説明

膜厚測定装置、表面温度測定装置、膜厚測定方法および表面温度測定方法

【課題】対象物の表面に形成された被膜の膜厚の分布を精度良く測定することが可能な膜厚測定装置および膜厚測定方法を提供するとともに、表面に被膜が形成された対象物の表面温度の分布を当該被膜の膜厚の分布によらず精度良く測定することが可能な表面温度検査装置および表面温度検査方法を提供する。
【解決手段】波長帯が異なる二種類の赤外線の強度分布から算出される測定温度分布の差分値に基づいて鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚分布を算出する。また、被膜11の膜厚に基づいて鍛造用金型10のキャビティ面10aの放射率分布を補正し、波長帯が異なる三種類の赤外線の強度分布および補正された鍛造用金型10のキャビティ面10aの放射率分布に基づいて鍛造用金型10の表面温度分布を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の膜厚の分布を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物の表面温度を測定する方法として、非接触式の表面温度測定方法が知られている。非接触式の表面温度測定方法の代表例としては、対象物から放射される赤外線を検出することにより対象物の表面温度を測定する赤外線サーモグラフィが挙げられる。
赤外線サーモグラフィは、対象物の表面温度を非接触で測定できるという利点だけでなく、対象物表面の所定領域の温度(温度分布)をリアルタイムで測定できるという利点も有する。
【0003】
しかし、赤外線サーモグラフィにより測定された温度分布は、対象物の放射率や反射率、および周囲の温度により大きく変動するものであること、および、たとえ同一の対象物であっても、当該対象物の表面の状態等により放射率や反射率が大きく変動し得るものであることから、表面状態が時々刻々と変化する対象物については赤外線サーモグラフィによる対象物表面の温度分布測定の精度を確保することは困難であった。
【0004】
このような問題を解決する方法として、三色放射温度計を用いた赤外線サーモグラフィが提案されている。例えば、特許文献1、特許文献2および非特許文献1に記載の如くである。
【0005】
三色放射温度計を用いた赤外線サーモグラフィは、波長帯の異なる三種類の赤外線を検出可能な赤外線カメラ(例えば、フィルターを交換することにより波長帯の異なる赤外線をそれぞれ検出する赤外線カメラ、あるいはそれぞれ波長帯の異なる赤外線を検出する三台の赤外線カメラ)によりそれぞれ対象物の表面温度の分布を測定し、当該測定値を用いて、(1)対象物の黒体温度(真の表面温度)、(2)対象物の放射率(反射率=1−放射率)、および(3)周囲の温度、の三つを変数とする三つの方程式(エネルギー保存則に基づく式)を取得し、これらの連立方程式を解くことにより対象物の黒体温度(真の表面温度)の分布を算出するものである。
三色放射温度計を用いた赤外線サーモグラフィは、精度良く測定することが困難な放射率や反射率、あるいは周囲の温度を必要とせずに対象物の表面温度の分布を測定することが可能であり、作業性に優れる。
【0006】
しかし、三色放射温度計を用いた赤外線サーモグラフィは、表面に被膜が形成された対象物の表面温度を測定する場合には表面温度の測定精度が低下する場合があるという問題がある。
これは、赤外線サーモグラフィにおいては対象物のごく表面の部分を構成する材料が見かけの放射率に大きな影響を及ぼすため、対象物の見かけの放射率は膜厚が大きくなるほど対象物そのものではなく被膜を構成する材料の放射率に近くなる、すなわち、膜厚に応じて対象物の表面の見かけの放射率が変化するため膜厚が薄い部分と厚い部分とでは対象物の見かけの放射率が異なることによる。
従って、表面に被膜が形成された対象物について表面温度の分布を精度良く測定するためには、対象物の表面に形成された被膜の膜厚と見かけの放射率との関係を把握するとともに対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を測定することにより、被膜の膜厚が対象物の表面温度分布の測定に及ぼす影響を除去する(表面温度分布を膜厚分布に基づいて補正する)必要がある。
【0007】
対象物の表面に形成された被膜の膜厚(の分布)を非接触で測定する方法としては、(A)可視光を検出可能な可視カメラにより対象物の表面の画像情報を取得し、当該画像情報に所定の画像処理、例えば二値化処理を施すことにより対象物の表面に被膜が形成されている部分(被膜の膜厚が所定の閾値以上である部分)と被膜が形成されていない部分(被膜の膜厚が所定の閾値未満である部分)とを識別する方法、(B)二色温度計を用いて表面に被膜が形成された対象物の表面温度分布を測定し、各波長帯における測定温度分布から各波長帯における対象物の見かけの放射率の分布を求め、求められた放射率の値の大きさにより対象物の表面に被膜が形成されている部分(被膜の膜厚が所定の閾値以上である部分)と被膜が形成されていない部分(被膜の膜厚が所定の閾値未満である部分)とを識別する方法、が挙げられる。例えば、特許文献3に記載の如くである。
【0008】
しかし、(A)の方法は周囲の測定環境(照明等)の影響を受けやすく膜厚の分布の測定精度(識別精度)が良くないこと、被膜の膜厚分布の測定を行う可視カメラと対象物の表面温度分布の測定を行う赤外線カメラとは別体であるために、両者の視野(測定領域)を同一とすることが困難、ひいては被膜の膜厚分布の測定と対象物の表面温度分布の測定とを同時に行うことが困難であること、設備コストが増大するとともに設備の設置スペースが大きくなること、といった問題がある。
また、(B)の方法は、市販されている二色温度計のうち短波長(2μm程度)の赤外線を用いるものは、通常は点計測のみ可能な構成であって一台で温度分布を測定することができず、温度分布を測定するためには複数台を要し設備コストが増大すること、といった問題がある。
【特許文献1】特開2004−219114号公報
【特許文献2】特開平7−146179号公報
【特許文献3】特開平2−58731号公報
【非特許文献1】非破壊検査第48巻10号(1999) 673頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の如き状況に鑑み、対象物の表面に形成された被膜の膜厚の分布を精度良く測定することが可能な膜厚測定装置および膜厚測定方法を提供するとともに、表面に被膜が形成された対象物の表面温度の分布を当該被膜の膜厚の分布によらず精度良く測定することが可能な表面温度検査装置および表面温度検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、
対象物の表面から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布を検出する赤外線分布検出手段と、
前記赤外線分布検出手段により検出された前記波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値に基づいて前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する膜厚分布算出手段と、
を具備するものである。
【0012】
請求項2においては、
前記膜厚分布算出手段は、
予め求められた波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度の差分値または当該強度から算出される測定温度の差分値と前記被膜の膜厚との関係に係る情報を格納し、当該情報と前記赤外線分布検出手段により検出された前記波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値とを比較することにより、前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出するものである。
