説明

耐炎化繊維束の製造方法

【課題】静電気による繊維束の収束性低下の抑制と、シリコーン系化合物由来の微粉体発生の抑制を同時に達成可能な、耐炎化繊維束および炭素繊維束の製造方法を提供する。
【解決手段】シリコーン系化合物を含有する油剤組成物を炭素繊維前駆体アクリル繊維束の繊維質量当たり0.1〜3.0質量%付与し、その後耐炎化処理する直前に、該炭素繊維前駆体アクリル繊維束に、更に特定の芳香族エステルを60〜90質量%と、酸化防止剤を1〜10質量%と、250℃で2時間加熱後の残渣率が1.0質量%以下のノニオン系界面活性剤を9〜35質量%とを含有するからなる油剤組成物を繊維質量当たり0.1〜3.0質量%付与し、200〜300℃の酸化性雰囲気中で加熱する耐炎化繊維束の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐炎化繊維束の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を用いて炭素繊維束を製造する方法としては、アクリル繊維の単繊維を数千から数万本束ねた繊維束を、200〜300℃の酸化性雰囲気下で加熱処理(以下、耐炎化処理あるいは耐炎化工程)を行って耐炎化繊維束を得た後、300〜1000℃の不活性ガス雰囲気下で加熱処理(以下、前炭素化処理あるいは前炭素化工程)し、次いで1000℃以上の不活性ガス雰囲気下で加熱処理(以下、炭素化処理あるいは炭素化工程)を行う方法が知られている。
【0003】
この耐炎化処理は発熱を伴う酸化反応であるため、処理時の温度や酸化反応に伴う多量の発熱のために単繊維間に融着現象が発生し易い。この融着現象が発生した耐炎化繊維束の品質は著しく低下し、例えばその後の炭素化工程において毛羽発生や糸切れといった障害が発生する。
【0004】
この融着を回避するためには、炭素繊維前駆体アクリル繊維束に付与する油剤が重要であることが知られており、多くの油剤が検討されてきている。その中でも、高い耐熱性を有し融着を効果的に抑えることから、シリコ−ン系化合物含有油剤がよく使用されている(例えば特許文献1)。
【0005】
炭素繊維前駆体アクリル繊維束を耐炎化繊維束に転換する耐炎化工程においては、ヒ−タ−などで加熱した酸化性気体をファンにより耐炎化処理炉内に循環させている。この場合、シリコ−ン系化合物含有油剤の一部は耐炎化工程中に酸化性気体中へ揮発し、揮発したシリコ−ン系化合物は耐炎化炉内に長期間滞留することになる。
【0006】
また、耐炎化炉中に長時間滞在化したシリコ−ン系化合物は固化し、それが微粉体として処理中の繊維束にも付着する。該微粉体の付着点は、その後の高温炭素化工程で毛羽の発生や単糸切れの発生起点となり、得られる炭素繊維の性能を著しく低下させる。
【0007】
シリコーン系化合物以外の油剤成分やアクリロニトリル系共重合体成分由来のタール成分、粉塵なども炭素繊維の強度を低下させる要因とはなるが、シリコーン系化合物に起因した前記シリコーン系化合物の微粉体による影響が特に顕著である。
【0008】
したがって、長期にわたって耐炎化処理工程を稼動させ続けることは困難であり、時に稼動を停止して炉内清掃を行う必要がある。しかし、粒径が数μm程度の微粒子を完全に除去することは困難であり、特に大型設備の場合には炉内清掃に要する人員、時間を多大に費やすこととなる。
【0009】
また炉内を清掃した後の再稼動時の初期に得られる耐炎化繊維束の単繊維表面には、微粉体が多く存在し、その耐炎繊維束を炭素化して得られる炭素繊維の強度が著しく低下する現象が確認されている。
【0010】
またシリコ−ン系油剤を用いた場合、シリコーン系化合物の持つ撥水性のため静電気が発生しやすい。このため、製造工程中に配された金属製のローラー等において静電気が発生し、繊維束の収束性が低下し、ローラーに巻き付きが発生することも課題であった。
【0011】
特許文献2には静電気を抑制するために、炭素繊維前駆体アクリル繊維束にシリコーン系油剤を付着し、かつ含水率を10質量%以上となるように水分量を調節し、水分の発散を防止するために高湿度下に保存しながら耐炎化処理炉に供給し、焼成することが提案されている。
しかしながら、200〜300℃の雰囲気下で加熱処理される耐炎化処理炉内に供給された直後には水分の蒸発が起こり、耐炎化工程における繊維束の収束性を維持し、ローラーへの巻き付きを抑制するには十分ではなかった。
【0012】
また特許文献3では、耐炎化処理炉内におけるシリコーン系化合物由来の微粉体生成の抑制と、静電気による繊維束の収束性低下を抑制するために、シリコーン系化合物と非シリコーン系化合物をブレンドして紡糸工程油剤として使用している。
