説明

膨張器一体型圧縮機

【課題】 一つの部品で膨張器と圧縮機の機能を発揮させることにより、ランキンサイクル等システムのコンパクト化が可能な膨張器一体型圧縮機の提供。
【解決手段】 断面が略楕円形状のシリンダ室を規定するシリンダ11と、シリンダ室内の長径方向略中央部に回転可能に配置されてシリンダ室内を圧縮室2と膨張室4に区画するロータ12と、ロータ12の回転に伴ってシリンダ室の周壁を摺動可能にロータ12に対し進退自在に設けられて圧縮室2の容積を減少させると同時に膨張室4内の容積を増加させる複数のチャンバーにそれぞれ区画する複数のベーン13と、圧縮室2と膨張室4にそれぞれ配置された吸入口22、42及び吐出口23、43と、が備えられ、圧縮室側を圧縮機2として作用させる一方、膨張室側を膨張器4として作用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低沸点冷媒を用いたランキンシステム等で用いられる膨張器一体型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、従来熱回生システムとして、熱エネルギーを電力や動力に変換するランキンサイクルの研究が行われている。
【0003】
ランキンサイクルのコンポーネント部品としては、液媒体の圧力を上げる圧縮機、圧力が上がった液に熱を加えて気体にする蒸発器、気体に更に熱を加える過熱器、熱が加えられた気体のエネルギーを運動エネルギーに変換する膨張器、変換し終わった気体のエネルギーを液体に戻す凝縮器からなる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−313878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のランキンサイクルでは上述のようにコンポーネントが5部品(圧縮機、蒸発器、過熱器、膨張器、凝縮器)あり、システムが大型化するという問題があった。
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、一つの部品で膨張器と圧縮機の機能を発揮させることにより、ランキンサイクル等システムのコンパクト化が可能な膨張器一体型圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の膨張器一体型圧縮機は、断面が略楕円形状のシリンダ室を規定するシリンダと、前記シリンダ室内の長径方向略中央部に回転可能に配置されて前記シリンダ室内を圧縮室と膨張室に区画するロータと、該ロータの回転に伴って前記シリンダ室の周壁を摺動可能に前記ロータに対し進退自在に設けられて前記圧縮室の容積を減少させると同時に前記膨張室内の容積を増加させる複数のチャンバーにそれぞれ区画する複数のベーンと、前記圧縮室と膨張室にそれぞれ配置された吸入口及び吐出口と、が備えられ、前記圧縮室側を圧縮機として作用させる一方、前記膨張室側を膨張器として作用させるようにしたことを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の膨張器一体型圧縮機では、上述のように、ロータにより区画された一方の圧縮室側を圧縮機として作用させる一方、もう一方の膨張室側を膨張器として作用させるようにしたことで、一つの部品で膨張器と圧縮機の機能を発揮させることにより、ランキンサイクル等システムのコンパクト化が可能になるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
この実施例の膨張器一体型圧縮機は、請求項1および2に記載の発明に対応する。
【0010】
まず、この実施例の膨張器一体型圧縮機を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1はこの実施例の膨張器一体型圧縮機が車両の廃熱を利用するランキンサイクルに適用された例を示すシステム図、図2はこの実施例の膨張器一体型圧縮機を示す断面図、図3は、である。
【0012】
この膨張器一体型圧縮機が適用される車両の廃熱を利用するランキンサイクルシステムは、図1に示すように、液媒体の圧力を上げる圧縮機2と、圧力が上がった液冷媒にさらに熱を加えて気体にする蒸発器3と、熱が加えられた気体のエネルギーを運動エネルギーに変換する膨張器4と、変換された運動エネルギーで発電する発電機5と、電気を保存するバッテリ6と、変換し終わった気体のエネルギーを液冷媒に戻す凝縮器7と、を備えている。
【0013】
さらに詳述すると、この実施例では、上記蒸発器3の熱源として、エンジン8で発生した廃熱エネルギー(ラジエータ9の冷却水の熱エネルギー)が用いられている。
【0014】
また、この実施例では、上記圧縮機2と膨張器4が一体に形成された膨張器一体型圧縮機1が用いられている。
【0015】
即ち、この膨張器一体型圧縮機1は、図2に示すように、断面が略楕円形状のシリンダ室を規定するシリンダ11と、シリンダ室内の長径方向略中央部に回転可能に配置されてシリンダ室内を圧縮室21と膨張室41に区画するロータ12と、該ロータ12の回転に伴ってシリンダ室の周壁を摺動可能にロータ12に対し進退自在に設けられて圧縮室21の容積を減少させると同時に膨張室41内の容積を増加させる複数のチャンバーにそれぞれ区画する複数のベーン13と、圧縮室21と膨張室41にそれぞれ配置された吸入口22、42及び吐出口23、43と、が備えられることにより、圧縮室21側を圧縮機2として作用させる一方、膨張室41側を膨張器4として作用させるようになっている。
