耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材及びその製造方法
【課題】耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】成形加工された薄板からなる車両用耐衝突補強材1a、1bであって、本体部2と、本体部2の幅方向両側に設けた折曲部3を介して本体部2と一体化された一対の側壁部4とを少なくとも備え、本体部2にはその長手方向に沿って本体部2の幅方向中央に延在する凹ビード8が設けられ、凹ビード8と折曲部3との距離を有効幅c’としたとき、有効幅c’が所定の式を満たすように凹ビード8が設けられていることを特徴とする耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材1を提供する。
【解決手段】成形加工された薄板からなる車両用耐衝突補強材1a、1bであって、本体部2と、本体部2の幅方向両側に設けた折曲部3を介して本体部2と一体化された一対の側壁部4とを少なくとも備え、本体部2にはその長手方向に沿って本体部2の幅方向中央に延在する凹ビード8が設けられ、凹ビード8と折曲部3との距離を有効幅c’としたとき、有効幅c’が所定の式を満たすように凹ビード8が設けられていることを特徴とする耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車からの炭酸ガスの排出量を抑えるために、高強度鋼板を使用して自動車車体の軽量化が進められている。また、搭乗者の安全確保のためにも、自動車車体には軟鋼板の他に高強度鋼板を使用する方向で検討が進められている。
【0003】
高強度鋼板を使用した部品として、センターピラー用の耐衝突補強材がある。この耐衝突補強材は、断面形状がハット形に成形加工された鋼板と、平板状の鋼板とが重ね合わされ、相互に溶接されることによって構成された閉断面構造からなる長尺の補強材である。この衝突補強材は、自動車車体において、センターピラーの内部に収納されて、車体を構成するサイドシルとサイドルーフレールとの間に架設されている。
【0004】
自動車の側面に対して他の自動車等が衝突すると、衝突部位がセンターピラーのドアウエスト部よりも下側の部分になり、この衝突部位に対応する耐衝突補強材の下部が衝突エネルギーによって潰されて車内側に押し込まれる。このため、センターピラー用の耐衝突補強材の形状は、ドアウエスト部より下側の下部においては、耐衝突強度を確保するために、自動車の全長方向に沿う幅が広く、かつ車内側に向けて厚みをもった形状となる。一方、ドアウエスト部より上側の上部においては、デザイン性の観点から、自動車の全長方向に沿う幅が狭く、かつ車内側に向けて薄くした形状となる。このため、耐衝突補強材の上部においては、圧縮応力に対する耐座屈性が低下する場合がある。
【0005】
このため、自動車の側面に衝突による外力が加わった場合、耐衝突補強材の下部において衝突エネルギーが吸収される一方で、耐衝突補強材を含むセンターピラーの上部に圧縮応力が加わり、耐衝突補強材を含むセンターピラーの上部が車内側に向けて折れ曲がってしまい、搭乗者の安全性を十分に確保できないおそれがあった。この問題を解決するために特許文献1には、ピラーの上端と下端の間に強度変化点を設け、強度変化点より上の部分の強度を下の部分の強度より高くした車体構造が開示されている。
【0006】
また、自動車車体には、センターピラー以外にも、閉断面構造からなる各種の耐衝突補強材が使用されている。例えば、フロアトンネルとサイドシルとの間には、クロスメンバが設置されている。また、車体前部の両側には、エンジンを挟む形でフロントメンバのエクステンション部が設置されている。これらの耐衝突補強材においても、衝突時には圧縮応力が加わるので、センターピラー用の耐衝突補強材と同様に、耐座屈性の改善が望まれていた。
【特許文献1】特開2001−163257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来、閉断面構造を有する耐衝突補強材に凹ビートを設けると、静的荷重作用下において断面二次モーメントの減少を招き、これにより変形量の増大につながると考えられていた。従って、耐衝突補強材に凹ビードを設けることは行われていなかった。しかし、本発明者が鋭意研究したところ、耐衝突補強部材の変形が生じる衝突変形においては、かえって凹ビードを設けることで耐衝突補強材の変形を低減できることを見出した。
【0009】
これまで、薄板を加工して閉断面構造とした耐衝突補強材に対して圧縮荷重を加えた場合、その断面全体が荷重分担するのではなく、断面の一部が実際に荷重分担することは既に知られており、この部分の幅を有効幅と呼称し、有効幅を算出する理論式も存在していた。しかし、従来の有効幅の理論式には、薄板の弾性率、降伏強度、厚み並びにポアソン比が組み込まれているものの、耐衝突補強材の幅については何らの考慮もされていなかった。本発明者らは、耐衝突補強材の幅に着目して新たな概念の有効幅を導き出し、この新たな有効幅の概念を耐衝突補強材の設計に応用することで、耐衝突補強部材の耐座屈性能を飛躍的に高めることに至った。そして本発明者は、以下の構成を採用することで、上記の課題を解決するに至った。
【0010】
本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材は、成形加工された薄板からなる車両用耐衝突補強材であって、前記車両用耐衝突補強材は、本体部と、前記本体部の幅方向両側に設けた折曲部を介して前記本体部と一体化された一対の側壁部とを少なくとも備え、前記本体部にはその長手方向に沿って前記本体部の幅方向中央に延在する凹ビードが設けられており、前記凹ビードと前記折曲部との距離を有効幅c’としたとき、前記有効幅c’が下記式(1)を満たすように前記凹ビードが設けられていることを特徴とする。
【0011】
【数1】
【0012】
但し、式(1)において、hは前記薄板の厚みであり、bは凹ビードを設ける前の前記本体部の幅であり、Eは前記薄板の弾性率であり、σYPは前記薄板の降伏応力であり、A及びBはそれぞれ定数であって、Aは1.90であり、Bは−1.00である。
【0013】
また、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材においては、前記凹ビードの深さが5mm以上であることが好ましい。
【0014】
更に、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材においては、前記凹ビードが、底面部及び前記底面部の幅方向両端に立設されたビード側壁部とから構成されることが好ましい。
【0015】
更にまた、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材は、自動車のピラー用補強材であることが好ましい。
また、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材は、自動車のクロスメンバであることが好ましい。
更に、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材は、自動車のフロントメンバのエクステンション部であることが好ましい。
【0016】
次に、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材の製造方法は、成形加工された薄板からなる車両用耐衝突補強材の製造方法であって、本体部と、前記本体部の幅方向両側に位置する折曲部と、前記折曲部を介して前記本体部と一体化された一対の側壁部とを少なくとも備えるように前記薄板を成形加工すると共に、前記本体部の長手方向に沿って前記本体部の幅方向中央に凹ビードを設ける工程を具備してなり、前記凹ビードと前記折曲部との距離を有効幅c’としたとき、前記有効幅c’が下記式(2)を満たすように前記凹ビードを設けることを特徴とする。
【0017】
【数2】
【0018】
但し、式(2)において、hは前記薄板の厚みであり、bは凹ビードを設ける前の前記本体部の幅であり、Eは前記薄板の弾性率であり、σYPは前記薄板の降伏応力であり、A及びBはそれぞれ定数であって、Aは1.90であり、Bは−1.00である。
【0019】
また、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材の製造方法においては、前記凹ビードの深さを5mm以上とすることが好ましい。
【0020】
更に、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材の製造方法においては、前記凹ビードを、底面部及び前記底面部の幅方向両端に立設されたビード側壁部とで構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態である耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材について、図面を参照して説明する。
本実施形態の車両用衝突補強部材は、衝突変形時に圧縮力を受ける箇所に配置することが好適である。本発明に係る凹ビードは、圧縮力を受けて座屈する際の座屈荷重の向上と、座屈後の荷重低下が小さいことの二つの作用により、衝撃吸収能の向上に寄与する。従って、それ自体が大きく変形することによりエネルギー吸収する部品、例えばフロントサイドメンバやセンターピラーの下部等よりも、これらに連結された部品で大きく座屈することなく、荷重を他部位に伝達させる働きを受け持つ部品への適用が全体のエネルギ吸収特性や軽量化の観点から望ましい。
【0023】
自動車を考えた場合にこのような部品として、側面衝突の場合には、センターピラー部の上部や、ルーフセンター、クロスメンバ等がある。また前面衝突の場合にはフロントサイドメンバに連結されキャビンに配置されるフロントサイドメンバエクステンション等がある。
【0024】
本実施形態では、センターピラー部への適用を例にして説明する。
