説明

自動分析装置と自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法

【課題】過剰継ぎ足しに起因した試薬の分注不良の発生を未然に防止することを可能とした自動分析装置と自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法を提供すること。
【解決手段】分注プローブによって試薬容器内の試薬を反応容器へ分注する試薬分注装置を備えた自動分析装置と試薬容器の試薬量管理方法。自動分析装置は、試薬の液面を検知し、検知した液面位置をもとに試薬の液量を演算する液量演算部63と、演算した試薬の液量が試薬容器9aについて予め設定された規定保持量を超えている場合に、試薬分注装置に規定保持量を超える過剰の試薬を他の予備容器へ分注させる液量調整部64aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過剰継ぎ足しに起因した試薬の分注不良の発生を防止する自動分析装置と自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、試薬と検体とを反応させ、反応液の光学的特性を測定することによって検体に含まれる特定成分やその含有量を測定しており、分析項目ごとに異なる試薬を使用している(例えば、特許文献1参照)。このため、自動分析装置は、分析項目によって特定の試薬が消費されることがある。このような場合、自動分析装置の使用者は、キャリブレーションの手間を省くため、製造ロットが同じ試薬を継ぎ足して使用することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−133796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、試薬を継ぎ足した場合、規定保持量を超えて過剰に継ぎ足すと、試薬容器は、分析に伴う試薬容器の吸引位置への搬送による液揺れにより、規定保持量以内の場合に比べて、液面に液泡が発生したり、分注プローブの挿通口に液膜が発生したりする頻度が増加する。このような液泡や液膜が発生すると、液面検知機能を有する分注装置においては、液泡や液膜を試薬の液面と誤検知して分注動作を開始する。このため、自動分析装置は、分注装置の分注プローブが適正量の試薬を吸引することできなくなり、正確な分析結果を得られなくなることがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、過剰継ぎ足しに起因した試薬の分注不良の発生を未然に防止することを可能とした自動分析装置と自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、昇降、かつ、回動する分注プローブによって試薬容器内の試薬を反応容器へ分注する試薬分注装置を備えた自動分析装置であって、前記試薬の液面を検知し、検知した液面位置をもとに前記試薬の液量を演算する液量演算手段と、演算した前記試薬の液量が前記試薬容器について予め設定された規定保持量を超えている場合に、前記試薬分注装置に前記規定保持量を超える過剰の試薬を他の予備容器へ分注させる液量調整手段と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記液量調整手段による前記試薬の他の予備容器への分注に代えて、前記試薬分注装置に前記規定保持量を超える過剰な試薬の廃棄を指示する入力手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記試薬の液面を前記分注プローブと前記試薬との接触による静電容量の変化をもとに検知すると共に、前記静電容量の変化をもとに前記分注プローブが前記試薬の液面と接触したか、或いは前記分注プローブが前記試薬の液泡又は液膜と接触したかを判定する液面検知判定手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記分注プローブが前記試薬の液面と接触した場合に、前記試薬分注装置による前記分注プローブの駆動信号をもとに前記試薬容器の基準位置からの液面高さを演算する液面高さ演算手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記液面検知判定手段が前記分注プローブは前記試薬の液泡又は液膜と接触したと判定した場合に、警報を表示又は告知する出力手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