膜形成装置および膜形成方法
【課題】成膜プロセスにおいて膜厚制御を容易に行うことができる膜形成装置および膜形成方法を提供することにある。
【解決手段】成膜を行う成膜室10と、膜厚を測定する測定室20とが連通されており、それぞれ内圧を制御可能となっている。このような構成によれば、成膜室10および測定室20の内部を減圧した状態で、両室10、20の間で基板Bを行き来させ、成膜と測定とを繰り返し行うことができる。また、成膜と測定とを別室で行うようになっており、成膜を行う際には成膜室10と測定室20との間を遮断できるようになっているから、測定室20の内部がエアロゾルによって汚染されることを回避して測定室内を清浄に保ち、測定精度を維持することができる。これらより、成膜プロセス中に膜厚を簡易かつ精確に測定して成膜条件へのフィードバックを行うことができる。
【解決手段】成膜を行う成膜室10と、膜厚を測定する測定室20とが連通されており、それぞれ内圧を制御可能となっている。このような構成によれば、成膜室10および測定室20の内部を減圧した状態で、両室10、20の間で基板Bを行き来させ、成膜と測定とを繰り返し行うことができる。また、成膜と測定とを別室で行うようになっており、成膜を行う際には成膜室10と測定室20との間を遮断できるようになっているから、測定室20の内部がエアロゾルによって汚染されることを回避して測定室内を清浄に保ち、測定精度を維持することができる。これらより、成膜プロセス中に膜厚を簡易かつ精確に測定して成膜条件へのフィードバックを行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成装置および膜形成方法に関し、特に、インクジェットヘッド等に使用される圧電アクチュエータにおける圧電膜の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインクジェットヘッド等に用いられる圧電アクチュエータの製造方法として、エアロゾルデポジション法(AD法)と呼ばれるものがある。例えば、特許文献1(特開2003−306762公報)には、エアロゾル室内で圧電材料の微粒子を気体中に分散させたエアロゾルを発生させるとともに、成膜室内を減圧することでエアロゾル室と成膜室との圧力差を利用してエアロゾルを成膜室内の噴射ノズルに導き、基板表面に向けて噴射させるという方法が開示されている。これにより、エアロゾルに含まれる微粒子が基板上に衝突・堆積し、圧電膜が形成される。
【特許文献1】特開2003−306762公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、薄膜を形成する際に、その膜厚を完全に制御することは難しく、特に成膜速度が上がるにつれてばらつきが大きくなっていく傾向がある。そこで、経験的に初期条件を設定しておき、成膜中に膜厚を測定して、その結果によりある程度のパラメータ制御を行うことにより、随時膜厚をコントロールすることが行われている。
【0004】
しかし、上記したAD法のように減圧下で成膜プロセスを実行する方法を採用する場合には、成膜中に膜厚を測定しようとした場合、成膜チャンバ内をいったん常圧に戻して基板を取り出し、膜厚を測定した後に再び基板を成膜チャンバ内に戻し、チャンバ内の内圧を調整するという極めて煩雑な手順を経ることとなってしまう。この問題を解決するため、非接触の測定系を用いてチャンバ内部を減圧したままで測定することも考えられるが、AD法が微粒子を含むエアロゾルを噴出させて成膜するという方法であるため、長期間の使用により微粒子がチャンバの内壁に付着するなどしてチャンバの内部が汚れ、測定精度が低下してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、成膜プロセスにおいて膜厚制御を容易に行うことができる膜形成装置および膜形成方法を提供するを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための請求項1の発明に係る膜形成装置は、成膜を行うための成膜室と、この成膜室内で材料粒子を含むエアロゾルを基板に向けて噴射することによりこの基板上に前記材料粒子からなる膜を形成する噴射機構と、前記成膜室に連通された測定室と、前記測定室内にある前記膜の厚みを測定する測定機構と、前記成膜室および前記測定室に接続されてこの成膜室および測定室の内圧を制御する圧力調整機構と、前記基板を前記成膜室と前記測定室との間で搬送するコンベアと、前記成膜室と前記測定室とを遮断する遮断部と、を備えるものである。
【0007】
本発明の膜形成装置は、例えばアルミナ、ジルコニア、シリカ、ムライト等の酸化物セラミックスの膜を形成するために使用することができ、特に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)等の、圧電アクチュエータ用の圧電膜を形成するために好適に使用することができる。膜を形成するための基板としては、エアロゾルデポジション法による成膜に通常に適用可能なものであれば特に制限はなく、例えばステンレス鋼(SUS430、SUS304等)、42A合金、アルミナ、ジルコニア、チタン製のもの等を使用することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の膜形成装置であって、前記測定機構が非接触式のものであって、前記測定室の外部に設置されたものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の膜形成装置であって、前記測定機構が、前記基板に光を出射する投光部と、前記基板からの反射光を受光する受光部とを備えた光学的機構とされたものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記成膜室および前記測定室が、それぞれ弁体を介して一の圧力調整機構に接続されたものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記基板の搬出入口が前記測定室に設けられたものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記コンベアが複数設けられたものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記成膜室と前記測定室との間にはこれら両室を連通する中間室が設けられ、前記中間室には、前記基板の汚れを除去するクリーナが設けられたものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7に記載の膜形成装置であって、前記クリーナが、前記基板にガスを吹き付けることによって前記基板の汚れを除去するガスクリーナであるとともに、このガスクリーナが、前記中間室にガスを供給することによってこの中間室と連通する前記成膜室または前記測定室の圧力を調整する第2の圧力調整機構を兼ねているものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8に記載の膜形成装置であって、前記ガスが、前記エアロゾルを形成するガスと同種のものである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項7〜請求項9のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記遮断部が前記中間室において前記成膜室側と前記測定室側との2箇所に設けられたものである。
【0017】
請求項11の発明は、請求項10に記載の膜形成装置であって、前記中間室において前記2箇所の遮断部の間に前記クリーナが設置されたものである。
【0018】
請求項12の発明は、請求項10または請求項11に記載の膜形成装置であって、前記中間室には、前記2箇所の遮断部によって区画される空間の内圧を制御する中間室用圧力調整機構が設置されたものである。
【0019】
請求項13の発明は、請求項1〜請求項12のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記コンベアによって基板が搬送されているときに、前記測定室の内圧が前記成膜室の内圧よりも高くなるように前記圧力調整機構または前記弁体を制御する圧力制御部を備えるものである。
【0020】
請求項14の発明は、請求項5〜請求項13のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記測定室に設けられて前記搬出入口を開閉する開閉部と、前記開閉部による前記搬出入口の開閉状態を検知する開閉検知部と、前記開閉検知部によって前記搬出入口が開放状態であることが検知されたときに前記遮断部を遮断する遮断制御部と、を備えるものである。
【0021】
請求項15の発明は、請求項10〜請求項14のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記コンベアに設けられてこのコンベア上での前記基板の位置を検知する位置検出部と、前記位置検出部が前記成膜室と前記中間室との間に基板があることを検出したときには前記測定室側の遮断部を遮断するとともに前記成膜室側の遮断部を開放し、前記位置検出部が前記測定室と前記中間室との間に基板があることを検出したときには前記成膜室側の遮断部を遮断するとともに前記測定室側の遮断部を開放する遮断制御部と、を備えるものである。
【0022】
請求項16の発明は、請求項1〜請求項15のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記測定機構によって測定された前記膜の厚さがあらかじめ決められた基準厚さよりも小さいか否かを判断する判断部と、前記測定機構によって測定された前記膜の厚さに基づいて前記噴射機構の噴射条件を調整する噴射条件調整部と、前記判断部により前記膜の厚さが前記基準厚さよりも小さいと判断されたときには、前記コンベアに前記基板を前記測定室から前記成膜室へ搬送させるとともに前記噴射条件調整部に前記噴射機構の噴射条件を前記膜の厚さに対応するように調整させ、調整された噴射条件に従って前記成膜室へ搬送された前記基板に対して前記噴射機構に前記エアロゾルの噴射を行わせる装置制御部と、を備えるものである。
【0023】
請求項17の発明は、成膜を行うための成膜室と、この成膜室内において材料粒子を含むエアロゾルを噴射する噴射機構と、前記成膜室に連通された測定室と、前記測定室内にある成膜された膜の厚みを測定する測定機構と、前記成膜室と前記測定室との間を遮断する遮断部と、を備える膜形成装置によって基板上に前記材料粒子からなる膜を形成する方法であって、(a)前記基板を前記成膜室内に搬入する基板搬入工程と、(b)前記成膜室を前記測定室から遮断した状態で、エアロゾルを前記噴射機構から噴射することにより前記基板上に前記膜を形成する膜形成工程と、(c)前記成膜室内および前記測定室内を減圧した状態で、前記成膜室から前記測定室へ前記基板を移動する第1の基板移動工程と、(d)前記膜の膜厚を測定する膜厚測定工程と、(e)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜が予め定められた基準厚さに達しているか否かを判断する判断工程と、(f)前記判断工程において前記膜が前記基準厚さよりも小さいと判断された場合に膜の再形成を行う再形成工程と、を含み、前記再形成工程が、(g)前記成膜室内及び前記測定室内を減圧した状態で前記測定室から前記成膜室へ前記基板を移動する第2の基板移動工程と、(h)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜形成工程における膜形成条件の設定を調整する調整工程と、(i)前記工程(b)〜(e)を再度実行する工程と、を含むものである。
【0024】
なお、本発明において、調整工程は基板移動工程と前後しても構わない。
【0025】
請求項18の発明は、請求項17に記載の膜形成方法であって、前記判断構成において前記膜が前記基準厚さ以上である場合に、この判断工程の後に前記再形成工程に代えて(j)前記測定室から前記基板を搬出する基板搬出工程を含むものである。
【0026】
請求項19の発明は、請求項17または請求項18に記載の膜形成方法であって、前記第1の基板移動工程および前記第2の基板移動工程において、前記測定室の内圧を前記成膜室の内圧よりも高くするものである。
【0027】
請求項20の発明は、請求項17〜請求項19のいずれかに記載の膜形成方法であって、前記測定室に前記基板を装置内へ搬出入するための搬出入口を設け、前記基板搬入工程において、前記成膜室を前記測定室から遮断した状態で前記基板を前記搬出入口から搬入し、さらにこの基板を前記測定室から前記成膜室に移動するものである。
【0028】
請求項21の発明は、請求項17〜請求項20のいずれかに記載の膜形成方法であって、前記成膜室と前記測定室との間にこれら両室を連通する中間室を設けるとともに、この中間室において前記成膜室側と前記測定室側との2箇所に遮断部を設け、前記基板搬入工程後、前記第1の基板移動工程および前記第2の基板移動工程において、前記成膜室と前記中間室との間で前記基板を移動する際には前記測定室側の遮断部を閉じた状態で前記成膜室側の遮断部を開放し、前記測定室と前記中間室との間で前記基板を移動する際には前記成膜室側の遮断部を閉じた状態で前記測定室側の遮断部を開放するものである。
【0029】
請求項22の発明は、成膜を行うための成膜室と、この成膜室内において圧電材料の粒子を含むエアロゾルを噴射する噴射機構と、前記成膜室に連通された測定室と、前記測定室内にある成膜された膜の厚みを測定する測定機構と、前記成膜室と前期測定室との間を遮断する遮断部と、を備える膜形成装置によって基板上に前記圧電材料の粒子からなる圧電膜を形成する圧電アクチュエータの製造方法であって、(a)前記基板を前記成膜室内に搬入する基板搬入工程と、(b)前記成膜室を前記測定室から遮断した状態で、エアロゾルを前記噴射機構から噴射することにより前記基板上に前記圧電膜を形成する圧電膜形成工程と、(c)前記成膜室内および前記測定室内を減圧した状態で、前記成膜室から前記測定室へ前記基板を移動する第1の基板移動工程と、(d)前記圧電膜の膜厚を測定する膜厚測定工程と、(e)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜が予め定められた基準厚さに達しているか否かを判断する判断工程と、(f)前記判断工程において前記圧電膜が前記基準厚さよりも小さいと判断された場合に膜の再形成を行う再形成工程と、(i)前記判断構成において前記膜が前記基準厚さ以上であると判断された場合に、前記測定室から前記基板を搬出する基板搬出工程と、を含み、前記再形成工程が、(g)前記成膜室内及び前記測定室内を減圧した状態で前記測定室から前記成膜室へ前記基板を移動する第2の基板移動工程と、(h)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜形成工程における膜形成条件の設定を調整する調整工程と、(i)前記工程(b)〜(e)を再度実行する工程と、を含むものである。
【発明の効果】
【0030】
請求項1の発明によれば、成膜を行う成膜室と、膜厚を測定する測定室とが連通されており、それぞれ内圧を制御可能となっている。このような構成によれば、成膜室および測定室の内部を減圧した状態で、両室の間で基板を行き来させ、成膜と測定とを繰り返し行うことができる。また、成膜と測定とを別室で行うようになっており、成膜を行う際には成膜室と測定室との間を遮断できるようになっているから、測定室の内部がエアロゾルによって汚染されることを回避して測定室内を清浄に保ち、測定精度を維持することができる。これらより、成膜プロセス中に膜厚を簡易かつ精確に測定して成膜条件へのフィードバックを行うことができる。
【0031】
請求項2および請求項3の発明によれば、測定機構として被接触式のもの、例えば光学的な機構を使用するとともに、この測定機構を測定室の外部に設置している。このような構成によれば、測定機構を測定室の外部から操作して、測定室内にある基板上の膜厚測定を行うことができる。したがって、測定の度に作業者が測定室内に入るために測定室内を常圧に戻す、といった作業が不要となるため、成膜プロセスをさらに簡略化することができる。
【0032】
請求項4の発明によれば、成膜室と測定室とに個別に圧力調整機構を設けなくとも、弁体を開閉することで、1つの圧力調整機構で双方の内圧を個別に調整できる。このため、コストの低減が図れる。
【0033】
請求項5の発明によれば、基板の搬出入口が前記測定室に設けられている。ここで、AD法は、エアロゾルを発生させるエアロゾル室と成膜室との圧力差によりエアロゾルを成膜室内に導き、噴出させるものであるから、成膜室の圧力の変動は成膜に影響を与える。しかし、本請求項の発明によれば、基板の搬出入を行う際には測定室の内圧のみを常圧に戻せばよく、成膜室内を常に減圧状態に保つことができるから、成膜条件の変動を最小限度とすることができる。
【0034】
請求項6の発明によれば、コンベアが複数設けられている。このような構成によれば、例えば成膜室で一の基板に成膜を行うと同時に、測定室で他の基板の膜厚測定を行い、次いで複数のコンベアによって双方の基板を同時に入れ替えて、測定室で一の基板の膜厚測定を行うと同時に、成膜室で他の基板の成膜を行う、というように、複数の基板の成膜プロセスを同時に行うことができる。これにより、生産効率の向上を図ることができる。
【0035】
請求項7の発明によれば、成膜室と測定室との間に設けられた中間室には、基板に付着した余剰の粒子等の汚れを除去するクリーナが設けられている。このような構成によれば、材料粒子が基板の搬送に伴って測定室に持ち込まれることを防止でき、測定室内を清浄に保つことができる。これにより、測定精度を維持することができる。
【0036】
請求項8の発明によれば、クリーナを、基板にガスを吹き付けることによってこの基板の汚れを除去するガスクリーナとするとともに、このガスクリーナに中間室にガスを供給することによってこの中間室と連通する成膜室または測定室の圧力を調整する第2の圧力調整の役割を兼務させることにより、膜形成装置の構成を簡略化することができる。
【0037】
請求項9の発明によれば、ガスクリーナによって吹き付けられるガスを、エアロゾルを形成するガスと同種のものとすることで、成膜時に近い雰囲気中で汚れの除去と測定とを行えるため、成膜時に粉体の割れによって生じた新生面を再成膜時まで新生に近い状態で維持することができ、再成膜を良好に行うことができる。
【0038】
請求項10及び請求項21の発明によれば、遮断部が中間室において成膜室側と測定室側との2箇所に設けられている。そして、一方の遮断部が開放されるときには、他方の遮断部を閉鎖しておくようにすればよい。これにより、成膜室と測定室との内圧の差などによって、成膜室中に浮遊している材料粒子が測定室に流れ込んで測定室の内部が汚染されることを防止することができる。
【0039】
請求項11の発明によれば、中間室において前記2箇所の遮断部の間にクリーナが設置されている。このような構成によれば、基板に付着した余剰の材料粒子等の除去作業を行う際には、2箇所の遮断部を閉鎖した状態で行うことができる。このようにすれば、除去作業時の中間室の内圧の変動や基板から除去された材料粒子等が成膜や測定に悪影響を与えることを回避することができる。
【0040】