【0013】
しかし、紡糸工程用の油剤は、通常水膨潤状態の繊維束に付与するため、繊維内部へ浸透しやすい。繊維内部に浸透した非シリコーン化合物は、シリコーン系化合物に比べて耐熱性が劣るため、炭素繊維に転換する際に欠陥になりやすく、得られる炭素繊維の品質が低下する懸念がある。
また、シリコーン系化合物と非シリコーン系化合物をブレンドすると、耐炎化処理炉に投入するまでの時間の経過とともに、シリコーン系化合物と非シリコーン系化合物のマイグレーションが起こり、炭素繊維前駆体アクリル繊維束への均一付着性を保ち難い。さらに、繊維表面付近に存在するシリコーンは耐炎化において、耐炎化工程で酸化性雰囲気中へ揮発しやすい。
【0014】
【特許文献1】特開平11−12855号公報
【特許文献2】特開昭61−132632号公報
【特許文献3】特開2000−199183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、静電気による繊維束の収束性低下の抑制と、シリコーン系化合物由来の微粉体発生の抑制を同時に達成可能な、耐炎化繊維束および炭素繊維束の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
即ち本発明の要旨は、シリコーン系化合物を含有する油剤組成物を炭素繊維前駆体アクリル繊維束の繊維質量当たり0.1〜3.0質量%付与し、その後耐炎化処理する直前に、該炭素繊維前駆体アクリル繊維束に、更に下記混合物Aからなる油剤組成物を繊維質量当たり0.1〜3.0質量%付与し、200〜300℃の酸化性雰囲気中で加熱する耐炎化繊維束の製造方法である。
混合物A:
下記(1)で示される芳香族エステルを60〜90質量%と、酸化防止剤を1〜10質量%と、250℃で2時間加熱後の残渣率が1.0質量%以下のノニオン系界面活性剤を9〜35質量%とを含有する。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数7〜21のアルキル基であり、A及びAは、それぞれ独立してエチレン基又はプロピレン基であり、m及びnは、それぞれ独立して1〜5の整数を表す)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、静電気による繊維束の収束性低下の抑制と、シリコーン系化合物由来の微粉体発生の抑制を同時に達成可能となり、耐炎化工程での操業性、工程通過性が著しく改善され、また、同時に物性や品質が優れるとともに安定である耐炎化繊維束および炭素繊維束を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の耐炎化繊維束の製造方法は、シリコーン系化合物を含有する油剤組成物を炭素繊維前駆体アクリル繊維束の繊維質量当たり0.1〜3.0質量%付与し、その後耐炎化処理する直前に、該炭素繊維前駆体アクリル繊維束に、更に混合物Aからなる油剤組成物を繊維質量当たり0.1〜3.0質量%付与し、200〜300℃の酸化性雰囲気中で加熱する。
【0019】
以下、本発明の耐炎化繊維束の製造方法を順次説明する。
(紡糸)
本発明の炭素繊維前駆体アクリル繊維束は、アクリルニトリル系重合体を、有機溶剤あるいは無機溶剤に溶解し、通常用いられる方法にて紡糸されるもので、紡糸方法、条件には特に制限はない。ここで、アクリロニトリル系重合体としては特に制限はないが、アクリロニトリル85質量%以上、より好ましくは90質量%以上を含有する重合体を使用する。このアクリロニトリル系重合体としては、アクリロニトリルの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合重合体を使用し得る。アクリロニトリル共重合体はアクリロニトリルと共重合しうる単量体とアクリロニトリルとの共重合生成物であり、アクリロニトリルと共重合しうる単量体としては、メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、プロピル(メタ)アクリレ−ト、ブチル(メタ)アクリレ−ト、ヘキシル(メタ)アクリレ−ト等の(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等の酸類およびそれらの塩類やマレイン酸イミド、フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、更にはスチレンスルホン酸ソ−ダ、アリルスルホン酸ソ−ダ、β−スチレンスルホン酸ソ−ダ、メタアリルスルホン酸ソ−ダ等のスルホン基を含む重合性不飽和単量体、2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン等のピリジン基を含む重合性不飽和単量体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
