説明

自動二輪車

【課題】リアアームのストロークを確保しつつ車両全体の重心を低くできる自動二輪車を提供する。
【解決手段】。
車体フレーム2と、該車体フレーム2に搭載されたエンジン3と、該エンジン3の上方に位置するように前記車体フレーム2に搭載された燃料タンク6と、前記車体フレーム2に枢支されたリアアーム5と、該リアアーム5と前記車体フレーム2との間に配設された緩衝器12aとを備えた自動二輪車1であって、前記緩衝器12aは、前記エンジン3のクランクケース3a後方に配置され、該緩衝器12aに設けられた車体フレーム2への取付部12eの最上部、及び前記燃料タンク6の最下部は、前記クランクケース3aの最上部より下方に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの上方に燃料タンクを配設するとともに、車体フレームとリアアームとの間に緩衝器を配設した自動二輪車に関し、詳細には車両重心を低下させる配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動二輪車として、例えば特許文献1に記載のものがある。この自動二輪車では、前,後シリンダを備えたV型エンジンの後シリンダと後輪との間に燃料タンクを搭載し、該燃料タンクの下方に緩衝器を配設している。
【特許文献1】特開2002−205675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自動二輪車において操縦性を高めるには車両全体の重心を低くすることが好ましい。前記従来技術においては、V型エンジンの後シリンダと後輪との間に燃料タンクを配置したので、燃料タンクを低く配置できる。しかし燃料タンクの下方にリアアームが位置しており、リアアームのストロークを確保する必要上、前記燃料タンクを低くするには限度がある。
【0004】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたものであり、リアアームのストロークを確保しつつ車両全体の重心を低くできる自動二輪車を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車体フレームと、該車体フレームに搭載されたエンジンと、該エンジンの上方に位置するように前記車体フレームに搭載された燃料タンクと、前記車体フレームに枢支されたリアアームと、該リアアームと前記車体フレームとの間に配設された緩衝器とを備えた自動二輪車であって、前記緩衝器は、前記エンジンのクランクケース後方に配置され、該緩衝器に設けられた車体フレームへの取付部の最上部、及び前記燃料タンクの最下部は、前記クランクケースの最上部より下方に位置していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、緩衝器を、クランクケース後方に配置し、該緩衝器に設けられた車体フレームへの取付部の最上部、及び前記燃料タンクの最下部を、前記クランクケースの最上部より下方に位置させた。これにより、大きな重量割合を占める緩衝器及び燃料タンクが低く配置され、その結果、車両全体の重心を低くでき、車両の操縦性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1〜図15は、本発明の一実施形態による自動二輪車を説明するための図である。
【0008】
図において、1は本実施形態構造を備えた自動二輪車である。この自動二輪車1は、車体フレーム2に支持されたエンジン3,フロントフォーク4,リアアーム5,燃料タンク6,メインシート7,タンデムシート8を備えている。
【0009】
前記エンジン3は、前記車体フレーム2の主要部であるメインフレーム16の、タンクレール部16a及びリアアームブラケット部16bにより懸架支持されている。
【0010】
前記フロントフォーク4は前記メインフレーム16の前端部に設けられたヘッドパイプ15により左右操向自在に支持されている。このフロントフォーク4の下端部に前輪9が軸支され、該前輪9は該フロントフォーク4に取り付けられたフロントフェンダ13で覆われている。また、前記フロントフォーク4の上端部に操向ハンドル10が固定されている。
【0011】
前記車体フレーム2は、前記メインフレーム16と、該メインフレーム16から後斜め上方に延びるリアフレーム34とを有する。該リアフレーム34は、軽合金、例えばマグネシウム合金の鋳造成形品である。そしてリアフレーム34は、左側壁34a,右側壁34a′及び底壁34bを有し、横断面視で上方に開口する大略コ字形状をなしている。また左側壁34a,右側壁34a′の上縁には、L字形状のフランジ部34cが外側に拡がるように一体形成されている。また前記底壁34bには、前開口34d,後開口34eが形成されている。