自動車等の車両のセンターピラー部は、一般にボディサイドアウタパネルとその中に位置するセンターピラー補強材(車両用耐衝突補強材)とで構成される。センターピラー補強材は更に、アウタ側の補強材と、インナ側の補強材の2つの部品で構成される。最も外側に位置するボディサイドアウタパネルは、主に強度の低い軟鋼により作製され、衝撃荷重の吸収にはほとんど寄与しない。従って、側面衝突時の衝撃エネルギーは、主にセンターピラー補強材により吸収される。自動車のセンターピラー部は、車種によって形状等が様々であるが、本実施形態のセンターピラー補強材の一例を図1に示す。
【0025】
図1は、本実施形態の車両用耐衝突補強材を、車両のセンターピラー用補強材に適用した形態を示す図であって、(a)は車両の右側用のセンターピラー用補強材を示す斜視図であり、(b)は車両の左側用のセンターピラー用補強材を示す斜視図であり、(c)は(a)または(b)のA−A’線に対応する断面模式図である。
【0026】
図1に示すセンターピラー用補強材1a、1b(車両用耐衝突補強材)は、薄板が例えば凸状にプレス成形加工されてなるものであって、上下方向に延在する本体部2と、本体部2の幅方向両側に設けた折曲部3と、折曲部3を介して本体部2と一体化された一対の側壁部4、4と、側壁部4、4に設けられた溶接部となるフランジ部5と、から概略構成されている。
また、本体部2の上端側には、車両のサイドルーフレールに溶接される上側結合部6が設けられ、一方、本体部2の下端側には、車両のサイドシルに溶接される下側結合部7が設けられている。
【0027】
本体部2には凹ビード8が設けられている。この凹ビード8は、本体部2の長手方向に沿って本体部2の幅方向ほぼ中央に延在している。また、凹ビード8は、例えば、底面部8a及び底面部8aの幅方向両端に立設されたビード側壁部8bとで構成されている。また、凹ビード8は、本体部2の上部に形成されており、より好ましくは、センターピラー部の下部が大きく変形しながらエネルギー吸収する際に、その際の荷重をサイドルーフレールに効率的に伝達することが可能なセンターピラー部の上部に対応する位置に設けることが望ましい。一般にセンターピラー部の上部は下部に比べて断面が小さく、下部の変形時に上部が座屈しないような十分な変形抵抗を持たせることが難しい。しかしながら、本発明に係る凹ビードは変形強度の差を付ける目的での配置が効果的である。
【0028】
より具体的な凹ビード8の形成位置は、センターピラー補強部材1a、1bの断面2次モーメントの評価を行い、この断面2次モーメントを位置(高さ方向座標)で2階微分し、2次微係数が0となる部位、すなわち断面2次モーメントの変化率が極値を取る部位よりも上側(サイドルーフレール側)にすることが望ましい。
【0029】
図1に示すセンターピラー用補強材1a、1bは、本体部2が車両の外側に向くように配置され、アウター側のセンターピラー用補強材として使用される。このアウター側のセンターピラー用補強材1a、1bには、図1(c)の一点鎖線で示すように、フランジ部5、5の間を掛け渡すようにインナー側のセンターピラー補強材10が溶接されている。
【0030】
インナー側のセンターピラー補強材10は、薄板を打ち抜き加工または切断加工して所定の形状に成型したものを板状のままアウター側のセンターピラー用補強材1a、1bに溶接してもよい。また、インナー側のセンターピラー補強材10は、薄板をプレス加工して断面視形状をハット形状に成形したものを、アウター側のセンターピラー用補強材1a、1bに溶接してもよい。図1(c)に示すように、アウター側のセンターピラー用補強材1a、1bとインナー側のセンターピラー補強材10とを接合することで、閉断面構造のセンターピラー用補強材を構成できる。
【0031】
本体部2に設けた凹ビード8は、本体部2の長手方向に沿って本体部2の幅方向ほぼ中央に延在し、かつ、本体部2の上部、より詳しくは断面2次モーメント評価において断面2次モーメントを位置(高さ方向座標)で2階微分したときに2次微係数が0となる部位より上側に設けられている。本体部2の上部は、センターピラー用補強材1a、1bを車両に組み込んだ際に車両の上部に位置することとなり、側面衝突の際には本体部の下部からの圧縮荷重を受けて車内側に変形しやすい部分である。従って、側面衝突時に衝撃が直接加わる本体部の下部には凹ビードを設けず、圧縮荷重が加わる上部のみに凹ビードを設けることが、下部における衝撃吸収性を損なわずに上部における衝突変形を防止できる点で好ましい。本体部の下部にも凹ビードを設けると、衝突時の衝撃吸収性が低下し、本体部の下部が車内側に侵入して搭乗者のスペースが狭くなり、却って安全性が低下してしまう。
【0032】
本発明のセンターピラー用補強材1a、1b(車両用耐衝突補強材)においては、凹ビード8のビード側壁部8bと折曲部3との最短距離を有効幅c’としたとき、有効幅c’が下記式(3)を満たすように前記凹ビード8を設けることが好ましい。
【0033】
【数3】
【0034】
但し、式(3)において、hは薄板の厚みであり、bは凹ビードを設ける前の本体部の幅であり、Eは薄板の弾性率であり、σYPは薄板の降伏応力であり、A及びBはそれぞれ定数であって、Aは1.90であり、Bは−1.00である。
【0035】
また、本実施形態のセンターピラー用補強材1a、1bは、例えば、引張強度440MPa級以上の固溶強化鋼、DP鋼、焼き入れ鋼等の薄板(鋼板)を用意し、薄板をプレス成形する。プレス成形は、本体部2と、本体部2の幅方向両側に位置する折曲部3、3と、折曲部3、3を介して本体部2と一体化された一対の側壁部4、4とを備えるように薄板を成形加工すると共に、本体部2の長手方向に沿って本体部2の幅方向中央に凹ビード8を設ける。凹ビード8を設ける際には、凹ビード8と折曲部3、3との距離を有効幅c’としたときに、有効幅c’が上記式(3)を満たすように凹ビード8を設ければよい。
【0036】
また、凹ビード8の深さは5mm以上とすればよい。凹ビード8は、底面部8a及び底面部8aの幅方向両端に立設されたビード側壁部8bとで構成するようにすればよい。
【0037】
以下、式(3)について詳細に説明する。従来から薄板が圧縮を受けて座屈する際に、その断面全体が有効に働くわけではないことが知られていた(チモシェンコ・ギアー共著 弾性安定の理論/ブレイン図書出版株式会社)。座屈時に有効に働く断面は、その端部からある幅の領域であり、これが有効幅cと呼ばれるものである.この有効幅cを用いて座屈限界荷重Pultを求めると、hを薄板の板厚とし、σYPを薄板の降伏応力としたときに、式(4)で与えられる。
【0038】
【数4】
【0039】
ここで、有効幅cは薄板の弾性率Eとポアソン比νを用いると、式(5)で求めることができる。
【0040】
【数5】
【0041】
本発明者らは凹ビード8の配置位置として,この有効幅cの考え方を用いることを見出した。凹ビード8による衝撃吸収特性の向上は、衝突変形時に圧縮荷重を受ける面に配置することが効果的であることを知見している。すなわち、端部(折曲部3)から有効幅cの領域は有効に荷重を分担しているが,それを除いた折曲部3,3間の中央部の領域は有効に荷重を分担しておらず、この中央の領域に凹ビード8を設けることで変形拘束が生じ、その結果として全断面が有効に働くと考えている。
【0042】
そこで上記式(5)を用いて有効幅を算出したが、式(5)による有効幅cの計算値は比較的大きな値となり,検討していた部材幅(本体部2の幅)b,薄板の板厚hの範囲内では、本体部2のほぼ全断面が有効断面(b≒2c)であるとの結果となっている。また式(5)には本体部2の幅bの影響が含まれていない。従ってこの従来の有効幅の考え方では凹ビード8の配置方法の基礎値として使うことができないことが明らかである。
【0043】
そこで本発明者らは式(4)で与えられる座屈限界荷重を媒介として、有効幅の考え方を改良することを試みる。式(5)を式(4)に代入すると、下記式(6)が得られる。
【0044】
【数6】
【0045】
式(6)において、Kは比例定数である。この式(6)を式(4)と等置し、cに関して整理すると、下記式(7)が得られる。
【0046】
【数7】
【0047】
本発明者らは種々の材料を用いて座屈限界荷重を計測している。試験方法の模式図を図2及び図3に示す。試験材には鋼またはアルミニウムの薄板21を用い、圧縮の長手方向の長さを300mmとした。また幅bは50、100、150、200(mm)と変化させた。薄板21の下端21aは拘束し、また左右端21b、21bは回転を拘束しないようにV字型の治具22を作製して両側から挟みこむ形で拘束した(図3参照)。この状態で薄板21の上端21cを押し込み、試験を行った。座屈限界荷重は上端21cの押し込み量に対して、その際の荷重を計測し、比例関係から外れる荷重を座屈限界荷重(Pult)として定めた。
【0048】
試験材として用いた材料を表1に示す。軟鋼から焼き入れ鋼板(ホットプレス材)まで強度や板厚の異なる種々の鋼板(薄板)と、5000系のアルミニウム板(薄板)を用いた。表1に示す材料の弾性率Eは文献値を、また降伏応力と引張強さは長手方向を圧延方向に対して直角としたJIS 5号試験片を用いて引張試験を行って求めた。これらの値と座屈限界荷重(Pult)を用いて式(6)に従って比例定数Kを算出した。その値も表1に示す。この比例定数Kは一定値ではなく、材料特性や薄板の板厚、幅に応じて変化することが分かった。そこでこれらの影響を定量化するために,比例定数Kについて多変量解析を行った。その結果その表式として、下記式(8)が適切であることが判明した。
【0049】
【表1】
【0050】
【数8】
【0051】
ここにA、Bは比例定数であり,A=1.90、B=−1.00となった。この式による近似の様子を図4に示す。図4は、Kと(E/σYP)0.5・(h/b)との関係を示すグラフである。A=1.90、B=−1.00とすることで、実験結果を比較的良く再現していることが分かる。
【0052】
式(5)で示される有効幅cは、部材幅b(本体部の幅)bの影響が考慮できなかった。そこで、座屈限界荷重から求めた式(7)と式(8)を用いて、改良型有効幅c’を定義する。式(8)を式(7)に代入して下記式(9)(上記式(2)と同じ)が得られる。
【0053】
【数9】
【0054】
