説明

自動変速機の制御装置

【課題】ドライバに違和感を与えることなく変速操作を達成可能な自動変速機の制御装置を提供すること。
【解決手段】予め設定された変速マップに基づいて変速を行う自動変速モードと、運転者の手動操作に基づいて変速を行う手動変速モードと、自動変速モードが選択され変速マップによる自動変速中、又は手動変速モードが選択され手動操作に係らず行われる強制変速中、この自動変速又は手動変速と同方向の手動操作が行われたとき、手動操作に基づく変速を全てキャンセルするキャンセル手段と、手動操作に基づく変速がキャンセルされた回数をカウントするカウント手段と、手動操作に基づく変速がキャンセルされたことを運転者に報知するにあたり、カウント手段により複数回カウントされたときは、該カウント数より少ない回数を運転者に報知する報知手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動操作による変速時に手動変速指令を所定条件でキャンセルする自動変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、自動変速モードが選択され、変速マップによる自動変速中または手動変速モードに関係なく強制的に行われる強制変速中に、自動変速もしくは強制変速と同方向の手動操作が行われたときは、この手動操作による変速をキャンセルする技術が開示されている。また、特許文献2には、手動操作による変速をキャンセルしたときは、運転者にキャンセルした旨を報知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−257125号公報
【特許文献2】特開平10−19120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術に特許文献2に記載の技術を組み合わせると、手動操作による変速をキャンセルする度に、運転者にキャンセルした旨を報知するため、運転者に違和感を与えるおそれがあった。すなわち、運転者に報知する回数は、運転者の手動変速操作の回数と同じとなる。しかし、自動変速又は強制変速は、手動操作による手動変速と同方向であり、実際には自動変速又は強制変速によって変速が行われるため、運転者に報知するキャンセル回数と実際の変速回数との間に乖離が生じるからである。
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、ドライバに違和感を与えることなく変速操作を達成可能な自動変速機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、予め設定された変速マップに基づいて変速を行う自動変速モードと、運転者の手動操作に基づいて変速を行う手動変速モードと、自動変速モードが選択され変速マップによる自動変速中、又は手動変速モードが選択され手動操作に係らず行われる強制変速中、この自動変速又は手動変速と同方向の手動操作が行われたとき、手動操作に基づく変速を全てキャンセルするキャンセル手段と、手動操作に基づく変速がキャンセルされた回数をカウントするカウント手段と、手動操作に基づく変速がキャンセルされたことを運転者に報知するにあたり、カウント手段により複数回カウントされたときは、該カウント数より少ない回数を運転者に報知する報知手段と、を備えた。
【発明の効果】
【0006】
よって、実際には自動変速又は強制変速が実行され、手動操作による変速指令はキャンセルしていたとしても、運転者に手動操作により変速が行われたと認識させることができ、運転者に与える違和感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の自動変速機の制御装置の概略を示すシステム図である。
【図2】実施例1のシフトレバーの構成を示す概略図である。
【図3】シフトレバー以外の箇所にシフトスイッチを設けた例を示す概略図である。
【図4】シフトレバー以外の箇所にシフトスイッチを設けた例を示す概略図である。
【図5】実施例1の変速キャンセル時報知制御処理を表すフローチャートである。
【図6】実施例1のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
【図7】実施例1の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。
【図8】実施例2のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
【図9】実施例2の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。
【図10】実施例3のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
【図11】実施例3の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。
【図12】実施例4のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
【図13】実施例4の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。
【図14】実施例5のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
【図15】実施例5の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。
【図16】実施例6のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
【図17】実施例6の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。
【図18】実施例7のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
【図19】実施例7の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】
図1は実施例1の自動変速機の制御装置の概略を示すシステム図である。図1のように、エンジン10及び自動変速機11は、エンジン用電子制御装置12及び変速用電子制御装置15によって制御される。エンジン用電子制御装置12は、スロットル開度センサ13から入力されるスロットル開度と、車速センサ14から入力される車速とに基づいてエンジン10の制御を行う。具体的には、走行状態に応じて図示しない燃料噴射弁及び点火装置の制御を行う。
【0009】
変速用電子制御装置15は、スロットル開度センサ13から入力されるスロットル開度と、車速センサ14から入力される車速と、操作位置センサ16が検出したシフトレバー17の位置と、アップシフトスイッチ18及びダウンシフトスイッチ19から入力されるアップシフト/ダウンシフト信号を入力する。そして、予め設定された変速マップに基づいて、走行状態に応じた適切な変速段を求め、油圧制御回路20に対し、適切な変速段を達成するための指令値を出力する。変速マップとは、横軸に車速、縦軸にスロットル開度を取った平面に適切な変速段領域が設定されており、現時点での車速とスロットル開度で特定される運転点が属する領域の変速段を目標変速段として設定する周知の構成であり、特に言及しない。
【0010】
また、後述する手動変速モードでは、変速マップとは独立して所望の変速段指令を出力できる構成であり、シフトスイッチ等により手動変速指令が出力されると、変速マップを用いた自動変速モードから手動変速モードに切り換えられ、要求された変速段に変速する。また、変速用電子制御装置15において運転者の手動操作に基づく変速指令をキャンセルした際に、キャンセルした情報を運転者に報知するためのブザー30が設けられている。尚、報知手段としては、ブザー30に限らずメータパネル内のランプ等の点滅等を行ってもよい。
【0011】
油圧制御回路20は、自動変速機11内に備えられた図示しないクラッチやブレーキ等を作動させるための制御油圧を供給する。変速用電子制御装置15から適切な変速段を達成すべき制御信号が出力されると、油圧制御回路20内に備えられたソレノイド21,22に対し、各変速制御用の指令信号が出力される。また、油圧制御回路20内に設けられた油温センサ23は、作動油の温度を検知して変速用電子制御装置15へ出力する。尚、図示の油圧制御回路20では、ソレノイドが例として二つ示されるのみであるが、実際には動作させるべき自動変速機11内のアクチュエータの数等に応じた個数が設けられている。