法は、分注プローブによって試薬容器内の試薬を反応容器へ分注する試薬分注装置を備えた自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法であって、前記試薬の液面を検知し、検知した液面位置をもとに前記試薬の液量を演算する液量演算工程と、演算した前記試薬の液量が前記試薬容器について予め設定された規定保持量を超えている場合に、前記試薬分注装置に前記規定保持量を超える過剰の試薬を他の予備容器へ分注させる液量調整工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法は、上記の発明において、前記液量調整工程は、前記試薬の他の予備容器への分注に代えて、前記試薬分注装置に前記規定保持量を超える過剰な試薬の廃棄を指示することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法は、上記の発明において、前記試薬の液面を前記分注プローブと前記試薬との接触による静電容量の変化をもとに検知すると共に、前記静電容量の変化をもとに前記分注プローブが前記試薬の液面と接触したか、或いは前記分注プローブが前記試薬の液泡又は液膜と接触したかを判定する液面検知判定工程を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法は、上記の発明において、前記分注プローブが前記試薬の液面と接触した場合に、前記試薬分注装置による前記分注プローブの駆動信号をもとに前記試薬容器の基準位置からの液面高さを演算する液面高さ演算工程を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法は、上記の発明において、前記液面検知判定工程において前記分注プローブは前記試薬の液泡又は液膜と接触したと判定された場合、前記液泡又は前記液膜と接触した旨の警報を表示又は告知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、試薬容器に保持された試薬の液面位置をもとに試薬液量を演算し、演算した試薬の液量が規定保持量を超えている場合に、試薬分注装置に規定保持量を超える過剰の試薬を他の予備容器へ分注させるため、試薬容器が保持する試薬の量が規定保持量以内とされるので、試薬の過剰継ぎ足しに起因した試薬の分注不良の発生を未然に防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、自動分析装置の概略構成図である。
【図2】図2は、図1の自動分析装置で使用する第一試薬分注装置の概略構成を示す図である。
【図3】図3は、液面検知判定部の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、分注プローブと試薬との接触による静電容量の変化に基づく検出電圧の液面を正常に検出した場合と液泡を検出した場合を示す図である。
【図5】図5は、液面を検知した際の試薬の液面高さの求め方を説明する図である。
【図6】図6は、試薬の規定保持量と、試薬容器における試薬の適正な封入量か否かを説明する図である。
【図7】図7は、本発明の自動分析装置の試薬容器の試薬量管理方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の自動分析装置と自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法にかかる実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、自動分析装置の概略構成図である。図2は、図1の自動分析装置で使用する第一試薬分注装置の概略構成を示す図である。
【0019】
自動分析装置1は、図1に示すように、ラック供給装置2、反応部4、第一試薬分注装置6、第二試薬分注装置8、第一試薬保冷庫9及び第二試薬保冷庫10、第一撹拌装置13、第二撹拌装置14、光学測定装置15及び制御部17を備えている。また、自動分析装置1は、ラック供給装置2と反応部4との間に検体分注装置3が設けられ、第一試薬分注装置6及び第二試薬分注装置8のそれぞれには、液面検知判定部61、液面高さ演算部62、液量演算部63及び分注制御部64(いずれも図2参照)が設けられている。
【0020】
