説明

脱臭式塗装焼付け乾燥炉及び脱臭式塗装焼付け方法

【課題】脱臭効率及び脱臭量ともに十分な脱臭式塗装焼付け乾燥炉及び脱臭式塗装焼付け方法を提供することを目的とする。
【解決手段】被塗装物Wを順次、炉内に導入し焼付け塗装を行う焼付け乾燥炉1と、該炉内の空気を排出するための第一の吸い込み口2aと、該第一の吸い込み口とは異なる第二の吸い込み口2bと、前記第一及び第二の吸い込み口から排出された空気を脱臭した後、再度前記焼付け乾燥炉に導入するための吹出し口3と、前記第一及び第二の吸い込み口から排出された空気を脱臭するための熱風発生炉4と、前記熱風発生炉に備えられた燃焼バーナー5と、前記第一の吸い込み口から排出された空気を前記熱風発生炉を経て前記吹出し口に循環させる熱風循環ファン6と、前記第二の吸い込み口から排出された空気を、前記燃焼バーナーの燃焼用空気として供給するための脱臭兼用燃焼ファン7とからなることを特徴とする脱臭式塗装焼付け乾燥炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装焼き付け時に発生するシンナーやヤニ成分の除去を行う脱臭式塗装焼付け乾燥炉及び脱臭式塗装焼付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば金属表面処理としてコンベア移送により、脱脂、水洗、化成処理、水洗、水切り乾燥などの各工程を経た処理物は溶剤塗装、電着塗装、粉体塗装などのいずれか又は組み合わせて行うのが一般的である。
【0003】
このような塗装系では被塗装品をトンネル型のコンベア移送塗装焼き付け炉内へ連続的に移送して、塗装を焼き付ける装置が多く用いられる。
【0004】
この焼き付け炉は、加熱方式としてシュバンクと呼ばれるガス直燃式加熱方法や、熱風循環方式又は、放熱管による間接加熱方式などが用いられ、いずれの加熱方法で被塗装物を焼き付け乾燥したとしても、塗料中に含まれるシンナーや塗料が架橋する際に発生する樹脂モノマー、分解ガスなどの生成により、悪臭が発生する。
【0005】
これら発生するガスは濃度が高くなると炉壁にヤニとなって付着したり、排気管理が悪い場合には火災の危険性もある。
【0006】
従って塗装品を焼き付けたときに生成する、これら各種の悪臭ガス成分は塗装焼き付け炉から排気する必要があるが、極端な例では悪臭成分をそのまま大気中に放出しているところも多い。
【0007】
この対策として排気ガスを脱臭燃焼炉へ導入し、排気ガス中の悪臭を除去した後、大気中へ排気する方法が取り入れられつつある。
【0008】
ところで、この脱臭燃焼炉を付設するには多大の設備費がかかるため、より安価で確実な脱臭除去が可能な方法の開発が望まれていた。
【0009】
本願の出願人に係る特許文献1の発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、以下にその概要を説明する。
【0010】
図2は、特許文献1の発明の直燃脱臭式熱風発生炉を用いた移送式の塗装焼き付け炉のフローシートの一例で、51は直燃脱臭式熱風発生炉本体で、炉内の内囲い内52、外囲い内53及び混合室54で構成される。
【0011】
55は脱臭エアー供給口、56は燃焼バーナー、69は多孔仕切板である。
【0012】
塗装した被塗装物Wは、トンネル型の塗装焼き付け炉70内へ導入されて焼き付けを行う。
【0013】
被塗物Wが塗装焼き付け炉内で焼き付けられると、炉内にはシンナーや樹脂モノマー、分解ガスなどの悪臭成分が発生する。
【0014】
この悪臭成分を含む空気は、脱臭燃焼ファン58により空気吸入部72から吸入され、ダクト73を通って、脱臭エアー供給口55、及び燃焼バーナーに送られ、炉体の内囲い内で脱臭燃焼される。
【0015】
ここで炉体の内囲い内の温度が700℃を下回るとセンサー63Bが感知し、温度調節計63Aの指示によりモーター64が作動しモーターダンパー80Aが閉じる。
【0016】
一方、脱臭燃焼された熱風は混合室を通り、ダクト60により塗装焼き付け炉内の放熱管65に送られ、炉内に放熱した後、循環ファン57によりダクト66、67、61を経て熱風発生炉の外囲い内に戻り、混合室で炉体の内囲い内の熱風と混合して塗装焼き付け炉内の放熱管へ循環される。
【0017】
熱風の一部は塗装焼き付け炉から吸入される空気量に応じてダクト68を通って排熱される。
【0018】
塗装焼き付け炉内の温度制御はセンサー74Bが感知し、温度調節計74Aの指示によりモーター75が作動し、塗装焼き付け炉内が低いときは、モーターダンパー80B及び81が開き、それぞれ助燃エアーとL.P.Gが供給され燃焼する。
【0019】
熱風発生炉内に設けた多孔仕切板は、炉体の内囲い内の熱で赤熱化され、多孔仕切板を通過する炉体の内囲い内の熱風を多孔仕切板の熱で再脱臭する。