【0012】
図2は実施例1のシフトレバーの構成を示す概略図である。図2のシフトレバー17では、自動変速機による自動的なアップシフト・ダウンシフトを行う自動変速モードと、運転者の手動操作によるシフトアップ・シフトダウンを行う手動変速モードの双方のモードによる操作が可能に構成されている。図2のシフトレバー17において、セレクトレバー24により、「P」レンジ、「R」レンジ、「N」レンジ、「D」レンジ、「2」レンジ、「1」レンジに加え、「M」レンジ(手動変速モード)を選択可能に構成されている。ここで「D」レンジが自動変速モードである。
【0013】
シフトレバー17には、セレクトレバー24を案内する略H字型のガイド溝25が形成されており、セレクトレバー24を「D」レンジ側から右側に倒した位置が「M」レンジになり、「M」レンジ位置にて前後に傾倒可能に構成されている。「M」レンジにおいてセレクトレバー24を前方(+方向)へ倒すと、アップシフトスイッチ18(図1参照)が作動し、シフトアップ信号が変速用電子制御装置15へ送られ、後方(−方向)へ倒すと、ダウンシフトスイッチ19が作動してシフトダウン信号が変速用電子制御装置15へ送られる。変速用電子制御装置15では、1回目のセレクトレバー24の操作で生じるシフトアップ信号及びダウンシフト信号によって1変速段分の変速を判断する。具体的には、現在の変速段が第n速のときにアップシフト信号が1回入力されると、第(n+1)速への変速と判断し、第n速のときにダウンシフト信号が1回入力されると、第(n−1)速への変速と判断する。
【0014】
図2はアップシフトスイッチ18及びダウンシフトスイッチ19をシフトレバー17に設けた例を示したが、図3及び図4はシフトレバー以外の箇所にこれらスイッチを設けた例を示す。図3はステアリングホイール26にシフトスイッチ27を設けたものであり、スイッチ27の上側を押すとアップシフト、下側を押すとダウンシフトとなっている。また、図4はステアリングコラム28にレバー型のシフトスイッチ29を設けたものである。レバーを上方に持ち上げるとアップシフトスイッチ18が作動し、下方へ押し下げるとダウンシフトスイッチ19が作動するように構成されている。
【0015】
実施例1の自動変速機の制御装置において、自動変速モードが選択されているときは、変速用電子制御装置15において走行状態に応じた適切な変速段が選択され、この適切な変速段に向けて変速指令が出力される。この自動変速中に運転者が素早い手動操作によりアップシフトスイッチ18やダウンシフトスイッチ19を操作し、この操作に基づいて自動変速と同方向のアップシフト信号やダウンシフト信号を出力した場合には、基本的に全ての手動変速指令をキャンセルし、後述する変速キャンセル時報知制御処理を実行する。同様に、手動変速モードが選択されているときは、基本的には運転者の手動操作に基づく変速が実行される。
【0016】
しかし、エンジン回転数が限界回転数付近(オーバーレブ状態)に到達すると、運転者の操作に係らず強制的にアップシフトする、もしくは、車速低下に伴ってエンジンストールが発生することを回避するために強制的にダウンシフトする強制変速が実行される。この強制変速中に運転者の手動操作に基づいて強制変速と同方向のアップシフト信号やダウンシフト信号が出力された場合には、後述する変速キャンセル時報知制御処理を実行する。尚、自動変速モードにおいて自動変速中に、「M」レンジに切り換えることなく、シフトスイッチ27等を操作された場合には、後述する変速キャンセル時報知制御処理を実行する。
【0017】
実施例1では、基本的に自動変速中もしくは強制変速中における同方向の手動操作によるアップシフトやダウンシフトは全てキャンセルされる。このとき、運転者に、運転者自身によって操作された手動操作に基づく変速がキャンセルされた旨を報知することで、運転者に違和感を与えないようにすることが好ましい。しかし、自動変速や強制変速が開始されてはいるが、具体的なギア比の変更までには至っていない状況のある変速段において、運転者が操作した手動操作をキャンセルし、キャンセルされた回数だけブザー等によって報知すると、実際には自動的ないし強制的に変速が行われているにもかかわらず、運転者は全ての操作がキャンセルされたと認識する。すなわち、実際の変速状態と運転者が認識する変速状態に乖離が生じ、これが違和感となる。また、自動変速中や強制変速中に全ての手動操作による変速をキャンセルする構成であるため、キャンセルされた変速全てにおいて報知すると、何度も報知音が鳴ることで煩わしさを与えてしまう。そこで、実施例1では、変速キャンセル時報知制御処理を実行し、運転者に違和感や煩わしさを与えることなく、適切なキャンセル処理の報知を行うこととした。
【0018】
〔変速キャンセル時報知制御処理〕
図5は実施例1の変速キャンセル時報知制御処理を表すフローチャートである。このフローチャートでは、手動変速モード中に強制変速が実行されるか否かに基づいて判断するものを示すが、自動変速モード中にシフトスイッチ等から手動変速によるシフト信号が出力されたときも基本的には同様な処理を行う。
ステップS1では、手動変速モードか否かを判断し、手動変速モードが選択されているときはステップS2に進み、手動変速モード以外が選択されているときはステップS8に進み、通常の変速判定(変速マップによる自動変速)を行って本制御フローを終了する。
【0019】
ステップS2では、手動変速モードにおける強制変速中か否かを判断し、強制変速中と判断したときはステップS3に進み、非変速状態である定常状態もしくは手動変速モードによる変速中のときはステップS7に進み、通常の変速判定を行ってステップS9に進む。
ステップS3では、強制変速によって変速される変速段方向と、手動操作に基づく変速段の方向とが同一方向か否かを判断し、同一方向の手動操作のときはステップS4に進み、それ以外のときはステップS6に進み、通常の変速判定を行ってステップS9に進む。
【0020】
ステップS4では、強制変速中に過去に逆方向の手動操作をしていないか否かを判断し、過去に逆方向の手動操作をしていない場合にはステップS5に進み、過去に逆方向の手動操作をした場合にはステップS6に進み、通常の変速判定を行ってステップS9に進む。
ステップS5では、全ての手動変速指令をキャンセルする(キャンセル手段)。
ステップS100では、インフォメーション制御処理を実行する。
【0021】
〔インフォメーション制御処理〕
図6は図5のステップS100において実行される実施例1のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
ステップS9では、手動操作による変速指令を拒否したか否かを判断し、拒否した場合にはステップS10に進み、それ以外のときは本制御フローを終了する。
ステップS10では、強制変速中に、この強制変速による変速段と同一方向の手動操作による変速指令が成されたか否かを判断し、同一方向の手動操作をした場合にはステップS11に進む。一方、同一方向の手動操作をしていない場合には、キャンセルによる報知をしたとしても運転者に違和感を与えないため、ステップS13に進む。
【0022】
ステップS11では、強制変速中に手動操作による変速指令を拒否した回数をカウントし(カウント手段)、カウント回数が一回目か否かを判断し、一回目の場合は何らインフォメーションを出すことなく(報知せず)、本制御フローを終了する。一方、カウント回数が二回目以降のときはステップS12に進む。言い換えると、カウントされる手動操作回数より少ない回数の報知を行う。
ステップS12では、強制変速中に一回もキャンセル情報をインフォメーションしていないか否かを判断し、一回もしていない場合はステップS13に進み、一回インフォメーションした場合には本制御フローを終了する。言い換えると、アップシフトの場合でも、ダウンシフトの場合でも、第n速から第m速への強制変速時において、手動操作が(|n−m|+1)回目のカウントのみキャンセルした旨を報知する。例えば、第2速から第4速へのアップシフト変速の場合であれば、(|2−4|+1)回目、すなわち、3回目の手動操作のときにキャンセルした旨を報知することになる。最初の2回のキャンセルされた事実は、運転者の認識と乖離がないからである。
ステップS13では、ブザー30を鳴らし、手動変速指令をキャンセルした旨のインフォメーションを行う(報知手段)。
【0023】
