説明

自動二輪車の前輪操舵装置

【課題】車体の軽量化・低重心化が可能であり、ダイビング現象が起こり難いとともに、操舵機構の配置箇所に関する制約の少ない自動二輪車の前輪操舵装置を提供する。
【解決手段】自動二輪車の前輪操舵装置1は、後端がメインフレーム2前端の両側にそれぞれ軸支され前端が車軸ホルダ4に取設されるロワーアーム3bと、ロワーアーム3bに対して略平行に設置される略S字状のアッパーアーム3aと、ロワーアーム3bとアッパーアーム3aの一部を接続する補強アーム3cとからなるスイングアーム3によって車軸ホルダ4が支持され、上部に操舵ハンドル9aを有するシャフト9bがメインフレーム2後方の幅方向の中心に略鉛直方向の軸に関して回動可能に設置され、ロッド7a,7b及びリンク部材8a,8bからなる伝達手段24によってシャフト9bの下端に略垂設されるアーム23と車軸ホルダの側方に延設されるレバー6とが連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の前輪を操舵する装置に係り、特に、車体から前方に伸びたスイングアームにより車軸を片持ち支持する自動二輪車の前輪操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車の前輪を操舵する装置としては、一般に、テレスコピック式フロントフォークが多用されている。これは、自転車と同じ形態の操舵用フォークに懸架機構を組み込んだものであり、他の方式に比べて構造の単純さや量産性及び耐久性に優れる等の利点がある。しかし、ブレーキ時の制動力に対する剛性が不足しているため、ブレーキをかけた際にフォークが曲がり、テレスコピック構造の摺動性が悪化するおそれがあった。また、ブレーキ時の制動力によって懸架機構が収縮するため、高速走行中にブレーキをかけると車体が前のめりになる、いわゆるダイビング現象が発生する。従って、特に、急激な減速が必要とされるコーナー走行時においては、走行状態が不安定になり易いという課題があった。
このような課題に対処するものとして、後端が上下方向揺動自在に車体に取り付けられたスイングアームによって車軸を片持ち支持する、いわゆるハブセンターステア方式の操舵装置が知られている。この方式は、ブレーキ時の制動力に対する剛性を高くすることが可能であり、また、タイヤの交換が容易であることから、メンテナンス性に優れている。このハブセンターステア方式について、従来、いくつかの発明や考案が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「自動二輪車の前輪懸架装置」という名称で、スイングアームの前端とナックルが継手を介して連結され、スイングアームの上下方向及びナックルの回転方向の運動がそれぞれ制限されないように構成された自動二輪車の前輪懸架装置に関する発明が開示されている。
【0004】
以下、図6を参照しながら、特許文献1に開示された発明について説明する。
図6は従来技術に係る自動二輪車の前輪懸架装置の斜視図である。
図6に示すように、従来技術に係る発明である自動二輪車の前輪懸架装置は、ステアリングピポット53に挿通されたステアリングステム54の下端部がユニバーサルジョイント56、ステアリングロッド57及びジョイント59を介してアーム60に連結され、さらにアーム60はステアリングプレート52から側方に突出するレバー61にステアリングロッド58を介して枢着された構造となっている。なお、ステアリングピポット53の上部にはハンドル55が固着され、ステアリングピポット53及びアーム60はそれぞれ車体(図示せず)に設置されている。また、ナックルの役目を果たすステアリングプレート52の上端には、第1支持部62a及び第2支持部62bからなる継手62が取付けられており、スイングアーム51は後端が車体(図示せず)に軸支されるとともに前端が第1支持部62aにより車幅方向の回転中心上で回転自在に支持され、ステアリングプレート52は第2支持部62bにより車幅方向と略直交する回転中心上で回転自在に支持されている。また、ステアリングプレート52の下端は、後端が車体(図示せず)に軸支されるスイングアーム(図示せず)の前端に継手62と同様の継手(図示せず)を介して軸支されている。
