説明

脱毛症治療のための低出力レーザー照射器

毛嚢細胞の活性化と頭皮組織の血流増加を最適化して脱毛防止効果と発毛効果に優れた本発明の低出力レーザー照射器は、波長が630nm〜680nmの赤色レーザーダイオードと波長が750nm〜1,000nmの近赤外線レーザーダイオードとが交互に配列されたレーザー出力部を含む。本発明の低出力レーザー照射器は、ブラシ形態のレーザー照射器であるから、通常のブラッシング動作を通じてレーザーを照射することができるので、使用が便利であり、レーザー出力を脱毛症治療に最適に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー照射器に関し、より詳細には、異なる出力波長のレーザーダイオードを組み合わせて配列して脱毛症を治療できる低出力レーザー照射器に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪または頭髪は、生長期、退行期、休止期という3段階の毛周期を経て成長して脱毛されるが、成人は、約10万本の毛髪を有しており、一日に80本程度の毛髪が抜けることが正常であり、それ以上進行される時、脱毛症という。脱毛症は、正常に育った頭髪が何らかの原因により抜ける病気を言い、男性ホルモンが5α還元酵素の酵素作用によりジヒドロテストステロン(DHT)に変わった後、アンドロゲン受容体と結合して、毛乳頭と毛嚢の機能を低下させ、血管を損傷させて、脱毛を起こすことが知られている。脱毛の原因には、遺伝的な要素、ホルモン分泌の不均衡(例えば、アンドロゲンの過剰分泌)、精神的ストレス、環境汚染、頭皮の血液循環障害、栄養不足、疾病(例えば、甲状腺疾患)、自家免疫異常、抗ガン剤及び抗甲状腺剤の服用、経口避妊薬の投与、髪を洗う習慣など非常に多様である。
【0003】
脱毛症の治療、例えば男性型脱毛症(頭の両側前頭部及び頭頂部に脱毛が始まり、次第に拡大され、初めに細くて弱い毛髪が生えてくるが、結局は消失する症状)の治療方法には、毛嚢が完全になくなった患者を対象として後頭や側頭において毛嚢が生きている皮膚を取って、脱毛された部位に移植する外科的手術方法と薬物治療方法が挙げられる。現在市販されている発毛剤または養毛剤は、皮膚の血液循環を良くし、毛根に栄養を供給することを目的として開発されたが、これはいずれも医薬品でなく、化粧品のような医薬部外品であって、効果が証明されていないものである。また、米国食品医薬局(FDA)のように公共機関で正式に認めた薬物治療剤は、ミノキシジルとプロペシアの2つだけであり、未だ脱毛症患者が満足すべき水準の治療方法がないことが現状である。
【0004】
一方、レーザーを利用した脱毛症治療研究が前々から進行されてきたが、低出力レーザー照射による生体刺激効果は、1970年代初期にハンガリーのブダペスト大学のメスト(Mester)教授の先駆的な研究以後、大きい関心を誘発していて、今までも低出力レーザーの医学的利用についての多くの研究がなされている。このような研究によって低出力レーザーが傷治癒及び痛み緩和に効果があるものと明らかにされ、低出力レーザーが照射部位の血流量を増加させるという論文が発表された。低出力レーザーの生体効果は、例えば、「T.I.Karu‘Low−power laser therapy’,In:Biomedical Photonics Handbook,Ch.48(2003),48−1〜48−25,2」,「M.Schaffer,H.Bonel,R.Sroka,P.M.Schaffer,M.Bosch,M.Reiser and E.Dunmke,‘Effects of 780nm diode laser irradiation on blood microcirculation:preliminary findings on time−dependent T1−weighted contrast−enhanced magnetic resonance imaging(MRI)’,J.Photochem.Photibiol.B:Biol.54(2000)55〜60」,「A.Schindl,G.Heinze,M.Schindl,H Pernerstorfer−Schon and L.Schindl,‘Systemic effects of low−intensity laser irradiation on skin microcirculation in patients with diabetic microangiopathy’,Microvascular Research 64(2002)240〜246」などの文献に開示されている。
【0005】