次に、上記制御フローに基づく作用について説明する。図7は実施例1の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。初期条件として手動変速モードが選択され、第n速が選択されているときに、エンジン回転数がオーバーレブによって強制的に第(n+1)速(=第m速)へアップシフト変速が実行される状態を表す。図7中、NxtGpとは、変速用電子制御装置15において設定される目標変速段を表し、CurGpとは、実変速段を表し、M+操作とは、アップシフトスイッチ18がオンとなる状態を表し、インフォメーションとは、ブザー30によって報知する状態を表す。
【0024】
時刻t1において、第n速が選択されているときに、オーバーレブ状態となり、強制的にアップシフト指令が出力されると、NxtGpが第(n+1)速(=第m速)に変更される。変速指令が出力されると、まず、自動変速機内の第n速を達成する解放側締結要素の締結圧が所定圧まで下げられ、第(n+1)速を達成する締結側締結要素の締結圧が所定圧まで上昇する指令が出力される。
【0025】
時刻t2において、強制変速に伴い実際にギア比が変化する前段階において、運転者の手動操作によってアップシフト信号が出力されると、強制変速により変速する方向と同一方向の変速指令であり、強制変速中における手動操作一回目であるため((|n−m|+1)回目でないため)、変速指令はキャンセルされる。このとき、運転者は、アップシフト変速指令が受け付けられ、今後変速が実行されると認識するが、実際の制御では、強制変速に伴うアップシフトが実行され、手動操作によるアップシフト指令はキャンセルされることになる。しかし、運転者の認識と実際の自動変速機の変速状況とが一致しているため(乖離していないため)、報知せずとも違和感は生じない。
【0026】
時刻t3において、運転者が再度手動操作を行うと、強制変速中における手動操作二回目となるため、手動操作によるアップシフト指令をキャンセルする旨の報知を行う。その後、自動変速機側においては、トルクフェーズが終了し、イナーシャフェーズが開始するため、実ギア比が変化し始める。
【0027】
時刻t4において、運転者が再度手動操作を行うと、強制変速中における手動操作二回目以降であって、かつ、一回報知しているため、報知は行われない。運転者による手動操作は、短時間のうちに繰り返し行われることがある。このとき、運転者としては報知回数をその都度数えているわけではなく、キャンセルした回数に応じて全て報知すると、何度も報知が繰り返されることによる煩わしさを感じてしまう。また、変速が実行されれば、トルクフェーズ時のトルクの引きやイナーシャフェーズ時のエンジン回転数の変化などによって現在変速中であることが認識でき、「変速中の手動操作はキャンセルされた」ということが一度の報知によって認識できれば、何回キャンセルされたかを知る必要は無い。よって、一回のみ報知することで運転者に煩わしさを与えることがない。
時刻t5において、イナーシャフェーズが終了すると、CurGpが第(n+1)速(=第m速)となり、変速を終了する。
【0028】
以上説明したように、実施例1にあっては、下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)予め設定された変速マップに基づいて変速を行う自動変速モードと、運転者の手動操作に基づいて変速を行う手動変速モードと、自動変速モードが選択され変速マップによる自動変速中、又は手動変速モードが選択され手動操作に係らず行われる強制変速中、この自動変速又は手動変速と同方向の手動操作が行われたとき、手動操作に基づく変速を全てキャンセルするステップS5(キャンセル手段)と、ステップS5により手動操作に基づく変速がキャンセルされた回数をカウントするステップ11(カウント手段)と、手動操作に基づく変速がキャンセルされたことを運転者に報知するにあたり、カウント手段により複数回カウントされたときは、該カウント数より少ない回数を運転者に報知するステップS11,S12,S13(報知手段)と、を備えた。
よって、実際には自動変速又は強制変速が実行され、手動操作による変速指令はキャンセルしていたとしても、運転者に手動操作により変速が行われたと認識させることができ、運転者に与える違和感を低減することができる。
【0029】
(2)ステップS11,S12,S13(報知手段)は、自動変速又は強制変速が第n速から第m速へのアップシフトである場合、ステップ11による(|m−n|+1)回目のカウントのみ報知する。
すなわち、手動操作回数と実際の変速回数との間に乖離が生じていない間は報知せず、乖離が生じた場合、その乖離したときの手動操作キャンセルに伴う報知のみ行い、それ以降の手動操作キャンセルに伴う報知は行わないことで、自動変速や強制変速による変速を「運転者による手動操作により行われた」と認識させつつ、報知回数の低減によって煩わしさを与えることなく適切に報知することができる。
【実施例2】
【0030】
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。実施例1では、(|m−n|+1)回目のカウントのみ報知したが、実施例2では、(|m−n|+1)回目以降は、全てのキャンセル情報を報知する点が異なる。言い換えると、図6のステップS12が無い制御フローである。
【0031】
〔インフォメーション制御処理〕
図8は図5のステップS100において実行される実施例2のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
ステップS9では、手動操作による変速指令を拒否したか否かを判断し、拒否した場合にはステップS10に進み、それ以外のときは本制御フローを終了する。
ステップS10では、強制変速中に、この強制変速による変速段と同一方向の手動操作による変速指令が成されたか否かを判断し、同一方向の手動操作をした場合にはステップS11に進み、同一方向の手動操作をしていない場合には、キャンセルによる報知をしたとしても運転者に違和感を与えないため、ステップS13に進む。
【0032】
ステップS11では、強制変速中に手動操作による変速指令を拒否した回数をカウントし(カウント手段)、カウント回数が一回目か否かを判断し、一回目の場合は何らインフォメーションを出すことなく(報知せず)、本制御フローを終了する。一方、カウント回数が二回目以降のときはステップS13に進む。言い換えると、カウントされる手動操作回数より少ない回数の報知を行う。
ステップS13では、ブザー30を鳴らし、手動変速指令をキャンセルした旨のインフォメーションを行う(報知手段)。言い換えると、アップシフトの場合でも、ダウンシフトの場合でも、第n速から第m速への強制変速時において、手動操作の(|n−m|+1)回目のカウント以降は全てキャンセルした旨を報知する。
【0033】
次に、上記制御フローに基づく作用について説明する。図9は実施例2の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。初期条件として手動変速モードが選択され、第n速が選択されているときに、エンジン回転数がオーバーレブによって強制的にアップシフト変速が実行される状態を表す。尚、時刻t1から時刻t3までは実施例1と同じであるため、時刻t4以降についてのみ説明する。
時刻t4において、運転者が再度手動操作を行うと、強制変速中における手動操作二回目以降であるため、報知が行われる。運転者による手動操作は、短時間のうちに繰り返し行われることがある。このとき、運転者は報知回数によって、手動操作が全てキャンセルされたことを認知することができる。
時刻t5において、イナーシャフェーズが終了すると、CurGpが第(n+1)速(=第m速)となり、変速を終了する。
【0034】
以上説明したように、実施例2にあっては、実施例1の作用効果(1)に加えて、下記の作用効果を得ることができる。
(3)ステップS11,S13(報知手段)は、自動変速又は強制変速が第n速から第m速への変速である場合、ステップ11による(|m−n|+1)回目以降のカウントを全て報知する。
すなわち、手動操作回数と実際の変速回数との間に乖離が生じていない間は報知せず、乖離が生じた場合、その乖離したときの手動操作キャンセルに伴う報知を行い、それ以降の手動操作キャンセルに伴う報知を行うことで、運転者に手動操作により変速が行われたと認識させつつ、(|m−n|+1)回目以降の手動操作が全てキャンセルされたことを認識させることができる。
【実施例3】
【0035】
次に、実施例3について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。実施例1では、(|m−n|+1)回目のカウントのみ報知したが、実施例3では、1回目のカウントのみ報知し、それ以降は、全てのキャンセル情報を報知しない点が異なる。
