説明

耐熱性粘着テープ

【課題】 耐熱性粘着テープにより封止工程での樹脂漏れを好適に防止すると共に、該耐熱性粘着テープの剥離の際には、モールドした封止樹脂の剥がれや破損、或いは糊残りを防止して、歩留まりの向上が図れる耐熱性粘着テープを提供する。
【解決手段】 本発明の耐熱性粘着テープは、基材層と、該基材層上に設けられた粘着剤層を備え、前記粘着剤層は、紫外線硬化性化合物を含む紫外線硬化型粘着剤により構成され、前記粘着剤層に紫外線を照射し、更に200℃で1時間加熱した後にJIS Z0237に準拠して測定した前記粘着剤層の粘着力が1N/19mm幅以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの実装技術に於いて、CSP(Chip Size/Scale Package)技術が注目されている。この技術のうち、QFN(Quad Flat Non−leaded package)に代表されるリード端子がパッケージ内部に取り込まれた形態のパッケージは、小型化と高集積の面で特に注目されるパッケージ形態のひとつである。この様なQFNの製造方法のなかでも、近年では複数のQFN用チップをリードフレームのパッケージパターン領域のダイパッド上に整然と配列し、金型のキャビティ内で封止樹脂にて一括封止した後、切断によって個別のQFN構造物に切り分けることにより、リードフレーム面積あたりの生産性を飛躍的に向上させる製造方法が、特に注目されている。
【0003】
この様な、複数の半導体チップを一括封止するQFNの製造方法に於いては、樹脂封止時のモールド金型によってクランプされる領域はパッケージパターン領域より更に外側に広がった樹脂封止領域の外側だけである。従って、パッケージパターン領域、特にその中央部に於いては、アウターリード面をモールド金型に十分な圧力で押さえることができない。この為、封止樹脂がアウターリード側に漏れ出すのを抑えることが非常に難しく、QFNの端子等が樹脂で被覆されるという問題が生じ易い。
【0004】
前記の様なQFNの製造方法に対しては、リードフレームのアウターリード側に粘着テープを貼り付け、この粘着テープの自着力(マスキング)を利用したシール効果により、樹脂封止時のアウターリード側への樹脂漏れを防ぐ製造方法が特に効果的と考えられる。
【0005】
例えば、下記特許文献1では、50〜250℃に於ける線熱膨張係数1.0×10−5〜3.0×10−5/Kの基材層と、厚さ10μm以下の粘着剤層とから構成される耐熱性粘着テープを用いることにより、封止工程での樹脂漏れを好適に防止しながら、しかも貼着したテープが一連の工程で支障を来たしにくい半導体装置の製造方法が開示されている。
【0006】
前記製造方法に於いては、封止工程後の任意の段階で耐熱性粘着テープが剥離される。従って、耐熱性粘着テープが強粘着力を有する場合、剥離が困難になるだけでなく、場合によっては剥離の際の応力によって、モールドした封止樹脂の剥がれや破損、あるいは耐熱性粘着テープの粘着剤層の一部がパッケージ裏面に付着する場合がある。従って、耐熱性粘着テープの粘着剤層が、封止樹脂の樹脂漏れを抑制できる粘着力以上に強粘着性であることはむしろ好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−184801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題点に基づきなされたものであり、その目的は、封止工程での樹脂漏れを好適に防止すると共に、剥離の際には、モールドした封止樹脂の剥がれや破損、或いは糊残りを防止して、歩留まりの向上が図れる耐熱性粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成すべく、耐熱性粘着テープの物性、材料等について鋭意研究した。その結果、放射線硬化型粘着剤を含み構成される粘着剤層を備えた耐熱性粘着テープを使用し、且つ封止樹脂の封止工程前にリードフレーム側から紫外線照射を行い、粘着剤層に紫外線による硬化反応を誘起させることにより粘着力を低下させることで、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、基材層と、該基材層上に設けられた粘着剤層を備える耐熱性粘着テープであって、
前記粘着剤層は、紫外線硬化性化合物を含む紫外線硬化型粘着剤により構成され、
前記粘着剤層に紫外線を照射し、更に200℃で1時間加熱した後にJIS Z0237に準拠して測定した前記粘着剤層の粘着力が1N/19mm幅以下である。
