説明

肌状態管理システム

【課題】カメラ付き携帯端末により肌を撮影した画像から色情報を含めたキメやシワなどを測定し,統一的処理により、新たな肌質に関する項目を作成可能であり,予めコンピュータに登録された経験や知識によって,経験の浅い販売員でも顧客に合う商品を選定し,推奨成分のリストを提示し,類似商品や関連情報を提示し、将来の肌の状態を予測が可能であり,複数のコンピュータを統合することで大量,高速処理を行う肌の状態管理システムを提供する。
【解決手段】ネットワークにより接続されたカメラ付き携帯端末21と,複数の関連情報データベース23と,解析処理を分割実行可能な複数の解析処理コンピュータ23とサーバ10により構成され,光の影響の削除機能12と色情報の補正機能13を備えた画像解析機能11と,測定項目作成手段14,関連情報提示手段15,関連情報登録手段16,肌の状態予測機能17,及び,大量,高速処理機能とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,肌の画像解析,測定項目の作成,知識表現,データ記録方式,情報提供方式,計算処理方式に関する.
【背景技術】
【0002】
現状化粧品の販売においては,販売では販売員の経験と技量による部分が多く,販売員の経験に基づく主観的な肌の観察のもとに顧客に適した化粧品を推奨している.
【0003】
顧客に合う商品の選定は,販売員の経験による部分が多い.顧客の肌の状態の判断や化粧品に関する成分の知識を必要とする.そのため経験のある販売員と経験の浅い販売員とでは大きな差が出てしまう.
【0004】
現在の測定方式ではレプリカといった肌の断片の形状を採取し,それをもとに専門家が肌の状態を判断する方式が主流である.一般的に肌の断片を採取する者と専門家は別であり,専門家の方が少ないため,肌の測定には時間がかかる.
【0005】
肌の断片は肌の形状のみを採取したものであり,一般に肌の測定に重要となる色の情報が欠落してしまう.
【0006】
カメラで肌を撮影する場合は,光の状態や撮影距離,撮影部位など,同じ条件で肌を撮影する必要があり,肌を撮影するための特別な撮影装置が利用される.また,同じ部分を同じ操作で撮影したとしてもカメラの個体差によって撮影された画像に違いがでてしまう.
【0007】
デパートなどを対象として,前記撮影装置を含め肌の状態の測定装置が利用されているが,測定装置を利用するためには操作の熟練が必要である.
【0008】
前記測定装置は固定式のもので重量も重い.そのため,訪問販売を対象とした場合には,持ち歩くことは困難である.
【0009】
携帯電話に代表されるようなカメラ付きの携帯端末で顧客の皮膚を撮影することが考えられているが,一般の携帯端末のカメラの性能は低く,肌を撮影するのは困難である.
【0010】
携帯端末の計算能力は小さいため携帯端末のみでは肌を測定することはできない.
【0011】
携帯端末で撮影された肌の写真を,無線のネットワークを利用して遠隔のコンピュータで処理することが考えられている.しかし,一度に大量の写真が到着した場合には遠隔のコンピュータでも処理しきれない.
【0012】
実際の肌の測定には油分計,保湿計,弾力計などが利用されている.カメラは皮膚を拡大表示するために利用されており,これは専門家の判断を手助けする目的に利用されている.
【0013】
カメラで撮影された拡大写真をコンピュータで処理する場合は,形状のみが判断されるため,肌のキメやシワなどの肌の形状に関する評価を与えるだけである.
【0014】
カメラで撮影された拡大写真から,キメやシワなどの評価を与えるためには,画像処理技術によって解析されるが,それぞれの評価基準にあった画像処理を行う必要がある.例えば,キメを評価するために,皮溝によってつくられる三角形の形状を抽出したり,シワを評価するために線を抽出したりする.
【0015】
顧客の肌の測定結果を記憶媒体によって保存し,過去の結果と比べて肌の状態の変化を,グラフ等を用いて提示することが可能である.
【0016】
これまでの肌の測定結果を利用した肌の数年後の状態を予測し,数年後の測定結果を予測することは行われていない.