重合法については、従来公知の溶液重合、懸濁重合、乳化重合などを適用することができる。アクリル系重合体溶液に使用される溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、塩化亜鉛水溶液、硝酸などを使用することができる。
【0021】
紡糸方法には、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法などを採用できる。紡糸して得られた凝固糸は一次延伸することが好ましい。一次延伸は、凝固糸を凝固浴中または延伸浴中で延伸してもよいし、一部空中延伸した後に、浴中で延伸してもよい。浴中で延伸する際は通常50〜98℃の延伸浴中で1回あるいは2回以上の多段に分割して行うことができる。その前後、あるいは同時に洗浄を行ってもよい。
【0022】
(シリコーン系化合物を含有する油剤組成物の付与)
次に、シリコーン系化合物を含む油剤組成物を、紡糸工程用の油剤として炭素繊維前駆体アクリル繊維束に付与する工程について説明する。シリコーン系化合物を含有する油剤組成物は、紡糸工程用油剤として、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の紡糸工程での収束性、柔軟性、平滑性および帯電防止性の付与、焼成工程での収束性の付与、および融着防止のために、炭素繊維前駆体アクリル繊維束に付与される。
【0023】
炭素繊維前駆体アクリル繊維束に均一に付与するために、シリコーン系化合物を含む油剤組成物は、浴中で延伸、洗浄後の水膨潤状態にある繊維束に対して付与することが好ましい。油剤組成物の付与方法は特に制限はないが、油剤組成物と水を含む処理液が入った油剤処理槽に炭素繊維前駆体アクリル繊維束を浸漬して付着させる方法が、工業的観点から好ましい。
【0024】
炭素繊維前駆体アクリル繊維束への油剤組成物の付着量は、乾燥繊維束に対して油剤組成物が0.1〜3.0質量%付着するように、前記処理液における油剤組成物の濃度を調整したり、ニップロールなどにより処理液を絞ることにより調整することが望ましい。
【0025】
本発明に用いるシリコーン系化合物としては、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン等のシリコーンオイルが挙げられるが、特に好ましくはアミノ変性シリコーンである。アミノ変性シリコーンとしては、側鎖1級アミノ変性シリコーン、側鎖1,2級アミノ変性シリコーン、あるいは両末端アミノ変性シリコーンが挙げられる。
【0026】
シリコーンオイルの粘度は、25℃で測定して50センチストークス(以下cSt)以上3,000cSt以下、さらには2,000cSt以下のものを用いることが好ましい。3,000cSt以下であれば水中への分散性や、あるいは溶解性の優れた溶媒が存在するので、繊維の表面に均一に付与することができる。またこの場合同時に油剤原体の耐熱性も良好となる。また、50cSt以上であれば耐炎化工程で容易に分解、揮発して単繊維間の融着防止効果が失われることがない。
【0027】
シリコーンオイルの官能基当量(アミン当量やエポキシ当量など)は、1000g/mol以上10000g/mol以下が好ましく、さらに好ましくは2000g/mol以上8000g/mol以下である。1000g/mol以上であれば、200℃以上の高温下においてシリコーン骨格が容易に分解することがないので、耐熱性に優れる。また、10000g/mol以下であれば、炭素繊維の物性、特に耐炎化工程における融着に起因するストランド強度の低下をもたらすことがない。
【0028】
紡糸工程用の油剤組成物を水分散液として用いる場合は、水にシリコーン化合物を細かい粒子、例えば0.1〜数10μmの大きさに均一に分散させるため、界面活性剤を用いることができる。界面活性剤にはイオン型、非イオン型があり、イオン型はアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤がある。本発明に用いる界面活性剤は、焼成工程で欠陥の形成点となる金属を含まない、非イオン型界面活性剤が好ましく用いられる。
【0029】