【0011】
前記粘着剤層を200℃で1時間加熱した後にJIS Z0237に準拠して測定した前記粘着剤層の粘着力が5N/19mm幅以下であることが好ましい。
【0012】
前記基材層の線熱膨張係数が1.0×10−5〜3.0×10−5/Kであることが好ましい。
【0013】
前記紫外線硬化性化合物の配合量は、前記紫外線硬化型粘着剤を構成する粘着剤100重量部に対し5〜500重量部であることが好ましい。
【0014】
前記粘着剤がアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤であることが好ましい。
【0015】
前記粘着剤が架橋剤をさらに含むことが好ましい。
【0016】
前記架橋剤の含有量は、前記アクリル系ポリマー100重量部に対し0.1〜15重量部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、封止樹脂による半導体チップの封止前に、リードフレームに貼着している耐熱性粘着テープの粘着剤層に予め放射線を照射することにより、該粘着剤層の粘着力を低下させておくので、耐熱性粘着テープにより封止工程での樹脂漏れを好適に防止すると共に、該耐熱性粘着テープの剥離の際には、モールドした封止樹脂の剥がれや破損、糊残りを防止することができる。即ち、本発明の耐熱性粘着テープによれば、歩留まりを向上させて半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明の一実施形態に於けるリードフレームの一例を示す図であり、同図(a)は正面図、同図(b)は要部拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態に於ける耐熱性粘着テープをリードフレームに貼り合わせた状態を示す図であり、同図(a)は側面図、同図(b)は正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に於ける封止工程の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、図を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にする為に拡大又は縮小等して図示した部分がある。
【0020】
本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、図1(a)〜1(d)に示すように、耐熱性粘着テープ20の貼着工程と、半導体チップ15をボンディングする搭載工程と、ボンディングワイヤー16による結線工程と、耐熱性粘着テープ20に放射線を照射する放射線照射工程と、封止樹脂17による封止工程と、耐熱性粘着テープ20の剥離工程とを有する。
【0021】
前記貼着工程は、図1(a)に示すように、放射線硬化型粘着剤を含み構成される粘着剤層を備えた耐熱性粘着テープ20を、リードフレーム10のアウターパッド側に貼り合わせる工程である。耐熱性粘着テープ20の詳細については、後述する。
【0022】
リードフレーム10とは、例えば銅等の金属を素材としてQFNの端子パターンが刻まれたものであり、その電気接点部分には、銀、ニッケル、パラジウム、金等の素材で被覆(めっき)されている場合もある。リードフレーム10の厚みは、100〜300μmが一般的である。
【0023】
リードフレーム10は、ダイシングし易い様に、個々のQFNの配置パターンが整然と並べられているものが好ましい。例えば図2に示すように、リードフレーム10上に縦横のマトリックス状に配列された形状等は、マトリックスQFNあるいはMAP−QFN等と呼ばれ、もっとも好ましいリードフレーム形状のひとつである。
【0024】
前記搭載工程は、図1(b)に示すように、アウターパッド側(図の下側)に耐熱性粘着テープ20を貼り合わせた金属製のリードフレーム10のダイパッド11c上に半導体チップ15をボンディングする工程である。ボンディングは、半導体チップ15を耐熱性粘着テープ20の粘着剤層に直接貼り付けたり、銀ペーストを用いて接着等することにより行うことができる。
【0025】
図2(a)及び2(b)に示すように、リードフレーム10のパッケージパターン領域11には、隣接した複数の開口11aに端子部11bを複数配列した、QFNの基板デザインが整然と配列されている。一般的なQFNの場合、各々の基板デザイン(図2(a)の格子で区分された領域)は、開口11aの周囲に配列された、アウターリード面を下側に有する端子部11bと、開口11aの中央に配置されるダイパッド11cと、ダイパッド11cを開口11aの4角に支持させるダイバー11dとで構成される。
