説明

自動二輪車の自動変速機制御装置

【課題】ライダーが運転中に指を離すことなく変速を自動的に行うことができるとともに、スイッチの数を削減してスイッチ操作を簡略化することができる自動二輪車の自動変速機制御装置を提供すること。
【解決手段】エンジン9のクランク軸15の回転を無段変速して車軸48に伝達するCVT装置(Vベルト式自動変速機)10を制御する装置であって、前記CVT装置10の変速比を自動制御する自動変速モード又は変速比を手動操作によって所定の固定変速比に選択的に設定する手動変速モードに切り替え可能な自動二輪車の自動変速機制御装置において、予め定めた所定のスロットル操作によって前記CVT装置10の変速特性又は変速段を変更可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車に搭載された自動変速機を電子制御するための自動変速機制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、スクータ型自動二輪車に変速装置としてVベルト式の無段自動変速機を搭載することが行われているが、従来のウェイトローラ式の自動変速機では、変速比を即座に且つ大幅に変更することができないため、所謂エンジンブレーキをドライビングに活かすことができないばかりか、手動変速機を搭載した自動二輪車(マニュアルミッション車)のような予めのシフトダウンができず、加速がもたつくという不具合があることは周知である。
【0003】
そこで、ウェイトローラ式の自動変速機に代えて電子制御式の自動変速機が提案され、既に実用に供されている。この電子制御式の自動変速機は、車速やエンジン回転数(アクセル開度)に対して予め設定されたプログラムに基づいて変速比を求め、変速比が求められた値となるよう電動モータ等のアクチュエータを駆動制御するものである。
【0004】
斯かる電子制御式の自動変速機を搭載した車両では、走行中の変速比を任意に変更することができるため、自動変速モードにおいて燃費重視のエコノミー走行パターンや加速重視のパワー走行パターン等の複数の走行パターンを設定したり、予め設定された複数段の変速比を切り替えることによってマニュアルミッション車のような変速を実現させる手動変速モードを設定することができるようにしている。
【0005】
上記各種の変速パターンは、車両の走行条件やライダーの好みに応じて切り替えられるが、この変速パターンの切り替えは一般的にはスイッチ入力によって行われており、この切替操作は車両の走行中にも行われる。特に、手動変速モード(マニュアルミッション状態)ではシフトアップ/ダウンの操作を行う必要があるため、走行中の切替操作は頻繁に行われることとなる。このため、切り替え操作に必要なスイッチは、ライダーがハンドルを握ったままの状態で指が届く範囲に配置される必要がある。
【0006】
ところで、例えば、特許文献1には、ハンドルバーの右側のスイッチユニットに設けられた切替スイッチによって手動変速モードと自動変速モードの何れかを選択するようにした電子制御式無段変速機において、手動変速モードが選択されているときに左側のスイッチユニットに設けられたシフトスイッチを操作することによってシフトアップ指令又はシフトダウン指令の何れかを出力可能とした構成が提案されている。
【0007】
又、特許文献2には、電子制御式の自動変速機を搭載した自動二輪車において、ハンドルバーに設けられた減速レバーを操作することによって、自動無段変速機であっても強制的にシフトダウンを可能とする構成が提案されている。
【特許文献1】特開2005−121059号公報
【特許文献2】特許第2950957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動二輪車において、電子制御式自動変速機のシフトアップ/ダウンの切り替え操作に必要なスイッチは、前述のようにライダーがハンドルを握ったままの状態で指が届く範囲に配置されるが、自動二輪車のハンドルの周りには、ウインカー、ホーン、ディマー、パッシング、キル、セルスタータ等の多くのスイッチが操作性の高い位置に既に配置されており、これらのスイッチは多数の自動二輪車でほぼ同じ位置に配置されているため、電子制御式の自動変速機用スイッチを何れかのスイッチと置き換えることは誤操作を招く原因となる。又、既設のスイッチを避けて自動変速機用スイッチを操作性の高い位置に配置することは困難である。
【0009】
上記事情のため、電子制御式の自動変速機を搭載した自動二輪車においては、ライダーが親指で操作が可能な範囲にシフトアップ/ダウンスイッチを配置しているが、操作性が高いとは言えない。
【0010】
又、ライダーが自動二輪車を運転する上で、ハンドルを握っている状態から親指を動かしてスイッチ操作を行う行為は運転そのものに多少なりとも支障を来たすことになる。特に、手動変速モード(マニュアルミッション状態)はスポーツライディングを積極的に行う際に選択されることが多く、シフトアップ/ダウンの度にハンドルから指を離すことのデメリットが大きい。
【0011】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ライダーが運転中に指を離すことなく変速を自動的に行うことができるとともに、スイッチの数を削減してスイッチ操作を簡略化することができる自動二輪車の自動変速機制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、エンジンのクランク軸の回転を変速して車軸に伝達する自動変速機を制御する装置であって、少なくともエンジン回転数と車速とに基づいて前記自動変速機の変速比を自動制御する自動変速モードと、ライダーの変速スイッチ操作により前記自動変速機の変速比を変更可能な手動変速モードとを備えた自動二輪車の自動変速機制御装置において、予め定めた所定のスロットル操作パターンの入力によって前記自動変速機の変速段又は変速特性を変更可能としたことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記手動変速モードが選択されているときに所定のスロットルパターンを入力することによって変速段を変更することを特徴とする請求項1記載の自動二輪車の自動変速機制御装置。