【0016】
このため、上記圧縮室21は従来の圧縮機と同様に、ロータ12の回転により吸入口22から吸引された液冷媒を2枚のベーン13、13間のチャンバー内に閉じ込めた後にチャンバー内の容積が次第に減少することによって圧縮させた状態で吐出口23から吐出させるように構成されるのに対し、上記膨張室41は、ロータ12の回転により吸入口42から吸引された気体を2枚のベーン13、13間のチャンバー内に閉じ込めた後にチャンバー内の容積が次第に増加することによって膨張させた状態で吐出口43から吐出させるように構成されている。
【0017】
なお、上記ロータ12には電動モータ14が連結されている。
また、冷媒としては、低沸点冷媒R134aが用いられている。
【0018】
次に、この実施例の作用を説明する。
【0019】
この実施例の膨張器一体型圧縮機では上述のように構成されるため、電動モータ14でロータ12が図2において反時計方向に回転すると、ロータ12で上下に区画された下方の圧縮機2側の吐出口23から吐出された高圧の液冷媒は、蒸発器3においてエンジン8で発生した廃熱エネルギー(ラジエータ9の冷却水の熱エネルギー)によってさらに熱が加えられて高圧の気体に変換される。
【0020】
この高圧の気体がロータ12で上下に区画された上方の膨張器4側の吸入口42に圧送されると、吸入口42側のチャンバー41aでは、ロータ12を反時計方向に回転させる運動エネルギーとして作用し、吐出口43側のチャンバー41bでは次第に容積が拡大することで膨張器4の作用をする。そして、この運動エネルギー分で発電機5を回転させることで電気エネルギーに変換され、バッテリ6に蓄電される。
【0021】
そして、変換し終わった気体のエネルギーは凝縮器7で液冷媒に戻された後、圧縮機2の吸入口22に吸引され、再び圧縮して送り出される。
【0022】
次に、この実施例の効果を説明する。
【0023】
この実施例の膨張器一体型圧縮機では、上述のように、圧縮室21側を圧縮機2として作用させる一方、膨張室41側を膨張器4として作用させるようにしたことで、一つの部品で膨張器4と圧縮機2の機能を発揮させることにより、ランキンサイクル等システムのコンパクト化が可能になるという効果が得られる。
【0024】
また、蒸発器3で加熱された高圧の気体による運動エネルギーにより、ロータ12を回転駆動させる電動モータ14の駆動力を補助し、消費電力を低減させることが可能になる。
【0025】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0026】
例えば、実施例では、ランキンサイクルシステムに本発明を適用したが、圧縮機と膨張器を含む全てのシステムに適用することができる。
【0027】
また、実施例では、車両の廃熱を利用する例を示したが、熱源は任意である。また、車両の熱源として、排気ガスの熱を利用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例の膨張器一体型圧縮機が車両の廃熱を利用するランキンサイクルに適用された例を示すシステム図である。
【図2】実施例の膨張器一体型圧縮機を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 膨張器一体型圧縮機
11 シリンダ
12 ロータ
13 ベーン
14 電動モータ
2 圧縮機
21 圧縮室
22 吸入口
23 吐出口
3 蒸発器
4 膨張器
41 膨張室
42 吸入口
43 吐出口
5 発電機
6 バッテリ
7 凝縮器
8 エンジン
9 ラジエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が略楕円形状のシリンダ室を規定するシリンダと、前記シリンダ室内の長径方向略中央部に回転可能に配置されて前記シリンダ室内を圧縮室と膨張室に区画するロータと、該ロータの回転に伴って前記シリンダ室の周壁を摺動可能に前記ロータに対し進退自在に設けられて前記圧縮室の容積を減少させると同時に前記膨張室内の容積を増加させる複数のチャンバーにそれぞれ区画する複数のベーンと、前記圧縮室と膨張室にそれぞれ配置された吸入口及び吐出口と、が備えられ、
前記圧縮室側を圧縮機として作用させる一方、前記膨張室側を膨張器として作用させるようにしたことを特徴とする膨張器一体型圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の膨張器一体型圧縮機が、ランキンサイクルシステムの膨張器及び圧縮機として用いられることを特徴とする膨張器一体型圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−255927(P2008−255927A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100432(P2007−100432)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】