この式(9)(式(2))を用いると、部材幅の影響も取り込んだ改良型の有効幅c’が算出できる。従来の有効幅cと改良型の有効幅c’を比較した結果を図5に示す。従来の有効幅cが部材幅の影響を考慮できないのに対して、改良型の有効幅c’は部材幅の影響を考慮できている。
さらに本発明に係る凹ビード8の配置に関して、圧縮力を受ける部材面の両端から式(9)で算出される改良型有効幅c’を除いた領域に、凹ビード8を配置することが有効であることを確認できている。従って、任意の部材幅、部材板厚、部材強度、弾性率からなる部材に対して確実にビードを配置する領域を決定できる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
車両用のセンターピラー部は、先に述べたように、ボディサイドアウタパネルとその中に位置するセンターピラー補強材(車両用耐衝突補強材)とで構成される。自動車のセンターピラー部は、車種によって形状等が様々である。従って本実施例では、モデル部材を用いて検討した。
【0056】
本実施例に用いた凹ビードを有するアウタ側のセンターピラー補強材を図6に示す。図6(a)はセンターピラー補強材の平面模式図であり、図6(b)〜図6(e)はそれぞれ、図6(a)のA−A’線〜D−D’線に対応する断面模式図である。補強材の素材となる薄板は、板厚1.8mmの780MPa級DP鋼を用いた(降伏応力:490MPa、引張強さ:820MPa、伸び:24%)。また、図6に示すセンターピラー補強材11は、その本体部16の形状が、上部に向かうに従って幅が徐々に狭くなる形状となっている。たとえばD−D’断面では本体部の幅が105mmなのに対し、A−A’断面では幅が49mmになっている。図6に示すアウタ側のセンターピラー補強材11は、側突変形時に圧縮の力を受ける。一方、インナ側のセンターピラー補強材は引張力を受ける。従って、凹ビード18は圧縮の力を受けるアウタ側のセンターピラー補強材に配置することが望ましい。
【0057】
各断面での凹ビード18の位置において、上記式(3)を用いて改良型の有効幅c’を算出した。図6(b)〜図6(e)にそれぞれ、改良型の有効幅c’の値を示してある。折曲部13から有効幅c’の寸法分までの範囲内では、圧縮力に対して有効に働くので、それ以外の中央部分に深さ5mmのビード18を配置し、各断面を滑らかにつなぐことで凹ビード形状を設けた。また、凹ビード18の高さ方向の位置は、センターピラー部の下部が大きく変形しながらエネルギー吸収する際にその際の荷重をサイドルーフレールに効率的に伝達するために、センターピラー部の上部に配置した。
【0058】
センターピラー補強材の上部は、図6に示したように下部に比べて断面が小さく、下部の変形時に上部が座屈しないような十分な変形抵抗を持たせることが難しい。しかしながら、本発明に係る凹ビード18は、変形強度の差を付ける目的での配置が効果的である。
【0059】
その配置の決定方法であるが、図7に示すセンターピラー補強部材11の断面2次モーメントの評価結果を基に決定した。図7は、センターピラー補強材11の側面模式図であり、図8は、センターピラー補強材11の高さ方向の位置における断面二次モーメントとその二次微分係数との関係を示すグラフである。
【0060】
図8の縦軸は、図7に示すセンターピラー補強材11の高さ方向の座標を示している。高さ方向の座標は、図7に示すように、センターピラー補強材11の最下端部の位置を原点(0mm)としている。図8に示すように、100mm間隔で計算した断面二次モーメントは、センターピラー補強材11の上部で小さく、下部に近づくにつれて大きくなっており、上部が下部に比べて折れ曲がりやすいことを示している。
【0061】
この断面2次モーメントを位置(高さ方向座標)で2階微分した結果を図8に同時に示す。断面2次モーメントの2次微係数が0となるのは高さが約700mmの位置であり、この部位で断面2次モーメントの変化率が極値を取っていることが分かる。すなわちこの部位が長手方向で見たときに折れ曲がりやすさが最も急峻に変化している点である。従って本発明では、断面2次モーメントの2次微係数が0となる位置よりも上側に凹ビード18を配置することがより望ましい。図6のビードはこのような検討から高さ方向の配置を決めたものであり、高さ位置として約750mmから1100mmの範囲に渡って凹部を配置している。
【0062】
次に、衝突試験に用いたモデル部材を図9及び図10に示す。実際の部材と同じくこのモデル部材は、上側にルーフサイドレールを、また下側にサイドシルをそれぞれ模擬した均一断面を持つ部材を配置し、その間に図6に示したアウタ側のセンターピラー補強部材と、インナ側のセンターピラー補強部材の2部品を配置した。インナ側のセンターピラー補強部材は、板厚1.2mm、780MPa級DP鋼とした。ルーフサイドレールおよびサイドシルは、すべて3.2mmの板厚の590MPa級鋼板(JSH590Y)を用いて作製した。各部材を約50mm間隔のスポット溶接により結合した。
【0063】
表2に、今回作製したセンターピラー補強部材の一覧を示す。No.1はビードを設けない比較例である。No.2は図6に示した凹ビードの深さが5mmのものである。No.3はNo.2と凹ビードの配置位置は同じであるがビード深さを3mmとしたものである。これらはすべて同じ素材(板厚1.8mm、780MPa級DP鋼)を用いて作製した。
【0064】
【表2】
【0065】
実験は実際の側突変形を模擬したものとした。まずルーフサイドレールおよびサイドシルの左右端を治具により拘束した。その後半球状の治具(R=1000mm、125kg)をその頂点が図7に示す座標で高さ500mmに位置するようにした状態で、側方より速度15m/sでアウタ側から衝突させた。
【0066】
この際にこの半球状治具に生じる反力を計測するとともに、インナ側のセンターピラー補強部材の稜線に約100mm間隔で付けたマークの位置を逐次計測し侵入量の指標とした。側面衝突性能の指標としては半球状の治具に生じた反力をある区間(0−20msecおよび10−20msec)で平均化した平均反力と、20msec時の侵入量(インナ側部材のマーク位置)による変形形態により評価した。
【0067】
図11に、20msec時の変形形態を示す。図11は、凹ビードを設けない比較例であるNo.1と本発明例(No.2、No.3)を比較したものであるが、No.1では相対的に断面強度の小さくなる上部に変形が集中し、上部(位置1100mm近傍)に部材の折れが発生していた。一方、ビード深さ5mmのNo.2では、凹ビードの効果により上部の座屈が抑制され、No.1と比べて鉛直に近い形状となり、好ましいものとなった。また、ビード深さ3mmのNo.3でもビード配置によりNo.1に比べて上部の変形が抑制されたが、わずかに折れが生じていた。
【0068】
凹ビードは圧縮力により座屈した後の荷重低下を抑制することで、No.2に見られるような高い効果を発揮すると考えられるが、ビード深さが浅い場合には座屈により平板に近い形態に遷移しやすいため、その効果が減ずるものと考えられる。従って、センターピラーに近い寸法の部材を考えた場合にはビード深さを5mm以上とすることがより好ましい。
【0069】
また座屈形態の指標として、この部材鉛直度を評価するため最上部のマークの20msec時の位置と、下部の各マークの20msecでの位置の水平方向の差をそれぞれ算出し、2乗した上で総和し、その平方根を算出した(mmの次元を持つ数値となる)。その結果、各マークの水平方向の位置が同じであればこの値は0となり、インナ側の補強材の形状が衝突後鉛直となっていることを示している。その値を表2に鉛直度として示す。この値が小さいほどセンターピラー補強材として望ましいと考えられるが、ビードを配置したNo.2、No.3ともにNo.1よりも小さな値となり、凹ビードの効果が高いことが分かった。
【0070】
また、部材の衝撃吸収能を示す平均反力(0−20msecの平均値)については、No.1に比べ、No.2、No.3はいずれも高い値となっていた。この差は後半の平均荷重(10−20msec)でより顕著となり、凹ビードが座屈を抑制することで衝撃吸収特性が特に後半で大きく改善することが分かった。
【0071】
[実施例2]
実施例1では、センターピラーのモデル部材について、上記式(3)を基に凹ビードを配置して、衝突を模擬した実験により効果を検証したが、実際の部品に凹ビードを適切に配置しようとするときには数値解析手法の活用が重要となる。平板や断面が均一な部材等の単純な場合には、式(3)に基づいた配置検討で十分であるが、実際の部材を考えると長手方向に断面が変化していたり、部材全体で湾曲があったり等複雑な場合には、適切な配置を行うことが難しい。そこで配置方法の数値解析技術について検討した。
【0072】
図12は、検討に用いたモデル部材の外形形状である。図12(a)に示すストレート部材は、幅方向中央に凸部を設けた所謂断面視ハット状の部材であって、凸部の幅が長手方向に沿って断面幅が60mmと一定の部材である。一方、図12(b)に示す拡幅部材は、幅方向中央に凸部を設けた所謂断面視ハット状の部材であって、一端の凸部の幅が60mm、他端の凸部の幅が100mmで、一端と他端の間で凸部の幅が変化する部材である。
【0073】
これら2種類のモデル部材に対して、表3に示すNo.4〜No.19の部材を想定した。ストレート部材の断面形状を図13に示す。図13(a)に示すように凹ビードがないものをNo.4、No.12とし、図13(b)に示すように凹ビードの幅が20mmのものをNo.5、No.13とし、図13(c)に示すように凹ビードの幅が40mmのものをNo.6、No.14とした。
【0074】
【表3】
【0075】
拡幅部材に対しては、図14に示すように、凹ビードの形状が長手方向で変化しないもの(等幅)と、凸部の幅に合わせて広がっていくもの(拡幅)の2種類の形状を検討した。これらの部材形状はフロントサイドメンバのエクステンションやクロスメンバを想定しているものである。
【0076】
想定した材料特性値は、980MPa級DP鋼であって、降伏応力を650MPaと考えた。上記式(3)を用いて改良型の有効幅c’を算出すると、板厚1.2mmで部材幅が60mmの場合はc’が16.5mm、部材幅が100mmの場合はc’が18.0mmとなった。また板厚1.8mmでは部材幅が60mmの場合はc’が21.9mm、部材幅が100mmの場合はc’が25.3mmとなった。