上記構造の「自動二輪車の前輪懸架装置」においては、ハンドル55を回動すると、その駆動力がステアリングステム54、ステアリングロッド57,58を介してステアリングプレート52に伝達され、第2支持部62bを中心としてステアリングプレート52は矢印E,Fの方向に回動する。また、走行時に路面の凹凸等によって車体が上下方向に揺動した場合、スイングアーム51は第2支持部62aに支持された端部を中心として矢印C,Dの方向に回転する。すなわち、前輪を操舵する際にスイングアームの上下方向及びナックルの回転方向の運動が制限され難い。
【0005】
また、特許文献2には「ハブセンターステア」という名称で、テレスコピック式フロントフォークの前述の課題を解消するとともに、操舵用ロッドの数を少なくした構造のハブセンターステアに関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、上端に操舵用メインアームが接続された接続シャフトの下端に操舵用リアアームが上記操舵用メインアームと略平行となるように取付けられ、下部で車軸を保持するハブキャリアの上部に操舵用ハブキャリア・アームが上記操舵用リアアームと略平行となるように取付けられた構造となっている。そして、この操舵用ハブキャリア・アームの中央部は前輪の上方でハイアッパーアームにより鉛直軸を中心として回転可能に軸支され、操舵用ハブキャリア・アームの両端は操舵用リアアームの両端にそれぞれ操舵用ロッドを介して接続されている。
上記構造の「ハブセンターステア」においては、操舵用メインアームを操縦すると、その回転が接続シャフト、操舵用リアアーム、操舵用ロッド及び操舵用ハブキャリア・アームを介して操舵用ハブキャリアに伝達され、前輪が操舵される。このように、前輪の操舵機構にはブレーキ時の制動力によって収縮するような構造の懸架機構が組み込まれていないため、特許文献1に開示された発明と同様に、前述のテレスコピック式フロントフォークの課題を解消することができる。また、操舵用ロッドの数が少ないため、操縦が不安定になることがない。
【0006】
特許文献3には「自動二輪車の前輪懸架装置」という名称で、スイングアームの前端でナックルを操舵可能に支持する構造の前輪懸架装置において、ナックルの振動を防止することが可能な自動二輪車の前輪懸架装置に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された発明は、後端が上下方向揺動可能に車体に軸支されるとともに前端に上部取付部及び下部取付部が形成される略Y字状のスイングアームと、前輪の車軸の上下で上部取付部及び下部取付部により両端を支持されるナックルと、ナックルの上部に形成されたクランクと、自在継手を介してこのクランクに一端が枢着されるとともに前輪の上方に配置されるハンドルに連動して前後動するトルクロッドとを備えるものである。
上記構造の「自動二輪車の前輪懸架装置」においては、スイングアームが前輪の車軸の上下でナックルを両持ち式に支持するため、ナックルの振動が防止される。
【0007】
【特許文献1】特開平7−2158号公報
【特許文献2】特開平6−99872号公報
【特許文献3】特開昭63−207781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の従来技術である特許文献1に開示された発明においては、前輪を操舵する際の回転中心となる第2支持部62bが車軸を挟んでステアリングプレート52の上下にそれぞれ取付けられており、この2つの第2支持部62bの間にステアリングプレート52の操舵に用いるレバー61が配置されているため、ステアリングプレート52が上下方向に揺動した場合にはステアリングプレート52のE,F方向への回転に対する抵抗が大きくなり、操縦性が低下するという課題があった。
【0009】
また、特許文献2に開示された発明においては、操舵機構が前輪の上方に配置されているため、車体の重心が高くなり、走行時の安定性が低下するという課題があった。
【0010】
さらに、特許文献3に開示された発明においては、前輪の操舵軸が前輪の中心を通っていないため、車体の回転半径が大きくなるとともに、前輪操作時の抵抗が大きくなるという課題があった。また、ハンドル等の操舵機構が前輪の上方に配置されているため、特許文献2に開示された発明と同様の課題を有している。