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記自動変速モードは、燃費重視の変速特性と加速重視の変速特性との何れか一方を常時選択するよう構成され、所定のスロットル操作パターンを入力することによって変速特性を変更することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記自動変速機は、所定のスロットル操作パターンを1つ備え、ブレーキ操作をしながら所定のスロットル操作パターンが入力されたときに変速段又は変速特性を低速側に変更する一方、所定のスロットル操作パターンのみが入力されたときに変速段又は変速特性を高速側に変更することを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記自動変速機は、異なる2つのスロットル操作パターンを備え、第1のスロットル操作パターンの入力によって変速段又は変速特性を低速側に変更するとともに、第2のスロットル操作パターンの入力によって変速段又は変速特性を高速側に変更することを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の発明において、前記所定のスロットル操作パターン及び第1のスロットル操作パターンは、スロットル弁の極低開度領域に設定される第1閾値と、該第1閾値よりも高開度の第2閾値と、第1閾値と第2閾値の間のスロットル開度である第3閾値と、を備え、スロットル開度が第1閾値を超えてから所定の微小時間が経過するまでに、第2閾値を超えてそれに引き続いて第3閾値を下回るようなスロットル開度の変化により条件が成立することを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項4又は5記載の発明において、前記所定のスロットル操作パターン及び第1のスロットル操作パターンは、スロットル弁の極低開度領域に設定される第1閾値と、該第1閾値よりも高開度の第2閾値とを備えるとともに、第2閾値を超えて増加したスロットル開度が減少し始めるときのスロットル開度ピーク値から所定開度低いスロットル開度を第3閾値に設定し、スロットル開度が第1閾値を超えてから所定の微小時間が経過するまでに、第2閾値を超えてそれに引き続いて第3閾値を下回るようなスロットル開度の変化により条件が成立することを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記第2のスロットル操作パターンは、スロットル弁の低開度領域に設定される第1閾値と、該第1閾値よりも低開度の第2閾値と、第1閾値よりも高開度の第3閾値と、を備え、スロットル開度が第1閾値よりも高い状態が所定時間継続するとともに、スロットル開度が第1閾値を下回ってから所定の微小時間が経過するまでに、第2閾値を下回りそれに引き続いて第3閾値を超えるようなスロットル開度の変化により条件が成立することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、ライダーは運転中に指(特に親指)を離すことなく変速を自動的に行うことができ、運転に支障を来すことがなく、スイッチの数を削減してスイッチ操作を簡略化することができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、ライダーの右手による変速操作をマニュアルトランスミッション車におけるスロットル操作と同様の操作のみで違和感なく行い、手動で変速することができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、自動変速モードにおいても、ライダーの右手による変速操作をマニュアルトランスミッション車におけるスロットル操作と同様の操作のみで違和感なく行い、変速特性を変更することができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、ブレーキ操作の有無によってシフトダウンとシフトアップを明確に区別することができるため、1つのスロットル操作パターンでも異なる2つの機能を使い分けることができ、誤操作を防止することができる。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、シフトダウンとシフトアップとでスロットル操作パターンを異ならせたため、より明確に操作入力を区別することができる。
【0025】
請求項6記載の発明によれば、スロットル操作パターンとして3つの閾値を設け、通常運転時の操作とは明確に異ならせることによって確実な操作性を実現することができる。
【0026】
請求項7記載の発明によれば、マニュアルトランスミッション車における急加速時のように、シフトアップ時のスロットル戻し量が少ない変速操作と同様の感覚で変速する場合でも、確実にシフトダウンすることができる。又、マニュアルトランスミッション車で連続的にシフトダウンするのと同様の操作を行う場合でも、スロットル開度ピーク値から所定の割合でスロットルを戻すだけで確実にシフトダウンすることができる。
【0027】
請求項8記載の発明によれば、マニュアルトランスミッション車におけるシフトアップ操作と同様のスロットル操作パターンを正確に設定することができ、操作時の違和感を低減して誤操作を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0029】
先ず、本発明に係る自動変速機制御装置を搭載して成る自動二輪車の一例としてスクータ型自動二輪車の概略構成を図1に基づいて説明する。
【0030】
図1はスクータ型自動二輪車の側面図であり、図示のスクータ型自動二輪車1は、車体全体がフレームカバー2によって覆われており、車体は前輪3と後輪4によって走行可能に支持されている。ここで、前輪3は、車体の前方上部に配されたハンドル5によって操舵されるフロントフォーク6の下端に回転可能に支持されており、後輪4は、車体の前後方向中間部に前端が上下揺動可能に支持されたユニットスイング式エンジン7の後端部に回転可能に支持されるとともに、不図示のリヤクッションによって車体に懸架されている。
【0031】
上記ユニットスイング式エンジン7は、後述のエンジン9(図2参照)と電子制御式のVベルト式自動変速機(以下、「CVT装置」と称する)10(図2参照)、伝動機構等を一体化してユニットとして構成されるものであって、このユニットスイング式エンジン7の上方にはシート8が配置されている。
【0032】
次に、ユニットスイング式エンジン7の内部構造の詳細を図2及び図3に基づいて説明する。尚、図2はユニットスイングエンジン要部の横断面図、図3はCVT装置の駆動プーリ部分の拡大断面図である。
【0033】