【0036】
〔インフォメーション制御処理〕
図10は図5のステップS100において実行される実施例3のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
ステップS9では、手動操作による変速指令を拒否したか否かを判断し、拒否した場合にはステップS10に進み、それ以外のときは本制御フローを終了する。
ステップS10では、強制変速中に、この強制変速による変速段と同一方向の手動操作による変速指令が成されたか否かを判断し、同一方向の手動操作をした場合にはステップS11に進み、同一方向の手動操作をしていない場合には、キャンセルによる報知をしたとしても運転者に違和感を与えないため、ステップS13に進む。
【0037】
ステップS110では、強制変速中に手動操作による変速指令を拒否した回数をカウントし(カウント手段)、カウント回数が一回目か否かを判断し、一回目の場合はステップS13に進み、カウント回数が二回目以降のときは何らインフォメーションを行うことなく本制御フローを終了する。言い換えると、カウントされる手動操作回数より少ない回数の報知を行う。
ステップS13では、ブザー30を鳴らし、手動変速指令をキャンセルした旨のインフォメーションを行う(報知手段)。言い換えると、アップシフトの場合でも、ダウンシフトの場合でも、手動操作の1回目のカウント以降は全てキャンセルした旨の報知は行わない。
【0038】
次に、上記制御フローに基づく作用について説明する。図11は実施例3の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。初期条件として手動変速モードが選択され、第n速が選択されているときに、エンジン回転数がオーバーレブによって強制的にアップシフト変速が実行される状態を表す。
【0039】
時刻t1において、第n速が選択されているときに、オーバーレブ状態となり、強制的にアップシフト指令が出力されると、NxtGpが第(n+1)速に変更される。変速指令が出力されると、まず、自動変速機内の第n速を達成する解放側締結要素の締結圧が所定圧まで下げられ、第(n+1)速を達成する締結側締結要素の締結圧が所定圧まで上昇する指令が出力される。
【0040】
時刻t2において、強制変速に伴い実際にギア比が変化する前段階において、運転者の手動操作によってアップシフト信号が出力されると、強制変速により変速する方向と同一方向の変速指令であるため変速指令はキャンセルされ、強制変速中における手動操作1回目であるため、手動操作による変速がキャンセルされた旨の報知を行う。このとき、運転者は、アップシフト変速指令が受け付けられなかったと認識する。しかし、実際の制御では、強制変速に伴うアップシフトが実行されるため、運転者は、自分の手動操作はキャンセルされたが、既に自動変速機側において強制変速が実行されていたと認識することができ、違和感は生じない。
【0041】
時刻t3、t4において、運転者が再度手動操作を行うと、強制変速中における手動操作1回目以降目となる。よって、手動操作によるアップシフト指令をキャンセルする旨の報知は行われない。その後、自動変速機側においては、トルクフェーズが終了し、イナーシャフェーズが開始するため、実ギア比が変化し始めるが、いずれの状況においても報知は行われない。
時刻t5において、イナーシャフェーズが終了すると、CurGpが第(n+1)速となり、変速を終了する。
【0042】
以上説明したように、実施例3にあっては、実施例1の作用効果(1)に加えて、下記の作用効果を得ることができる。
(4)ステップS110,S13(報知手段)は、自動変速又は強制変速が第n速から第m速への変速である場合、ステップ110による1回目のカウントのみ報知する。
すなわち、1回目の手動操作がキャンセルされたことを報知することで、運転者に強制変速又は自動変速が既に始まっていたことを認識させることができる。また、2回目以降の手動操作がキャンセルされた旨については報知を行わないため、報知回数の低減によって煩わしさを与えることなく適切に報知することができる。
【実施例4】
【0043】
次に、実施例4について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。実施例1では、(|m−n|+1)回目のカウントのみ報知したが、実施例4では、イナーシャフェーズ開始後は全て報知し、イナーシャフェーズ開始前は、全てのキャンセル情報を報知しない点が異なる。
【0044】
〔インフォメーション制御処理〕
図12は図5のステップS100において実行される実施例4のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
ステップS9では、手動操作による変速指令を拒否したか否かを判断し、拒否した場合にはステップS10に進み、それ以外のときは本制御フローを終了する。
ステップS10では、強制変速中に、この強制変速による変速段と同一方向の手動操作による変速指令が成されたか否かを判断し、同一方向の手動操作をした場合にはステップS120に進み、同一方向の手動操作をしていない場合には、キャンセルによる報知をしたとしても運転者に違和感を与えないため、ステップS13に進む。
【0045】
ステップS120では、強制変速中に手動操作による変速指令を拒否したタイミングがイナーシャフェーズ開始後か否かを判断し、イナーシャフェーズ開始後の場合はステップS13に進み、イナーシャフェーズ開始前のときは何らインフォメーションを行うことなく本制御フローを終了する。言い換えると、カウントされる手動操作回数より少ない回数の報知を行う。
ステップS13では、ブザー30を鳴らし、手動変速指令をキャンセルした旨のインフォメーションを行う(報知手段)。言い換えると、アップシフトの場合でも、ダウンシフトの場合でも、イナーシャフェーズ開始後は手動操作を全てキャンセルした旨の報知を行う。
【0046】
次に、上記制御フローに基づく作用について説明する。図13は実施例4の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。初期条件として手動変速モードが選択され、第n速が選択されているときに、エンジン回転数がオーバーレブによって強制的にアップシフト変速が実行される状態を表す。
【0047】
時刻t1において、第n速が選択されているときに、オーバーレブ状態となり、強制的にアップシフト指令が出力されると、NxtGpが第(n+1)速に(=第m速)変更される。変速指令が出力されると、まず、自動変速機内の第n速を達成する解放側締結要素の締結圧が所定圧まで下げられ、第(n+1)速(=第m速)を達成する締結側締結要素の締結圧が所定圧まで上昇する指令が出力される。
【0048】
時刻t21において、解放側締結要素の締結圧が残った状態で締結側締結要素の締結圧が上昇し、締結容量を持ち始めると、トルクフェーズが開始される。
時刻t22において、強制変速に伴い実際にギア比が変化する前段階(トルクフェーズ)において、運転者の手動操作によってアップシフト信号が出力されると、強制変速により変速する方向と同一方向の変速指令であるため変速指令はキャンセルされ、強制変速中におけるイナーシャフェーズ開始前であるため、手動操作による変速がキャンセルされた旨の報知は行わない。このとき、実際の制御では、強制変速に伴うアップシフトが実行され、手動操作による変速指令はキャンセルされるものの、運転者は、自分の手動操作によって変速が行われると認識することができ、違和感は生じない。
【0049】
時刻t3において、実ギア比が変化し始めるイナーシャフェーズが開始する。
時刻t4において、運転者が再度手動操作を行うと、イナーシャフェーズ開始後の手動操作であるため、手動操作によるアップシフト指令をキャンセルする旨の報知を行う。このとき、実ギア比が変化しているため、エンジン回転数等が実際に変化している状況であることから、運転者はまだ自動変速機が変速中である状態で手動操作を行ったため、手動操作による変速指令がキャンセルされたと認識することができ、違和感は生じない。
【0050】
同様に、時刻t5において、やはりイナーシャフェーズ開始後の手動操作が行われた場合にも、手動操作によるアップシフト指令をキャンセルする旨の報知を行う。この時点でも、エンジン回転数等が実際に変化している状況であるため、運転者は何故キャンセルされたかを認識することができ、違和感は生じない。
時刻t6において、イナーシャフェーズが終了すると、CurGpが第(n+1)速となり、変速を終了する。
【0051】