【0011】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、車体の軽量化・低重心化が可能であり、ダイビング現象が起こり難いとともに、操舵機構の配置箇所に関する制約が少ない自動二輪車の前輪操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である自動二輪車の前輪操舵装置は、自動二輪車の前輪の左右側面の片側からのみ支持しながら操舵する自動二輪車の前輪操舵装置であって、自動二輪車のメインフレームに取設され前輪の左右のいずれか一方の側面まで延設されるスイングアームと、このスイングアームの端部に設けられる操舵軸と、この操舵軸と直交しハブを介して前輪を回転自在に軸支する車軸を具備して操舵軸に回動可能に設けられる車軸ホルダと、この車軸ホルダの側方に延設され、駆動力を受けて車軸ホルダを所望の角度回動させることで前輪を操舵するレバーとを備えることを特徴とするものである。
このような構造の自動二輪車の前輪操舵装置においては、スイングアームが操舵軸の車幅方向への移動を拘束するように作用する。また、操舵軸が前輪の側面から見て車軸の中心を通るように配置されるため、車体の回転半径が小さくなるとともに、前輪を操舵する際の抵抗が小さくなる。加えて、車軸ホルダが簡単な構造となる。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の自動二輪車の前輪操舵装置において、車軸に回転自在に設けられるハブと、このハブに周設されるブレーキディスク板と、車軸ホルダに設けられブレーキディスク板の両面を挟持可能なディスクキャリパとを備え、ブレーキディスク板は前輪の幅方向の中心に配置され、ディスクキャリパはブレーキディスク板の両面を挟持して前輪の回転を制動することを特徴とするものである。
このような構造の自動二輪車の前輪操舵装置においては、ブレーキ時の制動力が前輪の幅方向に対して左右均等に作用する。すなわち、ブレーキ時の制動力に対して前輪の回動方向による差が生じない。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の自動二輪車の前輪操舵装置において、鉛直軸に関して回動可能にメインフレームの幅方向の中心に設けられるシャフトと、このシャフトの上部に取り付けられる操舵ハンドルと、シャフトの下端に略垂設されるアームと、操舵ハンドルによって発生する駆動力をレバーまで伝達する伝達手段とを備えることを特徴とするものである。
このような構造の自動二輪車の前輪操舵装置においては、操舵ハンドルを前輪の近傍に配置する必要がない。すなわち、操舵ハンドルの配置に関して制約が少ない。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の自動二輪車の前輪操舵装置において、伝達手段は、端部をレバー又はアームに軸着されるロッドを備え、このロッドとレバー又はアームとはボール継手により接続されることを特徴とするものである。
このような構造の自動二輪車の前輪操舵装置においては、路面の凹凸等の影響により前輪が上下方向に揺動してロッドとレバー又はロッドとアームの上下方向の相対的な位置関係に変化が生じた場合でも、その変化量が所定の範囲内であれば、ロッドやレバーあるいはアームの動作が阻害されないという作用を有する。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載の自動二輪車の前輪操舵装置においては、走行時に操舵軸が左右にぶれないため、操舵が安定する。また、車軸ホルダが簡単な構造であることから、メンテナンスなどでタイヤの交換を行う際に前輪を容易に取り外すことができるとともに、操舵装置の小型化及び軽量化を図ることが可能である。さらに、車軸ホルダがレバーの操舵によって小さな力で無理なく回動するとともに、車体の回転半径が小さいので操縦が容易である。
【0017】
本発明の請求項2に記載の自動二輪車の前輪操舵装置によれば、安定した走行姿勢を維持することができるため、安全である。
【0018】
本発明の請求項3に記載の自動二輪車の前輪操舵装置においては、例えば、操舵ハンドルを低い位置に配置することにより、車体の低重心化を図ることが可能である。これにより、走行時の安全性を高めることができる。
【0019】