非イオン型界面活性剤としては、例えば高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物が挙げられ、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物やポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物が好ましく、中でもポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物が更に好ましい。ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物の構造は、ブロック共重合型ポリエーテルが好ましい。
【0030】
油剤組成物中のシリコーン化合物の熱劣化を防止させることを目的として、油剤組成物に酸化防止剤を添加しても良い。ここで、酸化防止剤としては公知の酸化防止剤を用いることができる。具体的には、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)などが好ましく用いられ、これらは単独で用いても組み合わせで用いても良い。
【0031】
この酸化防止剤は、紡糸工程用の油剤組成物全体の質量に対し、1〜10質量%含有することが適当である。1質量%以上であれば、耐熱性向上効果が十分に得られ、また、10質量%以下であれば、該油剤組成物の乳化安定性が損なわれることもなく、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の焼成工程において酸化防止剤の残渣が炭素繊維に残存することもない。また、10質量%程度であれば耐熱性の向上効果は十分得られる。
【0032】
その他、紡糸工程用の油剤組成物には、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維の特性向上のために帯電防止剤、浸透剤、消泡剤、防腐剤などを適宜配合してもよい。
【0033】
次に、紡糸工程用の油剤組成物を付与した繊維束を、加熱ローラーなどによって乾燥緻密化する。乾燥温度、時間は適宜選択することができるが、120℃〜190℃の加熱ローラーにより乾燥緻密化することが好ましい。加熱ローラーの温度が120℃未満の場合、加熱ローラーの本数を多くする必要があり、また、加熱ローラーの温度が190℃を超える場合は、単繊維間融着が生じ、炭素繊維の性能が低下する傾向がある。
【0034】
高倍率の延伸が可能であること、より最終紡速を高くすることができること、得られる繊維の緻密性や配向度向上にも寄与することから、上記乾燥緻密化により得られた繊維束を乾熱延伸またはスチーム延伸することが好ましい。乾熱延伸は2本の熱ロール間で行っても良いし、更にその熱ロール間に設置したホットプレートに繊維束を接触させて行っても良い。スチーム延伸は、加圧水蒸気雰囲気中で延伸を行う加圧水蒸気延伸法により行うことが好ましい。
【0035】
(混合物Aからなる油剤組成物の付与)
次に、得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束を耐炎化処理する直前に、耐炎化工程用の油剤として、混合物Aからなる油剤組成物を繊維質量当たり0.1〜3.0質量%付与する。
【0036】
本発明の混合物Aからなる油剤組成物は、式(1)で示される芳香族エステルを60〜90質量%と、酸化防止剤を1〜10質量%と、250℃で2時間加熱後の残渣率が1.0質量%以下のノニオン系界面活性剤を9〜35質量%とを含有する。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数7〜21のアルキル基であり、A及びAは、それぞれ独立してエチレン基又はプロピレン基であり、m及びnは、それぞれ独立して1〜5の整数を表す)
【0037】
式(1)で示される芳香族エステルの耐炎化工程における高い耐熱性と、酸化防止剤による芳香族エステルの耐熱性向上効果により、静電気による繊維束の収束性低下を効果的に抑制することができる。
式(1)で示される芳香族エステルは、続く前炭素化工程でほとんど分解し、タール成分を発生させることがない。さらに、250℃で2時間加熱後の残渣率が1.0質量%以下のノニオン系界面活性剤は、式(1)で示される芳香族エステルや酸化防止剤を水に細かく分散させ、炭素繊維前駆体アクリル繊維束に均一に付着させることができるとともに、耐炎化工程においてほぼ完全に分解し、タール成分を発生させることがない。
【0038】
また、シリコ−ン系化合物を含有する油剤組成物を紡糸工程用の油剤として付与した炭素繊維前駆体アクリル繊維束に、耐炎化処理する直前に、耐炎化工程用の油剤として混合物Aからなる油剤組成物を付与するため、繊維内部へ浸透し難い。従って過剰に付与しなくても耐炎化工程の繊維束の収束性を向上させることが可能であり、炭素繊維に転換する際に欠陥を発生させることがない。
