説明

翼形部及び翼形部をレーザショックピーニングする方法

【課題】回転装置用のブレード(100)を提供する。
【解決手段】本ブレード(100)は、根元(190)と、前縁(160)を備えかつ根元(190)に取付けられた翼形部(120)とを含む。本ブレード(100)は、前縁(160)及び根元(190)に沿って延びる根元パッチ(250)を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、総括的にはガスタービンエンジンに関し、より具体的には、タービン翼形部及び該翼形部の根元の周りをレーザショックピーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン翼形部の表面に対する損傷は、多くの原因により生じる可能性がある。それらの原因には、それに限定されないが、先端摩擦、水洗浄侵食、すきま腐食、ピッチング、異物損傷、ダブテール摩耗などが含まれる可能性がある。これらの損傷メカニズムは、それらが損傷部位に応力集中を発生させる可能性があるので、翼形部の振動強度を著しく低下させるおそれがある。振動応答は、非定常空気圧力及び翼形部モード形の相互作用による普通の現象である。それ故に、翼形部設計は、定期点検及び保守を必要とする前に非常に長期間にわたってそれらの振動に耐えることができなければならない。
【0003】
最新の圧縮機翼形部設計では、翼形部厚さ及び翼弦の分布を最適化することによってそれらの耐久性目標を達成することができる。そのような最新の設計はまた、翼形部根元及び取付け部におけるような高応力移行部領域内において十分なフィレットの使用を採用することができる。
【0004】
翼形部耐久性をさらに高める1つの方法は、レーザショックピーニング法の使用によるものである。公知のように、レーザショックピーニングは、金属物品の表面上に深い圧縮残留応力の領域を形成させる方法である。具体的には、レーザショックピーニングは一般的に、高及び低出力パルスレーザによる1つ又はそれ以上の放射パルスを使用して物品の表面に強力な衝撃波を生じさせる。パルスレーザビームは、表面の一部分上に強力な局所圧縮力を発生させる。従って、レーザショックピーニングによって発生した物品内のこれらの深い圧縮応力は、疲労強度を向上させる。従って、翼形部を処理することにより、侵食、腐食及び異物/内部部品損傷並びにその他の表面損傷の損傷作用に対する処理区域内の耐性を改善することができる。
【0005】
しかしながら、レーザショックピーニングは、引張り残留応力が翼形部内の一般的な高平均応力と結合するおそれがあると信じられて、翼形部の前縁の周りではこれまで使用されてこなかった。そのような応力結合は、疲労強度を高めるどころか、翼形部の損傷を促進させ或いはその破損さえ引き起こすおそれがある。従って、翼形部根元応力及び損傷は一般的に、懸案問題として残っており、それ故に依然として定期点検の対象になっている。
【0006】
これらの応力及び損傷の懸案問題は、特にR0圧縮機ブレードについて未解決のままである。従って、R0ブレードは、この状況にある限り、その他のブレード段よりもより多い損傷発生可能性に直面するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,217,102号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0243071 A1号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0003109 A1号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0078477 A1号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0155802 A1号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】AUTHOR: JANSEN'S AIRCRAFT SYSTEMS CONTROLS, Title: Gas Turbine Technology Innovations, pg. 1
【非特許文献2】AUTHOR: CCJ (COMBINED CYCLE JOURNAL), Title: "CTOTF Tackles the Tough Issues, Including 7FA RO and Mid-Compressor Failures", Combined Cycle Journal, First Quarter 2007, pp. 73-92.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、その耐久性を向上させるように根元部分を含む翼形部を改善すること及びそれらをレーザショックピーニングする方法を改善することに対する要望が存在する。この耐久性の改善は、システム全体の信頼性及び効率を向上させるものである必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本出願は、回転装置用のブレードを提供する。本ブレードは、根元と、前縁を備えかつ根元に取付けられた翼形部とを含む。本ブレードは、前縁及び根元に沿って延びるレーザショックピーニング処理根元パッチを含むことができる。