請求項12の発明によれば、中間室には中間室用圧力調整機構が設けられている。このような構成によれば、成膜室と中間室との間で基板を移動する際には、測定室側の遮断部を閉じた状態で、中間室の内圧を成膜室側に合わせ、成膜室側の遮断部を開放して基板を移動させればよい。一方、測定室と中間室との間で基板を移動する際には、成膜室側の遮断部を閉じた状態で、中間室の内圧を測定室側に合わせ、測定室側の遮断部を開放すればよい。このように、成膜室、測定室に比べて比較的狭いスペースしか必要とせず、内圧の調整を簡単に行える中間室の内圧を変化させるだけで基板の移動を行うことができる。
【0041】
請求項13、14、15の発明によれば、基板の搬出入、あるいは成膜室と測定室との間での移動の際の成膜室と測定室との圧力調整等を自動化することができる。
【0042】
請求項16の発明によれば、測定機構により測定された膜の厚さが基準厚さより小さいときに、その膜の厚さの測定結果に基づいて膜の形成条件(噴射機構の噴射条件)を調整してから、再度膜の形成を行うことができる。よって、膜厚の不足分を補うための成膜を高精度に行うことができる。
【0043】
請求項18の発明によれば、既に所望の厚さの膜が形成されている場合や所望の厚さを超えた膜が形成されて修復が困難である場合のように、再度の成膜を行う必要がないときは、基板を測定室から搬出するので、余分な工程を行わずに直ちに成膜の後工程に移行することができる。よって、膜形成を迅速に行うことができる。
【0044】
請求項19の発明によれば、基板を移動させる際には、測定室の内圧を成膜室の内圧よりも高くする。これにより、成膜室中に浮遊している材料粒子が測定室に流れ込んで測定室の内部が汚染されることを防止し、測定室内を清浄に保つことができるから、測定精度を維持することができる。
【0045】
請求項20の発明によれば、搬出入口から基板を測定室に搬入するときは、成膜室は測定室から遮断されているため、成膜室を減圧状態に維持したまま基板を外部から装置内に取り込むことができる。よって、後の成膜工程に直ちに移行することができ、膜形成を迅速に行うことができる。
【0046】
請求項17および請求項22の発明によれば、成膜を行う成膜室と、膜厚を測定する測定室とが連通されており、それぞれ内圧を制御可能となっている。そして、成膜室および測定室の内部を減圧した状態で、両室の間で基板を行き来させ、成膜と測定とを繰り返し行う。また、成膜と測定とを別室で行うようになっており、成膜を行う際には成膜室と測定室との間を遮断できるようになっているから、測定室の内部がエアロゾルによって汚染されることを回避して測定室内を清浄に保ち、測定精度を維持することができる。これらより、成膜プロセス中に膜厚を簡易かつ精確に測定して成膜条件へのフィードバックを行うことができる。これにより、厚さが均一の膜、および圧電膜の膜厚が均一で圧電特性の良好な圧電アクチュエータを簡易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
<第1実施形態>
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図7を参照しつつ詳細に説明する。図1には、本発明の膜形成装置1の全体概略図を、図2には、この膜形成装置1のブロック図を示す。この膜形成装置1は、成膜を行うための成膜室10と、形成された膜の厚みを測定するための測定室20と、これら成膜室10と測定室20との間に設けられて両室10、20を連通する中間室30と、この膜形成装置1の運転を自動制御するためのホストコンピュータC(本発明の圧力制御部、遮断制御部、および装置制御部に該当する)とを備えている。
【0048】
成膜室10は、エアロゾルZを基板Bに向けて吹き付けてこのエアロゾルZに含まれる材料粒子Mを基板Bに付着させることで、基板B上に材料粒子Mの薄膜を形成するためのものである。この成膜室10の内部には、基板Bを載置するためのステージ11が設置されている。また、このステージ11の上方には、エアロゾルZを噴射するための噴射ノズル12が、その噴射口をステージ11側に向けて設置されている。
【0049】
噴射ノズル12はトラバース機構(図示せず)によりステージ11に対して相対移動可能とされており、この噴射ノズル12がステージ11に載置された基板B上において所望の経路を走査できるようになっている。これにより、噴射ノズル12は基板B上の所望の位置に向けてエアロゾルZを噴射することができる。
【0050】
この噴射ノズル12は、エアロゾル発生器13に接続されている。このエアロゾル発生器13には、内部に材料粒子Mを収容可能なエアロゾル室14と、このエアロゾル室14に取り付けられてエアロゾル室14を振動する加振装置15とが備えられている。エアロゾル室14には、キャリアガスを導入するためのガスボンベGが導入管16を介して接続されている。導入管16の先端はエアロゾル室14内部において底面付近に位置し、材料粒子M中に埋没するようにされている。キャリアガスとしては、例えばヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガスや空気、酸素等を使用することができる。
【0051】
このエアロゾル室14は、エアロゾル供給管17を介して噴射ノズル12に接続されており、エアロゾル室14内で発生するエアロゾルZが、エアロゾル供給管17を通って噴射ノズル12から噴射されるようになっている。以上説明した噴射ノズル12、エアロゾル発生器13、ガスボンベG、トラバース機構等、および後述する成膜室10とエアロゾル室14との間に差圧を生じさせる真空ポンプPが本発明の噴射機構に該当する。
【0052】
一方、測定室20は、成膜室10で基板B上に形成された薄膜の厚さムラ等を測定するためのものであって、後述の中間室30を介して成膜室10に接続されている。この測定室20の内部には、基板Bを載置するための測定台21が設置されている。また、測定室20の天井部には、窓部22が設けられており、この窓部22の上部には、光学的な測定機構であるレーザ干渉計23が設置されている。この窓部22には、光透過性のガラス板が嵌め込まれており、レーザ干渉計23からの出射光、および基板Bからの反射光を透過できるようになっている。これにより、測定室20の外部に設置したレーザ干渉計23によって基板Bに形成された膜の測定が行えるようになっている。
【0053】
成膜室10と測定室20との間には、両者を結ぶ細長い角筒状の中間室30が設けられている。この中間室30には仕切弁31(本発明の遮断部に該当する)が設けられており、この仕切弁31を開閉することによって成膜室10と測定室20とを連通したり遮断したりすることができるようになっている。成膜室10に設置されたステージ11と測定室20に設置された測定台21との間には、この中間室30を通過して両者の間で基板Bを搬送するためのベルトコンベア32(本発明のコンベアに該当する)が設けられている。
【0054】
このベルトコンベア32については、図3に示すように、測定室20側(図3の左上方)から成膜室10側(図3の右下方)へ基板Bを搬送する上り側ベルトコンベア32Aと、成膜室10側から測定室20側へ基板Bを搬送する下り側ベルトコンベア32Bとの2列が並行して設けられており、これにより、2枚の基板を成膜室10と測定室20との間で一度に入れ替えることができるようになっている。したがって、例えば成膜室10で一の基板Bに成膜を行うと同時に、測定室20で他の基板Bの膜厚測定を行った後、2列のベルトコンベア32A、32Bによって双方の基板Bを同時に入れ替え、次いで測定室20で一の基板Bの膜厚測定を行うと同時に、成膜室10で他の基板Bの成膜を行う、というように、2枚の基板Bの成膜プロセスを同時に行うことができる。これにより、生産効率の向上を図ることができる。
【0055】
また、各列のベルトコンベア32A、32Bは、仕切弁31を境として成膜室側コンベア33Aと測定室側コンベア33Bとに分割されており、仕切弁31を閉鎖する際には、両コンベア33A、33B間に、仕切弁31の弁板(図示せず)が進入するようになっている。これにより、仕切弁31を閉鎖する際にベルトコンベア32の存在が障害となって遮蔽性が損なわれるといったことがないようにされている。
【0056】
成膜室側コンベア33Aと測定室側コンベア33Bとの間には、両コンベア33A、33B間で基板Bを受け渡すための受け渡し機構34が設けられている。この受け渡し機構34は、両コンベア33A、33Bのうち進行方向上流側のコンベア(上り側ベルトコンベア32Aにおいては測定室側コンベア33B、下り側ベルトコンベア32Bにおいては成膜室側コンベア33A)において相手側のコンベア33A、33Bと対向する側の端部付近に、両サイドに一対設けられたシリンダ部35により構成されている。このシリンダ部35は、シリンダチューブ36と、このシリンダチューブ36の内部に収容されるとともに相手側のコンベア33A、33Bに向かって突出するピストンロッド37とを備え、油圧、空気圧等の周知の方法でピストンロッド37を駆動するものである。
【0057】
基板Bは、ベルトコンベア32のベルト幅よりもやや幅広に形成されたワーク台38上に載置された状態で搬送される。基板Bを両コンベア33A、33Bの間で受け渡す際には、ワーク台38の両側縁部、すなわちベルトコンベア32のベルトから側方へ張り出している部分が、シリンダ部35のピストンロッド37によって下面側から支持される。この状態で、ピストンロッド37が相手側のコンベア33A、33Bに向かって駆動されると、このピストンロッド37で支持されたワーク台38が、両コンベア33A、33Bの間を渡される。
【0058】
また、中間室30において、仕切弁31よりも測定室20寄りの位置には、基板Bの除塵を行うためのクリーナ39(本発明のクリーナおよび第2の圧力調整機構に該当する)が設けられている。このクリーナ39は、エアブロー式のものであって、ベルトコンベア32の上方に設けられた吹出ノズル39Aから、ベルトコンベア32上を搬送される基板Bに向かってパージ用ガスを吹き付ける。このパージ用ガスは、エアロゾルZを形成するキャリアガスと同じガスとされている。これにより、成膜中に基板Bに付着した余剰の材料粒子Mが払い落とされるようになっている。
【0059】
成膜室10および測定室20は、それぞれ排気管40を介して真空ポンプPに接続されている。排気管40の一端部は、真空ポンプP(本発明の圧力調整機構に該当する)に接続されており、他端部は二股に分岐されてそれぞれ成膜室10、測定室20に接続されている。分岐された枝管部40A、40Bにはそれぞれ圧力調整バルブ41A、41B(本発明の弁体に該当する)が設けられている。そして、この圧力調整バルブ41A、41Bと、中間室30に設けられた仕切弁31との開閉を制御することによって、1台の真空ポンプPで成膜室10、測定室20の内圧を個別に調整できるようになっている。
【0060】
また、測定室20には搬出入口24が設けられており、膜形成装置1への基板Bの搬入、搬出が、この測定室20側から行われるようになっている。この搬出入口24には扉部25が設けられており、必要に応じて搬出入口24を閉鎖できるようになっている。また、搬出入口24には、この扉部25による搬出入口24の開閉状態を検知する開閉検知センサ26(本発明の開閉検知部に該当する)が設けられている。この開閉検知センサ26によって得られた搬出入口24の開閉状態の情報はホストコンピュータCに送られ、搬出入口24が開放状態にあるときには仕切弁31が常に閉鎖されるように、ホストコンピュータCによって制御がなされる。これにより、測定室20内が常圧とされる際には、測定室20と成膜室10とが遮断され、成膜室10の内部が常に減圧状態に保たれるようになっている。エアロゾルZの噴出速度は減圧状態の成膜室10と加圧状態のエアロゾル室14との圧力差によって決定されるものであるため、成膜室10内部の圧力変動をできるだけ少なくすることにより、成膜プロセスの効率を上げるとともに成膜条件の意図しない変動を抑制しているのである。
【0061】
次に、上記のように構成された膜形成装置1によって成膜を行う手順について、図4〜図6の膜形成工程図、および図7のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下に説明する膜形成装置1の動作は、ホストコンピュータCに格納されたプログラムによって自動制御されている。
【0062】
まず、図4Aに示すように、成膜室側の圧力調整バルブ41Aを開放し、測定室側の圧力調整バルブ41Bと仕切弁31とを閉鎖した状態で、真空ポンプPを起動し、成膜室10の内部をほぼ真空状態となるまで減圧する。
【0063】
次いで、基板Bが外部の搬送ラインLによって測定室20の搬出入口24まで搬送されてくると、搬出入口24を開放する。そして、基板Bを開放状態の搬出入口24から測定室20の内部に搬入する。このとき、開閉検知センサ26は搬出入口24が開放状態であることを検知し、この情報をホストコンピュータCに送る。ホストコンピュータCはこの情報に基づき、搬出入口24が開放されている間は、仕切弁31が開放されることがないように制御を行い、成膜室10が減圧状態に保たれるようにする。
【0064】
基板Bの搬入後、搬出入口24を扉部25によって閉鎖する。そして、測定室側の圧力調整バルブ41Bを開放し、測定室20内をほぼ真空となるまで減圧する。減圧後、圧力調整バルブ41Bを閉鎖する。
【0065】
次に、クリーナ39のスイッチを入れてパージ用ガスを中間室30内に供給する。この状態で、図4Bに示すように、仕切弁31を開放し、ベルトコンベア32を駆動して基板Bを成膜室10へ搬送する。このように測定室20の搬出入口24から搬入された基板Bを成膜室10へ搬送するまでの工程を基板搬入工程(ステップS1)と称する。このとき、成膜室10側では圧力調整バルブ41Aが開放されており、クリーナ39から供給されたガスが真空ポンプPにより排気されるが、測定室20側では圧力調整バルブ41Bが開放されていないから、排気が行われない。したがって、測定室20の内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるとともに、成膜装置1内の大気の流れは常に測定室20側から成膜室10側へ向かうこととなる。これにより、成膜室10中のエアロゾルや材料粒子Mが測定室20に流れ込むのを防止する。
【0066】
すなわち、成膜室10における膜の形成は、エアロゾルZを基板Bに向けて吹き付けてこのエアロゾルZに含まれる材料粒子Mを基板Bに付着させることによって行うものであるから、残留したエアロゾルZが浮遊し、また材料粒子Mが内壁部に付着するなどして、成膜室10の内部が相当に汚れていることがある。そこで、これらの汚れが測定室20に流れ込んで測定室20の内部を汚染することを防止し、測定室20内を清浄に保つために、測定室20の内圧を成膜室10の内圧よりも高くする。これにより、測定精度を維持することができる。
【0067】
成膜室10へ搬入された基板Bは、ステージ11上にセットされる。基板Bの搬送が終了したら、仕切弁31を閉鎖するとともに、クリーナ39のスイッチをオフにする。また、基板Bの搬送時に測定室20の内圧が高くされているので、測定室側の圧力調整バルブ41Bを開いて、測定室20内を成膜室10の内圧とほぼ等しい圧力まで減圧する。調整後、圧力調整バルブ41Bを閉鎖する。
【0068】
続いて、図5Aに示すように、成膜を行う。まず、エアロゾル室14の内部に材料粒子Mを投入する。そして、ガスボンベGからキャリアガスを導入して、そのガス圧で材料粒子Mを舞い上がらせる。それととともに、加振装置15によってエアロゾル室14を振動することで、材料粒子Mとキャリアガスとを混合してエアロゾルZを発生させる。そして、エアロゾル室14と成膜室10との間の差圧により、エアロゾル室14内のエアロゾルZを高速に加速しつつ噴射ノズル12から噴出させる。噴出したエアロゾルZに含まれる材料粒子Mは基板Bに衝突して堆積し、膜を形成する(膜形成工程または圧電膜形成工程;ステップS2)。
【0069】
成膜後、図5Bに示すように、基板Bを成膜室10から測定室20へ移動する(第1の基板移動工程;ステップS3)。まず、クリーナ39のスイッチを入れてパージ用ガスを中間室30内に供給する。この状態で、仕切弁31を開放し、ベルトコンベア32を駆動して基板Bを測定室20へ搬送する。そして、基板Bがクリーナ39の下方を通過する際に、このクリーナ39から供給されるパージ用ガスを基板Bに吹き付け、基板Bのクリーニングを行う。これにより、基板Bに余剰の材料粒子Mが付着して測定室20に運び込まれ、測定室20の内部を汚染することを防止する。
【0070】
また、上記した基板搬入工程S1と同様に、成膜室10側では圧力調整バルブ41Aが開放されており、クリーナ39から供給されたガスが真空ポンプPにより排気されるが、測定室20側では圧力調整バルブ41Bが開放されていないから、排気が行われない。したがって、測定室20の内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるとともに、成膜装置1内の大気の流れは常に測定室20側から成膜室10側へ向かうこととなる。これにより、成膜室10中のエアロゾルや材料粒子Mが測定室20に流れ込むのを防止する。
【0071】
また、このとき、中間室30と測定室20とはパージ用ガスで満たされる状態となるが、パージ用ガスはエアロゾルZを形成するキャリアガスと同じガスであるため、中間室30と測定室20とは成膜時の成膜室10に近い雰囲気となる。したがって、成膜時に近い雰囲気中で、成膜室10と測定室20との間での基板Bの移動と後述する成膜室20で行われる膜の測定とを行うことができ、後述するように膜形成工程S2が再度行われる場合には、その再成膜を良好に行うことができる。
【0072】
すなわち、上記の膜形成工程S2において、基板Bに衝突した材料粒子Mには割れが生じ、密着性の高い新生面が露出するが、再成膜に至るまでの工程を成膜室10に近い雰囲気の中で行えるため、露出した新生面を新生に近い状態で維持できるのである。
【0073】
さらに、本実施形態の膜形成装置1には、2列のベルトコンベア32が設置されている。よって、次に処理される基板(図示せず)をあらかじめ測定室20内に搬入しておき、上記の基板Bの成膜室10から測定室20への移動と同時に、測定室20から成膜室10へ移動させても良い(図3を併せて参照)。このようにすれば、次の膜厚測定工程において先の基板Bに形成された膜の膜厚分布を測定している間に、次の基板の成膜を行うことができる。これにより、2枚の基板を同時に処理することができ、製造プロセスの短縮につながる。
【0074】
測定室20へ搬入された基板Bは、測定台21上にセットされる。基板Bの搬送が終了したら、仕切弁31を閉鎖するとともに、クリーナ39のスイッチをオフにする。また、第1の基板移動工程S3において測定室20の内圧が高くなっているので、測定室側の圧力調整バルブ41Bを開いて、測定室20の内圧を成膜室10の内圧とほぼ等しくなるまで調整する。調整後、圧力調整バルブ41Bを閉鎖する。
【0075】
続いて、図6に示すように、成膜工程で成膜された膜の膜厚分布を測定する(膜厚測定工程;ステップS4)。レーザ干渉計23を作動させると、投受光部23A(本発明の投光部および受光部に該当する)に備えられた光源(図示せず)から出射された光は、測定室20の窓部22に嵌め込まれた光透過性のガラス板を通過して、測定室20内部に設置された基板Bの表面に到達する。基板Bに到達した光はこの基板B上に形成された膜に反射されて、再び測定室20の窓部22に嵌め込まれたガラス板を通過し、投受光部23Aに備えられたCCDカメラ(図示せず)によって受光される。