このような低出力レーザーの生体効果を毛髪成長に適用した文献には、「大韓民国檀国大学校医学レーザー研究センター、‘890nm低出力レーザーと680nmLEDの発毛促進効果に対する研究報告書’2003年」が挙げられ、2002年11月18日に公開された大韓民国特許公開第2002−86548号‘デザインと機能が向上したレーザー櫛’と2002年12月27日に公開された国際特許公開第WO02/102,228号‘Zigzag beam splitter for apparatus and method for stimulating hair growth’を参照することができる。上記大韓民国特許公開第2002−86548号には、2個の歯(teeth)列に設置されたレーザーダイオードで632〜670nmの可視赤色光ビームを発生させる技術が公開されている。上記国際特許公開第WO02/102,228号には、1個のレーザー源から多重ビームを提供するためにジグザグレンズを使用し、ビーム分割反射器を使用して単一のレーザービームを分割し、レーザービームから出たエネルギーを均一に分散する技術が公開されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来のレーザー治療技術を利用したものより、さらに脱毛症の治療効果に優れたレーザー照射器を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、毛髪成長を促進できるだけでなく、脱毛症を治療できるレーザー照射器を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、使用するのに便利であり、且つ安全なレーザー照射器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るレーザー照射器は、波長が630nm〜680nmの赤色レーザーダイオードと、波長が750nm〜1,000nmの近赤外線レーザーダイオードとが交互に配列されたレーザー出力部を含む。レーザー出力部から出るレーザーは、周波数が1kHz〜5kHz、パルス幅が100μs〜500μsのパルスであり、その出力が1mW〜5mWであることが好ましい。本発明の一実施例では、4個の赤色レーザーダイオードと3個の近赤外線レーザーダイオードとが交互に一列で配列され、このレーザーダイオードを間に挟んで2列で平行するように配列された複数のブラシ部が配置される。レーザー照射器の全体動作を制御する中央処理装置には、電源分配器を介して電源が供給され、中央処理装置に対する電源分配器の電源出力を、ユーザの操作によって選択的に連結する。レーザーダイオードを駆動するレーザー駆動器は、中央処理装置の発振出力をスイッチングトランジスタに印加することによって、パルス形態のレーザーを出力する。
【0010】
本発明の一例によれば、電源分配器と中央処理装置との間に連結されたスイッチは、電源スイッチとレーザースイッチとを含み、電源スイッチとレーザースイッチが共にオン(ON)状態である場合にのみ、レーザーが出力される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図1〜図3を参照すれば、本発明に係るレーザー照射器100は、レーザー出力部10、第1ブラシ部20a、第2ブラシ部20b、レーザースイッチ30、音響出力口40、電源引入口50、電源ボタン60、音響表示灯70、電源表示灯80、音響ボタン90を含む外観構造となっている。本発明のレーザー照射器100は、ユーザが把手部102を手で把持し、頭髪のブラッシングをする動作を通じて頭皮にレーザーを照射できるように構成されている。
【0012】
レーザー出力部10は、出力波長が630nm〜680nmの4個の赤色レーザーダイオード10aと出力波長が750nm〜1,000nmの3個の近赤外線レーザーダイオード10bとが交互に一列で配列されている。レーザー出力部10の長さは、レーザー照射器を通じて通常のブラッシングのような動作で操作する時、その照射範囲が頭皮の血流量増加などの効果を得るのに充分となるようにすることが好ましく、例えば、その長さを60mmにすることができる。レーザー出力部10から出るレーザーは、周波数が1kHz〜5kHzのパルスであり、パルス幅(pulse duration time)が100μs〜500μsであることが好ましい。また、レーザー出力部10から出るレーザーは、その出力が1mW〜5mWであることが好ましい。
【0013】