【0017】
肌の測定結果から推奨化粧品やケア方法などをコンピュータなどによって自動的に提示する場合は,肌の測定結果に対して提示できる化粧品は単一的であるが,幾つかの候補を提示した方がより顧客に対しては効果的であり,そのためには,いくつかの類似商品を測定結果に対応づける必要がある.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
携帯電話などの手軽に持ち運ぶことが可能なカメラ付きの携帯端末を利用することで肌の測定が可能であり,レプリカの採取を行わずに一般のカメラを利用して顧客の肌を直接撮影することが可能であり,撮影された画像から様々な情報を抽出することで,色情報を含めたキメやシワ,シミ,透明感などの測定を行うことが可能で,これらの測定項目を統一的に処理することが可能で,新たな肌質に関する項目を統一的に作成することが可能であり,経験のある販売員の経験や知識を予めコンピュータに登録することが可能で,それによって,経験の浅い販売員でもあたかも熟練の販売員のように,顧客に合う商品を選定することが可能であり,顧客に適した化粧品を選定する際には,推奨される成分のリストを提示することができ,類似商品や関連情報を容易に提示することを可能とし,複数の専門家の知識を利用することが可能であり,これまでの肌の測定結果と化粧品の効果から将来の肌の状態を予測することが可能であり,一度に大量の要求を処理するために複数のコンピュータを統合することで大量処理を可能にする肌の状態管理システムを提供することを解決課題とする.
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するための本発明の肌状態管理システムは,カメラ付きの携帯端末を利用して肌を直接撮影した画像を利用することで肌の測定が可能で,色情報を含む画像から抽出される様々な情報から測定が可能な解析機能と,新たな肌に関する測定項目の作成手段と,専門家の経験や知識,関連情報の登録手段,及び提示機能と,測定結果から将来の肌の状態を予測機能と,一度に大量の測定要求を処理するための処理機能を備えていることを特徴とする.
【0020】
本発明によれば肌の画像はカメラ付きの携帯端末で撮影される.これまで肌の撮影には,撮影品質を一定に保つために,肌の撮影部位とカメラの接写レンズの間を密閉し,LEDなどを利用して光を当てる特別なカメラが利用されているが,本発明によれば撮影品質に最も関係の深い光斑や,色彩の変化は画像解析によってカメラの個体差による影響を削除できる.
【0021】
本発明によれば,撮影された皮膚の画像を解析する際に,光の影響を取り除くために,まず,色の情報を排除したグレースケール化を行う.そして,画像の特徴を抽出するために,二値(白と黒)の画像にするが,この際に,光斑の影響を取り除くためにエッジ強調処理や判別分析処理を組み合わせて処理を行うといった処理を組み合わせる点に特徴がある.
【0022】
エッジ強調処理は,画像の濃淡が極端に異なる部分をより強調させるための一般的な方法であるが,肌の画像にこの方法を適用した場合には,肌のシワやキメを形成する画像中の線を際立たせる効果を示す.
【0023】
また,一般的に画像解析において,特徴的な部分とそうでない部分を区別するために,白と黒の画像にする二値化処理がなされる.二値化処理とは,ある閾値となる画素の値を決めて,画像の画素の値が,閾値よりおおきければ白く,小さければ黒くするといった処理である.しかし,皮膚を撮影した画像では,光斑によって,中央が明るく,周辺が暗くなるような特徴を示す.これをこのまま閾値を決めて一般的な二値化処理を行うと,図3のように,光斑によって,中央部分が白く,周辺が黒くなってしまい,肌の解析に必要なシワやキメを形成する線を抽出することはできない.
【0024】
そのため,本発明では,ある閾値を固定的に決定し利用するのではなく,ある画素に注目した際に,周辺の画素の値を見ることで,動的に閾値を変化させる点に特徴がある.
【0025】
ある画素に着目した際に,その周辺の画素を利用する.現在着目している画素を中心に含めた,周辺の幾つかの画素を利用し,それらの画素を,もっとも二分する(均一に二分する)閾値を,着目した画素の閾値に利用する.
【0026】
図2には,本発明における皮画像解析の結果を示した.原画像はややピンぼけの画像であるが,エッジ強調処理によってピンぼけが補正されており,さらに,本発明の閾値を動的に変化させることによって,光斑に影響されずに,肌のシワやキメを形成する線を抽出している.