【0039】
また、シリコーン系化合物を含有する油剤組成物と、混合物Aからなる油剤組成物は、マイグレーションを起こすことなく、シリコ−ン系化合物が付着した炭素繊維前駆体アクリル繊維束の表面を、混合物Aからなる油剤組成物でコーティングするため、耐炎化工程でシリコーン系化合物が酸化性雰囲気中へ揮発することを抑制することができる。
【0040】
式(1)のR1部またはR2部を形成する炭素数7〜21のアルキル基としては、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸から選ばれることが好ましい。また、m、nが上述の範囲以内であれば、耐熱性、静電気による繊維束の収束性を満足することができる。A1及びA2は、複数存在する場合エチレン基とプロピレン基が混在していても良い。なお、式(1)で示される芳香族エステルは、複数の化合物の混合物である場合もあり、したがって、m及びnは整数でない場合もあり得る。
【0041】
混合物Aにおける式(1)で示される芳香族エステルの含有率は60〜90質量%の範囲内である。60質量%以上であれば、耐炎化工程の収束性向上と、炭素繊維に転換する際の欠陥を抑制と、耐炎化工程でシリコーンの酸化性雰囲気中への揮発を抑制する効果を得ることができる。また、90質量%以下であると、前記芳香族エステルを水に細かく分散させることが可能で、炭素繊維前駆体アクリル繊維束へ均一に付着させることできる。含有率の範囲は、好ましくは65〜80質量%である。
【0042】
混合物Aにおける酸化防止剤としては、前述の紡糸工程用の油剤組成物の場合と同様に公知の酸化防止剤を用いることができる。
本発明の混合物Aにおける酸化防止剤の含有率は1〜10質量%の範囲内である。1質量%以上であれば、前記芳香族エステルの耐熱性向上効果を得ることができる。また10質量%以下であれば、酸化防止剤が加熱残渣として耐炎化糸や炭素化糸に残存することやエマルションの安定性が低下することを防ぐことができる。
【0043】
混合物Aにおけるノニオン系界面活性剤は、250℃で2時間加熱後の残渣率が1.0質量%以下である。好適な例としては、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物などが挙げられ、疎水部のアルキル鎖は直鎖状でも分岐していてもよい。また、これらは単独でも組み合わせでも良い。このノニオン系界面活性剤のHLBは6〜16であることが望ましい。この様なノニオン系界面活性剤の、例えば、親水部オキシアルキレン単位の繰り返し数、オキシアルキレン単位の種類やオキシアルキレン単位の繰り返しの形態は、混合物Aの水分散物が安定なエマルションとなるように適宜選択することができる。
【0044】
本発明の混合物Aにおけるノニオン系界面活性剤の含有率は、9〜35質量%の範囲である。9質量%以上であればエマルションの安定性が低下して炭素繊維前駆体アクリル繊維束への付着斑が生じることがない。また、35質量%以下であれば、耐炎化工程の収束性向上と、炭素繊維に転換する際の欠陥の抑制と、シリコーン化合物の酸化性雰囲気中への揮発を抑制する効果とを得ることができる。ノニオン系界面活性剤の含有率は、好ましくは15〜30質量%である。
【0045】
その他、本発明の上記混合物Aからなる油剤組成物には、炭素繊維前駆体アクリル繊維束および炭素繊維の特性向上のために帯電防止剤、浸透剤、消泡剤、防腐剤などを適宜配合してもよい。
【0046】
炭素繊維前駆体アクリル繊維束への混合物Aからなる油剤組成物の付与は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を耐炎化処理する直前、つまり耐炎化処理炉に供給する直前で実施する。油剤組成物の付与方法は、一般に用いられているように、油剤組成物と水を含む処理液が入った油剤処理槽に炭素繊維前駆体アクリル繊維束を浸漬し、該油剤組成物を付着させる方式が、工業的観点から好ましい。このとき、油剤組成物は処理液中で、例えば0.1〜0.3μmの大きさに均一に分散させることが、均一に付着させるうえで好ましい。
【0047】
炭素繊維前駆体アクリル繊維束への、混合物Aからなる油剤組成物の付着量は、乾燥繊維束に対して、油剤組成物が0.1〜3.0質量%含まれるように、前記処理液における油剤組成物の濃度を調整したり、ニップロールなどにより処理液を絞ることにより調整することが望ましい。また、混合物Aからなる油剤組成物を付与した後、炭素繊維前駆体アクリル繊維束に含まれる水を、乾燥ロール等を用いて乾燥させて、その後耐炎化処理してもよい。