ユニットスイング式エンジン7は、単気筒のエンジン9を備え、図2に示すように、該エンジン9のクランクケース11の左端部にはベルトケース12が形成されており、このベルトケース12の左端面にはケースカバー13が被着されている。そして、ベルトケース12とケースカバー13によって形成される空間内にCVT装置10が収容されている。尚、ケースカバー13の外側は樹脂製の保護カバー14によって覆われている。
【0034】
上記CVT装置10は、エンジン9のクランク軸15の一端に設けられた駆動プーリ16と従動軸17に設けられた従動プーリ18との間に無端状のVベルト19を巻装して構成され、クランク軸15の回転は、当該CVT装置10によって変速されて従動軸17に伝達される。
【0035】
上記クランク軸15は、車幅方向に延び、左右一対のベアリング20によって回転可能に支持され、その左端部はベルトケース12内の前部に突入しており、その自由端に前記駆動プーリ16が取り付けられている。ここで、駆動プーリ16は、車幅方向外側に位置してクランク軸15に結着された固定シーブ16Aと、該固定シーブ16Aの内側に対向して配された可動シーブ16Bとで構成されており、可動シーブ16Bは、クランク軸15と一体に回転可能且つクランク軸15に沿って摺動可能に設けられている。尚、固定シーブ16Aの外端面には冷却ファン21が一体に形成されている。
【0036】
又、クランク軸15の可動シーブ16Bの車幅方向内側にはスライダギヤ22が配されており、このスライダギヤ22は、ベアリング23によってクランク軸15に回転可能に支持されるとともに、クランク軸15に沿って可動シーブ16Bと一体的に軸方向に摺動可能に支持されている。そして、図3に詳細に示すように、スライダギヤ22には車幅方向内側に向かって延びるスラストスリーブ24が一体に形成されており、その内周には斜歯状のスラストインナギヤ25が形成されている。
【0037】
更に、図3に詳細に示すように、クランク軸15にはベアリング26を介してスラストリング27が配されており、このスラストリング27は、固定ブラケット28によってベルトケース12に固定されている。そして、スラストリング27の外周にはスラストアウタギヤ29が形成されており、このスラストアウタギヤ29は、前記スラストスリーブ24の内周に形成された前記スラストインナギヤ25に噛合しており、これによってスライダギヤ22の軸方向移動機構が構成されている。
【0038】
而して、CVT装置10には、後述のように駆動側プーリ位置センサ30と従動側プーリ回転速度センサ31(図4参照)が設けられている。駆動側プーリ位置センサ30は、前記軸方向移動機構によるスライダギヤ22の軸方向位置を検出するものであって、図3に詳細に示すように、接触子32と扇形のセクタギヤ33及びポテンショメータ等の不図示の回転センサによって構成されている。ここで、接触子32は、有底筒状に成形され、その内部に縮装されたスプリング34によって外側方に付勢され、その先端が樹脂キャップ35を介してスライダギヤ22に当接している。従って、接触子32は、スライダギヤ22の軸方向移動に追従して軸方向に摺動する。
【0039】
又、接触子32の外周にはラック36が刻設されており、このラック36は、前記セクタギヤ33に噛合している。従って、前述のように接触子32がスライダギヤ22の軸方向移動に追従して軸方向に摺動すると、該摺動子32に形成されたラック36に噛合するセクタギヤ33が回転し、その回転量が前記回転センサによって検出されることによってスライダギヤ22の軸方向位置が検出され、検出されたスライダギヤ22の軸方向位置は後述のコントロールユニット37(図4参照)に入力される。
【0040】
ところで、図2において、38は前記スライダギヤ33を回転駆動するアクチュエータとしてのCVTモータであり、該CVTモータ38の出力軸端にはピニオンギヤ39が刻設され、このピニオンギヤ39は、2つの減速ギヤ40,41を介して前記スライダギヤ22に噛合している。
【0041】
他方、前記従動軸17は、クランク軸15の後方に平行に配されており、3つのベアリング42,43,44によって回転可能に支持され、この従動軸17のベアリング42,43の間には遠心クラッチ45と従動プーリ18が設けられている。ここで、従動プーリ18は、遠心クラッチ45のスリーブ状のクラッチインナ45A上に固定された固定シーブ18Aと、該固定シーブ18Aの車幅方向外側に配された可動シーブ18Bとで構成されており、可動シーブ18Bは、クラッチインナ45Aと一体に回転可能且つクラッチインナ45Aに沿って軸方向に摺動可能に支持され、スプリング46によって固定シーブ18A側に常時付勢されている。又、遠心クラッチ45のドラム状のクラッチアウタ45Bは、従動軸17の端部に結着されて従動軸17と共に一体に回転する。
【0042】
ところで、従動軸17の後方(図2の下方)には中間軸47と車軸48が平行且つ回転可能に配されており、中間軸47は、その軸方向両端が一対のベアリング49を介してベルトケース12に回転可能に支持され、これには大小異径のギヤ50,51が設けられている。そして、大径側のギヤ50は、従動軸17の軸方向内端部に形成されたギヤ52に噛合している。
【0043】
又、前記車軸48は、2つのベアリング53,54によってベルトケース12に回転可能に支持されており、これに結着された大径のギヤ55は、中間軸47に形成された小径の前記ギヤ51に噛合している。そして、車軸48のベルトケース12から内方へと突出するオーバーハング部分には前記後輪4が取り付けられている。
【0044】
次に、以上のように構成されたCVT装置10の変速動作について説明する。
【0045】
CVTモータ38が駆動されると、その回転はピニオンギヤ39から2つの減速ギヤ40,41を経て3段減速されてスライダギヤ22に伝達され、該スライダギヤ22が所定の角度だけ回動する。すると、該スライダギヤ22と共にスラストスリーブ24も回動するため、スラストリング27の外周に形成されたスラストアウタギヤ29に噛合するスラストインナギヤ25が内周に形成されたスラストスリーブ24がスライダギヤ22と共にクランク軸15上を軸方向に移動する。
【0046】