【0013】
請求項3においては、
対象物の表面から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる三種類以上の赤外線の強度分布を検出する赤外線分布検出手段と、
前記赤外線分布検出手段により検出された前記波長帯が異なる三種類以上の赤外線のうち異なる二種類の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値に基づいて前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する膜厚分布算出手段と、
前記膜厚分布手段により算出された被膜の膜厚に基づいて前記対象物の表面の放射率分布を補正する放射率分布補正手段と、
前記赤外線分布検出手段により検出された前記波長帯が異なる三種類以上の赤外線の強度分布および前記放射率分布補正手段により補正された前記対象物の表面の放射率分布に基づいて前記対象物の表面温度分布を算出する表面温度分布算出手段と、
を具備するものである。
【0014】
請求項4においては、
前記膜厚分布算出手段は、
予め求められた波長帯が異なる三種類以上の赤外線のうち異なる二種類の赤外線の強度の差分値または当該強度から算出される測定温度の差分値と前記被膜の膜厚との関係に係る情報を格納し、当該情報と前記赤外線分布検出手段により検出された前記波長帯が異なる三種類以上の赤外線のうち異なる二種類の赤外線の強度分布または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値とを比較することにより、前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出するものである。
【0015】
請求項5においては、
対象物の表面から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布を検出する赤外線分布検出工程と、
前記赤外線分布検出工程において検出された前記波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値に基づいて前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する膜厚分布算出工程と、
を具備するものである。
【0016】
請求項6においては、
前記膜厚分布算出工程は、
予め求められた波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度の差分値または当該強度から算出される測定温度の差分値と前記被膜の膜厚との関係に係る情報と前記赤外線分布検出工程において検出された前記波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値とを比較することにより、前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出するものである。
【0017】
請求項7においては、
対象物の表面から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる三種類以上の赤外線の強度分布を検出する赤外線分布検出工程と、
前記赤外線分布検出工程において検出された前記波長帯が異なる三種類以上の赤外線のうち異なる二種類の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値に基づいて前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する膜厚分布算出工程と、
前記膜厚分布算出工程において算出された被膜の膜厚に基づいて前記対象物の表面の放射率分布を補正する放射率分布補正工程と、
前記赤外線分布検出工程において検出された前記波長帯が異なる三種類以上の赤外線の強度分布および前記放射率分布補正工程において補正された前記対象物の表面の放射率分布に基づいて前記対象物の表面温度分布を算出する表面温度分布算出工程と、
を具備するものである。
【0018】
請求項8においては、
前記膜厚分布算出工程は、
予め求められた波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度の差分値または当該強度から算出される測定温度の差分値と前記被膜の膜厚との関係に係る情報と前記赤外線分布検出工程において検出された前記波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値とを比較することにより、前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出するものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1、請求項2、請求項5および請求項6に記載の発明は、対象物の表面に形成された被膜の膜厚の分布を精度良く測定することが可能であるという効果を奏する。
【0020】
請求項3、請求項4、請求項7および請求項8に記載の発明は、表面に被膜が形成された対象物の表面温度の分布を当該被膜の膜厚の分布によらず精度良く測定することが可能であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では、図1乃至図3を用いて本発明に係る膜厚測定装置の実施の一形態である膜厚測定装置101について説明する。
【0022】
図1に示す如く、膜厚測定装置101は鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚の分布を測定するものである。膜厚測定装置101は主として赤外線分布検出装置110、制御装置120を具備する。
【0023】
鍛造用金型10は本発明に係る対象物の実施の一形態であり、その合わせ面には成形品(鍛造用金型10により所定の形状に成形されたもの)に対応する形状のキャビティ面10aが形成される。
【0024】
鍛造用金型10のキャビティ面10aに被膜11が形成される。
被膜11は本発明に係る被膜の実施の一形態であり、鍛造用金型10による鍛造の結果物たる成形品の原材料(例えば、鍛造用鋼からなるビレット等)が鍛造用金型10のキャビティ面10aに沿って塑性変形する際の変形抵抗(摩擦)を低減するために塗布された水性の潤滑剤からなる。
水性の潤滑剤は、例えば黒鉛やフッ素樹脂、二酸化モリブデン、二硫化モリブデン等の微粒子と水とを混合したもの(あるいはこれに種々の分散剤等を添加したもの)であり、鍛造時には乾燥した状態(水分が蒸発した状態)で用いられる。本実施例の水性の潤滑剤は市販されているものであるが、専用品でも良い。
【0025】
鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚の分布は、本来の機能である塑性変形の抵抗を低減する観点からだけではなく、赤外光を用いたキャビティ面10aの表面温度の分布の測定精度を向上する観点からも略均一であることが望ましい。
すなわち、被膜11が相対的に厚い部分と薄い部分とでは被膜11の乾燥前に赤外線を用いた表面温度測定を行う際にキャビティ面10aの見かけの放射率が異なるため、三色放射温度計による各波長帯における鍛造用金型10のキャビティ面10aの測定温度に誤差が生じ、ひいては三色放射温度計を用いた赤外線サーモグラフィにおける表面温度の測定精度(各波長におけるキャビティ面10aの測定温度から算出される「最終的な測定温度」の精度)が低下する。
【0026】
本発明に係る膜厚測定装置の用途は本実施例に限定されず、種々の対象物の表面に形成された種々の材料からなる被膜の膜厚の分布を測定する用途に広く適用可能である。
本発明に係る被膜の他の例としては、鍛造用金型のキャビティ面に形成された離型剤からなる被膜等が挙げられる。