【0012】
前記左側壁34a,右側壁34a′の前端部には、上接続ボス部34g,下接続ボス部34hが形成されており、これらのボス部はそれぞれ前記メインフレーム16のリアアームブラケット部16bに形成された上支持ボス部16c,下支持ボス部16dにボルト16hで締め付け固定されている。
【0013】
ここで前記リアフレーム34の前端部分における、リアアームブラケット部16bに取り付けた際に発生する応力を軽減するために以下の構造が採用されている。即ち、リアフレーム34の前端部分は、該リアフレーム34をリアアームブラケット部16bに取り付ける前の状態における左,右の上接続ボス部34g′,34g′間の寸法w′が前記上支持ボス部16c,16c間の寸法wより僅かに大きくなるように、つまり前部ほど広くなる前拡がりに形成されている。またこれと同様に、取り付ける前の状態における左,右の下接続ボス部34h′,34h′間寸法も前記下支持ボス部16d,16d間寸法より僅かに大きく設定されている。
【0014】
このように、リアフレーム34の前端部分を僅かに前拡がりに形成し、リアアームブラケット部16bにボルト締めにより取り付けた際に前記前拡がりが縮小するように構成したので、リアフレーム34の前端部分に生じる応力を小さくできる。
【0015】
また前記リアフレーム34のフランジ部34c,34cには、該リアフレーム34とは別体に形成された前クロスメンバ35及び後クロスメンバ36がボルト締め固定されている。さらにまた前記左,右のフランジ部34c,34cの後端部同士は該フランジ部と一体に形成されたクロスメンバ部34fにより結合されている。前記各クロスメンバを設けたことにより、リアフレーム34の剛性が向上している。
【0016】
また前記前クロスメンバ35は、メインシート7を支持するためのシート支持ブラケットに兼用されている。この前クロスメンバ35の車幅方向略中央部には、係止部35aが上方に膨出し、かつ後斜め上方に傾斜するように形成されている。この係止部35aにはメインシート7の底板7aに設けられた係止片7bが係止している。
【0017】
また前記係止部35aには係止溝35bがコ字状に形成されている。工具Tを固定するためのバンド37の一端に設けられた係止リング37aが前記係止溝35bの縁部に係止している。なお、前記バンド37の他端に設けられた係止リング37bは後述するバッテリボックス39に形成された係止片39bに係止されている。
【0018】
また前記前クロスメンバ35は、前記リアフレーム34内に収納されたバッテリ38の上面を押圧固定している。具体的には、バッテリ38は樹脂製のバッテリボックス39内に保護シート40を介在させて収容されている。なお、バッテリボックス39とリアフレーム34の底壁34bとの間にはゴムシート等からなるダンパ39aが介在されている。
【0019】
このようにリアフレーム34の剛性を向上させるための前クロスメンバ35を、シート支持ブラケットとして、また工具固定ブラケットとして、さらにバッテリ固定ブラケットとして兼用しているので、部品点数の増加や構造の札複雑化を回避できる。
【0020】
また前記リアフレーム34内には、多数のリード線を束ねてなるメインハーネス41が配置されている。このメインハーネス41は前記燃料タンク6の左側壁6fの外面及び前記リアフレーム34の左側壁34aの内面に沿うように車両前後方向に延びている。そして該メインハーネス41の、前記バッテリ38の側方を通過する部分41aは、2分割式の樹脂製筒状の保護ケース42内に収容されている。この保護ケース42とバッテリ38との間には前記保護シート40が位置している。なお、43aはバッテリマイナスリード線、43bはスタータモータリード線である。
【0021】
このように保護ケース42内にメインハーネス41の一部を収容し、リアフレーム34とバッテリ38との間に配置したので、メインハーネス41がリアフレーム34やバッテリ38と直接擦れ合うのを回避でき、マグネシウム合金製リアフレーム34の摩耗による損傷を防止できる。
【0022】
また前記リアフレーム34のフランジ部34cのうち、前記バッテリ配置部付近より前側部分には、ゴム製のカバー34iが貼着されている。これによりエンジン側からの熱がライダの大腿部等に伝わるのを抑制している。
【0023】