而して、上述のようにスライダギヤ22がクランク軸15上を軸方向に移動すると、駆動プーリ16の可動シーブ16Bがスライダギヤ22と共にクランク軸15上でロー位置(L)とハイ位置(H)の間を移動し、可動シーブ16Bが図3に示すロー位置(L)にあるときには駆動プーリ16でのVベルト19の巻掛径D1が最小となる反面、従動プーリ18でのVベルト19の巻掛径d1が最大となるため、従動プーリ18の回転速度は最小となる。これに対して、駆動プーリ16の可動シーブ16Bが図3に示すハイ位置(H)にあるときには駆動プーリ16でのVベルト19の巻掛径D2が最大となる反面、従動プーリ18でのVベルト19の巻掛径d2が最小となるため、従動プーリ18の回転速度は最小となる。
【0047】
従って、スライダギヤ22の軸方向移動によって駆動プーリ16の可動シーブ16Bがロー位置(L)とハイ位置(H)の間を移動することによって従動プーリ18の回転が連続的に変速される。ここで、従動プーリ18の回転速度が所定値を超えると、遠心クラッチ45がONして従動プーリ46の回転が遠心クラッチ45を介して従動軸17に伝達され、該従動軸17の回転は、ギヤ52,50を経て減速されて中間軸47に伝達され、この中間軸47の回転はギヤ51,55を経て減速されて車軸48に伝達され、該車軸48とこれに取り付けられた後輪4が回転駆動されるため、図1に示すスクータ型自動二輪車1が所定の速度で走行せしめられる。このとき、車軸48と後輪4の回転はCVT装置10によって連続的に自動変速されるため、スクータ型自動二輪車1の走行速度(車速)も連続的に自動変速される。
【0048】
又、CVT装置10の変速動作によってスライダギヤ22がクランク軸15上を軸方向に移動すると、前述のように駆動側プーリ位置センサ30を構成する接触子32がスライダギヤ22に追従して軸方向に移動し、その軸方向移動はセクタギヤ33の回転に変換され、該セクタギヤ33の回転量が回転センサによって検出される。これによってスライダギヤ22の軸方向位置が検出され、検出されたスライダギヤ22の軸方向位置は後述のコントロールユニット37(図4参照)に入力される。すると、コントロールユニット37は、入力されたスライダギヤ22の軸方向位置によって変速比を求める。
【0049】
次に、以上のCVT装置10を電子制御するための本発明に係る自動変速機制御装置「以下、「CVT制御装置」と称する」の基本構成を図4に基づいて説明する。
【0050】
図4は本発明に係るCVT制御装置の基本構成を示すブロック図であり、該CVT制御装置は、制御手段としてのコントロールユニット37を備えており、このコントロールユニット37には、クランク角度センサ56によって検出されるクランク角、スロットル開度センサ57によって検出されるスロットル開度(エンジン負荷)、車速センサ58によって検出される車速、ブレーキランプスイッチ59によって検出されるブレーキ入力の有無、駆動側プーリ位置センサ30によって検出される駆動プーリ16の可動シーブ16B(スライダギヤ22)の位置及び従動側プーリ回転速度センサ31によって検出される従動プーリ18の固定シーブ18Aの回転速度が入力される。又、コントロールユニット37には、図1に示すスクータ型自動二輪車1のハンドルグリップ周りに配置されたモード切替スイッチ60、パワーモードスイッチ61、シフトアップスイッチ62、シフトダウンスイッチ63及びMTアシストスイッチ64からの信号が入力される。
【0051】
そして、コントロールユニット37は、図1に示すスクータ型自動二輪車1のハンドル5の周辺に設けられたスピードメータ65に車速を表示するとともに、車速とエンジン回転数及びスロットル開度に応じた最適な変速比を決定し、変速比が所定の値になるようCVT装置10の前記CVTモータ38(図2参照)を駆動制御する。
【0052】
而して、本実施の形態に係るCVT制御装置は、制御モードとして自動変速モードと手動変速モード及びMTアシストモードを備えており、自動変速モードにおいては更に燃費重視の変速特性を持つドライブモードと加速重視の変速特性を持つパワーモードを選択することができ、各モードの切り替えはモード切替スイッチによってなされる。又、手動変速モードでは、変速比を7速まで切り替えることができ、シフトアップ及びシフトダウンはシフトアップスイッチ62とシフトダウンスイッチ63によってそれぞれなされる。
【0053】
ところで、通常のマニュアルミッション車では、シフトダウンを行う際にエンジン回転数を調整するためにクラッチ切断中にスロットルを急開閉する(スロットルをあおるブリッピング)操作を行うが、電子式のCVT装置を搭載した自動二輪車では変速は自動制御若しくはスイッチ操作によって行われるため、運転を行う上でスロットルを急開閉する操作が必要となることはない。
【0054】
又、通常のマニュアルトランスミッション車では、コーナリング前の制御中にシフトダウンのためのブリッピング操作を行うことがあるが、このようなブレーキを掛けながらスロットルを開ける操作は減速操作と加速操作が重なる状態であり、電子式のCVT装置を搭載した自動二輪車では斯かる操作が行われる可能性は低い。
【0055】
そこで、本実施の形態に係るCVT制御装置は、予め定めた所定のスロットル操作パターンの入力とブレーキ入力の有無を組み合わせてライダーの変速意思を判断し、ライダーによる各種スイッチ操作を要することなく所定の変速操作を行うことができるようにしたことを特徴とする。以下、その実施形態について説明する。
【0056】
<実施の形態1>
本実施の形態は、例えば手動変速モードでのシフトアップ/ダウンをライダーのスイッチ操作を要することなく行うようにしたことを特徴とし、その制御方法を図5及び図6に従って以下に説明する。尚、図5は制御手順を示すフローチャート、図6はスロットル開度の経時変化を示す図であり、本実施の形態におけるスロットル開度の経時変化は第1のスロットル操作パターンに相当する。
【0057】
本実施の形態では、図6に示すように、スロットル開度が痾1(3%)以上になると時間のカウントを開始し、カウント開始からt(0.5秒)以内にスロットル開度が痾2(20%)以上になった後に痾3(15%)以下に下がると判定条件が成立したとしてシフトアップ又はシウトダウンを行うようにしている。以下、この方法を図5に示すフローチャートに従って具体的に説明する。
【0058】
先ず、制御動作が開始されると(図5のステップS1)、ブレーキランプスイッチ(ブレーキSW)がONされたか否か(つまり、ブレーキ入力の有無)が判断される(ステップS2)。ブレーキ入力があった場合(ステップS2での判断結果がYesの場合)には車速が15km/h以上であるか否かが判断され(ステップS3)、車速が15km/h以上である場合には(ステップS3での判断結果がYesの場合)、スロットル開度が図6に示す痾1(本実施の形態では、3%(表1参照))未満であるか否かが判断される(ステップS4)。スロットル開度が痾1(3%)未満である場合(ステップS4での判断結果がYesの場合)にはカウンタがリセットされる(ステップS5)。