レーザー照射器100においてスイッチとブラシ部20a、20bなどの配置は、図1〜図3に示されたものに限らず、様々な形態に変形することができる。但し、レーザー照射器100の全体長さは、ユーザが照射器100を手で把持し、ブラッシングをするのに充分となるようにしなければならないし、電源ボタン60と音響ボタン90は、ユーザがレーザー照射器100を使用する途中に操作しやすいように、把手部102からブラシ部20側にある程度離れて配置することが良い。本発明の一実施例によれば、レーザー照射器100の長さ(図1のL1)は約230mmであり、電源ボタン60までの長さ(図2のL2)は約125mmである。
【0014】
第1ブラシ部20aと第2ブラシ部20bは、レーザー出力部10を間に挟んで一列で平行するように配列された複数の櫛歯を含む。第1ブラシ部20aと第2ブラシ部20bは、頭皮にレーザーを照射する時、髪の毛をかきわけてレーザービームが頭皮に容易に到達するようにし、レーザー出力部10と頭皮が一定の距離を維持するようにする。
【0015】
レーザー作動ボタン30は、電源スイッチ60がオン(ON)状態の時にのみ、レーザー出力部10がオン状態となるようにすることが好ましい。すなわち電源スイッチ60をオン状態にした後、レーザー作動ボタン30を押圧する場合にのみ、レーザー出力部10からレーザーが出力される。レーザー出力部10が作動している状態で、レーザー作動ボタン30をさらに一回押圧する場合、レーザー放出が中止される。
【0016】
スピーカー40は、警告音響(beep)が出力される部分である。
【0017】
電源引入口50には、例えばアダプターを連結することができる。アダプターを介して外部電源(例えば、220VAC、60Hz)を直流電源(例えば、7.5VDC)に変換し、レーザー照射器の動作に必要な電源を供給する。
【0018】
電源ボタン60は、レーザー照射器100に電源を供給し、レーザー放出が待機状態にあるようにするボタンであって、オン状態の時、電源表示灯80が点灯される。電源表示灯80は、例えば、赤色発光ダイオードLEDで構成することができる。電源ボタン60を押圧しない状態では、レーザー作動ボタン30を押圧してもレーザーが放出されず、レーザーの放出途中に、電源ボタン60をさらに一回押圧する場合、電源が遮断され、レーザー放出が中止される。レーザー出力が続く時間が一定の時間(例えば、15分)となる場合、自動で電源が遮断される。
【0019】
音響ボタン90を押圧する場合、音響表示灯70が点灯されるが、レーザーが放出される間に8秒毎に警告音が鳴り、レーザー出力が続く時間が一定の時間(例えば、10分)を経過すれば、警告音が連続的に3回鳴り、中断時間を知らせる。使用時間が15分となれば、長く3回の警告音が鳴り、レーザー放出が中断される。
【0020】
図4乃至図6は、本発明のレーザー照射器100に使用するのに適合したブラシ部の構造を示す。第1ブラシ部20aと第2ブラシ部20bは、一列で平行するように配置された各々9個の歯を含む。本発明の一実施例によれば、第1ブラシ部と第2ブラシ部との間の間隔L3は、例えば、26mmであり、歯の長さL4は、13.5mmである。ブラシ部は、胴体22の係止部23によりレーザー照射器の胴体に固定されることができる。
【0021】
一方、図1乃至図3及び図4乃至図6では、レーザー出力部10からレーザーが出力されると説明したが、レーザー出力部10の出力を光ファイバーでブラシ部20a、20bに連結し、ブラシ部20a、20bの先端からレーザーが出力されるようにすることができる。
【0022】
図7は、本発明のレーザー照射器に使われる回路基板110とレーザー出力部10などの回路部品の配置を示す断面図である。回路基板110は、例えば印刷回路基板(PCB)であり、図7の左側から電源引入口50、スピーカー40、レーザー作動スイッチ30、音響作動スイッチ90、音響表示灯70、電源表示灯80、電源スイッチ60、レーザー出力部10が回路基板110に実装される。レーザー出力部10は、出力波長が異なる半導体レーザーダイオードが交互に一列で配列された構造となっており、回路基板110の水平面に対して垂直上方向にレーザーを出力するように、半導体レーザーダイオードが配置される。例えば、上記で説明したように、レーザー出力部10は、出力波長が630nm〜680nmの4個の赤色レーザーダイオード10aと出力波長が750nm〜1,000nmの3個の近赤外線レーザーダイオード10bとが交互に一列で配列されている。
【0023】
図8は、本発明に係るレーザー照射器の全体回路構成を示すブロック図であり、図9は、本発明の一実施例に係るレーザー照射器の回路図であり、図10乃至図16は、本発明のレーザー照射器に使われることができるレーザー出力部の回路構成図である。
【0024】
図8乃至図16を参照すれば、本発明のレーザー照射器は、中央処理装置(MPU)120、共振器122、発振器124、レーザー駆動器126、レーザーダイオード130、スイッチ132、134、136、音響駆動器138、スピーカー140、LED表示部142、LED146、電源分配器152を含むことができる。