さらにまた前記リアフレーム34の底壁34bの下面には左,右のタンデムステップブラケット44,44の基端部がボルト44a,44aにより締め付け固定されており、該各ブラケットの先端部にはタンデムライダ用のステップ45が取り付けられている。そして前記左,右のタンデムステップブラケット44,44の基端部にはクロス部材46の左,右端部がボルト44bにより結合されており、これによりタンデムステップブラケット44の支持剛性が向上している。
【0024】
前記左,右のリアアームブラケット部16bの外側面には、三角形状のフートブラケット48′,48がボルト48aにより固定されている。該左,右のフートブラケット48′,48の後端部にフートレスト49が取り付けられている。さらに右側のフートブラケット48のフートレスト後方にはブレーキペダル50が上下揺動可能に装着されている。
【0025】
前記ブレーキペダル50から後方に突出する連結ピン50aにはマスタシリンダ51が連結されている。このマスタシリンダ51は縦向きに配置され、前記フートブラケット48から上方に延びるシリンダブラケット48bにボルト48cで固定されている。
【0026】
前記マスタシリンダ51の、軸方向中央部にはリザーブホース51aを介してリザーブタンク51bが接続され、上端の吐出口には油圧ホース51cを介して後輪制動用のキャリパ51dが接続されている。なお、前記リザーブタンク51bは前記右側のタンデムステップブラケット44に取り付けられている。
【0027】
そして前記マスタシリンダ51の車外側にはガードプレート52が配置されている。このガードプレート52は前記ボルト48cにより前記マスタシリンダ51と共に前記シリンダブラケット48bに固定されている。
【0028】
前記ガードプレート52は金属板を所要形状に絞り成形したものであり、ライダのブーツが当接する略平坦なブーツ支持部52aと、該ブーツ支持部52aの上縁から前記油圧ホース51cのマスタシリンダ接続部付近を覆うように車幅方向内側に曲げられた上部カバー部52bと、前記ブーツ支持部52aの後縁から前記リザーブホース51aのマスタシリンダ接続部側に折り曲げられた後部カバー部52cとを有する。なお、左側のガードプレート52′は全体として略平坦に形成されている。
【0029】
このように、ガードプレート52に、ブーツ支持部52a,上部カバー部52b及び、後部カバー部52cを形成したので、ライディングポジションを確保しつつマスタシリンダ51やリザーブホース51a,油圧ホース51cの接続部を保護できる。またガードプレート52をフートブラケット48と別体とし、薄板を絞り等で成形した板金製としたので、重量増加を抑制できる。なお、勿論、鍛造製とすることも可能であり、また鋳造製とし、さらにはフートブラケットと一体鋳造することも可能である。
【0030】
前記リアアーム5は、ピボット軸5aを介して前記リアアームブラケット部16bにより上下揺動自在に支持されており、該リアアーム5の後端部に後輪11が支持されている。
【0031】
また前記リアアーム5と前記リアアームブラケット部16bとの間には後輪懸架装置12が介設されている。詳細には、この後輪懸架装置12は、前記リアアームブラケット部16b,16bの下端部同士を連結する下クロスフレーム16fとリアアーム5との間に介設されたリンク部材12bと、該リンク部材12bと前記リアアームブラケット部16b,16bの上部同士を連結する上クロスフレーム16eとの間に介設された緩衝器12aとを有する。
【0032】
前記緩衝器12aは、ピストンを内蔵するシリンダ12cと、コイルばね12dを有し、シリンダ12cの上端部にはリング状の取付部12eが形成されている。この取付部12eに取付ブラケット12fがボルト12gにより連結されている。この取付ブラケット12fは、二股状のもので、固定ボルト部12hを有する。この固定ボルト部12hが前記上クロスフレーム16eのボス部16gに挿通され、ナット12iで締め付け固定されている。
【0033】
前記上クロスフレーム16eは、筒体をなしており、該筒体の後壁の車幅方向略中央部に前記ボス部16gが後方に突出するように形成されている。このボス部16gは上クロスフレーム16eの上面16e′より少し下側に段落ちしている。
【0034】
そして前記緩衝器12aの上方に前記燃料タンク6が搭載されている。具体的には、前記リアフレーム34の底壁34bの前縁部には、タンクブラケット47がボルト47aにより締め付け固定されている。このタンクブラケット47は、タンク支持ダンパ47bを有し、該タンク支持ダンパ47bに、前記燃料タンク6の後壁6eに形成された取付フランジ6aがタンクボルト6bにより固定されている。
【0035】
