説明

耐アルカリ性マンナナーゼ

【課題】アルカリpH範囲で安定で、しかもアルカリpH領域に最適pHを有する新規なアルカリ性マンナナーゼ、その遺伝子、製造方法並びにアルカリ性マンナナーゼの各種用途を提供する。
【解決手段】下記の理化学的性質を有するアルカリ性マンナナーゼ:
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する、
(ハ)pH安定性:40℃、pH 6.5〜10、30分の処理条件で70%以上のマンナナーゼ活性を有する、
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する、
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する、
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する、
(ト)金属阻害:Fe3+、Fe2+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、及びSn2+により阻害を受ける、
(チ)SDS-PAGEによる分子量:約130 kDa。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物に由来するマンナナーゼ、より詳細にはアルカリpH範囲で安定で、しかもアルカリpH領域に最適pHを有する新規なアルカリ性マンナナーゼ及びその遺伝子に関する。さらに本発明は、当該アルカリ性マンナナーゼの製造方法、並びにその製造のために使用されるベクター及び形質転換体に関する。さらに、本発明は当該アルカリ性マンナナーゼの各種用途に関する。
【背景技術】
【0002】
β-1,4-マンナナーゼ(EC.3.2.1.78、本明細書では、単に「マンナナーゼ」という)マは、分子内にβ-1,4-D-マンノピラノシド結合を有するホモ及びヘテロのβ-D-マンナンであるマンナン、ガラクトマンナン、グルコマンナン等の主要骨格であるβ-1,4-D-マンノピラノシド結合を加水分解し、一連のマンノオリゴ糖を生成する酵素である。マンナナーゼによって分解される上記各種のマンナンは、植物の細胞壁の主要な構成成分の一つであるヘミセルロースの構成要素である。従って、マンナナーゼは、食品、製紙、繊維、洗浄に関わる分野に広く利用されている有用な酵素である。
【0003】
このため、マンナーゼは従来から多数の研究者らによって研究されており、多くの微生物から単離精製されている。例えば、糸状菌由来のマンナナーゼ〔非特許文献1〜3等〕、放線菌由来のマンナナーゼ〔非特許文献4等〕、バチルス属(Bacillus)に属する細菌に由来するマンナナーゼ〔(1) 非特許文献5、(2)非特許文献6、(3)特許文献1、(4)特許文献2、(5)特許文献3、(6)特許文献4等〕などが良く研究されている。ここでBacillus属に属する細菌に由来するマンナナーゼに関して、上記(1)にはBacillus stearothermophilusに由来する分子量162 kDa及び最適pH 5.5〜7.5のマンナナーゼが;(2)には枯草菌(Bacillus subtilis)に由来する分子量38 kDa、最適pH 5.5、最適温度55℃及び等電点(pI)4.8のマンナナーゼが;(3)にはBacillus sp.に由来する分子量37±3 kDa、最適pH 3-8、及びpI 5.3-5.4のマンナナーゼが;(4)には好アルカリ性Bacillus sp.に由来する分子量43 kDa及び57±3 kDa、及び最適pH 8-10のマンナナーゼが;;(5)にはBacillus sp.に由来する分子量34±10 kDa、及び最適pH 7.5-10のマンナナーゼが;(6)にはBacillus agaradhaerensに由来するマンナナーゼが;それぞれ記載されている。
【非特許文献1】Advances in Carbohydrate Chemistry and Biochemistry, 1976, 32, 299-316
【非特許文献2】Acta. Chem. Scand., 1968, 22, 1924
【非特許文献3】日農化, 1969, 43, 317;Biochem. J., 1984, 219, 857
【非特許文献4】Agric. Biol. Chem., 1984, 48, 2189
【非特許文献5】Appl. Environ. Microbiol., 56, 11, 3505-3510 (1990)
【非特許文献6】World J. Microbiol. Biotechnol., 10, 551-555 (1994);
【特許文献1】特願平03-047076号公報
【特許文献2】特願平08-51975号公報
【特許文献3】米国特許第6,566,1143号
【特許文献4】米国特許第6,440,911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、アルカリ性pH範囲において安定性に優れ、且つ高いマンナナーゼ活性を示す新規なアルカリ性マンナナーゼ、およびその遺伝子を提供することである。さらに本発明は、当該アルカリ性マンナナーゼを効率よく生産する方法、並びに当該アルカリ性マンナナーゼの生産に使用される発現ベクターや形質転換体を提供することを目的とする。さらに本発明は、上記アルカリ性マンナナーゼの各種用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記特性を有するアルカリ性マンナナーゼを産生する能力を有する微生物を得るべく、広く天然界を検索した結果、Bacillus属に属するある種の新規微生物が上記特性を有する新規のアルカリ性マンナナーゼを産生することを見いだし、さらに本発明者らは、当該微生物が産生するアルカリ性マンナナーゼを遺伝子工学的手法により効率良く産生する方法の開発に成功し、本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち、本発明は下記の態様を含むものである:
項1. 下記の理化学的性質を有するアルカリ性マンナナーゼ:
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する、
(ハ)pH安定性:40℃、pH 6.5〜10、30分の処理条件で70%以上のマンナナーゼ活性を有する、
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する、
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する、
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する、
(ト)金属阻害:Fe3+、Fe2+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、及びSn2+により阻害を受ける、
(チ)SDS-PAGEによる分子量:約130 kDa。
項2. 下記(a)または(b)に記載するタンパク質からなるアルカリ性マンナナーゼ:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し、下記に掲げる少なくとも1つの理化学的特性を有するタンパク質
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する、
(ハ)pH安定性:40℃、pH 6.5〜10、30分の処理条件で70%以上のマンナナーゼ活性を有する、
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する、
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する、
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する、
(ト)金属阻害:Fe3+、Fe2+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、及びSn2+により阻害を受ける。
項3. (b)に示すタンパク質が、配列番号1に示すアミノ酸配列と40%以上同一のアミノ酸配列を有するものである、請求項2に記載するアルカリ性マンナナーゼ。
項4. 下記(c)または(d)に記載するDNAによってコードされるタンパク質からなるアルカリ性マンナナーゼ:
(c)配列番号2に示す塩基配列からなるDNA、
(d)配列番号2に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、下記に掲げる少なくとも1つの理化学的特性を有するタンパク質をコードするDNA
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する、
(ハ)pH安定性:40℃、pH 6.5〜10、30分の処理条件で70%以上のマンナナーゼ活性を有する、
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する、
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する、
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する、
(ト)金属阻害:Fe3+、Fe2+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、及びSn2+により阻害を受ける。
項5. 好アルカリ性中温菌のBacillus属に属する微生物に由来する酵素である、項1乃至4のいずれかに記載のアルカリ性マンナナーゼ。
項6. 好アルカリ性中温菌のBacillus属に属する微生物が、「Bacillus sp. Strain JAMB-750」(受領番号FERM AP-20227)である項5に記載するアルカリ性マンナナーゼ。
【0007】
項7. 下記(a)または(b)に記載するタンパク質をコードするアルカリ性マンナナーゼ遺伝子:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し、下記に掲げる少なくとも1つの酵素学的特性を有するタンパク質
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する、
(ハ)pH安定性:40℃、pH 6.5〜10、30分の処理条件で70%以上のマンナナーゼ活性を有する、
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する、
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する、
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する、
(ト)金属阻害:Fe3+、Fe2+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、及びSn2+により阻害を受ける。
項8. (b)に示すタンパク質が、配列番号1に示すアミノ酸配列と40%以上同一のアミノ酸配列を有するものである、項7記載のアルカリ性マンナナーゼ遺伝子。
項9. 下記(c)または(d)に記載するDNAからなるアルカリ性マンナナーゼ遺伝子:
(c)配列番号2に示す塩基配列を有するDNA、
(d)配列番号2に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、下記に掲げる少なくとも1つの理化学的特性を有するタンパク質またはその前駆体をコードするDNA
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する、
(ハ)pH安定性:40℃、pH 6.5〜10、30分の処理条件で70%以上のマンナナーゼ活性を有する、
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する、
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する、
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する、
(ト)金属阻害:Fe3+、Fe2+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、及びSn2+により阻害を受ける。
項10. 項7乃至9のいずれかに記載するアルカリ性マンナナーゼ遺伝子を含有する組み換えベクター。
項11. 項10に記載する組み換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
項12. 宿主細胞が枯草菌である項11に記載する形質転換体。
項13. 項11または12に記載する形質転換体を培地で培養し、得られる培養物から下記の理化学的特性を有するアルカリ性マンナナーゼを採取することを特徴とする、項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼの製造方法:
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する、
(ハ)pH安定性:40℃、pH 6.5〜10、30分の処理条件で70%以上のマンナナーゼ活性を有する、
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する、
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する、
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する、
(ト)金属阻害:Fe3+、Fe2+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、及びSn2+により阻害を受ける。
項14. 微生物「Bacillus sp. Strain JAMB-750」(受領番号FERM AP-20227)。
項15. 項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有する酵素組成物。
項16. 少なくとも項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼと界面活性剤を含有する洗浄用組成物(但し、繊維製品洗浄用組成物を除く)。
項17. 少なくとも項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有する漂白処理用組成物。
項18. 少なくとも項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有する繊維柔軟処理用組成物。
項19. 少なくとも項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有するコーヒー抽出物処理用組成物。
項20. 項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを用いて酵素処理を行う工程を有するマンノオリゴ糖の製造法。