【0077】
従って、ビードを配置した部材の内、20mm幅の部材では、有効幅以外の場所に凹ビードが配置されており、幅40mmの部材では凹ビードの形成領域が有効幅内にかかっている。
【0078】
まず、ストレート部材の断面性能を評価する際に行われる曲げ特性の評価を行った。解析ソフトウェアは静的陰解法の汎用構造解析有限要素法コードであるNASTRANを用いた。部材の中央部を拘束した上で部材の両端に600Nの力を与えてビード配置面に圧縮力が加わるようにして解析した。それぞれの部材で力を加えた端部の変位を計測した。その結果を表3に示す。
【0079】
表3に示すように、それぞれビードを配置したものと配置していないものとを比較すると、凹ビードを配置した方が負荷方向変位が大きくなってしまうことが分かった。これは静的な曲げ変形では凹ビードにより断面二次モーメントが低下してしまい、曲がりやすくなることを意味していると考えられる。
【0080】
しかしながら実際の衝突変形では、凹ビードは座屈の防止と座屈後の荷重低下の阻止に有効であることが分かっており、このような評価では実性能と相関を取ることができない。そこで、衝突時の変形が局所的に起こることを考慮して座屈モード解析による評価を行った。
【0081】
解析ソフトウェアは、曲げ解析と同様にNASTRANを用いた。座屈モード解析では曲げ解析で与えた境界条件を基に高次モードまでの解析を行い、その結果を変形形態と座屈固有値で評価した。
【0082】
当該モードでの座屈荷重は境界条件として与えた荷重(今回は600N)と座屈固有値の積で計算でき、座屈固有値が高いものほど座屈荷重が高く、従って座屈しにくいと言える。今回の解析では高次までの計算を行い、衝突変形での局部座屈とほぼ同等となる座屈モードを探索し、そのモードでの座屈固有値を求めた。
【0083】
今回対象にした部材は形状が単純であり、局部的な座屈に相当するモードは2次モードとなった。その値を表3に示す。表3に示されているように、静的な曲げ解析ではビードの効果が見られなかったのに対して、座屈固有値で評価した場合は、いずれも凹ビードを付けたもので座屈固有値が高くなっていることが分かった。また幅20mmと幅40mmの部材で比較すると、有効幅以外に配置している幅20mmの部材で座屈固有値が高くなっていることが分かった。
【0084】
実施例1のような衝突実験による検討は時間やコストが膨大であり、かつ、ある部品を評価する際にはそれを支える他部材の情報も必要となる。しかしながら、上述の座屈モード解析は部品単体での検討が可能であり、通常の曲げ解析では効果の検討が難しい凹ビードの配置最適化には好適である。また実際の部材を考えたときに座屈モードが特定できている場合には、拘束位置等の境界条件により所望の座屈モードを得ることが可能であり、その上で凹ビードの配置検討をすればよい。このような手法により周囲の部材の情報が得られない場合でも凹ビードの配置検討を行うことが可能であり、設計の初期段階においては特に有効な手段となる。
【0085】
本手法の有効性を確認するために実際に部材を作製して落重試験により初期ピーク荷重を評価した。用いた素材は、上記の検討と同じく980MPa級DP鋼であり、板厚は1.2mmと1.8mmのものを用いた。部材の背板は他方の部材と同じ素材を用いた。スポット溶接間隔は30mmとした。この部材をスパン800mmで支持し、R50の落錘により中央部分に曲げを生じさせた。その結果を同じく表3に示す。ビードを設けたもので初期ピーク荷重が高くなることが分かった。また座屈モード解析により得た座屈固有値の結果と部材外形が同じものの中では良い対応関係が見られた。従って、凹ビードによる衝撃吸収特性の向上が確認できるとともに、座屈モード解析を用いた数値解析手法が有効であることが分かった。
【0086】
今回対象にした部材の中で折曲部から凹ビードまでの距離が10mmであるNo.6、No.14は、式(3)で算出される有効幅c’内にビードが配置されている。表3にまとめたように、これらの部材であっても座屈固有値や初期ピーク荷重はビードを配置しないものよりも優れた特性を示すことが分かった。従って、有効幅c’内への凹ビードの配置も一案である。しかしながら、凹ビードの効果を最大限に発揮させようとする場合には、No.5、No.13のように有効幅c’外に凹ビードを配置した方が良い。また、何らかの制約条件により凹ビードが配置できない場合には、1段の段差のみでも有効幅外に配置することは本発明の思想の範囲内であり、有効である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、本発明の実施形態である車両用耐衝突補強材をセンターピラー用補強材に適用した形態を示す図であって、(a)は車両の右側用のセンターピラー用補強材を示す斜視図であり、(b)は車両の左側用のセンターピラー用補強材を示す斜視図であり、(c)は(a)または(b)のA−A’線に対応する断面模式図である。
【図2】図2は、座屈限界荷重の試験方法を説明する正面模式図である。
【図3】図3は、座屈限界荷重の試験方法を説明する平面模式図である。
【図4】図4は、Kと(E/σYP)0.5・(h/b)との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、センターピラー用補強材を構成する薄板の板厚と有効幅との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例1において用いたアウタ側のセンターピラー補強材を示す図であって、(a)はセンターピラー補強材の平面模式図であり、(b)〜(e)はそれぞれ、(a)のA−A’線〜D−D’線に対応する断面模式図である。
【図7】図7は、断面2次モーメントの評価に用いたセンターピラー補強材を示す図であって、高さ座標を示す側面模式図である。
【図8】図8は、断面2次モーメントの評価結果を示すグラフであって、高さ位置と、断面2次モーメント及びその二次微分係数との関係を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例2において衝突試験に用いたモデル部材を示す平面模式図である。
【図10】図10は、実施例2において衝突試験に用いたモデル部材を示す側面模式図である。
【図11】図11は、衝突の際のモデル部材の変位量と、高さ位置との関係を示すグラフである。
【図12】図12は、実施例2において検討に用いた衝突試験に用いた別のモデル部材を示す図であって、(a)はストレート部材の斜視図であり、(b)は拡幅部材の斜視図である。
【図13】図13は、図12(a)のストレート部材の断面形状を示す断面模式図であって、(a)は凹ビードがない例であり、(b)は凹ビードの幅が20mmの例であり、(c)は凹ビードの幅が40mmの例である。
【図14】図14は、実施例2において検討に用いたストレート部材及び拡幅部材を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1a、1b…センターピラー補強材(車両用耐衝突補強材)、2…本体部、3…折曲部、4…側壁部、8…凹ビード、8a…底面部、8b…ビード側壁部
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車からの炭酸ガスの排出量を抑えるために、高強度鋼板を使用して自動車車体の軽量化が進められている。また、搭乗者の安全確保のためにも、自動車車体には軟鋼板の他に高強度鋼板を使用する方向で検討が進められている。
【0003】
高強度鋼板を使用した部品として、センターピラー用の耐衝突補強材がある。この耐衝突補強材は、断面形状がハット形に成形加工された鋼板と、平板状の鋼板とが重ね合わされ、相互に溶接されることによって構成された閉断面構造からなる長尺の補強材である。この衝突補強材は、自動車車体において、センターピラーの内部に収納されて、車体を構成するサイドシルとサイドルーフレールとの間に架設されている。
【0004】
自動車の側面に対して他の自動車等が衝突すると、衝突部位がセンターピラーのドアウエスト部よりも下側の部分になり、この衝突部位に対応する耐衝突補強材の下部が衝突エネルギーによって潰されて車内側に押し込まれる。このため、センターピラー用の耐衝突補強材の形状は、ドアウエスト部より下側の下部においては、耐衝突強度を確保するために、自動車の全長方向に沿う幅が広く、かつ車内側に向けて厚みをもった形状となる。一方、ドアウエスト部より上側の上部においては、デザイン性の観点から、自動車の全長方向に沿う幅が狭く、かつ車内側に向けて薄くした形状となる。このため、耐衝突補強材の上部においては、圧縮応力に対する耐座屈性が低下する場合がある。
【0005】
このため、自動車の側面に衝突による外力が加わった場合、耐衝突補強材の下部において衝突エネルギーが吸収される一方で、耐衝突補強材を含むセンターピラーの上部に圧縮応力が加わり、耐衝突補強材を含むセンターピラーの上部が車内側に向けて折れ曲がってしまい、搭乗者の安全性を十分に確保できないおそれがあった。この問題を解決するために特許文献1には、ピラーの上端と下端の間に強度変化点を設け、強度変化点より上の部分の強度を下の部分の強度より高くした車体構造が開示されている。
【0006】
また、自動車車体には、センターピラー以外にも、閉断面構造からなる各種の耐衝突補強材が使用されている。例えば、フロアトンネルとサイドシルとの間には、クロスメンバが設置されている。また、車体前部の両側には、エンジンを挟む形でフロントメンバのエクステンション部が設置されている。これらの耐衝突補強材においても、衝突時には圧縮応力が加わるので、センターピラー用の耐衝突補強材と同様に、耐座屈性の改善が望まれていた。
【特許文献1】特開2001−163257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来、閉断面構造を有する耐衝突補強材に凹ビートを設けると、静的荷重作用下において断面二次モーメントの減少を招き、これにより変形量の増大につながると考えられていた。従って、耐衝突補強材に凹ビードを設けることは行われていなかった。しかし、本発明者が鋭意研究したところ、耐衝突補強部材の変形が生じる衝突変形においては、かえって凹ビードを設けることで耐衝突補強材の変形を低減できることを見出した。