【0025】
中央処理装置120は、レーザー照射器の全体動作を制御し、ユーザのボタン操作によってレーザー駆動器126、音響駆動器138、LED表示部142が動作するようにする。電源分配器152には、アダプター(図示せず)の電源供給部150により外部電源(例えば、AC220V)が7.5V/600mAに変換された電源が供給され、電源分配器152は、アダプターにより変換された電源を安定した5.0V/0.4Aに変換し、これを内部回路に印加して、中央処理装置120、レーザーダイオード130、スピーカー140、LED146が駆動されるようにする。電源分配器152から出た電源は、電源スイッチ(SW1)132、音響スイッチ(SW2)134、レーザースイッチ(SW3)136の操作によって当該電源を中央処理装置120に供給する。一方、本発明のレーザー照射器は、必ずアダプターの電源供給部150により外部電源を変換した電源が供給されるべきものではなく、2次電池を使用して必要な電源を利用することも可能である。2次電池には、例えば、リチウムイオン電池を利用することができ、このように2次電池を使用した場合には充填が可能であり、外部電源に連結される電源線を必要としないので、携帯と移動が容易であるという便利さがある。
【0026】
中央処理装置120には、共振器122を連結して信号の発振が生ずるようにする。発振器124は、中央処理装置120に内蔵することもできるが、発振器124の出力のうち、例えば、5kHzの出力信号は、レーザー駆動器126のスイッチングトランジスタQ1に印加され、レーザーダイオード130であるSLD1〜SLD4及びSLD5〜SLD7が一定の波形のパルス形態のレーザーを出力できるようにする。一方、発振器124の出力のうち、例えば、2.7kHzの出力信号は、音響駆動器138のスイッチングトランジスタQ2に印加される。
【0027】
出力波長が630nm〜680nmの赤色レーザーダイオードSLD1〜SLD4と出力波長が750nm〜1,000nmの近赤外線レーザーダイオードSLD5〜SLD7とは、例えば図10乃至図16に示されたように構成されることができるが、赤色レーザーダイオードには、InGaAlP半導体で構成されるレーザーダイオード(例えば、QL65D5SA)を使用することができ、近赤外線レーザーダイオードには、AlGaAs半導体で構成されるレーザーダイオード(例えば、QL78C6SA)を使用することができる。
【0028】
本発明によって製作されたレーザーダイオードを試験した結果、レーザー出力の正確度は、レーザーパワーメータでレーザー出力部10の放出口の先端で測定した時、赤色レーザー10aの場合、最大出力2.3mWの±0.9%、近赤外線レーザー10bの場合、最大出力1.5mWの±2.0%で、誤差基準±20%を十分に満足することが分かる。また、レーザー照射器を作動させ、5分後の出力P1と10分後の出力P2を基準にしたレーザー出力の安定性[(P1−P2)/P1×100]は、赤色レーザー10aの場合、±1.3%、近赤外線レーザー10bの場合、±2.0%であって、良好であった。また、レーザー照射器を作動させた後、ブラシの先端位置から放出されるレーザーの面積を測定したところ、横80mm、縦9mm(誤差±1%)であった。レーザー波長分析器で測定して、レーザー強度が最大である時の波長は、赤色レーザーの場合、655nm±6.4nm、赤外線レーザーの場合、780nm±5.2nmであった。オシロスコープで測定したレーザーパルスの周波数は、5kHz±0.8%あり、レーザー波長分析器で測定してFWHM(Full Width Half Maximum)によって線幅を求めた出力レーザーパルスのパルス幅は、赤色レーザーの場合、70nm±4.5nm、近赤外線レーザーの場合、60nm±4.0nmであった。
【0029】
一方、図8〜図16には、本発明を実施できるレーザー照射器の回路構成を示したが、本発明のレーザー照射器は、必ずこのような構成の回路だけによって具現され得るものではない。つまり、図8〜図16の回路図は、本発明の属する技術分野においての通常の知識を有する者が本発明を明確に理解し、これを再現できる程度に発明を説明するためのものであり、発明の範囲を制限するものでない。本発明の属する技術分野においての通常の知識を有する者なら、本発明の思想と範囲を逸脱せずに、図9及び図10乃至図16に示された回路を多様に変形したり修正しても、本発明が実施されることができることが自明になるだろう。したがって、このような変形と修正は、全て特許請求範囲に記載された事項により決まる発明の範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0030】