【0027】
赤外線分布検出装置110は本発明に係る赤外線分布検出手段の実施の一形態であり、鍛造用金型10のキャビティ面10aから放射される赤外線のうち、波長帯が異なる二種類の赤外線の強度の分布をそれぞれ検出するものである。
赤外線分布検出装置110は、主として赤外線カメラ111、短波長フィルター112a、中波長フィルター112b、切り替え装置113等を具備する。
【0028】
赤外線カメラ111は赤外線の強度分布を検出するものである。ここで、「強度分布」とは、対象物の表面における強度の分布を指す。
【0029】
赤外線カメラ111は検出素子111a、レンズ111bを具備する。
本実施例の検出素子111aは5μm〜15μm程度の波長の赤外線を検出可能なHgCdTeからなる二次元アレイ型の半導体素子であり、赤外線カメラ111の視野内の所定領域における赤外線の強度の分布を検出することが可能である。
なお、本実施例の赤外線カメラ111における検出素子111aはHgCdTeからなる二次元アレイ型の半導体素子であるが、本発明はこれに限定されず、他の検出素子を用いても良い。
レンズ111bは所定の領域(視野)から放射される赤外線を検出素子111aに収束するものである。本実施例の場合、所定の領域(視野)内に鍛造用金型10のキャビティ面10aを配置することにより、鍛造用金型10のキャビティ面10aから放射される赤外線を検出素子111aに収束する。
【0030】
短波長フィルター112a、中波長フィルター112bはそれぞれ異なる波長帯の赤外線が透過可能なフィルターである。
短波長フィルター112aは図2における「フィルタA」に相当し、波長が7.4μm〜9.0μmの赤外線を透過する。
中波長フィルター112bは図2における「フィルタB」に相当し、波長が9.3μm〜11.3μmの赤外線を透過する。
【0031】
なお、各フィルターの透過する波長帯は本実施例に限定されず、別の波長帯を透過する構成としても良い。また、各フィルターの透過する波長帯の一部が重複しても良い。
また、本実施例の赤外線分布検出装置110は二つの異なる波長帯の赤外線(の強度)をそれぞれ検出する構成としたが、本発明はこれに限定されず、三つ以上の異なる波長帯の赤外線(の強度)を検出する構成としても良い。
【0032】
切り替え装置113は短波長フィルター112a、中波長フィルター112bのいずれが赤外線カメラ111の視野を覆うかを切り替えるものである。
切り替え装置113は主としてディスク113a、モータ113b等を具備する。
ディスク113aは略円盤状の部材であり、短波長フィルター112a、中波長フィルター112bをそれぞれ嵌め込むための孔が形成される。これらの孔は、それぞれディスク113aの中心からの距離が略同じとなる位置に形成される。
モータ113bは回転駆動するアクチュエータであり、その回転軸はディスク113aの中心に固定される。
【0033】
ディスク113aは、これに嵌め込まれた短波長フィルター112a、中波長フィルター112bのいずれかがレンズ111bに対向する位置、すなわち、赤外線カメラ111の視野を覆う位置に配置される。
モータ113bを駆動するとディスク113aが回転し、短波長フィルター112a、中波長フィルター112bの二つのフィルターのうち、赤外線カメラ111の視野を覆う位置に配置されるものが切り替わる。
従って、本実施例における赤外線分布検出装置110が検出する二種類の赤外線の波長帯は、短波長フィルター112aが赤外線カメラ111の視野を覆うときには(1)7.4μm〜9.0μmの波長帯であり、中波長フィルター112bが赤外線カメラ111の視野を覆うときには(2)9.3μm〜11.3μmの波長帯である。
【0034】
図3に示す如く、被膜11を構成する潤滑剤に含まれる水の放射率は、赤外線の波長に対する依存性を有し、(1)7.4μm〜9.0μmの波長帯と(2)9.3μm〜11.3μmの波長帯とでは水の放射率が異なる。ここで、図3における放射角ψは、キャビティ面10aにおける赤外線が放射される位置と赤外線カメラ111の測定方向との成す角度を指す(図1参照)。
なお、本実施例では被膜11を構成する潤滑剤に含まれる水の放射率が異なる二つの波長帯を赤外線分布検出装置110が検出する赤外線の波長帯として選択する構成としたが、本発明はこれに限定されず、被膜に含まれる材料のうち、放射率が赤外線の波長依存性を有するものに着目し、当該材料について放射率が異なる二つの波長帯を赤外線分布検出手段が検出する赤外線の波長帯として選択する構成とすれば良い。
【0035】
本実施例ではディスク113aにそれぞれ異なる波長帯の赤外線を透過可能な二つのフィルター(短波長フィルター112a、中波長フィルター112b)を嵌め込み、モータ113bでディスク113aを回転駆動することにより二つのフィルターのいずれが赤外線カメラ111の視野を覆うかを切り替える構成としたが、本発明はこれに限定されず、他の方法(例えば、二つ以上のフィルターを並べて嵌め込んだ部材をスライドする等)により赤外線カメラの視野を覆うフィルターを切り替える構成としても同様の効果を奏する。
【0036】
制御装置120は主として制御部121、入力部122、表示部123等を具備する。
【0037】
制御部121は膜厚測定装置101の一連の動作を制御するものである。
制御部121は、種々のプログラム等(例えば、後述する検出動作制御プログラム、膜厚分布算出プログラム、および各フィルターを用いた場合の測定温度(測定値)の差分値と被膜11の膜厚との関係を示すデータテーブル等)を格納し、これらのプログラム等を展開し、これらのプログラム等に従って所定の演算を行い、演算結果等を保管(記憶)することができる。
【0038】
制御部121は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であっても良く、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であっても良い。
本実施例の制御部121は専用品であるが、市販のパーソナルコンピュータやワークステーション等に上記プログラム等を格納したもので達成することも可能である。
【0039】
制御部121は赤外線分布検出装置110の赤外線カメラ111に接続され、赤外線カメラ111を動作させるための信号を送信可能であるとともに、赤外線カメラ111により検出された鍛造用金型10のキャビティ面10aから放射される各波長帯における赤外線の強度の分布に係る情報を受信(取得)することが可能である。
また、制御部121は切り替え装置113のモータ113bに接続され、モータ113bの駆動および停止に係る信号を送信することにより、モータ113bの動作を制御する、すなわち短波長フィルター112a、中波長フィルター112bのいずれが赤外線カメラ111の視野を覆うかを選択することが可能である。
【0040】
入力部122は制御部121に接続され、制御部121に膜厚測定装置101の動作に係る種々の情報・指示等を入力するものである。
本実施例の入力部122は専用品であるが、市販のキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、スイッチ等を用いても同様の効果を達成することが可能である。
【0041】
表示部123は膜厚測定装置101の動作状況、入力部122から制御部121への入力内容、膜厚測定装置101による測定結果等を表示するものである。
本実施例の表示部123は専用品であるが、市販のモニターや液晶ディスプレイ等を用いても同様の効果を達成することが可能である。
【0042】
また、市販のタッチパネル等を用いて入力部122としての機能と表示部123としての機能を一体化したものを達成することが可能である。
【0043】
以下では、制御部121の詳細構成について説明する。