【0009】
これまで、薄板を加工して閉断面構造とした耐衝突補強材に対して圧縮荷重を加えた場合、その断面全体が荷重分担するのではなく、断面の一部が実際に荷重分担することは既に知られており、この部分の幅を有効幅と呼称し、有効幅を算出する理論式も存在していた。しかし、従来の有効幅の理論式には、薄板の弾性率、降伏強度、厚み並びにポアソン比が組み込まれているものの、耐衝突補強材の幅については何らの考慮もされていなかった。本発明者らは、耐衝突補強材の幅に着目して新たな概念の有効幅を導き出し、この新たな有効幅の概念を耐衝突補強材の設計に応用することで、耐衝突補強部材の耐座屈性能を飛躍的に高めることに至った。そして本発明者は、以下の構成を採用することで、上記の課題を解決するに至った。
【0010】
本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材は、成形加工された薄板からなる車両用耐衝突補強材であって、前記車両用耐衝突補強材は、本体部と、前記本体部の幅方向両側に設けた折曲部を介して前記本体部と一体化された一対の側壁部とを少なくとも備え、前記本体部にはその長手方向に沿って前記本体部の幅方向中央に延在する凹ビードが設けられており、前記凹ビードと前記折曲部との距離を有効幅c’としたとき、前記有効幅c’が下記式(1)を満たすように前記凹ビードが設けられていることを特徴とする。
【0011】
【数1】
【0012】
但し、式(1)において、hは前記薄板の厚みであり、bは凹ビードを設ける前の前記本体部の幅であり、Eは前記薄板の弾性率であり、σYPは前記薄板の降伏応力であり、A及びBはそれぞれ定数であって、Aは1.90であり、Bは−1.00である。
【0013】
また、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材においては、前記凹ビードの深さが5mm以上であることが好ましい。
【0014】
更に、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材においては、前記凹ビードが、底面部及び前記底面部の幅方向両端に立設されたビード側壁部とから構成されることが好ましい。
【0015】
更にまた、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材は、自動車のピラー用補強材であることが好ましい。
また、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材は、自動車のクロスメンバであることが好ましい。
更に、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材は、自動車のフロントメンバのエクステンション部であることが好ましい。
【0016】
次に、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材の製造方法は、成形加工された薄板からなる車両用耐衝突補強材の製造方法であって、本体部と、前記本体部の幅方向両側に位置する折曲部と、前記折曲部を介して前記本体部と一体化された一対の側壁部とを少なくとも備えるように前記薄板を成形加工すると共に、前記本体部の長手方向に沿って前記本体部の幅方向中央に凹ビードを設ける工程を具備してなり、前記凹ビードと前記折曲部との距離を有効幅c’としたとき、前記有効幅c’が下記式(2)を満たすように前記凹ビードを設けることを特徴とする。
【0017】
【数2】
【0018】
但し、式(2)において、hは前記薄板の厚みであり、bは凹ビードを設ける前の前記本体部の幅であり、Eは前記薄板の弾性率であり、σYPは前記薄板の降伏応力であり、A及びBはそれぞれ定数であって、Aは1.90であり、Bは−1.00である。
【0019】
また、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材の製造方法においては、前記凹ビードの深さを5mm以上とすることが好ましい。
【0020】
更に、本発明の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材の製造方法においては、前記凹ビードを、底面部及び前記底面部の幅方向両端に立設されたビード側壁部とで構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態である耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材について、図面を参照して説明する。
本実施形態の車両用衝突補強部材は、衝突変形時に圧縮力を受ける箇所に配置することが好適である。本発明に係る凹ビードは、圧縮力を受けて座屈する際の座屈荷重の向上と、座屈後の荷重低下が小さいことの二つの作用により、衝撃吸収能の向上に寄与する。従って、それ自体が大きく変形することによりエネルギー吸収する部品、例えばフロントサイドメンバやセンターピラーの下部等よりも、これらに連結された部品で大きく座屈することなく、荷重を他部位に伝達させる働きを受け持つ部品への適用が全体のエネルギ吸収特性や軽量化の観点から望ましい。
【0023】
自動車を考えた場合にこのような部品として、側面衝突の場合には、センターピラー部の上部や、ルーフセンター、クロスメンバ等がある。また前面衝突の場合にはフロントサイドメンバに連結されキャビンに配置されるフロントサイドメンバエクステンション等がある。
【0024】
本実施形態では、センターピラー部への適用を例にして説明する。
自動車等の車両のセンターピラー部は、一般にボディサイドアウタパネルとその中に位置するセンターピラー補強材(車両用耐衝突補強材)とで構成される。センターピラー補強材は更に、アウタ側の補強材と、インナ側の補強材の2つの部品で構成される。最も外側に位置するボディサイドアウタパネルは、主に強度の低い軟鋼により作製され、衝撃荷重の吸収にはほとんど寄与しない。従って、側面衝突時の衝撃エネルギーは、主にセンターピラー補強材により吸収される。自動車のセンターピラー部は、車種によって形状等が様々であるが、本実施形態のセンターピラー補強材の一例を図1に示す。
【0025】
図1は、本実施形態の車両用耐衝突補強材を、車両のセンターピラー用補強材に適用した形態を示す図であって、(a)は車両の右側用のセンターピラー用補強材を示す斜視図であり、(b)は車両の左側用のセンターピラー用補強材を示す斜視図であり、(c)は(a)または(b)のA−A’線に対応する断面模式図である。
【0026】
図1に示すセンターピラー用補強材1a、1b(車両用耐衝突補強材)は、薄板が例えば凸状にプレス成形加工されてなるものであって、上下方向に延在する本体部2と、本体部2の幅方向両側に設けた折曲部3と、折曲部3を介して本体部2と一体化された一対の側壁部4、4と、側壁部4、4に設けられた溶接部となるフランジ部5と、から概略構成されている。
また、本体部2の上端側には、車両のサイドルーフレールに溶接される上側結合部6が設けられ、一方、本体部2の下端側には、車両のサイドシルに溶接される下側結合部7が設けられている。
【0027】
本体部2には凹ビード8が設けられている。この凹ビード8は、本体部2の長手方向に沿って本体部2の幅方向ほぼ中央に延在している。また、凹ビード8は、例えば、底面部8a及び底面部8aの幅方向両端に立設されたビード側壁部8bとで構成されている。また、凹ビード8は、本体部2の上部に形成されており、より好ましくは、センターピラー部の下部が大きく変形しながらエネルギー吸収する際に、その際の荷重をサイドルーフレールに効率的に伝達することが可能なセンターピラー部の上部に対応する位置に設けることが望ましい。一般にセンターピラー部の上部は下部に比べて断面が小さく、下部の変形時に上部が座屈しないような十分な変形抵抗を持たせることが難しい。しかしながら、本発明に係る凹ビードは変形強度の差を付ける目的での配置が効果的である。
【0028】
より具体的な凹ビード8の形成位置は、センターピラー補強部材1a、1bの断面2次モーメントの評価を行い、この断面2次モーメントを位置(高さ方向座標)で2階微分し、2次微係数が0となる部位、すなわち断面2次モーメントの変化率が極値を取る部位よりも上側(サイドルーフレール側)にすることが望ましい。
【0029】
図1に示すセンターピラー用補強材1a、1bは、本体部2が車両の外側に向くように配置され、アウター側のセンターピラー用補強材として使用される。このアウター側のセンターピラー用補強材1a、1bには、図1(c)の一点鎖線で示すように、フランジ部5、5の間を掛け渡すようにインナー側のセンターピラー補強材10が溶接されている。
【0030】
インナー側のセンターピラー補強材10は、薄板を打ち抜き加工または切断加工して所定の形状に成型したものを板状のままアウター側のセンターピラー用補強材1a、1bに溶接してもよい。また、インナー側のセンターピラー補強材10は、薄板をプレス加工して断面視形状をハット形状に成形したものを、アウター側のセンターピラー用補強材1a、1bに溶接してもよい。図1(c)に示すように、アウター側のセンターピラー用補強材1a、1bとインナー側のセンターピラー補強材10とを接合することで、閉断面構造のセンターピラー用補強材を構成できる。
【0031】
本体部2に設けた凹ビード8は、本体部2の長手方向に沿って本体部2の幅方向ほぼ中央に延在し、かつ、本体部2の上部、より詳しくは断面2次モーメント評価において断面2次モーメントを位置(高さ方向座標)で2階微分したときに2次微係数が0となる部位より上側に設けられている。本体部2の上部は、センターピラー用補強材1a、1bを車両に組み込んだ際に車両の上部に位置することとなり、側面衝突の際には本体部の下部からの圧縮荷重を受けて車内側に変形しやすい部分である。従って、側面衝突時に衝撃が直接加わる本体部の下部には凹ビードを設けず、圧縮荷重が加わる上部のみに凹ビードを設けることが、下部における衝撃吸収性を損なわずに上部における衝突変形を防止できる点で好ましい。本体部の下部にも凹ビードを設けると、衝突時の衝撃吸収性が低下し、本体部の下部が車内側に侵入して搭乗者のスペースが狭くなり、却って安全性が低下してしまう。