<有効性評価のための臨床試験>
本発明の低出力レーザー照射器の脱毛防止に対する有効性を評価するために、出願人は、臨床試験を実施した。臨床試験のための被験者選定基準は、次の通りである。
被験者選定対象:(1)20歳以上の男性型脱毛症患者、(2)Norwood−Hamilton分類による等級がII〜Vである男性脱毛症患者、(3)臨床試験期間の間に同じ頭の形態を維持する男子、(4)臨床試験期間の間に染色や特別な毛髪管理をしない患者及び(5)被験者本人または法定代理人が被験者同意書に署名した患者。
被験者除外対象:(1)副腎皮質ホルモン剤を経口投与または脱毛部位に局所塗布している患者、(2)臨床試験開始6ヶ月以内に抗アンドロゲン効果のある薬物を使用した患者、(3)臨床試験開始6ヶ月以内にフィナステライド(finasteride)を使用した患者、(4)臨床試験開始6ヶ月以内にミノキシジル製剤または各種機能性製品を塗布した患者、(5)男性型脱毛症以外に円形脱毛症、休止期脱毛症、瘢痕性脱毛症などの他の脱毛疾患がある患者、または(6)その他、臨床試験担当者が不適当であると判断した患者。
【0031】
被験者は、本発明の低出力レーザー照射器を1日1回、週5回、1回10分使用するように使用回数を設定し、使用期間は14週にし、併用療法は実施しなかった。被験者が本発明の低出力レーザー照射器を使用した方法と保管及び管理方法は次の通りである。
(1)使用前の準備事項:(i)機器の使用方法を十分に熟知する。(ii)機器に存在する汚物やホコリなどを除去する。
(2)使用方法:(i)レーザー照射器に電源を連結する。(ii)レーザー放出口が頭皮側に向けるように設定し、レーザー作動ボタンを押圧する。(iii)頭皮の一地点で停止し、レーザーを照射した後、8秒毎に(音響ボタンを使用する場合、8秒毎に警告音が鳴る)2cm程度移動して、頭皮にレーザーを照射する。(iv)頭皮全体にレーザーが照射されるまで上記の(iii)の手続を反復する。(v)電源スイッチを切る。
(3)使用後の保管及び管理方法:(i)電源スイッチを切る。(ii)機器の表面をきれいに拭き、本体の保管ボックスに保管する。(iii)振動、衝撃、湿気を避けて安全な所に保管する。
【0032】
臨床試験手続は、次の通りである。
(1)被験者選定基準と被験者除外基準によって被験者を選定する。
(2)選定された被験者に臨床試験の目的及び方法、機器の使用方法など臨床試験関連情報に対して教育を実施する。
(3)臨床試験担当者は、被験者の選定後、臨床試験の開始前に次の事項を実施する。
<1>選定された被験者に対するNorwood−Hamilton分類による等級を症例記録紙に記録する。
<2>Global photography:頭の上部全体がよく見えるように写真を撮影し、症例記録紙に写真を付着し、撮影条件(カメラ、焦点、距離、フラッシュなど)を記録する。頭髪のツヤなどを除去するために、写真撮影前に髪を洗って臨床試験実施機関に来院するようにする。
<3>フォトトリコグラム(Phototrichogram):単位面積当たり毛髪個数を測定するために、男性型脱毛症状が進行されている部位と脱毛症状がない後頭部の正常部位のうち各々測定部位を選定した後、各々の測定部位を面積が1cmである円形で頭髪を1mm長さで切った後、その中央の一点を入れ墨(tatoo)して表示する。測定部位を15倍率及び30倍率で拡大撮影するために、CCD顕微鏡を使用する。画像分析プログラムは、撮影されたイメージをキャプチャした後、入れ墨点を中心として面積1.0cmである円形の対象領域をコンピュータで仮想の線で表示する。測定部位内で毛髪の位置をマーキングすれば、ユーザが選択した色で表示され、表示が完了すれば、毛髪の個数を自動で測定する。症例記録紙に毛髪個数を記録し、イメージを格納した後、プリントして症例記録紙に付着する。
(4)被験者は、家に帰って本発明のレーザー照射器を用いて週5回、1日1回に10〜15分ずつ頭皮にレーザーが照射されるようにして治療を始める。
(5)被験者は、治療を始めた日から4、9及び14週目となる時点に臨床試験実施機関を訪問して、被験者の治療満足度に対する設問を実施し、(3)の<3>の単位面積当たり毛髪個数を測定し、症例記録紙に記録する。臨床試験担当者は、14周目の被験者に治療前に写真撮影した当該条件で(3)の<2>、<3>の手続を行い、結果を総合して治療効果を判定し、症例記録紙に記載する。
(6)全体被験者に対する臨床試験が終了した場合、結果要約資料と一緒に臨床試験終了事実を臨床試験委員会に報告する。
【0033】
<臨床試験結果1>