本発明の請求項4に記載の自動二輪車の前輪操舵装置においては、路面の状態が悪い場合でも、安定した走行状態を維持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の最良の実施の形態に係る自動二輪車の前輪操舵装置の実施例について図1乃至図5を用いて説明する。
【実施例】
【0021】
図1及び図2はそれぞれ本発明の実施の形態に係る自動二輪車の前輪操舵装置の実施例の外観斜視図及び部分平面図である。
図1及び図2に示すように、本実施例の前輪操舵装置1は、自動二輪車の前輪5をスイングアーム3によって側面から支持する、いわゆるハブセンターステア方式の操舵装置において、前輪5が取付けられる車軸ホルダ4を直接操作して前輪5を操舵することを特徴としている。
スイングアーム3はアッパーアーム3a、ロワーアーム3b及び補強アーム3cから構成される。ロワーアーム3bは、2本に分岐した後端がメインフレーム2前端の両側に、それぞれ上下動可能に水平に軸支されるとともに、前輪5の一方の側面まで延設された前端が車軸ホルダ4に取設されている。ロワーアーム3bと略平行に配置される略S字状のアッパーアーム3aは、後端がメインフレーム2前端の一方の側に上下動可能に水平に軸支され、前輪5を迂回するように前方に延設された前端がロワーアーム3bの前端とともに車軸ホルダ4に取設されている。そして、ロワーアーム3bと、その上方に配置されるアッパーアーム3aとは、補強アーム3cにより一部が接続されている。すなわち、スイングアーム3は後端を軸として上下方向に揺動可能となっている。そして、アッパーアーム3aの後端近傍とメインフレーム2との間にはこのスイングアーム3の動作によって上下方向に発生する衝撃を緩和するためのショックアブソーバ11が配設されている。
メインフレーム2後方の車幅方向の中心にはポスト10aが設置され、上部に操舵ハンドル9aが取り付けられたシャフト9bが略鉛直方向の軸に関して回動可能にポスト10aに挿設されている。なお、操舵ハンドル9aの回転駆動力を前輪5に伝達するためのアーム23、レバー6、ロッド7a,7b及びリンク部材8a,8bについては後述する。
【0022】
このような構造の自動二輪車の前輪操舵装置1においては、スイングアーム3により前輪5の車幅方向への併進運動が拘束される。また、ショックアブソーバ11が片側にのみ設置されていることから、テレスコピック式フロントフォークにおいて見られる左右のフォークの特性のずれに起因する走行上の不具合などは発生しない。
【0023】
図1及び図2では、スイングアーム3が進行方向に見て右側から前輪5を支持しているが、これに限定されるものではなく、スイングアーム3やショックアブソーバ11を左右逆に取り着けて左側から前輪5を支持する構造としても良い。また、アッパーアーム3aとロワーアーム3bを接続する補強アーム3cの位置及び本数は図1に示すものに限定されるものではなく、複数本として前輪5側あるいはメインフレーム2前端側に設けるなど適宜変更可能である。なお、アッパーアーム3a及びロワーアーム3bの剛性が高く、補強をする必要がない場合には、補強アーム3cを取り付けない構造とすることもできる。さらに、ロワーアーム3bのみでも剛性が十分高い場合には、ロワーアーム3bにショックアブソーバ11を取り付け、アッパーアーム3aを省略しても良い。なお、後端がメインフレーム2前端の一方の側に軸支され、前端が車軸ホルダ4に取設されるアッパーアーム3aは前輪5を迂回して前方に延設される形状であれば良く、特に略S字状に限定されるものではなく、種々変形可能である。
【0024】
次に、車軸ホルダ4の構造について図3及び図4を用いて説明する。
図3は図2のK−K線矢視断面図であり、図4は図3のL−L線矢視断面図である。なお、図1及び図2に示した構成要素と同じものについては同一の符号を付してその説明を省略する。
図3及び図4に示すように、ハブ14は車軸ホルダ4の側面から突出する車軸15にベアリング18a,18aとナット21cを用いて回転自在に取付けられ、前輪5のホイール13は、このハブ14にボルト20a及びナット21aを用いて固定されている。スイングアーム3の前端に圧入されたベアリング18b,18b及びカラー22bに挿設される操舵軸となるキングピン19は、その両端がナット21d,21d及びカラー22a,22aによって車軸ホルダ4の上面及び下面にそれぞれ固定され、車軸15と直交している。なお、キングピン19は前輪5の幅方向の中心に配置されるとともに、前輪5の側面から見て車軸15の中心を通るように配置される。また、車軸ホルダ4の下面からは側方にレバー6が延設され、レバー6の端部にはロッド7aの前端がボール継手12aを介して連結されている。すなわち、ロッド7aを前後動させると、車軸ホルダ4が操舵軸を中心として回動する構造となっている。