【0048】
(耐炎化)
混合物Aからなる油剤組成物を付与した後、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を耐炎化処理して耐炎化繊維束を得るための条件としては、200〜300℃の酸化性雰囲気中、緊張あるいは延伸条件下で、好ましくは耐炎化処理後の耐炎化繊維の密度が1.30g/cm以上になるまで加熱するのがよい。酸化性雰囲気は、酸素を含む気体であれば特に制限はないが、工業生産の面で、空気が経済面、安全面で特に優れている。また、酸化能力を調整する目的で、酸化性雰囲気中の酸素濃度を変更することもできる。
【0049】
耐炎化繊維の密度は1.30g/cm以上であれば耐炎化の進行度が十分であり、後に行う不活性ガス雰囲気下での前炭素化および炭素化処理などの高温加熱処理の際に単糸間融着などを起こすことがない。
【0050】
耐炎化処理を行った後、不活性ガス雰囲気下で前炭素化、あるいは炭素化処理して炭素繊維束とする場合には、耐炎化繊維の密度が1.40g/cm以下であれば、耐炎化繊維内部へ過度の酸素が導入されることがないので、最終的な炭素繊維の内部構造も緻密になり、性能の優れた炭素繊維を得ることができる。
一方、耐炎化繊維束を加工し、さらに高温で焼成して耐熱用途の製品を作る場合には、耐炎化繊維束の密度は1.40g/cmを越えても良い。耐炎化繊維の密度が1.50g/cm以下であれば、耐炎化処理に要する時間が長くなることもない。
【0051】
耐炎化処理における加熱方法、炉の構造としては、熱風循環方式、多孔板表面を有する固定熱板方式などによることができるが、これ以外でも適用可能である。
熱風循環方式の耐炎化処理炉は、耐炎化工程の工業生産において一般に用いられているが、これは熱風循環方式で加熱した酸化性気体を吹き付けることにより、数千本のフィラメント内に酸素と熱を均一に供給し、さらに酸化反応で生じた熱を効率良く取り除くことが可能であり、安定した耐炎化反応を進行させることができる。
【0052】
(炭素化)
耐炎化処理により得られた耐炎化繊維束は、不活性雰囲気下で加熱することによって炭素化する。炭素化は、最高温度が550〜800℃の不活性雰囲気中、緊張下で前炭素化処理を行い、次いで1200〜3000℃の不活性雰囲気中で炭素化することができる。
ここで、前炭素化のうち300〜500℃の温度領域において、及び炭素化のうち1000〜1200℃の温度領域において、500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下の昇温速度とすることが好ましい。
【0053】
不活性雰囲気については、窒素、アルゴン、ヘリウム、などを採用できるが、経済性の面から窒素が望ましい。
【0054】
かくして得られた炭素繊維束または黒鉛化繊維束は、従来公知の電解液中で電解酸化処理を施したり、気相又は液相での酸化処理を施したりすることによって、複合材料における炭素繊維とマトリックス樹脂との親和性や接着性を向上させることが好ましい。さらに、必要に応じて従来公知の方法によりサイジング剤を付与することができる。
【0055】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0056】
<ノニオン系界面活性剤加熱残渣>
アルミシャーレ(直径60mm、深さ10mm)にノニオン系界面活性剤2.0gを精秤し、空気中250℃で2時間加熱した後の残分を精秤し、残渣率を算出する。
【0057】
<炭素繊維前駆体アクリル繊維束及び耐炎化繊維束の含有シリコーン化合物量(含有Si量)>
測定サンプルは、縦2cm、横4cm、幅0.5cmのアクリル樹脂製板に繊維束を隙間のない様に横方向に均一に巻く。このとき、繊維束の巻き長は同一とする。その後、蛍光X線分析方法により蛍光X線強度を測定する。繊維束への油剤の付着斑、あるいは測定誤差などを考慮し、1つの測定サンプルについて、測定数はn=100とし、その平均値を求める。
炭素繊維前駆体アクリル繊維束の含有シリコーン量(蛍光X線強度:単位cps)をA、耐炎化繊維束の含有Si量をAとし、下記式(2)で計算して得られた値を「Si残存率」とする。
「Si残存率(%)」=A/A×100 ・・・式(2)
なお蛍光X線強度の測定には、理学電機/型式ZSXを用いた。
【0058】
<炭素繊維前駆体アクリル繊維束の含水率測定>
繊維束を、105℃で1.5時間乾燥処理し、その乾燥前後の質量を測定(乾燥前質量W、乾燥後質量W)し、下記式(3)に従って「含水率」を計算する。