ラック供給装置2は、図1に示すように、複数のラック2aが配列され、各ラック2aには検体を保持した検体容器2bが搭載されている。ラック供給装置2は、矢印で示す経路に沿ってラック2aを順次搬送し、検体分注装置3のプローブ3aによって各検体容器2bに保持された検体が反応部4の反応容器5に分注される。
【0021】
反応部4は、図1に示すように、保温部材4aとキュベットホイール4bとを有している。保温部材4aは、キュベットホイール4bの半径方向内側及び外側に配置され、光学測定装置15と対応する位置に測光用の開口4cが形成されている。キュベットホイール4bは、複数の反応容器5を体温程度の温度に保持して回転し、例えば、一周期で時計方向に(1周−1キュベット)/4分回転し、四周期では時計方向に1キュベット分回転する。
【0022】
第一試薬分注装置6は、第一試薬を第一試薬保冷庫9から吸引してキュベットホイール4bの反応容器5に分注する装置であり、図1及び図2に示すように、昇降、かつ、軸周りに回転自在な支柱6aの上端にアーム6bが設けられ、アーム6b先端下部に試薬を分注する分注プローブ6cが設けられている。分注プローブ6cは、導電性素材から成形され、液面検知判定部61の可動電極としての機能を有している。第一試薬分注装置6は、ステッピングモータを備えた駆動部7(図2参照)によって支柱6aの回動と昇降が制御され、分注プローブ6cがアーム6bと共に回動し、昇降する。また、第一試薬分注装置6は、分注プローブ6cが水平方向へ回動する移動軌跡上に分注プローブ6cを洗浄する洗浄槽(図示せず)が設けられている。このとき、第一試薬分注装置6は、ステッピングモータの駆動パルス数を分注制御部64(図2参照)によって制御することで昇降動作が制御されるが、分注制御部64は駆動パルス数の制御信号を記憶すると共に、この検出信号を液面高さ演算部62(図2参照)へ出力する。このため、分注プローブ6cは、支柱6aによって昇降させた際の鉛直方向の位置を演算によって高精度に求めることができる。
【0023】
液面検知判定部61は、分注プローブ6cが試薬容器9aから試薬を吸引する際の分注プローブ6cと試薬との接触による静電容量の変化をもとに分注プローブ6cが試薬の液面と接触したか、或いは分注プローブ6cが試薬の液泡又は液膜と接触したかを判定する。液面検知判定部61は、可動電極としての分注プローブ6cの他に、図3に示すように、発振器61a、保冷庫電極9d、増幅器61b、ダイオード61c及びコンパレータ61eを有している。
【0024】
発振器61aは、図2に示すように、保冷庫電極9dに交流信号を印加する。このとき、分注プローブ6cは、発振器61aが印加する交流信号によって固定電極である保冷庫電極9dに誘導される発振信号を受信する。
【0025】
増幅器61bは、図3に示すように、ダイオード61c及びコンパレータ61eを介して分注プローブ6cと判定部61fとを接続している。増幅器61bは、発振器61aが保冷庫電極9dに印加している発振信号が試薬及び分注プローブ6cを通じて導入され、発振信号を増幅する。ここで、試薬容器9a内に規定保持量を超える試薬が過剰に継ぎ足されている場合に、第一試薬保冷庫9が回転すると、液揺れによって試薬の液面に液泡が発生したり、分注プローブ6cの挿通口下部に液膜が発生したりする。このような場合、増幅器61bは、前記液泡や液膜に応じて、発振器61aが保冷庫電極9dに印加している発振信号が試薬及び分注プローブ6cを通じて導入され、発振信号を増幅する。
【0026】
ダイオード61cは、増幅器61bで増幅された発振信号をコンデンサ61dと協働して整流、平滑化し、平滑化信号をコンパレータ61eの一方の端子に出力する。
【0027】
コンパレータ61eは、ダイオード61cから一方の端子に入力される平滑化信号(電圧)を他方の端子に入力される閾値信号(電圧)と比較することにより分注プローブ6cと保冷庫電極9dとの間の静電容量に対応した電圧信号又は液面の検知信号を判定部61fへ出力する。
【0028】
このとき、分注プローブ6cの下端が試薬容器9a内の試薬の液面に接すると、静電容量が大きく変化する。このため、ダイオード61cから出力される電圧信号は、分注プローブ6cの下降開始時を時間軸上でゼロとした図4に正常と示すように、閾値Tsよりも大きくなる。但し、分注プローブ6cの下端が液泡に接触した場合、ダイオード61cから出力される電圧信号は、図4に液泡1〜液泡3と示すように、閾値Tsよりも小さくなる。従って、コンパレータ61eの他方の端子には、図3に示すように、閾値Tsに対応した閾値信号(電圧)を入力する。
【0029】