項21. 項20に記載する方法によって製造されるマンノオリゴ糖と生分解性プラスチックスを含有する組成物。
項22. 項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼまたは項15の酵素組成物を含む地盤破砕剤。
項23. 項22の地盤破砕剤を用いる井戸、温泉または石油の掘穿方法。
項24. 項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼまたは項15の酵素組成物を含む白水のスカム抑制剤。
【0008】
なお、本発明において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さは特に制限されるものではない。従って、本明細書でいう「遺伝子」または「DNA」とは、特に言及しない限り、ゲノムDNAを含む2本鎖DNA、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)及び該正鎖に対して相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖、逆鎖)、並びに合成DNAが含まれ、さらに「遺伝子」にはRNAも含まれる。また「遺伝子」または「DNA」は、本発明の効果を保有する限りにおいて、コード領域(シグナルペプチド領域を含む)以外に、例えば発現制御領域、シグナル領域、エキソン、イントロンを含むことができる。
【0009】
また、特に言及しない限り、本発明でいう「遺伝子」または「DNA」には、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生理学的機能が同等であるタンパク質(例えば、同族体、変異体または誘導体など、本明細書では「機能的同等物」ともいう)をコードする「遺伝子」または「DNA」が含まれる。本明細書では、かかる「遺伝子」または「DNA」を、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」の「ホモログ」ともいう。かかる「ホモログ」としては、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」の相補鎖に対して、ストリンジェントな条件で、ハイブリダイズする塩基配列を有する「遺伝子」または「DNA」を挙げることができる。例えば、同族体をコードする遺伝子(ホモログ)としては、本発明の遺伝子の由来生物であるBacillus sp. Strain JAMB-750以外の他の微生物に由来する対応の遺伝子を例示することができる。
【0010】
本発明でいう「酵素(アルカリ性マンナナーゼ)」または「タンパク質」には、特定のアミノ酸配列で示される「酵素(アルカリ性マンナナーゼ)」または「タンパク質」だけでなく、これらと同等な生理学的機能を有する「酵素(アルカリ性マンナナーゼ)」または「タンパク質」(例えば、同族体、変異体または誘導体などの「機能的同等物」)が含まれる。例えば、同族体(機能的同等物)としては、本発明の「酵素(アルカリ性マンナナーゼ)」または「タンパク質」の由来生物であるBacillus sp. Strain JAMB-750以外の他の微生物に由来する、対応の「酵素(アルカリ性マンナナーゼ)」または「タンパク質」を例示することができる。また、変異体(機能的同等物)には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加または挿入等されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が含まれる。なお、かかる同族体や変異体等の「機能的同等物」としては、特定のアミノ酸配列(配列番号1)で特定される酵素(アルカリ性マンナナーゼ)またはタンパク質と、アミノ酸配列において少なくとも40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、よりさらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上同一であるものを挙げることができる。
【0011】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0012】
(1)アルカリ性マンナナーゼ
本発明は、新規なアルカリ性マンナナーゼに関する。ここでマンナナーゼとは、マンナン、ガラクトマンナン、グルコマンナン等の主要骨格であるβ-1,4-D-マンノピラノシド結合を加水分解する活性を有する酵素であり、正式にはマンナン・エンド-1,4-β-マンノシダーゼ(EC3.2.1.78)と命名されるものである。別名β-マンナナーゼ、またはβ-1,4-マンナナーゼとも称される。
【0013】
かかるマンナナーゼの活性の有無は、簡便にはマンナン成分を含む固体培地におけるハロー形成の有無を目視で判断することによって行うことができる。被験試料中にマンナナーゼが存在すれば、その培養に使用する固体培地中のマンナンが分解されて、当該固体培地上にハローが形成される。特に制限されないが、後述する参考例の説明に従って行うことができる。ここでマンナン成分としては、ローカストビーンガム(主要構成成分;[D-カ゛ラクトース:D-マンノース(1:4)])を好適に例示することができる。
【0014】
また、マンナナーゼの活性の測定は、3,5-ジニトロサリチル酸法[G.L. Miller, Anal. Chem., 31, 426-428 (1959)]に従って、基質(マンナン成分)の還元物の生成量を測定することによって行うことができる。特に制限されないが、例えば、基質としてローカストビーンガム(主要構成成分;[D-カ゛ラクトース:D-マンノース(1:4)])を用いて、上記3,5-ジニトロサリチル酸法に従って、基質(ローカストビーンガム)還元物の生成量を測定する方法を挙げることができる。その詳細は後述する参考例に説明する通りである。
【0015】
本発明において「アルカリ性マンナナーゼ」とは、活性の最適pHがアルカリ領域(pH 8以上)にあるマンナナーゼを意味する。
【0016】
本発明が対象とするアルカリ性マンナナーゼとしては、下記(イ)〜(ト)の理化学的特性を有するものを挙げることができる:
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
ここで4糖以上のマンノオリゴ糖としては、ローカストビーンガム、アイボリーナッツ、コンニャクマンナン、グアガムなどを例示することができる。これらのマンノオリゴ糖に対する本発明のアルカリ性マンナナーゼの相対活性は、好適にはローカストビーンガムを100とした場合に、アイボリーナッツ約60、コンニャクマンナン約100、及びグアガム約30である。本発明のアルカリ性マンナナーゼは、エンド型のマンナナーゼ活性を有し、2糖または3糖のマンノオリゴ糖に対しては、pH 9及び40℃で17時間処理しても加水分解能を示さないものであることが好ましい。
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する。好ましくはpH 9.5〜10.2の範囲内、より好ましくはpH 10前後に最適pHを有する。
(ハ)pH安定性:pH 6.5〜10及び40℃の条件下で30分処理した場合に70%以上のマンナナーゼ活性を有する。好適にはpH 6.5〜10及び40℃の条件下で30分処理した場合に80%以上のマンナナーゼ活性を有するようなpH安定性を有していることが望ましい。なお、ここで70%以上、好ましくは80%以上のマンナナーゼ活性を有するとは、処理前のマンナナーゼ活性を100%とした場合に、処理後のマンナナーゼ活性が処理前のマンナナーゼ活性の70%以上、好ましくは80%以上保持されていることをいう。さらに、本発明のアルカリ性マンナナーゼは、pH 7〜9.5及び40℃の条件下で30分処理した場合に80%以上、好ましくは90%以上のマンナナーゼ活性を保持しているものであることが好ましい。
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する。
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する。
【0017】
なお、ここで50%以上のマンナナーゼ活性を有するとは、処理前のマンナナーゼ活性を100%とした場合に、上記処理後のマンナナーゼ活性が処理前のマンナナーゼ活性の50%以上保持されていることをいう。
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する。
【0018】
なお、ここで「失活」とは、処理前のマンナナーゼ活性を100%とした場合に、処理後のマンナナーゼ活性が処理前のマンナナーゼ活性の10%以下、好ましくは5%以下となることを意味する。より好ましくは上記処理によってマンナナーゼ活性が消失(0%)となる性質を有するものである。
(ト)金属阻害:pH 7.5及び40℃の条件でそれぞれ1mM濃度のFe2+、Fe3+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、またはSn2+の存在下で30分処理した場合、マンナナーゼ活性が阻害され、処理前のマンナナーゼ活性(100%)の50%以下となる。
(チ)SDS-PAGEによる分子量:約130 kDa。
【0019】
さらに、本発明のアルカリ性マンナナーゼには、上記(イ)〜(ト)の理化学的特性を有するものであって、N末端にGlu-Ser-Lys-Ile-Pro-Lys-Asp-Ser-Glu-Gly:配列番号5)からなるアミノ酸配列を有するタンパク質が含まれる。
【0020】
かかる特性を有する本発明のアルカリ性マンナナーゼとして、好ましくは配列表:配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。また、本発明のアルカリ性マンナナーゼは、かかる特定のアミノ酸配列を有するものに制限されず、その機能的同等物であってもよい。ここで機能的同等物としては、配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し、前述する理化学的特性のうち(イ)〜(ト)の少なくとも1つを有するタンパク質を挙げることができる。好ましくは(イ)〜(ト)の理化学的特性のうち2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ以上を有するものであり、より好適には7つの全てを有するものである。また、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質の機能同等物としては、前述する理化学的特性(イ)〜(ト)の少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ以上、より好ましくは7つ)に加えて、N末端にGlu-Ser-Lys-Ile-Pro-Lys-Asp-Ser-Glu-Gly(配列番号5)からなるアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。
【0021】
上記の機能的同等物としてより好ましくは、配列番号1に示すアミノ酸配列とアミノ酸配列において40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、より更に好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上の同一性を有し、且つアルカリ性のpH範囲(pH 8以上)で安定で、当該アルカリ性pH範囲に最適pHを有するタンパク質を挙げることができる。なお、2つの配列を対比した場合における配列の同一性は、当該配列間で同一であるアミノ酸数の、全アミノ酸数に対する百分率で示される。
【0022】
上記の原理に従い、2つのアミノ酸配列における配列の同一性は、Karlin および Altschul のアルゴリズム[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 87, 2264-2268 (1990)およびProc. Natl. Acad. Sci., USA, 90, 5873-5877 (1993)]により、決定することができる。このようなアルゴリズムを用いたプログラムとしては、BLASTプログラム [Altschul et al., J. Mol. Biol. 215, 403-410 (1990)]、及び当該BLASTより感度良く配列同一性を決定することのできるGapped BLASTプログラム [Nucleic Acids Res., 25, 3389-3402 (1997)]を挙げることができる。これらのプログラムは、例えば米国National Center for Biotechnology Informationのインターネット上のウェブサイトにおいて利用可能である。
【0023】
また、本発明のアルカリ性マンナナーゼには、配列表:配列番号2で示される塩基配列からなるDNAによってコードされるタンパク質、並びにその機能的同等物が含まれる。ここで機能的同等物としては、配列番号2で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA(ホモログ)によってコードされるタンパク質であって、且つ前述する理化学的特性のうち(イ)〜(ト)の少なくとも1つを有するタンパク質を挙げることができる。好ましくは(イ)〜(ト)の理化学的特性のうち2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上または6つ以上を有するものであり、より好適には7つの全てを有するものである。
【0024】
なお、ここで配列番号2に示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとハイブリダイズする「ストリンジェントな条件」は、Berger と Kimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol.152, Academic Press, San Diego, CA, USA, 1987)に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えば、ハイブリダイズ後の洗浄条件(いわゆるこれが「ストリンジェントな条件」)として、6xssc (1xsscの組成;0.15 M NaCl, 0.015 M クエン酸ナトリウム、pH 7.0), 0.5% SDS, 5Xデンハート及び100 mg/mlニシン精子DNA)を含む溶液にプロ-ブと共に65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる(Sambrookら、 Molecular Cloning-a Loboratory Mannual, 2nd ed.)。
【0025】