【0027】
いくつかのカメラで皮膚を撮影した場合に,同じ部位を撮影したとしても,カメラの個体差や撮影条件によって同じように撮影することは難しい.特に,色の違いが出やすいといった特徴がある.
【0028】
本発明によれば,白と黒の画像を利用することで,カメラ固有の特性を補正することができる点に特徴がある.
【0029】
一般的に,絶対的な色として様々な色を利用した色見本を利用することで,印刷の品質や写真の原像時の色を補正する方法が利用されている.
【0030】
ここで,デジタル画像の色は,赤,緑,青の3つの色成分の濃度を合成することで色を表現している.一般には,各成分の256階調で,0から255までの整数で表現される.それぞれの成分が最も濃い場合は255で,最も薄い場合は0となる.そして,全ての色成分が最も濃い状態は白であり,全ての色線分が最も薄い状態は黒である.
【0031】
したがって,あるカメラを利用して,白色を撮影した画像と黒色を撮影し,撮影された画像のそれぞれの色成分の平均値を比較すれば,そのカメラにおいて,撮影することが可能なそれぞれの色の濃度幅を求めることができる.
【0032】
例えば,白の画像の赤成分の平均が200で,黒の画像の赤成分の平均が50であれば,そのカメラで捉えることが可能な赤成分の階調は,150階調となる.その場合,そのカメラで撮影された画像の赤成分が,例えば100であれば,実際の補正された赤成分の濃度は,100*(255/150)=170となる.
【0033】
本発明によれば,以下の式にしたがって,色の補正がなされる.
R=r(255/r_range)
G=g(255/g_range)
B=b(255/b_range)
ここで,R,G,Bはそれぞれ補正後の赤成分,緑成分,青成分の濃度であり,r,g,bは実際の画像の赤成分,緑成分,青成分の濃度である.r_range,g_range,b_rangeは,白と黒の画像から求められた,赤成分,緑成分,青成分の階調の範囲である.
【0034】
上記の説明において,それぞれの色成分の階調を求める場合,白と黒の画像より,それぞれの色成分の平均を利用したが,白画像の場合はそれぞれの色成分の最大値を使い,黒画像の場合はそれぞれの色成分の最小値を使って,それぞれの色成分の階調を求めてもよい.
【0035】
ここまで説明してきたように,本発明は,一般のカメラを利用して肌の測定を可能にするために,光の影響を取り除き,カメラによる色の影響を取り除く手法を備えていることに特徴がある.
【0036】
一般の肌の測定では,特定の測定装置の値,例えば,油分計や保湿計の値を使って,保湿などの測定項目を設けている.また,皮膚の画像から測定する場合では,例えば,キメの評価では,皮膚表面の三角形の形状の様子を見て,キメの整い度合いを判断している.
【0037】
このように皮膚の画像から肌を測定するためには,専門家の目視によって測定されるか.または,測定項目にあった画像解析を施して,その特徴となる形状を測定しなければならない.
【0038】
本発明によれは, 診断項目に対して特別な画像解析を行わなくとも,画像から得られる意味のない情報を利用することで,新たな測定項目の作成が可能である.これは,予め専門家によって測定された画像と,画像から得られる意味のない情報の関連付けを行うことで実現される.
【0039】
本発明では,予め専門家によって測定された画像を集め,それらの画像に対して,画像の特徴量を抽出する.これは,前述の手法を利用して,光の変化やカメラの個体差による色の違いを取り除く処理を行う.さらに,細線化処理などの一般的な画像処理を施してもよい.
【0040】
利用する特徴量は,画像処理によって得られる値であり,例えば,各色成分の平均値や分散値,処理後の線の交点の数や線の太さなど,それ事態には肌の測定として意味を持たない特徴量である.
【0041】
本発明によれば,画像より得られた特徴量と,予め専門家によって判断された測定値との関連づけを行うことで新たな測定項目を作成する.
【0042】
同じ測定結果になった画像と,それ以外の画像の集合に分ける.そして,同じ測定結果の画像から得られる特徴量の範囲と,それ以外の画像から得られる特徴量の範囲を求める.
次に,同じ測定結果の特徴量の範囲から,それ以外の画像から得られた特徴量の範囲と重なる部分を取り除く.