【0059】
【表1】

次いで、図6に示すような所定のブリッピング操作(この場合、第1のスロットル操作パターンに相当)の有無の判断に移る。スロットル開度がα1(3%)を超えた場合(ステップS4での判断結果がNoの場合)にはカウント時間がt(0.5秒)以下であるか否かが判断され(ステップS6)、カウント時間がt以下である場合(ステップS6での判断結果がYesの場合)にはカウンタが積算される(ステップS7)。
【0060】
カウント時間がt以下である場合、スロットル開度が図6に示す痾2(本実施の形態では、20%(表1参照))以上であるか否かが判断され(ステップS8)、図6に示すように所定時間t(0.5秒)以内にスロットル開度がα2(20%)を超えた場合(ステップS8での判断結果がYesの場合)にはフラグとしての条件1が成立したものとされる(ステップS9)。
【0061】
上述のように条件1が成立すると、カウント時間t(0.5秒)内にスロットル開度がα2(20%)以上か否かが再び判断され(ステップS6〜S8)、図6に示すように所定時間t(0.5秒)以内にスロットル開度がピークを経てα2(20%)から下がった場合(ステップS8での判断結果がNoの場合)には、条件1が成立しているか否かが判断される(ステップS10)。
【0062】
条件1が成立している場合(ステップS10での判断結果がYesの場合)にはスロットル開度が図6に示すα3(本実施の形態では15%(表1参照))以下であるか否か(つまり、スロットルが急閉されたか否か)が判断され(ステップS11)、スロットル開度がα3(15%)を下回ると(ステップS11での判断結果がYesの場合)、第1のスロットル操作パターンが成立したとしてシフトダウンがなされる(ステップS12)。
【0063】
以上のように、自動二輪車が15km/h以上の車速で走行しているときにブレーキが掛けられて予め定められた第1のスロットル操作パターンが入力された場合には、ライダーが何らスイッチ操作を行わなくても、CVT制御装置がライダーの意思を判断して手動変速によるシフトダウンを行う。
【0064】
他方、ブレーキランプスイッチ(ブレーキSW)がOFFされたままで、ブレーキ入力がない場合(ステップS2での判断結果がNoの場合)には車速が20km/h以上であるか否かが判断され(ステップS13)、車速が20km/h以上である場合には(ステップS13での判断結果がYesである場合)、スロットル開度が図6に示す痾1(本実施の形態では、5%(表1参照))未満であるか否かが判断される(ステップS14)。スロットル開度が痾1(5%)未満である場合(ステップS14での判断結果がYesの場合)にはカウンタがリセットされる(ステップS15)。
【0065】
次に、図6に示すような所定のブリッピング操作(第1のスロットル操作パターンに相当)の判定に移る。スロットル開度がα1(5%)を超えた場合(ステップS14での判断結果がNoの場合)にはカウント時間がt(0.3秒)以下であるか否かが判断され(ステップS16)、カウント時間がt以下である場合(ステップS16での判断結果がYesの場合)にはカウンタが積算される(ステップS17)。
【0066】
カウント時間がt以下である場合、スロットル開度が図6に示すα2(本実施の形態では、30%(表1参照))以上であるか否かが判断され(ステップS18)、図6に示すように所定時間t(0.3秒)以内にスロットル開度がα2(30%)を超えた場合(ステップS18での判断結果がYesの場合)にはフラグとしての条件2が成立したものとされる(ステップS19)。
【0067】
上述のように条件2が成立すると、カウント時間t(0.3秒)内にスロットル開度がα2(30%)以上か否かが再び判断され(ステップS16〜S18)、図6に示すように所定時間t(0.3秒)以内にスロットル開度がピークを経てα2(30%)を下回った場合(ステップS18での判断結果がNoの場合)には、条件2が成立しているか否かが判断される(ステップS20)。
【0068】
条件2が成立している場合(ステップS20での判断結果がYesの場合)にはスロットル開度が図6に示すα3(本実施の形態では20%(表1参照))以下であるか否か(つまり、スロットルが急閉されたか否か)が判断され(ステップS21)、スロットル開度がα3(20%)を下回ると(ステップS21での判断結果がYesの場合)、第1のスロットル操作パターンが成立したとしてシフトアップがなされる(ステップS22)。
【0069】
以上のように、自動二輪車が20km/h以上の車速で走行しているときにブレーキが掛けらないまま予め定められた第1のスロットル操作パターンが入力された場合には、ライダーが何らスイッチ操作を行わなくても、CVT制御装置がライダーの変速意思を判断して手動変速によるシフトアップを行う。
【0070】
従って、本実施の形態によれば、ライダーは運転中に指(特に親指)を離すことなく変速を行うことができ、変速操作による運転姿勢の変化を回避することができるために運転に支障を来すことがなく、スイッチの数を削減してスイッチ操作を簡略化することができる。しかも、シフトダウンとシフトアップとで全く異なるパターンのスロットル操作を要しないため、同様のスロットル操作(第1のスロットル操作パターン)にも拘らず異なる機能を持たせることができる。又、ブレーキ操作の有無によってシフトダウンとシフトアップとを明確に区別することができるため、誤操作の虞もない。
【0071】
ところで、自動変速モードが選択されている場合においても、燃費重視のドライブモード(燃費重視の変速特性に相当)の場合は定常走行時のエンジン回転数が低くなるためにエンジンブレーキが効かず、加速重視のパワーモード(加速重視の変速特性に相当)の場合には減速時のエンジン回転数を高めに設定するためにエンジンブレーキが効き易いという特性がある。
【0072】
従って、上記特性を利用し、定常走行時は燃費重視のドライブモードを選択し、エンジンブレーキが必要な場合だけ加速重視のパワーモードに切り替えるとともに、定常走行に移ると燃費重視のドライブモードに戻すことも可能である。この場合、図5に示すフローチャート中の「シフトダウン」を「ドライブモードからパワーモードへの切り替え」と、「シフトアップ」を「パワーモードからドライブモードへの切り替え」とそれぞれ置き換えれば、自動変速モードにおける走行モード(変速特性)の切り替えにスイッチ操作が一切不要となる。