制御部121は、機能的には検出動作制御部121a、膜厚分布算出部121b等を具備する。
【0044】
検出動作制御部121aは、赤外線分布検出装置110、より詳細には赤外線カメラ111および切り替え装置113の動作を制御するものである。
実体的には、制御部121が、予め格納された検出動作制御プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、検出動作制御部121aとしての機能を果たす。
【0045】
検出動作制御部121aは、切り替え装置113のモータ113bを駆動し、短波長フィルター112aが赤外線カメラ111の視野を覆う状態とする。
そして、短波長フィルター112aが赤外線カメラ111の視野を覆った状態で赤外線カメラ111により検出された鍛造用金型10のキャビティ面10aから放射される赤外線の強度の分布を取得する。
【0046】
次に、検出動作制御部121aは、切り替え装置113のモータ113bを駆動し、中波長フィルター112bが赤外線カメラ111の視野を覆う状態とする。
そして、中波長フィルター112bが赤外線カメラ111の視野を覆った状態で赤外線カメラ111により検出された鍛造用金型10のキャビティ面10aから放射される赤外線の強度の分布を取得する。
【0047】
膜厚分布算出部121bは本発明に係る膜厚分布算出手段の実施の一形態であり、赤外線分布検出装置110により検出された波長帯が異なる二種類の赤外線の強度分布からそれぞれ算出される各測定点(画素)についての測定温度の差分値に基づいて鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚分布を算出するものである。
実体的には、制御部121が、予め格納された膜厚分布算出プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、膜厚分布算出部121bとしての機能を果たす。
【0048】
膜厚分布算出部121bは、赤外線分布検出装置110の視野内の各測定点(画素)について、赤外線分布検出装置110により検出された「7.4μm〜9.0μmの波長帯の赤外線の強度に基づいて算出されるキャビティ面10aの見かけの表面温度」と、「9.3μm〜11.3μmの波長帯の赤外線の強度に基づいて算出されるキャビティ面10aの見かけの表面温度」との差分値(一方から他方を減算した値)を算出し、これらを合わせて差分値の分布を求める。
次に、膜厚分布算出部121bは、予め実験あるいは理論計算等により求められた「各波長帯における表面温度の差分値と被膜11の膜厚との関係を示すデータテーブルまたは関係式(予め制御部121に格納されている)」を用いて、当該データテーブルと先に算出した差分値とを比較することにより、または当該関係式に先に算出した差分値を代入することにより、赤外線分布検出装置110の視野内の各測定点(画素)における被膜11の膜厚を算出し、これらの算出結果を合わせて膜厚分布を求める。
求められた膜厚分布(の算出結果)は、制御部121に記憶されるとともに、表示部123に表示される。
【0049】
なお、本実施例では表示部123は求められた膜厚分布(の算出結果)を各測定点(画素)の膜厚に応じて異なる色で表したキャビティ面10aの形状を示す画像の形式で表示するが、本発明はこれに限定されず、膜厚分布(の算出結果)をデータテーブルの形式で表示しても良い。
【0050】
以上の如く、膜厚測定装置101は、
鍛造用金型10の表面(キャビティ面10a)から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる二種類の赤外線(波長が7.4μm〜9.0μmの赤外線および波長が9.3μm〜11.3μmの赤外線)の強度分布を検出する赤外線分布検出装置110と、
赤外線分布検出装置110により検出された波長帯が異なる二種類の赤外線の強度分布から算出される測定温度分布の差分値に基づいて鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚分布を算出する膜厚分布算出部121bと、
を具備するものである。
また、膜厚測定装置101の膜厚分布算出部121bは、
予め求められた波長帯が異なる二種類の赤外線の強度から算出される測定温度の差分値と被膜11の膜厚との関係に係る情報を格納し、当該情報(本実施例ではデータテーブルまたは関係式)と赤外線分布検出装置110により検出された波長帯が異なる二種類の赤外線の強度分布から算出される測定温度分布の差分値とを比較(または代入)することにより、鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚分布を算出するものである。
このように構成することにより、鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚の分布を精度良く測定することが可能である。特に、周囲の環境(照明の有無等)の影響を受けることなく膜厚の分布を非接触で測定することが可能である点において優れている。
【0051】
本実施例では二種類の波長帯の赤外線強度からそれぞれ算出される測定温度の差分値に基づいて膜厚を算出する構成としたが、本発明はこれに限定されず、二種類の波長帯の赤外線強度の差分値に基づいて前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する構成としても同様の効果を奏する。
【0052】
本実施例では鍛造用金型10のキャビティ面10aの各測定点(画素)についての膜厚を算出する構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば被膜の膜圧が所定の値(閾値)以上である場合には当該測定点に被膜が形成されていると判定し、被膜の膜圧が所定の値(閾値)未満である場合には当該測定点に被膜が形成されていないと判定することにより、対象物の表面の各測定点についての被膜の形成の有無を判定する構成としても同様の効果を奏する。
【0053】
以下では、図2乃至図4を用いて本発明に係る表面温度測定装置の実施の一形態である表面温度測定装置201について説明する。
【0054】
図4に示す如く、表面温度測定装置201は鍛造用金型10の表面、特にキャビティ面10aの温度の分布を測定するものである。表面温度測定装置201は主として赤外線分布検出装置210、制御装置220を具備する。
【0055】
本実施例における鍛造用金型10および被膜11については、図1に示す膜厚測定装置101におけるものと略同じ構成であることから、詳細な説明を省略する。
【0056】
本発明に係る表面測定装置の用途は本実施例に限定されず、種々の材料からなる被膜が形成された種々の対象物の表面の温度分布を測定する用途に広く適用可能である。
【0057】
赤外線分布検出装置210は本発明に係る赤外線分布検出手段の実施の一形態であり、鍛造用金型10のキャビティ面10aから放射される赤外線のうち、波長帯が異なる三種類の赤外線の強度の分布をそれぞれ検出するものである。
赤外線分布検出装置210は、主として赤外線カメラ211、短波長フィルター212a、中波長フィルター212b、長波長フィルター212c、切り替え装置113等を具備する。
【0058】
赤外線カメラ111は赤外線の強度分布を検出するものである。ここで、「強度分布」とは、対象物の表面における強度の分布を指す。
【0059】
赤外線カメラ211は検出素子211a、レンズ211bを具備する。
本実施例の赤外線カメラ211の基本的な構成は図1に示す膜厚測定装置101における赤外線カメラ111と略同じであることから、詳細な説明を省略する。
【0060】
短波長フィルター212a、中波長フィルター212b、長波長フィルター212cはそれぞれ異なる波長帯の赤外線を透過することが可能なフィルターである。
短波長フィルター212aは図2における「フィルタA」に相当し、波長が7.4μm〜9.0μmの赤外線を透過する。