また、ハブ14にはブレーキディスク板16が前輪5の幅方向の中心に位置するように取り付けられており、車軸ホルダ4にはこのブレーキディスク板16の両面を挟持して前輪5の回転を制動するディスクキャリパ17がボルト20b及びナット21bを用いて取付けられている。
【0025】
上記構造の車軸ホルダ4においては、キングピン19が前輪5の幅方向の中心に配置されているため、車幅の中心に関して前輪5が左右対象に操舵される。すなわち、前輪5を左右のどちら側に操舵しても前後の車軸間の距離が変化しないため、操縦が安定する。また、キングピン19が前輪5の側面から見て車軸15の中心を通るように配置されているため、車体の回転半径が小さくなるとともに、前輪5の回動に対する抵抗が小さくなる。さらに、車軸ホルダ4の構造が簡単になる。さらに、ブレーキディスク板16が前輪5の幅方向の中心に配置されているため、ブレーキによる制動力は前輪5に対して左右均等に作用する。すなわち、前輪5が左右のどちら側に回動された状態であっても、ブレーキによる制動力に差が生じないため、操舵が安定する。
【0026】
図3及び図4では、アーム6が車軸ホルダ4の下面から延設されているが、これに限定されるものではなく、下面以外の車軸ホルダ4の一部から延設される構造としても良い。また、車軸ホルダ4の形状は略箱型に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、キングピン19が取り付けられる上面及び下面と車軸15が突出する側面のみからなる、側面視略コの字状の構造とすることもできる。
【0027】
シャフト9b下端のアーム23とレバー6とを連結する伝達手段24について図5を用いて説明する。
図5は伝達手段24の構成を示す模式図である。なお、図1乃至図4に示した構成要素と同じものについては同一の符号を付してその説明を省略する。
図5に示すように、シャフト9b下端のアーム23の端部にはボール継手12dを介してロッド7bの後端が連結され、ロッド7bの前端はボール継手12cを介してリンク部材8aの一端に連結されている。また、リンク部材8aの他端はポスト10b内に挿設されるリンクシャフト(図示せず)を介してリンク部材8bの一端に接続され、リンク部材8bの他端にはボール継手12bを介してロッド7aの後端が連結され、ロッド7aの前端はボール継手12aを介してレバー6の端部に連結された構造となっている。さらに、車軸ホルダ4は、図3又は図4に示したキングピン19と一致する操舵回動軸25が鉛直方向26に対して所望のキャスター角27をなすように傾斜して配置されている。
上記構造の前輪操舵装置1においては、伝達手段24が操舵ハンドル9aによって発生する回転駆動力をレバー6に伝達する。なお、路面の凹凸等に伴い前輪5が上下方向に揺動すると、ロッド7aとレバー6又はリンク部材8b、ロッド7bとアーム23又はリンク部材8aとの間で上下方向の位置にずれが生じる場合がある。ボール継手12a〜12dは、このようなずれを吸収してロッド7a,7b、レバー6あるいはアーム23の動作を阻害しないように作用する。
【0028】
図5では、ロッド7a,7bがリンク部材8a,8bによって連結されているが、アーム23とレバー6とをロッド7aのみで接続し、リンク部材8a,8bを用いない構造とすることもできる。また、ボール継手12a〜12dの代わりに複数の回転軸を持つユニバーサルジョイントを用いても良い。さらに、ロッド7a,7b及びリンク部材8a,8bにより構成される伝達手段24に代えて、油圧機構によりアーム23の回転駆動力をレバー6に伝達する構造としても良い。
【0029】
以上説明したように、本実施例の自動二輪車の前輪操舵装置によれば、車軸ホルダ4が簡単な構造であるため、タイヤの交換や保守が容易である。また、操舵ハンドル9aの配置に対する制約が少ないため、例えば、操舵ハンドル9aを低い位置に配置して車体全体の低重心化を図ることが可能である。さらに、前輪5の操舵機構が簡単であるため、車体の軽量化が可能である。従って、製造コストを安くすることができる。また、走行時に操舵軸が左右にぶれず、操舵が安定するとともに、ブレーキによる制動が確実に行われるため、操縦安定性能が良い。