判定部61fは、コンパレータ61eから出力される電圧が閾値信号(電圧)以上の場合に、試薬の液面を検知したと判定し、閾値信号(電圧)未満の場合には液泡や液膜を検知したと判定する。このとき、判定部61fは、試薬の液面を検知した旨の液面検知信号、或いは液泡や液膜を検知した旨の液泡検知信号を液面高さ演算部62及び分注制御部64へ出力する。判定部61fは、例えば、CPU等によって実現される。
【0030】
液面高さ演算部62は、CPU等によって実現され、判定部61fが試薬の液面を検知したと判定した場合、液面検知判定部61から入力される液面検知信号と分注制御部64から入力される前記ステッピングモータの駆動パルス数の制御信号とをもとに分注プローブ6c下端の位置を液面高さとして演算する。演算した試薬の液面高さは、液量演算部63へ出力される。このとき、液面高さ演算部62は、液面高さを以下のようにして演算する。即ち、第一試薬分注装置6は、ステッピングモータを備えた駆動部7(図2参照)によって昇降されるが、図5に示すように、昇降される最上部を上点Uとし、昇降される最下部を下点Dとする。上点Uは、分注プローブ6cを上昇し得る上限位置である。下点Dは、分注プローブ6c下端を下降し得る下限位置である共に、試薬容器9aに保持された第一試薬R1の液面高さを決める基準位置である。
【0031】
このとき、液面高さ演算部62は、上点Uから下点Dまで分注プローブ6cを移動させるのに要する前記ステッピングモータの総駆動パルス数をPt、上点Uから第一試薬R1の液面まで分注プローブ6cを移動させるのに要する前記ステッピングモータの駆動パルス数をPdとしたときに、残パルス数Pr(=Pt−Pd)をもとに第一試薬の液面高さHrを演算する。
【0032】
液量演算部63は、CPU等によって実現され、試薬容器9aごとに決まっている水平断面係数の情報を制御部17から取得し、水平断面係数Csと液面高さ演算部62が演算した液面高さHrとをもとに、その試薬容器9aが保持している第一試薬の液量(=Cs・Hr)を演算する。このとき、図6に示すように、液量演算部63が演算した第一試薬の液量が、試薬容器9aについて予め設定された規定保持量Mt以下である場合、第一試薬は、適正な封入量である。但し、演算した第一試薬の液量が規定保持量Mtを超えている場合は、不適正な封入量である。このため、液量演算部63は、液量オーバー信号を液量調節部64aに出力すると共に、制御部17を介して出力部19へ出力する。これにより、出力部19は、試薬容器9aが保持する第一試薬の液量が規定保持量Mtを超えている旨の警報を表示部19aに表示し、或いは告知部19bから警報を告知する。
【0033】
分注制御部64は、MPU等が使用され、駆動部7を介して第一試薬分注装置6による第一試薬の分注動作を制御する分注制御手段であり、液量調整部64aを有している。液量調整部64aは、液量演算部63が演算した第一試薬の液量が規定保持量Mtを超えている場合に、規定保持量Mtを超える過剰の試薬を第一試薬分注装置6に他の予備容器9bへ分注させる。
【0034】
第二試薬分注装置8は、第一試薬分注装置6と同様に構成され、第二試薬を第二試薬保冷庫10から吸引してキュベットホイール4bの反応容器5に分注する。このため、第二試薬分注装置8は、第一試薬分注装置6と対応する構成部材に対応する符号を付している。
【0035】
第一試薬保冷庫9及び第二試薬保冷庫10は、構成が同じであるので第一試薬保冷庫9について説明し、第二試薬保冷庫10については対応する構成部分に対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0036】
第一試薬保冷庫9は、図1に示すように、第一試薬R1(図2参照)を保持した複数の試薬容器9aと複数の予備容器9bが周方向に配置され、第一試薬分注装置6の分注プローブ6cによって所定の第一試薬が反応容器5に分注される。複数の試薬容器9aは、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、収容した試薬に関する情報を記録するバーコードラベル等の情報記録媒体(図示せず)が外面に貼付されている。複数の予備容器9bは、液量演算部63が演算した第一試薬の液量が規定保持量を超えている試薬容器9aから過剰の第一試薬を小分け分注するための試薬容器9aよりも数が少ない空の容器であり、適宜箇所に配置されている。ここで、図2に示すように、第一試薬保冷庫9の試薬トレイ9cには、各試薬容器9aの側面及び分注プローブ6cの挿通口Aが形成された背面側に保冷庫電極9dが立設されている。保冷庫電極9dは、発振器61aから交流信号が印加され、液面検知判定部61の固定電極として機能する。第一試薬が分注された反応容器5は、第一撹拌装置13によって検体と第一試薬とが撹拌される。