中波長フィルター212bは図2における「フィルタB」に相当し、波長が9.3μm〜11.3μmの赤外線を透過する。
長波長フィルター212cは図2における「フィルタC」に相当し、波長が10.9μm〜14.3μmの赤外線を透過する。
【0061】
なお、各フィルターの透過する波長帯は本実施例に限定されず、別の波長帯を透過する構成としても良い。また、各フィルターの透過する波長帯の一部が重複しても良い。
また、本実施例の赤外線分布検出装置210は三つの異なる波長帯の赤外線(の強度)をそれぞれ検出する構成としたが、本発明はこれに限定されず、四つ以上の異なる波長帯の赤外線(の強度)を検出する構成としても良い。
【0062】
切り替え装置213は短波長フィルター212a、中波長フィルター212b、長波長フィルター212cのいずれが赤外線カメラ211の視野を覆うかを切り替えるものである。
切り替え装置213は主としてディスク213a、モータ213b等を具備する。
ディスク213aは略円盤状の部材であり、短波長フィルター212a、中波長フィルター212b、長波長フィルター212cをそれぞれ嵌め込むための孔が形成される。これらの孔は、それぞれディスク213aの中心からの距離が略同じとなる位置に形成される。
モータ213bは回転駆動するアクチュエータであり、その回転軸はディスク213aの中心に固定される。
【0063】
ディスク213aは、これに嵌め込まれた短波長フィルター212a、中波長フィルター212b、長波長フィルター212cのいずれかがレンズ211bに対向する位置、すなわち、赤外線カメラ211の視野を覆う位置に配置される。
モータ213bを駆動するとディスク213aが回転し、短波長フィルター212a、中波長フィルター212b、長波長フィルター212cの三つのフィルターのうち、赤外線カメラ211の視野を覆う位置に配置されるものが切り替わる。
従って、本実施例における赤外線分布検出装置210が検出する三種類の赤外線の波長帯は、短波長フィルター212aが赤外線カメラ211の視野を覆うときには(1)7.4μm〜9.0μmの波長帯であり、中波長フィルター212bが赤外線カメラ211の視野を覆うときには(2)9.3μm〜11.3μmの波長帯であり、長波長フィルター212cが赤外線カメラ211の視野を覆うときには(3)10.9μm〜14.3μmの波長帯である。
【0064】
図3に示す如く、被膜11を構成する潤滑剤に含まれる水の放射率は、赤外線の波長に対する依存性を有し、(1)7.4μm〜9.0μmの波長帯と(2)9.3μm〜11.3μmの波長帯とでは水の放射率が異なる。ここで、図3における放射角ψは、キャビティ面10aにおける赤外線が放射される位置と赤外線カメラ211の測定方向との成す角度を指す(図4参照)。
なお、本実施例では被膜11を構成する潤滑剤に含まれる水の放射率が異なる二つの波長帯を含む三つ以上の波長帯を赤外線分布検出装置210が検出する赤外線の波長帯として選択する構成としたが、本発明はこれに限定されず、被膜に含まれる材料のうち、放射率が赤外線の波長依存性を有するものに着目し、当該材料について放射率が異なる二つの波長帯を含む三つ以上の波長帯を赤外線分布検出手段が検出する赤外線の波長帯として選択する構成とすれば良い。
【0065】
本実施例ではディスク213aにそれぞれ異なる波長帯の赤外線を透過可能な三つのフィルター(短波長フィルター212a、中波長フィルター212b、長波長フィルター212c)を嵌め込み、モータ213bでディスク213aを回転駆動することにより三つのフィルターのいずれが赤外線カメラ211の視野を覆うかを切り替える構成としたが、本発明はこれに限定されず、他の方法(例えば、三つ以上のフィルターを並べて嵌め込んだ部材をスライドする等)により赤外線カメラの視野を覆うフィルターを切り替える構成としても同様の効果を奏する。
【0066】
制御装置220は主として制御部221、入力部222、表示部223等を具備する。
【0067】
制御部221は表面温度測定装置201の一連の動作を制御するものである。
制御部221は、種々のプログラム等(例えば、後述する検出動作制御プログラム、膜厚分布算出プログラム、放射率分布補正プログラム、表面温度分布算出プログラム、各フィルターを用いた場合の測定温度(測定値)の差分値と被膜の膜厚11との関係を示すデータテーブル、被膜11の膜厚と見かけの放射率との関係を示すデータテーブル等)を格納し、これらのプログラム等を展開し、これらのプログラム等に従って所定の演算を行い、演算結果等を保管(記憶)することができる。
【0068】
制御部221は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であっても良く、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であっても良い。
本実施例の制御部121は専用品であるが、市販のパーソナルコンピュータやワークステーション等に上記プログラム等を格納したもので達成することも可能である。
【0069】
制御部221は赤外線分布検出装置210の赤外線カメラ211に接続され、赤外線カメラ211を動作させるための信号を送信可能であるとともに、赤外線カメラ211により検出された鍛造用金型10のキャビティ面10aから放射される各波長帯における赤外線の強度の分布に係る情報を受信(取得)することが可能である。
また、制御部221は切り替え装置213のモータ213bに接続され、モータ213bの駆動および停止に係る信号を送信することにより、モータ213bの動作を制御する、すなわち短波長フィルター212a、中波長フィルター212b、長波長フィルター212cのいずれが赤外線カメラ211の視野を覆うかを選択することが可能である。
【0070】
入力部222は制御部221に接続され、制御部221に表面温度測定装置201の動作に係る種々の情報・指示等を入力するものである。
本実施例の入力部222は専用品であるが、市販のキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、スイッチ等を用いても同様の効果を達成することが可能である。
【0071】
表示部223は表面温度測定装置201の動作状況、入力部222から制御部221への入力内容、表面温度測定装置201による測定結果等を表示するものである。
本実施例の表示部223は専用品であるが、市販のモニターや液晶ディスプレイ等を用いても同様の効果を達成することが可能である。
【0072】
また、市販のタッチパネル等を用いて入力部222としての機能と表示部223としての機能を一体化したものを達成することが可能である。
【0073】
以下では、制御部221の詳細構成について説明する。
制御部221は、機能的には検出動作制御部221a、膜厚分布算出部221b、放射率分布補正部221c、表面温度分布算出部221d等を具備する。
【0074】
検出動作制御部221aは、赤外線分布検出装置210、より詳細には赤外線カメラ211および切り替え装置213の動作を制御するものである。
実体的には、制御部221が、予め格納された検出動作制御プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、検出動作制御部221aとしての機能を果たす。
【0075】
検出動作制御部221aは、切り替え装置213のモータ213bを駆動し、短波長フィルター212aが赤外線カメラ211の視野を覆う状態とする。
そして、短波長フィルター212aが赤外線カメラ211の視野を覆った状態で赤外線カメラ211により検出された鍛造用金型10のキャビティ面10aから放射される赤外線の強度の分布を取得する。
【0076】
次に、検出動作制御部221aは、切り替え装置213のモータ213bを駆動し、中波長フィルター212bが赤外線カメラ211の視野を覆う状態とする。