【産業上の利用可能性】
【0030】
請求項1乃至請求項4に記載された発明は、自動二輪車以外にも自動三輪車や自転車の前輪を操舵する装置に対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動二輪車の前輪操舵装置の実施例の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る自動二輪車の前輪操舵装置の実施例の部分平面図である。
【図3】図2のK−K線矢視断面図である。
【図4】図3のL−L線矢視断面図である。
【図5】伝達手段の構成を示す模式図である。
【図6】従来技術に係る自動二輪車の前輪懸架装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1…前輪操舵装置 2…メインフレーム 3…スイングアーム 3a…アッパーアーム 3b…ロワーアーム 3c…補強アーム 4…車軸ホルダ 5…前輪 6…レバー 7a,7b…ロッド 8a,8b…リンク部材 9a…操舵ハンドル 9b…シャフト 10a,10b…ポスト 11…ショックアブソーバ 12a〜12d…ボール継手 13…ホイール 14…ハブ 15…車軸 16…ブレーキディスク板 17…ディスクキャリパ 18a,18b…ベアリング 19…キングピン 20a,20b…ボルト 21a〜21d…ナット 22a,22b…カラー 23…アーム 24…伝達手段 25…操舵回動軸 26…鉛直方向 27…キャスター角 51…スイングアーム 52…ナックル 53…ステアリングピポット 54…ステアリングステム 55…ハンドル 56…ユニバーサルジョイント 57,58…ステアリングロッド 59…ジョイント 60…アーム 61…レバー 62…継手 62a…第1支持部 62b…第2支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車の前輪の左右側面の片側からのみ支持しながら操舵する自動二輪車の前輪操舵装置であって、前記自動二輪車のメインフレームに取設され前記前輪の左右のいずれか一方の側面まで延設されるスイングアームと、このスイングアームの端部に設けられる操舵軸と、この操舵軸と直交しハブを介して前記前輪を回転自在に軸支する車軸を具備して前記操舵軸に回動可能に設けられる車軸ホルダと、この車軸ホルダの側方に延設され、駆動力を受けて前記車軸ホルダを所望の角度回動させることで前記前輪を操舵するレバーとを備えることを特徴とする自動二輪車の前輪操舵装置。
【請求項2】
前記車軸に回転自在に設けられるハブと、このハブに周設されるブレーキディスク板と、前記車軸ホルダに設けられ前記ブレーキディスク板の両面を挟持可能なディスクキャリパとを備え、前記ブレーキディスク板は前記前輪の幅方向の中心に配置され、前記ディスクキャリパは前記ブレーキディスク板の両面を挟持して前記前輪の回転を制動することを特徴とする請求項1記載の自動二輪車の前輪操舵装置。
【請求項3】
鉛直軸に関して回動可能に前記メインフレームの幅方向の中心に設けられるシャフトと、このシャフトの上部に取り付けられる操舵ハンドルと、前記シャフトの下端に略垂設されるアームと、操舵ハンドルによって発生する前記駆動力を前記レバーまで伝達する伝達手段とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動二輪車の前輪操舵装置。
【請求項4】
前記伝達手段は、端部を前記レバー又は前記アームに軸着されるロッドを備え、このロッドと前記レバー又は前記アームとはボール継手により接続されることを特徴とする請求項3記載の自動二輪車の前輪操舵装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−176387(P2007−176387A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378474(P2005−378474)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(502424595)
【Fターム(参考)】