【0043】
最終的に得られた範囲を,測定結果を説明する特徴量の範囲として利用することが可能である.新たな画像を処理する場合,同じ特徴量を比較して,その範囲にあれば,その画像は同じ測定結果になる.
【0044】
例えば,キメが非常に細かいという測定結果の画像において,特徴量となる線の交点の数が200から400の範囲にあり,キメが非常に細かいと測定されなかった画像の範囲が100から300の範囲にあれば,キメが非常に細かいという測定結果の特徴量は,線の交点の数が300から400の範囲にある場合となり,新たな画像の線の交点の数が,例えば,350であれば,その画像はキメが非常に細かいと測定される.
【0045】
上述の説明では,線の交点の数で説明したが,色成分などそれぞれの特徴量に対して範囲を求めることで,より正確な測定が可能である.
【0046】
本発明によれば,測定結果に対して範囲を求める特徴量は多ければ多いほど正確な測定が可能である.測定結果に関係のない特徴量は最終的な範囲として利用されないといった特徴がある.
【0047】
例えば,肌のシワの状態が良いと測定される画像の,線の交点の数の範囲が,100から300で,肌のシワの状態が良いと測定されなかった画像の線の交点の範囲もまた,100から300であれば,互いに相殺されてしまい,線の交点の数の範囲は残らない.つまり,肌のシワの状態の測定に関しては,線の交点の数は関係ないと判断され,新たな画像の測定には利用されない.
【0048】
本発明によれば,測定の対象となる画像の特徴量の範囲から,測定の対象とならない画像の特徴量の範囲を取り除くことで,その測定項目の特徴量の範囲としているが,測定の対象となる画像の特徴量のみから測定項目の特徴量の範囲としてもよい.
【0049】
この場合,対象となる測定結果が,より広い範囲で判断されることになるが,化粧品のセールスなどでの肌の測定のように,より良い測定結果が好まれる場合には,良い測定結果の画像から特徴量の範囲を求め,その範囲以外のものを悪い測定結果とすることが可能である.
【0050】
これまで説明してきたように,本発明は,新たな測定項目を作成する際に,その項目にあった画像解析を施す必要はなく,専門家が判断したサンプル画像と,画像から得られる意味のない特徴量の範囲とを関連づけることで,新たな測定項目を作成できる機能を持つといった特徴がある.
【0051】
本発明の肌状態管理システムは, 肌の測定結果に対しての専門家の経験や知識などの関連情報を提示可能で,情報の重みを利用することで複数の関連情報を提示可能な関連提示機能を備えていることを特徴とする.
【0052】
肌の測定結果に対する専門家の経験や知識の関連情報とは,肌の測定結果に対するものであり,例えば,測定結果に対しての化粧品やケア方法,さらに,化粧品の値段や成分,ケアに使う道具などが相当する.
【0053】
測定結果に対しての関連情報を登録する場合,特定の測定結果に対しての情報を一意に登録するのが一般的である.例えば,「毛穴の評価が悪くて,キメの評価が良く,シワの評価が悪い場合には,化粧品Aが効果的である」というように,「毛穴の評価が悪い,かつ,キメの評価が良い,かつ,シワの評価が悪い」といった事実に対して「化粧品A」という情報が対応づけられる.
【0054】
上述の方法では,事実に対しての関連情報が一意的であり,「毛穴の評価が悪い」,「キメの評価が良い」などといった複数の事実の組み合わせの数だけ情報を登録必要がある.さらに,測定結果が登録されていない事実の組み合わせとなった場合には,関連情報を提示することはできない.
【0055】
本発明によれば,関連情報の登録は個々の事実ごとに登録を行い.事実の組み合わせは推論機構によって提示することを可能にしている.
【0056】
例えば,「化粧品A」は「毛穴の評価が悪い,かつ,キメの評価が良い,かつ,シワの評価が悪い」場合に効果的である場合,「毛穴の評価が悪い」,「キメの評価が良い」,「シワの評価が悪い」といった3つの事実に対して化粧品Aを登録し,さらに,化粧品Aの効果の度合いによって,次のようにそれぞれの事実に重みを付加する.
「毛穴の評価が悪い」ならば「化粧品A」の重み「0.3」,
「キメの評価が良い」ならば「化粧品A」の重み「0.3」,
「シワの評価が悪い」ならば「化粧品A」の重み「0.4」.