前記燃料タンク6は、板金製で、上下方向に長い縦長タイプのものである。その底壁6cは略水平をなしている。またその前壁6d,後壁6eの下部は略垂直をなし、上部は前方に屈曲されている。さらまたその左,右側壁6f,6fの下部かつ後部は、車幅方向内側に凹む凹部6f′となっており、該凹部6f′部分に前記リアアームブラケット部16bの上支持ボス部16cが位置している。
【0036】
また前記燃料タンク6内に燃料ポンプ60が縦置きに配置されている。この燃料ポンプ60は、燃料タンク6の底壁6cに形成された取付穴内に外側から挿入され、フランジ部60aをボルト60bで前記底壁6cに締め付けることにより取り付けられている。該燃料ポンプ60の吐出部60cは前記底壁6cから下方に突出している。
【0037】
前記エンジン3は、水冷式4サイクル並列4気筒タイプのものであり、クランクケース3aの上面前部にシリンダボディ,シリンダヘッド3cを、シリンダ軸線Aを比較的起立させて積層結合し、該シリンダヘッド3cの上端開口にヘッドカバー3dを装着した概略構造を有する。
【0038】
前記シリンダヘッド3cの前壁に排気装置53が接続されている。この排気装置53は前記シリンダヘッド3cに接続された排気管54と、該排気管54の後端部に接続された左マフラ55a,及び右マフラ55bを有する。前記排気管54は、各気筒の排気ポートに接続された4本の枝管54aと、該4本の枝管54aを合流させる合流管54bと、該合流管54bを再び分流させる2本の分流管54c,54dとを有する。
前記枝管54aの後部及び合流管54bの前部はクランクケース3aの下方を通り、前記合流管54bは車幅方向右側に延びた後、右側の前記リアアームブラケット部16bの後側にて上方に立ち上がっている。該合流管54bの途中には、他の部分より径を大きくしてなる触媒配置部54eが形成されており、該部分内には触媒が配設されている。また車両側方から見たとき、前記合流管54bの前記触媒配置部54eは前記緩衝器12aとその一部において重なっている。
【0039】
さらにまた、上方から見たとき、前記左マフラ55a,右マフラ55bの大部分は、前記メインシート7と重なっている。また前記左,右マフラ55a,55bの一部は、上方から見たとき及び側方から見たとき前記リアフレーム34の左,右側壁34a,34a′と重なっている。即ち、前記マフラはリアフレーム34とメインシート7とで形成されるコーナ部内にその一部が位置するように配置されている。
【0040】
また、前記リアフレーム34の下側には後輪11の上方を覆うリアフェンダ56が配設されており、該リアフェンダ56には、前記マフラを覆うように車幅方向外方に延びるマフラカバー部56a,56aが形成されており、該マフラカバー部56aと前記メインシート7との間には、両者の隙間を覆うフェンダカバー57が配設されている。さらにまた、前記マフラの側面部分はプロテクタ58で覆われている。
【0041】
ここで前記エンジン3と、燃料タンク6と、緩衝器12aとの配置関係について説明する。前記クランクケース3aの上部の、前記シリンダボディより後方部分3a′の少し上方に前記燃料タンク6の底部が位置しており、また前記クランクケース3aの後壁後方に前記緩衝器12aが配置されている。
【0042】
そして前記緩衝器12aに設けられた取付部12eの最上部a、及び前記燃料タンク6の最下部bは、前記クランクケース3aの最上部cより下方に位置している。
【0043】
また前記燃料タンク6の最下部bは、車両前後方向における前記クランクケース3aの最上部cと前記緩衝器12aの取付部12eの最上部aとの間に位置している。
【0044】
さらにまた、前記緩衝器12aの取付部12eは、取付ブラケット12fを介在させて前記上クロスフレーム16eのボス部16gに連結されており、前記燃料タンク6の最下部bは前記取付ブラケット12fの最上部dより下方に位置している。
【0045】
また、前記燃料タンク6は前記緩衝器12aの上方に配設されており、該燃料タンク6の底壁6cの下面と、前記取付ブラケット12fの最上部dとの間には空間eが設けられている。
【0046】
前記シリンダヘッド3cの後壁に開口する吸気ポートに吸気装置22が接続されており、該吸気装置22は、前記燃料タンク6の前側に、より詳細には該燃料タンク6の前壁6dの、下部と上部とで形成されたコーナ部内にその一部が位置するように配置されている。
【0047】
