。亜硫酸ナトリウム(2.26g、32.8mmol)水溶液(5mL)を、得られた溶液に滴下し、0〜5℃にて2時間攪拌した。攪拌後の反応溶液をヨウ化カリウム(33.5g、201.5mmol)水溶液(75mL)を5℃にて加えた後、室温まで昇温させ、さらに、3時間攪拌した。その後、室温下において、この溶液を亜硫酸ナトリウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルを加え有機層と水層に分液した。分液して得られた有機層を水、飽和食塩水により洗浄した。水層は酢酸エチルで抽出した後、得られた酢酸エチル層を前記有機層と合せて、硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターにて濃縮することにより粗生成物を得た。シリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)によって精製することにより、4−(2−ヘキシルデシル)ヨードベンゼン(7.95g、18.6mmol、収率74%)を得た。
H−NMR(270MHz、CDCl):δ(ppm)=7.57(d,J=8.1Hz,2H)、6.89(d,J=8.1Hz,2H)、2.46(d,J=7.0Hz,2H)、1.60−1.50(m、1H)、1.33−1.16(m、24H)、0.91−0.85(m、6H).
HRMS(EI):428.1901(M+).Calcd for C2237:428.1940.
【0094】
<合成例3:4−(2−ヘキシルデシル)フェニルボロン酸ピナコールエステルの合成>

反応容器において、合成例2で合成した4−(2−ヘキシルデシル)ヨードベンゼン(6.0g、14.0mmol)をテトラヒドロフラン(114mL)に溶解し、溶液を−78℃に冷却した。この溶液に同温度で、tert−ブチルリチウムの1.59Mペンタン溶液(関東化学社製、15.1mL、24.0mmol)を滴下した。−78℃にて45分間撹拌した後、0℃まで昇温し、同温度で30分間攪拌した。再び、−78℃に冷却し、2−イソプロピル−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(東京化成社製、3.19g、17.14mmol)を加えた後、緩やかに室温まで昇温させ、そのまま3時間攪拌した。得られた反応溶液をエバポレーターにて濃縮した後、クロロホルムを加え、得られたクロロホルム層を塩化アンモニウム水溶液及び水で順次、洗浄した。得られたクロロホルム層を硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターにて濃縮することにより粗生成物を得た。シリカゲルカラム(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)によって精製することにより、4−(2−ヘキシルデシル)フェニルボロン酸ピナコールエステル(4.12g、9.6mmol、収率69%)を得た。
H−NMR(270MHz、CDCl):δ(ppm)=7.71(d,J=8.1Hz,2H)、7.15(d,J=8.1Hz,2H)、2.53(d,J=7.0Hz,2H)、1.65−1.56(m、1H)、1.34(s、12H)1.29−1.19(m、24H)、0.90−0.85(m、6H).
HRMS(EI):428.3792(M+).Calcd for C2849:428.3826.
【0095】
<実施例3:化合物(1−5−12):2,6−ビス[4−(2−ヘキシルデシル)フェニル]チエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェンの合成>

反応容器において、室温下、2,6−ジブロモ−チエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン(0.21g、0.51mmol)、合成例3で合成した4−(2−ヘキシルデシル)フェニルボロン酸ピナコールエステル(0.59g、1.38mmol)、2.0Mの炭酸ナトリウム水溶液(7mL)及びテトラヒドロフラン(21mL)の混合液を20分間窒素バブリングした後、テトラキストリフェニルホスフィン(0.012g、0.01mmol)を加え、9時間還流させた。その後、溶液を室温まで冷却し、析出した沈殿物を濾過した。また、得られたろ液にクロロホルムを加え、分液して得られるクロロホルム層を水および食塩水で順次、洗浄した。その後、クロロホルム層を硫酸マグネシウムで乾燥、濾過し、エバポレーターを用いて濃縮した。得られた2つの粗生成物を併せて、カラムクロマトグラフィー(SiO、ヘキサン)およびリサイクルゲルパーミネーションクロマトグラフィーを用いて精製することにより化合物(1−5−12)(284mg、0.333mmol、収率65%)を得た。
H−NMR(270MHz、CDCl):δ(ppm)=7.55(d,J=8.1Hz,4H)、7.50(s,2H)、7.19(d,J=8.1Hz,4H)、2.56(d,J=6.8Hz,4H)、1.68−1.60(m、2H)、1.34−1.21(m,48H)、0.88(t,J=7.0Hz,12H).
HRMS(EI):852.4796(M+).Calcd for C5476:852.4830.
【0096】
<実施例4:化合物(1−7−5):2,6−ビス(5−ヘキシル−2−チエニル)チエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェンの合成>