「含水率(%)」=(W−W)/W×100 ・・・式(3)
【0059】
<炭素繊維前駆体アクリル繊維束の油剤組成物の付着量>
メチルエチルケトンを用いたソックスレー抽出法により、油剤組成物付与後の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の油剤組成物付着量を測定した。抽出時間は1時間とした。
【0060】
<樹脂含浸ストランド特性>
炭素繊維のストランド特性(強度,弾性率)は、JIS−R−7601に準じて測定したエポキシ樹脂含浸ストランドの物性であり、測定回数n=10の平均から求める。
【0061】
<油剤組成物の処理液の作成>
紡糸工程用の油剤組成物は、主剤(ベースオイル)と酸化防止剤、ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンステアリルエーテル[EO(エチレンオキサイド):12モル、HLB:13.9])を混合したものにイオン交換水を加え、ホモミキサーで乳化し、さらに乳化粒径が0.3μm程度になるよう高圧ホモジナイザーで圧力を調整し二次乳化を行うことによって、油剤組成物を水に分散させた処理液を得る。
耐炎化工程用の油剤組成物は、主剤(ベースオイル)と酸化防止剤、ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル[EO(エチレンオキサイド)ユニット数:10,HLB:14.0、加熱残渣(250℃/2時間加熱後の質量):0.4質量%]を混合したものにイオン交換水を加え、ホモミキサーで乳化し、さらに乳化粒径が0.2μm程度になるよう高圧ホモジナイザーで圧力を調整し二次乳化を行うことによって、油剤組成物を水に分散させた処理液を得る。
【0062】
<炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造>
アクリロニトリル共重合体を、共重合体濃度21質量%となるようにジメチルアセトアミドに溶解して紡糸原液とする。この紡糸原液を、12000ホールのノズルを用いて濃度70質量%、温度35℃のジメチルアセトアミド水溶液中に吐出して湿式紡糸する。次に、凝固繊維を空中にて1.5倍の延伸を施し、沸水中で3倍延伸しながら洗浄、脱溶剤する。
その後、表1(実施例1)に示した紡糸工程用の油剤組成物の水分散液が入った油剤処理槽に凝固糸を浸漬し、紡糸工程油剤を付着させた後、140℃の加熱ローラーにて乾燥緻密化し、加圧水蒸気中にて3倍延伸し、単繊維繊度1.2dtexの炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得た。紡糸工程油剤を付与した炭素繊維前駆体アクリル繊維束の含有Si量(蛍光X線強度:単位cps)は、5762cpsであった。
【0063】
<耐炎化繊維束の製造>
その後、表1(実施例1)に示した耐炎化工程油剤の水分散液が入った油剤処理槽に炭素繊維前駆体アクリル繊維束を浸漬し、耐炎化工程油剤を付与した後、ニップロールによる処理液絞り工程(以後、ニップ処理)を通過させ、直ちに空気中230〜260℃で緊張下に加熱し密度1.35g/cmの耐炎化繊維束を得た。この耐炎化繊維束の含有Si量(蛍光X線強度:単位cps)は、5097cpsであった。また式(2)によって計算されるSi残存率は88.5%であった。
【0064】
<炭素繊維束の製造>
得られた耐炎化繊維束を、窒素雰囲気中、700℃で緊張下に加熱し前炭素化した。この前炭素化処理での300〜500℃での昇温速度は200℃/分であった。
次いで、窒素雰囲気中1300℃で緊張下に加熱し炭素化繊維束とした。この炭素化処理での1000〜1200℃での昇温速度は400℃/分であった。
【0065】
得られた炭素化繊維束を表面処理後、サイジング剤を付与し、炭素繊維束を得た。焼成工程中、単繊維切れ、毛羽の発生はほとんど認められなかった。得られた炭素繊維束のストランド特性を、他の測定値(繊維束の含水率、含有Si量など)とともに、表1に示す。
【0066】
<実施例2〜6>
表1に示した組成で、紡糸工程用の油剤組成物、および耐炎化用の油剤組成物付与を行った。それ以外は、実施例1と同様の方法で炭素繊維束を製造し、評価した。
いずれも焼成工程中、単繊維切れ・毛羽の発生はほとんど認められなかった。得られた炭素繊維束のストランド特性を、他の測定値(繊維束の含水率、含有Si量など)とともに、表1に示す。
【0067】
<実施例7〜8>