【0020】
また、多孔仕切板は炉体の外囲い内の循環熱風が混合室から炉体の内囲い内に直接入らないようにして、炉体の内囲い内の温度低下による脱臭効果の不均一化を防止する。
【特許文献1】特許第2887447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし、上記のような直燃脱臭式熱風発生炉を用いた脱臭の方法では、脱臭効率は従来型に比べて高いものの、全体の脱臭量に関しては十分なものとは言えなかった。
【0022】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、脱臭効率及び脱臭量ともに十分な脱臭式塗装焼付け乾燥炉及び脱臭式塗装焼付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、上述の目的を達成するため、以下(1)〜(4)の構成を備えるものである。
【0024】
(1)被塗装物を順次、炉内に導入し焼付け塗装を行う焼付け乾燥炉と、前記焼付け乾燥炉に備えられた、該炉内の空気を排出するための第一の吸い込み口と、該第一の吸い込み口とは異なる前記焼付け乾燥炉に備えられた第二の吸い込み口と、前記第一及び第二の吸い込み口から排出された空気を脱臭した後、再度前記焼付け乾燥炉に導入するための前記焼付け乾燥炉に備えられた吹出し口と、前記第一及び第二の吸い込み口から排出された空気を脱臭するための熱風発生炉と、前記熱風発生炉に備えられた燃焼バーナーと、前記第一の吸い込み口から排出された空気を前記熱風発生炉の前記燃焼バーナーの火炎近傍を経て前記吹出し口に循環させる熱風循環ファンと、前記第二の吸い込み口から排出された空気を、前記燃焼バーナーの燃焼用空気として供給するための脱臭兼用燃焼ファンとからなることを特徴とする脱臭式塗装焼付け乾燥炉。
【0025】
(2)前記第一の吸い込み口から排出された空気が脱臭される前記燃焼バーナーの火炎近傍の温度が700度以上であり、前記燃焼バーナーの火炎部の温度が1000度以上であることを特徴とする前記(1)記載の脱臭式塗装焼付け乾燥炉。
【0026】
(3)焼付け乾燥炉内の空気を、該乾燥炉に備えられた第一の吹出し口から排出する工程と、該排出された空気を熱風発生炉に導入する工程と、該導入された空気を前記熱風発生炉に備えられた燃焼バーナーの火炎部近傍で脱臭する工程と、該脱臭された空気を前記焼付け乾燥炉に備えられた吹き出し口を経て、該焼付け乾燥炉に戻す工程とからなる第一の脱臭工程と、前記焼付け乾燥炉内の空気を、該乾燥炉に備えられた第二の吹出し口から排出する工程と、該排出された空気を、前記燃焼バーナーの燃焼用空気として導入することで脱臭する工程と、該脱臭された空気を、前記熱風循環ファンにより前記焼付け乾燥炉に備えられた吹き出し口を経て、該焼付け乾燥炉に戻す工程よりなる第二の脱臭工程よりなることを特徴とする脱臭式塗装焼付け方法。
【0027】
(4)前記第一の吹出し口から排出され、熱風発生炉に導入された空気が脱臭される前記燃焼バーナーの火炎部近傍の温度が700度以上であり、前記燃焼バーナーの火炎部の温度が1000度以上であることを特徴とする前記(3)記載の脱臭式塗装焼付け方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、上記構成を有することにより脱臭効率及び脱臭量ともに十分な脱臭式塗装焼付け乾燥炉及び脱臭式塗装焼付け方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例】
【0030】
図1は本発明に係る塗装焼付け乾燥炉のシステム構成を示すブロック図である。なお、本システムにおける空気の循環量は、システムの規模により異なるものであるが、本実施例では毎分約2000mであるものとする。
【0031】
本システムにおいては、被塗装品Wが順次焼付け乾燥炉内1に導入され、塗膜が製品に焼付けられる。この際、ヤニ成分が発生し、乾燥炉内はヤニ成分で充満することとなる。そして、このヤニ成分を含んだ空気は、一部が焼付け乾燥炉内に設置された第一の吸込み口2aから焼付け乾燥炉外に排出され、その排出されたヤニ入りの空気は、図に示したように熱風発生炉4に導入される。更に、熱風発生炉に導入されたこのヤニ入りの熱風は図の脱臭有効温度部8に到達し一部分解される。ここでの温度は、約700度の温度であるものとする。この一部脱臭された空気は熱風循環ファン6により焼付け乾燥炉の吹出し口3に導入され焼付け乾燥炉に戻ることになる。この場合、循環風量のすべてが脱臭されるのでないが、繰り返し循環させ脱臭することで、大きな脱臭量を達成することができる。本実施例では、上記脱臭工程で循環する脱臭空気の量は毎分約25mであるものとする。また、熱風循環ファンにより循環される空気の一部は、屋外に排気される。