実施例1で用いた4−ヘキシルフェニルボロン酸ピナコールエステルの代わりに、5−へキシル−2−チオフェンボロン酸ピナコールエステル(シグマアルドリッチ社製、0.39g、1.32mmol)を用いる以外は、実施例1と同様に行うことにより、化合物(1−7−5)(6mg、0.010mmol、収率2%)を得た。
HRMS(EI):584.0816(M+).Calcd for C3032:584.0828.
【0097】
<実施例5:化合物(1−1−9):2,6−ジオクチル−チエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェンの合成>

反応容器において、室温下、2,6−ジブロモ−チエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン(6.3g、15.36mmol)、オクチルボロン酸(和光純薬社製、14.56g、92.15mmol)、リン酸三カリウムの水和物(17.93g、84.47mmol)及び1,4−ジオキサン(630mL)の混合液を1時間窒素バブリングした後、酢酸パラジウム(II)(0.345g、1.54mmol)及びS−Phos(シグマアルドリッチ社製、1.26g、3.07mmol)、を加え、2時間還流させた。その後、溶液を室温まで冷却し、エバポレーターを用いて濃縮した。クロロホルムを加え、分液して得られるクロロホルム層を水および食塩水で、順次、洗浄した。その後、得られたクロロホルム層を硫酸マグネシウムで乾燥、濾過し、エバポレーターを用いて濃縮した。得られた化合物をカラムクロマトグラフィー(SiO,ヘキサン)およびリサイクルゲルパーミネーションクロマトグラフィーによりに単離、精製することで2,6−ジオクチル−チエノ[3,2−b]チエノ[2’,3’:4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン(2.88g、6.04mmol、収率39%)を得た。
H−NMR(270MHz、CDCl):、δ(ppm)=6.97(s,2H)、2.90(t,J=7.3Hz,4H)、1.79−1.68(m、4H)、1.44−1.24(m,20H)、0.88(t,J=6.8Hz,6H).
HRMS(EI):476.1700(M+).Calcd for C2636:476.1700.
【0098】
<実施例6:薄膜及び該薄膜を有機半導体層とする有機トランジスタ1の製造>
フェネチルトリクロロシラン処理が行われているSiO熱酸化膜付きnドープシリコンウエハー上に、有機半導体層を形成するための金属マスクを置き、マスクされているシリコンウエハーを得た。次に、真空度1×10−3パスカル以下に設定されているチャンバ内に、該ウエハーと、実施例1で得られた化合物(1−5−5)の昇華精製済みの固体が入っているタングステン製のボートとを設置し、該ボートを加熱しながら該ウエハーを室温以上80℃以下の範囲に加熱し、金属マスクされていない部分に化合物(1−5−5)の薄膜(膜厚は約29nm)からなる有機半導体層を形成させた。
続いて、金属マスクを外した後、ソース電極及びドレイン電極を形成するための金属マスクを有機半導体層の面に置き、酸化モリブデンを5nm、金を35nm順次真空蒸着して、該有機半導体層上にソース電極及びドレイン電極を形成し、図1に示すような有機トランジスタ1を製造した。
【0099】
次に、得られた有機トランジスタ1の電気特性を測定した。その結果、あるゲート電圧(Vg)において、ドレイン電圧(Vd)に対するドレイン電流(Id)の変化曲線は、良好であり、高いドレイン電圧において飽和領域を有していた。また、ゲート電極に印加する負のゲート電圧を増加させると、負のドレイン電流も増加することから、化合物(1−5−5)の薄膜を有機半導体層にもつ有機トランジスタ1は、p型の有機トランジスタであることを確認することができた。さらに、有機トランジスタ1の飽和キャリア電界効果移動度μは、有機トランジスタの電気的特性の飽和領域におけるドレイン電流Idを表す式
Id=(W/2L)μCi(Vg−Vt) ・・・( a )
を用いて算出した。ここで、L及びWは、それぞれ、有機トランジスタのゲート長及びゲート幅であり、Ciは、ゲート絶縁膜の単位面積当たりの容量であり、Vgは、ゲート電圧であり、Vtは、ゲート電圧のしきい値電圧である。式(a)を用いて、製造した薄膜を有機半導体層にもつ有機トランジスタのキャリア電界効果移動度μを計算した結果、基板温度が60℃におけるキャリア電界効果移動度は0.33cm/Vsであった。
【0100】
<実施例7:薄膜及び該薄膜を有機半導体層とする有機トランジスタ2の製造>
ガラス基板上に、ソース及びドレイン電極となる金電極を設置して、その上に実施例3で得られた化合物(1−5−12)の0.6wt%のo−キシレン溶液を滴下し、スピンコート法により有機層を形成した。有機層の上に、絶縁膜としてテフロン(登録商標、デュポン社製)をスピンコート法により成膜し、80℃で10分間熱処理して絶縁層を形成した。さらにこの絶縁膜の上に、蒸着法によりアルミニウムを成膜して、ゲート電極を形成し、図2に示すような有機トランジスタ2を製造した。
【0101】
次に、得られた有機トランジスタ2の電気特性を実施例6と同様に測定した。その結果、キャリア電界効果移動度は、0.02cm/Vsであった。
【0102】
<実施例8:化合物(1−5−12)と高分子有機半導体材料とを含有する組成物の製造例>
実施例3で得られた化合物(1−5−12)および式(10)で表される高分子化合物である有機半導体材料(以下、「高分子化合物(10)」と記すことがある。)を75:25の重量比で混合し0.6wt%となるようにo−キシレン溶液を調整した。
なお、高分子化合物(10)はモノマーである9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ビス(ジメチルボレート)とN,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N−(4−sec−)とを50:50の割合で混合し、特許第4375820号に記載されている方法によって合成した。高分子化合物(10)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、351,000であり、数平均分子量は、85,000であった。式(10)におけるnは、括弧内の構造の繰り返し数を示し、当該化合物の重量平均分子量および数平均分子量が上記の値となるのに対応する数を表す。