【0032】
本発明のセンターピラー用補強材1a、1b(車両用耐衝突補強材)においては、凹ビード8のビード側壁部8bと折曲部3との最短距離を有効幅c’としたとき、有効幅c’が下記式(3)を満たすように前記凹ビード8を設けることが好ましい。
【0033】
【数3】
【0034】
但し、式(3)において、hは薄板の厚みであり、bは凹ビードを設ける前の本体部の幅であり、Eは薄板の弾性率であり、σYPは薄板の降伏応力であり、A及びBはそれぞれ定数であって、Aは1.90であり、Bは−1.00である。
【0035】
また、本実施形態のセンターピラー用補強材1a、1bは、例えば、引張強度440MPa級以上の固溶強化鋼、DP鋼、焼き入れ鋼等の薄板(鋼板)を用意し、薄板をプレス成形する。プレス成形は、本体部2と、本体部2の幅方向両側に位置する折曲部3、3と、折曲部3、3を介して本体部2と一体化された一対の側壁部4、4とを備えるように薄板を成形加工すると共に、本体部2の長手方向に沿って本体部2の幅方向中央に凹ビード8を設ける。凹ビード8を設ける際には、凹ビード8と折曲部3、3との距離を有効幅c’としたときに、有効幅c’が上記式(3)を満たすように凹ビード8を設ければよい。
【0036】
また、凹ビード8の深さは5mm以上とすればよい。凹ビード8は、底面部8a及び底面部8aの幅方向両端に立設されたビード側壁部8bとで構成するようにすればよい。
【0037】
以下、式(3)について詳細に説明する。従来から薄板が圧縮を受けて座屈する際に、その断面全体が有効に働くわけではないことが知られていた(チモシェンコ・ギアー共著 弾性安定の理論/ブレイン図書出版株式会社)。座屈時に有効に働く断面は、その端部からある幅の領域であり、これが有効幅cと呼ばれるものである.この有効幅cを用いて座屈限界荷重Pultを求めると、hを薄板の板厚とし、σYPを薄板の降伏応力としたときに、式(4)で与えられる。
【0038】
【数4】
【0039】
ここで、有効幅cは薄板の弾性率Eとポアソン比νを用いると、式(5)で求めることができる。
【0040】
【数5】
【0041】
本発明者らは凹ビード8の配置位置として,この有効幅cの考え方を用いることを見出した。凹ビード8による衝撃吸収特性の向上は、衝突変形時に圧縮荷重を受ける面に配置することが効果的であることを知見している。すなわち、端部(折曲部3)から有効幅cの領域は有効に荷重を分担しているが,それを除いた折曲部3,3間の中央部の領域は有効に荷重を分担しておらず、この中央の領域に凹ビード8を設けることで変形拘束が生じ、その結果として全断面が有効に働くと考えている。
【0042】
そこで上記式(5)を用いて有効幅を算出したが、式(5)による有効幅cの計算値は比較的大きな値となり,検討していた部材幅(本体部2の幅)b,薄板の板厚hの範囲内では、本体部2のほぼ全断面が有効断面(b≒2c)であるとの結果となっている。また式(5)には本体部2の幅bの影響が含まれていない。従ってこの従来の有効幅の考え方では凹ビード8の配置方法の基礎値として使うことができないことが明らかである。
【0043】
そこで本発明者らは式(4)で与えられる座屈限界荷重を媒介として、有効幅の考え方を改良することを試みる。式(5)を式(4)に代入すると、下記式(6)が得られる。
【0044】
【数6】
【0045】
式(6)において、Kは比例定数である。この式(6)を式(4)と等置し、cに関して整理すると、下記式(7)が得られる。
【0046】
【数7】
【0047】
本発明者らは種々の材料を用いて座屈限界荷重を計測している。試験方法の模式図を図2及び図3に示す。試験材には鋼またはアルミニウムの薄板21を用い、圧縮の長手方向の長さを300mmとした。また幅bは50、100、150、200(mm)と変化させた。薄板21の下端21aは拘束し、また左右端21b、21bは回転を拘束しないようにV字型の治具22を作製して両側から挟みこむ形で拘束した(図3参照)。この状態で薄板21の上端21cを押し込み、試験を行った。座屈限界荷重は上端21cの押し込み量に対して、その際の荷重を計測し、比例関係から外れる荷重を座屈限界荷重(Pult)として定めた。
【0048】
試験材として用いた材料を表1に示す。軟鋼から焼き入れ鋼板(ホットプレス材)まで強度や板厚の異なる種々の鋼板(薄板)と、5000系のアルミニウム板(薄板)を用いた。表1に示す材料の弾性率Eは文献値を、また降伏応力と引張強さは長手方向を圧延方向に対して直角としたJIS 5号試験片を用いて引張試験を行って求めた。これらの値と座屈限界荷重(Pult)を用いて式(6)に従って比例定数Kを算出した。その値も表1に示す。この比例定数Kは一定値ではなく、材料特性や薄板の板厚、幅に応じて変化することが分かった。そこでこれらの影響を定量化するために,比例定数Kについて多変量解析を行った。その結果その表式として、下記式(8)が適切であることが判明した。
【0049】
【表1】
【0050】
【数8】
【0051】
ここにA、Bは比例定数であり,A=1.90、B=−1.00となった。この式による近似の様子を図4に示す。図4は、Kと(E/σYP)0.5・(h/b)との関係を示すグラフである。A=1.90、B=−1.00とすることで、実験結果を比較的良く再現していることが分かる。
【0052】
式(5)で示される有効幅cは、部材幅b(本体部の幅)bの影響が考慮できなかった。そこで、座屈限界荷重から求めた式(7)と式(8)を用いて、改良型有効幅c’を定義する。式(8)を式(7)に代入して下記式(9)(上記式(2)と同じ)が得られる。
【0053】
【数9】
【0054】
この式(9)(式(2))を用いると、部材幅の影響も取り込んだ改良型の有効幅c’が算出できる。従来の有効幅cと改良型の有効幅c’を比較した結果を図5に示す。従来の有効幅cが部材幅の影響を考慮できないのに対して、改良型の有効幅c’は部材幅の影響を考慮できている。
さらに本発明に係る凹ビード8の配置に関して、圧縮力を受ける部材面の両端から式(9)で算出される改良型有効幅c’を除いた領域に、凹ビード8を配置することが有効であることを確認できている。従って、任意の部材幅、部材板厚、部材強度、弾性率からなる部材に対して確実にビードを配置する領域を決定できる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
車両用のセンターピラー部は、先に述べたように、ボディサイドアウタパネルとその中に位置するセンターピラー補強材(車両用耐衝突補強材)とで構成される。自動車のセンターピラー部は、車種によって形状等が様々である。従って本実施例では、モデル部材を用いて検討した。
【0056】
本実施例に用いた凹ビードを有するアウタ側のセンターピラー補強材を図6に示す。図6(a)はセンターピラー補強材の平面模式図であり、図6(b)〜図6(e)はそれぞれ、図6(a)のA−A’線〜D−D’線に対応する断面模式図である。補強材の素材となる薄板は、板厚1.8mmの780MPa級DP鋼を用いた(降伏応力:490MPa、引張強さ:820MPa、伸び:24%)。また、図6に示すセンターピラー補強材11は、その本体部16の形状が、上部に向かうに従って幅が徐々に狭くなる形状となっている。たとえばD−D’断面では本体部の幅が105mmなのに対し、A−A’断面では幅が49mmになっている。図6に示すアウタ側のセンターピラー補強材11は、側突変形時に圧縮の力を受ける。一方、インナ側のセンターピラー補強材は引張力を受ける。従って、凹ビード18は圧縮の力を受けるアウタ側のセンターピラー補強材に配置することが望ましい。
【0057】
各断面での凹ビード18の位置において、上記式(3)を用いて改良型の有効幅c’を算出した。図6(b)〜図6(e)にそれぞれ、改良型の有効幅c’の値を示してある。折曲部13から有効幅c’の寸法分までの範囲内では、圧縮力に対して有効に働くので、それ以外の中央部分に深さ5mmのビード18を配置し、各断面を滑らかにつなぐことで凹ビード形状を設けた。また、凹ビード18の高さ方向の位置は、センターピラー部の下部が大きく変形しながらエネルギー吸収する際にその際の荷重をサイドルーフレールに効率的に伝達するために、センターピラー部の上部に配置した。
【0058】
センターピラー補強材の上部は、図6に示したように下部に比べて断面が小さく、下部の変形時に上部が座屈しないような十分な変形抵抗を持たせることが難しい。しかしながら、本発明に係る凹ビード18は、変形強度の差を付ける目的での配置が効果的である。
【0059】
その配置の決定方法であるが、図7に示すセンターピラー補強部材11の断面2次モーメントの評価結果を基に決定した。図7は、センターピラー補強材11の側面模式図であり、図8は、センターピラー補強材11の高さ方向の位置における断面二次モーメントとその二次微分係数との関係を示すグラフである。
【0060】
図8の縦軸は、図7に示すセンターピラー補強材11の高さ方向の座標を示している。高さ方向の座標は、図7に示すように、センターピラー補強材11の最下端部の位置を原点(0mm)としている。図8に示すように、100mm間隔で計算した断面二次モーメントは、センターピラー補強材11の上部で小さく、下部に近づくにつれて大きくなっており、上部が下部に比べて折れ曲がりやすいことを示している。
【0061】
この断面2次モーメントを位置(高さ方向座標)で2階微分した結果を図8に同時に示す。断面2次モーメントの2次微係数が0となるのは高さが約700mmの位置であり、この部位で断面2次モーメントの変化率が極値を取っていることが分かる。すなわちこの部位が長手方向で見たときに折れ曲がりやすさが最も急峻に変化している点である。従って本発明では、断面2次モーメントの2次微係数が0となる位置よりも上側に凹ビード18を配置することがより望ましい。図6のビードはこのような検討から高さ方向の配置を決めたものであり、高さ位置として約750mmから1100mmの範囲に渡って凹部を配置している。
【0062】