【0032】
他方、上記吸込み口より吸込まれる空気以外に、焼付け乾燥炉の第二の吸込み口2bから一部のヤニ入り空気が脱臭兼用燃焼ファン7により燃焼バーナー5に導入される。このバーナーは、前記ヤニ入り空気とLPGガスにより熱風を発生させる。この火炎部9での温度は約1000度であるものとする。この高温部での燃焼により、空気中に含まれたヤニが効率良く除去されることになる。すなわち、ヤニ入り空気が燃焼用空気として導入されることにより、ヤニ成分の分解性が高い脱臭を行うことができる。本実施例では、この脱臭工程で循環する空気の量は毎分約30mであるものとする。
【0033】
以上に述べたように、本発明の塗装焼付け乾燥炉のシステムは2系統の脱臭空気の導入を特徴としており、高効率でかつ脱臭量の十分な脱臭式塗装焼付け乾燥炉及び脱臭式塗装焼付け方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本願の実施例に係る脱臭式塗装焼付け乾燥炉のシステムを示す図
【図2】従来の脱臭焼付け乾燥炉のシステムを示す図
【符号の説明】
【0035】
1 焼付け乾燥炉
2a 第一の吸い込み口
2b 第二の吸い込み口
3 吹出し口
4 熱風発生炉
5 燃焼バーナー
6 熱風循環ファン
7 脱臭兼用燃焼ファン
8 脱臭有効温度部
9 火炎部
10 ヤニ成分
51 直燃脱臭式熱風発生炉本体
52 炉体の内囲い内
53 炉体の外囲い内
54 混合室
55 脱臭エアー供給口
56 燃焼バーナー
57 循環ファン
58 脱臭燃焼ファン
59 液化石油ガス
60、61、66、67、68、73 ダクト
63A、74A 温度調節計
63B、74B センサー
64、75 モーター
65 放熱管
69 多孔仕切板
70 塗装焼き付け炉本体
72 空気吸入口
80A、80B、81 モーターダンパー
W 被塗装品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物を順次、炉内に導入し焼付け塗装を行う焼付け乾燥炉と、
前記焼付け乾燥炉に備えられた、該炉内の空気を排出するための第一の吸い込み口と、
該第一の吸い込み口とは異なる前記焼付け乾燥炉に備えられた第二の吸い込み口と、
前記第一及び第二の吸い込み口から排出された空気を脱臭した後、再度前記焼付け乾燥炉に導入するための前記焼付け乾燥炉に備えられた吹出し口と、
前記第一及び第二の吸い込み口から排出された空気を脱臭するための熱風発生炉と、
前記熱風発生炉に備えられた燃焼バーナーと、
前記第一の吸い込み口から排出された空気を前記熱風発生炉の前記燃焼バーナーの火炎近傍を経て前記吹出し口に循環させる熱風循環ファンと、
前記第二の吸い込み口から排出された空気を、前記燃焼バーナーの燃焼用空気として供給するための脱臭兼用燃焼ファンとからなることを特徴とする脱臭式塗装焼付け乾燥炉。
【請求項2】
前記第一の吸い込み口から排出された空気が脱臭される前記燃焼バーナーの火炎近傍の温度が700度以上であり、前記燃焼バーナーの火炎部の温度が1000度以上であることを特徴とする請求項1記載の脱臭式塗装焼付け乾燥炉。
【請求項3】
焼付け乾燥炉内の空気を、該乾燥炉に備えられた第一の吹出し口から排出する工程と、
該排出された空気を熱風発生炉に導入する工程と、
該導入された空気を前記熱風発生炉に備えられた燃焼バーナーの火炎部近傍で脱臭する工程と、
該脱臭された空気を前記焼付け乾燥炉に備えられた吹き出し口を経て、該焼付け乾燥炉に戻す工程とからなる第一の脱臭工程と、
前記焼付け乾燥炉内の空気を、該乾燥炉に備えられた第二の吹出し口から排出する工程と、
該排出された空気を、前記燃焼バーナーの燃焼用空気として導入することで脱臭する工程と、
該脱臭された空気を、前記熱風循環ファンにより前記焼付け乾燥炉に備えられた吹き出し口を経て、該焼付け乾燥炉に戻す工程よりなる第二の脱臭工程よりなることを特徴とする脱臭式塗装焼付け方法。
【請求項4】
前記第一の吹出し口から排出され、熱風発生炉に導入された空気が脱臭される前記燃焼バーナーの火炎部近傍の温度が700度以上であり、前記燃焼バーナーの火炎部の温度が1000度以上であることを特徴とする請求項3記載の脱臭式塗装焼付け方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−259984(P2008−259984A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105838(P2007−105838)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(591069891)株式会社ケミコート (11)
【Fターム(参考)】