【0057】
本発明によれば,より事実の組み合わせの効果を強調するために,「毛穴の評価が悪い,かつ,キメの評価が良い,かつ,シワの評価が悪い」ならば「化粧品A」というような,事実を組み合わせた関連情報を登録してもよい.
【0058】
ある状態に対して使ってはいけないというような関連情報に対しては,負の重みを付加すればよい.
【0059】
本発明によれば,測定結果に対して該当する関連情報の規則が複数登録されている場合には,該当する関連情報の重みの総和を計算する.
【0060】
例えば,測定結果が「毛穴の評価が悪く,キメの評価が良い」となり,関連情報として,
「毛穴の評価が悪い」ならば「化粧品A」の重み「0.3」,
「キメの評価が良い」ならば「化粧品A」の重み「0.3」,
という規則が存在すれば,それぞれの規則の重みの総和を計算して「化粧品A」重み「0.6」となる.
【0061】
本発明の推論機構は,該当する関連情報の規則の検索と重みの総和を計算する処理である.本発明の推論機構によって,複数の関連情報を提示することが可能であり,総和の高いものがより関連する関連情報として提示することができる.
【0062】
本発明によれば,関連情報を登録する際に,推論結果に基づいて登録した情報に関連した情報も同時に登録可能である.
【0063】
例えば,測定結果に合った化粧品を登録していれば,同時に化粧品を構成する成分も関連情報として登録可能であり,その化粧品に関するものであれば,値段や効果,特徴などの関連するあらゆる情報を登録可能である.逆に,成分を登録すると同時に,その成分を利用している化粧品や効果を登録可能である.
【0064】
これは,本発明における関連情報の登録の際に,その情報の重みを付加するといった特徴によって実現される.
【0065】
例えば,化粧品Aが登録されており,化粧品Aの成分として,「成分A」,「成分B」,「成分C」が含まれている場合,化粧品Aに対して,
「毛穴の評価が悪い」ならば「化粧品A」重み「0.3」,
という規則が存在すれば,
「毛穴の評価が悪い」ならば「成分A」,
「毛穴の評価が悪い」ならば「成分B」,
「毛穴の評価が悪い」ならば「成分C」,
というように,3つの事実に展開することができる.
【0066】
さらに,重みに関しては,例えば,化粧品Aに含まれる含有量の割合が,成分A:成分B:成分C = 0.5:0.3:0.2 であれば,既に登録されている化粧品Aの規則の重み0.3とかけあわせて,
「毛穴の評価が悪い」ならば「成分A」重み「0.15」,
「毛穴の評価が悪い」ならば「成分B」重み「0.09」,
「毛穴の評価が悪い」ならば「成分C」重み「0.06」,
というように登録する.
【0067】
逆に,成分Aが既に登録されており,成分Aを利用している化粧品A,化粧品B,化粧品Cを登録する場合は,それぞれの化粧品に含まれる成分Aの比率から,重みを計算すればよい.
【0068】
該当する登録情報が複数存在する場合には,該当する規則の重みの総和を利用する.
【0069】
例えば,
「毛穴の評価が悪い」ならば「化粧品A」の重み「0.3」,
「毛穴の評価が悪い」ならば「化粧品B」の重み「0.2」,
「毛穴の評価が悪い」ならば「化粧品C」の重み「0.1」.
というような規則が登録されており,化粧品A,化粧品B,化粧品Cのそれぞれに含まれる成分Aを登録する場合,それぞれの規則の重みの総和を利用し,
「毛穴の評価が悪い」ならば「成分A」の重み「0.6」,
とすればよい.
【0070】
これまでの説明において,重みの計算では,かけあわせたり,足し合わせたりしたが,それぞれの重みを反映さることができる特別な計算式を使ってもよい.
【0071】
これまで説明したように,本発明における関連情報の登録は,事実を一意的に登録するのではなく,重みを利用して測定結果との関連の度合いを付加した規則として登録する.さらに,登録されている情報に関連する情報は,新たな情報として登録するのではなく,既に登録されている情報の規則とその重みの総和を計算すること,つまり,推論機構によって登録することが可能である.