そして、中波長フィルター212bが赤外線カメラ211の視野を覆った状態で赤外線カメラ211により検出された鍛造用金型10のキャビティ面10aから放射される赤外線の強度の分布を取得する。
【0077】
続いて、検出動作制御部221aは、切り替え装置213のモータ213bを駆動し、長波長フィルター212cが赤外線カメラ211の視野を覆う状態とする。
そして、長波長フィルター212cが赤外線カメラ211の視野を覆った状態で赤外線カメラ211により検出された鍛造用金型10のキャビティ面10aから放射される赤外線の強度の分布を取得する。
【0078】
膜厚分布算出部221bは本発明に係る膜厚分布算出手段の実施の一形態であり、赤外線分布検出装置210により検出された波長帯が異なる三種類の赤外線のうち、異なる二種類の赤外線の強度分布からそれぞれ算出される各測定点(画素)についての測定温度の差分値に基づいて鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚分布を算出するものである。
実体的には、制御部221が、予め格納された膜厚分布算出プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、膜厚分布算出部121bとしての機能を果たす。
【0079】
膜厚分布算出部221bは、赤外線分布検出装置210の視野内の各測定点(画素)について、赤外線分布検出装置210により検出された「7.4μm〜9.0μmの波長帯の赤外線の強度に基づいて算出されるキャビティ面10aの見かけの表面温度」と、「9.3μm〜11.3μmの波長帯の赤外線の強度に基づいて算出されるキャビティ面10aの見かけの表面温度」との差分値(一方から他方を減算した値)を算出し、これらを合わせて差分値の分布を求める。
次に、膜厚分布算出部221bは、予め実験あるいは理論計算等により求められた「各波長帯における表面温度の差分値と被膜11の膜厚との関係を示すデータテーブルまたは関係式(予め制御部221に格納されている)」を用いて、当該データテーブルと先に算出した差分値とを比較することにより、または当該関係式に先に算出した差分値を代入することにより、赤外線分布検出装置210の視野内の各測定点(画素)における被膜11の膜厚を算出し、これらの算出結果を合わせて膜厚分布を求める。
求められた膜厚分布(の算出結果)は、制御部221に記憶されるとともに、表示部223に表示される。
【0080】
なお、本実施例では表示部223は求められた膜厚分布(の算出結果)を各測定点(画素)の膜厚に応じて異なる色で表したキャビティ面10aの形状を示す画像の形式で表示するが、本発明はこれに限定されず、膜厚分布(の算出結果)をデータテーブルの形式で表示しても良い。
また、鍛造用金型10のキャビティ面10aの表面温度分布のみを表示し被膜11の膜厚分布を表示する必要がない場合には被膜11の膜厚分布を表示部223に表示しない構成としても良い。
【0081】
放射率分布補正部221cは本発明に係る放射率分布補正手段の実施の一形態であり、膜厚分布算出部221bにより算出された被膜11の膜厚に基づいて鍛造用金型10のキャビティ面10aの放射率分布を補正するものである。
実体的には、制御部221が、予め格納された放射率分布補正プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、放射率分布補正部221cとしての機能を果たす。
【0082】
放射率分布補正部221cは、予め実験あるいは理論計算等により求められた「被膜11の膜厚と鍛造用金型10のキャビティ面10aの放射率との関係を示すデータテーブルまたは関係式(予め制御部221に格納されている)」を用いて、当該データテーブルと、膜厚分布算出部221bにより算出された膜厚とを比較することにより、または当該関係式に膜厚分布算出部221bにより算出された膜厚を代入することにより、赤外線分布検出装置110の視野内の各測定点(画素)における鍛造用金型10のキャビティ面10aの放射率を算出し、これらの算出結果を合わせて放射率分布を求める。
求められた放射率分布(の算出結果)は、制御部221に記憶される。なお、求められた放射率分布(の算出結果)を表示部223に表示しても良い。
【0083】
表面温度分布算出部221dは本発明に係る表面温度分布算出手段の実施の一形態であり、(i)赤外線分布検出装置210により検出された波長帯が異なる三種類の赤外線の強度分布、および(ii)放射率分布補正部221cにより補正された鍛造用金型10のキャビティ面10aの放射率分布、に基づいて鍛造用金型10のキャビティ面10aの温度分布(表面温度分布)を算出するものである。
実体的には、制御部221が、予め格納された表面温度分布算出プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、表面温度分布算出部221dとしての機能を果たす。
【0084】
一般的な三色放射温度計を用いた赤外線サーモグラフィにおける対象物の黒体温度(真の表面温度)Tsの計算方法は、以下の数1乃至数3および数4乃至数6からそれぞれ乗数n1、n2、n3が同一とならないように一式ずつ選択し、二分法、ニュートン法あるいはニュートンプソン法等を適用して収束解を得る(F(Ts)=F(Ta)=0となるTsを求める)ことによりTsを決定するものである(非特許文献1参照)。
上記式の選択のパターンは計6通り(数1と数5、数1と数6、数2と数4、数2と数6、数3と数4、数3と数5)である。
ここで、Trs、Trs、Trsはそれぞれ赤外線分布検出装置210により検出された各波長帯における(見かけの)測定温度、Taは周囲温度、乗数n1、n2、n3はそれぞれ赤外線の波長帯および赤外線カメラの検出素子の種類により決まる値、である。
【0085】
【数1】

【0086】
【数2】

【0087】
【数3】

【0088】
【数4】

【0089】
【数5】

【0090】
【数6】

【0091】
本実施例の場合、表面温度分布算出部221dは、まず(i)赤外線分布検出装置210により検出された各測定点(画素)についてのTrs、Trs、Trsを、対応する測定点(画素)についての(ii)放射率分布補正部221cにより補正された鍛造用金型10のキャビティ面10aの放射率を用いて補正する。
次に、表面温度分布算出部221dは、数1乃至数6における測定温度Trs乃至Trsに、それぞれ補正されたTrs、Trs、Trsを代入して計算を行うことにより、鍛造用金型10のキャビティ面10aの表面温度Tsの分布を算出する。
【0092】
そして、鍛造用金型10のキャビティ面10aの表面温度の収束解を求める際に、(a)計算の繰り返し回数とともに表面温度Tsと周囲温度Taがともに収束する場合、または(b)所定の計算の繰り返し回数(例えば10回)の時点で表面温度Tsは収束するが周囲温度Taが発散する場合、には算出された表面温度Tsが正常であると判定し、(c)所定の計算の繰り返し回数(例えば10回)の時点で周囲温度Taは収束するが表面温度Tsが発散する場合には算出された表面温度Tsが異常であると判定する。
本実施例の場合、上記6通りのパターンの全てについて計算を行い、異常であると判定された場合を除いた残りの表面温度Tsの計算結果に基づいてTsを決定する(例えば、正常であると判定されたTsの平均値または中央値を最終的なTsの計算値とする)。
【0093】
算出された鍛造用金型10のキャビティ面10aの表面温度Tsの分布は制御部221に記憶されるとともに、表示部223に表示される。
【0094】
なお、本実施例では表示部223は求められた表面温度分布(の算出結果)を各測定点(画素)の表面温度に応じて異なる色で表したキャビティ面10aの形状を示す画像(熱画像)の形式で表示するが、本発明はこれに限定されず、表面温度分布(の算出結果)をデータテーブルの形式で表示しても良い。