【0026】
耐熱性粘着テープ20は、図3(a)及び2(b)に示すように、少なくともパッケージパターン領域11より外側に貼着され、樹脂封止される樹脂封止領域の外側の全周を含む領域に貼着するのが好ましい。リードフレーム10は、通常、樹脂封止時の位置決めを行うための、ガイドピン用孔13を端辺近傍に有しており、それを塞がない領域に貼着するのが好ましい。また、樹脂封止領域はリードフレーム10の長手方向に複数配置されるため、それらの複数領域を渡るように連続して耐熱性粘着テープ20を貼着するのが好ましい。
【0027】
前記のようなリードフレーム10上に、半導体チップ15、即ち半導体集積回路部分であるシリコンウエハ・チップが搭載される。リードフレーム10上にはこの半導体チップ15を固定するためダイパッド11cと呼ばれる固定エリアが設けられており、このダイパッド11cヘのボンディング(固定)の方法は導電性ペースト19を使用したり、接着テープ、接着剤等各種の方法が用いられる。導電性ペーストや熱硬化性の接着剤等を用いてダイボンドする場合、一般的に150〜200℃程度の温度で30分〜90分程度加熱キュアする。
【0028】
結線工程は、図1(c)に示すように、リードフレーム10の端子部(インナーリード)11bの先端と半導体チップ15上の電極パッド15aとをボンディングワイヤー16で電気的に接続する工程である。ボンディングワイヤー16としては、例えば金線又はアルミ線等が用いられる。一般的には150〜250℃に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着エネルギーの併用により結線される。その際、リードフレーム10に貼着した耐熱性粘着テープ20面を真空吸引することで、ヒートブロックに確実に固定することができる。
【0029】
前記放射線照射工程は、リードフレーム10側から前記耐熱性粘着テープ20に放射線を照射することにより、該耐熱性粘着テープ20に於ける粘着剤層の粘着力を低下させる工程である。本工程は、封止樹脂と粘着剤層とがリードフレーム10を介して接触する封止工程の前であれば特に限定されず、何れの段階で行ってもよい。
【0030】
放射線の種類としては、粘着剤層に含まれる放射線硬化型粘着剤の種類に応じて適宜設定される。具体的には、例えば紫外線、電子線等が例示できる。本発明に於いては、これらの放射線のうち、特に紫外線が好ましい。
【0031】
紫外線の発生方式に於いては特に限定はされず、従来公知の発生方式を採用することができる。具体的には、例えば放電ランプ方式(アークランプ)、フラッシュ方式、レーザー方式等が例示できる。これらの方式の中で工業的な生産を考慮した場合、放電ランプ方式が好ましく、更に放電ランプ方式の中でも高圧水銀ランプやメタルハライドランプを使用した照射方法は、紫外線の照射効率の観点から本発明に特に適している。
【0032】
本発明に使用される紫外線の波長に関して紫外領域の波長は特に限定されない。しかし、一般的な光重合に用いられる波長及び前記照射方法にて使用する紫外線発生源の波長を考慮すると、250nm〜400nmの範囲内であることが好ましい。
【0033】
本発明に使用される紫外線の照射量は、紫外線による重合開始剤の効果を生み出せるものであれば特に限定されない。具体的には、例えば10〜1000mJ/cm程度が好ましい。更に好ましくは50〜600mJ/cmである。照射強度が10mJ/cm未満の場合、粘着剤層が硬化しない場合がある。照射強度が1000mJ/cmを超える場合、粘着剤層の硬化が進行し過ぎて、粘着剤層が割れるおそれがある。
【0034】
前記封止工程は、半導体チップ15側を封止樹脂17により片面封止する工程である(図1(d)及び図3(a)参照)。リードフレーム10のアウターリード側には耐熱性粘着テープ20が貼り付けられているので、該耐熱性粘着テープ20の自着力(マスキング)を利用したシール効果により、樹脂封止時のアウターリード側への樹脂漏れを防止する。本工程は、リードフレーム10に搭載された半導体チップ15やボンディングワイヤー16を保護するために行われ、とくにエポキシ系の樹脂をはじめとした封止樹脂17を用いて金型中で成型されるのが代表的である。その際、図4に示すように、複数のキャビティを有する上金型18aと下金型18bからなる金型18を用いて、複数の封止樹脂17にて同時に封止工程を行うのが一般的である。具体的には、例えば樹脂封止時の加熱温度は170〜180℃であり、この温度で数分間キュアした後、更に、ポストモールドキュアを数時間行う。尚、耐熱性粘着テープ20はポストモールドキュアの前に剥離するのが好ましい。