なお、本発明のアルカリ性マンナナーゼは、本発明で開示するアミノ酸配列に基づいて化学的または遺伝子工学的手法によって製造することができる。遺伝子工学的手法による製造方法の詳細については、後述する。また、アミノ酸配列における改変は、当業界において既に公知な方法、例えば部位特異的変異導入法[Current Protocols I molecular Biology, edit. Ausubel et al., John Wily & Sons, Section 8.1-8.5 (1987)]等を用いて、改変しようとするアミノ酸配列に、適宜、置換、欠失、挿入、付加、逆位などの変異を導入することによって行うことができる。
【0026】
本発明のアルカリ性マンナナーゼは、上記特性を有するものであれば特にその由来を問うものではないが、好ましくはBacillus属に属する微生物に由来するものである。好ましくは生育最適pHがpH9前後であり、生育最適温度が33〜35℃であるBacillus属に属する好アルカリ性中温菌に由来する微生物である。かかる微生物の一例として、制限はされないが、その16S rDNAの配列が、B. alcalophilusの16S rDNAの配列と98%以上100%未満、好ましくは98.5〜99.5%の範囲、より好ましくは98.9%同一であるか、またはB. pseudalcalophilusの16S rDNAの配列と97%以上100%未満、好ましくは97.5〜99.5%の範囲、より好ましくは97.9%同一性であるような微生物を例示することができる。
【0027】
ここで、2つの配列における配列同一性は、これらの配列間での同一である塩基数の、全塩基数に対する百分率で示される。またアミノ酸配列と同様に、2つの塩基配列における配列同一性は、Karlin および Altschul のアルゴリズム[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 87, 2264-2268 (1990)およびProc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873-5877 (1993)]により、決定することができる。
【0028】
本発明のアルカリ性マンナナーゼを産生する、好アルカリ性のBacillus属に属する微生物として、好適には「Bacillus sp. Strain JAMB-750」(受領番号FERM AP-20227)(JAMB-750株)を挙げることができる。この微生物の特性を表1に示す。
【0029】
【表1】

当該菌体(JAMB-750株)は土壌から分離取得したものであり、pH 9前後で良く生育する好アルカリ性のBacillus属細菌である。さらに当該JAMB-750株は、16S rDNA塩基配列に基づく相同性解析の結果、Bacillus alcalophilus(DSM485T)と98.9%の相同性を、またBacillus pseudoalcalophilus(DSM8725T)と97.9%の相同性を有している。このことから本発明菌体(JAMB-750株)は、これらの菌体と近縁種のものではあるが、これらの菌とは異なるBacillus属に属する新種の微生物であると判断された。当該本発明の菌体は、「Bacillus sp. Strain JAMB-750」と命名されて、平成16年9月24日付けで、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6に住所を有する独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターに、寄託者が付した識別のための表示を「Bacillus sp. Strain JAMB-750」とし、受領番号を「FERM AP−20227」として寄託されている(通知番号:16産生寄第227号)。
【0030】
上記微生物は、本発明のアルカリ性マンナナーゼを生産し、菌体外に溶出する能力を有している。このため、本発明のアルカリ性マンナナーゼは、上記微生物(JAMB-750株)を培養することによって、培養液から採取することが可能である。
【0031】
(2)アルカリ性マンナナーゼ遺伝子
本発明はまた、上記アルカリ性マンナナーゼの遺伝子を提供する。なお、ここでいう遺伝子には、ゲノムDNA、cDNA、合成DNAならびにRNAが含まれる。
【0032】
当該遺伝子は、前述するアルカリ性マンナナーゼ(タンパク質)をコードする塩基配列を有するものであればよい。具体的には、配列表;配列番号2に示す塩基配列からなるDNA、並びにそのホモログを挙げることができる。ここでホモログとしては、配列番号2で示される塩基配列からなるDNAによってコードされるタンパク質(アルカリ性マンナナーゼ)と機能的に同等なタンパク質をコードする遺伝子を挙げることができる。なお、機能的に同等とは、配列番号2で示される塩基配列からなるDNAによってコードされるタンパク質(アルカリ性マンナナーゼ)と同様に、少なくともアルカリ領域でマンナナーゼ活性を有すること、好ましくは当該活性の最適pHがアルカリ領域(pH 8以上)であることを意味する。
【0033】
好ましいホモログとしては、上記(1)において説明した理化学的特性のうち(イ)〜(ト)の少なくとも1つを有するタンパク質を挙げることができる。好ましくは(イ)〜(ト)の理化学的特性のうち2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上または6つ以上を有するものであり、より好適には7つの全てを有するものである。
【0034】
かかるホモログとして、具体的には、配列番号2で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を有する遺伝子を挙げることができる。ストリンジェントな条件としては、前述のものを同様に挙げることができる。具体的なホモログとしては、配列番号4で示される塩基配列を有する遺伝子を挙げることができる。当該遺伝子は、N末端領域にシグナルペプチドを有する、アルカリ性マンナナーゼの前駆体(配列番号3)をコードするDNAである。
【0035】
なお、本発明の遺伝子は、実施例で示すように、「Bacillus sp. Strain JAMB-750」から単離取得することもできる。それ以外の方法として、化学的な合成によって調製することもできる。
【0036】
(3)組み換えベクター
本発明は、上記アルカリ性マンナナーゼをコードする遺伝子を含有する組み換えベクターを提供する。当該組み換えベクターは、アルカリ性マンナナーゼをコードする遺伝子を、所望の宿主細胞内で発現可能な状態で含んでおり、当該宿主細胞を形質転換するために使用される。ゆえに、本発明の組み換えベクターは、かかる宿主細胞の形質転換が達成できる形態を有するものであればよく、例えばプラスミド、バクテリオファージ、レトロトランスポゾンの形態を有するものであってもよい。
【0037】
本発明の組み換えベクター(発現ベクター)は、宿主として大腸菌(E. coli)や枯草菌(B. subtilis)などの細菌を使用する場合、一般に、少なくともプロモーター−オペレーター領域(プロモーター、オペレーター及びリボゾーム結合領域(SD領域)を含む)、開始コドン、本発明のアルカリ性マンナナーゼをコードするDNA、終止コドン、ターミネーター領域、及び複製可能単位を有する。また、酵母等の真菌細胞または動物細胞を宿主細胞として用いる場合は、一般に、少なくともプロモーター、開始コドン、シグナルペプチド及び本発明のアルカリ性マンナナーゼをコードするDNA、及び終止コドンを有する。また、本発明の組み換えベクター(発現ベクター)は、必要に応じて、エンハンサーなどのシスエレメント、本発明のアルカリ性マンナナーゼをコードするDNAの5'側または3'側の非翻訳領域、スプライシング接合部、ポリアデニレーション部位、複製可能単位、相同領域、選択マーカーを含むことができる。これらのエレメントは、本発明のアルカリ性マンナナーゼをコードする遺伝子の発現に用いられる宿主に対応したものであれば、特に制限されず、当業界の技術常識に基づいて選択することができる。
【0038】
なお、選択マーカーとしては、特に制限されず、例えば遺伝子発現に使用される宿主が細菌の場合は、薬剤抵抗性遺伝子(例えば、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、シクロヘキシミド耐性遺伝子、テトラマイシン耐性遺伝子など)、宿主が細菌以外の例えば酵母などの場合は、栄養要求性遺伝子(例えば、HIS4、URA3、LEU2、ARG4など)などを始めとする公知の各種選択マーカーを利用することができる。
【0039】
本発明の組み換えベクター(発現ベクター)は、簡便には、上記本発明のアルカリ性マンナナーゼをコードするDNAを、公知の発現用ベクターに、目的のアルカリ性マンナナーゼが発現可能な状態で導入することによって、具体的にはプロモーターの下流に導入することによって作成することができる。かかる導入は、DNA組み換えの一般的な方法、例えばMolecular Cloning. (1989). (Cold Spring Harbor Lab.)に記載される方法に従って行うことができる。
【0040】
発現用ベクターとしては、プラスミドベクターとして、例えばpRS413、pRS415、pRS416、YCp50、pAUR112またはpAUR123などのYCp型大腸菌(E. coli)-酵母シャトルベクター;pRS403、pRS404、pRS405、pRS406、pAUR101またはpAUR135などのYIp型大腸菌(E. coli)-酵母シャトルベクター;大腸菌(E. coli)由来のプラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC18、pUC19、pUC119、pTV118N、pTV119N、pBluescript、pHSG298、pHSG396またはpTrc99AなどのColE系プラスミド;pACYC177またはpACYC184などのp1A系プラスミド;pMW118、pMW119、pMW218またはpMW219などのpSC101系プラスミドなど);枯草菌(B. subtilis)由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5など);pHY300PLKなどの大腸菌(E. coli)-枯草菌(B. subtilis)シャトルベクターを挙げることができる。またファージベクターとして、λファージ(Charon 4A, Charon21A, EMBL4, λgt100, gt11, zap)、ψX174、M13mp18、M13mp19などを挙げることができる。レトロトランスポゾンとしてはTy因子などを挙げることができる。また、融合タンパク質として発現する発現ベクター、例えばpGEXシリーズ(ファルマシア製)、pMALシリーズ(Biolabs社製)を使用することもできる。
【0041】
本発明の実施例では、本発明のアルカリ性マンナナーゼの前駆体をコードする遺伝子を、pHY300PLKプラスミドベクター [大腸菌(E. coli)-枯草菌(B. subtilis)シャトルベクター、TaKaRa製:大腸菌(E. coli)のプラスミドpACYC177とStreptococcus faecalisのプラスミドpAMα1に由来するDNAから構築]のマルチプルクローニングサイトに導入することによって、本発明のアルカリ性マンナナーゼ発現用ベクターを作成している。なお、pHY300PLKプラスミドベクターには、薬剤抵抗性遺伝子としてアンピシリン耐性遺伝子及びテトラマイシン耐性遺伝子;RNAプライマー遺伝子(ori-177);プラスミド複製遺伝子(Rep-α-1遺伝子)、複製オリジン[大腸菌(E. coli)用と枯草菌(B. subtilis)用];ポリリンカーなどが含まれている。当該プラスミドベクターによれば、枯草菌(B.subtilis)及び大腸菌(E. coli)を宿主として、その中で、外来遺伝子として連結された本発明のアルカリ性マンナナーゼの遺伝子を効率的に転写及び翻訳することができる。
【0042】
(4)形質転換体
本発明はまた、宿主細胞に上記組み換えベクターを導入して形質転換されてなる形質転換体を提供する。
【0043】
組み換えベクターの宿主細胞への導入(形質転換)方法は、特に制限されず、トランスフォーメーション法、トランスフェクション法、コンピテント細胞法、エレクトロポレーションなど、導入する宿主細胞の種類や組み換えベクターの形態に応じて、適宜選択することができる。
【0044】
宿主細胞としては、大腸菌(E. coli)や枯草菌(B. subtilis)などの細菌、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母、sf9やsf21などの昆虫細胞、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)などの動物細胞、タバコなどの植物細胞を挙げることができる。好ましくは、大腸菌(E. coli)や枯草菌(B. subtilis)などの細菌、及び酵母である。
【0045】
なお、発現ベクターの宿主細胞内での存在様式は、特に制限されず、染色体中に挿入されて、あるいは置換されて組み込まれてもよいし、またプラスミド状態で存在していてもよい。
【0046】
(5)アルカリ性マンナナーゼの製造方法
斯くして得られた形質転換体は、宿主に応じて適切な培地中で培養されることによって、本発明の新規アルカリ性マンナナーゼを産生することができる。本発明は、かかる形質転換体を利用した新規アルカリ性マンナナーゼの製造方法を提供するものである。当該方法は、具体的には、上記の形質転換体を培地で培養し、得られた培養物から、アルカリ性マンナナーゼを採取することによって実施することができる。
【0047】
培地には、上記形質転換体の生育に必須な炭素源、窒素源、無機塩、ビタミン、薬剤などが含有される。炭素源としてはマンナン成分、アラビノース、セロビオース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グリセロール、ラクトース、マルトース、マンニトール、マンノース、スクロース、トレハロース、キシロースが;窒素源としては硫酸アンモニウムや塩化アンモニウムなどの無機窒素、並びにカゼイン分解物、酵母抽出物、ポリペプトン、バクトトリプトン及びビーフ抽出物などの有機窒素源;無機塩としては例えば二リン酸ナトリウムまたは二リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等;ビタミンとしてはビタミンB1を始めとする各種のビタミン;薬剤としてはアンピシリン、ネオマイシン、シクロヘキシミド、テトラマイシンなどの各種抗生物質を挙げることができる。なお、これらは一例であり、これらに制限はされない。
【0048】