【0073】
尚、本実施の形態では、通常の操作系統に含まれるブレーキ操作をスロットル操作と組み合わせてライダーの意思を判断するようにしたが、ブレーキ入力の有無という条件以外にも、操作し易い大きなスイッチの操作とスロットル操作とを組み合わせることによっても同様の効果が得られる。
【0074】
<実施の形態2>
次に、本発明に係るCVT制御装置の制御方法の実施の形態2を図7及び図8に従って説明する。尚、図7は制御手順を示すフローチャート、図8はスロットル開度の経時変化を示す図であり、本実施の形態におけるスロットル開度の経時変化は第2のスロットル操作パターンに相当する。
【0075】
前記実施の形態1では、ブレーキ入力の有無の判断(ステップS2)以降のシフトダウンとシフトアップの制御における判定値が異なるのみで、スロットルの動作が閉→開→閉と同じであったが、シフトアップの場合には制御がスロットル開の状態から始まることもあり得るため、本実施の形態では、そのことを考慮してシフトアップの場合の制御手順を図7に示すように変更している(第2のスロットル操作パターンに相当)。尚、本実施の形態でも、シフトダウン時の制御動作は実施の形態1と同じであるため、これについでの再度の説明は省略する。
【0076】
本実施の形態では、図8に示すように、スロットル開度15%以上が1秒以上続いた後でスロットル開度が15%を下回ると時間のカウントを開始し、カウント開始から0.5秒以内にスロットル開度が3%以下になったのに引き続いて20%以上になると、判定条件(第2のスロットル操作パターン)が成立したとしてシフトアップを行うようにしている。以下、この方法を図7に示すフローチャートに従って具体的に説明する。
【0077】
ブレーキランプスイッチ(ブレーキSW)がOFFされたままで、ブレーキ入力がない場合(ステップS2での判断結果がNoの場合)には車速が20km/h以上であるか否かが判断され(ステップS23)、車速が20km/h以上である場合には(ステップS23での判断結果がYesである場合)、スロットル開度が図8に示す15%以上であるか否かが判断される(ステップS24)。スロットル開度が15%以上である場合(ステップS24での判断結果がYesの場合)にはカウンタ1が積算される(ステップS25)。
【0078】
その後、スロットル開度が15%以上である間はカウンタ1の積算が継続され、スロットル開度が15%を下回った場合(ステップS24での判断結果がNoの場合)にはカウンタ1によってカウントされた時間が1秒以上であるか否かが判断される(ステップS26)。図8に示すようにスロットル開度が15%以上である時間が1秒以上継続した場合(ステップS26での判断結果がYesの場合)には、カウンタ2によってカウントされた時間が0.5秒以下であるか否かが判断され(ステップS27)、カウンタ2のカウント時間が0.5秒以下である場合(ステップS27の判断結果がYesである場合)にはカウンタ2が積算される(ステップS28)。
【0079】
尚、カウンタ1によってカウントされた時間が1秒未満である場合、或いはカウンタ1によるカウント時間が1秒以上であっても、カウンタ2によってカウントされた時間が0.5秒を超える場合には、カウンタ1,2は共にリセットされる(ステップS34)。従って、ステップS26での判断の直後にステップS27に移行した際にはカウンタ2のカウント時間はゼロであり、スロットル開度15%以上が1秒以上継続した場合に限り、スロットル開度が15%を下回ったとき(ステップS24での判断結果がNoの場合)を起点としてカウンタ2の積算が開始される。
【0080】
次に、スロットル開度が図8に示す3%以下に低下したか否かが判断されるが(ステップS29)、スロットル開度が3%以下に下がると(ステップS29の判断結果がYesの場合)、フラグとしての条件2が成立したものとされる(ステップS30)。
【0081】
上述のように条件2が成立すると、カウンタ2によってカウントされた時間が0.5秒内にスロットル開度が3%以下であるか否かが再び判断され(ステップS27〜S29)、スロットル開度が3%を超えた場合(ステップS29での判断結果がNoの場合)には、条件2が成立しているか否かが判断される(ステップS31)。
【0082】
条件2が成立している場合(ステップS31での判断結果がYesの場合)にはスロットル開度が図8に示す20%以上であるか否か(つまり、スロットルが急開されたか否か)が判断され(ステップS32)、スロットル開度が20%以上となると(ステップS32での判断結果がYesである場合)、第2のスロットル操作パターンが成立したとしてシフトアップがなされる(ステップS33)。
【0083】
以上のように、図1に示すスクータ型自動二輪車が20km/h以上の車速で走行しているときにブレーキが掛けらないままスロットルが開いている状態から急閉開された場合には、ライダーが何らのスイッチ操作を行わなくても、CVT制御装置がライダーの変速意思を判断して手動変速によるシフトアップを行う。
【0084】
従って、本実施の形態においても、ライダーは運転中に指(特に親指)を離すことなく変速を自動的に行うことができ、運転に支障を来すことがなく、スイッチの数を削減してスイッチ操作を簡略化することができる。
【0085】
尚、本実施の形態においては、前記実施の形態1とは異なり、シフトダウンとシフトアップとで所定のスロットル操作パターンが全く異なるため、ブレーキ入力の有無に関する判断(図7のステップS2)をフローチャートから省略しても良い。この場合、第1のスロットル操作パターンの入力有無をシフトダウン用フローチャート(ステップS4〜S12)で判断し、第2のスロットル操作パターンの入力有無をシフトアップ用フローチャート(ステップS24〜S33)で判断することとなる。
【0086】
又、図8に示すフローチャート中の「シフトダウン」を「ドライブモードからパワーモードへの切り替え」、「シフトアップ」を「パワーモードからドライブモードへの切り替え」と置き換えれば、自動変速モードにおける走行モード(変速特性)の切り替えにスイッチ操作が一切不要となる。
【0087】
<実施の形態3>
次に、前記実施の形態1及び2で説明した第1のスロットル操作パターンの第1変形例として第3のスロットル操作パターンを図9及び図10に従って説明する。尚、図9は第3のスロットル操作パターンの判断手順を示すフローチャート、図10はそのときのスロットル開度の経時変化を示す図である。