【0076】
このように、測定機構として被接触式の光学的な機構であるレーザ干渉計23を使用するとともに、このレーザ干渉計23を測定室20の外部に設置している。また、測定室20の天井部には光透過性のガラス板を嵌め込んだ窓部22が設けられており、レーザ干渉計23からの出射光をこの窓部22から測定室20内部に照射できるようになっている。これにより、レーザ干渉計23を測定室20の外部から操作して、内部にある基板B上の膜厚測定を行うことができる。したがって、測定条件の調整やレーザ干渉計23のメンテナンス等のために測定室20を開閉する必要がなく、測定室20内を減圧としたままでレーザ干渉計23の操作を行うことができる。
【0077】
また、成膜と測定とを別室で行うようになっており、成膜を行う際には成膜室10と測定室20との間を遮断できるようになっている。加えて、成膜室10と測定室20との間にはクリーナ39が設けられており、成膜室10から搬送される基板Bはクリーニングされた状態で測定室20内に搬入される。これにより、測定室20の内部がエアロゾルZによって汚染されることを回避し、測定精度を維持することができる。
【0078】
CCDカメラによって受光された反射光のデータはホストコンピュータCに送られ、膜の表面状態が解析される。
【0079】
なお、先の第1の基板移動工程S3において、次に処理される基板を成膜室10へ移動させた場合には、この膜厚測定工程S4を行っている間に、成膜室10へ搬入された基板への成膜を併せて行う。
【0080】
測定が終了したら、ホストコンピュータC(本発明の判断部)は、送信されたデータに基づいて、予め定められた基準厚さを有する膜が形成されたか否かを判断する(判断工程;ステップS5)。そして、膜が基準厚さを有していると判断した場合、もしくは膜が基準厚さよりも大きな厚みを有していると判断した場合は、成膜を終了し、仕切弁31を閉鎖した状態で、搬出入口24を開放し、測定室20から基板Bを搬出する(基板搬出工程;ステップS6)。このとき、測定室20内部は外気圧と同じ常圧状態に戻されるが、仕切弁31が閉鎖されているため、成膜室10の内部は減圧状態に保たれる。また、基板Bの測定室20への搬入時と同様に、開閉検知センサ26は搬出入口24が開状態であることを検知し、この情報をホストコンピュータCに送る。ホストコンピュータCはこの情報に基づき、搬出入口24が開放されている間は、仕切弁31が開放されることがないように制御を行う。
【0081】
このように、基板Bの搬出入口24が測定室20に設けられ、測定室20と成膜室10との間が仕切り弁31によって閉鎖されるから、基板Bの搬出時には測定室20の内圧のみを常圧に戻せばよく、成膜条件の変動を最小限度とすることができる。なお、このとき、成膜を終えた基板Bの搬出と同時に新たな基板(図示せず)を搬入し、続いてこの新たな基板への膜形成を行うこともできる。判断工程S5において、形成された膜が基準厚さを有すると判断された基板Bは、基板搬出工程S6の後、膜の形成に失敗した不良基板として処理される。
【0082】
一方、膜が基準厚さ未満であると判断した場合は、再び基板Bを成膜室10に移動させる(第2の基板移動工程;ステップS7)。すなわち、上記した基板搬入工程S1と同様に、クリーナ39のスイッチを入れてパージ用ガスを中間室30内に供給する。この状態で、仕切弁31を開放し、ベルトコンベア32を駆動して基板Bを成膜室10へ搬送する(図4B)。このとき、基板搬入工程S1および第1の基板移動工程S3と同様に、クリーナ39から供給されるパージ用ガスによって、測定室20の内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるようにする。これにより、測定室20の内部の汚染を防止する。
【0083】
なお、先の膜厚測定と同時に成膜室10で次の基板の膜形成を行っている場合には、膜形成終了後の基板Bの測定室20への移動を併せて行う。
【0084】
基板Bの搬送が終了したら、仕切弁31を閉鎖するとともに、クリーナ39のスイッチをオフにする。成膜室10へ搬入された基板Bは、ステージ11上にセットされる。
【0085】
基板Bがステージにセットされたら、ホストコンピュータC(本発明の噴射条件調整部)は、先の膜厚測定工程S4における解析結果にしたがって、膜形成条件の調整を行う(調整工程;ステップS8)。例えば、膜厚が薄くなっている領域に材料粒子Mが厚く付着するように噴射ノズル12の走査経路やエアロゾルZの噴射量等の噴射条件(膜形成条件)を調整する。その後、調整した膜形成条件に従って、再び膜形成工程S2を行う(図5A)。これにより、1回目の膜形成工程S2における膜厚のばらつきが解消される。
【0086】
膜形成が終了したら、基板Bを再び測定室20に搬送し(図5B)、膜厚の測定を行う(図6)。このようにして、膜が所望の厚さとなるまで、成膜室10と測定室20との間で基板Bを往復させ、膜形成と測定とを繰り返す。
【0087】
以上のように本実施形態によれば、成膜を行う成膜室10と、膜厚を測定する測定室20とが連通されており、それぞれ内圧を制御可能となっている。このような構成によれば、成膜室10および測定室20の内部を減圧した状態で、両室10、20の間で基板Bを行き来させ、成膜と測定とを繰り返し行うことができる。また、成膜と測定とを別室で行うようになっており、成膜を行う際には成膜室10と測定室20との間を遮断できるようになっているから、測定室20の内部がエアロゾルによって汚染されることを回避して測定室内を清浄に保ち、測定精度を維持することができる。これらより、成膜プロセス中に膜厚を簡易かつ精確に測定して成膜条件へのフィードバックを行うことができる。
【0088】
本実施形態の膜形成装置1を用いて、材料粒子Mとして圧電材料の粒子を使用し、圧電アクチュエータを製造する場合には、例えば基板Bを一の電極に利用できるように金属製とし、圧電材料の粒子により形成された圧電膜の上に、他の電極を形成すればよい。これによれば、圧電膜の膜厚が均一で圧電特性の良好な圧電アクチュエータを簡易に製造することができる。
【0089】
本実施形態の基板搬入工程(S1)、第1の基板移動工程(S3)、および第2の基板移動工程(S7)において、成膜室10の内圧は測定室20の内圧に比べて常に低い状態に保たれるので、成膜装置1内の大気の流れは測定室20側から成膜室10側へ向かう。つまり、測定室20は、成膜室10に対して常に上流に設けられていることとなる。
【0090】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について、図8〜図13を参照しつつ説明する。本実施形態の第1実施形態との主たる相違点は、仕切弁61が中間室60において成膜室側と測定室側との2箇所に設けられている点にある。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0091】
図8には、膜形成装置50の全体概略図を、図9には、この膜形成装置50のブロック図を示す。この膜形成装置50は、第1実施形態と同様に、成膜を行うための成膜室10と、形成された膜の厚みを測定するための測定室20と、この膜形成装置50の運転を自動制御するためのホストコンピュータCとを備えている。
【0092】
成膜室10と測定室20との間には、両者を結ぶ細長い角筒状の中間室60が設けられている。この中間室60には、成膜室側と測定室側との2箇所に仕切弁61A、61Bが設けられている。この中間室60において、2つの仕切弁61A、61Bに挟まれた空間は、基板Bの除塵を行うためのクリーニング室60Aとされており、ここには、第1実施形態と同様の構成のクリーナ39が設けられている。そして、2つの仕切弁61A、61Bを開閉することによって、成膜室10とクリーニング室60A、およびクリーニング室60Aと測定室20とを連通したり遮断したりすることができるようになっている。
【0093】
また、成膜室10に設置されたステージ11と測定室20に設置された測定台21との間には、第1実施形態と同様に、この中間室60を通過して両者の間で基板Bを搬送するためのベルトコンベア62が設けられている。
【0094】
このベルトコンベア62は、2つの仕切弁61A、61Bを境として成膜室側コンベア62A、中間室側コンベア62B、および測定室側コンベア62Cの3つに分割されている。仕切弁61A、61Bを閉鎖する際には、成膜室側コンベア62Aと中間室側62Bとの間、および中間室側62Bと測定室側コンベア62Cとの間に、それぞれ仕切弁61A、61Bの弁板(図示せず)が進入するようになっている。これにより、第1実施形態と同様に、仕切弁61A、61Bを閉鎖する際にベルトコンベア62の存在が障害となって遮蔽性が損なわれるといったことがないようにされている。また、成膜室側コンベア62Aと中間室側コンベア62Bとの間、および中間室側コンベア62Bと測定室側コンベア62Cとの間には、第1実施形態と同様の構成の受け渡し機構34が設けられており、この受け渡し機構34によって、これらのコンベア62A、62B、62C間で、ワーク台38に載置された基板Bの受け渡しができるようになっている。
【0095】
また、中間室60には、ベルトコンベア62上での基板Bの位置を検出するための位置検出センサ63(本発明の位置検出部に該当する)が設けられている。この位置検出センサ63によって得られた基板Bの位置情報はホストコンピュータCに送られ、この位置情報に基づいてホストコンピュータCから仕切弁61A、61Bの開閉の指示が出されるようになっている。
【0096】
クリーニング室60Aは、排気管51を介して真空ポンプP2(本発明の中間室用圧力調整機構に該当する)に接続されている。この排気管51には圧力調整バルブ52が設けられており、クリーニング室60Aの内圧を調整できるようになっている。
【0097】
次に、上記のように構成された膜形成装置50によって成膜を行う手順について、図7のフローチャート、および図10〜図13を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する膜形成装置50の動作は、第1実施形態と同様、ホストコンピュータCに格納されたプログラムによって自動制御されている。
【0098】
まず、図10Aに示すように、成膜室側の圧力調整バルブ41Aを開放し、測定室側の圧力調整バルブ41Bと測定室側の仕切弁61Bとを閉鎖した状態で、真空ポンプPを起動し、成膜室10の内部をほぼ真空状態となるまで減圧する。同時に、中間室側の圧力調整バルブ52を開放し、真空ポンプP2を起動して、クリーニング室60Aの内部をほぼ真空状態となるまで減圧する。
【0099】
次いで、搬出入口24を開放し、基板Bを測定室20の内部に搬入する。基板Bの搬入後、搬出入口24を扉部25によって閉鎖する。そして、測定室側の圧力調整バルブ41Bを開放し、測定室20内をほぼ真空となるまで減圧する。
【0100】
次に、図10Bおよび図11Aに示すように、ベルトコンベア62を駆動し基板Bを測定室20から成膜室10へと搬送する(基板搬入工程S1)。ベルトコンベア62が駆動されると、まず、位置検出センサ63は測定室20から中間室60のクリーニング室60Aへ向かって基板Bが搬送されていることを検知し、この情報をホストコンピュータCに送る。ホストコンピュータCはこの情報に基づき、測定室側の仕切弁61Bを開く。そして、基板Bを測定室側コンベア62Cと中間室側コンベア62Bとの間で受け渡して、クリーニング室60Aへ搬入する(図10B)。同時に、測定室側の仕切弁61Bが開放されている間は、成膜室側の仕切弁61Aが常に閉鎖されるように制御を行い、成膜室10が減圧状態に保たれるようにする。
【0101】
次に、位置検出センサ63はクリーニング室60Aから成膜室10へ向かって基板Bが搬送されていることを検知し、この情報をホストコンピュータCに送る。ホストコンピュータCはこの情報に基づき、クリーナ39のスイッチを入れてパージ用ガスをクリーニング室60A内に供給する。この状態で、成膜室側の仕切弁61Aを開く。そして、基板Bを中間室側コンベア62Bと成膜室側コンベア62Aとの間で受け渡して、成膜室10へ搬入する(図11A)。同時に、成膜室側の仕切弁61Aが開放されている間は、測定室側の仕切弁61Bが常に閉鎖されるように制御を行う。
【0102】
このとき、成膜室10側では圧力調整バルブ41Aが開放されており、クリーナ39から供給されたガスが真空ポンプPにより排気されるが、中間室60のクリーニング室60A側では圧力調整バルブ52が開放されていないから、排気が行われない。したがって、クリーニング室60Aの内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるとともに、成膜装置1内の大気の流れは常にクリーニング室60A側から成膜室10側へ向かうこととなる。このようにすれば、成膜室10中のエアロゾルや材料粒子Mがクリーニング室60Aに流れ込み、ひいては測定室20側に流れ込むことを防止できる。つまり、エアロゾルZや材料粒子Mによる測定室20内部の汚染を防止し、測定室20内を清浄に保ち、測定精度を維持することができる。
【0103】
基板Bの搬送が終了したら、成膜室側の仕切弁61Aを閉鎖するとともに、クリーナ39のスイッチをオフにする。また、基板Bの搬送時にクリーニング室60Aの内圧が高くなっているので、中間室側の圧力調整バルブ52を開いて、クリーニング室60Aの内圧を成膜室10および測定室20の内圧とほぼ等しくなるまで調整する。調整後、圧力調整バルブ52を閉鎖する。
【0104】
続いて、図11Bに示すように、成膜を行う(膜形成工程または圧電膜形成工程S2)。成膜の手順は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0105】
成膜後、図12A、図12Bに示すように、基板Bを成膜室10から測定室20へ移動する(第1の基板移動工程S3)。ベルトコンベア62が駆動されると、まず、位置検出センサ63は成膜室10から中間室60のクリーニング室60Aへ向かって基板Bが搬送されていることを検知し、この情報をホストコンピュータCに送る。ホストコンピュータCはこの情報に基づき、クリーナ39のスイッチを入れてパージ用ガスを中間室30内に供給する。それとともに、成膜室側の仕切弁61Aを開く。そして、基板Bを成膜室側コンベア62Aと中間室側コンベア62Bとの間で受け渡して、クリーニング室60Aへ搬入する(図12A)。同時に、成膜室側の仕切弁61Aが開放されている間は、測定室側の仕切弁61Bが常に閉鎖されるように制御を行い、成膜室10が減圧状態に保たれるようにする。
【0106】
このとき、上記した基板搬入工程S1と同様に、成膜室10側では圧力調整バルブ41Aが開放されており、クリーナ39から供給されたガスが真空ポンプPにより排気されるが、中間室60のクリーニング室60A側では圧力調整バルブ52が開放されていないから、排気が行われない。したがって、クリーニング室60Aの内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるとともに、成膜装置1内の大気の流れは常にクリーニング室60A側から成膜室10側へ向かうこととなる。このようにすれば、成膜室10中のエアロゾルや材料粒子Mがクリーニング室60Aに流れ込むことを防止でき、ひいては、測定室20側に流れ込むのを防止できる。このようにして、成膜室10中のエアロゾルZや材料粒子Mが測定室20に流れ込んで測定室20の内部を汚染することを防止し、測定室20内を清浄に保つ。これにより、測定精度を維持することができる。
【0107】
クリーニング室60A内では、基板Bがクリーナ39の下方を通過する間に、このクリーナ39によってパージ用ガスを基板Bに吹き付け、基板Bのクリーニングを行う。これにより、基板Bに余剰の材料粒子Mが付着して測定室20に運び込まれ、測定室20の内部を汚染することを防止する。基板Bのクリーニングが終了したら、クリーナ39を停止する。
【0108】
次に、クリーナ39からのパージ用ガスの供給によってクリーニング室60Aの内圧が高くなっているので、中間室側の圧力調整バルブ52を開いて、クリーニング室60A内を成膜室10および測定室20の内圧とほぼ等しくなるまで減圧する。減圧後、圧力調整バルブ52Bを閉鎖する。
【0109】
次いで、基板Bをクリーニング室60Aから測定室20へ搬送する。ベルトコンベア62が駆動されると、位置検出センサ63はクリーニング室60Aから測定室20へ向かって基板Bが搬送されていることを検知し、この情報をホストコンピュータCに送る。ホストコンピュータCはこの情報に基づき、測定室側の仕切弁61Bを開く。そして、基板Bを中間室側コンベア62Bと測定室側コンベア62Cとの間で受け渡して、測定室20へ搬入する。同時に、測定室側の仕切弁61Bが開放されている間は、成膜室側の仕切弁61Aが常に閉鎖されるように制御を行う。このようにして、成膜室10中のエアロゾルZや材料粒子Mが測定室20に流れ込んで測定室20の内部を汚染することを防止し、測定室20内を清浄に保つ。これにより、測定精度を維持することができる。
【0110】
基板Bの搬送が終了したら、測定室側の仕切弁31Bを閉鎖する。
【0111】
続いて、図13に示すように、成膜工程で成膜された膜の膜厚分布を測定する(膜厚測定工程S4)。測定の手順は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0112】
測定が終了したら、ホストコンピュータCは、送信されたデータに基づいて、予め定められた基準厚さを有する膜が形成されたか否かを判断する(判断工程S5)。そして、膜が基準厚さを有していると判断した場合、もしくは膜が基準厚さよりも大きな厚みを有していると判断した場合は、成膜を終了し、仕切弁61Bを閉鎖した状態で、搬出入口24を開放し、測定室20から基板Bを搬出する(基板搬出工程S6)。この基板搬出工程S6の詳細は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0113】
一方、膜が基準厚さ未満であると判断した場合は、再び基板Bを成膜室10に移動させる(第2の基板移動工程S7)。すなわち、上記した基板Bの搬入時と同様にして、まず測定室側の仕切弁61Bを開き、成膜室側の仕切弁61Aを閉じた状態で、測定室20からクリーニング室60Aへ基板Bを搬送する(図10B)。次いで、クリーナ39からパージ用ガスを供給しつつ、成膜室側の仕切弁61Aを開き、測定室側の仕切弁61Bを閉じた状態で、クリーニング室60Aから成膜室10へ基板Bを搬送する(図11A)。このとき、第1の基板移動工程と同様に、クリーナ39から供給されるパージ用ガスによって、クリーニング室60Aの内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるようにする。これにより、成膜室10中のエアロゾルや材料粒子Mがクリーニング室60Aに流れ込むことを防止する。
【0114】
基板Bがステージにセットされたら、第1実施形態と同様に、ホストコンピュータCは、先の膜厚測定工程における解析結果にしたがって、膜形成条件の調整を行う(調整工程S8)。その後、再び膜形成工程S2を行う(図11B)。
【0115】