【0035】
前記剥離工程は、耐熱性粘着テープ20をリードフレーム10から剥離する工程である。本工程は、封止工程後であれば、任意の段階で行われる。本工程は、耐熱性粘着テープ20の粘着剤層の粘着力を、放射線の照射により予め低減させているので、容易に行うことができる。また、剥離の際の応力によって、モールドした封止樹脂17が剥がれたり、破損するのを防止し、更に、粘着剤層の一部がパッケージ裏面に付着するのを防止することもできる。
【0036】
次に、本実施の形態に係る耐熱性粘着テープ20について説明する。耐熱性粘着テープ20は、基材層上に少なくとも粘着剤層が設けられた構成を有する。
【0037】
耐熱性粘着テープ20(即ち、粘着剤層)の粘着力は、200℃の加熱を1時間程実施した後に於いて、JIS Z0237に準じて測定した粘着力が5N/19mm幅以下、より好ましくは0.1N/19mm幅以上、3.0N/19mm幅以下である。粘着力が5N/19mm幅を超えると、耐熱性粘着テープ20の剥離の際に導電性パターン(リードフレーム10)上に粘着剤層の一部が付着し(いわゆる糊残り)、良好なパッケージが得られない場合がある。尚、粘着力が0.1N/gmm未満の場合、導電性パターンに耐熱性粘着テープ20を貼り付けることが困難になり、或いは貼付後搬送を含む工程中で剥離する可能性がある。
【0038】
また、耐熱性粘着テープ20の粘着力は、放射線照射後に200℃の加熱を1時間程実施した後、JIS Z0237に準じて測定した粘着力が1N/19mm幅以下であり、より好ましくは0.5N/19mm幅以下である。粘着力が1N/19mm幅を超えると、耐熱性粘着テープ20の剥離の際に封止樹脂17に粘着剤層の一部が付着し、良好なパッケージが得られない場合があるからである。
【0039】
本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法に於いては、耐熱性粘着テープ20を予めリードフレーム10に貼着した後に行われる。従って、貼着工程以降の各工程で、耐熱性粘着テープ20は加熱される場合がある。例えば、半導体チップ15の搭載工程の場合に於いては、一般に、150〜200℃程度の温度で約30分〜90分間加熱キュアする。ワイヤボンディングを行う結線工程の場合は、例えば160〜230℃程度の温度で加熱される。当該工程に於いては、一枚のリードフレームから多くの半導体装置を製造する場合、全ての半導体装置に対するワイヤーボンディングが終了するまでの時間として、リードフレーム一枚あたり1時間以上を要することも考えられる。更に、樹脂封止する場合も、樹脂が十分に溶融している温度である必要性から175℃程度の温度をかけることになる。従って、本発明の耐熱性粘着テープ20は、これらの加熱条件に対して十分な耐熱性を有している必要がある。
【0040】
前記基材層としては特に限定されるものではない。しかし、リードフレーム10に貼着されることから、例えば封止工程に於いてリードフレーム10と共に加熱されることになる。また、封止工程に於いては、封止樹脂が十分に溶融する温度にする必要性があることから、約175℃まで加熱することになる。従って、基材層は、この様な加熱条件に対して十分な耐熱性を備えている必要がある。この様な観点から、基材層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリエーテルサルフオン(PES)フィルム、ポリエーテルイミド(PEI)フィルム、ポリサルフオン(PSF)フィルム、ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム、ポリアリレート(PAR)フィルム、アラミドフィルム、ポリイミドフィルム、又は液晶ポリマー(PCP)フィルム等が挙げられる。
【0041】
ここで、耐熱性粘着テープ20が貼り合わされるリードフレーム10は、前述のように銅をはじめとした金属素材である。よって、リードフレーム10の線熱膨張係数は、1.8〜1.9×10−5/K程度であることが一般的である。一方、リードフレーム10に貼り合わされる耐熱性粘着テープ20の線熱膨張係数とリードフレーム10の線熱膨張係数との差異が大きいと、両者を貼り合わせた状態で加熱した場合に、両者の熱膨張の差異により生じるひずみが大きくなり過ぎ、結果的に耐熱性粘着テープ20にシワや剥がれを生じる場合がある。従って、耐熱性粘着テープ20を構成する基材層の線熱膨張係数は、リードフレーム10の線熱膨張係数と近似しているのが好ましい。より具体的には、基材層として、その線熱膨張係数が1.0×10−5〜3.0×10−5/Kのものを用いるのが好ましく、より好ましくは1.5×10−5〜2.5×10−5/K以下である。線熱膨張係数は、ASTM D696に準拠して、TMA(サーモ・メカニカル・アナリシス)により測定される値である。