以上説明したように、実施例4にあっては、実施例1の作用効果(1)に加えて、下記の作用効果を得ることができる。
(5)ステップS120,S13(報知手段)は、自動変速又は強制変速のイナーシャフェーズ開始以降のカウントは全て報知し、該イナーシャフェーズ開始前のカウントは全て報知しない。
自動変速又は強制変速が行われていることを認識できる運転状態(エンジン回転数が変化するイナーシャフェーズ開始以降)で手動操作が行われたときは、手動操作によらない変速(自動変速又は強制変速)が行われていることを運転者が認識できる。従って、イナーシャフェーズ開始後に行われた手動操作が全てキャンセルされたことを報知することで、運転者は手動操作が全てキャンセルされていることを認識することができ、運転者に与える違和感を低減することができる。
【実施例5】
【0052】
次に、実施例5について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。実施例1では、(|m−n|+1)回目のカウントのみ報知したが、実施例5では、トルクフェーズ開始後は全て報知し、トルクフェーズ開始前は、全てのキャンセル情報を報知しない点が異なる。
〔インフォメーション制御処理〕
図14は図5のステップS100において実行される実施例5のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
ステップS9では、手動操作による変速指令を拒否したか否かを判断し、拒否した場合にはステップS10に進み、それ以外のときは本制御フローを終了する。
ステップS10では、強制変速中に、この強制変速による変速段と同一方向の手動操作による変速指令が成されたか否かを判断し、同一方向の手動操作をした場合にはステップS130に進み、同一方向の手動操作をしていない場合には、キャンセルによる報知をしたとしても運転者に違和感を与えないため、ステップS13に進む。
【0053】
ステップS130では、強制変速中に手動操作による変速指令を拒否したタイミングがトルクフェーズ開始後か否かを判断し、トルクフェーズ開始後の場合はステップS13に進み、トルクフェーズ開始前のときは何らインフォメーションを行うことなく本制御フローを終了する。言い換えると、カウントされる手動操作回数より少ない回数の報知を行う。
ステップS13では、ブザー30を鳴らし、手動変速指令をキャンセルした旨のインフォメーションを行う(報知手段)。言い換えると、アップシフトの場合でも、ダウンシフトの場合でも、トルクフェーズ開始後は手動操作を全てキャンセルした旨の報知を行う。
【0054】
次に、上記制御フローに基づく作用について説明する。図15は実施例5の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。初期条件として手動変速モードが選択され、第n速が選択されているときに、エンジン回転数がオーバーレブによって強制的にアップシフト変速が実行される状態を表す。
【0055】
時刻t1において、第n速が選択されているときに、オーバーレブ状態となり、強制的にアップシフト指令が出力されると、NxtGpが第(n+1)速に変更される。変速指令が出力されると、まず、自動変速機内の第n速を達成する解放側締結要素の締結圧が所定圧まで下げられ、第(n+1)速を達成する締結側締結要素の締結圧が所定圧まで上昇する指令が出力される。
【0056】
時刻t11において、運転者による手動操作が行われると、強制変速により変速する方向と同一方向の変速指令であるため変速指令はキャンセルされ、強制変速中におけるトルクフェーズ開始前であるため、手動操作による変速がキャンセルされた旨の報知は行わない。このとき、実際の制御では、強制変速に伴うアップシフトが実行され、手動操作による変速指令はキャンセルされるものの、運転者は、自分の手動操作によって変速が行われると認識することができ、違和感は生じない。
【0057】
時刻t21において、解放側締結要素の締結圧が残った状態で締結側締結要素の締結圧が上昇し、締結容量を持ち始めると、トルクフェーズが開始される。このトルクフェーズでは、まだ実ギア比は変化しておらずエンジン回転数の変化は感じられないが、解放側締結要素と締結側締結要素の両方が締結容量を持つことで、トルクの引き込みが若干発生する。このトルクの引き込みにより運転者は変速が開始していることを認識できる状態となる。
【0058】
時刻t22において、強制変速に伴い実際にギア比が変化する前段階(トルクフェーズ)において、運転者の手動操作によってアップシフト信号が出力されると、強制変速により変速する方向と同一方向の変速指令であるため変速指令はキャンセルされ、強制変速中におけるトルクフェーズ開始後であるため、手動操作による変速がキャンセルされた旨の報知を行う。すなわち、トルクフェーズの開始によって運転者は変速が開始していることを認識でき、その上で手動操作による変速指令はキャンセルされたと認識できるため、違和感は生じない。
【0059】
時刻t3において、実ギア比が変化し始めるイナーシャフェーズが開始する。
時刻t4において、運転者が再度手動操作を行うと、イナーシャフェーズ開始後の手動操作であるため、手動操作によるアップシフト指令をキャンセルする旨の報知を行う。このとき、実ギア比が変化しているため、エンジン回転数等が実際に変化している状況であることから、運転者はまだ自動変速機が変速中である状態で手動操作を行ったため、手動操作による変速指令がキャンセルされたと認識することができ、違和感は生じない。
時刻t5において、イナーシャフェーズが終了すると、CurGpが第(n+1)速となり、変速を終了する。
【0060】
以上説明したように、実施例5にあっては、実施例1の作用効果(1)に加えて、下記の作用効果を得ることができる。
(6)ステップS130,S13(報知手段)は、自動変速又は強制変速のトルクフェーズ開始以降のカウントは全て報知し、該トルクフェーズ開始前のカウントは全て報知しない。
自動変速又は強制変速が行われていることを認識できる運転状態(駆動トルクに引き込み等が発生するトルクフェーズ以降、エンジン回転数が変化するイナーシャフェーズ中も含む)で手動操作が行われたときは、手動操作によらない変速(自動変速又は強制変速)が行われていることを運転者が認識できる。従って、トルクフェーズ開始後に行われた手動操作が全てキャンセルされたことを報知することで、運転者に与える違和感を低減することができる。
【実施例6】
【0061】
次に、実施例6について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。実施例1では、(|m−n|+1)回目のカウントのみ報知したが、実施例6では、イナーシャフェーズ開始前にあっては(|m−n|+1)回目のカウントを一回だけ報知し、イナーシャフェーズ開始後はイナーシャフェーズ開始前に一回でも報知していれば報知せず、一回も報知していないときは一回だけ報知する点が異なる。
〔インフォメーション制御処理〕
図16は図5のステップS100において実行される実施例6のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
ステップS9では、手動操作による変速指令を拒否したか否かを判断し、拒否した場合にはステップS10に進み、それ以外のときは本制御フローを終了する。
ステップS10では、強制変速中に、この強制変速による変速段と同一方向の手動操作による変速指令が成されたか否かを判断し、同一方向の手動操作をした場合にはステップS120に進み、同一方向の手動操作をしていない場合には、キャンセルによる報知をしたとしても運転者に違和感を与えないため、ステップS13に進む。
【0062】
ステップS120では、強制変速中に手動操作による変速指令を拒否したタイミングがイナーシャフェーズ開始後か否かを判断し、イナーシャフェーズ開始後の場合はステップS122に進み、イナーシャフェーズ開始前のときはステップS121に進む。
【0063】
ステップS121では、強制変速中に手動操作による変速指令を拒否した回数をカウントし(カウント手段)、カウント回数が(|n−m|+1)回目か否かを判断し、(|n−m|)回目の場合は何らインフォメーションを出すことなく(報知せず)、本制御フローを終了する。一方、カウント回数が(|n−m|+1)回目以降のときはステップS122に進む。言い換えると、カウントされる手動操作回数より少ない回数の報知を行う。