培地の一例としては、宿主が大腸菌(E. coli)などのグラム陰性菌、または枯草菌(B. subtilis)などのグラム陽性菌といった細菌の場合は、LB培地(日水製薬)、M9培地(J. Exp. Mol. Genet., Cold Spring Harbor Laboratory, New York, p.431, 1972)などが;また宿主が酵母の場合、YPD培地(1w/v% Bacto yeast extract, 2w/v% Bacto peptone, 2w/v% glucose)、YPG培地(1w/v% Bacto yeast extract, 2w/v% Bacto peptone, 2w/v% glycerol)、YP培地(1w/v% Bacto yeast extract, 2w/v% Bacto peptone、YPD培地(1w/v% Bacto yeast extract, 2w/v% Bacto peptone, 2w/v% glucose)、0.7w/v% Yeast Nitrogen Base (Difco社)、YP培地〔1w/v% Bacto yeast extract (Difco社) , 2w/v% Polypepton S (日本製薬)〕、などが例示される。
【0049】
培養は、通常10〜40℃の温度範囲で数〜80時間程度実施され、必要に応じて通気、攪拌を加えることもできる。培養温度は、宿主に応じて設定できるため、特に制限されないが、好ましくは18〜42℃、より好ましくは25〜38℃の範囲で実施することができる。
【0050】
本発明のアルカリ性マンナナーゼの製造方法は、さらに、斯くして得られる培養物から目的のアルカリ性マンナナーゼ(タンパク質)を採取することによって実施される。目的タンパク質の採取は、培養後、培養上清中または形質転換体(菌体)中に蓄積された、目的のタンパク質を公知の方法で抽出し、また必要に応じて精製することによって行うことができる。分離精製は、例えば、塩析法、溶媒沈澱法、透析法、限外濾過法、ゲル電気泳動法、あるいはゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の手法を組み合わせて行うことができる。
【0051】
(6)アルカリ性マンナナーゼの用途
上記本発明のアルカリ性マンナナーゼは、酵素組成物、洗浄用組成物、漂白処理用組成物、及び繊維柔軟剤の成分として使用することができる。以下、これらの各組成物について説明する。
【0052】
(6-1) 酵素組成物
本発明の酵素組成物は、アルカリ性マンナナーゼに他の1種以上の酵素を組み合わせてなるものである。本発明のアルカリ性マンナナーゼと組み合わせて用いられる酵素として、下記からなる群から選択される1または2以上の酵素を挙げることができる:
プロテアーゼ、セルラーゼ(エンド-β-1,4-グルカナーゼ)、β−グルカナーゼ(エンド-β-1,3(4)-グルカナーゼ)、リパーゼ、クチナーゼ、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ペクチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、ヘミセルラーゼ、キシログルナナーゼ、キシラナーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ラムノガラクツロナンアセチルエステラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ラムノガラクツロナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンリアーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、セロビオヒドロラーゼ、トランスグルタミナーゼ、 マンノシダーゼ、β―グルクロニダーゼ。中でも好ましくは、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プルラナーゼ、ペクチンリアーゼである。
【0053】
(6-2) 洗浄用組成物
本発明の洗浄用組成物[但し、繊維製品(衣料品を含む)を対象とする繊維製品洗浄用組成物は除く]は、本発明のアルカリ性マンナナーゼを含むことを特徴とするものであるが、これに加えて他の洗浄成分を含むことができる。
【0054】
ここで洗浄成分としては、清浄作用を有するもの、またはこの清浄作用を補強する作用を有するものを挙げることができ、被洗浄物の種類に応じて適宜選択することができる。具体的には、界面活性剤、ビルダー、漂白剤、泡抑制剤、起泡剤などを例示することができる。
【0055】
ここで界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤の中から適宜選択して用いることができる。中でも好ましくは非イオン性界面活性剤及び/又はアニオン系界面活性剤である。ここで非イオン性界面活性剤としては、例えばアルキルフェノールのポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブチレンオキシド縮合物を;カチオン系界面活性剤としては第4級アンモニウム系の界面活性剤を;アニオン系界面活性剤としてはアルキルエステルスルホネート系の界面活性剤を;両性界面活性剤としては、第二及び第三アミンの誘導体、複素環式第二及び第三アミンの誘導体、又は第四級アンモニウム、第四アンモニウム、第四ホスホニウム又は第三ホスホニウム化合物の誘導体を例示することができる。但し、これらに制限されることなく、通常洗浄剤に使用される界面活性剤を広く使用することができる。
【0056】
界面活性剤は、洗浄用組成物あたり0.1〜60重量%の割合で使用することができる。制限されないが、洗浄用組成物あたりの各界面活性剤の割合としては、非イオン性界面活性剤については0.001〜50重量%、カチオン系界面活性剤については0.2〜25重量%、好ましくは1〜8重量%、アニオン系界面活性剤については1〜40重量%、好ましくは3〜20重量%、両性界面活性剤については0.2〜15重量%、好ましくは1〜10重量%の割合を例示することができる。
【0057】
ビルダーとしては、アルミノシリケート材料、シリケート、ポリカルボキシレートを挙げることができる。好ましくは、無機化合物であるアルミノシリケート材料(より詳細には水和化された合成ゼオライト)、及びシリケート(例えば積層シリケートや結晶性シリケートが含まれる)である。但し、これらに制限されることなく、通常洗浄剤に使用されるビルダーを広く使用することができる。ビルダーは、洗浄用組成物あたり5〜80重量%の割合で使用することができる。洗浄用組成物が液状である場合は、5〜30重量%の割合で使用することが好ましい。
【0058】
漂白剤としては、例えば酸素系漂白剤、過カルボン酸系漂白剤時、及びハロゲン系漂白剤など、通常洗浄剤に使用される漂白剤を広く使用することができる。漂白剤は、制限されないが、洗浄用組成物あたり0〜25重量%の割合で使用することができる。
【0059】
泡抑制剤としては、例えばシリコーンやシリカ-シリコーンなどの、通常洗浄剤に使用される泡抑制剤を広く使用することができる。泡抑制剤は、制限されないが、洗浄用組成物あたり0〜2重量%の割合で使用することができる。
【0060】
制限はされないが、本発明の洗浄用組成物には、本発明のアリカリマンナナーゼを好ましくは0.0001〜2重量%、より好ましくは0.0005〜0.5重量%の割合で使用することができる。さらに本発明の洗浄用組成物には、上記アルカリ性マンナナーゼに加えて、セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチン分解酵素、キシログルカナーゼ及びカルボヒドラーゼなどの酵素を含むことができる。ここでセルラーゼ、アミラーゼ、ペクチン分解酵素、キシログルカナーゼ及びカルボヒドラーゼとしては、好適にはpH7〜12の範囲に最大活性を有するか、若しくは最大活性の10%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは40%以上の酵素活性を有するような、好アルカリ性セルラーゼまたは耐アルカリセルラーゼ、好アルカリ性アミラーゼまたは耐アルカリアミラーゼ、好アルカリ性ペクチン分解酵素または耐アルカリペクチン分解酵素、好アルカリ性キシログルカナーゼまたは耐アルカリキシログルカナーゼ、及び好アルカリ性カルボヒドラーゼまたは耐アルカリカルボヒドラーゼである。
【0061】
制限はされないが、洗浄用組成物中にセルラーゼは0.0001〜2重量%、好ましくは0.00018〜0.06重量%の割合;アミラーゼは0.0001〜2重量%、好ましくは0.00018〜0.06重量%の割合;ペクチン分解酵素は0.0001〜2重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の割合;キシログルカナーゼは0.0001〜2重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の割合;及びカルボヒドラーゼは0.0001〜2重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の割合で配合することができる。
【0062】
本発明の洗浄用組成物には、上記成分に加えて他の成分、例えば蛍光増白剤、研磨剤、殺菌剤、曇り抑制剤、再付着防止剤、柔軟剤、着色剤、香料などを配合することもできる。これらの成分も通常洗浄剤に使用されるものが広く使用できる。
【0063】
本発明の洗浄用組成物の洗浄対象は、繊維製品(衣料を含む)以外のものであれば特に制限されない。よって、本発明の洗浄用組成物には、例えば食器等を対象とする食器洗い洗浄組成物;毛髪並びに皮膚等を対象とする毛髪や皮膚洗浄組成物(ヘアシャンプー、ボディーシャンプー);床やガラス等の表面に付着した汚れを洗浄する硬質表面クリーナー;コンタクトレンズ洗浄剤;歯みがきや入れ歯用洗浄剤などを挙げることができる。
【0064】
本発明の洗浄用組成物は、その形態を特に制限するものではなく、例えば液状、ペースト状、ゲル状、棒状、錠剤状、噴射スプレー、発泡体状、粉末状、顆粒状、または粒状を有することができる。また粒状組成物はまた圧縮形態で存在することができ、また液体組成物は濃縮された形態であってもよい。
【0065】
(6-3) 漂白処理用組成物
本発明のアルカリ性マンナナーゼは、製紙パルプ(化学パルプ、半パルプ、機械パルプ、クラフトパルプなど)の塩素を含まない漂白プロセスにおいて、この漂白効果を高め、過酸化水素のニーズを低減または排除するのに有効に使用することができる。ゆえに、本発明のアリカリマンナナーゼは、塩素を含まない製紙パルプの漂白処理用組成物の1成分として使用することができる。よって本発明は、アルカリ性マンナナーゼを含む製紙パルプの漂白処理用組成物を提供するものである。かかる漂白処理用組成物は、本発明のアルカリ性マンナナーゼに加えて、当該組成物に一般的に使用される各種の成分を広く配合することができる。なお、アルカリ性マンナナーゼの配合割合としては、その比活性にもよるが、通常0.001%〜20%の範囲で使用することができる。
【0066】
(6-4) 繊維産業及びセルロース繊維加工産業における用途
本発明のアルカリ性マンナナーゼは、繊維の製造または繊維の加工に際して(好ましくはセルロース系繊維)、必要に応じて他の炭水化物分解酵素(例えば、キシログルカナーゼ、キシラナーゼ、種々のペクチン分解酵素)を組み合わせて使用することができる。なお、ここで「セルロース系繊維」には、綿、混紡綿、または天然若しくは人工セルロース物質(例えば、木材パルプのようなキシラン含有セルロース繊維)、またはこれらの混紡から作られた繊維、織布、不織布(ニット、織物、デニム、ヤーン、及びタオル地を含む)が含まれる。混紡の例としては、綿またはレーヨン/ビスコースと、羊毛,合成繊維(例えば、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリビニリドンクロリド繊維、ポリウレタン繊維、ポリ尿素繊維、アラミド繊維)及びセルロース含有繊維(例えば、レーヨン/ビスコース、ラミー、麻、アマ/リネン、ジュート、酢酸セルロース繊維、リオセル)より選択される少なくとも1つとの組み合わせからなる混紡を挙げることができる。
【0067】
本発明のアルカリ性マンナナーゼは、セルロース系繊維を衣類の製造に使用可能な材料に加工するか、若しくはセルロース系繊維を衣類の製造に好適に使用できる材料に加工する目的で使用することができる。繊維産業におけるセルロース系繊維の加工には、例えば繊維を紡糸してヤーンにする工程:ヤーンから織布またはニットを作成する工程;及びその後に染色等する仕上げ工程など複数の工程が含まれる。
【0068】
こうした工程において、特に織る前に、繊維には高分子糊(例えば、マンナン、でんぷん、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなど)が加えられるが、かかる処理を施した材料は、加工前に除去する必要がある。本発明のアルカリ性マンナナーゼは、こうしたマンナン含有糊の除去に使用することができる。
【0069】
またグアガムやローカストビーンガム等のガラクトマンナンは、繊維の捺染に使用される捺染糊の増粘剤として広く使用されている。ゆえに本発明のアルカリ性マンナナーゼまたはこれを含む酵素組成物は、捺染糊の粘度の低減や、捺染加工後の繊維から捺染糊を洗浄し除去するために使用することができる。
【0070】
(6-5) 植物由来の増粘剤やゲル化剤等の分解及び修飾
植物成分に由来する増粘剤、ゲル化剤または分散剤には、有効成分としてマンナン、ガラクトマンナン、グルコマンナン、またはガラクトグルコマンナンを含むものがある。かかるものとしては、例えばローカストビーンガムやグアガムなどのガム類を挙げることができる。本発明のアルカリ性マンナナーゼまたはこれを含む酵素組成物は、これら増粘剤、ゲル化剤または分散剤等の用途に広く使用されているマンナン成分を含む植物由来物質を分解し、その物理化学的性質(例えば、粘度など)を修飾するのに好適に使用することができる。具体的には、マンナンを含む飼料や食物の粘度を低下させ、粘性のあるマンナン含有物質(飼料、食物)の加工を容易にするために好適に使用することができる。
【0071】
(6-6) コーヒー液やその加工に際して生じるゲル形成や沈澱生成の抑制
また本発明のアルカリ性マンナナーゼまたはこれを含む酵素組成物は、液体コーヒー抽出物中に存在するガラクトマンナン等のマンナン類の加水分解に利用することができ、これによってコーヒー液やその加工に際して生じるゲル形成や沈澱生成を抑制することができる。特にインスタントコーヒーの凍結乾燥中のゲル形成、ホットベンダーなど加温保存中におけるゲル形成や沈澱生成の抑制に有効に使用することができる。
【0072】
(6-7) 地下部の破砕における使用(石油掘穿)
本発明のアルカリ性マンナナーゼまたはこれを含む酵素組成物は、米国特許第5806597号、第5562160号、第5201370号、及び第5067566号と同様に、酵素破砕剤として使用することができる。具体的には、井戸掘穿や石油掘穿等を目的として、地盤を破砕し地下部を形成するための破砕剤として使用することができる。
【0073】