次に、衝突試験に用いたモデル部材を図9及び図10に示す。実際の部材と同じくこのモデル部材は、上側にルーフサイドレールを、また下側にサイドシルをそれぞれ模擬した均一断面を持つ部材を配置し、その間に図6に示したアウタ側のセンターピラー補強部材と、インナ側のセンターピラー補強部材の2部品を配置した。インナ側のセンターピラー補強部材は、板厚1.2mm、780MPa級DP鋼とした。ルーフサイドレールおよびサイドシルは、すべて3.2mmの板厚の590MPa級鋼板(JSH590Y)を用いて作製した。各部材を約50mm間隔のスポット溶接により結合した。
【0063】
表2に、今回作製したセンターピラー補強部材の一覧を示す。No.1はビードを設けない比較例である。No.2は図6に示した凹ビードの深さが5mmのものである。No.3はNo.2と凹ビードの配置位置は同じであるがビード深さを3mmとしたものである。これらはすべて同じ素材(板厚1.8mm、780MPa級DP鋼)を用いて作製した。
【0064】
【表2】
【0065】
実験は実際の側突変形を模擬したものとした。まずルーフサイドレールおよびサイドシルの左右端を治具により拘束した。その後半球状の治具(R=1000mm、125kg)をその頂点が図7に示す座標で高さ500mmに位置するようにした状態で、側方より速度15m/sでアウタ側から衝突させた。
【0066】
この際にこの半球状治具に生じる反力を計測するとともに、インナ側のセンターピラー補強部材の稜線に約100mm間隔で付けたマークの位置を逐次計測し侵入量の指標とした。側面衝突性能の指標としては半球状の治具に生じた反力をある区間(0−20msecおよび10−20msec)で平均化した平均反力と、20msec時の侵入量(インナ側部材のマーク位置)による変形形態により評価した。
【0067】
図11に、20msec時の変形形態を示す。図11は、凹ビードを設けない比較例であるNo.1と本発明例(No.2、No.3)を比較したものであるが、No.1では相対的に断面強度の小さくなる上部に変形が集中し、上部(位置1100mm近傍)に部材の折れが発生していた。一方、ビード深さ5mmのNo.2では、凹ビードの効果により上部の座屈が抑制され、No.1と比べて鉛直に近い形状となり、好ましいものとなった。また、ビード深さ3mmのNo.3でもビード配置によりNo.1に比べて上部の変形が抑制されたが、わずかに折れが生じていた。
【0068】
凹ビードは圧縮力により座屈した後の荷重低下を抑制することで、No.2に見られるような高い効果を発揮すると考えられるが、ビード深さが浅い場合には座屈により平板に近い形態に遷移しやすいため、その効果が減ずるものと考えられる。従って、センターピラーに近い寸法の部材を考えた場合にはビード深さを5mm以上とすることがより好ましい。
【0069】
また座屈形態の指標として、この部材鉛直度を評価するため最上部のマークの20msec時の位置と、下部の各マークの20msecでの位置の水平方向の差をそれぞれ算出し、2乗した上で総和し、その平方根を算出した(mmの次元を持つ数値となる)。その結果、各マークの水平方向の位置が同じであればこの値は0となり、インナ側の補強材の形状が衝突後鉛直となっていることを示している。その値を表2に鉛直度として示す。この値が小さいほどセンターピラー補強材として望ましいと考えられるが、ビードを配置したNo.2、No.3ともにNo.1よりも小さな値となり、凹ビードの効果が高いことが分かった。
【0070】
また、部材の衝撃吸収能を示す平均反力(0−20msecの平均値)については、No.1に比べ、No.2、No.3はいずれも高い値となっていた。この差は後半の平均荷重(10−20msec)でより顕著となり、凹ビードが座屈を抑制することで衝撃吸収特性が特に後半で大きく改善することが分かった。
【0071】
[実施例2]
実施例1では、センターピラーのモデル部材について、上記式(3)を基に凹ビードを配置して、衝突を模擬した実験により効果を検証したが、実際の部品に凹ビードを適切に配置しようとするときには数値解析手法の活用が重要となる。平板や断面が均一な部材等の単純な場合には、式(3)に基づいた配置検討で十分であるが、実際の部材を考えると長手方向に断面が変化していたり、部材全体で湾曲があったり等複雑な場合には、適切な配置を行うことが難しい。そこで配置方法の数値解析技術について検討した。
【0072】
図12は、検討に用いたモデル部材の外形形状である。図12(a)に示すストレート部材は、幅方向中央に凸部を設けた所謂断面視ハット状の部材であって、凸部の幅が長手方向に沿って断面幅が60mmと一定の部材である。一方、図12(b)に示す拡幅部材は、幅方向中央に凸部を設けた所謂断面視ハット状の部材であって、一端の凸部の幅が60mm、他端の凸部の幅が100mmで、一端と他端の間で凸部の幅が変化する部材である。
【0073】
これら2種類のモデル部材に対して、表3に示すNo.4〜No.19の部材を想定した。ストレート部材の断面形状を図13に示す。図13(a)に示すように凹ビードがないものをNo.4、No.12とし、図13(b)に示すように凹ビードの幅が20mmのものをNo.5、No.13とし、図13(c)に示すように凹ビードの幅が40mmのものをNo.6、No.14とした。
【0074】
【表3】
【0075】
拡幅部材に対しては、図14に示すように、凹ビードの形状が長手方向で変化しないもの(等幅)と、凸部の幅に合わせて広がっていくもの(拡幅)の2種類の形状を検討した。これらの部材形状はフロントサイドメンバのエクステンションやクロスメンバを想定しているものである。
【0076】
想定した材料特性値は、980MPa級DP鋼であって、降伏応力を650MPaと考えた。上記式(3)を用いて改良型の有効幅c’を算出すると、板厚1.2mmで部材幅が60mmの場合はc’が16.5mm、部材幅が100mmの場合はc’が18.0mmとなった。また板厚1.8mmでは部材幅が60mmの場合はc’が21.9mm、部材幅が100mmの場合はc’が25.3mmとなった。
【0077】
従って、ビードを配置した部材の内、20mm幅の部材では、有効幅以外の場所に凹ビードが配置されており、幅40mmの部材では凹ビードの形成領域が有効幅内にかかっている。
【0078】
まず、ストレート部材の断面性能を評価する際に行われる曲げ特性の評価を行った。解析ソフトウェアは静的陰解法の汎用構造解析有限要素法コードであるNASTRANを用いた。部材の中央部を拘束した上で部材の両端に600Nの力を与えてビード配置面に圧縮力が加わるようにして解析した。それぞれの部材で力を加えた端部の変位を計測した。その結果を表3に示す。
【0079】
表3に示すように、それぞれビードを配置したものと配置していないものとを比較すると、凹ビードを配置した方が負荷方向変位が大きくなってしまうことが分かった。これは静的な曲げ変形では凹ビードにより断面二次モーメントが低下してしまい、曲がりやすくなることを意味していると考えられる。
【0080】
しかしながら実際の衝突変形では、凹ビードは座屈の防止と座屈後の荷重低下の阻止に有効であることが分かっており、このような評価では実性能と相関を取ることができない。そこで、衝突時の変形が局所的に起こることを考慮して座屈モード解析による評価を行った。
【0081】
解析ソフトウェアは、曲げ解析と同様にNASTRANを用いた。座屈モード解析では曲げ解析で与えた境界条件を基に高次モードまでの解析を行い、その結果を変形形態と座屈固有値で評価した。
【0082】
当該モードでの座屈荷重は境界条件として与えた荷重(今回は600N)と座屈固有値の積で計算でき、座屈固有値が高いものほど座屈荷重が高く、従って座屈しにくいと言える。今回の解析では高次までの計算を行い、衝突変形での局部座屈とほぼ同等となる座屈モードを探索し、そのモードでの座屈固有値を求めた。
【0083】
今回対象にした部材は形状が単純であり、局部的な座屈に相当するモードは2次モードとなった。その値を表3に示す。表3に示されているように、静的な曲げ解析ではビードの効果が見られなかったのに対して、座屈固有値で評価した場合は、いずれも凹ビードを付けたもので座屈固有値が高くなっていることが分かった。また幅20mmと幅40mmの部材で比較すると、有効幅以外に配置している幅20mmの部材で座屈固有値が高くなっていることが分かった。
【0084】
実施例1のような衝突実験による検討は時間やコストが膨大であり、かつ、ある部品を評価する際にはそれを支える他部材の情報も必要となる。しかしながら、上述の座屈モード解析は部品単体での検討が可能であり、通常の曲げ解析では効果の検討が難しい凹ビードの配置最適化には好適である。また実際の部材を考えたときに座屈モードが特定できている場合には、拘束位置等の境界条件により所望の座屈モードを得ることが可能であり、その上で凹ビードの配置検討をすればよい。このような手法により周囲の部材の情報が得られない場合でも凹ビードの配置検討を行うことが可能であり、設計の初期段階においては特に有効な手段となる。
【0085】
本手法の有効性を確認するために実際に部材を作製して落重試験により初期ピーク荷重を評価した。用いた素材は、上記の検討と同じく980MPa級DP鋼であり、板厚は1.2mmと1.8mmのものを用いた。部材の背板は他方の部材と同じ素材を用いた。スポット溶接間隔は30mmとした。この部材をスパン800mmで支持し、R50の落錘により中央部分に曲げを生じさせた。その結果を同じく表3に示す。ビードを設けたもので初期ピーク荷重が高くなることが分かった。また座屈モード解析により得た座屈固有値の結果と部材外形が同じものの中では良い対応関係が見られた。従って、凹ビードによる衝撃吸収特性の向上が確認できるとともに、座屈モード解析を用いた数値解析手法が有効であることが分かった。
【0086】