【0042】
前記数値範囲内の線熱膨張係数を有する基材層としては、前記に例示した各フィルムの中から選択してもよく、またアルミ等の金属箔を使用してもよい。本発明に於いては、線熱膨張係数2.0×10−5〜2.4×10−5/K程度のポリイミド材料は、加工性やハンドリング性が他の材料と比較して良好であることから、最も好ましい素材のひとつである。
【0043】
基材層の厚みは、5〜250μmの範囲内であることが好ましい。厚みが当該数値範囲内であると、耐熱性粘着テープ20の折れや裂けを防止し、好適なハンドリング性が得られる。
【0044】
前記粘着剤層の粘着力は、200℃の加熱を2時間程実施した後の場合、5.0N/19mm幅以下であることが好ましく、0.1N/19mm幅以上、3.0N/19mm幅以下であることがより好ましい。粘着力が5.0N/19mm幅を超える場合、粘着剤層とリードフレーム10又は封止樹脂17との粘着力が強固なため、粘着剤層を無理に引き剥がすと粘着剤層の一部が完成したパッケージの導電性パターン又は封止樹脂上に残ってしまい、良好なパッケージが得られないからである。また、放射線を照射した後、200℃の加熱を1時間程実施した場合の粘着力は、1.0N/19mm幅以下であることが好ましく、0.5N/19mm幅以下であることがより好ましい。尚、粘着力は何れも、JIS Z0237に準拠して測定した値である。
【0045】
粘着剤層を構成する粘着剤としては、耐熱性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、例えばアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、エポキシ系粘着剤等の各種粘着剤が用いられる。前記アクリル系粘着剤として、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを少なくとも含むモノマーの共重合から得られたアクリル系共重合体からなるものが挙げられる。更に、アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。尚、アルキル(メタ)アクリレートとは、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0046】
また、前記アクリル系粘着剤には、適宜な架橋剤を含有し得る。前記の架橋剤としては、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン系化合物、キレート系架橋剤等が例示できる。これらの架橋剤の含有量は特に限定されない。具体的には、例えば、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して0.1〜15重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。含有量が0.1重量部未満であると、粘着剤層の粘弾性が大きくなり過ぎ、導電性パターン又は封止樹脂に対する粘着剤層の粘着力が増大し、耐熱性粘着テープの剥離時に封止樹脂を剥離若しくは破損し、又は粘着剤層の一部が導電性パターンや封止樹脂に付着する恐れがある。その一方、含有量が15重量部を超えると、粘着剤層の硬化が進行し過ぎて、粘着剤層が割れるおそれがある。
【0047】
前記粘着剤層には、放射線硬化型粘着剤が含まれている。放射線硬化型粘着剤としては、紫外線により硬化可能な紫外線硬化性化合物が好ましい。該紫外線硬化性化合物としては、紫外線照射後の三次元網状化が効率よくなされるものが好ましい。この様な紫外線硬化性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。これらの化合物は単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0048】