【0011】
本出願はさらに、タービン用のブレードをレーザショックピーニングする方法を提供する。本方法は、ブレードの根元の周りで該ブレードの前縁にレーザショックピーニングを施すステップと、ブレードの前縁の周りで該ブレードの根元にレーザショックピーニングを施すステップとを含む。
【0012】
本出願はさらに、回転装置用のブレードを提供する。本ブレードは、根元と、前縁を備えかつ根元に取付けられた翼形部とを含むことができる。レーザショックピーニング処理根元パッチが、前縁及び根元に沿って延び、また前縁レーザショックピーニング処理区域が、前縁に沿って延びる。
【0013】
本出願のこれら及びその他の特徴は、図面及び特許請求の範囲と関連させてなした以下の詳細な説明を精査することにより、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】公知の翼形部の斜視図。
【図2】レーザショックピーニングで処理した幾つかの区域を備えた翼形部の斜視図。
【図3】本明細書に説明したようなレーザショックピーニングで処理した、図2の翼形部の根元部分の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、幾つかの図全体を通して同じ参照符号が同様な要素を指している図面を参照すると、図1は、本明細書で説明することにするブレード100を示している。この実施例では、ブレード100は、R0圧縮機ブレード110とすることができる。本明細書では、その他のブレード100もまた、使用することができる。上記のように、R0圧縮機ブレードは、例えばニューヨーク州スケネクタディ所在のGeneral Electric Companyにより販売されているFクラスタービンにおける第1段圧縮機ブレードを指している。しかしながら、ブレード100は、あらゆるタイプの回転装置であらゆる位置において使用することができる。ブレード100は、チタン、鉄、ニッケル、又はそれらの組合せに基づいた合金で製造することができる。ブレード100は、その他の材料で製造することができる。
【0016】
ブレード110は、翼形部120、プラットフォーム130及びシャンク140を含むことができる。シャンク140は、回転ディスク(図示せず)のスロット内にブレード110を配置するためのダブテール150を含むことができる。翼形部120は、前縁160、後縁170、先端180及び根元190を有することができる。翼形部120はまた、負圧側面200及び対向する正圧側面210を含む。本明細書では、他の設計及び構成を使用することができる。
【0017】
図2に示すように、公知のレーザショックピーニング法は、ブレード100の前縁160に対して施されて前縁処理区域220を形成し、後縁170に対して施されて後縁処理区域230を形成しまた先端180に対して施されて先端処理区域240を形成してきた。図3に示すように、本明細書に記載したブレード110はまた、根元処理区域又はパッチ250を含むことができる。根元パッチ250は、前縁160の根元部分190の処理を含む。具体的には、根元パッチ250は、プラットフォーム130の周りで根元190の上方における前縁160の表面の周りに延びる。根元190及びプラットフォーム130の交差部の周りの金属厚さは、レーザショックピーニング引張り荷重を支持するのに十分でなければならない。従って、ブレード110は全体として、レーザショックピーニング法によって発生した引張り応力により、構造健全性における大きな低下を受けてはならない。
【0018】
具体的には、根元パッチ250は、根元190上まで延び、根元190の周りで前縁160の両側面上に延びまた前縁160に沿って上方にその全体又はその一部にわたって延びることができる。この実施例では、根元パッチ250は、根元190内に約0.1〜約0.2インチ(約0.25〜約0.5センチメートル)延び、前縁160の両側面上に約0.35〜約0.45インチ(約0.89〜約1.14センチメートル)延び、また前縁160の上方に約2インチ(約5.1センチメートル)又はそれ以上延びることができる。
【0019】
上記のように、レーザは、金属表面上に約1000000ポンド/平方インチ(約70300キログラム/平方センチメートル)の圧力パルスを発生させる。これら圧力パルスは、パッチ250を通して衝撃波を送る。所定の表面パターンになった複数ファイアリングは、従来型のピーニング法により達成可能であるものよりも大幅に深い(20倍又はそれ以上ほどもの)残留圧縮応力の層を表面上に与えることができる。より深い圧縮応力のレベルは、疲労及び腐食破損に対するより大きな耐性をもたらすことができる。従って、レーザショックピーニングは、最小の冷間加工作業で、疲労、フレッティング疲労、応力腐食などのような破損メカニズムに対する耐性を高める深い圧縮層を形成する。副次的な利点は、レーザピーニング処理表面の残留応力の熱的緩和が、一般的に必要となる冷間加工の減少により、ショックピーニング加工表面よりも少ないことである。