詳細には、前記吸気装置22は、前記吸気ポートにジョイント部材23を介して接続されたスロットルボディ24と、該スロットルボディ24に接続された吸気ファンネル25と、該吸気ファンネル25を囲むように接続されたエアクリーナ26と、該エアクリーナ26の吸気口27pに接続された空気導入ダクト18とを有する。なお、24aは前記吸気ポートに向けて燃料を噴射する第1燃料噴射弁、24bは吸気ファンネル25内に向けて燃料を噴射する第2燃料噴射弁である。
【0048】
ここで、前記吸気ポート,ジョイント部材23,スロットルボディ24,吸気ファンネル25及び空気導入ダクト18により本発明の吸気通路fが構成されており、この吸気通路fの途中に前記エアクリーナ26が接続されている。
【0049】
また前記吸気ファンネル25は各気筒用のファンネルを一体化したものであり、エアクリーナ26内に突出している。この吸気ファンネル25の上方には可動ファンネル25aが上昇,下降可能に配置されている。この可動ファンネル25aも各気筒用の可動ファンネルを一体化したものであり、1組の駆動機構25bにより同期して上昇,下降され、吸気ファンネル25の実質的な長さを、エンジンの運転状態に応じて変化させる。この可動ファンネル25aは、エンジンの低速回転時には下降して吸気ファンネル25の実質的長さ長くし、高速回転時には上昇して短くする。
【0050】
前記エアクリーナ26は、車両上方(図5の矢印B方向)から見たとき、前記ヘッドパイプ15の後方で、かつ左,右のタンクレール部16a,16aの間に配置されており、前記エンジン3のヘッドカバー3d及びシリンダヘッド3cを上方から覆っている。
【0051】
前記エアクリーナ26は、これの外表面を構成するクリーナケース27と、該クリーナケース27内に配設された濾過材としてのエレメント28とを有する。
【0052】
前記クリーナケース27は、前記エレメント28を収容するメインクリーナケース27aと、該メインクリーナケース27aの上流側、具体的には下側に着脱可能に取り付けられたサブクリーナケース27bとを有する。
【0053】
前記メインクリーナケース27aは、上部開口27cを有する本体部27dと、該上部開口27cを開閉可能とする蓋部材27eとを有する。前記エレメント28は、矩形平板状のもので、メインクリーナケース27aの略中央部に縦置きに配置され、本体部27dに蓋部材27eをボルト27fで固定することにより、該本体部27dと蓋部材27eとで挟持される。
【0054】
前記サブクリーナケース27bは、前記ヘッドカバー3dの上面に近接するように配置されており、中央部上面に形成された出口部27iが、前記メインクリーナケース27aの上流側底面27gに形成された連通穴27hに挿入され、複数箇所に突設された係止部27jが連通穴27hの縁部に係止している。前記係止部27jは弾性変形して前記連通穴27hの縁部に係脱可能となっており、これによりサブクリーナケース27bは前記メインクリーナケース27aに対して着脱可能となっている。
【0055】
前記ヘッドカバー3dの上面のクランク軸方向略中央部には、排気ポートに二次空気を供給するための二次空気バルブ29が配置されている。この二次空気バルブ29にはギボシ29aが植設されており、該ギボシ29aは前記サブクリーナケース27bのグロメット27nに嵌合している。これにより二次空気バルブ29はサブクリーナケース27bの底壁27kに支持されている。
【0056】
以上のように、本実施形態では、緩衝器12aを、エンジン3のクランクケース 3a後方に配置し、該緩衝器12aに設けられた車体フレームへの取付部12eの最上部a、及び前記燃料タンク6の最下部bを、前記クランクケース3aの最上部cより下方に位置させた。これにより、大きな重量割合を占める緩衝器12a及び燃料タンク6が低く配置され、その結果、車両全体の重心を低くでき、車両の操縦性を向上できる。
【0057】
また、前記燃料タンク6の最下部bを、車両前後方向における前記クランクケース3aの最上部cと前記緩衝器12aの取付部12eの最上部aとの間に位置させた。つまり燃料タンク6の底部を、クランクケース3aの上方突出部と緩衝器12aの上端部との間の、下方に凹んだ部分に配置したので、燃料タンク6を確実に低く配置できる。
【0058】
また、本実施形態では、燃料タンク6の最下部bを前記取付ブラケット12fの最上部dより下方に位置させたので、緩衝器12aを取付ブラケット12fを介在させて前記車体フレームのボス部16gに連結する場合に燃料タンク6を低く配置でき、車両全体の重心を低くできる。
【0059】
また、前記取付ブラケット12fの最上部dと燃料タンク6の底壁6cとの間には空間eを設けたので、燃料タンク6を低く配置しつつ、燃料タンク6と緩衝器の取付ブラケット12fとの干渉を回避できる。
【0060】