【0103】
<実施例9:薄膜及び該薄膜を有機半導体層とする有機トランジスタ3の製造>
ガラス基板上に、ソース及びドレイン電極となる金電極を設置して、その上に実施例8で調整したo−キシレン溶液を滴下し、スピンコート法により有機層を形成した。有機層の上に、絶縁膜としてテフロン(登録商標、デュポン社製)をスピンコート法により成膜し、80℃で10分間熱処理して絶縁層を形成した。さらにこの絶縁膜の上に、蒸着法によりアルミニウムを成膜して、ゲート電極を形成し、図2に示すような有機トランジスタ3を製造した。
【0104】
次に、得られた有機トランジスタ3の電気特性を実施例6と同様に測定した。その結果、キャリア電界効果移動度は、0.05cm/Vsであった。
【0105】
<実施例10:薄膜及び該薄膜を有機半導体層とする有機トランジスタ4の製造>
ガラス基板上に、ソース及びドレイン電極となる金電極を設置して、その上に実施例5で得られた化合物(1−1−9)の1.0wt%のo−キシレン溶液を滴下し、スピンコート法により有機層を形成した。有機層の上に、絶縁膜としてテフロン(登録商標、デュポン社製)をスピンコート法により成膜し、80℃で10分間熱処理して絶縁層を形成した。さらにこの絶縁膜の上に、蒸着法によりアルミニウムを成膜して、ゲート電極を形成し、図2に示すような有機トランジスタ4を製造した。
【0106】
次に、得られた有機トランジスタ4の電気特性を実施例6と同様に測定した。その結果、キャリア電界効果移動度は、0.07cm/Vsであった。
【0107】
<実施例11:化合物(1−1−9)と高分子有機半導体材料とを含有する組成物の製造例>
実施例5で得られた化合物(1−1−9)および高分子化合物(10)を75:25の重量比で混合し1.2wt%となるようにo−キシレン溶液を調整した。
【0108】
<実施例12:薄膜及び該薄膜を有機半導体層とする有機トランジスタ5の製造>
ガラス基板上に、ソース及びドレイン電極となる金電極を設置して、その上に実施例11で調整したo−キシレン溶液を滴下し、スピンコート法により有機層を形成した。有機層の上に、絶縁膜としてテフロン(登録商標、デュポン社製)をスピンコート法により成膜し、80℃で10分間熱処理して絶縁層を形成した。さらにこの絶縁膜の上に、蒸着法によりアルミニウムを成膜して、ゲート電極を形成し、図2に示すような有機トランジスタ5を製造した。
【0109】
次に、得られた有機トランジスタ5の電気特性を実施例6と同様に測定した。その結果、キャリア電界効果移動度は、0.30cm/Vsであった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によれば、有機半導体デバイスに用いることのできる置換カルコゲノアセン化合物を提供することが可能である。また、該化合物を用いた、キャリア電界効果移動度が十分な有機半導体デバイスを提供することが可能である。
【符号の説明】
【0111】
11 基板
12 ゲート電極
13 ゲート絶縁膜
14 ソース電極
15 ドレイン電極
16 半導体層(本発明の薄膜)
21 基板
22 ソース電極
23 ドレイン電極
24 ゲート絶縁膜
25 ゲート電極
26 半導体層(本発明の薄膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される置換カルコゲノアセン化合物。