【0095】
以上の如く、表面温度測定装置201は、
鍛造用金型10の表面(キャビティ面10a)から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる三種類の赤外線(波長が7.4μm〜9.0μmの赤外線、波長が9.3μm〜11.3μmの赤外線および波長が10.9μm〜14.3μmの赤外線)の強度分布を検出する赤外線分布検出装置210と、
赤外線分布検出装置210により検出された波長帯が異なる三種類の赤外線のうち、異なる二種類の赤外線(本実施例の場合、波長が7.4μm〜9.0μmの赤外線および波長が9.3μm〜11.3μmの赤外線)の強度分布からそれぞれ算出される各測定点(画素)についての測定温度の差分値に基づいて鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚分布を算出する膜厚分布算出部221bと、
膜厚分布算出部221bにより算出された被膜11の膜厚に基づいて鍛造用金型10のキャビティ面10aの放射率分布を補正する放射率分布補正部221cと、
赤外線分布検出装置210により検出された波長帯が異なる三種類の赤外線の強度分布および放射率分布補正部221cにより補正された鍛造用金型10のキャビティ面10aの放射率分布に基づいて鍛造用金型10の表面温度分布(キャビティ面10aの温度分布)を算出する表面温度分布算出部221dと、
を具備するものである。
また、表面温度測定装置201の膜厚分布算出部221bは、
予め求められた波長帯が異なる二種類の赤外線の強度から算出される測定温度の差分値と被膜11の膜厚との関係に係る情報を格納し、当該情報(本実施例ではデータテーブルまたは関係式)と赤外線分布検出装置210により検出された波長帯が異なる二種類の赤外線の強度分布から算出される測定温度分布の差分値とを比較(または代入)することにより、鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚分布を算出するものである。
このように構成することにより、キャビティ面10aに被膜11が形成された鍛造用金型10の表面温度の分布を被膜11の膜厚の分布(より厳密には、当該膜厚により変化する見かけの放射率)によらず精度良く測定することが可能である。
また、本実施例は、同一の測定視野で膜厚測定装置としての被膜の膜厚測定と三色放射温度計としての表面温度測定とを行うことから、膜厚測定と表面温度測定の時間差が(ほとんど)無く、表面温度の経時的な変化が大きい対象物についての測定精度の向上に寄与する。
さらに、本実施例は、同一の装置に膜厚測定装置としての機能と表面温度測定装置としての機能とを含んでいるため、膜厚測定装置と表面温度測定装置とをそれぞれ別体とした場合に比べて設備の設置スペースを小さくすることが可能であるとともに設備コストを削減することが可能である。
【0096】
本実施例では三種類以上の波長帯のうち、選択された二種類の赤外線の強度からそれぞれ算出される測定温度の差分値に基づいて膜厚を算出する構成としたが、本発明はこれに限定されず、二種類の波長帯の赤外線強度の差分値に基づいて前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する構成としても同様の効果を奏する。
上記三種類以上の波長帯のうち、膜厚分布の測定に用いる二種類の波長帯をどのように選択するかは、被膜を構成する材料の放射率の赤外線の波長への依存性の他、各波長帯における赤外線検出手段の検出感度等に基づいて定めることが望ましい。
本実施例の場合、図2および図3に示すフィルタAとフィルタBに対応する波長帯の組み合わせとしているが、これは赤外線カメラ211の検出素子211aが比較的短い波長帯(5〜11μm)において高い検出感度を有することによる。
【0097】
本実施例では鍛造用金型10のキャビティ面10aの各測定点(画素)についての膜厚を算出する構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば被膜の膜圧が所定の値(閾値)以上である場合には当該測定点に被膜が形成されていると判定し、被膜の膜圧が所定の値(閾値)未満である場合には当該測定点に被膜が形成されていないと判定することにより、対象物の表面の各測定点についての被膜の形成の有無を判定する構成としても同様の効果を奏する。
【0098】
以下では、図1および図5を用いて本発明に係る膜厚測定方法の実施の一形態について説明する。
本発明に係る膜厚測定方法の実施の一形態は膜厚測定装置101を用いて鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚の分布を測定する方法であり、図5に示す如く、主として赤外線分布検出工程S1100、膜厚分布算出工程S1200を具備する。
【0099】
赤外線分布検出工程S1100は鍛造用金型10のキャビティ面10aから放射される赤外線のうち、波長帯が異なる二種類の赤外線の強度の分布をそれぞれ検出する工程である。
【0100】
膜厚分布算出工程S1200は、赤外線分布検出工程S1100において検出された波長帯が異なる二種類の赤外線の強度分布からそれぞれ算出される各測定点(画素)についての測定温度の差分値に基づいて鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚分布を算出する工程である。
より詳細には、膜厚分布算出工程S1200は、予め求められた波長帯が異なる二種類の赤外線の強度から算出される測定温度の差分値と被膜11の膜厚との関係に係る情報(本実施例ではデータテーブルまたは関係式)と赤外線分布検出装置110により検出された波長帯が異なる二種類の赤外線の強度分布から算出される測定温度分布の差分値とを比較(または代入)することにより、鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚分布を算出する。
【0101】
以上の如く構成することにより、鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚の分布を精度良く測定することが可能である。特に、周囲の環境(照明の有無等)の影響を受けることなく膜厚の分布を非接触で測定することが可能である点において優れている。
【0102】
以下では、図4および図6を用いて本発明に係る表面温度測定方法の実施の一形態について説明する。
本発明に係る表面測定方法の実施の一形態は表面温度測定装置201を用いて鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚の分布を測定する方法であり、図6に示す如く、主として赤外線分布検出工程S2100、膜厚分布算出工程S2200、放射率分布補正工程S2300、表面温度分布算出工程S2400を具備する。
【0103】
赤外線分布検出工程S2100は鍛造用金型10のキャビティ面10aから放射される赤外線のうち、波長帯が異なる二種類の赤外線の強度の分布をそれぞれ検出する工程である。
【0104】
膜厚分布算出工程S2200は、赤外線分布検出工程S2100において検出された波長帯が異なる二種類の赤外線の強度分布からそれぞれ算出される各測定点(画素)についての測定温度の差分値に基づいて鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚分布を算出する工程である。
より詳細には、膜厚分布算出工程S2200は、予め求められた波長帯が異なる二種類の赤外線の強度から算出される測定温度の差分値と被膜11の膜厚との関係に係る情報(本実施例ではデータテーブルまたは関係式)と赤外線分布検出装置110により検出された波長帯が異なる二種類の赤外線の強度分布から算出される測定温度分布の差分値とを比較(または代入)することにより、鍛造用金型10のキャビティ面10aに形成された被膜11の膜厚分布を算出する。