大韓民国漢陽大学校病院を通じて出願人が実施した臨床試験は、26名の被験者を対象にし、被験者の年齢分布は26〜60歳であった。臨床試験期間の間に被験者に発生した副作用は、中途脱落者を含んで1件もなかった。
各被験者に対して14週間の臨床試験期間の間に平均毛髪個数の変化を観察した結果は、下記の表1に示された通りであり、治療期間による平均毛髪個数の変化グラフは、図17に示された通りである。
【0034】
【表1】

【0035】
上記表1と図17から明らかなように、本発明のレーザー治療機を使用した治療前と治療後を比較する時、脱毛部位の毛髪数は、4.32%(p<0.005)が増加し、統計学的に有意性がある脱毛防止効果を示すことが分かる。一方、4週目までは、脱毛防止に対する統計学的有意性がないものと示されているが、9週目から有意性を示し、最後の14週目では、比較的高い有意性を示すことが分かる。
【0036】
脱毛が進行されながら休止期の毛髪数は次第に増加し、生長期の毛髪数は、減少するので、脱毛防止効果の有効性を研究するために、休止期及び生長期の毛髪数の変化を観察した。休止期の毛髪数の測定結果は、下記の表2に示し、治療期間による休止期の毛髪数の変化グラフは、図18に示された通りである。生長期の毛髪数の測定結果は、下記の表3に示し、治療期間による生長期の毛髪数変化グラフは、図19に示された通りである。
【0037】
表2、表3及び図17、図18から明らかなように、4週目では、脱毛部位の休止期の毛髪数及び生長期の毛髪数に対する変化が各々3.84%(p>0.05)減少、1.42%(p>0.05)増加したことが分かり、これは、統計学的有意性がない結果であるが、治療開始後9週目では、休止期の毛髪数の減少と生長期の毛髪数の増加が統計学的に有意であることが分かる。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
臨床試験終了後、毛髪個数の変化、生長期及び休止期の毛髪個数の変化などを考慮して、臨床試験担当者が最終治療効果を評価した。治療効果評価点数は、下記の表4に示された通りであり、評価点数の分布度は、図20に示された通りである。表4と図20から明らかなように、治療効果評価点数が1以上である被験者の数は、23名であって、88.5%を占めた。したがって、本発明のレーザー照射器は、男性型脱毛症に対する脱毛防止に効果があるものと評価される。
【0041】
【表4】

【0042】
<臨床試験結果2>
大韓民国江東聖心病院を通じて出願人が実施した臨床試験は、24名の被験者を対象にし、被験者の年齢分布は、27〜57歳であった。臨床試験期間の間に被験者から発生した副作用は、中途脱落者を含んで1件もなかった。
各被験者に対して14週間の臨床試験期間の間に毛髪個数の変化を観察した。被験者の平均毛髪個数の変化は、下記の表5に示された通りであり、治療期間による平均毛髪個数の変化は、図21に示された通りである。
【0043】
【表5】

【0044】
表5と図21から明らかなように、本発明のレーザー照射器を使用した治療前と治療後を比較すると、脱毛部位の毛髪数は、6.01%(p<0.005)が増加し、統計学的に有意性がある脱毛防止効果を示した。
【0045】
治療期間による休止期の毛髪数の測定結果は、下記の表6に示された通りであり、治療期間による休止期の毛髪数の変化グラフは、図22に示された通りであり、生長期の毛髪数の測定結果は、下記の表7の通りであり、治療期間による生長期の毛髪数の変化グラフは、図23に示された通りである。表6、表7及び図22、図23から明らかなように、治療開始後4週目から脱毛部位の休止期の毛髪数及び生長期の毛髪数に対する変化が各々4.52%(p<0.05)減少、4.72%(p<0.005)増加したことが分かり、これより、休止期の毛髪数の減少と生長期の毛髪数の増加が統計学的に有意であることが分かる。
【0046】
【表6】

【0047】
【表7】

【0048】
臨床試験終了後、毛髪個数の変化、生長期及び休止期の毛髪個数の変化などを考慮して、臨床試験担当者が最終治療効果を評価した。治療効果評価点数は、下記の表8に示された通りであり、評価点数の分布度は、図24に示された通りである。表8と図24から分かるように、最終的に治療効果評価点数が1以上の被験者数は、24名のうち20名であるから、治療率は、83.3%であり、本発明のレーザー照射器は、男性型脱毛症に対する脱毛防止に効果があるものと評価される。