【0088】
本実施の形態では、CVT制御装置がスロットル開度の変動からライダーの意思を判断してシフトアップ及びシフトダウンを行う場合の判定成立条件の別形態を示す。
【0089】
本実施の形態では、図10に示すように、スロットル開度が3%未満から3%以上になると時間のカウントを開始し、カウント開始から0.5秒以内にスロットル開度が20%以上になるとスロットル開度の測定を開始し、スロットル開度が開→閉となった瞬間のスロットル開度を最大値X%として保存し、その後、スロットル開度が(X−5)%になると判定条件が成立したとしてシフトアップ又はシウトダウンを行うようにしている。以下、この方法を図9に示すフローチャートに従って具体的に説明する。
【0090】
先ず、制御動作が開始されると(図9のステップS41)、スロットル開度が3%未満であるか否かが判断される(ステップS42)。スロットル開度が3%未満である場合(ステップS42での判断結果がYesの場合)にはカウンタがリセットされる(ステップS43)。
【0091】
他方、スロットル開度が3%以上である場合(ステップS42での判断結果がNoの場合)にはカウント時間が0.5秒以下であるか否かが判断され(ステップS44)、カウント時間が0.5秒以下である場合(ステップS44での判断結果がYesの場合)にはカウンタが積算される(ステップS45)。
【0092】
次いで、スロットル開度が20%以上であるか否かが判断され(ステップS46)、スロットル開度が20%以上になるまでステップS44〜S46が繰り返される。更に、カウント時間が0.5秒以下であるか否かが判断される(ステップS47)。カウント時間が0.5秒以下である場合(ステップS47での判断結果がYesである場合)にはカウンタが積算され(ステップS48)、現在のスロットル開度が前回のスロットル開度以上であるか否かが判断される(ステップS49)。
【0093】
スロットル開度が時間と共に増大している場合(ステップS49での判断結果がYesの場合)には、スロットル開度が減少を開始するまでスロットル開度の最大値X%が更新される(ステップS50)。従って、現在のスロットル開度が前回のスロットル開度より小さくなってスロットル開度が開→閉となった瞬間のスロットル開度が最大値X%として保存されるとともに、カウント時間が0.5秒以下であるか否かが判断される(ステップS51)。
カウント時間が0.5秒以下である場合(ステップS51での判断結果がYesの場合)、カウンタが積算され(ステップS52)、スロットル開度が(X−5)%以下であるか否かが判断される(ステップS53)。そして、スロットル開度が(X−5)%以下に下がると判定が成立したとしてシフトアップ又はシフトダウンがなされる(ステップS54)。
【0094】
<実施の形態4>
次に、前記実施の形態1及び2で説明した第1のスロットル操作パターンの第2変形例として第4のスロットル操作パターンを図11及び図12に従って説明する。尚、図11は第4のスロットル操作パターンの判断手順を示すフローチャート、図12はそのときのスロットル開度の経時変化を示す図である。
【0095】
本実施の形態では、CVT制御装置がスロットル開度の変動からライダーの意思を判断してシフトアップ及びシフトダウンを行う場合の判定成立条件の更に別形態を示す。
【0096】
本実施の形態では、図12に示すように、スロットル開度の変化率が0.25%/ms以上になると時間のカウントを開始し、カウント開始時のスロットル開度をX%として保存し、その後、カウント開始から0.5秒以内にスロットル開度が(X+10)%以上になった後に引き続いて(X+5)%以下に下がると判定条件が成立したとしてシフトアップ又はシウトダウンを行うようにしている。以下、この方法を図11に示すフローチャートに従って具体的に説明する。
【0097】
先ず、制御動作が開始されると(図11のステップS61)、スロットル開度の変化率が0.25%/ms未満であるか否かが判断される(ステップS62)。スロットル開度の変化率が0.25%未満である場合(ステップS62での判断結果がYesの場合)には、カウンタがリセットされる(ステップS63)。
【0098】
他方、スロットル開度の変化率が0.25%/ms以上である場合(ステップS62での判断結果がNoの場合)にはカウンタが時間のカウントを開始した時点でのスロットル開度X%が保存され(ステップS64)、カウント時間が0.5秒以下であるか否かが判断される(ステップS65)。そして、カウント時間が0.5秒以下である場合(ステップS55での判断結果がYesの場合)にはカウンタが積算され(ステップS66)、スロットル開度が(X+10)%以上であるか否かが判断される(ステップS67)。
【0099】
図12に示すように、スロットルが0.5秒以内に急開されてスロットル開度が(X+10)%以上である場合(ステップS67での判断結果がYesの場合)には条件1が成立したものとされ(ステップS68)、スロットル開度が(X+10%)未満となるまでカウンタが積算さる(ステップS66)。そして、スロットル開度が(X+10)%よりも小さくなると(ステップS67での判断結果がNoの場合)条件1が成立しているか否かが判断され(ステップS69)、条件1が成立している場合(ステップS69の判断結果がYesの場合)には、スロットル開度が(X+5)%以下であるか否かが判断される(ステップS70)、そして、スロットル開度が(X+5)%以下である場合(ステップS70での判断結果がYesの場合)、判定が成立したとしてシフトアップ又はシフトダウンがなされる(ステップS71)
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】スクータ型自動二輪車の側面図である。
【図2】ユニットスイングエンジン要部の横断面図である。
【図3】Vベルト式自動変速機(CVT装置)の駆動プーリ部分の拡大断面図である。
【図4】本発明に係る自動変速機制御装置の基本構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る自動変速機制御装置の実施の形態1に係る制御手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態1におけるスロットル開度の経時変化を示す図である。
【図7】本発明に係る自動変速機制御装置の実施の形態2に係る制御手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態2におけるスロットル開度の経時変化を示す図である。