紫外線硬化性化合物としては紫外線硬化性樹脂を用いてもよく、例えば、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、アクリル樹脂(メタ)アクリレート、分子末端にアリル基を有するチオール−エン付加型樹脂や光力チオン重合型樹脂、ポリビニルシンナマート等のシンナモイル基含有ポリマー、ジアゾ化したアミノノポラック樹脂やアクリルアミド型ポリマー等、感光性反応基含有ポリマーあるいはオリゴマー等が挙げられる。更に、紫外線で反応するポリマーとしては、エポキシ化ポリブタジエン、不飽和ポリエステル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルシロキサン等が挙げられる。
【0049】
紫外線硬化性化合物の配合量は、例えば、粘着剤100重量部に対して5〜500重量部であることが好ましく、15〜300重量部であることがより好ましく、20〜150重量部であることが特に好ましい。
【0050】
前記粘着剤層には、前記成分の他に、紫外線硬化性化合物を硬化させるための紫外線重合開始剤や、熱重合開始剤等の適宜な添加剤を必要に応じて配合してもよい。前記紫外線重合開始剤としては、公知の重合開始剤を適宜選択できる。その配合量としては、粘着剤100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、1〜5重量部であることがより好ましい。尚、必要に応じて、紫外線開始剤と共に紫外線重合促進剤を併用してもよい。
【0051】
その他の任意成分として、可塑剤、顔料、染料、老化防止剤、帯電防止剤、弾性率等の粘着剤層の物性改善のために加えられる充填剤等の各種添加剤を添加することもできる。
【0052】
更に、粘着剤層の厚みに関しても特に限定されるものではないが、耐熱性粘着テープ20の剥離性及びシール性を考慮すると、1〜50μmであることが好ましく、5〜25μmであることがより好ましい。当該数値範囲内であると、相反する両特性をバランスよく満たすことが可能になる。粘着剤層の厚みが50μmを超えると、剥離時の粘着力が増加し、耐熱性粘着テープ20の剥離の際に、封止樹脂の剥離や破損、或いは粘着剤層の一部が封止樹脂面に付着する等の問題を誘起し易い。その一方、厚みが1μm未満であると、耐熱性粘着テープ20が封止工程に於いて十分なシール性を発揮しない場合がある。
【実施例】
【0053】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0054】
(実施例1)
ブチル(メタ)アクリレートモノマー100重量部に対して、構成モノマーとしての(メタ)アクリル酸モノマーを5重量部配合してアクリル系共重合体を得た。このアクリル系共重合体100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学製:Tebad‐C)を0.5重量部添加したアクリル系粘着剤に、紫外線硬化性化合物50重量部と、紫外線硬化開始剤3重量部とを添加して、粘着剤組成物を調製した。
【0055】
次に、25μm厚のポリイミドフィルム(東レデュポン製:カプトン100H)を基材層として、前記粘着剤組成物を塗布して乾燥し、厚さ約10μmの粘着剤層を有する耐熱性粘着テープを作成した。
【0056】
続いて、この耐熱性粘着テープの粘着力を測定した。即ち、紫外線を照射せずにステンレス板に貼り合わせた状態で200℃にて1時間加熱し、その後の粘着力をJIS Z0237に準拠して測定した。その結果、粘着力は2.8N/19mm幅であった。また、空冷式高圧水銀灯により460mJ/cmの紫外線を耐熱性粘着テープの粘着剤層側から照射した後に、この耐熱性粘着テープをステンレス板に貼り合せ、更に、貼り合わせた状態で200℃にて1時間加熱し、その後の粘着力を前記と同様にして測定した。その結果、粘着力は0.3N/19mm幅であった。
【0057】
この耐熱性粘着テープを、端子部に銀めっきが施された一辺16PinタイプのQFNが4個×4個に配列された銅製のリードフレームのアウターパッド側に貼り合わせた。次に、リードフレームのダイパッド部分に半導体チップをエポキシフェノール系の銀ぺーストを用いて接着し、180℃にて1時間ほどキュアすることで固定した。
【0058】
更に、エポキシ系封止樹脂(日東電工製:HC−300B6)により、これらをモールドマシン(TOWA製Model−Y−serise)を用いて、175℃で、プレヒート設定3秒、インジェクション時間12秒、キュア時間90秒にてモールドした後、耐熱性粘着テープを剥離した。この様にして得られたQFNは封止樹脂の樹脂漏れもなく、また、耐熱性粘着テープの剥離も容易に行うことができた。更に、完成したパッケージに対しても、封止樹脂に糊付着による著しい汚染等が認められず、良好なパッケージを得ることができた。