【0049】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るレーザー照射器は、発光ダイオードとは異なって、可干渉性(coherence)光が直線で出力されるため、表皮を透過して真皮層に光エネルギーを効果的に伝達し、楕円形の光が水平に出る構造であるレーザーダイオードを使用し、出力波長が異なる2個のレーザーダイオードを組み合わせてレーザー出力が頭皮に照射されるようにする。したがって、出力波長が1個のレーザーダイオードを使用した従来のレーザー照射器またはレーザーダイオードと発光ダイオードを組み合わせて使用する従来のレーザー照射器に比べて、脱毛防止効果と発毛効果に非常に優れている。
【0051】
特に、本発明のレーザーダイオードは、出力波長が630nm〜680nmの赤色レーザーダイオードと出力波長が750nm〜1,000nmの近赤外線レーザーダイオードとを混合配列して、レーザー出力が頭皮に照射されるようにすることで、毛嚢細胞の活性化と頭皮組織の血流増加を最適化することができる。本発明のレーザー照射器は、頭皮の温度を大きく変えることなく、血流量を50%以上増加させるが、血流量が増加すれば、頭皮は、さらに多い営養分と酸素を供給されるようになり、血流が増加しながら頭皮組織に蓄積された高濃度の男性ホルモンを他の部位に移動させることによって、脱毛症を治療し、髪を洗ったことと同様の清潔効果が現れる。一方、外皮層、真皮層、脂肪層で構成された頭皮構造において真皮層に存在する毛嚢は、本発明のレーザー照射器から出力される複合レーザーによりその形成が促進され、毛嚢細胞が刺激され、毛根が堅固になる。
【0052】
このような毛嚢細胞の活性化と血流増加効果は、レーザーの出力を周波数1kHz〜5kHz、パルス幅100μs〜500μsのパルス形態にし、その出力を1mW〜5mWの低出力に維持することによって、さらに極大化することができる。
【0053】
また、本発明のレーザー照射器は、ブラシ形態のレーザー照射器であるから、通常のブラッシング動作を通じてレーザーを照射することができるので、使用が便利であり、レーザー出力を脱毛症の治療に最適に適用することができる。
【0054】
また、本発明のレーザー照射器は、2回操作でレーザーが出力され、一定の時間が経過すれば、レーザーの出力が自動で中断される。また、レーザーが出力される間には、警告音が発生し、レーザー出力の中断は、一回のスイッチ操作で迅速になされるので、さらに安全なレーザー照射器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る低出力レーザー照射器の斜視図
【図2】本発明に係る低出力レーザー照射器の斜視図
【図3】本発明に係る低出力レーザー照射器の側面図
【図4】本発明の低出力レーザー照射器に使用するのに適合したブラシ部の構造を示す断面図
【図5】本発明の低出力レーザー照射器に使用するのに適合したブラシ部の構造を示す断面図
【図6】本発明の低出力レーザー照射器に使用するのに適合したブラシ部の構造を示す断面図
【図7】本発明の低出力レーザー照射器に使われる回路基板とレーザー出力部などの回路部品の配置を示す断面図
【図8】本発明に係る低出力レーザー照射器の全体回路構成を示すブロック図
【図9】本発明の一実施例に係る低出力レーザー照射器の回路図
【図10】本発明の低出力レーザー照射器に使われるレーザー出力部の回路構成図
【図11】本発明の低出力レーザー照射器に使われるレーザー出力部の回路構成図
【図12】本発明の低出力レーザー照射器に使われるレーザー出力部の回路構成図
【図13】本発明の低出力レーザー照射器に使われるレーザー出力部の回路構成図
【図14】本発明の低出力レーザー照射器に使われるレーザー出力部の回路構成図
【図15】本発明の低出力レーザー照射器に使われるレーザー出力部の回路構成図
【図16】本発明の低出力レーザー照射器に使われるレーザー出力部の回路構成図
【図17】臨床試験1で治療期間による平均毛髪個数の変化を示すグラフ
【図18】臨床試験1で治療期間による休止期の毛髪数の変化を示すグラフ
【図19】臨床試験1で治療期間による生長期の毛髪数の変化を示すグラフ
【図20】臨床試験1で治療効果評価のための評価点数の分布図
【図21】臨床試験2で治療期間による平均毛髪個数の変化を示すグラフ
【図22】臨床試験2で治療期間による休止期の毛髪数の変化を示すグラフ
【図23】臨床試験2で治療期間による生長期の毛髪数の変化を示すグラフ
【図24】臨床試験2で治療効果評価のための評価点数の分布図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1出力波長のレーザーダイオードと前記第1出力波長の値と異なる第2出力波長のレーザーダイオードとが交互に配列されたレーザー出力部と、
前記レーザー出力部から出力されるレーザーが頭皮に照射される時、頭髪をブラッシングするブラシ部と、
を含むことを特徴とする低出力レーザー照射器。
【請求項2】