今回対象にした部材の中で折曲部から凹ビードまでの距離が10mmであるNo.6、No.14は、式(3)で算出される有効幅c’内にビードが配置されている。表3にまとめたように、これらの部材であっても座屈固有値や初期ピーク荷重はビードを配置しないものよりも優れた特性を示すことが分かった。従って、有効幅c’内への凹ビードの配置も一案である。しかしながら、凹ビードの効果を最大限に発揮させようとする場合には、No.5、No.13のように有効幅c’外に凹ビードを配置した方が良い。また、何らかの制約条件により凹ビードが配置できない場合には、1段の段差のみでも有効幅外に配置することは本発明の思想の範囲内であり、有効である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、本発明の実施形態である車両用耐衝突補強材をセンターピラー用補強材に適用した形態を示す図であって、(a)は車両の右側用のセンターピラー用補強材を示す斜視図であり、(b)は車両の左側用のセンターピラー用補強材を示す斜視図であり、(c)は(a)または(b)のA−A’線に対応する断面模式図である。
【図2】図2は、座屈限界荷重の試験方法を説明する正面模式図である。
【図3】図3は、座屈限界荷重の試験方法を説明する平面模式図である。
【図4】図4は、Kと(E/σYP)0.5・(h/b)との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、センターピラー用補強材を構成する薄板の板厚と有効幅との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例1において用いたアウタ側のセンターピラー補強材を示す図であって、(a)はセンターピラー補強材の平面模式図であり、(b)〜(e)はそれぞれ、(a)のA−A’線〜D−D’線に対応する断面模式図である。
【図7】図7は、断面2次モーメントの評価に用いたセンターピラー補強材を示す図であって、高さ座標を示す側面模式図である。
【図8】図8は、断面2次モーメントの評価結果を示すグラフであって、高さ位置と、断面2次モーメント及びその二次微分係数との関係を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例2において衝突試験に用いたモデル部材を示す平面模式図である。
【図10】図10は、実施例2において衝突試験に用いたモデル部材を示す側面模式図である。
【図11】図11は、衝突の際のモデル部材の変位量と、高さ位置との関係を示すグラフである。
【図12】図12は、実施例2において検討に用いた衝突試験に用いた別のモデル部材を示す図であって、(a)はストレート部材の斜視図であり、(b)は拡幅部材の斜視図である。
【図13】図13は、図12(a)のストレート部材の断面形状を示す断面模式図であって、(a)は凹ビードがない例であり、(b)は凹ビードの幅が20mmの例であり、(c)は凹ビードの幅が40mmの例である。
【図14】図14は、実施例2において検討に用いたストレート部材及び拡幅部材を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1a、1b…センターピラー補強材(車両用耐衝突補強材)、2…本体部、3…折曲部、4…側壁部、8…凹ビード、8a…底面部、8b…ビード側壁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形加工された薄板からなる車両用耐衝突補強材であって、
前記車両用耐衝突補強材は、本体部と、前記本体部の幅方向両側に設けた折曲部を介して前記本体部と一体化された一対の側壁部とを少なくとも備え、前記本体部にはその長手方向に沿って前記本体部の幅方向中央に延在する凹ビードが設けられており、
前記凹ビードと前記折曲部との距離を有効幅c’としたとき、前記有効幅c’が下記式(1)を満たすように前記凹ビードが設けられていることを特徴とする耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材。
【数1】
但し、式(1)において、hは前記薄板の厚みであり、bは凹ビードを設ける前の前記本体部の幅であり、Eは前記薄板の弾性率であり、σYPは前記薄板の降伏応力であり、A及びBはそれぞれ定数であって、Aは1.90であり、Bは−1.00である。
【請求項2】
前記凹ビードの深さが5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材。
【請求項3】
前記凹ビードが、底面部及び前記底面部の幅方向両端に立設されたビード側壁部とから構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材。
【請求項4】
前記車両用衝突補強材が自動車のピラー用補強材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材。
【請求項5】
前記車両用衝突補強材が自動車のクロスメンバであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材。
【請求項6】
前記車両用衝突補強材が自動車のフロントメンバのエクステンション部であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材。
【請求項7】
成形加工された薄板からなる車両用耐衝突補強材の製造方法であって、
本体部と、前記本体部の幅方向両側に位置する折曲部と、前記折曲部を介して前記本体部と一体化された一対の側壁部とを少なくとも備えるように前記薄板を成形加工すると共に、前記本体部の長手方向に沿って前記本体部の幅方向中央に凹ビードを設ける工程を具備してなり、
前記凹ビードと前記折曲部との距離を有効幅c’としたとき、前記有効幅c’が下記式(2)を満たすように前記凹ビードを設けることを特徴とする耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材の製造方法。
【数2】
但し、式(2)において、hは前記薄板の厚みであり、bは凹ビードを設ける前の前記本体部の幅であり、Eは前記薄板の弾性率であり、σYPは前記薄板の降伏応力であり、A及びBはそれぞれ定数であって、Aは1.90であり、Bは−1.00である。
【請求項8】
前記凹ビードの深さを5mm以上とすることを特徴とする請求項7に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材の製造方法。
【請求項9】
前記凹ビードを、底面部及び前記底面部の幅方向両端に立設されたビード側壁部とで構成することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材の製造方法。
【請求項1】
成形加工された薄板からなる車両用耐衝突補強材であって、
前記車両用耐衝突補強材は、本体部と、前記本体部の幅方向両側に設けた折曲部を介して前記本体部と一体化された一対の側壁部とを少なくとも備え、前記本体部にはその長手方向に沿って前記本体部の幅方向中央に延在する凹ビードが設けられており、
前記凹ビードと前記折曲部との距離を有効幅c’としたとき、前記有効幅c’が下記式(1)を満たすように前記凹ビードが設けられていることを特徴とする耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材。
【数1】
但し、式(1)において、hは前記薄板の厚みであり、bは凹ビードを設ける前の前記本体部の幅であり、Eは前記薄板の弾性率であり、σYPは前記薄板の降伏応力であり、A及びBはそれぞれ定数であって、Aは1.90であり、Bは−1.00である。
【請求項2】
前記凹ビードの深さが5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材。
【請求項3】
前記凹ビードが、底面部及び前記底面部の幅方向両端に立設されたビード側壁部とから構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材。
【請求項4】
前記車両用衝突補強材が自動車のピラー用補強材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材。
【請求項5】
前記車両用衝突補強材が自動車のクロスメンバであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材。
【請求項6】
前記車両用衝突補強材が自動車のフロントメンバのエクステンション部であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材。
【請求項7】
成形加工された薄板からなる車両用耐衝突補強材の製造方法であって、
本体部と、前記本体部の幅方向両側に位置する折曲部と、前記折曲部を介して前記本体部と一体化された一対の側壁部とを少なくとも備えるように前記薄板を成形加工すると共に、前記本体部の長手方向に沿って前記本体部の幅方向中央に凹ビードを設ける工程を具備してなり、
前記凹ビードと前記折曲部との距離を有効幅c’としたとき、前記有効幅c’が下記式(2)を満たすように前記凹ビードを設けることを特徴とする耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材の製造方法。
【数2】
但し、式(2)において、hは前記薄板の厚みであり、bは凹ビードを設ける前の前記本体部の幅であり、Eは前記薄板の弾性率であり、σYPは前記薄板の降伏応力であり、A及びBはそれぞれ定数であって、Aは1.90であり、Bは−1.00である。
【請求項8】
前記凹ビードの深さを5mm以上とすることを特徴とする請求項7に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材の製造方法。
【請求項9】
前記凹ビードを、底面部及び前記底面部の幅方向両端に立設されたビード側壁部とで構成することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−286351(P2009−286351A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143384(P2008−143384)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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