【0059】
(実施例2)
リードフレームの材質をNi/Pd PPFに変更したこと以外は、実施例1と同様して行った。その結果、封止樹脂の樹脂漏れも無く、またモールド終了時に耐熱性粘着テープを剥離する際にも、該耐熱性粘着テープを容易に剥離することができた。更に、完成したパッケージに対しても、封止樹脂に糊付着による著しい汚染等が認められず、良好なパッケージを得ることができた。
【0060】
(比較例1)
前記耐熱性粘着テープを貼着しないでリードフレーム単体に半導体チップをボンディングし、その後、実施例1と同様にして樹脂封止を行った。その結果、樹脂漏れが発生した。
【0061】
(比較例2)
粘着剤層に紫外線硬化性化合物を添加しなかったこと以外は、実施例1で使用したのと同じ組成のアクリル系粘着剤を用いて、本比較例に係る耐熱性粘着テープを作成した。この耐熱性粘着テープをステンレス板に貼り合わせた状態で、200℃にて1時間加熱し、その後の粘着力をJIS Z0237に準拠して測定した。その結果、粘着力は2.5N/19mm幅であった。
【0062】
次に、実施例1と同様にして、耐熱性粘着テープを銅製のリードフレームのアウターパッド側に貼り合わせた後、リードフレームのダイパッド部分に半導体チップをボンディングし、更に180℃にて1時間ほどキュアすることで固定した。続いて、実施例1と同様にして、エポキシ系封止樹脂を用いてモールドした後、耐熱性粘着テープを剥離した。
【0063】
その結果、封止樹脂の樹脂漏れは防止することができた。しかし、耐熱性粘着テープの剥離の際に、粘着剤層の粘着力が著しく大きかった為、無理に剥離すると、パッケージの封止樹脂に粘着剤層の一部が付着していた。
【0064】
【表1】

【符号の説明】
【0065】
10 リードフレーム
11 パッケージパターン領域
11a 開口
11b 端子部
11c ダイパッド
11d ダイバー
12 インジェクション時間
13 ガイドピン用孔
15 半導体チップ
15a 電極パッド
16 ボンディングワイヤー
17 封止樹脂
18 金型
18a 上金型
18b 下金型
19 導電性ペースト
20 耐熱性粘着テープ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、該基材層上に設けられた粘着剤層を備える耐熱性粘着テープであって、
前記粘着剤層は、紫外線硬化性化合物を含む紫外線硬化型粘着剤により構成され、
前記粘着剤層に紫外線を照射し、更に200℃で1時間加熱した後にJIS Z0237に準拠して測定した前記粘着剤層の粘着力が1N/19mm幅以下である耐熱性粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層を200℃で1時間加熱した後にJIS Z0237に準拠して測定した前記粘着剤層の粘着力が5N/19mm幅以下である請求項1に記載の耐熱性粘着テープ。
【請求項3】
前記基材層の線熱膨張係数が1.0×10−5〜3.0×10−5/Kである請求項1又は2に記載の耐熱性粘着テープ。
【請求項4】
前記紫外線硬化性化合物の配合量は、前記紫外線硬化型粘着剤を構成する粘着剤100重量部に対し5〜500重量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤がアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤である請求項4に記載の耐熱性粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤が架橋剤をさらに含む請求項5に記載の耐熱性粘着テープ。
【請求項7】
前記架橋剤の含有量は、前記アクリル系ポリマー100重量部に対し0.1〜15重量部である請求項6に記載の耐熱性粘着テープ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−46763(P2012−46763A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228010(P2011−228010)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【分割の表示】特願2006−59598(P2006−59598)の分割
【原出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】