(式中、
W、X、Y及びZは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子を表す。
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルコキシ基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基、炭素数2〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキニル基、炭素数7〜36のフッ素原子を有していてもよいアリール基又は炭素数5〜34のフッ素原子を有していてもよいヘテロアリール基を表し、
該アリール基は、フッ素原子を有していてよいアルキル基、フッ素原子を有していてよいアルコキシ基又はフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基を有するアリール基であり、該ヘテロアリール基は、フッ素原子を有していてよいアルキル基、フッ素原子を有していてよいアルコキシ基又はフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基を有するヘテロアリール基である。)
【請求項2】
前記W、X、Y及びZが、硫黄原子であることを特徴とする、請求項1に記載の置換カルコゲノアセン化合物。
【請求項3】
前記R及びRが、炭素数8〜26の、フッ素原子を有していてもよいアルキル基を有するフェニル基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の置換カルコゲノアセン化合物。
【請求項4】
前記R及びRが、炭素数8〜26の、フッ素原子を有していてもよいアルコキシ基を有するフェニル基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の置換カルコゲノアセン化合物。
【請求項5】
前記R及びRが、炭素数2〜20の、フッ素原子を有していてもよいアルキル基であって、R及びRが同一であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の置換カルコゲノアセン化合物。
【請求項6】
前記R及びRが、炭素数2〜20の、フッ素原子を有していてもよいアルコキシ基であって、R及びRが同一であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の置換カルコゲノアセン化合物。
【請求項7】
前記R及びRが、炭素数6〜24の、フッ素原子を有していてもよいアルキル基を有するチエニル基であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の置換カルコゲノアセン化合物。
【請求項8】
遷移金属触媒及び塩基の存在下、
式(2)で表される化合物と、

(式中、
W、X、Y及びZは、それぞれ独立に、酸素、硫黄、セレン又はテルル原子を表す。
及びQは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はトリフラート残基を表す。)
式(3)で表される化合物を反応させる工程を含む、前記式(1)で表される置換カルコゲノアセン化合物の製造方法。

(式中、
は、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルコキシ基、炭素数1〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基、炭素数2〜30のフッ素原子を有していてもよいアルキニル基、炭素数7〜36のフッ素原子を有していてよいアリール基又は炭素数5〜34のフッ素原子を有していてもよいヘテロアリール基を表し、
該アリール基はフッ素原子を有していてよいアルキル基、フッ素原子を有していてよいアルコキシ基又はフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基を有するアリール基であり、該へテロアリール基はフッ素原子を有していてよいアルキル基、フッ素原子を有していてよいアルコキシ基又はフッ素原子を有していてもよいアルキルチオ基を有するヘテロアリール基である。
及びRは、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリールオキシ基を表し、R及びRが結合してホウ素原子とともに環構造を形成していてもよい。)
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の置換カルコゲノアセン化合物と高分子有機半導体材料とを含有する組成物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の置換カルコゲノアセン化合物又は請求項9に記載の組成物を含有する薄膜。
【請求項11】
請求項10に記載の薄膜を有する有機半導体デバイス。
【請求項12】
有機トランジスタである、請求項10に記載の有機半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−111748(P2012−111748A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238425(P2011−238425)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】