破砕剤としては、本発明のアルカリ性マンナナーゼまたはこれを含む酵素組成物を、水和可能ポリマー、及び当該水和可能ポリマーを本発明のアルカリ性マンナナーゼと架橋するための架橋剤と混合して、架橋ポリマーゲルとして使用されることが好ましい。当該架橋ポリマーゲルは、地下部を破壊するのに十分な圧力下で、地下部に所望の穴を形成しながら穴中にポンプで送入される。地下部の穴に送入された架橋ポリマーゲルは、時間とともにそれに含まれる本発明のアルカリ性マンナナーゼの分解作用によって粘度が低下して、低粘度の液状物となる。このため、地下部の溜まった当該液体は、地下部から容易に穴表面にポンプで送り戻すことができる。こうした架橋ポリマーゲルによる圧搾作業、穴内に溜まった架橋ポリマーゲルの低粘度化、及びその回収作業の繰り返しにより、地下部を形成することが可能となる。
【0074】
(6-8)マンノース、オリゴ糖の製造
本発明のアルカリ性マンナナーゼは、コンニャク等のグルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム、大豆種皮由来のガラクトマンナン、コーヒー豆由来のガラクトマンナン、木材由来のガラクトグルコマンナン、海藻由来のβ-1,4マンノ多糖類、酵母由来のβ-1,4マンノ多糖類に作用させることによって、マンノース、マンノオリゴ糖、ガラクトマンノオリゴ糖、グルコマンノオリゴ糖の製造に使用することが出来る。具体的には、本発明のアルカリ性マンナナーゼをβ−1,4マンノピラノース環を有する植物性多糖類に作用させることによって、カロリー成分であるグルコースを含まない製品、例えば甘味料、点滴成分、製飴、低カロリー・ノンカロリー成分、サルモネラ菌定着抑制成分、生分解性プラスチック促進剤を製造することができる。
【0075】
(6-9)飼料添加剤
本発明のアルカリ性マンナナーゼは飼料添加剤として、飼料の調製に使用することができる。具体的には、本発明のアルカリ性マンナナーゼを牛等の反すう動物の飼料に飼料添加剤として配合すると、当該マンナナーゼの作用によって、弱アルカリ性の胃の中で穀物に含まれるマンナンが分解されてマンノオリゴ糖が生成され、ビフィダス菌を増やし、整腸、増体重促進、飼料効率向上、便秘および下痢低減、発情再帰日数短縮、便臭改善の効果をもたらすことができる。
【0076】
(6-10)白水スカムの抑制剤
本発明のアルカリ性マンナナーゼは、製紙工程における櫛分や抄紙工程で循環利用される白水のスカムの抑制剤として有用である。各種の櫛を通して水浴中で固形不純分を取り除かれた砕木したままのパルプや蒸解パルプは、漂白、乾燥工程を経て連続的にロールによって巻き取られるが、櫛槽や抄紙槽で再利用される水は、アルカリ性で白くにごり、溶解したパルプ由来の多糖類、繁殖した微生物、微生物分泌物、パルプ繊維屑糖によるスカムやスケールを発生させ、櫛分や抄紙槽内でパルプにスカムを混入させる。本発明のアルカリ性マンナナーゼによれば、細胞壁の損傷による微生物の生育を抑制したり、スカム成分の溶解を促進させることによって、白水中のスカムの発生を抑制することができる。また漂白や乾燥工程でスカムやスケールを分解ないしは焼き切ることが可能である。こうした本発明のアルカリ性マンナナーゼによるスカムの発生抑制及び分解作用は、製紙工程において、パルプの裁断による巻き取りの中断を防ぐのに有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例等に限定されるものではない。なお、下記の実施例において特に言及しない限り、%はw/v%を意味するものとする。
参考例
なお、下記の実施例において、(1)マンナナーゼの検出方法(マンナナーゼ存在の確認)、及び(2)マンナナーゼ活性の測定は下記の方法に従って行った。
(1) マンナナーゼの検出方法
マンナナーゼの検出は、マンナン成分を含む固体培地におけるハロー形成の有無を目視で判断することによって行った。すなわち、被験試料中にマンナナーゼが存在すれば、培地中のマンナンが分解されてハローが形成される。具体的には、被験試料をマンナン成分としてローカストビーンガムを含む固体培地(0.2 % locust bean gum(Sigma,以下同じ)、0.5 % Polypepton S(日本製薬, 以下同じ)、0.5 % yeast extract(Difco, 以下同じ)、0.1 % K2HPO4、0.02 % MgSO4.7H20、0.5% Na2CO3、1.5 % agar)(以下、「マンナン含有固体培地」と称する)に塗布し、30℃で数日間培養を行う。コロニー形成後、当該固体培地に0.1 % コンゴーレット水溶液を重層し染色する。その後、1 % 水酸化ナトリウム水溶液で脱色し、マンナンの分解により形成されるハローを目視により判断し、被験試料中のマンナナーゼの存在の有無を評価する。以下、本法によるマンナナーゼの検出方法を「ハロー法」とも称する。
【0078】
(2) マンナナーゼ活性の測定
マンナナーゼ活性の測定は、基質としてローカストビーンガム(主要構成成分;[D−ガラクトース:D−マンノース(1:4)])を用いて、3,5-ジニトロサリチル酸法[G.L. Miller, Anal. Chem., 31, 426-428 (1959)]に従って、基質(ローカストビーンガム)還元物の生成量を測定することによって行った。
【0079】
具体的には、測定対象の酵素液を基質溶液[最終濃度0.3 % ローカストビーンガム、50 mM グリシン-NaCl-NaOH緩衝液, pH 9.0]にいれて(総量 1 ml)、40℃で30分間処理して酵素反応を行う。反応後、ジニトロサリチル酸溶液1 mlを加え、沸騰水中で5分間加熱した後、氷水にて冷却する。冷却後、水4 mlを加え535 nmの吸光度を測定する。なお、1分間に1μmolのD-マンノースに相当する還元糖を生成する酵素量(タンパク質量)を1単位(1U)とする。タンパク質量は、標準タンパク質として牛血清アルブミンを用いたタンパク質アッセイキット(Bio-Rad)を用いて測定する。
【0080】
以下、本法によるマンナナーゼ活性の測定方法を「ジニトロサリチル酸法」と称する。
【0081】
実施例1 アルカリ性マンナナーゼ生産菌「Bacillus sp. Strain JAMB-750」の分離
千葉県大原町より採取した土壌を滅菌水に懸濁し、上澄み液をマンナン含有固体培地に塗布して、30℃で数日間培養を行った。コロニー形成後、当該固体培地に0.1 % コンゴーレット水溶液を重層して染色し、その後1 % 水酸化ナトリウム水溶液で脱色してマンナンの分解により形成されるハローの有無を評価した。
【0082】
ハロー形成能を有するコロニーをマンナナーゼ生産候補株とし、液体培養を行った。具体的には、液体培地(マンナン含有固体培地より寒天(agar)を除いたもの)に上記マンナナーゼ生産候補株を植菌し、30℃で数日間好気的に振とう培養した。その後、遠心分離により培養液を、菌体(沈殿物)と上清に分け、得られた上清を5 mM リン酸緩衝液(pH 7.0)にて透析した。これを粗酵素液として用いて、各pHにおけるマンナナーゼ活性を、参考例に記載するジニトロサリチル酸法に従って測定した。これにより、粗酵素液に含まれるマンナナーゼの最適pHを求めた。本法にて、最適pHをアルカリ領域(pH 8以上)に有するマンナナーゼ生産候補株(以下、「本発明菌体」という)を単離して、下記に示す(1)〜(8)の試験に供した。
【0083】
(A)試験内容及びその方法
(1) 形態学的試験
0.5 % Polypepton S、0.5 % yeast extract、0.5 % glucose、0.1 % K2HPO4、及び 0.02 % MgSO4を含む培地を用いて本発明菌体を生育させ、光学顕微鏡によって細胞形態及びサイズ、並びに鞭毛による運動性の有無を観察した。さらにグラム染色性(陽性/陰性)、並びに好気性及び嫌気性の別について定法に従って評価した。
【0084】
(2) 胞子形成
培地〔BBLTM TrypticaceTM Soy Agar(1.5 % pancreatic digest of casein、0.5 % papaic digest of soybeen meal、0.5 % sodium chloride、1.5 % agar)及び0.01 % MnCl2・4H2O含有〕を用いて本発明菌体を培養し、顕微鏡により胞子形成の有無を確認した。
【0085】
(3) 生育条件試験
0.5 % Polypepton S、0.5 % yeast extract、0.5 % glucose、0.1 % K2HPO4、及び 0.02 % MgSO4を含む培地を用いて、本発明菌体の生育条件(生育pH範囲、最適生育pH、生育温度範囲、最適生育温度、生育塩濃度範囲)を求めた。なお、pHテストはpH 6〜11までの範囲でpH 1ずつの間隔で行った。培地のpHは5、6および7は塩酸、pH 8及び9はNaHCO3、pH 10以上はNa2CO3を用いて調整した。生育温度範囲の測定には温度勾配バイオフォトレコーダー(ADVANTEC)を用いた。塩濃度テストは塩化ナトリウムを用いて、培地の塩濃度を3%、5%、7%、10%、及び15%に調整して行った。
【0086】
(4)生理性状学試験
(4-1) オキシダーゼ試験、カタラーゼ試験
オキシダーゼ試験は、チトクローム・オキシダーゼ試験用ろ紙「ニッスイ」(製造販売元、日水製薬株式会社)を用い、カタラーゼ試験は3 w/v% H2O2を用いて定法に従って試験を行った。
【0087】
(4-2) デンプン分解能(Hydrolysis of starch)
固体培地〔BactoTryptic Soy Broth without Dextrose TM(1.7 % pancreatic digest of casein、0.3% soy bean peptone、0.5% sodium chloride、0.25% dipotassium phosphate)(Difco社)、及び0.5% starch azure含有[Na2CO3でpH 9.5に調整]〕に本発明菌体を植菌し、生育後、ハロー形成の有無を確認した。ハローが形成される場合は、本発明菌体にデンプン分解能があると判断される。
【0088】
(4-3) カゼイン分解能(Hydrolysis of casein)
固体培地〔BBL社製Trypticace Soy AgarTM (1.5 % pancreatic digest of casein、0.5 % papaic digest of soybeen meal、0.5 % sodium chloride、1.5 % agar)、及び0.5 % skim milk含有 [Na2CO3でpH 9.0に調整]〕に本発明菌体を植菌し、生育後菌体を取り除き、30 %トリクロロ酢酸溶液を培地に滴下し、ハロー形成の有無を確認した。ハローが形成される場合は、本発明菌体にカゼイン分解能があると判断される。
【0089】
(4-4) ゼラチン分解能(Hydrolysis of gelatin)
固体培地〔Nutrient Broth(0.3 % beef extract、0.5 % peptone) (Difco社)、2 % agar、及び1 % gelatin含有 [Na2CO3でpH 9.0に調整]〕に本発明菌体を植菌し、生育後菌体を取り除き、30 % トリクロロ酢酸溶液を培地に滴下し、ハロー形成の有無を確認した。ハローが形成される場合は、本発明菌体にカゼイン分解能があると判断される。
【0090】
(4-5) インドール産生能(Production of indole)
培地〔SIM確認培地(0.3 % beef extract、2.8 % peptone、0.0025 % sodium thiosulfate、0.1 % ammonium Fe(III) citrate、0.3 % agar)(日水製薬社製)〕を試験管に分注し、本発明菌体を穿刺培養し、インドール試薬(p-ジメチルアミノベンズアルデヒド、5 g;アミルアルコール、75 ml;濃塩酸、25 ml)を1 ml加え、変色の有無を確認した。変色が観察される場合は、本発明菌体にインドール産生能があると判断される。
【0091】
(4-6) 硫化水素生成能(Production of H2S)
培地〔SIM確認培地(0.3 % beef extract、2.8 % peptone、0.0025 % sodium thiosulfate、0.1 % ammonium Fe(III) citrate、0.3 % agar)(日水製薬社製)〕を試験管に分注し、本発明菌体を穿刺培養し、硫化水素の生成を確認した。培地が黒く変色する場合に、本発明菌体に硫化水素生成能があると判断される。
【0092】
(4-7) 硝酸塩及び亜硝酸塩の還元能(KNO3 reduction、NaNO2 reduction)(それぞれ培地6および7)
培地6〔1 % beef extract、1 % peptone、0.5 % NaCl、及び0.1 % KNO3含有 [Na2CO3でpH 9.5に調整]〕、または培地7〔1 % beef extract、1 % peptone、0.5 % NaCl、及び0.001 % NaNO2含有 [Na2CO3でpH 9.5に調整]〕を、試験管に各々分注後、植菌を行ない、本発明菌体を生育させた。生育後、培地6に0.33 % スルファニル酸および0.5 % ジメチルα-ナフチルアミンを各々1 ml加え、変色の有無を観察した。培地が赤く変色した場合は、亜硝酸塩が存在し、本発明菌体に硝酸塩に対する還元能があると判断される。培地が変色しない場合は、亜鉛を少量加える。この際、培地が赤色に変色した場合は、培地中に硝酸塩が残留しており、本発明菌体に硝酸塩への還元能は無いと判断される。一方、亜鉛を加えた際に培地が変色しなかった場合は、本発明菌体に亜硝酸塩への還元能があり、菌体が亜硝酸塩を還元して、脱窒が行なわれたと判断される。
【0093】
また、培地7を用いて本発明菌体を生育後、当該培地7に0.33 % スルファニル酸および0.5 % ジメチルα-ナフチルアミンを1 mlずつ加えた場合に、培地が変色しなかった場合は、当該本発明菌体は硝酸塩を還元せずに亜硝酸塩のみを還元する能力があると判断される。
【0094】
(4-8) DNase 活性
固体培地〔Bacto DNase TEST AGAR(2 % Bacto Tryptose、0.2 % deoxyribonucleic acid、0.5 % sodium chloride、1.5 % Bacto ager)(Difco社)〕に本発明菌体を植菌し、生育後菌体を取り除き1 N 塩酸を培地に滴下し、ハロー形成の有無を確認した。ハローが形成される場合は、本発明菌体にDNase 活性があると判断される。
【0095】
(4-9) 糖の資化性
軟寒天培地〔0.3 % agar、0.7 % K2HPO4、0.2 % KH2PO4、0.01 % MgSO4、0.1 % (NH4)2SO4、0.5 % NaCl、0.5 % 各種炭素源(L-arabinose, cellobiose, D-fructose, D-galactose, D-gulucose, grycerol, D-lactose, maltose, D-mannitol, D-mannose, sucrose,D-trehalose, xylose)、及びビタミン溶液含有 [Na2CO3でpH9.9に調整]〕に本発明菌体を穿刺培養し生育させ、生育の有無から、各種炭素源(糖)に対する本発明菌体の資化性を評価した。
【0096】
(5) 16S rDNA塩基配列を用いた相同性解析