【0037】
また、第一試薬保冷庫9の外周には、各試薬容器9aに貼付された前記情報記録媒体から第一試薬の有効期限、製造ロット番号等の他、試薬容器9aの水平断面係数等の試薬情報を読み取り、その情報を制御部17へ出力する読取装置11が設置されている。なお、読取装置12は、第二試薬保冷庫10内の各試薬容器10aに貼付された前記情報記録媒体から試薬情報を読み取り、その情報を制御部17へ出力する。
【0038】
第一撹拌装置13及び第二撹拌装置14は、反応容器5に分注された検体や試薬を撹拌棒13a,13bや撹拌棒14aによって撹拌し、検体と試薬を反応させる。ここで、第一撹拌装置13及び第二撹拌装置14は、ステッピングモータによって精密に昇降駆動される。また、検体分注装置3及び試薬分注装置6,8の各プローブ3a,6c,8c及び撹拌棒13a,14aは、分注や撹拌の終了後、洗浄水タンクから供給される洗浄水によって流水洗浄される。
【0039】
光学測定装置15は、図1に示すように、光源15aと受光素子15bとを有している。光源15aは、試薬と検体とが反応した反応容器5内の反応液を分析するための分析光を出射する。受光素子15bは、光源15aが出射し、開口4cを通って反応容器5内の反応液を透過した光束を測光する。このようにして反応液が測光された反応容器5は、洗浄・乾燥ユニット16において内部の反応液が吸引されて廃棄されると共に、洗浄水タンクから供給される洗浄水によって内部が洗浄された後、加圧空気を吹き込んで乾燥される。そして、反応容器5は、再び検体分注装置3のプローブ3aによって新たな検体が分注され、分析に使用される。
【0040】
制御部17は、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用され、上述した各部と接続されている。制御部17は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記情報記録媒体から読み取った試薬情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を規制するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。制御部17は、図1に示すように、分析部17a、記憶部17b及び処理制御部17cを有している。
【0041】
分析部17aは、受光素子15bが測光した光量信号に基づいて求められる反応容器5内の検体と試薬の反応液の光学的特性(吸光度)から検体の成分濃度等を分析する。記憶部17bは、分析部17aが分析した成分濃度等、試薬容器9a,10aごとの水平断面係数の情報、液面高さ演算部62が演算した試薬容器9a,10aに保持された試薬の液面の高さ、液量演算部63が演算した試薬容器9a,10aの試薬液量、並びに自動分析装置1の動作プログラム等を記憶する。処理制御部17cは、自動分析装置1の各部の作動や処理動作を制御する。
【0042】
入力部18は、制御部17へ検体数や検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。入力部18は、液量演算部63が演算した試薬容器9a,10aの試薬液量が規定保持量Mtを超えている場合に、規定保持量Mtを超える過剰の試薬の廃棄を第一試薬分注装置6や第二試薬分注装置8に指示する試薬廃棄ボタン18a(図1参照)を有している。入力部18は、試薬廃棄ボタン18aが押下されて試薬の廃棄が指示された場合、廃棄信号を液量調整部64aに出力し、試薬の他の予備容器への小分け分注を停止させる。
【0043】
出力部19は、図1に示すように、表示部19aと告知部19bとを有している。表示部19aは、分析結果を含む自動分析装置1に係る種々の情報を表示するディスプレイパネル等を使用した表示手段であり、試薬容器9a,10aが保持する試薬の液量が規定保持量Mtを超えている旨の警報や試薬容器9a,10aが保持する試薬に液泡や液膜を検知した旨の警報を表示する。告知部19bは、試薬容器9a,10aが保持する試薬の液量が規定保持量Mtを超えている旨の警報や液泡や液膜を検知した旨の警報を音声又は警報音によって告知する。
【0044】