さらにまた、前記取付ブラケット12fが固定されるボス部16gを上クロスフレーム16eの上面16e′より下方に段落ちさせたので、この段落ち分だけ前記取付ブラケット12f、ひいては緩衝器12aを低くできる。
【0061】
また、緩衝器12aの取付部12eをリアアーム5の前記車体フレームへの枢支部であるピボット軸5aより上方に位置させ、緩衝器12aの下端をリアアーム5の下方に位置するリンク部材12bに連結したので、リアアーム5内の空間を利用して緩衝器12aを配置できる。
【0062】
さらにまた、排気装置53の合流管54bをリアアームブラケット部16bの後方かつ緩衝器12aの側方を通るように、さらに車両側方から見たとき、前記合流管54bの少なくとも一部が緩衝器12aと重なるように配置したので、排気管の上方立ち上がり部及び緩衝器12aの配置スペースの確保が容易である。
【0063】
また前記排気装置53の左,右マフラ55a,55bを、上方から見たとき少なくともその一部がメインシート7と重なるように、さらに側方から見たときリアフェンダ56,リアフレーム34と一部が重なるように配置したので、メインシート7とリアフェンダ56,リアフレーム34とのコーナ部空間を利用してマフラを配置できる。
【0064】
燃料タンク6を縦長タイプとし、前壁6dの上部を前方に屈曲させたことにより形成されたコーナ部内に、その一部が位置するようにエアクリーナ26を配置したので、エンジン上方の狭い空間内においてエアクリーナ26の容量を確保できる。
【0065】
またエアクリーナ26内に可動ファンネル25aを配置するとともに、燃料噴射弁24bを、前記可動ファンネル25aの上流側に位置するようエアクリーナ26内に配設したので、エンジンの高速回転域で必要な空気及び燃料を確保でき、エンジン性能を向上できる。
【0066】
さらにまた、ヘッドカバー3dに対向するサブクリーナケース27bをクリーナケース27に対して着脱可能に構成したので、例えば点火プラグの交換作業を、サブクリーナケース27bを取り外すことにより容易確実に行うこきができる。
【0067】
なお、前記実施形態では、緩衝器12aの取付部12eを取付ブラケット12fを介して車体フレームのボス部16gに取り付けたが、緩衝器12aを車体フレームのボス部に直接取り付けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】前記自動二輪車の緩衝器,燃料タンク及びクランクケースの配置関係を示す一部断面左側面図である。
【図3】前記緩衝器の取付状態を示す背面図である。
【図4】前記燃料タンクと吸気装置の配置関係を示す一部断面側面図である。
【図5】前記自動二輪車の吸気装置の断面左側面図である。
【図6】前記自動二輪車のガードプレートの取付状態を示す右側面図である。
【図7】前記ガードプレートの取付状態を示す平面図である。
【図8】前記ガードプレートの取付状態を示す背面図である。
【図9】前記自動二輪車のリアフレームの平面図である。
【図10】前記自動二輪車のタンデムステップブラケットの背面図である。
【図11】前記自動二輪車のバッテリ取付状態をし示す断面側面図である。
【図12】前記バッテリの取付状態を示す断面背面図(図11のXII-XII線断面図)である。
【図13】前記自動二輪車の排気装置の左側面図である。
【図14】前記排気装置の平面図である。
【図15】前記排気装置の断面背面図(図1のXV-XV線断面図)である。
【符号の説明】
【0069】
1 自動二輪車
2 車体フレーム
3 エンジン
3a クランクケース
5 リアアーム
6 燃料タンク
5a ピボット軸(リアアームの前記車体フレームへの枢支部)
6c 燃料タンクの底壁
7 メインシート(シート)
12a 緩衝器
12b リンク部材
12e 取付部
12f 取付ブラケット
16e 上クロスフレーム
16e′ クロスフレームの上面
16g ボス部
24a エアクリーナ内に配置された燃料噴射弁
25a 可動ファンネル
26 エアクリーナ
53 排気装置
54 排気管
55a,55b 左,右マフラ
a 取付部の最上部
b 燃料タンクの最下部
c クランクケースの最上部
d 取付ブラケットの最上部
e 空間
f 吸気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
該車体フレームに搭載されたエンジンと、
該エンジンの上方に位置するように前記車体フレームに搭載された燃料タンクと、
前記車体フレームに枢支されたリアアームと、
該リアアームと前記車体フレームとの間に配設された緩衝器と
を備えた自動二輪車であって、