最適pHをアルカリ領域に有する上記マンナナーゼ生産候補株(本発明菌体)から、定法に従ってゲノムDNAを抽出した[H. Saito and K. Miura, Biochem. Biophys. Acta, 72, 619-629 (1963)]。これをテンプレートとし、約1,500 bpの16S rRNA遺伝子を増幅することのできるユニバーサルプライマーを用いてPCRを行ない、16S rRNA遺伝子を増幅した。得られたPCR産物を精製した後、これをテンプレートとし、16S rRNA遺伝子の内部共通配列より作成したプライマーを用い、シーケンス反応を行ない、塩基配列の決定を行った。得られた塩基配列のデータをもとに、FASTA program (http://www.ddbj.nig.ac.jp)を用いて、相同性検索を行った。
【0097】
(6) HPLCによるGC含量の測定
Tamaoka等[FEMS Microbiol Lett., 25, 125-128 (1984)]の方法に従い、菌体中のGC含量を測定した。培養菌体より抽出精製したDNAをエタノール沈澱した後、乾燥し、蒸留水で0.5μg/μlの濃度に調整した。このDNA溶液10μlを沸騰溶液中に10分間保った後、氷水で急冷し、一本鎖DNAに変性させた。これに10μlのヌクレアーゼP1溶液(0.1 mg/ml ヌクレアーゼP1, 40 mM酢酸ナトリウム, 2 mM ZnSO4, pH 5.3)を加えて50℃で1時間処理して加水分解を行ない、DNAをヌクレオチドにした。さらにこれに10μlのアルカリフォスファターゼ(2.4単位/ml, 0.1M Tris-HCl, pH 8.1)を加えて37℃で2時間以上処理し、ヌクレオシドにしたものを分析試料とし、下記条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供してGC含量を求めた。
【0098】
<高速液体クロマトグラフィーのGC含量分析条件>
機器:高速液体クロマトグラフLC Module 1(Waters社)、
検出波長:260 nm、
分析用カラム:Cosmosil 5C18カラム(4.6×150 mm)(ナカライテスク)、
カラム温度:室温(15-25℃)、
移動相:0.02 Mリン酸一アンモニウム-アセトニトリル(19:1、v/v)、
流速:1 ml/min 、
サンプル量:10 μl。
【0099】
(7) 菌体脂肪酸組成の分析
Waino等[Int. Syst. Bacteriol., 49, 821-831 (1999)]の方法に従って本発明菌体の脂肪酸組成を分析した。テフロン(登録商標)ライニング付き耐熱性スクリューキャップの試験管に凍結乾燥した本発明菌体20 mgを入れた。これに5%(v/v)無水塩酸・メタノール溶液(国産化学)2 mlを加え、キャップを締めた。100℃、3時間加熱処理を行なった。加熱後、冷却し、蒸留水を1 ml加えた後、3 mlのヘキサンを加え2分間激しく振盪した。3000×gで5分間遠心し、ヘキサン層を別のスクリューキャップに移した。残った塩酸・メタノール溶液にまた3 mlのヘキサンを加え同様の操作を行ない、3回抽出した。斯くして回収したヘキサン層に同量の蒸留水を加え2分間激しく振盪した。これを3000×gで5分間遠心して、ヘキサン層から塩酸を除いた。予めジエチルエーテルで洗浄し乾燥しておいた無水硫酸ナトリウム5 gを入れた新しい試験管に、上記のヘキサン層を移し、軽く撹拌した後、3時間静置した。このヘキサン層を新しい試験管に移し、減圧濃縮機で200 μl程度になるまで濃縮した。これをガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(GC/MS)に供して、菌体脂肪酸組成を分析した。
【0100】
(8) キノン組成の分析
Komagata等 [Methods Microbiol., 19, 161-203 (1983)]の方法に従い、本発明菌体のキノン組成を分析した。凍結乾燥した本発明菌体(約200 mg)をねじ口試験管に入れ、20 mlのクロロホルム-メタノール(2:1, v/v)を加え、冷暗所で一晩置き、菌体成分を抽出した。このクロロホルム-メタノール懸濁液を濾紙で濾過し、濾液をナス型フラスコに集め、ロータリー・エバポレーターで濃縮乾固させた。ナス型フラスコの内壁に乾固した菌体成分を少量のアセトンで抽出した。このアセトン抽出液を、シリカゲルTLCプレート(Merck Kiesel-gel 60 F254, 0.2 mm thickness, 20 cm×20 cm)にスポットした。同様に、当該シリカゲルTLCプレートに、以下に示したマーカーをスポットした。このTLCプレートをヘキサン-ジエチルエーテル(4:1, v/v)で1時間展開して、乾燥させた後、紫外線ランプ(254 nm)下で、展開したアセトン抽出液(被験試料)のスポットについて、キノンのバンドを確認した。
【0101】
確認したキノンのバンド画分をTLCプレートから削り取り、試験管に移し、1 mlのアセトンを加え、軽く振盪して抽出した。このアセトン抽出液を高速液体クロマトグラフィーの前処理用0.5 μmの疎水性PTFEメンブランフィルター(サンプレップFH4, Millipore)で濾過した後、窒素ガスを使用し、約100μl位に濃縮した。これを試験サンプルとして、下記条件の高速液体クロマトグラフィーに供して、キノン組成の分析を行った。
【0102】
<高速液体クロマトグラフィーでのキノン分析条件>
機器:高速液体クロマトグラフLC Module 1(Waters社)、
検出波長:270 nm、
分析用カラム:m-Bondasphere(5 m,C18,100Å)(3.9×150 mm) (Waters社)、
ガードカラム:Delta-Pak(C18,100Å)(Waters社)、
カラム温度:室温(15-25℃)、
移動相:メタノール-イソプロパノール(2:1,v/v)、
流速:1 ml/min 、
サンプル量:10 μl、
標準試料:メナキノン-6、メナキノン-7、ユビキノン-7、 ユビキノン-8、及び ユビキノン-10を使用。
【0103】
(B)試験結果
結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

表1に示す結果から、土壌から分離したマンナナーゼ生産候補株(本発明菌体)は、好アルカリ性のBacillus属細菌であることが分かった。さらに16S rDNA塩基配列の相同性解析の結果、B. alcalophilus(DSM485T)と98.9%の相同性を、B. pseudoalcaliphilus(DSM8725T)と97.3%の相同性を有していた。この結果から、本発明菌体は、B. alcalophilusに近縁する、Bacillus属に属する新種の菌株(微生物)であると考えられた。このため、当該本発明菌体を、「Bacillus sp. Strain JAMB-750」(略称:「JAMB-750株」)と命名して、平成16年9月24日付けで、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6に住所を有する独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターに、寄託者が付した識別のための表示を「Bacillus sp. Strain JAMB-750」とし、受領番号を「FERM AP−20227」として寄託した(通知番号:16産生寄第227号)。
【0105】
実施例2 マンナナーゼ(Native)の精製
上記Bacillus sp. Strain JAMB-750株(以下、単に「JAMB-750株」という)を、液体培地(0.2 % locust bean gum、5 %(v/v) Mieki(味の素)、0.2 % yeast extract、0.5 % bonito meat extract(和光純薬)、0.1 % KH2PO4、0.1 % methionine、0.05 % MgSO4・7H2O、0.5 % Na2CO3、pH 6.8)に植菌し、30℃で2日間培養を行った。培養後、培養液を遠心分離(10,000×g、10分間)により菌体と上清に分け、上清を粗酵素液とし、これからマンナナーゼを精製した。なお、精製の工程はすべて4℃以下で行った。
【0106】
具体的には、まず培養上清に、30-60 % 飽和となるように硫酸アンモニウムを加え遠心分離を行った後、得られた沈殿物に、小量の10 mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)を加えて溶解させた。これを10 mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)で一晩透析を行った。透析後、透析液を10 mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)にて平衡化したDEAE-Toyopearl 650M(東ソー)カラム(2.5×20 cm)に供して吸着させ、150 mM NaClを含有する10 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0) 200 mlを通液して非吸着タンパク質を溶出した。次いで塩化ナトリウムを含有する10 mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)を用いて、150 mM 〜300 mMの塩化ナトリウム濃度勾配をかけマンナナーゼを溶出した。マンナナーゼ活性画分を合わせて、10 mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)にて平衡化したハイドロキシアパタイト(日本ケミカル)カラム(2.5×20 cm)に吸着させ、50 mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0) 200 mlで洗浄した後に、リン酸塩緩衝液(pH 7.0)を用いて、50 mMから125 mMのリン酸濃度勾配をかけマンナナーゼを溶出した。マンナナーゼ活性画分を限外濾過(Amicon Ultra 10k; Millipore)にて濃縮した後、500 mMの塩化ナトリウムを含有する10mM リン酸塩緩衝液(pH 7.0)にて平衡化したゲル濾過(Bio-Gel A-1.5m Gel; Bio-Rad)カラム(2.5×120 cm)にて分子量分画を行った。マンナナーゼ活性画分を限外濾過(Millipore, Amicon Ultra PL-10)にて濃縮し、緩衝液を5 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 7.5)に置換した。得られたマンナナーゼ活性画分をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた。なお、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動は、Laemmli[Nature, 227, 680-685 (1970)] の方法に従って行った。電気泳動には、10 % アクリルアミドゲル(80×100 mm, 1.0-mm thick)を使用し、タンパク質の染色にはクマーシー・ブリリアント・ブルー(CBB)染色を使用した。その結果、精製したタンパク質が、分子量約130 kDaの単一バンドを示すことを確認した(図1、aの右レーン参照)。
【0107】
次にこの精製タンパク質について、マンナナーゼ活性を確認するために下記の実験を行った。
【0108】
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動後、ゲルを50 mM グリシン-NaCl-NaOH緩衝液(pH 9.0)に浸漬して緩やかに撹拌しながら2回洗浄し、SDSを除去した。このゲルの上に、0.7 % 寒天、0.25 % コンニャクマンナン及び50 mM グリシン-NaCl-NaOH緩衝液(pH 9.0)を含有する寒天シートを積層して、40℃で1時間インキュベーションした。次いで、寒天ゲルを室温下、0.1 % コンゴーレッド溶液に10分間浸漬し、1 % 塩化ナトリウム溶液で数回洗浄した。その結果、上記の分子量約130 kDaの精製タンパク質は、確かにマンナナーゼ活性を示すことが確認された(図1、bレーン参照)。
【0109】
表2に各精製工程におけるマンナナーゼの精製度と収率などを示す。表2に示すように、上記の精製操作により、マンナナーゼは459倍にも精製されて、40 U/mgの比活性を示した。なお、収率は9%であった。
【0110】
【表2】

実施例3 アミノ末端領域のアミノ酸配列分析
実施例2で精製した酵素(アルカリ性マンナナーゼ)試料を、メタノールに浸潤させた2フッ化ポリビニリデン(polyvinylidene difluoride)膜(Applied Biosystems)上にプロットし、プロテインシークエンサー(model 476A, Applied Biosystems)を用いて、当該酵素のアミノ末端領域のアミノ酸配列を直接分析した。
【0111】
その結果、実施例2で精製したマンナナーゼ(Native)のアミノ末端領域のアミノ酸配列は、Glu-Ser-Lys-Ile-Pro-Lys-Asp-X-Glu-Gly(ESKIPKDXEG)であることが分かった。なお、上記アミノ酸配列のうちXは未同定であったが、実施例5において特定したアルカリ性マンナナーゼの塩基配列から、セリン(Ser)であると推定された。
【0112】
実施例4 マンナナーゼ(Native)の酵素学的特性
(1)最適pH
基質(最終濃度0.25 % ローカストビーンガム)を含む、種々pH(pH 4.1−11)を有する50 mM 緩衝液(pH 4.1−pH 6.0:酢酸塩緩衝液; pH 5.8−pH 8.5:リン酸塩緩衝液; pH 7.8−pH 11:グリシン-NaCl-NaOH緩衝液)に、実施例2で精製したマンナナーゼ(0.2 U/ml)を加え、40℃で5分間酵素反応を行った。他の反応条件は参考例に記載するジニトロサリチル酸法の条件に準じた。結果を図2(a)に示す。この結果から本発明のJAMB-750株に由来するマンナナーゼは、アルカリ側に高い活性を有し、その最適pHは、pH9〜10.5、好ましくはpH9.5〜10.2、特にpH10前後であることがわかった。この最適pHは、B. alcalophilusに属するマンナナーゼを含む他のマンナナーゼの最適pHの中でも最も高いものであった[T. Akino et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 26, 323-327(1987)など]。
【0113】
(2)pH安定性
実施例2で精製したマンナナーゼ(0.3 U/ml)を、Britton & Robinson universal buffer(pH 3.5−pH 11.6)と混合し(酵素混合時の濃度10 mM)、各種のpH条件下(pH 3−12)で40℃にて30分間処理した後、その0.1 mlを用いて参考例に記載するジニトロサリチル酸法に準じて、反応溶液中のマンナナーゼの残存活性を測定した。結果を図2(b)に示す。この結果から、上記マンナナーゼはpH6〜10.5、特にpH6.5〜10の範囲で安定であることがわかった。