膜形成が終了したら、基板Bを再び測定室20に搬送し(図12A、図12B)、膜厚の測定を行う(図13)。このようにして、膜が所望の厚さとなるまで成膜室10と測定室20との間で基板Bを往復させ、膜形成と測定とを繰り返す。
【0116】
成膜が完了したら、第1実施形態と同様にして、仕切弁61A、61Bを閉鎖した状態で、搬出入口24を開放し、測定室20から基板Bを搬出する。
【0117】
以上のように本実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0118】
加えて、仕切弁61が中間室60において成膜室側と測定室側との2箇所に設けられている。そして、2つの仕切弁61A、61Bのうち一方が開放されるときには、他方を閉鎖しておくようにすればよい。これにより、成膜室10中に残留したエアロゾルZが浮遊し、また材料粒子Mが内壁部に付着するなどして、成膜室10の内部が相当に汚れていたとしても、これらが測定室20に流れ込んで測定室20の内部を汚染することを防止することができる。これにより、測定室20での測定精度を保つことができる。
【0119】
なお、本実施形態の膜形成装置1を用いても、圧電膜の膜厚が均一で圧電特性の良好な圧電アクチュエータを簡易に製造することができる。例えば、材料粒子Mとして圧電材料の粒子を使用し、基板Bを一の電極に利用できるように金属製とし、金属製基板B上に圧電材料の粒子により圧電膜を形成する。そして、その上にスクリーン印刷等により他の電極を形成することにより、圧電素子を動作させることができる。即ち圧電アクチュエータとして用いることができる。
【0120】
本発明の技術的範囲は、上記した実施形態によって限定されるものではなく、例えば、次に記載するようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。その他、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0121】
第1実施形態の基板搬入工程(S1)、第1の基板移動工程(S3)、および第2の基板移動工程(S7)において、成膜室10側では圧力調整バルブ41Aが開放されており、クリーナ39から供給されたガスが真空ポンプPにより排気される。一方、測定室20側では圧力調整バルブ41Bが開放されていないため、排気が行われない。したがって、測定室20の内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるとともに、成膜装置1内の大気の流れは常に測定室20側から成膜室10側へ向かうこととなる。つまり、測定室20は真空ポンプPから見て常に成膜室10の上流に設けられていることとなる。
【0122】
第2実施形態の基板搬入工程(S1)、第1の基板移動工程(S3)、および第2の基板移動工程(S7)においても、成膜室10側では圧力調整バルブ41Aが開放されており、クリーナ39から供給されたガスが真空ポンプPにより排気される。一方、クリーニング室60A側では圧力調整バルブ52が開放されていないため、排気が行われない。したがって、クリーニング室60Aの内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるとともに、成膜装置1内の大気の流れは常にクリーニング室60A側から成膜室10側へ向かうこととなる。つまり、クリーニング室60Aは真空ポンプPから見て常に成膜室10の上流に設けられ、さらにその上流に測定室20が設けられていることとなる。
(1)第1実施形態では、クリーナ39が第2の圧力調整機構を兼ねていたが、第2の圧力調整機構をクリーナ39とは別に設けても良い。例えば、測定室20にガスボンベ等のガス供給機構を接続して測定室20のみにガスを供給することによって、成膜室10と測定室20との内圧の差を調整しても良い。また、例えば、2つの圧力調整バルブ41A、41Bの開口度に差を設けることによって、成膜室10と測定室20との内圧の差を調整しても良い。また、第2実施形態でも同様に、クリーニング室60Aに別途ガス供給機構を設けても良く、圧力調整バルブ41A、41B、52の開口度の差によって成膜室10または測定室20とクリーニング室60Aとの内圧の差を調整しても良い。
(2)第2実施形態では、クリーナ39からパージ用ガスを供給しつつ仕切弁61A、61Bを開いて基板Bを成膜室10または測定室20とクリーニング室60Aとの間で移動させいていたが、上記(1)で述べたようにクリーナ39が第2の圧力調整機構を兼ねない場合には、2箇所の仕切弁61A、61Bを閉鎖した状態でクリーナ39を作動させて基板Bのクリーニング作業を行い、クリーニング終了後、クリーナ39を停止して、クリーニング室60A内圧力が成膜室10、測定室20と等しくなるように調製してから仕切弁61A、61Bを開放して基板Bを移動させるようにしても良い。このようにすれば、除去作業時の中間室の内圧の変動や基板から除去された材料粒子等が成膜や測定に影響を与えることを回避することができる。
(3)第2実施形態では、成膜室10、クリーニング室60A、測定室20をいずれも減圧した状態で、仕切弁61A、61Bを開いて基板Bを成膜室10または測定室20とクリーニング室60Aとの間で移動させいていたが、2つの仕切り弁61A、61Bおよび中間室側圧力調整バルブ52、真空ポンプ50等を制御することにより、例えば測定室20を常に常圧としておき、測定室20とクリーニング室60Aとの間で基板Bを移動させる際にはクリーニング室60A内を常圧とし、成膜室10とクリーニング室60Aとの間で基板Bを移動させる際にはクリーニング室60Aを減圧としても良い。このようにすれば、成膜室、測定室に比べて比較的狭いスペースしか必要とせず、内圧の調整を簡単に行える中間室の内圧を変化させるだけで基板の移動を行うことができる。
(4)上記実施形態では、1台の真空ポンプPが圧力調整バルブ41A、41Bを介して成膜室10と測定室20との双方に接続されていたが、2台の圧力調整機構がそれぞれ成膜室、測定室に接続されて、個別に圧力調整を行うようにされていても構わない。
(5)上記実施形態では、成膜室10と測定室20とは中間室30、60により接続されていたが、本発明によれば中間室は必ずしも必要ではなく、例えば測定室が成膜室に直接に連結され、両者の間をシャッター等の遮蔽部材で仕切るようにしても良い。
(6)上記実施形態では、レーザ干渉計23が測定室20の外部に設けられ、窓部22越しに膜の測定を行うようにされていたが、測定機構が測定室の内部に設置されていても構わない。
(7)上記実施形態では、ベルトコンベア32は2列が設けられていたが、コンベアは1列であっても構わない。
(8)上記実施形態では、膜形成装置1、50の運転はホストコンピュータCにより自動制御されていたが、膜形成装置の運転の一部または全部を作業者等により手動で制御しても構わない。
(9)第2実施形態では、クリーニング室から測定室へ搬送する際には特に両者の間に圧力差を設けなかったが、測定室20の内圧がクリーニング室60Aの内圧よりも高くなるように圧力調整を行っても良い。このようにすれば、例えばクリーニング室60Aに成膜室からエアロゾルZが流入したり、クリーニングにより基板Bから取り除かれた材料粒子M等がクリーニング室60A内に浮遊している場合などにおいても、これらが測定室20に流れ込んで測定室20内を汚染することを防止できる。
(10)上記実施形態では、調整工程S8は、第2の基板移動工程S7の後に行われていたが、判断工程S5の後であればいつ行ってもよく、例えば第2の基板移動工程S7と並行して行っても良い。
(11)上記実施形態では、基板搬入工程S1において、測定室20の搬出入口24から搬入した基板Bをベルトコンベア32で成膜室10に移動させていたが、これに限られることはなく、例えば成膜室10に基板Bの搬入口とその搬入口を開閉する扉を設け、基板Bを外部から直接に搬入するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】第1実施形態の膜形成装置の概略図である。
【図2】第1実施形態の膜形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】ベルトコンベアの部分拡大図である。
【図4】図4Aは第1実施形態の膜形成工程において基板を膜形成装置に搬送する様子を示す図、図4Bは第1実施形態の膜形成工程において基板を測定室から成膜室へ搬送する様子を示す図である。
【図5】図5Aは第1実施形態の膜形成工程において成膜室にて膜形成を行う様子を示す図、図5Bは第1実施形態の膜形成工程において基板を成膜室から測定室に搬送する様子を示す図である。
【図6】第1実施形態の膜形成工程において測定室にて膜厚測定を行う様子を示す図である。
【図7】第1実施形態および第2実施形態における膜形成の流れを示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態の膜形成装置の概略図である。
【図9】第1実施形態の膜形成装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図10Aは第2実施形態の膜形成工程において基板を膜形成装置に搬送する様子を示す図、図10Bは第2実施形態の膜形成工程において基板を測定室から中間室へ搬送する様子を示す図である。
【図11】図11Aは第2実施形態の膜形成工程において基板を中間室から成膜室へ搬送する様子を示す図、図11Bは第2実施形態の膜形成工程において成膜室にて膜形成を行う様子を示す図である。
【図12】図12Aは第2実施形態の膜形成工程において基板を成膜室から中間室に搬送する様子を示す図、図12Bは第2実施形態の膜形成工程において基板を中間室から測定室に搬送する様子を示す図である。
【図13】第2実施形態の膜形成工程において測定室にて膜厚測定を行う様子を示す図である。
【符号の説明】
【0124】
1…膜形成装置
10…成膜室
12…噴射ノズル(噴射機構)
13…エアロゾル発生器(噴射機構)
20…測定室
23…レーザ干渉計(測定機構)
24…搬出入口
30…中間室
31…仕切り弁(遮断部)
32…ベルトコンベア(コンベア)
39…クリーナ(クリーナ)
41A、41B…圧力調整バルブ(弁体)
B…基板
G…ガスボンベ(噴射機構)
M…材料粒子
P…真空ポンプ(噴射機構・圧力調整機構)
Z…エアロゾル
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成装置および膜形成方法に関し、特に、インクジェットヘッド等に使用される圧電アクチュエータにおける圧電膜の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインクジェットヘッド等に用いられる圧電アクチュエータの製造方法として、エアロゾルデポジション法(AD法)と呼ばれるものがある。例えば、特許文献1(特開2003−306762公報)には、エアロゾル室内で圧電材料の微粒子を気体中に分散させたエアロゾルを発生させるとともに、成膜室内を減圧することでエアロゾル室と成膜室との圧力差を利用してエアロゾルを成膜室内の噴射ノズルに導き、基板表面に向けて噴射させるという方法が開示されている。これにより、エアロゾルに含まれる微粒子が基板上に衝突・堆積し、圧電膜が形成される。
【特許文献1】特開2003−306762公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、薄膜を形成する際に、その膜厚を完全に制御することは難しく、特に成膜速度が上がるにつれてばらつきが大きくなっていく傾向がある。そこで、経験的に初期条件を設定しておき、成膜中に膜厚を測定して、その結果によりある程度のパラメータ制御を行うことにより、随時膜厚をコントロールすることが行われている。
【0004】
しかし、上記したAD法のように減圧下で成膜プロセスを実行する方法を採用する場合には、成膜中に膜厚を測定しようとした場合、成膜チャンバ内をいったん常圧に戻して基板を取り出し、膜厚を測定した後に再び基板を成膜チャンバ内に戻し、チャンバ内の内圧を調整するという極めて煩雑な手順を経ることとなってしまう。この問題を解決するため、非接触の測定系を用いてチャンバ内部を減圧したままで測定することも考えられるが、AD法が微粒子を含むエアロゾルを噴出させて成膜するという方法であるため、長期間の使用により微粒子がチャンバの内壁に付着するなどしてチャンバの内部が汚れ、測定精度が低下してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、成膜プロセスにおいて膜厚制御を容易に行うことができる膜形成装置および膜形成方法を提供するを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための請求項1の発明に係る膜形成装置は、成膜を行うための成膜室と、この成膜室内で材料粒子を含むエアロゾルを基板に向けて噴射することによりこの基板上に前記材料粒子からなる膜を形成する噴射機構と、前記成膜室に連通された測定室と、前記測定室内にある前記膜の厚みを測定する測定機構と、前記成膜室および前記測定室に接続されてこの成膜室および測定室の内圧を制御する圧力調整機構と、前記基板を前記成膜室と前記測定室との間で搬送するコンベアと、前記成膜室と前記測定室とを遮断する遮断部と、を備えるものである。
【0007】
本発明の膜形成装置は、例えばアルミナ、ジルコニア、シリカ、ムライト等の酸化物セラミックスの膜を形成するために使用することができ、特に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)等の、圧電アクチュエータ用の圧電膜を形成するために好適に使用することができる。膜を形成するための基板としては、エアロゾルデポジション法による成膜に通常に適用可能なものであれば特に制限はなく、例えばステンレス鋼(SUS430、SUS304等)、42A合金、アルミナ、ジルコニア、チタン製のもの等を使用することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の膜形成装置であって、前記測定機構が非接触式のものであって、前記測定室の外部に設置されたものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の膜形成装置であって、前記測定機構が、前記基板に光を出射する投光部と、前記基板からの反射光を受光する受光部とを備えた光学的機構とされたものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記成膜室および前記測定室が、それぞれ弁体を介して一の圧力調整機構に接続されたものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記基板の搬出入口が前記測定室に設けられたものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記コンベアが複数設けられたものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記成膜室と前記測定室との間にはこれら両室を連通する中間室が設けられ、前記中間室には、前記基板の汚れを除去するクリーナが設けられたものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7に記載の膜形成装置であって、前記クリーナが、前記基板にガスを吹き付けることによって前記基板の汚れを除去するガスクリーナであるとともに、このガスクリーナが、前記中間室にガスを供給することによってこの中間室と連通する前記成膜室または前記測定室の圧力を調整する第2の圧力調整機構を兼ねているものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8に記載の膜形成装置であって、前記ガスが、前記エアロゾルを形成するガスと同種のものである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項7〜請求項9のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記遮断部が前記中間室において前記成膜室側と前記測定室側との2箇所に設けられたものである。
【0017】
請求項11の発明は、請求項10に記載の膜形成装置であって、前記中間室において前記2箇所の遮断部の間に前記クリーナが設置されたものである。
【0018】
請求項12の発明は、請求項10または請求項11に記載の膜形成装置であって、前記中間室には、前記2箇所の遮断部によって区画される空間の内圧を制御する中間室用圧力調整機構が設置されたものである。
【0019】
請求項13の発明は、請求項1〜請求項12のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記コンベアによって基板が搬送されているときに、前記測定室の内圧が前記成膜室の内圧よりも高くなるように前記圧力調整機構または前記弁体を制御する圧力制御部を備えるものである。
【0020】
請求項14の発明は、請求項5〜請求項13のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記測定室に設けられて前記搬出入口を開閉する開閉部と、前記開閉部による前記搬出入口の開閉状態を検知する開閉検知部と、前記開閉検知部によって前記搬出入口が開放状態であることが検知されたときに前記遮断部を遮断する遮断制御部と、を備えるものである。
【0021】
請求項15の発明は、請求項10〜請求項14のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記コンベアに設けられてこのコンベア上での前記基板の位置を検知する位置検出部と、前記位置検出部が前記成膜室と前記中間室との間に基板があることを検出したときには前記測定室側の遮断部を遮断するとともに前記成膜室側の遮断部を開放し、前記位置検出部が前記測定室と前記中間室との間に基板があることを検出したときには前記成膜室側の遮断部を遮断するとともに前記測定室側の遮断部を開放する遮断制御部と、を備えるものである。
【0022】
請求項16の発明は、請求項1〜請求項15のいずれかに記載の膜形成装置であって、前記測定機構によって測定された前記膜の厚さがあらかじめ決められた基準厚さよりも小さいか否かを判断する判断部と、前記測定機構によって測定された前記膜の厚さに基づいて前記噴射機構の噴射条件を調整する噴射条件調整部と、前記判断部により前記膜の厚さが前記基準厚さよりも小さいと判断されたときには、前記コンベアに前記基板を前記測定室から前記成膜室へ搬送させるとともに前記噴射条件調整部に前記噴射機構の噴射条件を前記膜の厚さに対応するように調整させ、調整された噴射条件に従って前記成膜室へ搬送された前記基板に対して前記噴射機構に前記エアロゾルの噴射を行わせる装置制御部と、を備えるものである。
【0023】