【図9】本発明に係る自動変速機制御装置の実施の形態3に係る制御手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態3におけるスロットル開度の経時変化を示す図である。
【図11】本発明に係る自動変速機制御装置の実施の形態4に係る制御手順を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態4におけるスロットル開度の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
1 スクータ型自動二輪車
2 フレームカバー
3 前輪
4 後輪
5 ハンドル
6 フロントフォーク
7 ユニットスイング式エンジン
8 タンデムシート
9 エンジン
10 Vベルト式自動変速機(CVT装置)
11 クランクケース
12 ベルトケース
13 ケースカバー
14 保護カバー
15 クランク軸
16 駆動プーリ
16A 駆動プーリの固定シーブ
16B 駆動プーリの可動シーブ
17 従動軸
18 従動プーリ
18A 従動プーリの固定シーブ
18B 従動プーリの可動シーブ
19 Vベルト
20 ベアリング
21 冷却ファン
22 スライダギヤ
23 ベアリング
24 スラストスリーブ
25 スラストインナギヤ
26 ベアリング
27 スラストリング
28 固定ブラケット
29 スラストアウタギヤ
30 駆動側プーリ位置センサ
31 従動側プーリ回転速度センサ
32 接触子
33 セクタギヤ
34 スプリング
35 樹脂キャップ
36 ラック
37 コントロールユニット
38 CVTモータ
39 ピニオンギヤ
40,41 減速ギヤ
42〜44 ベアリング
45 遠心クラッチ
45A クラッチインナ
45B クラッチアウタ
46 スプリング
47 中間軸
48 車軸
49 ベアリング
50〜52 ギヤ
53,54 ベアリング
55 ギヤ
56 クランク角度センサ
57 スロットル開度センサ
58 車速センサ
59 ブレーキランプスイッチ
60 モード切替スイッチ
61 パワーモードスイッチ
62 シフトアップスイッチ
63 シフトダウンスイッチ
64 MTアシストスイッチ
65 スピードメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランク軸の回転を変速して車軸に伝達する自動変速機を制御する装置であって、少なくともエンジン回転数と車速とに基づいて前記自動変速機の変速比を自動制御する自動変速モードと、ライダーの変速スイッチ操作により前記自動変速機の変速比を変更可能な手動変速モードとを備えた自動二輪車の自動変速機制御装置において、
予め定めた所定のスロットル操作パターンの入力によって前記自動変速機の変速段又は変速特性を変更可能としたことを特徴とする自動二輪車の自動変速機制御装置。
【請求項2】
前記手動変速モードが選択されているときに所定のスロットルパターンを入力することによって変速段を変更することを特徴とする請求項1記載の自動二輪車の自動変速機制御装置。
【請求項3】
前記自動変速モードは、燃費重視の変速特性と加速重視の変速特性との何れか一方を常時選択するよう構成され、所定のスロットル操作パターンを入力することによって変速特性を変更することを特徴とする請求項1記載の自動二輪車の自動変速機制御装置。
【請求項4】
前記自動変速機は、所定のスロットル操作パターンを1つ備え、ブレーキ操作をしながら所定のスロットル操作パターンが入力されたときに変速段又は変速特性を低速側に変更する一方、所定のスロットル操作パターンのみが入力されたときに変速段又は変速特性を高速側に変更することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自動二輪車の自動変速機制御装置。
【請求項5】
前記自動変速機は、異なる2つのスロットル操作パターンを備え、第1のスロットル操作パターンの入力によって変速段又は変速特性を低速側に変更するとともに、第2のスロットル操作パターンの入力によって変速段又は変速特性を高速側に変更することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自動二輪車の自動変速機制御装置。
【請求項6】
前記所定のスロットル操作パターン及び第1のスロットル操作パターンは、スロットル弁の極低開度領域に設定される第1閾値と、該第1閾値よりも高開度の第2閾値と、第1閾値と第2閾値の間のスロットル開度である第3閾値と、を備え、
スロットル開度が第1閾値を超えてから所定の微小時間が経過するまでに、第2閾値を超えてそれに引き続いて第3閾値を下回るようなスロットル開度の変化により条件が成立することを特徴とする請求項4又は5記載の自動二輪車の自動変速機制御装置。
【請求項7】
前記所定のスロットル操作パターン及び第1のスロットル操作パターンは、スロットル弁の極低開度領域に設定される第1閾値と、該第1閾値よりも高開度の第2閾値とを備えるとともに、第2閾値を超えて増加したスロットル開度が減少し始めるときのスロットル開度ピーク値から所定開度低いスロットル開度を第3閾値に設定し、
スロットル開度が第1閾値を超えてから所定の微小時間が経過するまでに、第2閾値を超えてそれに引き続いて第3閾値を下回るようなスロットル開度の変化により条件が成立することを特徴とする請求項4又は5記載の自動二輪車の自動変速機制御装置。
【請求項8】
前記第2のスロットル操作パターンは、スロットル弁の低開度領域に設定される第1閾値と、該第1閾値よりも低開度の第2閾値と、第1閾値よりも高開度の第3閾値と、を備え、
スロットル開度が第1閾値よりも高い状態が所定時間継続するとともに、スロットル開度が第1閾値を下回ってから所定の微小時間が経過するまでに、第2閾値を下回りそれに引き続いて第3閾値を超えるようなスロットル開度の変化により条件が成立することを特徴とする請求項5記載の自動二輪車の自動変速機制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−156444(P2009−156444A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338464(P2007−338464)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】