【0105】
放射率分布補正工程S2300は膜厚分布算出工程S2200において算出された被膜11の膜厚に基づいて鍛造用金型10のキャビティ面10aの放射率分布を補正する工程である。
【0106】
表面温度分布算出工程S2400は赤外線分布検出工程S2100において検出された波長帯が異なる三種類の赤外線の強度分布、および放射率分布補正工程S2300において補正された鍛造用金型10のキャビティ面10aの放射率分布、に基づいて鍛造用金型10のキャビティ面10aの温度分布(表面温度分布)を算出する工程である。
【0107】
以上の如く構成することにより、キャビティ面10aに被膜11が形成された鍛造用金型10の表面温度の分布を被膜11の膜厚の分布(より厳密には、当該膜厚により変化する見かけの放射率)によらず精度良く測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係る膜厚測定装置の実施の一形態を示す図。
【図2】フィルターを透過する赤外線の波長と透過率との関係を示す図。
【図3】赤外線の波長と水の放射率との関係を示す図。
【図4】本発明に係る表面測定装置の実施の一形態を示す図。
【図5】本発明に係る膜厚測定方法の実施の一形態を示すフロー図。
【図6】本発明に係る表面温度測定方法の実施の一形態を示すフロー図。
【符号の説明】
【0109】
10 鋳造用金型(対象物)
10a キャビティ面(対象物の表面)
11 被膜
101 膜厚測定装置
110 赤外線分布検出装置(赤外線分布検出手段)
111 赤外線カメラ
112a 短波長フィルター
112b 中波長フィルター
121b 膜厚分布算出部(膜厚分布算出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布を検出する赤外線分布検出手段と、
前記赤外線分布検出手段により検出された前記波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値に基づいて前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する膜厚分布算出手段と、
を具備する膜厚測定装置。
【請求項2】
前記膜厚分布算出手段は、
予め求められた波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度の差分値または当該強度から算出される測定温度の差分値と前記被膜の膜厚との関係に係る情報を格納し、当該情報と前記赤外線分布検出手段により検出された前記波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値とを比較することにより、前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する請求項1に記載の膜厚測定装置。
【請求項3】
対象物の表面から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる三種類以上の赤外線の強度分布を検出する赤外線分布検出手段と、
前記赤外線分布検出手段により検出された前記波長帯が異なる三種類以上の赤外線のうち異なる二種類の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値に基づいて前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する膜厚分布算出手段と、
前記膜厚分布手段により算出された被膜の膜厚に基づいて前記対象物の表面の放射率分布を補正する放射率分布補正手段と、
前記赤外線分布検出手段により検出された前記波長帯が異なる三種類以上の赤外線の強度分布および前記放射率分布補正手段により補正された前記対象物の表面の放射率分布に基づいて前記対象物の表面温度分布を算出する表面温度分布算出手段と、
を具備する表面温度測定装置。
【請求項4】
前記膜厚分布算出手段は、
予め求められた波長帯が異なる三種類以上の赤外線のうち異なる二種類の赤外線の強度の差分値または当該強度から算出される測定温度の差分値と前記被膜の膜厚との関係に係る情報を格納し、当該情報と前記赤外線分布検出手段により検出された前記波長帯が異なる三種類以上の赤外線のうち異なる二種類の赤外線の強度分布または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値とを比較することにより、前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する請求項3に記載の表面温度測定装置。
【請求項5】
対象物の表面から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布を検出する赤外線分布検出工程と、
前記赤外線分布検出工程において検出された前記波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値に基づいて前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する膜厚分布算出工程と、
を具備する膜厚測定方法。
【請求項6】
前記膜厚分布算出工程は、
予め求められた波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度の差分値または当該強度から算出される測定温度の差分値と前記被膜の膜厚との関係に係る情報と前記赤外線分布検出工程において検出された前記波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値とを比較することにより、前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する請求項5に記載の膜厚測定方法。
【請求項7】
対象物の表面から放射される赤外線のうち、波長帯が異なる三種類以上の赤外線の強度分布を検出する赤外線分布検出工程と、
前記赤外線分布検出工程において検出された前記波長帯が異なる三種類以上の赤外線のうち異なる二種類の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値に基づいて前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する膜厚分布算出工程と、
前記膜厚分布算出工程において算出された被膜の膜厚に基づいて前記対象物の表面の放射率分布を補正する放射率分布補正工程と、
前記赤外線分布検出工程において検出された前記波長帯が異なる三種類以上の赤外線の強度分布および前記放射率分布補正工程において補正された前記対象物の表面の放射率分布に基づいて前記対象物の表面温度分布を算出する表面温度分布算出工程と、
を具備する表面温度測定方法。
【請求項8】
前記膜厚分布算出工程は、
予め求められた波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度の差分値または当該強度から算出される測定温度の差分値と前記被膜の膜厚との関係に係る情報と前記赤外線分布検出工程において検出された前記波長帯が異なる二種類以上の赤外線の強度分布の差分値または当該強度分布から算出される測定温度分布の差分値とを比較することにより、前記対象物の表面に形成された被膜の膜厚分布を算出する請求項7に記載の表面温度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−215957(P2008−215957A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51940(P2007−51940)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】