前記第1波長は630nm〜680nmであり、前記第2波長は750nm〜1,000nmであることを特徴とする請求項1に記載の低出力レーザー照射器。
【請求項3】
前記レーザー出力部は、周波数が1kHz〜5kHzのレーザーパルスを出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の低出力レーザー照射器。
【請求項4】
前記パルスは、100μs〜500μsのパルス幅を有することを特徴とする請求項3に記載の低出力レーザー照射器。
【請求項5】
前記レーザー出力部は、出力が1mW〜5mWのレーザーパルスを出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の低出力レーザー照射器。
【請求項6】
波長が630nm〜680nmのレーザーダイオードと波長が750nm〜1,000nmのレーザーダイオードとが交互に配列されたレーザー出力部と、
前記レーザー出力部から出力されるレーザーが頭皮に照射される時、頭髪をブラッシングするブラシ部と、
を含み、前記レーザー出力部から出るレーザーパルスは、周波数が1kHz〜5kHzであり、パルス幅が100μs〜500μsであり、出力が1mW〜5mWであることを特徴とする低出力レーザー照射器。
【請求項7】
前記レーザー出力部は、波長が630nm〜680nmの4個のレーザーダイオードと波長が750nm〜1,000nmの3個のレーザーダイオードとが交互に一列で配列され、前記ブラシ部は、前記一列で配列されたレーザーダイオードを間に挟んで2列で平行するように配列された複数のブラシを含むことを特徴とする請求項1又は6に記載の低出力レーザー照射器。
【請求項8】
前記低出力レーザー照射器の全体動作を制御する中央処理装置と、
前記低出力レーザー照射器の動作に必要な電源変換を行い、この変換された電源を前記中央処理装置に供給する電源分配器と、
前記中央処理装置に対する前記電源分配器の電源出力をユーザの操作によって選択的に連結するスイッチと、
前記中央処理装置の出力信号によって前記レーザー出力部の前記レーザーダイオードを駆動するレーザー駆動器と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1又は6に記載の低出力レーザー照射器。
【請求項9】
前記中央処理装置は、発振出力を前記レーザー駆動器のスイッチングトランジスタに印加することを特徴とする請求項8に記載の低出力レーザー照射器。
【請求項10】
前記スイッチは、電源スイッチ及びレーザースイッチを含み、前記レーザー出力部は、前記電源スイッチ及び前記レーザースイッチが共にオン(ON)状態である場合にのみ、レーザーを出力することを特徴とする請求項8に記載の低出力レーザー照射器。
【請求項11】
前記スイッチは、音響スイッチをさらに含み、前記音響スイッチがオン状態である場合には、警告音が出力されることを特徴とする請求項10に記載の低出力レーザー照射器。
【請求項12】
低出力レーザー照射器において、
波長が655nmのレーザーダイオードと波長が780nmのレーザーダイオードとが交互に配列されたレーザー出力部と、
前記レーザー出力部から出力されるレーザーが頭皮に照射される時、頭髪をブラッシングするブラシ部と、
前記低出力レーザー照射器の全体動作を制御する中央処理装置と、
前記低出力レーザー照射器の動作に必要な電源変換を行い、この変換された電源を前記中央処理装置に供給する電源分配器と、
前記中央処理装置に対する前記電源分配器の電源出力をユーザの操作によって選択的に連結するスイッチと、
前記中央処理装置の出力信号によって前記レーザー出力部の前記レーザーダイオードを駆動するレーザー駆動器と、
を含み、前記レーザー出力部から出るレーザーは、周波数が1kHz〜5kHzであり、パルス幅が100μs〜500μsであり、出力が1mW〜5mWであることを特徴とする低出力レーザー照射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2007−537819(P2007−537819A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526971(P2007−526971)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000746
【国際公開番号】WO2005/115263
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506385221)オースターン・カンパニー・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】