以上のように構成される自動分析装置1は、制御部17の制御の下に作動し、回転するキュベットホイール4bによって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器5のそれぞれに第一試薬分注装置6によって試薬容器9aから第一試薬が順次分注された後、検体分注装置3によってラック2aに保持された複数の検体容器2bから検体が順次分注される。検体が分注された反応容器5には、第二試薬分注装置8が試薬容器10aから順次第二試薬が分注される。
【0045】
この間、試薬や検体が分注された反応容器5は、キュベットホイール4bが停止する都度、第一撹拌装置13や第二撹拌装置14によって試薬や検体が撹拌され、キュベットホイール4bが再び回転したときに光学測定装置15を通過する。このとき、反応容器5内の試薬と検体とが反応した反応液は、光学測定装置15において測定され、光学測定装置15から入力される測光信号をもとに分析部17aによって光学的特性(吸光度)をもとに成分濃度等が分析される。そして、反応液の測定が終了した反応容器5は、洗浄・乾燥ユニット16に移送されて洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0046】
このとき、自動分析装置1は、第一試薬分注装置6によって第一試薬を分注する際や第二試薬分注装置8によって第二試薬を分注する際に試薬容器9aや試薬容器10aに保持された第一試薬の量や第二試薬の量を管理する。以下、図7に示すフローチャートを参照しながら、第一試薬分注装置6によって第一試薬を分注する際に実行される試薬容器の試薬量管理方法について説明する。ここで、本発明の自動分析装置の試薬容器の試薬量管理方法は、自動分析装置1に電源を投入した際の初期化時の試薬チェック時や分析中に自動分析装置1を一時停止して試薬補充を行い、分析を再開した際等に分注制御部64による制御のもとに実行される。
【0047】
先ず、駆動部7によって図5に示す上点Uに待機している分注プローブ6cを試薬吸引位置へ移動し、試薬容器9aへ分注プローブ6cの下降を開始する(ステップS100)。次に、分注プローブ6cが試薬の液面と接触したか否かを判定する(ステップS102)。この判定は、液面検知判定部61のコンパレータ61eが出力する電圧が閾値信号(電圧)以上か否かによって判定部61fが判定する。
【0048】
判定の結果、分注プローブ6cが試薬の液面と接触した場合(ステップS102,Yes)、駆動部7による分注プローブ6cの下降を停止する(ステップS104)。このとき、判定部61fは、試薬の液面を検知したと判定し、液面検知信号を液面高さ演算部62へ出力する。次いで、検知した試薬の液面高さを演算する(ステップS106)。液面高さは、判定部61fから入力される液面検知信号と分注制御部64から入力される前記ステッピングモータの駆動パルス数の制御信号とに基づいて液面高さ演算部62が演算する。
【0049】
その後、液面高さ演算部62から入力される液面高さをもとに試薬容器9aに保持されている試薬の液量を演算する(ステップS108)。試薬の液量は、液量演算部63が液面高さと試薬容器9aの水平断面係数とをもとに演算する。次に、液量調整部64aが、液量演算部63の演算した試薬の液量が規定保持量を超えているか否かを判定する(ステップS110)。
【0050】
判定の結果、試薬の液量が規定保持量を超えている場合(ステップS110,Yes)、試薬廃棄ボタン18aが押下されているか否かを判定する(ステップS112)。この判定は、入力部18から廃棄信号が入力されているか否かによって液量調整部64aが判定する。判定の結果、試薬廃棄ボタン18aが押下されていない場合(ステップS112,No)、上点Uまで分注プローブ6cを上昇させる(ステップS114)。一方、試薬の液量が規定保持量を超えていない場合(ステップS110,No)、ステップS130に移行する。
【0051】
次いで、第一試薬分注装置6に規定保持量を超える過剰の試薬を他の予備容器9bへ分注させる(ステップS116)。その後、分注制御部64は、次の試薬容器9aがあるか否かを判定し(ステップS118)、次の試薬容器9aがある場合(ステップS118,Yes)、ステップS100へ移行し、引き続くステップを続行する。一方、次の試薬容器9aがない場合(ステップS118,No)、試薬容器の試薬量管理方法を終了する。
【0052】