【0114】
(3)最適温度
20〜70℃に加温した基質溶液(最終濃度0.25 % locust bean gum、50 mM グリシン-NaCl-NaOH緩衝液, pH 9.0)に、実施例2で精製したマンナナーゼ(0.2 U/ml)を入れて(総量 1 ml)、5分間酵素反応を行った。他の反応条件は、参考例に記載するジニトロサリチル酸法の条件に準じた。結果を図3(a)に示す。この結果から、最適温度は50〜60℃、特に55℃前後であることがわかった。
【0115】
(4)温度安定性
上記マンナナーゼの温度安定性を調べた。具体的には、実施例2で精製したマンナナーゼ(0.3 U/ml)を5 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)に溶解し、40℃、50℃、60℃で、10分、20分、30分、40分、50分及び60分間処理した後、その0.1 mlを用いて参考例に記載するジニトロサリチル酸法の条件に準じてマンナナーゼの残存活性を測定した。結果を図3(b)(40℃:黒丸、50℃:黒四角、60℃:黒三角)に示す。この結果からわかるように、本発明のマンナナーゼは、40℃(図中、黒丸で示す)で60分間処理しても安定であった。50〜60℃における非可逆的熱不活性化の初速度定数(k)は、半対数座標上で直線回帰線を示した。50℃における半減期は、約117分、60℃における半減期は、約65分であった。この結果から、本発明のマンナナーゼは、従来公知のアルカリ性マンナナーゼ[T. Akino et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 26, 323-327 (1987); T. Akino et al., Appl. Environ. Microbiol., 55, 3178-3183 (1989)]に比して温度安定性が高く、この点を有利な特徴として、広く利用可能な酵素であると考えられた。
【0116】
(5)金属イオンおよび化合物の影響の測定
マンナナーゼ(0.2 U/ml)を各種の化合物(表3)または各種の金属塩(表4)と混合し(酵素混合時の濃度1 mM)、5 mM Tris-HCl (pH 7.5)中、40℃で30分間処理した。その中から0.1ml取りだして、参考例に記載するジニトロサリチル酸法の条件に準じてマンナナーゼ残存活性を測定した。マンナナーゼ活性に対する各種の化合物の影響を表3に、金属塩の影響を表4にそれぞれ示す。
【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

この結果から、酢酸ヨード、ヨウ化アセトアミド、N-エチルマレイミド、ジチオスレイトール、1-エチル-3-(3-ジメチル-アミノプロピル)カーボネート、ジエチルピロカーボネート、EDTA、EGTA及び2-メルカプトエタノールは、実質的にマンナナーゼに影響しなかった。一方、N-ブロモスクシニミド(NBS)はマンナナーゼの活性を完全に阻害した。幾つかの酵素に対するNBSの阻害は、タンパク質中のトリプトファンの酸化であることが知られている[Methods Enzymol., 11, 498-506 (1967)]。このことから、マンナナーゼの触媒活性または構造の維持にトリプトファン残基が関わっていると考えられる。
【0119】
一方、金属に関しては、Fe3+、Fe2+、Pb2+、Cu2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、Sn2+といった金属イオン(塩化物)は、強くまたは中程度(60-100%)にマンナナーゼの活性を阻害した。それに対して、同条件下で、Na+、K+、Mn2+、Ca2+、Mg2+、Ni2+及びCo2+は、マンナナーゼ活性に対して実質的に影響を及ぼさなかった。このことから、本発明のマンナナーゼは、従来公知のアルカリ性マンナナーゼ[T. Akino et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 26, 323-327 (1987); T. Akino et al., Appl. Environ. Microbiol., 55,3 178-3183 (1989)]に比して、重金属に対して比較的感受性が高い酵素であることがわかった。
【0120】
(6)加水分解物のTLC分析と基質特異性
実施例2で精製したマンナナーゼを用いて、アイボリーナッツ(マンノースのホモポリマー;Megazyme)、ローカストビーンガム、グアガム、コンニャクマンナン、及びマンノオリゴ糖(2糖〜6糖;Megazyme)をそれぞれ加水分解し、経時的に産生される生成物をTLC分析により測定した。具体的には、各々0.4 %のアイボリーナッツ、ローカストビーンガム、グアガム、またはコンニャクマンナン、またはマンノオリゴ糖(2糖[M2]、3糖[M3]、4糖[M4]、5糖[M5]、6糖[M6])と、マンナナーゼ(0.05 U/ml)を含む溶液(50 mM glycine-NaCl-NaOH buffer, pH 9.0)を、40℃で反応させた(10分、1時間、17時間)。一定時間経過後、反応液を沸騰水中で5分間熱処理し、酵素反応を停止した。上記各サンプルをTLCプレート(Silica gel 60 ,20×10 cm; MERCK)に5 μlスポットし、水、ブタノール及び酢酸水を含む〔水:ブタノール:酢酸(1:2:1, v/v)〕展開溶媒を用いて二重展開を行った。展開後、TLCプレートに10 %(v/v) 硫酸を噴霧、加熱処理しスポットを発色させた。基質としてアイボリーナッツ、ローカストビーンガム、グアガム、またはコンニャクマンナンを用いた結果を図4(a)に、基質としてマンノオリゴ糖(2糖〜6糖)を用いた結果を図4(b)に示す。
【0121】
本発明のマンナナーゼの、ローカストビーンガム、アイボリーナッツ、コンニャクマンナン、及びグアガムに対する相対活性は約100:60:100:30であった。
【0122】
特に図4(b)の結果から、本発明のマンナナーゼは、5糖及び6糖のマンノオリゴ糖に対して強い加水分解能を有し、また4糖のマンノオリゴ糖に対しても僅かに加水分解能を有するものの、2糖及び3糖のマンノオリゴ糖に対しては加水分解能が無いことが分かった。
【0123】
これから、本発明のマンナナーゼは、マンナン、4糖より大きいマンノオリゴ糖を加水分解することが示され、さらにこの加水分解パターンから、本発明のマンナナーゼがエンド作用型マンナナーゼであることが示された。
【0124】
以上に示すようにJAMB-750株に由来するマンナナーゼは高いpHで高い活性を示し、高温で安定であるので、パルプ漂白、洗浄、医薬品に関する分野で有用であると考えられる。
【0125】
実施例5 マンナナーゼ遺伝子のクローニング、及び塩基配列の決定
実施例1で単離したBacillus sp. Strain JAMB-750(JAMB-750株)を、マンナン含有固体培地(0.2 % locust bean gum、0.5 % Polypepton S、0.5 % yeast extract、0.1 % K2HPO4、0.02 % MgSO4.7H20、0.5 % Na2CO3、1.5 % agar)で培養し、得られた培養菌体から定法に従ってゲノムDNAを抽出した[H. Saito and K. Miura, Biochim. Biophys. Acta, 72, 619-629 (1963)]。このゲノムDNAをEcoRIにて消化し、High Pure PCR Product Purification kit (Roche Diagnostics)を用いて精製した。これを、予めEcoRIで消化後、アルカリフォスファターゼ(Roche Diagnostics)で処理したpUC18プラスミドベクターに、DNA Ligation Kit Ver.2(TaKaRa製)を用いてライゲーションを行った。ライゲーション後のプラスミドをコンピテントセル (E. coli HB101) に導入して、形質転換した後[D. Hanahan, Mol. Gen. Genet., 166, 557-580 (1983) ]、これをアンピシリン(100 μg/ml)を含むLuria-Bertani(LB)固体培地(Difco)に塗布し、37℃で一晩培養した。培養後、上記LB固体培地に0.25 % コンニャクマンナン、50 mM グリシン-NaCl-NaOH緩衝液 (pH 9.0)、0.7 % 寒天および1 mg/mlリゾチームを含むゲルを重層し37℃で4時間保温し、次いで、当該ゲル層の上に0.1 % コンゴーレッド水溶液を注いだ。そして、周囲にクリアゾーンを形成(ハロー形成)しているクローンを、マンナナーゼ活性、すなわちをマンナナーゼ遺伝子を有するクローン(陽性クローン)として単離した。
【0126】
この陽性クローンからプラスミドを抽出し(High Pure Plasmid Isolation kit[Roche製]を使用)、その中に導入されているマンナナーゼ遺伝子の塩基配列を、ABI Prism Big Dye Terminator Cycle Sequencing KitおよびABI 377 Sequencerを用いて決定した。本プラスミドはマンナナーゼ遺伝子の下流域を欠いていたことから、インバースPCR及びLA PCR in vitro Cloning Kit(Takara製)を用いてマンナナーゼ遺伝子の下流域を取得し、マンナナーゼ遺伝子の全塩基配列を決定した。決定したマンナナーゼ遺伝子の塩基配列、ならびにこれから推定したマンナナーゼのアミノ酸配列を図5に示す。マンナナーゼ遺伝子は、997個のアミノ酸からなるタンパク質(109619 Da)をコードする2991 bpのオープンリーディングフレーム(ORF)を有しており、それはG+Cを約38.7 mol%の割合で含んでいた。
【0127】
潜在的なリボゾーム結合部位(5'-AAGGAG-3')は開始コドンATGの7 bp上流に位置しており、推定プロモーター配列である5'-TTGATG-3'(-35領域)及び5'-TATCGT-3'(-10領域)は、開始コドン205 bp上流19 bpの間隔をおいて位置していた。
【0128】
Ala26とGlu27との間に潜在的な切断部位があり、N末端領域に26個のアミノ酸からなるシグナル配列の存在が認められた。これから成熟酵素(mature)の分子量は106818 Da(971アミノ酸)であり、等電点はpI 4.12と計算された。
【0129】
上記マンナナーゼ遺伝子の塩基配列からJAMB-750株由来アルカリ性マンナナーゼについて推定されるアミノ酸配列を、FASTAアルゴリズムを用いたコンピュータ・ホモロジー分析により、他の公知のマンナナーゼ[glycoside hydrolase(GH) family 26]のアミノ酸配列と相同性解析を行った(http://afmb.cnrs-mrs.fr/CAZY)。
【0130】
結果を表5に示す。この結果から本発明菌体JAMB-750株に由来するアルカリ性マンナナーゼは、GH family 26に由来する他のマンナナーゼとアミノ酸配列において相同性が非常に低い新規なマンナナーゼであることが判明した。
【0131】
【表5】

実施例6 マンナナーゼの発現(組み換えマンナナーゼ)
JAMB-750株のゲノムDNAを鋳型として、LA Taq DNA polymerase(TaKaRa)を用いてPCRを行ない、マンナナーゼ遺伝子を増幅した。PCRに際して、マンナナーゼ遺伝子の5'及び3'末端領域の配列を有するオリゴヌクレオチドにBamHI制限酵素部位(下線部)を導入した下記の2つプライマーを作成し、これを使用した。
5'-TCTTGGATTCACAATGTCAAAATCGTAACGAGC-3'(配列番号6)
5'-CGTTTGGATCCAGTVAATGGAATAGAC-3' (配列番号7)。
【0132】
斯くして増幅したマンナナーゼ遺伝子を、制限酵素BamHIにて処理した後、これを、同制限酵素で消化後アルカリフォスファターゼ処理したベクターpHY300PLK(E. coli - B. subtilisシャトルベクター)(TaKaRa)にライゲーションした。ライゲーション後のプラスミドを、コンピテントセル (E. coli HB101)に導入した。得られた形質転換体(E. coli HB101)を、テトラサイクリン(15μg/ml)を含むLB固体培地に塗布し、37℃で一晩培養した。培養後、LB固体培地に0.25 % コンニャクマンナン、50 mM グリシン-NaCl-NaOH緩衝液 (pH 9.0)、0.7 % agarおよび1 mg/mlリゾチームを含むゲルを重層し、37℃で保温した後、0.1 % コンゴーレッド水溶液にてハローの検出を行ない、形質転換体(E. coli HB101)のマンナナーゼ活性を評価した。
【0133】
実施例7 マンナナーゼ(Recombinant)の精製
実施例6においてハロー形成能を有する菌株(形質転換体)をマンナナーゼ遺伝子保有株とし、プラスミドの抽出を行った。得られたプラスミドを用いて、Bacillus subtilis ISW1214(TaKaRa)を形質転換[S. Chang et al., Mol. Gen. Genet., 168, 111-115 (1979)]した。これをアンピシリン(100 μg/ml)を含むLB再生固体培地〔市販品〕で、30 ℃で1〜2日間培養を行った。
【0134】
培養後、得られた形質転換体(B. subtilis ISW1214)を、液体培地(10 % corn steep liquor (和光純薬)、0.1 % yeast extract、0.2 % bonito meal extract、0.1 % KH2PO4、0.02 % MgSO4・7H2O、7 % maltose、0.05 % CaCl2、ampicillin (100 μg/ml)、pH 6.8)に植菌し、30℃で3日間好気的に振盪培養を行った。培養後、培養液を遠心分離(12,000×g、10分間)により菌体と上清に分け、上清を粗酵素液とし、これからマンナナーゼを精製した。なお、精製の工程はすべて4℃以下で行った。
【0135】