請求項17の発明は、成膜を行うための成膜室と、この成膜室内において材料粒子を含むエアロゾルを噴射する噴射機構と、前記成膜室に連通された測定室と、前記測定室内にある成膜された膜の厚みを測定する測定機構と、前記成膜室と前記測定室との間を遮断する遮断部と、を備える膜形成装置によって基板上に前記材料粒子からなる膜を形成する方法であって、(a)前記基板を前記成膜室内に搬入する基板搬入工程と、(b)前記成膜室を前記測定室から遮断した状態で、エアロゾルを前記噴射機構から噴射することにより前記基板上に前記膜を形成する膜形成工程と、(c)前記成膜室内および前記測定室内を減圧した状態で、前記成膜室から前記測定室へ前記基板を移動する第1の基板移動工程と、(d)前記膜の膜厚を測定する膜厚測定工程と、(e)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜が予め定められた基準厚さに達しているか否かを判断する判断工程と、(f)前記判断工程において前記膜が前記基準厚さよりも小さいと判断された場合に膜の再形成を行う再形成工程と、を含み、前記再形成工程が、(g)前記成膜室内及び前記測定室内を減圧した状態で前記測定室から前記成膜室へ前記基板を移動する第2の基板移動工程と、(h)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜形成工程における膜形成条件の設定を調整する調整工程と、(i)前記工程(b)〜(e)を再度実行する工程と、を含むものである。
【0024】
なお、本発明において、調整工程は基板移動工程と前後しても構わない。
【0025】
請求項18の発明は、請求項17に記載の膜形成方法であって、前記判断構成において前記膜が前記基準厚さ以上である場合に、この判断工程の後に前記再形成工程に代えて(j)前記測定室から前記基板を搬出する基板搬出工程を含むものである。
【0026】
請求項19の発明は、請求項17または請求項18に記載の膜形成方法であって、前記第1の基板移動工程および前記第2の基板移動工程において、前記測定室の内圧を前記成膜室の内圧よりも高くするものである。
【0027】
請求項20の発明は、請求項17〜請求項19のいずれかに記載の膜形成方法であって、前記測定室に前記基板を装置内へ搬出入するための搬出入口を設け、前記基板搬入工程において、前記成膜室を前記測定室から遮断した状態で前記基板を前記搬出入口から搬入し、さらにこの基板を前記測定室から前記成膜室に移動するものである。
【0028】
請求項21の発明は、請求項17〜請求項20のいずれかに記載の膜形成方法であって、前記成膜室と前記測定室との間にこれら両室を連通する中間室を設けるとともに、この中間室において前記成膜室側と前記測定室側との2箇所に遮断部を設け、前記基板搬入工程後、前記第1の基板移動工程および前記第2の基板移動工程において、前記成膜室と前記中間室との間で前記基板を移動する際には前記測定室側の遮断部を閉じた状態で前記成膜室側の遮断部を開放し、前記測定室と前記中間室との間で前記基板を移動する際には前記成膜室側の遮断部を閉じた状態で前記測定室側の遮断部を開放するものである。
【0029】
請求項22の発明は、成膜を行うための成膜室と、この成膜室内において圧電材料の粒子を含むエアロゾルを噴射する噴射機構と、前記成膜室に連通された測定室と、前記測定室内にある成膜された膜の厚みを測定する測定機構と、前記成膜室と前期測定室との間を遮断する遮断部と、を備える膜形成装置によって基板上に前記圧電材料の粒子からなる圧電膜を形成する圧電アクチュエータの製造方法であって、(a)前記基板を前記成膜室内に搬入する基板搬入工程と、(b)前記成膜室を前記測定室から遮断した状態で、エアロゾルを前記噴射機構から噴射することにより前記基板上に前記圧電膜を形成する圧電膜形成工程と、(c)前記成膜室内および前記測定室内を減圧した状態で、前記成膜室から前記測定室へ前記基板を移動する第1の基板移動工程と、(d)前記圧電膜の膜厚を測定する膜厚測定工程と、(e)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜が予め定められた基準厚さに達しているか否かを判断する判断工程と、(f)前記判断工程において前記圧電膜が前記基準厚さよりも小さいと判断された場合に膜の再形成を行う再形成工程と、(i)前記判断構成において前記膜が前記基準厚さ以上であると判断された場合に、前記測定室から前記基板を搬出する基板搬出工程と、を含み、前記再形成工程が、(g)前記成膜室内及び前記測定室内を減圧した状態で前記測定室から前記成膜室へ前記基板を移動する第2の基板移動工程と、(h)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜形成工程における膜形成条件の設定を調整する調整工程と、(i)前記工程(b)〜(e)を再度実行する工程と、を含むものである。
【発明の効果】
【0030】
請求項1の発明によれば、成膜を行う成膜室と、膜厚を測定する測定室とが連通されており、それぞれ内圧を制御可能となっている。このような構成によれば、成膜室および測定室の内部を減圧した状態で、両室の間で基板を行き来させ、成膜と測定とを繰り返し行うことができる。また、成膜と測定とを別室で行うようになっており、成膜を行う際には成膜室と測定室との間を遮断できるようになっているから、測定室の内部がエアロゾルによって汚染されることを回避して測定室内を清浄に保ち、測定精度を維持することができる。これらより、成膜プロセス中に膜厚を簡易かつ精確に測定して成膜条件へのフィードバックを行うことができる。
【0031】
請求項2および請求項3の発明によれば、測定機構として被接触式のもの、例えば光学的な機構を使用するとともに、この測定機構を測定室の外部に設置している。このような構成によれば、測定機構を測定室の外部から操作して、測定室内にある基板上の膜厚測定を行うことができる。したがって、測定の度に作業者が測定室内に入るために測定室内を常圧に戻す、といった作業が不要となるため、成膜プロセスをさらに簡略化することができる。
【0032】
請求項4の発明によれば、成膜室と測定室とに個別に圧力調整機構を設けなくとも、弁体を開閉することで、1つの圧力調整機構で双方の内圧を個別に調整できる。このため、コストの低減が図れる。
【0033】
請求項5の発明によれば、基板の搬出入口が前記測定室に設けられている。ここで、AD法は、エアロゾルを発生させるエアロゾル室と成膜室との圧力差によりエアロゾルを成膜室内に導き、噴出させるものであるから、成膜室の圧力の変動は成膜に影響を与える。しかし、本請求項の発明によれば、基板の搬出入を行う際には測定室の内圧のみを常圧に戻せばよく、成膜室内を常に減圧状態に保つことができるから、成膜条件の変動を最小限度とすることができる。
【0034】
請求項6の発明によれば、コンベアが複数設けられている。このような構成によれば、例えば成膜室で一の基板に成膜を行うと同時に、測定室で他の基板の膜厚測定を行い、次いで複数のコンベアによって双方の基板を同時に入れ替えて、測定室で一の基板の膜厚測定を行うと同時に、成膜室で他の基板の成膜を行う、というように、複数の基板の成膜プロセスを同時に行うことができる。これにより、生産効率の向上を図ることができる。
【0035】
請求項7の発明によれば、成膜室と測定室との間に設けられた中間室には、基板に付着した余剰の粒子等の汚れを除去するクリーナが設けられている。このような構成によれば、材料粒子が基板の搬送に伴って測定室に持ち込まれることを防止でき、測定室内を清浄に保つことができる。これにより、測定精度を維持することができる。
【0036】
請求項8の発明によれば、クリーナを、基板にガスを吹き付けることによってこの基板の汚れを除去するガスクリーナとするとともに、このガスクリーナに中間室にガスを供給することによってこの中間室と連通する成膜室または測定室の圧力を調整する第2の圧力調整の役割を兼務させることにより、膜形成装置の構成を簡略化することができる。
【0037】
請求項9の発明によれば、ガスクリーナによって吹き付けられるガスを、エアロゾルを形成するガスと同種のものとすることで、成膜時に近い雰囲気中で汚れの除去と測定とを行えるため、成膜時に粉体の割れによって生じた新生面を再成膜時まで新生に近い状態で維持することができ、再成膜を良好に行うことができる。
【0038】
請求項10及び請求項21の発明によれば、遮断部が中間室において成膜室側と測定室側との2箇所に設けられている。そして、一方の遮断部が開放されるときには、他方の遮断部を閉鎖しておくようにすればよい。これにより、成膜室と測定室との内圧の差などによって、成膜室中に浮遊している材料粒子が測定室に流れ込んで測定室の内部が汚染されることを防止することができる。
【0039】
請求項11の発明によれば、中間室において前記2箇所の遮断部の間にクリーナが設置されている。このような構成によれば、基板に付着した余剰の材料粒子等の除去作業を行う際には、2箇所の遮断部を閉鎖した状態で行うことができる。このようにすれば、除去作業時の中間室の内圧の変動や基板から除去された材料粒子等が成膜や測定に悪影響を与えることを回避することができる。
【0040】
請求項12の発明によれば、中間室には中間室用圧力調整機構が設けられている。このような構成によれば、成膜室と中間室との間で基板を移動する際には、測定室側の遮断部を閉じた状態で、中間室の内圧を成膜室側に合わせ、成膜室側の遮断部を開放して基板を移動させればよい。一方、測定室と中間室との間で基板を移動する際には、成膜室側の遮断部を閉じた状態で、中間室の内圧を測定室側に合わせ、測定室側の遮断部を開放すればよい。このように、成膜室、測定室に比べて比較的狭いスペースしか必要とせず、内圧の調整を簡単に行える中間室の内圧を変化させるだけで基板の移動を行うことができる。
【0041】
請求項13、14、15の発明によれば、基板の搬出入、あるいは成膜室と測定室との間での移動の際の成膜室と測定室との圧力調整等を自動化することができる。
【0042】
請求項16の発明によれば、測定機構により測定された膜の厚さが基準厚さより小さいときに、その膜の厚さの測定結果に基づいて膜の形成条件(噴射機構の噴射条件)を調整してから、再度膜の形成を行うことができる。よって、膜厚の不足分を補うための成膜を高精度に行うことができる。
【0043】
請求項18の発明によれば、既に所望の厚さの膜が形成されている場合や所望の厚さを超えた膜が形成されて修復が困難である場合のように、再度の成膜を行う必要がないときは、基板を測定室から搬出するので、余分な工程を行わずに直ちに成膜の後工程に移行することができる。よって、膜形成を迅速に行うことができる。
【0044】
請求項19の発明によれば、基板を移動させる際には、測定室の内圧を成膜室の内圧よりも高くする。これにより、成膜室中に浮遊している材料粒子が測定室に流れ込んで測定室の内部が汚染されることを防止し、測定室内を清浄に保つことができるから、測定精度を維持することができる。
【0045】
請求項20の発明によれば、搬出入口から基板を測定室に搬入するときは、成膜室は測定室から遮断されているため、成膜室を減圧状態に維持したまま基板を外部から装置内に取り込むことができる。よって、後の成膜工程に直ちに移行することができ、膜形成を迅速に行うことができる。
【0046】
請求項17および請求項22の発明によれば、成膜を行う成膜室と、膜厚を測定する測定室とが連通されており、それぞれ内圧を制御可能となっている。そして、成膜室および測定室の内部を減圧した状態で、両室の間で基板を行き来させ、成膜と測定とを繰り返し行う。また、成膜と測定とを別室で行うようになっており、成膜を行う際には成膜室と測定室との間を遮断できるようになっているから、測定室の内部がエアロゾルによって汚染されることを回避して測定室内を清浄に保ち、測定精度を維持することができる。これらより、成膜プロセス中に膜厚を簡易かつ精確に測定して成膜条件へのフィードバックを行うことができる。これにより、厚さが均一の膜、および圧電膜の膜厚が均一で圧電特性の良好な圧電アクチュエータを簡易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
<第1実施形態>
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図7を参照しつつ詳細に説明する。図1には、本発明の膜形成装置1の全体概略図を、図2には、この膜形成装置1のブロック図を示す。この膜形成装置1は、成膜を行うための成膜室10と、形成された膜の厚みを測定するための測定室20と、これら成膜室10と測定室20との間に設けられて両室10、20を連通する中間室30と、この膜形成装置1の運転を自動制御するためのホストコンピュータC(本発明の圧力制御部、遮断制御部、および装置制御部に該当する)とを備えている。
【0048】
成膜室10は、エアロゾルZを基板Bに向けて吹き付けてこのエアロゾルZに含まれる材料粒子Mを基板Bに付着させることで、基板B上に材料粒子Mの薄膜を形成するためのものである。この成膜室10の内部には、基板Bを載置するためのステージ11が設置されている。また、このステージ11の上方には、エアロゾルZを噴射するための噴射ノズル12が、その噴射口をステージ11側に向けて設置されている。
【0049】
噴射ノズル12はトラバース機構(図示せず)によりステージ11に対して相対移動可能とされており、この噴射ノズル12がステージ11に載置された基板B上において所望の経路を走査できるようになっている。これにより、噴射ノズル12は基板B上の所望の位置に向けてエアロゾルZを噴射することができる。
【0050】
この噴射ノズル12は、エアロゾル発生器13に接続されている。このエアロゾル発生器13には、内部に材料粒子Mを収容可能なエアロゾル室14と、このエアロゾル室14に取り付けられてエアロゾル室14を振動する加振装置15とが備えられている。エアロゾル室14には、キャリアガスを導入するためのガスボンベGが導入管16を介して接続されている。導入管16の先端はエアロゾル室14内部において底面付近に位置し、材料粒子M中に埋没するようにされている。キャリアガスとしては、例えばヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガスや空気、酸素等を使用することができる。
【0051】
このエアロゾル室14は、エアロゾル供給管17を介して噴射ノズル12に接続されており、エアロゾル室14内で発生するエアロゾルZが、エアロゾル供給管17を通って噴射ノズル12から噴射されるようになっている。以上説明した噴射ノズル12、エアロゾル発生器13、ガスボンベG、トラバース機構等、および後述する成膜室10とエアロゾル室14との間に差圧を生じさせる真空ポンプPが本発明の噴射機構に該当する。
【0052】
一方、測定室20は、成膜室10で基板B上に形成された薄膜の厚さムラ等を測定するためのものであって、後述の中間室30を介して成膜室10に接続されている。この測定室20の内部には、基板Bを載置するための測定台21が設置されている。また、測定室20の天井部には、窓部22が設けられており、この窓部22の上部には、光学的な測定機構であるレーザ干渉計23が設置されている。この窓部22には、光透過性のガラス板が嵌め込まれており、レーザ干渉計23からの出射光、および基板Bからの反射光を透過できるようになっている。これにより、測定室20の外部に設置したレーザ干渉計23によって基板Bに形成された膜の測定が行えるようになっている。
【0053】
成膜室10と測定室20との間には、両者を結ぶ細長い角筒状の中間室30が設けられている。この中間室30には仕切弁31(本発明の遮断部に該当する)が設けられており、この仕切弁31を開閉することによって成膜室10と測定室20とを連通したり遮断したりすることができるようになっている。成膜室10に設置されたステージ11と測定室20に設置された測定台21との間には、この中間室30を通過して両者の間で基板Bを搬送するためのベルトコンベア32(本発明のコンベアに該当する)が設けられている。
【0054】
このベルトコンベア32については、図3に示すように、測定室20側(図3の左上方)から成膜室10側(図3の右下方)へ基板Bを搬送する上り側ベルトコンベア32Aと、成膜室10側から測定室20側へ基板Bを搬送する下り側ベルトコンベア32Bとの2列が並行して設けられており、これにより、2枚の基板を成膜室10と測定室20との間で一度に入れ替えることができるようになっている。したがって、例えば成膜室10で一の基板Bに成膜を行うと同時に、測定室20で他の基板Bの膜厚測定を行った後、2列のベルトコンベア32A、32Bによって双方の基板Bを同時に入れ替え、次いで測定室20で一の基板Bの膜厚測定を行うと同時に、成膜室10で他の基板Bの成膜を行う、というように、2枚の基板Bの成膜プロセスを同時に行うことができる。これにより、生産効率の向上を図ることができる。
【0055】
また、各列のベルトコンベア32A、32Bは、仕切弁31を境として成膜室側コンベア33Aと測定室側コンベア33Bとに分割されており、仕切弁31を閉鎖する際には、両コンベア33A、33B間に、仕切弁31の弁板(図示せず)が進入するようになっている。これにより、仕切弁31を閉鎖する際にベルトコンベア32の存在が障害となって遮蔽性が損なわれるといったことがないようにされている。
【0056】
成膜室側コンベア33Aと測定室側コンベア33Bとの間には、両コンベア33A、33B間で基板Bを受け渡すための受け渡し機構34が設けられている。この受け渡し機構34は、両コンベア33A、33Bのうち進行方向上流側のコンベア(上り側ベルトコンベア32Aにおいては測定室側コンベア33B、下り側ベルトコンベア32Bにおいては成膜室側コンベア33A)において相手側のコンベア33A、33Bと対向する側の端部付近に、両サイドに一対設けられたシリンダ部35により構成されている。このシリンダ部35は、シリンダチューブ36と、このシリンダチューブ36の内部に収容されるとともに相手側のコンベア33A、33Bに向かって突出するピストンロッド37とを備え、油圧、空気圧等の周知の方法でピストンロッド37を駆動するものである。
【0057】
基板Bは、ベルトコンベア32のベルト幅よりもやや幅広に形成されたワーク台38上に載置された状態で搬送される。基板Bを両コンベア33A、33Bの間で受け渡す際には、ワーク台38の両側縁部、すなわちベルトコンベア32のベルトから側方へ張り出している部分が、シリンダ部35のピストンロッド37によって下面側から支持される。この状態で、ピストンロッド37が相手側のコンベア33A、33Bに向かって駆動されると、このピストンロッド37で支持されたワーク台38が、両コンベア33A、33Bの間を渡される。
【0058】
また、中間室30において、仕切弁31よりも測定室20寄りの位置には、基板Bの除塵を行うためのクリーナ39(本発明のクリーナおよび第2の圧力調整機構に該当する)が設けられている。このクリーナ39は、エアブロー式のものであって、ベルトコンベア32の上方に設けられた吹出ノズル39Aから、ベルトコンベア32上を搬送される基板Bに向かってパージ用ガスを吹き付ける。このパージ用ガスは、エアロゾルZを形成するキャリアガスと同じガスとされている。これにより、成膜中に基板Bに付着した余剰の材料粒子Mが払い落とされるようになっている。
【0059】
成膜室10および測定室20は、それぞれ排気管40を介して真空ポンプPに接続されている。排気管40の一端部は、真空ポンプP(本発明の圧力調整機構に該当する)に接続されており、他端部は二股に分岐されてそれぞれ成膜室10、測定室20に接続されている。分岐された枝管部40A、40Bにはそれぞれ圧力調整バルブ41A、41B(本発明の弁体に該当する)が設けられている。そして、この圧力調整バルブ41A、41Bと、中間室30に設けられた仕切弁31との開閉を制御することによって、1台の真空ポンプPで成膜室10、測定室20の内圧を個別に調整できるようになっている。