ステップS122では、強制変速中に一回でもキャンセル情報をインフォメーションしたか否かを判断し、一回もしていない場合はステップS13に進み、一回インフォメーションした場合には本制御フローを終了する。言い換えると、アップシフトの場合でも、ダウンシフトの場合でも、第n速から第m速への強制変速時において、イナーシャフェーズ開始前にあっては、手動操作の(|n−m|+1)回目のカウントのみキャンセルした旨を報知する。
【0064】
また、ステップS120においてイナーシャフェーズ開始後と判断された後、ステップS122に移行してきた場合には、イナーシャフェーズ開始前に一回でも報知している場合には報知せず、一回も報知することなくイナーシャフェーズを開始した後に手動操作をキャンセルした場合には、一回だけ報知する。
【0065】
ステップS13では、ブザー30を鳴らし、手動変速指令をキャンセルした旨のインフォメーションを行う(報知手段)。
【0066】
次に、上記制御フローに基づく作用について説明する。図17は実施例6の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。初期条件として手動変速モードが選択され、第n速が選択されているときに、エンジン回転数がオーバーレブによって強制的にアップシフト変速が実行される状態を表す。尚、図17(a)は、イナーシャフェーズ開始後に一回だけ手動操作がキャンセルされた場合(以下、Aパターン)を示し、図17(b)はイナーシャフェーズ開始前に2回キャンセルされ、イナーシャフェーズ開始後に1回キャンセルされた場合(以下、Bパターン)を示し、図17(c)はイナーシャフェーズ開始前に3回キャンセルされ、イナーシャフェーズ開始後に1回キャンセルされた場合(以下、Cパターン)を示す。
【0067】
(Aパターンの動作)
時刻t1において、第n速が選択されているときに、オーバーレブ状態となり、強制的にアップシフト指令が出力されると、NxtGpが第(n+1)速に変更される。変速指令が出力されると、まず、自動変速機内の第n速を達成する解放側締結要素の締結圧が所定圧まで下げられ、第(n+1)速を達成する締結側締結要素の締結圧が所定圧まで上昇する指令が出力される。
時刻t2において、解放側締結要素の締結圧が残った状態で締結側締結要素の締結圧が上昇し、締結容量を持ち始めると、トルクフェーズが開始される。
【0068】
時刻t3において、実ギア比が変化し始めるイナーシャフェーズが開始する。
時刻t4において、運転者が手動操作を行うと、今回の強制変速において一回目の手動変速であり、イナーシャフェーズ開始後の手動操作であるため、手動操作によるアップシフト指令をキャンセルする旨の報知を行う。このとき、実ギア比が変化しているため、エンジン回転数等が実際に変化している状況であることから、運転者はまだ自動変速機が変速中である状態で手動操作を行ったため、手動操作による変速指令がキャンセルされたと認識することができ、違和感は生じない。
時刻t5において、イナーシャフェーズが終了すると、CurGpが第(n+1)速となり、変速を終了する。
【0069】
(Bパターンの動作)
時刻t1はパターンAと同じであるため、説明を省略する。
時刻t2において、解放側締結要素の締結圧が残った状態で締結側締結要素の締結圧が上昇し、締結容量を持ち始めると、トルクフェーズが開始される。このトルクフェーズでは、まだ実ギア比は変化しておらずエンジン回転数の変化は感じられないが、解放側締結要素と締結側締結要素の両方が締結容量を持つことで、トルクの引き込みが若干発生する。このトルクの引き込みにより運転者は変速が開始していることを認識できる状態となる。
【0070】
時刻t21において、強制変速に伴い実際にギア比が変化する前段階(トルクフェーズ)において、運転者の手動操作によってアップシフト信号が出力されると、強制変速により変速する方向と同一方向の変速指令であるため変速指令はキャンセルされ、強制変速中におけるトルクフェーズ開始後である。このとき、運転者は、アップシフト変速指令が受け付けられ、今後変速が実行されると認識するが、実際の制御では、強制変速に伴うアップシフトが実行され、手動操作によるアップシフト指令はキャンセルされることになる。しかし、運転者の認識と実際の自動変速機の変速状況とが一致しているため、報知せずとも違和感は生じない。
【0071】
時刻t22において、トルクフェーズ中に再度手動変速が行われたため、手動操作による変速がキャンセルされた旨の報知を行う。すなわち、トルクフェーズの開始によって運転者は変速が開始していることを認識でき、その上で手動操作による変速指令はキャンセルされたと認識できるため、違和感は生じない。
【0072】
時刻t3において、実ギア比が変化し始めるイナーシャフェーズが開始する。
時刻t4において、運転者が手動操作を行うと、今回の強制変速において一回目の手動変速ではないため、イナーシャフェーズ開始後の手動操作であったとしても、手動操作によるアップシフト指令をキャンセルする旨の報知は行わない。運転者による手動操作は、短時間のうちに繰り返し行われることがある。このとき、運転者としては報知回数をその都度数えているわけではなく、キャンセルした回数に応じて全て報知すると、何度も報知が繰り返されることによる煩わしさを感じてしまう。また、変速が実行されれば、トルクフェーズ時のトルクの引きやイナーシャフェーズ時のエンジン回転数の変化などによって現在変速中であることが認識でき、「変速中の手動操作はキャンセルされた」ということが時刻t22における一度の報知によって認識できれば、何回キャンセルされたかを知る必要は無い。よって、一回のみ報知することで運転者に煩わしさを与えることがない。
時刻t5において、イナーシャフェーズが終了すると、CurGpが第(n+1)速となり、変速を終了する。
【0073】
(Cパターンの動作)
時刻t1はパターンAと同じであるため、説明を省略する。
時刻t11において、強制変速に伴い実際に出力軸トルク変動やギア比が変化する前段階(前処理)において、運転者の手動操作によってアップシフト信号が出力されると、強制変速により変速する方向と同一方向の変速指令であるため変速指令はキャンセルされる。このとき、運転者は、アップシフト変速指令が受け付けられ、今後変速が実行されると認識するが、実際の制御では、強制変速に伴うアップシフトが実行され、手動操作によるアップシフト指令はキャンセルされることになる。しかし、運転者の認識と実際の自動変速機の変速状況とが一致しているため、報知せずとも違和感は生じない。
【0074】
時刻t2において、解放側締結要素の締結圧が残った状態で締結側締結要素の締結圧が上昇し、締結容量を持ち始めると、トルクフェーズが開始される。このトルクフェーズでは、まだ実ギア比は変化しておらずエンジン回転数の変化は感じられないが、解放側締結要素と締結側締結要素の両方が締結容量を持つことで、トルクの引き込みが若干発生する。このトルクの引き込みにより運転者は変速が開始していることを認識できる状態となる。
【0075】
時刻t21において、強制変速に伴い実際にギア比が変化する前段階(トルクフェーズ)において、運転者の手動操作によってアップシフト信号が出力されると、強制変速により変速する方向と同一方向の変速指令であるため変速指令はキャンセルされる。このとき、運転者は、イナーシャフェーズ開始前に再度手動変速が行われたため、手動操作による変速がキャンセルされた旨の報知を行う。すなわち、トルクフェーズの開始によって運転者は変速が開始していることを認識でき、その上で手動操作による変速指令はキャンセルされたと認識できるため、違和感は生じない。
【0076】
時刻t22において、強制変速に伴い実際にギア比が変化する前段階(トルクフェーズ)において、再度運転者の手動操作によってアップシフト信号が出力されると、強制変速により変速する方向と同一方向の変速指令であるため変速指令はキャンセルされる。運転者が手動操作を行うと、今回の強制変速において一回目の手動変速ではないため、手動操作によるアップシフト指令をキャンセルする旨の報知は行わない。よって、一回のみ報知することで運転者に煩わしさを与えることがない。
【0077】
時刻t3において、実ギア比が変化し始めるイナーシャフェーズが開始する。
時刻t4において、運転者が手動操作を行うと、今回の強制変速において一回目の手動変速ではないため、イナーシャフェーズ開始後の手動操作であったとしても、手動操作によるアップシフト指令をキャンセルする旨の報知は行わない。よって、一回のみ報知することで運転者に煩わしさを与えることがない。
時刻t5において、イナーシャフェーズが終了すると、CurGpが第(n+1)速となり、変速を終了する。
【0078】
以上説明したように、実施例6にあっては、実施例1の作用効果(1)に加えて、下記の作用効果を得ることができる。