具体的には、まず培養上清を、10 mM リン酸塩緩衝液(pH 7.0)で一晩透析を行った。透析後、透析液を10 mM リン酸塩緩衝液(pH 7.0)にて平衡化したDEAE-650M(東ソー)カラム(2.5×20cm)に供して吸着させ、同緩衝液を通液して非吸着タンパク質を溶出した。次いで塩化ナトリウムを含有する10 mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)を用いて、0 mM から500 mMの塩化ナトリウム濃度勾配をかけマンナナーゼを溶出した。マンナナーゼ活性画分を10 mM リン酸塩緩衝液(pH 7.0)にて平衡化したハイドロキシアパタイト(日本ケミカル)カラム(2.5×20 cm)に吸着させ、50 mM リン酸塩緩衝液 (pH 7.0)にて通液して非吸着タンパク質を溶出した。次にリン酸塩緩衝液(pH 7.0)を用いて、50 mMから125 mMのリン酸濃度勾配をかけマンナナーゼを溶出した。マンナナーゼ活性画分を限外濾過(Amicon Ultra 10k;Millipore)にて濃縮し、リン酸塩緩衝液を10 mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)に置換した。同緩衝液にて平衡化したDEAE-650Mカラムに濃縮サンプルを吸着し、同緩衝液にて通液して非吸着タンパク質を溶出した。次いで塩化ナトリウムを含有する10 mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)を用いて、0 mM から500 mMの塩化ナトリウム濃度勾配をかけマンナナーゼを溶出した。マンナナーゼ活性画分を限外濾過にて濃縮し、緩衝液を5 mM Tris-HCl緩衝液 (pH 7.5)に置換した。得られたマンナナーゼ活性画分をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけて、精製した酵素が、分子量約130 kDAの単一バンドを示すことを確認した。推定アミノ酸配列から予想される成熟酵素の分子量は106818 Daであるのに対し、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分子量はNative酵素同様に組換え酵素でもは約130 kDaであった。本成熟酵素は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で真の分子量を与えないものと解釈され、真の分子量は100〜110 kDaであると推定される。このような分子量の差はアルカリ酵素でよく見られる現象である。
【0136】
なお、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動は、Laemmli [Nature, 2277, 680-685 (1970)]の方法に従って行った。電気泳動には、10 % アクリルアミドゲルを使用し、染色にはクマーシー・ブリリアント・ブルー(CBB)染色を使用した。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】実施例2において精製したマンナナーゼ(Native)の電気泳動像(SDS-PAGE)である(aの中のレーンP)。図中、a(CBB染色)の中のレーンMは、蛋白質の分子量を示すためのマーカーの泳動像である。b(活性染色)は、aのレーンPについて、マンナナーゼ活性を確認した結果を示す。レーンPで認められた単一バンドにマンナナーゼ活性があることが示されている(矢印)。
【図2】実施例4において、実施例2において調製し精製したマンナナーゼの最適pH(図2(a))、及びpH安定性(図2(a))を測定した結果を示す図である。
【図3】実施例4において、実施例2において調製し精製したマンナナーゼの最適温度(図3(a))、及び温度安定性(図3(b))を測定した結果を示す図である。図bにおいて、−●−は40℃、−■−は50℃、及び−▲−は60℃での安定性を調べた結果である。
【図4】図4(a)は、実施例2で精製したマンナナーゼの、アイボリーナッツ(マンノースのホモポリマー;Megazyme)、ローカストビーンガム、グアガム、及びコンニャクマンナンに対する加水分解パターン(レーン0:未反応、レーン1/6;pH 9, 40℃で10分反応、レーン1;pH 9, 40℃で1時間反応、レーン17;pH 9, 40℃で17時間反応)を、図4(b)は、同じく実施例2で精製したマンナナーゼの、マンノオリゴ糖(2糖[M2]、3糖[M3]、4糖[M4]、5糖[M5]、6糖[M6])に対する加水分解パターン(レーン0:未反応、レーン1/6;pH 9, 40℃で10分反応、レーン1;pH 9, 40℃で1時間反応、レーン17;pH 9, 40℃で17時間反応)を示す図である。
【図5】本発明の菌体(Bacillus sp. Strain JAMB-750)に由来するマンナナーゼの遺伝子配列とそれから演繹されるアミノ酸配列を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の理化学的性質を有するアルカリ性マンナナーゼ:
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する、
(ハ)pH安定性:40℃、pH 6.5〜10、30分の処理条件で70%以上のマンナナーゼ活性を有する、
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する、
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する、
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する、
(ト)金属阻害:Fe3+、Fe2+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、及びSn2+により阻害を受ける、
(チ)SDS-PAGEによる分子量:約130 kDa。
【請求項2】
下記(a)または(b)に記載するタンパク質からなるアルカリ性マンナナーゼ:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し、下記に掲げる少なくとも1つの理化学的特性を有するタンパク質
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する、
(ハ)pH安定性:40℃、pH 6.5〜10、30分の処理条件で70%以上のマンナナーゼ活性を有する、
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する、
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する、
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する、
(ト)金属阻害:Fe3+、Fe2+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、及びSn2+により阻害を受ける。
【請求項3】
(b)に示すタンパク質が、配列番号1に示すアミノ酸配列と40%以上同一のアミノ酸配列を有するものである、請求項2に記載するアルカリ性マンナナーゼ。
【請求項4】
下記(c)または(d)に記載するDNAによってコードされるタンパク質からなるアルカリ性マンナナーゼ:
(c)配列番号2に示す塩基配列からなるDNA、
(d)配列番号2に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、下記に掲げる少なくとも1つの理化学的特性を有するタンパク質をコードするDNA
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する、
(ハ)pH安定性:40℃、pH 6.5〜10、30分の処理条件で70%以上のマンナナーゼ活性を有する、
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する、
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する、
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する、
(ト)金属阻害:Fe3+、Fe2+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、及びSn2+により阻害を受ける。
【請求項5】
好アルカリ性中温菌のBacillus属に属する微生物に由来する酵素である、請求項1乃至4のいずれかに記載のアルカリ性マンナナーゼ。
【請求項6】
好アルカリ性中温菌のBacillus属に属する微生物が、「Bacillus sp. Strain JAMB-750」(受領番号FERM AP-20227)である請求項5に記載するアルカリ性マンナナーゼ。
【請求項7】
下記(a)または(b)に記載するタンパク質をコードするアルカリ性マンナナーゼ遺伝子:
(a)配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、
(b)配列番号1に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し、下記に掲げる少なくとも1つの酵素学的特性を有するタンパク質
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する、
(ハ)pH安定性:40℃、pH 6.5〜10、30分の処理条件で70%以上のマンナナーゼ活性を有する、
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する、
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する、
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する、
(ト)金属阻害:Fe3+、Fe2+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、及びSn2+により阻害を受ける。
【請求項8】
(b)に示すタンパク質が、配列番号1に示すアミノ酸配列と40%以上同一のアミノ酸配列を有するものである、請求項7記載のアルカリ性マンナナーゼ遺伝子。
【請求項9】
下記(c)または(d)に記載するDNAからなるアルカリ性マンナナーゼ遺伝子:
(c)配列番号2に示す塩基配列を有するDNA、
(d)配列番号2に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、下記に掲げる少なくとも1つの理化学的特性を有するタンパク質またはその前駆体をコードするDNA
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する、
(ハ)pH安定性:40℃、pH 6.5〜10、30分の処理条件で70%以上のマンナナーゼ活性を有する、
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する、
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する、
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する、
(ト)金属阻害:Fe3+、Fe2+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、及びSn2+により阻害を受ける。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載するアルカリ性マンナナーゼ遺伝子を含有する組み換えベクター。
【請求項11】
請求項10に記載する組み換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
【請求項12】
宿主細胞が枯草菌である請求項11に記載する形質転換体。
【請求項13】
請求項11または12に記載する形質転換体を培地で培養し、得られる培養物から下記の理化学的特性を有するアルカリ性マンナナーゼを採取することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼの製造方法:
(イ)作用:マンナンまたは4糖以上のマンノオリゴ糖に作用して3糖以下の糖にまで加水分解することのできる、エンド型のマンナナーゼ活性を有する、
(ロ)最適pH:pH 9〜10.5の範囲に最適pHを有する、
(ハ)pH安定性:40℃、pH 6.5〜10、30分の処理条件で70%以上のマンナナーゼ活性を有する、
(ニ)最適温度:55℃前後の範囲に最適温度を有する、
(ホ)温度安定性:pH 7.5、50℃及び110分間の処理条件、またはpH 7.5、60℃及び60分間の処理条件で50%以上の活性を有する、
(ヘ)失活:1 mMのN-ブロモスクシニミドの存在下、pH 7.5、40℃で30分間処理することによりマンナナーゼ活性が失活する、
(ト)金属阻害:Fe3+、Fe2+、Pb2+、Zn2+、Hg2+、Cd2+、及びSn2+により阻害を受ける。
【請求項14】
微生物「Bacillus sp. Strain JAMB-750」(受領番号FERM AP-20227)。
【請求項15】
請求項1乃至6のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有する酵素組成物。
【請求項16】
少なくとも請求項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼと界面活性剤を含有する洗浄用組成物(但し、繊維製品洗浄用組成物を除く)。
【請求項17】
少なくとも請求項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有する漂白処理用組成物。
【請求項18】
少なくとも請求項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有する繊維柔軟処理用組成物。
【請求項19】
少なくとも請求項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを含有するコーヒー抽出物処理用組成物。
【請求項20】
請求項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼを用いて酵素処理を行う工程を有するマンノオリゴ糖の製造法。
【請求項21】
請求項20に記載する方法によって製造されるマンノオリゴ糖と生分解性プラスチックスを含有する組成物。
【請求項22】
請求項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼまたは請求項15の酵素組成物を含む地盤破砕剤。
【請求項23】
請求項22の地盤破砕剤を用いる井戸、温泉または石油の掘穿方法。
【請求項24】
請求項1乃至7のいずれかのアルカリ性マンナナーゼまたは請求項15の酵素組成物を含む白水のスカム抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−87404(P2006−87404A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280430(P2004−280430)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年7月1日 日本生物高分子学会発行の「Journal of Biological Macromolecules 第4巻 第2号(通巻13号)」に発表
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【出願人】(398057178)株式会社オールマイティー (17)
【Fターム(参考)】