表1に示した条件で、紡糸工程用の油剤組成物、および耐炎化用の油剤組成物付与を行い、かつニップ処理後に熱ロールによる乾燥処理を行う以外は、実施例1と同様の方法で炭素繊維束を製造し、評価した。いずれも焼成工程中、単繊維切れ・毛羽の発生はほとんど認められなかった。
得られた炭素繊維束のストランド特性を、他の測定値(繊維束の含水率、含有Si量など)とともに、表1に示す。
【0068】
<比較例1〜4>
紡糸工程油剤の付与条件を表1に記載の組成とし、かつ、耐炎化工程油剤を付与しなかった以外は、実施例1と同様の方法で炭素繊維束を製造し、評価した。
比較例1〜3は、焼成工程中での繊維束の収束性が実施例に比べて低下しており、また毛羽や束切れが見受けられ、得られた炭素繊維束の品質も実施例より劣った。比較例4は焼成工程中での繊維束の収束性が実施例と同等であったが、得られた炭素繊維束の品質が実施例より劣った。
【0069】
<比較例5〜10>
表1に示した条件で、紡糸工程油剤付与、および耐炎化工程油剤付与を行った。それ以外は、実施例1と同様の方法で炭素繊維束を製造し、評価した。
比較例5〜8は焼成工程中での繊維束の収束性は、実施例に比べて低下しており、また毛羽や束切れが見受けられ、得られた炭素繊維の品質も実施例より劣った。比較例9〜10は焼成工程中での繊維束の収束性は、実施例と同等であったが、得られた炭素繊維の品質は実施例より劣った。
【0070】
なお表1の紡糸工程油剤および耐炎化工程油剤の各成分(主剤、添加剤、界面活性剤)について、
成分A(ベースオイル)
両末端アミノ変性シリコーン(25℃での粘度450cSt、アミノ当量5700)、
成分B(ベースオイル)
側鎖1,2級アミノ変性シリコーン(25℃での粘度250cSt、アミノ当量5200)、
成分C(ベースオイル)
側鎖1級アミノ変性シリコーン(25℃での粘度110cSt、アミノ当量5000)、
成分D(ベースオイル)
ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物のジラウリルエステル。m=1、n=1、
成分E(ベースオイル)
ビスフェノールAのエチレンオキシド4モル付加物のジラウリルエステル。m=2、n=2、
成分F(ベースオイル)
ビスフェノールAのエチレンオキシド12モル付加物のジラウリルエステル。m=6、n=6、
成分G(ベースオイル)
ポリブテン、平均分子量約1350、
成分H(酸化防止剤)
ペンタエリスリチル‐テトラキス〔3‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、
成分I(界面活性剤)
ポリオキシエチレンステアリルエーテル[EO(エチレンオキサイド):12モル、HLB:13.9、加熱残渣(250℃/2時間加熱後の質量):8.0質量%]、
成分J(界面活性剤)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル[EO(エチレンオキサイド)ユニット数:10,HLB:14.0、加熱残渣(250℃/2時間加熱後の質量):0.4質量%]、
成分K(界面活性剤)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油[EOユニット数:10,HLB:12.5、加熱残渣(250℃/2時間加熱後の質量):15質量%]、
である。
【0071】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン系化合物を含有する油剤組成物を炭素繊維前駆体アクリル繊維束の繊維質量当たり0.1〜3.0質量%付与し、その後耐炎化処理する直前に、該炭素繊維前駆体アクリル繊維束に、更に混合物Aからなる油剤組成物を繊維質量当たり0.1〜3.0質量%付与し、200〜300℃の酸化性雰囲気中で加熱する耐炎化繊維束の製造方法。
混合物A:
下記(1)で示される芳香族エステルを60〜90質量%と、酸化防止剤を1〜10質量%と、250℃で2時間加熱後の残渣率が1.0質量%以下のノニオン系界面活性剤を9〜35質量%とを含有する。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数7〜21のアルキル基であり、A及びAは、それぞれ独立してエチレン基又はプロピレン基であり、m及びnは、それぞれ独立して1〜5の整数を表す)

【公開番号】特開2008−190056(P2008−190056A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22881(P2007−22881)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】