【0072】
本発明によれば,関連情報を複数のデータベースに登録可能であり,複数のデータベースから推論可能である.
【0073】
これは複数の専門家の経験や知識の利用を可能にするものである.一般に単一の専門家に問い合わせるよりも,複数の専門家の意見を聞いて多角的に判断する方が望ましい.
【0074】
専門家ごとに専門は異なり,同じ場所に存在しないのが一般的である.そのため,本発明のようなシステムにおいて,複数の専門家の経験や知識の関連情報を登録するには,それぞれの専門家の存在する場所に,個々のデータベースが存在し,専門家,もしくは,専門家を補助する操作者が関連情報の登録や修正を行う方が望ましい.
【0075】
本発明では,関連情報を登録する際に重みを付加した規則を登録するが,本発明によれば,関連情報を登録するデータベースは,複数のデータベースに登録してもよい.
【0076】
本発明において,関連情報が複数のデータベースに登録されている場合には,個々のデータベースごとに推論を行い,さらに,個々のデータベースの推論結果を統合することで,データベース全体の推論結果として関連情報を提示することができる.
【0077】
例えば,ある測定結果に対して,個々のデータベースにおいて以下のような推論結果が得られたとすると,
データベース1の結果:「化粧品A」重み「0.3」,「化粧品B」重み「0.2」,
データベース2の結果:「化粧品C」重み「0.1」.「化粧品B」重み「0.2」,
データベース3の結果:「化粧品B」の重み「0.4」.
全体の推論結果は,それぞれの重みを総和し,
「化粧品B」重み「0.8」,
「化粧品A」重み「0.3」,
「化粧品C」重み「0.1」,
となる.
【0078】
上述の説明では,複数の推論結果を統合する際の重みの計算に,単に総和を利用したが,データベースの重要度に従って,重み付けしてもよく,また,それぞれのデータベースからの推論結果を反映できる特別な計算式を利用してもよい.
【0079】
本発明によれば,収集された測定結果を利用して,同じ肌質のカテゴリの順序関係を利用した肌の状態の予測が可能である.
【0080】
本発明のようなシステムを運用することによって肌に関するデータが収集でき,収集されたデータを将来の肌の状態の予測に利用することができる.
【0081】
本発明によれば,収集データを同質の肌の状態を持つグループに分類する.
【0082】
肌質の分類は,測定結果にしたがって分類され,「毛穴の評価が悪いグループ」,「キメの評価が良いグループ」といった単一の測定結果に関するグループや,「毛穴の評価が悪く,キメの評価が良いグループ」といった組み合わせたグループに分類される.
【0083】
本発明における肌の状態予測は,「現在の肌質は数年後も同じ肌質であり,同質で同年代における肌の状態の順位は変わらない」といった仮説に基づく.
【0084】
つまり,現在の肌質と将来の肌質では大きな変化はなく,また,同質で同年代の肌の順位は,将来も変わらないという仮説である.例えば,現在,25歳で乾燥肌であり,乾燥肌のグループにおける25歳のデータの中で平均的な測定結果であれば,35歳になった時の状態は,やはり乾燥肌であり,乾燥肌のグループにおける35歳のデータの平均的な測定結果になるということを意味する.
【0085】
肌質や同年代の順位は,利用している化粧品やケアの方法などの外的要因によって変化するが,上述の仮説は,現在と同じような手当ての状態を維持すれば,同じように老化するといった状況を表現している.
【0086】
本発明においてある肌の将来の状態を予測するためには,まず,全体のデータからその肌と同質のデータを取り出す.
【0087】
そして,同質のデータの同じ年齢のデータ中で,肌の状態の現在の順位を求める.
【0088】
次に,同質のデータの中で予測する年齢のデータを取り出す.
【0089】
そして,予測する年齢のデータにおいて,現在の順位に相当するデータを将来のデータとして抽出する.
【0090】
ここで,同質のデータの中で,現在の年齢のデータ数と,予測する年齢のデータ数は必ずしも一致しないため,順位は実際の順位をデータ数で割った値(0から1の範囲)を利用すればよい.
【0091】
本発明では,上述の流れによって将来のデータを抽出し,そのデータの測定結果が将来の状態の測定結果として利用される.さらに,データには実際の肌の画像も含まれており,実際には別人の画像であるが,将来の肌の状態として,実際の肌の様子を提示することが可能である.