【0060】
また、測定室20には搬出入口24が設けられており、膜形成装置1への基板Bの搬入、搬出が、この測定室20側から行われるようになっている。この搬出入口24には扉部25が設けられており、必要に応じて搬出入口24を閉鎖できるようになっている。また、搬出入口24には、この扉部25による搬出入口24の開閉状態を検知する開閉検知センサ26(本発明の開閉検知部に該当する)が設けられている。この開閉検知センサ26によって得られた搬出入口24の開閉状態の情報はホストコンピュータCに送られ、搬出入口24が開放状態にあるときには仕切弁31が常に閉鎖されるように、ホストコンピュータCによって制御がなされる。これにより、測定室20内が常圧とされる際には、測定室20と成膜室10とが遮断され、成膜室10の内部が常に減圧状態に保たれるようになっている。エアロゾルZの噴出速度は減圧状態の成膜室10と加圧状態のエアロゾル室14との圧力差によって決定されるものであるため、成膜室10内部の圧力変動をできるだけ少なくすることにより、成膜プロセスの効率を上げるとともに成膜条件の意図しない変動を抑制しているのである。
【0061】
次に、上記のように構成された膜形成装置1によって成膜を行う手順について、図4〜図6の膜形成工程図、および図7のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下に説明する膜形成装置1の動作は、ホストコンピュータCに格納されたプログラムによって自動制御されている。
【0062】
まず、図4Aに示すように、成膜室側の圧力調整バルブ41Aを開放し、測定室側の圧力調整バルブ41Bと仕切弁31とを閉鎖した状態で、真空ポンプPを起動し、成膜室10の内部をほぼ真空状態となるまで減圧する。
【0063】
次いで、基板Bが外部の搬送ラインLによって測定室20の搬出入口24まで搬送されてくると、搬出入口24を開放する。そして、基板Bを開放状態の搬出入口24から測定室20の内部に搬入する。このとき、開閉検知センサ26は搬出入口24が開放状態であることを検知し、この情報をホストコンピュータCに送る。ホストコンピュータCはこの情報に基づき、搬出入口24が開放されている間は、仕切弁31が開放されることがないように制御を行い、成膜室10が減圧状態に保たれるようにする。
【0064】
基板Bの搬入後、搬出入口24を扉部25によって閉鎖する。そして、測定室側の圧力調整バルブ41Bを開放し、測定室20内をほぼ真空となるまで減圧する。減圧後、圧力調整バルブ41Bを閉鎖する。
【0065】
次に、クリーナ39のスイッチを入れてパージ用ガスを中間室30内に供給する。この状態で、図4Bに示すように、仕切弁31を開放し、ベルトコンベア32を駆動して基板Bを成膜室10へ搬送する。このように測定室20の搬出入口24から搬入された基板Bを成膜室10へ搬送するまでの工程を基板搬入工程(ステップS1)と称する。このとき、成膜室10側では圧力調整バルブ41Aが開放されており、クリーナ39から供給されたガスが真空ポンプPにより排気されるが、測定室20側では圧力調整バルブ41Bが開放されていないから、排気が行われない。したがって、測定室20の内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるとともに、成膜装置1内の大気の流れは常に測定室20側から成膜室10側へ向かうこととなる。これにより、成膜室10中のエアロゾルや材料粒子Mが測定室20に流れ込むのを防止する。
【0066】
すなわち、成膜室10における膜の形成は、エアロゾルZを基板Bに向けて吹き付けてこのエアロゾルZに含まれる材料粒子Mを基板Bに付着させることによって行うものであるから、残留したエアロゾルZが浮遊し、また材料粒子Mが内壁部に付着するなどして、成膜室10の内部が相当に汚れていることがある。そこで、これらの汚れが測定室20に流れ込んで測定室20の内部を汚染することを防止し、測定室20内を清浄に保つために、測定室20の内圧を成膜室10の内圧よりも高くする。これにより、測定精度を維持することができる。
【0067】
成膜室10へ搬入された基板Bは、ステージ11上にセットされる。基板Bの搬送が終了したら、仕切弁31を閉鎖するとともに、クリーナ39のスイッチをオフにする。また、基板Bの搬送時に測定室20の内圧が高くされているので、測定室側の圧力調整バルブ41Bを開いて、測定室20内を成膜室10の内圧とほぼ等しい圧力まで減圧する。調整後、圧力調整バルブ41Bを閉鎖する。
【0068】
続いて、図5Aに示すように、成膜を行う。まず、エアロゾル室14の内部に材料粒子Mを投入する。そして、ガスボンベGからキャリアガスを導入して、そのガス圧で材料粒子Mを舞い上がらせる。それととともに、加振装置15によってエアロゾル室14を振動することで、材料粒子Mとキャリアガスとを混合してエアロゾルZを発生させる。そして、エアロゾル室14と成膜室10との間の差圧により、エアロゾル室14内のエアロゾルZを高速に加速しつつ噴射ノズル12から噴出させる。噴出したエアロゾルZに含まれる材料粒子Mは基板Bに衝突して堆積し、膜を形成する(膜形成工程または圧電膜形成工程;ステップS2)。
【0069】
成膜後、図5Bに示すように、基板Bを成膜室10から測定室20へ移動する(第1の基板移動工程;ステップS3)。まず、クリーナ39のスイッチを入れてパージ用ガスを中間室30内に供給する。この状態で、仕切弁31を開放し、ベルトコンベア32を駆動して基板Bを測定室20へ搬送する。そして、基板Bがクリーナ39の下方を通過する際に、このクリーナ39から供給されるパージ用ガスを基板Bに吹き付け、基板Bのクリーニングを行う。これにより、基板Bに余剰の材料粒子Mが付着して測定室20に運び込まれ、測定室20の内部を汚染することを防止する。
【0070】
また、上記した基板搬入工程S1と同様に、成膜室10側では圧力調整バルブ41Aが開放されており、クリーナ39から供給されたガスが真空ポンプPにより排気されるが、測定室20側では圧力調整バルブ41Bが開放されていないから、排気が行われない。したがって、測定室20の内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるとともに、成膜装置1内の大気の流れは常に測定室20側から成膜室10側へ向かうこととなる。これにより、成膜室10中のエアロゾルや材料粒子Mが測定室20に流れ込むのを防止する。
【0071】
また、このとき、中間室30と測定室20とはパージ用ガスで満たされる状態となるが、パージ用ガスはエアロゾルZを形成するキャリアガスと同じガスであるため、中間室30と測定室20とは成膜時の成膜室10に近い雰囲気となる。したがって、成膜時に近い雰囲気中で、成膜室10と測定室20との間での基板Bの移動と後述する成膜室20で行われる膜の測定とを行うことができ、後述するように膜形成工程S2が再度行われる場合には、その再成膜を良好に行うことができる。
【0072】
すなわち、上記の膜形成工程S2において、基板Bに衝突した材料粒子Mには割れが生じ、密着性の高い新生面が露出するが、再成膜に至るまでの工程を成膜室10に近い雰囲気の中で行えるため、露出した新生面を新生に近い状態で維持できるのである。
【0073】
さらに、本実施形態の膜形成装置1には、2列のベルトコンベア32が設置されている。よって、次に処理される基板(図示せず)をあらかじめ測定室20内に搬入しておき、上記の基板Bの成膜室10から測定室20への移動と同時に、測定室20から成膜室10へ移動させても良い(図3を併せて参照)。このようにすれば、次の膜厚測定工程において先の基板Bに形成された膜の膜厚分布を測定している間に、次の基板の成膜を行うことができる。これにより、2枚の基板を同時に処理することができ、製造プロセスの短縮につながる。
【0074】
測定室20へ搬入された基板Bは、測定台21上にセットされる。基板Bの搬送が終了したら、仕切弁31を閉鎖するとともに、クリーナ39のスイッチをオフにする。また、第1の基板移動工程S3において測定室20の内圧が高くなっているので、測定室側の圧力調整バルブ41Bを開いて、測定室20の内圧を成膜室10の内圧とほぼ等しくなるまで調整する。調整後、圧力調整バルブ41Bを閉鎖する。
【0075】
続いて、図6に示すように、成膜工程で成膜された膜の膜厚分布を測定する(膜厚測定工程;ステップS4)。レーザ干渉計23を作動させると、投受光部23A(本発明の投光部および受光部に該当する)に備えられた光源(図示せず)から出射された光は、測定室20の窓部22に嵌め込まれた光透過性のガラス板を通過して、測定室20内部に設置された基板Bの表面に到達する。基板Bに到達した光はこの基板B上に形成された膜に反射されて、再び測定室20の窓部22に嵌め込まれたガラス板を通過し、投受光部23Aに備えられたCCDカメラ(図示せず)によって受光される。
【0076】
このように、測定機構として被接触式の光学的な機構であるレーザ干渉計23を使用するとともに、このレーザ干渉計23を測定室20の外部に設置している。また、測定室20の天井部には光透過性のガラス板を嵌め込んだ窓部22が設けられており、レーザ干渉計23からの出射光をこの窓部22から測定室20内部に照射できるようになっている。これにより、レーザ干渉計23を測定室20の外部から操作して、内部にある基板B上の膜厚測定を行うことができる。したがって、測定条件の調整やレーザ干渉計23のメンテナンス等のために測定室20を開閉する必要がなく、測定室20内を減圧としたままでレーザ干渉計23の操作を行うことができる。
【0077】
また、成膜と測定とを別室で行うようになっており、成膜を行う際には成膜室10と測定室20との間を遮断できるようになっている。加えて、成膜室10と測定室20との間にはクリーナ39が設けられており、成膜室10から搬送される基板Bはクリーニングされた状態で測定室20内に搬入される。これにより、測定室20の内部がエアロゾルZによって汚染されることを回避し、測定精度を維持することができる。
【0078】
CCDカメラによって受光された反射光のデータはホストコンピュータCに送られ、膜の表面状態が解析される。
【0079】
なお、先の第1の基板移動工程S3において、次に処理される基板を成膜室10へ移動させた場合には、この膜厚測定工程S4を行っている間に、成膜室10へ搬入された基板への成膜を併せて行う。
【0080】
測定が終了したら、ホストコンピュータC(本発明の判断部)は、送信されたデータに基づいて、予め定められた基準厚さを有する膜が形成されたか否かを判断する(判断工程;ステップS5)。そして、膜が基準厚さを有していると判断した場合、もしくは膜が基準厚さよりも大きな厚みを有していると判断した場合は、成膜を終了し、仕切弁31を閉鎖した状態で、搬出入口24を開放し、測定室20から基板Bを搬出する(基板搬出工程;ステップS6)。このとき、測定室20内部は外気圧と同じ常圧状態に戻されるが、仕切弁31が閉鎖されているため、成膜室10の内部は減圧状態に保たれる。また、基板Bの測定室20への搬入時と同様に、開閉検知センサ26は搬出入口24が開状態であることを検知し、この情報をホストコンピュータCに送る。ホストコンピュータCはこの情報に基づき、搬出入口24が開放されている間は、仕切弁31が開放されることがないように制御を行う。
【0081】
このように、基板Bの搬出入口24が測定室20に設けられ、測定室20と成膜室10との間が仕切り弁31によって閉鎖されるから、基板Bの搬出時には測定室20の内圧のみを常圧に戻せばよく、成膜条件の変動を最小限度とすることができる。なお、このとき、成膜を終えた基板Bの搬出と同時に新たな基板(図示せず)を搬入し、続いてこの新たな基板への膜形成を行うこともできる。判断工程S5において、形成された膜が基準厚さを有すると判断された基板Bは、基板搬出工程S6の後、膜の形成に失敗した不良基板として処理される。
【0082】
一方、膜が基準厚さ未満であると判断した場合は、再び基板Bを成膜室10に移動させる(第2の基板移動工程;ステップS7)。すなわち、上記した基板搬入工程S1と同様に、クリーナ39のスイッチを入れてパージ用ガスを中間室30内に供給する。この状態で、仕切弁31を開放し、ベルトコンベア32を駆動して基板Bを成膜室10へ搬送する(図4B)。このとき、基板搬入工程S1および第1の基板移動工程S3と同様に、クリーナ39から供給されるパージ用ガスによって、測定室20の内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるようにする。これにより、測定室20の内部の汚染を防止する。
【0083】
なお、先の膜厚測定と同時に成膜室10で次の基板の膜形成を行っている場合には、膜形成終了後の基板Bの測定室20への移動を併せて行う。
【0084】
基板Bの搬送が終了したら、仕切弁31を閉鎖するとともに、クリーナ39のスイッチをオフにする。成膜室10へ搬入された基板Bは、ステージ11上にセットされる。
【0085】
基板Bがステージにセットされたら、ホストコンピュータC(本発明の噴射条件調整部)は、先の膜厚測定工程S4における解析結果にしたがって、膜形成条件の調整を行う(調整工程;ステップS8)。例えば、膜厚が薄くなっている領域に材料粒子Mが厚く付着するように噴射ノズル12の走査経路やエアロゾルZの噴射量等の噴射条件(膜形成条件)を調整する。その後、調整した膜形成条件に従って、再び膜形成工程S2を行う(図5A)。これにより、1回目の膜形成工程S2における膜厚のばらつきが解消される。
【0086】
膜形成が終了したら、基板Bを再び測定室20に搬送し(図5B)、膜厚の測定を行う(図6)。このようにして、膜が所望の厚さとなるまで、成膜室10と測定室20との間で基板Bを往復させ、膜形成と測定とを繰り返す。
【0087】
以上のように本実施形態によれば、成膜を行う成膜室10と、膜厚を測定する測定室20とが連通されており、それぞれ内圧を制御可能となっている。このような構成によれば、成膜室10および測定室20の内部を減圧した状態で、両室10、20の間で基板Bを行き来させ、成膜と測定とを繰り返し行うことができる。また、成膜と測定とを別室で行うようになっており、成膜を行う際には成膜室10と測定室20との間を遮断できるようになっているから、測定室20の内部がエアロゾルによって汚染されることを回避して測定室内を清浄に保ち、測定精度を維持することができる。これらより、成膜プロセス中に膜厚を簡易かつ精確に測定して成膜条件へのフィードバックを行うことができる。
【0088】
本実施形態の膜形成装置1を用いて、材料粒子Mとして圧電材料の粒子を使用し、圧電アクチュエータを製造する場合には、例えば基板Bを一の電極に利用できるように金属製とし、圧電材料の粒子により形成された圧電膜の上に、他の電極を形成すればよい。これによれば、圧電膜の膜厚が均一で圧電特性の良好な圧電アクチュエータを簡易に製造することができる。
【0089】
本実施形態の基板搬入工程(S1)、第1の基板移動工程(S3)、および第2の基板移動工程(S7)において、成膜室10の内圧は測定室20の内圧に比べて常に低い状態に保たれるので、成膜装置1内の大気の流れは測定室20側から成膜室10側へ向かう。つまり、測定室20は、成膜室10に対して常に上流に設けられていることとなる。
【0090】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について、図8〜図13を参照しつつ説明する。本実施形態の第1実施形態との主たる相違点は、仕切弁61が中間室60において成膜室側と測定室側との2箇所に設けられている点にある。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0091】
図8には、膜形成装置50の全体概略図を、図9には、この膜形成装置50のブロック図を示す。この膜形成装置50は、第1実施形態と同様に、成膜を行うための成膜室10と、形成された膜の厚みを測定するための測定室20と、この膜形成装置50の運転を自動制御するためのホストコンピュータCとを備えている。
【0092】
成膜室10と測定室20との間には、両者を結ぶ細長い角筒状の中間室60が設けられている。この中間室60には、成膜室側と測定室側との2箇所に仕切弁61A、61Bが設けられている。この中間室60において、2つの仕切弁61A、61Bに挟まれた空間は、基板Bの除塵を行うためのクリーニング室60Aとされており、ここには、第1実施形態と同様の構成のクリーナ39が設けられている。そして、2つの仕切弁61A、61Bを開閉することによって、成膜室10とクリーニング室60A、およびクリーニング室60Aと測定室20とを連通したり遮断したりすることができるようになっている。
【0093】
また、成膜室10に設置されたステージ11と測定室20に設置された測定台21との間には、第1実施形態と同様に、この中間室60を通過して両者の間で基板Bを搬送するためのベルトコンベア62が設けられている。
【0094】
このベルトコンベア62は、2つの仕切弁61A、61Bを境として成膜室側コンベア62A、中間室側コンベア62B、および測定室側コンベア62Cの3つに分割されている。仕切弁61A、61Bを閉鎖する際には、成膜室側コンベア62Aと中間室側62Bとの間、および中間室側62Bと測定室側コンベア62Cとの間に、それぞれ仕切弁61A、61Bの弁板(図示せず)が進入するようになっている。これにより、第1実施形態と同様に、仕切弁61A、61Bを閉鎖する際にベルトコンベア62の存在が障害となって遮蔽性が損なわれるといったことがないようにされている。また、成膜室側コンベア62Aと中間室側コンベア62Bとの間、および中間室側コンベア62Bと測定室側コンベア62Cとの間には、第1実施形態と同様の構成の受け渡し機構34が設けられており、この受け渡し機構34によって、これらのコンベア62A、62B、62C間で、ワーク台38に載置された基板Bの受け渡しができるようになっている。
【0095】
また、中間室60には、ベルトコンベア62上での基板Bの位置を検出するための位置検出センサ63(本発明の位置検出部に該当する)が設けられている。この位置検出センサ63によって得られた基板Bの位置情報はホストコンピュータCに送られ、この位置情報に基づいてホストコンピュータCから仕切弁61A、61Bの開閉の指示が出されるようになっている。
【0096】
クリーニング室60Aは、排気管51を介して真空ポンプP2(本発明の中間室用圧力調整機構に該当する)に接続されている。この排気管51には圧力調整バルブ52が設けられており、クリーニング室60Aの内圧を調整できるようになっている。
【0097】
次に、上記のように構成された膜形成装置50によって成膜を行う手順について、図7のフローチャート、および図10〜図13を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する膜形成装置50の動作は、第1実施形態と同様、ホストコンピュータCに格納されたプログラムによって自動制御されている。
【0098】
まず、図10Aに示すように、成膜室側の圧力調整バルブ41Aを開放し、測定室側の圧力調整バルブ41Bと測定室側の仕切弁61Bとを閉鎖した状態で、真空ポンプPを起動し、成膜室10の内部をほぼ真空状態となるまで減圧する。同時に、中間室側の圧力調整バルブ52を開放し、真空ポンプP2を起動して、クリーニング室60Aの内部をほぼ真空状態となるまで減圧する。
【0099】