これに対し、試薬廃棄ボタン18aが押下されている場合(ステップS112,Yes)、上点Uまで分注プローブ6cを上昇させる(ステップS120)。その後、第一試薬分注装置6に規定保持量を超える過剰の試薬を廃棄させる(ステップS122)。このとき、第一試薬分注装置6は、分注プローブ6cを洗浄する前記洗浄槽へ過剰の試薬を廃棄する。試薬の廃棄後、ステップS118へ移行する。
【0053】
一方、ステップS102における判定の結果、分注プローブ6cが試薬の液面と接触していない場合(ステップS102,No)、分注プローブ6cが試薬の液泡又は液膜と接触したか否かを判定する(ステップS124)。この判定は、液面検知判定部61のコンパレータ61eが出力する電圧が閾値信号(電圧)以上か否かによって判定部61fが判定する。分注プローブ6cが試薬の液泡又は液膜と接触していない場合(ステップS124,No)、ステップS128に移行し、警報を出力させる(ステップS128)。この場合、液面検知判定部61に何らかの異常が発生しているため、分注プローブ6cの下降を停止する。また、使用者は、出力される警報によってメンテナンスすべきとの注意が喚起される。
【0054】
一方、分注プローブ6cが試薬の液泡又は液膜と接触した場合(ステップS124,Yes)、駆動部7による分注プローブ6cの下降を停止する(ステップS126)。次に、分注制御部64は、出力部19に液泡や液膜を検知した旨の警報を出力させる(ステップS128)。このため、試薬液面に液泡や液膜が発生し、試薬容器aのメンテナンスが必要なことを使用者に注意喚起することができる。この場合、表示部19aに警報を表示させるか、告知部19bに音声又は警報音による警報を告知させる。次いで、駆動部7によって分注プローブ6cを上昇させる(ステップS130)。その後、ステップS118へ移行する。この場合、分注制御部64は、ステップS118へ移行する前に所定時間を置いて分注プローブ6cを下降させ液泡や液膜の有無を確認してもよい。
【0055】
以上のように、本発明によれば、試薬容器に保持された試薬の液面を検知して液量を演算し、演算した試薬の液量が規定保持量を超えている場合に、試薬分注装置に規定保持量を超える過剰の試薬を他の予備容器へ分注させる。このため、試薬容器に試薬を継ぎ足した場合に、過剰継ぎ足しによって試薬量が規定保持量を超えても、分析開始迄に試薬量が規定保持量に減量される。従って、自動分析装置1は、分析中に、第一試薬保冷庫9や第二試薬保冷庫10が回転しても、液揺れによる液泡や液膜の発生が抑えられる。この結果、自動分析装置1は、過剰継ぎ足しに起因した試薬液面の誤検知が回避され、分注不良の発生を未然に防止することができると共に、試薬の液面を高い頻度で検知することができる。
【0056】
尚、上記実施の形態は、試薬の液面を静電容量によって検出したが、例えば、電気抵抗や電気の導通によって検出してもよく、液面検知手段は特に限定はない。
【0057】
また、上記実施の形態は、第一試薬分注装置6や第二試薬分注装置8によって過剰継ぎ足しした試薬の過剰分を小分け分注し、或いは過剰分を廃棄した。しかし、別途小分け分注用、或いは過剰分廃棄用の試薬除去装置を第一試薬保冷庫9及び第二試薬保冷庫10のそれぞれに設けてもよい。
【0058】
また、本発明は、試薬の液量が試薬容器の規定保持量を超えている場合に、過剰の試薬を他の予備容器へ小分け分注あるいは廃棄させるが、試薬容器の水平断面形状が底部から上方へ一定の形状であれば、試薬の液量は液面高さによって決まる。このため、規定保持量として液面高さを使用し、試薬容器ごとに検知した液面位置から算出した液面高さが規定液面高さを越えている場合に、液面高さが規定液面高さとなるまで小分け分注あるいは廃棄させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明の自動分析装置と自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法は、試薬の過剰継ぎ足しに起因した試薬容器における試薬の分注不良の発生を未然に防止するのに有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 自動分析装置
2 ラック供給装置
3 検体分注装置
4 反応部
5 反応容器
6 第一試薬分注装置
6a 支柱
6b アーム
6c 分注プローブ
61 液面検知判定部
62 液面高さ演算部
63 液量演算部
64 分注制御部
7 駆動部
8 第二試薬分注装置
9 第一試薬保冷庫
9a 試薬容器
9b 予備容器
10 第二試薬保冷庫
11,12 読取装置
13 第一撹拌装置
14 第二撹拌装置
15 光学測定装置
16 洗浄・乾燥ユニット