【0020】
従って、レーザショックピーニングは、約0.005インチ(約0.127ミリメートル)ほどの浅い損傷によってさえ耐疲労性の大幅な低下を受けることになる従来型のショットピーニングと比較して、疲労性能の如何なる低下もない状態で約0.030インチ(約0.0762ミリメートル)を十分越えた大きな損傷深さに対する耐疲労性及び耐性の大幅な向上をもたらすことができる。ここで損傷というのは、異物損傷、内部部品損傷、水滴侵食、固体粒子侵食、腐食ピッチング、応力腐食割れ、フレッティング摩耗、摺動摩耗、先端摩擦摩耗、タービン構成部品の溶解、鍛造、熱処理及び機械加工、並びにガウジ及びノッチなどの取扱い又は機械加工のような原因により、製造、組立、取扱い及びタービン運転で生じる可能性がある。
【0021】
本明細書に記載した方法は、新規の、使用済みの又は幾らか損傷したブレード110で使用することができる。具体的には、本明細書に記載したようなレーザショックピーニング法は、ニック、ディング又は侵食部を有するブレード110を破損させる振動応力の量をレーザショックピーニングを施していない新規ブレード110さえの振動応力の量よりも大きいレベルに高めることができる。
【0022】
従来型のショットピーニングをレーザショックピーニングと組合せることにより、付加的な利点を得ることができる。例えば、翼形部120全体は、従来どおりのショットピーニングを施すと同時に、区域220〜250のような幾つかの区域のみを更にレーザショックピーニング処理することができる。本明細書では、その他の構成を使用することができる。
【0023】
以上の説明は本出願の一部の実施形態のみに関するものであること、並びに本明細書において当業者は、特許請求の範囲及びその均等物によって定まる本発明の一般的技術思想及び技術的範囲から逸脱せずに、多くの変更及び修正を行うことができることを理解されたい。
【符号の説明】
【0024】
100 ブレード
110 R0圧縮機ブレード
120 翼形部
130 プラットフォーム
140 シャンク
150 ダブテール
160 前縁
170 後縁
180 先端
190 根元
200 正圧側面
210 負圧側面
220 前縁処理区域
230 後縁処理区域
240 先端処理区域
250 根元パッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転装置用のブレード(100)であって、
根元(190)と、
前記根元(190)に取付けられた翼形部(120)と、
を含み、前記翼形部(120)が、
前縁(160)と、
前記前縁(160)及び根元(190)に沿って延びるレーザショックピーニング処理根元パッチ(250)と、を含む、
ブレード(100)。
【請求項2】
前記レーザショットピーニング処理根元パッチ(250)が、ショットピーニング処理根元パッチをさらに含む、請求項1記載のブレード(100)。
【請求項3】
前記前縁(160)が、前縁処理区域(220)を含む、請求項1記載のブレード(100)。
【請求項4】
前記前縁処理区域(220)が、前記レーザショックピーニング処理根元パッチ(250)から延びる、請求項3記載のブレード(100)。
【請求項5】
前記前縁処理区域(220)が、前記レーザショックピーニング処理根元パッチ(250)から分離される、請求項3記載のブレード(100)。
【請求項6】
前記翼形部(120)が、後縁(170)を含み、
前記後縁(170)が、後縁処理区域(230)を含む、
請求項1乃至5のいずれか1項記載のブレード(100)。
【請求項7】
前記翼形部(120)が、先端(180)を有し、
前記先端(180)が、先端処理区域(240)を含む、
請求項1乃至6のいずれか1項記載のブレード(100)。
【請求項8】
タービン用のブレード(100)をレーザショックピーニングする方法であって、
前記ブレード(100)の根元(190)の周りで該ブレード(100)の前縁(160)にレーザショックピーニングを施すステップと、
前記ブレード(100)の前縁(160)の周りで該ブレード(100)の根元(190)にレーザショックピーニングを施すステップと、を含む、
方法。
【請求項9】
前記ブレード(100)にショットピーニング施すステップをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ブレード(100)の前縁(160)のその他の部分が、前記前縁(160)全体を含む、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−65687(P2010−65687A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204185(P2009−204185)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】