前記緩衝器は、前記エンジンのクランクケース後方に配置され、該緩衝器に設けられた車体フレームへの取付部の最上部、及び前記燃料タンクの最下部は、前記クランクケースの最上部より下方に位置している
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
請求項1に記載の自動二輪車において、
前記燃料タンクの最下部は、車両前後方向における前記クランクケースの最上部と前記緩衝器の取付部の最上部との間に位置している
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項3】
請求項1に記載の自動二輪車において、
前記緩衝器の取付部は、取付ブラケットを介在させて前記車体フレームのボス部に連結されており、前記燃料タンクの最下部は前記取付ブラケットの最上部より下方に位置している
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項4】
請求項1に記載の自動二輪車において、
前記燃料タンクは前記緩衝器の上方に配設されており、
前記緩衝器の取付部は、取付ブラケットを介在させて前記車体フレームのボス部に連結され、前記燃料タンクの底面と、前記取付ブラケットの最上部との間には空間が設けられている
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項5】
請求項1に記載の自動二輪車において、
前記緩衝器の取付部は、前記車体フレームの車幅方向に伸びるクロスフレームに形成されたボス部に連結されており、
前記ボス部は、前記クロスフレームの上面より下方に形成されている
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項6】
請求項1に記載の自動二輪車において、
前記緩衝器の取付部は、前記リアアームの前記車体フレームへの枢支部より上方に位置している
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項7】
請求項1に記載の自動二輪車において、
前記緩衝器の下端部は、前記車体フレームと前記リアアームとの間に掛け渡されたリンク部材に接続されている
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項8】
請求項1に記載の自動二輪車において、
前記エンジンに接続された排気管及び該排気管の後端部に接続されたマフラを含む排気装置をさらに備え、
前記排気管は前記緩衝器の側方を通るように配置されている
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項9】
請求項8に記載の自動二輪車において、
車両側方から見たとき、前記排気管の少なくとも一部は前記緩衝器と重なっている
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項10】
請求項1に記載の自動二輪車において、
前記エンジンに接続された排気管及び該排気管の後端部に接続されたマフラを含む排気装置をさらに備え、
前記排気装置のマフラは、上方から見たとき少なくともその一部がシートと重なるように配置されている
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項11】
請求項1に記載の自動二輪車において、
前記エンジンに接続された吸気通路と該吸気通路の途中に配設されたエアクリーナと該吸気通路の途中に燃料を供給する燃料噴射弁とを含む吸気装置をさらに備え、
前記エアクリーナは前記燃料タンクの前方に配設されている
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項12】
請求項11に記載の自動二輪車において、
前記燃料噴射弁は、前記エアクリーナの内部に配設されている
ことを特徴とする自動二輪車。
【請求項13】
請求項12に記載の自動二輪車において、
前記吸気通路は、該吸気通路の軸方向に移動可能の可動ファンネルを含み、該可動ファンネルは前記エアクリーナの内部に配設されている
ことを特徴とする自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−58748(P2010−58748A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228920(P2008−228920)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】