次いで、搬出入口24を開放し、基板Bを測定室20の内部に搬入する。基板Bの搬入後、搬出入口24を扉部25によって閉鎖する。そして、測定室側の圧力調整バルブ41Bを開放し、測定室20内をほぼ真空となるまで減圧する。
【0100】
次に、図10Bおよび図11Aに示すように、ベルトコンベア62を駆動し基板Bを測定室20から成膜室10へと搬送する(基板搬入工程S1)。ベルトコンベア62が駆動されると、まず、位置検出センサ63は測定室20から中間室60のクリーニング室60Aへ向かって基板Bが搬送されていることを検知し、この情報をホストコンピュータCに送る。ホストコンピュータCはこの情報に基づき、測定室側の仕切弁61Bを開く。そして、基板Bを測定室側コンベア62Cと中間室側コンベア62Bとの間で受け渡して、クリーニング室60Aへ搬入する(図10B)。同時に、測定室側の仕切弁61Bが開放されている間は、成膜室側の仕切弁61Aが常に閉鎖されるように制御を行い、成膜室10が減圧状態に保たれるようにする。
【0101】
次に、位置検出センサ63はクリーニング室60Aから成膜室10へ向かって基板Bが搬送されていることを検知し、この情報をホストコンピュータCに送る。ホストコンピュータCはこの情報に基づき、クリーナ39のスイッチを入れてパージ用ガスをクリーニング室60A内に供給する。この状態で、成膜室側の仕切弁61Aを開く。そして、基板Bを中間室側コンベア62Bと成膜室側コンベア62Aとの間で受け渡して、成膜室10へ搬入する(図11A)。同時に、成膜室側の仕切弁61Aが開放されている間は、測定室側の仕切弁61Bが常に閉鎖されるように制御を行う。
【0102】
このとき、成膜室10側では圧力調整バルブ41Aが開放されており、クリーナ39から供給されたガスが真空ポンプPにより排気されるが、中間室60のクリーニング室60A側では圧力調整バルブ52が開放されていないから、排気が行われない。したがって、クリーニング室60Aの内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるとともに、成膜装置1内の大気の流れは常にクリーニング室60A側から成膜室10側へ向かうこととなる。このようにすれば、成膜室10中のエアロゾルや材料粒子Mがクリーニング室60Aに流れ込み、ひいては測定室20側に流れ込むことを防止できる。つまり、エアロゾルZや材料粒子Mによる測定室20内部の汚染を防止し、測定室20内を清浄に保ち、測定精度を維持することができる。
【0103】
基板Bの搬送が終了したら、成膜室側の仕切弁61Aを閉鎖するとともに、クリーナ39のスイッチをオフにする。また、基板Bの搬送時にクリーニング室60Aの内圧が高くなっているので、中間室側の圧力調整バルブ52を開いて、クリーニング室60Aの内圧を成膜室10および測定室20の内圧とほぼ等しくなるまで調整する。調整後、圧力調整バルブ52を閉鎖する。
【0104】
続いて、図11Bに示すように、成膜を行う(膜形成工程または圧電膜形成工程S2)。成膜の手順は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0105】
成膜後、図12A、図12Bに示すように、基板Bを成膜室10から測定室20へ移動する(第1の基板移動工程S3)。ベルトコンベア62が駆動されると、まず、位置検出センサ63は成膜室10から中間室60のクリーニング室60Aへ向かって基板Bが搬送されていることを検知し、この情報をホストコンピュータCに送る。ホストコンピュータCはこの情報に基づき、クリーナ39のスイッチを入れてパージ用ガスを中間室30内に供給する。それとともに、成膜室側の仕切弁61Aを開く。そして、基板Bを成膜室側コンベア62Aと中間室側コンベア62Bとの間で受け渡して、クリーニング室60Aへ搬入する(図12A)。同時に、成膜室側の仕切弁61Aが開放されている間は、測定室側の仕切弁61Bが常に閉鎖されるように制御を行い、成膜室10が減圧状態に保たれるようにする。
【0106】
このとき、上記した基板搬入工程S1と同様に、成膜室10側では圧力調整バルブ41Aが開放されており、クリーナ39から供給されたガスが真空ポンプPにより排気されるが、中間室60のクリーニング室60A側では圧力調整バルブ52が開放されていないから、排気が行われない。したがって、クリーニング室60Aの内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるとともに、成膜装置1内の大気の流れは常にクリーニング室60A側から成膜室10側へ向かうこととなる。このようにすれば、成膜室10中のエアロゾルや材料粒子Mがクリーニング室60Aに流れ込むことを防止でき、ひいては、測定室20側に流れ込むのを防止できる。このようにして、成膜室10中のエアロゾルZや材料粒子Mが測定室20に流れ込んで測定室20の内部を汚染することを防止し、測定室20内を清浄に保つ。これにより、測定精度を維持することができる。
【0107】
クリーニング室60A内では、基板Bがクリーナ39の下方を通過する間に、このクリーナ39によってパージ用ガスを基板Bに吹き付け、基板Bのクリーニングを行う。これにより、基板Bに余剰の材料粒子Mが付着して測定室20に運び込まれ、測定室20の内部を汚染することを防止する。基板Bのクリーニングが終了したら、クリーナ39を停止する。
【0108】
次に、クリーナ39からのパージ用ガスの供給によってクリーニング室60Aの内圧が高くなっているので、中間室側の圧力調整バルブ52を開いて、クリーニング室60A内を成膜室10および測定室20の内圧とほぼ等しくなるまで減圧する。減圧後、圧力調整バルブ52Bを閉鎖する。
【0109】
次いで、基板Bをクリーニング室60Aから測定室20へ搬送する。ベルトコンベア62が駆動されると、位置検出センサ63はクリーニング室60Aから測定室20へ向かって基板Bが搬送されていることを検知し、この情報をホストコンピュータCに送る。ホストコンピュータCはこの情報に基づき、測定室側の仕切弁61Bを開く。そして、基板Bを中間室側コンベア62Bと測定室側コンベア62Cとの間で受け渡して、測定室20へ搬入する。同時に、測定室側の仕切弁61Bが開放されている間は、成膜室側の仕切弁61Aが常に閉鎖されるように制御を行う。このようにして、成膜室10中のエアロゾルZや材料粒子Mが測定室20に流れ込んで測定室20の内部を汚染することを防止し、測定室20内を清浄に保つ。これにより、測定精度を維持することができる。
【0110】
基板Bの搬送が終了したら、測定室側の仕切弁31Bを閉鎖する。
【0111】
続いて、図13に示すように、成膜工程で成膜された膜の膜厚分布を測定する(膜厚測定工程S4)。測定の手順は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0112】
測定が終了したら、ホストコンピュータCは、送信されたデータに基づいて、予め定められた基準厚さを有する膜が形成されたか否かを判断する(判断工程S5)。そして、膜が基準厚さを有していると判断した場合、もしくは膜が基準厚さよりも大きな厚みを有していると判断した場合は、成膜を終了し、仕切弁61Bを閉鎖した状態で、搬出入口24を開放し、測定室20から基板Bを搬出する(基板搬出工程S6)。この基板搬出工程S6の詳細は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0113】
一方、膜が基準厚さ未満であると判断した場合は、再び基板Bを成膜室10に移動させる(第2の基板移動工程S7)。すなわち、上記した基板Bの搬入時と同様にして、まず測定室側の仕切弁61Bを開き、成膜室側の仕切弁61Aを閉じた状態で、測定室20からクリーニング室60Aへ基板Bを搬送する(図10B)。次いで、クリーナ39からパージ用ガスを供給しつつ、成膜室側の仕切弁61Aを開き、測定室側の仕切弁61Bを閉じた状態で、クリーニング室60Aから成膜室10へ基板Bを搬送する(図11A)。このとき、第1の基板移動工程と同様に、クリーナ39から供給されるパージ用ガスによって、クリーニング室60Aの内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるようにする。これにより、成膜室10中のエアロゾルや材料粒子Mがクリーニング室60Aに流れ込むことを防止する。
【0114】
基板Bがステージにセットされたら、第1実施形態と同様に、ホストコンピュータCは、先の膜厚測定工程における解析結果にしたがって、膜形成条件の調整を行う(調整工程S8)。その後、再び膜形成工程S2を行う(図11B)。
【0115】
膜形成が終了したら、基板Bを再び測定室20に搬送し(図12A、図12B)、膜厚の測定を行う(図13)。このようにして、膜が所望の厚さとなるまで成膜室10と測定室20との間で基板Bを往復させ、膜形成と測定とを繰り返す。
【0116】
成膜が完了したら、第1実施形態と同様にして、仕切弁61A、61Bを閉鎖した状態で、搬出入口24を開放し、測定室20から基板Bを搬出する。
【0117】
以上のように本実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0118】
加えて、仕切弁61が中間室60において成膜室側と測定室側との2箇所に設けられている。そして、2つの仕切弁61A、61Bのうち一方が開放されるときには、他方を閉鎖しておくようにすればよい。これにより、成膜室10中に残留したエアロゾルZが浮遊し、また材料粒子Mが内壁部に付着するなどして、成膜室10の内部が相当に汚れていたとしても、これらが測定室20に流れ込んで測定室20の内部を汚染することを防止することができる。これにより、測定室20での測定精度を保つことができる。
【0119】
なお、本実施形態の膜形成装置1を用いても、圧電膜の膜厚が均一で圧電特性の良好な圧電アクチュエータを簡易に製造することができる。例えば、材料粒子Mとして圧電材料の粒子を使用し、基板Bを一の電極に利用できるように金属製とし、金属製基板B上に圧電材料の粒子により圧電膜を形成する。そして、その上にスクリーン印刷等により他の電極を形成することにより、圧電素子を動作させることができる。即ち圧電アクチュエータとして用いることができる。
【0120】
本発明の技術的範囲は、上記した実施形態によって限定されるものではなく、例えば、次に記載するようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。その他、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0121】
第1実施形態の基板搬入工程(S1)、第1の基板移動工程(S3)、および第2の基板移動工程(S7)において、成膜室10側では圧力調整バルブ41Aが開放されており、クリーナ39から供給されたガスが真空ポンプPにより排気される。一方、測定室20側では圧力調整バルブ41Bが開放されていないため、排気が行われない。したがって、測定室20の内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるとともに、成膜装置1内の大気の流れは常に測定室20側から成膜室10側へ向かうこととなる。つまり、測定室20は真空ポンプPから見て常に成膜室10の上流に設けられていることとなる。
【0122】
第2実施形態の基板搬入工程(S1)、第1の基板移動工程(S3)、および第2の基板移動工程(S7)においても、成膜室10側では圧力調整バルブ41Aが開放されており、クリーナ39から供給されたガスが真空ポンプPにより排気される。一方、クリーニング室60A側では圧力調整バルブ52が開放されていないため、排気が行われない。したがって、クリーニング室60Aの内圧が成膜室10の内圧よりも高くなるとともに、成膜装置1内の大気の流れは常にクリーニング室60A側から成膜室10側へ向かうこととなる。つまり、クリーニング室60Aは真空ポンプPから見て常に成膜室10の上流に設けられ、さらにその上流に測定室20が設けられていることとなる。
(1)第1実施形態では、クリーナ39が第2の圧力調整機構を兼ねていたが、第2の圧力調整機構をクリーナ39とは別に設けても良い。例えば、測定室20にガスボンベ等のガス供給機構を接続して測定室20のみにガスを供給することによって、成膜室10と測定室20との内圧の差を調整しても良い。また、例えば、2つの圧力調整バルブ41A、41Bの開口度に差を設けることによって、成膜室10と測定室20との内圧の差を調整しても良い。また、第2実施形態でも同様に、クリーニング室60Aに別途ガス供給機構を設けても良く、圧力調整バルブ41A、41B、52の開口度の差によって成膜室10または測定室20とクリーニング室60Aとの内圧の差を調整しても良い。
(2)第2実施形態では、クリーナ39からパージ用ガスを供給しつつ仕切弁61A、61Bを開いて基板Bを成膜室10または測定室20とクリーニング室60Aとの間で移動させいていたが、上記(1)で述べたようにクリーナ39が第2の圧力調整機構を兼ねない場合には、2箇所の仕切弁61A、61Bを閉鎖した状態でクリーナ39を作動させて基板Bのクリーニング作業を行い、クリーニング終了後、クリーナ39を停止して、クリーニング室60A内圧力が成膜室10、測定室20と等しくなるように調製してから仕切弁61A、61Bを開放して基板Bを移動させるようにしても良い。このようにすれば、除去作業時の中間室の内圧の変動や基板から除去された材料粒子等が成膜や測定に影響を与えることを回避することができる。
(3)第2実施形態では、成膜室10、クリーニング室60A、測定室20をいずれも減圧した状態で、仕切弁61A、61Bを開いて基板Bを成膜室10または測定室20とクリーニング室60Aとの間で移動させいていたが、2つの仕切り弁61A、61Bおよび中間室側圧力調整バルブ52、真空ポンプ50等を制御することにより、例えば測定室20を常に常圧としておき、測定室20とクリーニング室60Aとの間で基板Bを移動させる際にはクリーニング室60A内を常圧とし、成膜室10とクリーニング室60Aとの間で基板Bを移動させる際にはクリーニング室60Aを減圧としても良い。このようにすれば、成膜室、測定室に比べて比較的狭いスペースしか必要とせず、内圧の調整を簡単に行える中間室の内圧を変化させるだけで基板の移動を行うことができる。
(4)上記実施形態では、1台の真空ポンプPが圧力調整バルブ41A、41Bを介して成膜室10と測定室20との双方に接続されていたが、2台の圧力調整機構がそれぞれ成膜室、測定室に接続されて、個別に圧力調整を行うようにされていても構わない。
(5)上記実施形態では、成膜室10と測定室20とは中間室30、60により接続されていたが、本発明によれば中間室は必ずしも必要ではなく、例えば測定室が成膜室に直接に連結され、両者の間をシャッター等の遮蔽部材で仕切るようにしても良い。
(6)上記実施形態では、レーザ干渉計23が測定室20の外部に設けられ、窓部22越しに膜の測定を行うようにされていたが、測定機構が測定室の内部に設置されていても構わない。
(7)上記実施形態では、ベルトコンベア32は2列が設けられていたが、コンベアは1列であっても構わない。
(8)上記実施形態では、膜形成装置1、50の運転はホストコンピュータCにより自動制御されていたが、膜形成装置の運転の一部または全部を作業者等により手動で制御しても構わない。
(9)第2実施形態では、クリーニング室から測定室へ搬送する際には特に両者の間に圧力差を設けなかったが、測定室20の内圧がクリーニング室60Aの内圧よりも高くなるように圧力調整を行っても良い。このようにすれば、例えばクリーニング室60Aに成膜室からエアロゾルZが流入したり、クリーニングにより基板Bから取り除かれた材料粒子M等がクリーニング室60A内に浮遊している場合などにおいても、これらが測定室20に流れ込んで測定室20内を汚染することを防止できる。
(10)上記実施形態では、調整工程S8は、第2の基板移動工程S7の後に行われていたが、判断工程S5の後であればいつ行ってもよく、例えば第2の基板移動工程S7と並行して行っても良い。
(11)上記実施形態では、基板搬入工程S1において、測定室20の搬出入口24から搬入した基板Bをベルトコンベア32で成膜室10に移動させていたが、これに限られることはなく、例えば成膜室10に基板Bの搬入口とその搬入口を開閉する扉を設け、基板Bを外部から直接に搬入するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】第1実施形態の膜形成装置の概略図である。
【図2】第1実施形態の膜形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】ベルトコンベアの部分拡大図である。
【図4】図4Aは第1実施形態の膜形成工程において基板を膜形成装置に搬送する様子を示す図、図4Bは第1実施形態の膜形成工程において基板を測定室から成膜室へ搬送する様子を示す図である。
【図5】図5Aは第1実施形態の膜形成工程において成膜室にて膜形成を行う様子を示す図、図5Bは第1実施形態の膜形成工程において基板を成膜室から測定室に搬送する様子を示す図である。
【図6】第1実施形態の膜形成工程において測定室にて膜厚測定を行う様子を示す図である。
【図7】第1実施形態および第2実施形態における膜形成の流れを示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態の膜形成装置の概略図である。
【図9】第1実施形態の膜形成装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図10Aは第2実施形態の膜形成工程において基板を膜形成装置に搬送する様子を示す図、図10Bは第2実施形態の膜形成工程において基板を測定室から中間室へ搬送する様子を示す図である。
【図11】図11Aは第2実施形態の膜形成工程において基板を中間室から成膜室へ搬送する様子を示す図、図11Bは第2実施形態の膜形成工程において成膜室にて膜形成を行う様子を示す図である。
【図12】図12Aは第2実施形態の膜形成工程において基板を成膜室から中間室に搬送する様子を示す図、図12Bは第2実施形態の膜形成工程において基板を中間室から測定室に搬送する様子を示す図である。
【図13】第2実施形態の膜形成工程において測定室にて膜厚測定を行う様子を示す図である。
【符号の説明】
【0124】
1…膜形成装置
10…成膜室
12…噴射ノズル(噴射機構)
13…エアロゾル発生器(噴射機構)
20…測定室
23…レーザ干渉計(測定機構)
24…搬出入口
30…中間室
31…仕切り弁(遮断部)
32…ベルトコンベア(コンベア)
39…クリーナ(クリーナ)
41A、41B…圧力調整バルブ(弁体)
B…基板
G…ガスボンベ(噴射機構)
M…材料粒子
P…真空ポンプ(噴射機構・圧力調整機構)
Z…エアロゾル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜を行うための成膜室と、
この成膜室内で材料粒子を含むエアロゾルを基板に向けて噴射することによりこの基板上に前記材料粒子からなる膜を形成する噴射機構と、
前記成膜室に連通された測定室と、
前記測定室内にある前記膜の厚みを測定する測定機構と、
前記成膜室および前記測定室に接続されてこの成膜室および測定室の内圧を制御する圧力調整機構と、
前記基板を前記成膜室と前記測定室との間で搬送するコンベアと、
前記成膜室と前記測定室とを遮断する遮断部と、