【0092】
本発明によれば,解析の高速化と大量処理を実現するためにネットワークに接続された複数のコンピュータを統合して処理する際に,メッセージ通信によって各コンピュータの状況を把握し,さらに,メッセージ通信によって実行状況を共有することで高速に処理することが可能である.
【0093】
本発明では,無線通信を利用して携帯端末を利用して肌の写真が送られてくることで,肌の測定処理の要求が送られてくるが,一度に大量の要求が到着した場合には,単一のコンピュータでは処理しきれない.そのため,本発明では,複数のコンピュータを統合して大量の要求を高速に処理する.
【0094】
本発明では,到着した大量の要求を複数のコンピュータに振り分ける際に,メッセージ通信によって,処理するコンピュータの状況を把握し,さらに,処理を実行しているコンピュータの状況をメッセージ通信によって複数コンピュータで共有することで,より高速な処理を実現している.
【0095】
本発明によれば,新たな要求が到着した場合には,メッセージ通信を利用して,現在処理を実行していないコンピュータを発見し,その処理要求を発見したコンピュータに依頼する.
【0096】
一つの処理要求を複数のコンピュータで分割して処理する場合には,メッセージ通信によって,各々の進捗状況を共有し,仮に,他のコンピュータが自分の出した結果よりも良い結果を導きだしたというメッセージを受信した場合には,現在の処理を辞め,新たな処理を実行する.
【0097】
上述の処理によって,無駄に重複する処理を行うことがなく,複数の処理を高速に処理することが可能である.
【発明の効果】
【0098】
本発明では,撮影された画像における光の影響を取り除く処理を備えたているため,特別なカメラを利用しなくとも,携帯端末に取り付けられているようなカメラを利用して肌の測定が可能である.
【0099】
本発明では,カメラの個体差を取り除くため白と黒の画像のみを利用して色彩補正を実施することができるため,高価な色見本を利用しなくとも,白い紙やマジックで黒く塗られた紙を利用することで,色補正が可能である.
【0100】
本発明では,特定の画像処理を必要とせずに,新たな測定項目の作成手段を備えているため,新たな測定項目を作成する際に,その項目のための画像解析手段を開発する必要はない.
【0101】
本発明では,情報の重みを利用することで複数の関連情報を提示可能であり,関連情報を登録する際に,推論結果に基づいて関連する情報を同時に登録可能である.そのため,新たな情報を登録する際には,測定結果に対して関連する情報をあらためて登録する必要はなく,既に登録されているものと関連する情報を連鎖的に登録することが可能である.
【0102】
さらに,関連情報を複数のデータベースに登録可能であり,複数のデータベースから推論可能であるため,様々な専門のデータベースを統合することが可能であり,データベースの管理は,専門家自身,もしくは,その操作者が分散して管理することが可能である.
【0103】
本発明では,収集された測定結果を利用して,同じ肌質のカテゴリの順序関係を利用した,肌の状態の予測機能を備えている.一般的に,将来の状態を予測するためには,一人の人を長い年月を書けてデータを収集し,その変化を記録する必要があるが,本発明の予測機能では,現在存在するデータから予測することが可能である.
【0104】
本発明では,ネットワークに接続された複数のコンピュータを統合し,メッセージ通信によって処理されたコンピュータの状況を共有することで高速処理を行うことが可能であり,解析の高速化と大量処理を実現している.
【発明を実施するための最良の形態】
【0105】
本発明の肌状態管理システムの実施形態について図1を用いて説明する.
【0106】
図1に示す肌状態管理システムは,ネットワークを介して相互に通信可能に接続された
カメラ付き携帯端末21と,専門家の経験や知識の関連情報を登録した複数の関連情報データベース23と,解析処理要求を分割して実行可能な複数の解析処理コンピュータ23とサーバ10により構成される.
【0107】
本システムは,光の影響の削除機能12と色情報の補正機能13を備えた肌の写真の画像解析機能11と,測定項目作成手段14,関連情報提示手段15,関連情報登録手段16,肌の状態予測機能17,及び,大量,高速処理機能とを備えている.
【0108】
画像解析機能11はカメラ付き携帯端末21から,肌の画像をデータとしてネットワークを介して取得する.