(7)ステップS120,S121,S122,S13(報知手段)は、自動変速又は強制変速のイナーシャフェーズ開始前はステップS121(カウント手段)による(|m−n|+1)回目のカウントのみ報知し(ステップS120→S121→S122→S13)、イナーシャフェーズ開始前の報知が無い場合であってイナーシャフェーズ開始以降は少なくとも1回目のカウントを報知し(ステップS120→S122→S13)、イナーシャフェーズ開始前に報知した場合にはイナーシャフェーズ開始以降は報知しない(ステップS120→S122→END)。
【0079】
すなわち、手動操作回数と実際の変速回数との間に乖離が生じていない間は報知せず、乖離が生じた場合、その乖離したときの手動操作キャンセルに伴う報知のみ行い、それ以降の手動操作キャンセルに伴う報知は行わないことで、自動変速や強制変速による変速を「運転者による手動操作により行われた」と認識させつつ、報知回数の低減によって煩わしさを与えることなく適切に報知することができる。
【0080】
加えて、自動変速又は強制変速が行われていることを認識できる運転状態(エンジン回転数が変化するイナーシャフェーズ開始以降)で手動操作が行われたときは、手動操作によらない変速(自動変速又は強制変速)が行われていることを運転者が認識できる。従って、イナーシャフェーズ開始後に行われた手動操作がキャンセルされたことを報知することで、運転者に与える違和感を低減することができる。また、既にキャンセルする旨の報知を行った後であれば、変速中であると認識できるイナーシャフェーズ中では再度の通知は不要なため、報知しないことで煩わしさを低減することができる。
【実施例7】
【0081】
次に、実施例7について説明する。基本的な構成は実施例6と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。実施例1では、(|m−n|+1)回目のカウントのみ報知したが、実施例7では、イナーシャフェーズ開始前にあっては(|m−n|+1)回目のカウントを一回だけ報知し、イナーシャフェーズ開始後はイナーシャフェーズ開始前に一回でも報知していれば報知せず、イナーシャフェーズ開始前に一回も報知していないときは全て報知する点が異なる。実施例6との関係で比較すると、イナーシャフェーズ開始前に一回も報知していないときはイナーシャフェーズ後のキャンセルは全て報知する点が異なる。
〔インフォメーション制御処理〕
図18は図5のステップS100において実行される実施例7のインフォメーション制御処理を表すフローチャートである。
ステップS9では、手動操作による変速指令を拒否したか否かを判断し、拒否した場合にはステップS10に進み、それ以外のときは本制御フローを終了する。
ステップS10では、強制変速中に、この強制変速による変速段と同一方向の手動操作による変速指令が成されたか否かを判断し、同一方向の手動操作をした場合にはステップS120に進み、同一方向の手動操作をしていない場合には、キャンセルによる報知をしたとしても運転者に違和感を与えないため、ステップS13に進む。
【0082】
ステップS130では、強制変速中に手動操作による変速指令を拒否したタイミングがイナーシャフェーズ開始後か否かを判断し、イナーシャフェーズ開始後の場合はステップS131に進み、イナーシャフェーズ開始前のときはステップS121に進む。
【0083】
ステップS121では、強制変速中に手動操作による変速指令を拒否した回数をカウントし(カウント手段)、カウント回数が(|n−m|+1)回目か否かを判断し、(|n−m|)回目の場合は何らインフォメーションを出すことなく(報知せず)、本制御フローを終了する。一方、カウント回数が(|n−m|+1)回目以降のときはステップS122に進む。言い換えると、カウントされる手動操作回数より少ない回数の報知を行う。
ステップS122では、強制変速中に一回でもキャンセル情報をインフォメーションしたか否かを判断し、一回もしていない場合はステップS13に進み、一回インフォメーションした場合には本制御フローを終了する。言い換えると、アップシフトの場合でも、ダウンシフトの場合でも、第n速から第m速への強制変速時において、イナーシャフェーズ開始前にあっては、手動操作が(|n−m|+1)回目のカウントのみキャンセルした旨を報知する。
【0084】
ステップS131では、イナーシャフェーズ前に一回でもキャンセル情報をインフォメーションしたか否かを判断し、一回もしていない場合はステップS13に進み、一回インフォメーションした場合には本制御フローを終了する。言い換えると、イナーシャフェーズ開始前に一回でも報知していれば報知せず、一回も報知していないときは全て報知する。
【0085】
ステップS13では、ブザー30を鳴らし、手動変速指令をキャンセルした旨のインフォメーションを行う(報知手段)。言い換えると、アップシフトの場合でも、ダウンシフトの場合でも、手動操作がイナーシャフェーズ開始後は全てキャンセルした旨の報知を行う。
【0086】
次に、上記制御フローに基づく作用について説明する。図19は実施例7の変速キャンセル時報知制御処理を表すタイムチャートである。尚、図19(a)は、イナーシャフェーズ開始後に二回手動操作がキャンセルされた場合(以下、Aパターン)を示し、図19(b)はイナーシャフェーズ開始前に3回キャンセルされ、イナーシャフェーズ開始後に二回キャンセルされた場合(以下、Bパターン)を示す。
【0087】
(Aパターンの動作)
時刻t1において、第n速が選択されているときに、オーバーレブ状態となり、強制的にアップシフト指令が出力されると、NxtGpが第(n+1)速に変更される。変速指令が出力されると、まず、自動変速機内の第n速を達成する解放側締結要素の締結圧が所定圧まで下げられ、第(n+1)速を達成する締結側締結要素の締結圧が所定圧まで上昇する指令が出力される。
時刻t2において、解放側締結要素の締結圧が残った状態で締結側締結要素の締結圧が上昇し、締結容量を持ち始めると、トルクフェーズが開始される。
【0088】
時刻t3において、実ギア比が変化し始めるイナーシャフェーズが開始する。
時刻t4において、運転者が手動操作を行うと、今回の強制変速において一回目の手動変速であり、イナーシャフェーズ開始後の手動操作であるため、手動操作によるアップシフト指令をキャンセルする旨の報知を行う。このとき、実ギア比が変化しているため、エンジン回転数等が実際に変化している状況であることから、運転者はまだ自動変速機が変速中である状態で手動操作を行ったため、手動操作による変速指令がキャンセルされたと認識することができ、違和感は生じない。その後、再度イナーシャフェーズ開始後に手動操作がなされると、やはり手動操作による変速指令がキャンセルされたと認識できるため、手動操作によるアップシフト指令をキャンセルする旨の報知を行う。
時刻t5において、イナーシャフェーズが終了すると、CurGpが第(n+1)速となり、変速を終了する。
【0089】
(Bパターンの動作)
時刻t1はパターンAと同じであるため、説明を省略する。
時刻t11において、強制変速に伴い実際に出力軸トルク変動やギア比が変化する前段階(前処理)において、運転者の手動操作によってアップシフト信号が出力されると、強制変速により変速する方向と同一方向の変速指令であるため変速指令はキャンセルされる。このとき、運転者は、アップシフト変速指令が受け付けられ、今後変速が実行されると認識するが、実際の制御では、強制変速に伴うアップシフトが実行され、手動操作によるアップシフト指令はキャンセルされることになる。しかし、運転者の認識と実際の自動変速機の変速状況とが一致しているため、報知せずとも違和感は生じない。
【0090】
時刻t2において、解放側締結要素の締結圧が残った状態で締結側締結要素の締結圧が上昇し、締結容量を持ち始めると、トルクフェーズが開始される。このトルクフェーズでは、まだ実ギア比は変化しておらずエンジン回転数の変化は感じられないが、解放側締結要素と締結側締結要素の両方が締結容量を持つことで、トルクの引き込みが若干発生する。このトルクの引き込みにより運転者は変速が開始していることを認識できる状態となる。
【0091】
時刻t21において、強制変速に伴い実際にギア比が変化する前段階(トルクフェーズ)において、運転者の手動操作によってアップシフト信号が出力されると、強制変速により変速する方向と同一方向の変速指令であるため変速指令はキャンセルされる。このとき、運転者は、イナーシャフェーズ開始前に再度手動変速が行われたため、手動操作による変速がキャンセルされた旨の報知を行う。すなわち、トルクフェーズの開始によって運転者は変速が開始していることを認識でき、その上で手動操作による変速指令はキャンセルされたと認識できるため、違和感は生じない。