を備える膜形成装置。
【請求項2】
前記測定機構が非接触式のものであって、前記測定室の外部に設置されている請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項3】
前記測定機構が、前記基板に光を出射する投光部と、前記基板からの反射光を受光する受光部とを備えた光学的機構である請求項2に記載の膜形成装置。
【請求項4】
前記成膜室および前記測定室が、それぞれ弁体を介して一の圧力調整機構に接続されている請求項1〜3のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項5】
前記基板の搬出入口が前記測定室に設けられている請求項1〜4のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項6】
前記コンベアが複数設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項7】
前記成膜室と前記測定室との間にはこれら両室を連通する中間室が設けられ、前記中間室には、前記基板の汚れを除去するクリーナが設けられている請求項1〜6のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項8】
前記クリーナが、前記基板にガスを吹き付けることによって前記基板の汚れを除去するガスクリーナであるとともに、このガスクリーナが前記中間室にガスを供給することによってこの中間室と連通する前記成膜室または前記測定室の圧力を調整する第2の圧力調整機構を兼ねているものである請求項7に記載の膜形成装置。
【請求項9】
前記ガスが、前記エアロゾルを形成するガスと同種のものである請求項8に記載の膜形成装置。
【請求項10】
前記遮断部が前記中間室において前記成膜室側と前記測定室側との2箇所に設けられている請求項7〜9のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項11】
前記中間室において前記2箇所の遮断部の間に前記クリーナが設置されている請求項10に記載の膜形成装置。
【請求項12】
前記中間室には、前記2箇所の遮断部によって区画される空間の内圧を制御する中間室用圧力調整機構が設置されている請求項10または11に記載の膜形成装置。
【請求項13】
前記コンベアによって基板が搬送されているときに、前記測定室の内圧が前記成膜室の内圧よりも高くなるように前記圧力調整機構または前記弁体を制御する圧力制御部を備える請求項1〜12のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項14】
前記測定室に設けられて前記搬出入口を開閉する開閉部と、前記開閉部による前記搬出入口の開閉状態を検知する開閉検知部と、前記開閉検知部によって前記搬出入口が開放状態であることが検知されたときに前記遮断部を遮断する遮断制御部と、を備える請求項5〜13のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項15】
前記コンベアに設けられてこのコンベア上での前記基板の位置を検知する位置検出部と、前記位置検出部が前記成膜室と前記中間室との間に基板があることを検出したときには前記測定室側の遮断部を遮断するとともに前記成膜室側の遮断部を開放し、前記位置検出部が前記測定室と前記中間室との間に基板があることを検出したときには前記成膜室側の遮断部を遮断するとともに前記測定室側の遮断部を開放する遮断制御部と、を備える請求項10〜14のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項16】
前記測定機構によって測定された前記膜の厚さがあらかじめ定められた基準厚さよりも小さいか否かを判断する判断部と、前記測定機構によって測定された前記膜の厚さに基づいて前記噴射機構の噴射条件を調整する噴射条件調整部と、前記判断部により前記膜の厚さが前記基準厚さよりも小さいと判断されたときには、前記コンベアに前記基板を前記測定室から前記成膜室へ搬送させるとともに前記噴射条件調整部に前記噴射機構の噴射条件を前記膜の厚さに対応するように調整させ、調整された噴射条件に従って前記成膜室へ搬送された前記基板に対して前記噴射機構に前記エアロゾルの噴射を行わせる装置制御部と、を備える請求項1〜15のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項17】
成膜を行うための成膜室と、この成膜室内において材料粒子を含むエアロゾルを噴射する噴射機構と、前記成膜室に連通された測定室と、前記測定室内にある成膜された膜の厚みを測定する測定機構と、前記成膜室と前記測定室との間を遮断する遮断部と、を備える膜形成装置によって基板上に前記材料粒子からなる膜を形成する方法であって、
(a)前記基板を前記成膜室内に搬入する基板搬入工程と、
(b)前記成膜室を前記測定室から遮断した状態で、前記エアロゾルを前記噴射機構から噴射することにより前記基板上に前記膜を形成する膜形成工程と、
(c)前記成膜室内および前記測定室内を減圧した状態で、前記成膜室から前記測定室へ前記基板を移動する第1の基板移動工程と、
(d)前記膜の膜厚を測定する膜厚測定工程と、
(e)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜が予め定められた基準厚さに達しているか否かを判断する判断工程と、
(f)前記判断工程において前記膜が前記基準厚さよりも小さいと判断された場合に膜の再形成を行う再形成工程と、を含み、
(g)前記再形成工程が、前記成膜室内および前記測定室内を減圧した状態で前記測定室から前記成膜室へ前記基板を移動する第2の基板移動工程と、(h)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜形成工程における膜形成条件の設定を調整する調整工程と、(i)前記膜形成工程、前記第1の基板移動工程、前記膜厚測定工程、および前記判断工程を再度実行する工程と、を含む膜形成方法。
【請求項18】
前記判断工程において前記膜が前記基準厚さ以上であると判断された場合に、この判断工程の後に前記再形成工程に代えて、前記測定室から前記基板を搬出する基板搬出工程を含む請求項17に記載の膜形成方法。
【請求項19】
前記第1の基板移動工程および前記第2の基板移動工程において、前記測定室の内圧を前記成膜室の内圧よりも高くする請求項17または18に記載の膜形成方法。
【請求項20】
前記測定室に前記基板を装置内へ搬出入するための搬出入口を設け、前記基板搬入工程において、前記成膜室を前記測定室から遮断した状態で前記基板を前記搬出入口から搬入し、さらにこの基板を前記測定室から前記成膜室に移動する請求項17〜19のいずれかに記載の膜形成方法。
【請求項21】
前記成膜室と前記測定室との間にこれら両室を連通する中間室を設けるとともに、この中間室において前記成膜室側と前記測定室側との2箇所に遮断部を設け、前記基板搬入工程後、前記第1の基板移動工程および前記第2の基板移動工程において、前記成膜室と前記中間室との間で前記基板を移動する際には前記測定室側の遮断部を閉じた状態で前記成膜室側の遮断部を開放し、前記測定室と前記中間室との間で前記基板を移動する際には前記成膜室側の遮断部を閉じた状態で前記測定室側の遮断部を開放する請求項17〜20のいずれかに記載の膜形成方法。
【請求項22】
成膜を行うための成膜室と、この成膜室内において圧電材料の粒子を含むエアロゾルを噴射する噴射機構と、前記成膜室に連通された測定室と、前記測定室内にある成膜された膜の厚みを測定する測定機構と、前記成膜室と前期測定室との間を遮断する遮断部と、を備える膜形成装置によって基板上に前記圧電材料の粒子からなる圧電膜を形成する圧電アクチュエータの製造方法であって、
(a)前記基板を前記成膜室内に搬入する基板搬入工程と、
(b)前記成膜室を前記測定室から遮断した状態で、前記エアロゾルを前記噴射機構から噴射することにより前記基板上に前記圧電膜を形成する圧電膜形成工程と、
(c)前記成膜室内および前記測定室内を減圧した状態で、前記成膜室から前記測定室へ前記基板を移動する第1の基板移動工程と、
(d)前記圧電膜の膜厚を測定する膜厚測定工程と、
(e)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記圧電膜が予め定められた基準厚さに達しているか否かを判断する判断工程と、
(f)前記判断工程において前記圧電膜が前記基準厚さよりも小さいと判断された場合に膜の再形成を行う再形成工程と、
(j)前記判断工程において前記膜が前記基準厚さ以上であると判断された場合に、前記測定室から前記基板を搬出する基板搬出工程と、を含み、
(g)前記再形成工程が、前記成膜室内および前記測定室内を減圧した状態で前記測定室から前記成膜室へ前記基板を移動する第2の基板移動工程と、(h)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜形成工程における膜形成条件の設定を調整する調整工程と、(i)前記圧電膜形成工程、前記第1の基板移動工程、前記膜厚測定工程、および前記判断工程を再度実行する工程と、を含む圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項1】
成膜を行うための成膜室と、
この成膜室内で材料粒子を含むエアロゾルを基板に向けて噴射することによりこの基板上に前記材料粒子からなる膜を形成する噴射機構と、
前記成膜室に連通された測定室と、
前記測定室内にある前記膜の厚みを測定する測定機構と、
前記成膜室および前記測定室に接続されてこの成膜室および測定室の内圧を制御する圧力調整機構と、
前記基板を前記成膜室と前記測定室との間で搬送するコンベアと、
前記成膜室と前記測定室とを遮断する遮断部と、
を備える膜形成装置。
【請求項2】
前記測定機構が非接触式のものであって、前記測定室の外部に設置されている請求項1に記載の膜形成装置。
【請求項3】
前記測定機構が、前記基板に光を出射する投光部と、前記基板からの反射光を受光する受光部とを備えた光学的機構である請求項2に記載の膜形成装置。
【請求項4】
前記成膜室および前記測定室が、それぞれ弁体を介して一の圧力調整機構に接続されている請求項1〜3のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項5】
前記基板の搬出入口が前記測定室に設けられている請求項1〜4のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項6】
前記コンベアが複数設けられている請求項1〜5のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項7】
前記成膜室と前記測定室との間にはこれら両室を連通する中間室が設けられ、前記中間室には、前記基板の汚れを除去するクリーナが設けられている請求項1〜6のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項8】
前記クリーナが、前記基板にガスを吹き付けることによって前記基板の汚れを除去するガスクリーナであるとともに、このガスクリーナが前記中間室にガスを供給することによってこの中間室と連通する前記成膜室または前記測定室の圧力を調整する第2の圧力調整機構を兼ねているものである請求項7に記載の膜形成装置。
【請求項9】
前記ガスが、前記エアロゾルを形成するガスと同種のものである請求項8に記載の膜形成装置。
【請求項10】
前記遮断部が前記中間室において前記成膜室側と前記測定室側との2箇所に設けられている請求項7〜9のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項11】
前記中間室において前記2箇所の遮断部の間に前記クリーナが設置されている請求項10に記載の膜形成装置。
【請求項12】
前記中間室には、前記2箇所の遮断部によって区画される空間の内圧を制御する中間室用圧力調整機構が設置されている請求項10または11に記載の膜形成装置。
【請求項13】
前記コンベアによって基板が搬送されているときに、前記測定室の内圧が前記成膜室の内圧よりも高くなるように前記圧力調整機構または前記弁体を制御する圧力制御部を備える請求項1〜12のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項14】
前記測定室に設けられて前記搬出入口を開閉する開閉部と、前記開閉部による前記搬出入口の開閉状態を検知する開閉検知部と、前記開閉検知部によって前記搬出入口が開放状態であることが検知されたときに前記遮断部を遮断する遮断制御部と、を備える請求項5〜13のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項15】
前記コンベアに設けられてこのコンベア上での前記基板の位置を検知する位置検出部と、前記位置検出部が前記成膜室と前記中間室との間に基板があることを検出したときには前記測定室側の遮断部を遮断するとともに前記成膜室側の遮断部を開放し、前記位置検出部が前記測定室と前記中間室との間に基板があることを検出したときには前記成膜室側の遮断部を遮断するとともに前記測定室側の遮断部を開放する遮断制御部と、を備える請求項10〜14のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項16】
前記測定機構によって測定された前記膜の厚さがあらかじめ定められた基準厚さよりも小さいか否かを判断する判断部と、前記測定機構によって測定された前記膜の厚さに基づいて前記噴射機構の噴射条件を調整する噴射条件調整部と、前記判断部により前記膜の厚さが前記基準厚さよりも小さいと判断されたときには、前記コンベアに前記基板を前記測定室から前記成膜室へ搬送させるとともに前記噴射条件調整部に前記噴射機構の噴射条件を前記膜の厚さに対応するように調整させ、調整された噴射条件に従って前記成膜室へ搬送された前記基板に対して前記噴射機構に前記エアロゾルの噴射を行わせる装置制御部と、を備える請求項1〜15のいずれかに記載の膜形成装置。
【請求項17】
成膜を行うための成膜室と、この成膜室内において材料粒子を含むエアロゾルを噴射する噴射機構と、前記成膜室に連通された測定室と、前記測定室内にある成膜された膜の厚みを測定する測定機構と、前記成膜室と前記測定室との間を遮断する遮断部と、を備える膜形成装置によって基板上に前記材料粒子からなる膜を形成する方法であって、
(a)前記基板を前記成膜室内に搬入する基板搬入工程と、
(b)前記成膜室を前記測定室から遮断した状態で、前記エアロゾルを前記噴射機構から噴射することにより前記基板上に前記膜を形成する膜形成工程と、
(c)前記成膜室内および前記測定室内を減圧した状態で、前記成膜室から前記測定室へ前記基板を移動する第1の基板移動工程と、
(d)前記膜の膜厚を測定する膜厚測定工程と、
(e)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜が予め定められた基準厚さに達しているか否かを判断する判断工程と、
(f)前記判断工程において前記膜が前記基準厚さよりも小さいと判断された場合に膜の再形成を行う再形成工程と、を含み、
(g)前記再形成工程が、前記成膜室内および前記測定室内を減圧した状態で前記測定室から前記成膜室へ前記基板を移動する第2の基板移動工程と、(h)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜形成工程における膜形成条件の設定を調整する調整工程と、(i)前記膜形成工程、前記第1の基板移動工程、前記膜厚測定工程、および前記判断工程を再度実行する工程と、を含む膜形成方法。
【請求項18】
前記判断工程において前記膜が前記基準厚さ以上であると判断された場合に、この判断工程の後に前記再形成工程に代えて、前記測定室から前記基板を搬出する基板搬出工程を含む請求項17に記載の膜形成方法。
【請求項19】
前記第1の基板移動工程および前記第2の基板移動工程において、前記測定室の内圧を前記成膜室の内圧よりも高くする請求項17または18に記載の膜形成方法。
【請求項20】
前記測定室に前記基板を装置内へ搬出入するための搬出入口を設け、前記基板搬入工程において、前記成膜室を前記測定室から遮断した状態で前記基板を前記搬出入口から搬入し、さらにこの基板を前記測定室から前記成膜室に移動する請求項17〜19のいずれかに記載の膜形成方法。
【請求項21】
前記成膜室と前記測定室との間にこれら両室を連通する中間室を設けるとともに、この中間室において前記成膜室側と前記測定室側との2箇所に遮断部を設け、前記基板搬入工程後、前記第1の基板移動工程および前記第2の基板移動工程において、前記成膜室と前記中間室との間で前記基板を移動する際には前記測定室側の遮断部を閉じた状態で前記成膜室側の遮断部を開放し、前記測定室と前記中間室との間で前記基板を移動する際には前記成膜室側の遮断部を閉じた状態で前記測定室側の遮断部を開放する請求項17〜20のいずれかに記載の膜形成方法。
【請求項22】
成膜を行うための成膜室と、この成膜室内において圧電材料の粒子を含むエアロゾルを噴射する噴射機構と、前記成膜室に連通された測定室と、前記測定室内にある成膜された膜の厚みを測定する測定機構と、前記成膜室と前期測定室との間を遮断する遮断部と、を備える膜形成装置によって基板上に前記圧電材料の粒子からなる圧電膜を形成する圧電アクチュエータの製造方法であって、
(a)前記基板を前記成膜室内に搬入する基板搬入工程と、
(b)前記成膜室を前記測定室から遮断した状態で、前記エアロゾルを前記噴射機構から噴射することにより前記基板上に前記圧電膜を形成する圧電膜形成工程と、
(c)前記成膜室内および前記測定室内を減圧した状態で、前記成膜室から前記測定室へ前記基板を移動する第1の基板移動工程と、
(d)前記圧電膜の膜厚を測定する膜厚測定工程と、
(e)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記圧電膜が予め定められた基準厚さに達しているか否かを判断する判断工程と、
(f)前記判断工程において前記圧電膜が前記基準厚さよりも小さいと判断された場合に膜の再形成を行う再形成工程と、
(j)前記判断工程において前記膜が前記基準厚さ以上であると判断された場合に、前記測定室から前記基板を搬出する基板搬出工程と、を含み、
(g)前記再形成工程が、前記成膜室内および前記測定室内を減圧した状態で前記測定室から前記成膜室へ前記基板を移動する第2の基板移動工程と、(h)前記膜厚測定工程における測定結果に基づいて前記膜形成工程における膜形成条件の設定を調整する調整工程と、(i)前記圧電膜形成工程、前記第1の基板移動工程、前記膜厚測定工程、および前記判断工程を再度実行する工程と、を含む圧電アクチュエータの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−84926(P2007−84926A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227862(P2006−227862)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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