【0109】
そして,光の影響の削除機能12,及び,色情報の補正機能13を使って,カメラ付き携帯端末21から送られてきた画像を処理し,測定項目作成手段14によって作成されたルールにしたがって測定結果を出力する.
【0110】
出力された測定結果はネットワークを介して,カメラ付き携帯端末21に送信される.また,測定結果データベース15に蓄えられる.
【0111】
新たな測定項目を作成する場合には,測定項目作成手段14と測定結果データベース15によって作成される.
【0112】
測定結果を出力すると同時に,関連情報提示手段15によって,測定結果に関連する情報を提示する.関連情報もまたネットワークを介してカメラ付き携帯端末21に送信される.
【0113】
ここで,関連情報提示手段では,関連情報提示手段16,及び,関連情報登録手段17を備えた関連情報データベース22を利用して推論を行い,複数の関連情報データベース22からの推論結果を統合して,関連情報としてカメラ付き携帯端末21に送信する.
【0114】
関連情報の登録は,それぞれの関連情報データベース22で行われ,関連情報登録手段17によって登録される.
【0115】
肌の状態予測は,肌の状態予測機能18,及び,測定結果データベース15を利用して
実行される.
【0116】
複数のカメラ付き携帯端末21より一度に大量の測定要求が到着した場合には,大量,高速処理機能19により複数の解析処理コンピュータ23によって分割して処理される.それぞれの解析処理コンピュータ23にもまた大量,高速処理機能19を備えている.
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の肌状態管理システムの構成図
【図2】代表的な画像解析
【図3】一般的な二値化処理の画像
【符号の説明】
【0117】
10..サーバ,11..画像解析機能,12..光の影響の削除機能,13..色情報の補正機能,14..測定項目作成手段,15..測定結果データベース,16..関連情報提示手段,17..関連情報登録手段,18..肌の状態予測機能,19..大量,高速処理機能,21..カメラ付き携帯端末,22..関連情報データベース,23..解析処理コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ付きの携帯端末を利用して肌を直接撮影した画像を利用することで肌の測定が可能な肌状態管理システムであって,色情報を含む画像から抽出される様々な情報から測定が可能な解析機能と,新たな肌に関する測定項目の作成手段と,専門家の経験や知識,関連情報の登録手段,及び提示機能と,測定結果から将来の肌の状態を予測機能と,解析の高速化と大量の測定要求を処理するための処理機能を備えた肌状態管理システム.
【請求項2】
携帯端末のカメラを利用した測定を可能にするために,撮影された画像における光の影響を取り除く処理を備えた請求項1記載の肌状態管理システム.
【請求項3】
カメラの個体差を取り除くため白と黒の画像のみを利用して色彩補正を実施することを特徴とする,解析機能を備えた請求項1又は2記載の肌状態管理システム.
【請求項4】
予め専門家によって測定された画像と,その画像から得られる意味のない情報の関連付けを行うことで,特定の画像処理を必要とせずに,新たな測定項目の作成手段を備えた請求項1,2又は3記載の肌状態管理システム.
【請求項5】
肌の測定結果に対しての専門家の経験や知識などの関連情報を提示可能で,情報の重みを利用することで複数の関連情報を提示可能な関連提示機能を備えた請求項1,2,3又は4記載の肌状態管理システム.
【請求項6】
関連情報を登録する際に,推論結果に基づいて関連する情報を同時に登録可能な登録手段を備えた請求項1,2,3,4又は5記載の肌状態管理システム.
【請求項7】
関連情報を複数のデータベースに登録可能であり,複数のデータベースから推論可能な請求項1,2,3,4,5又は6記載の肌状態管理システム.
【請求項8】
収集された測定結果を利用して,同じ肌質のカテゴリの順序関係を利用した,肌の状態の予測機能を備えた請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の肌状態管理システム.
【請求項9】
解析の高速化と大量処理を実現するためにネットワークに接続された複数のコンピュータを統合し,メッセージ通信によって処理されたコンピュータの状況を共有することで高速処理を行うことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載の肌状態管理システム.

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−175469(P2007−175469A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−381327(P2005−381327)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(500344389)
【出願人】(500424371)
【Fターム(参考)】