【0092】
時刻t22において、強制変速に伴い実際にギア比が変化する前段階(トルクフェーズ)において、再度運転者の手動操作によってアップシフト信号が出力されると、強制変速により変速する方向と同一方向の変速指令であるため変速指令はキャンセルされる。運転者が手動操作を行うと、今回の強制変速において一回目の手動変速ではないため、手動操作によるアップシフト指令をキャンセルする旨の報知は行わない。よって、一回のみ報知することで運転者に煩わしさを与えることがない。
【0093】
時刻t3において、実ギア比が変化し始めるイナーシャフェーズが開始する。
時刻t4において、運転者が手動操作を行うと、イナーシャフェーズ開始前に一回報知しているため、イナーシャフェーズ開始後の手動操作であったとしても、手動操作によるアップシフト指令をキャンセルする旨の報知は行わない。その後、再度手動操作が行われた場合にも、イナーシャフェーズ開始前に一回報知しているため、やはり報知することはない。よって、一回のみ報知することで運転者に煩わしさを与えることがない。
時刻t5において、イナーシャフェーズが終了すると、CurGpが第(n+1)速となり、変速を終了する。
【0094】
以上説明したように、実施例7にあっては、実施例1の作用効果(1),(2)に加えて、下記の作用効果を得ることができる。
(8)ステップS130,S131,S121,S122,S13(報知手段)は、自動変速又は強制変速のイナーシャフェーズ開始前はステップS121(カウント手段)による(|m−n|+1)回目のカウントのみ報知し(ステップS120→S121→S122→S13)、イナーシャフェーズ開始前に一回でも報知していればイナーシャフェーズ開始後は報知せず(ステップS130→S131→終了)、イナーシャフェーズ開始前に一回も報知していない場合はイナーシャフェーズ開始以降は全て報知する(ステップS130→S131→S13)。
【0095】
すなわち、イナーシャフェーズ開始前にあっては、手動操作回数と実際の変速回数との間に乖離が生じていない間は報知せず、乖離が生じた場合、その乖離したときの手動操作キャンセルに伴う報知のみ行い、それ以降の手動操作キャンセルに伴う報知は行わないことで、自動変速や強制変速による変速を「運転者による手動操作により行われた」と認識させつつ、報知回数の低減によって煩わしさを与えることなく適切に報知することができる。
【0096】
加えて、自動変速又は強制変速が行われていることを認識できる運転状態(エンジン回転数が変化するイナーシャフェーズ開始以降)で手動操作が行われたときは、手動操作によらない変速(自動変速又は強制変速)が行われていることを運転者が認識できる。従って、イナーシャフェーズ開始後に行われた手動操作がキャンセルされたことを報知することで、運転者に与える違和感を低減することができる。また、イナーシャフェーズ開始前に既にキャンセルする旨の報知を行った後であれば、変速中であると認識できるイナーシャフェーズ中では再度の通知は不要なため、報知しないことで煩わしさを低減することができる。
【0097】
以上、実施例1〜7について説明したが、本願発明は上記構成に限られず、他の構成であっても構わない。
【0098】
上記各実施例では、「M」レンジが選択されたときにおける手動変速モードにおいて、強制変速が行われるときのキャンセル処理を主眼に説明したが、自動変速モードを選択時における自動変速時において、ステアリングホイール26に備えられたシフトスイッチ27や、ステアリングコラム28に備えられたレバー型のシフトスイッチ29からの手動操作によりシフト信号が出力されたときにも、同様に適用できる。
その場合は、「M」レンジが選択されていない場合であっても、自動変速中に手動操作が行われたときに各実施例記載の処理を実行すればよい。
【0099】
各実施例の強制変速や自動変速は、第2速から第3速への変速といった一段変速の場合も有れば、第2速から第4速への変速といった飛び変速の場合も含まれる。
【0100】
実施例4では、イナーシャフェーズ開始後は全て報知する構成としたが、この構成に実施例2,3の構成を組み合わせ、イナーシャフェーズ開始前は手動操作と実際の変速回数との乖離が生じたときに以降に報知する、もしくは乖離が生じたときのみ報知する、もしくは乖離に関係なく一回だけ報知するような構成としてもよい。
【0101】
実施例6では、ステップ120においてイナーシャフェーズ開始前後か否かに基づいて判断したが、トルクフェーズ開始前後か否かに基づいて判断してもよい。
【0102】
各実施例では有段式自動変速機に適用した例を示したが、無段変速機であって手動変速モードを備えている構成であれば、同様に適用できる。
【符号の説明】
【0103】
10 エンジン
11 自動変速機
12 エンジン用電子制御装置
13 スロットル開度センサ
14 車速センサ
15 変速用電子制御装置
16 操作位置センサ
17 シフトレバー
18 アップシフトスイッチ
19 ダウンシフトスイッチ
24 セレクトレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された変速マップに基づいて変速を行う自動変速モードと、
運転者の手動操作に基づいて変速を行う手動変速モードと、
前記自動変速モードが選択され、前記変速マップによる自動変速中、又は、前記手動変速モードが選択され、前記手動操作に係らず行われる強制変速中、前記自動変速又は手動変速と同方向の手動操作が行われたとき、前記手動操作に基づく変速を全てキャンセルするキャンセル手段と、
前記キャンセル手段により前記手動操作に基づく変速がキャンセルされた回数をカウントするカウント手段と、
前記手動操作に基づく変速がキャンセルされたことを運転者に報知するにあたり、前記カウント手段により複数回カウントされたときは、該カウント数より少ない回数を運転者に報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動変速機の制御装置において、
前記報知手段は、前記カウント手段による1回目のカウントのみ報知することを特徴とすることを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動変速機の制御装置において、
前記報知手段は、前記自動変速又は強制変速が第n速から第m速への変速である場合、前記カウント手段による(|m−n|+1)回目のカウントのみ報知することを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動変速機の制御装置において、
前記報知手段は、前記自動変速又は強制変速が第n速から第m速への変速である場合、前記カウント手段による(|m−n|+1)回目以降のカウントを全て報知することを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動変速機の制御装置において、
前記報知手段は、前記自動変速又は強制変速のイナーシャフェーズ開始以降のカウントは全て報知し、該イナーシャフェーズ開始前のカウントは全て報知しないことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動変速機の制御装置において、
前記報知手段は、前記自動変速又は強制変速のトルクフェーズ開始以降のカウントは全て報知し、該トルクフェーズ開始前のカウントは全て報知しないことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の自動変速機の制御装置において、
前記自動変速又は強制変速が第n段から第m段への変速である場合、
前記報知手段は、前記自動変速又は強制変速のイナーシャフェーズ開始前は前記カウント手段による(|m−n|+1)回目のカウントのみ報知し、該イナーシャフェーズ開始前の報知が無い場合であって該イナーシャフェーズ開始以降は少なくとも1回目のカウントを報知し、該イナーシャフェーズ開始前に報知した場合は該イナーシャフェーズ開始以降は報知しないことを特徴とする自動変速機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−196419(P2011−196419A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61824(P2010−61824)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】