17 制御部
18 入力部
19 出力部
A 挿通口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降、かつ、回動する分注プローブによって試薬容器内の試薬を反応容器へ分注する試薬分注装置を備えた自動分析装置であって、
前記試薬の液面位置をもとに前記試薬の液量を演算する液量演算手段と、
演算した前記試薬の液量が前記試薬容器について予め設定された規定保持量を超えている場合に、前記試薬分注装置に前記規定保持量を超える過剰の試薬を他の予備容器へ分注させる液量調整手段と、
を備えていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記液量調整手段による前記試薬の他の予備容器への分注に代えて、前記試薬分注装置に前記規定保持量を超える過剰な試薬の廃棄を指示する入力手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記試薬の液面を前記分注プローブと前記試薬との接触による静電容量の変化をもとに検知すると共に、前記静電容量の変化をもとに前記分注プローブが前記試薬の液面と接触したか、或いは前記分注プローブが前記試薬の液泡又は液膜と接触したかを判定する液面検知判定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記分注プローブが前記試薬の液面と接触した場合に、前記試薬分注装置による前記分注プローブの駆動信号をもとに前記試薬容器の基準位置からの液面高さを演算する液面高さ演算手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記液面検知判定手段が前記分注プローブは前記試薬の液泡又は液膜と接触したと判定した場合に、警報を表示又は告知する出力手段を備えていることを特徴とする請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
分注プローブによって試薬容器内の試薬を反応容器へ分注する試薬分注装置を備えた自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法であって、
前記試薬の液面を検知し、検知した液面位置をもとに前記試薬の液量を演算する液量演算工程と、
演算した前記試薬の液量が前記試薬容器について予め設定された規定保持量を超えている場合に、前記試薬分注装置に前記規定保持量を超える過剰の試薬を他の予備容器へ分注させる液量調整工程と、
を含むことを特徴とする自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法。
【請求項7】
前記液量調整工程は、前記試薬の他の予備容器への分注に代えて、前記試薬分注装置に前記規定保持量を超える過剰な試薬の廃棄を指示することを特徴とする請求項6に記載の自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法。
【請求項8】
前記試薬の液面を前記分注プローブと前記試薬との接触による静電容量の変化をもとに検知すると共に、前記静電容量の変化をもとに前記分注プローブが前記試薬の液面と接触したか、或いは前記分注プローブが前記試薬の液泡又は液膜と接触したかを判定する液面検知判定工程を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法。
【請求項9】
前記分注プローブが前記試薬の液面と接触した場合に、前記試薬分注装置による前記分注プローブの駆動信号をもとに前記試薬容器の基準位置からの液面高さを演算する液面高さ演算工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法。
【請求項10】
前記液面検知判定工程において前記分注プローブは前記試薬の液泡又は液膜と接触したと判定された場合、前記液泡又は前記液膜と接触した旨の警報を表示又は告知することを特徴とする請求項9に記載の自動分析装置における試薬容器の試薬量管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−27480(P2011−27480A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171586(P2009−171586)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】