説明

自動変速機の変速制御装置

【課題】モータ伝動系の自動変速機が、アクセルペダルおよびブレーキペダル間の踏み替えによっても、反復変速を行うことのないようにする。
【解決手段】t1より、アクセルペダル釈放操作(アクセルペダルストローク量STaccの0への低下)によりモータトルクを0に向け低下させる間、t2に、目標変速段が高速段となり、トルク低下に伴うアップシフト変速要求が発生する。しかし、この変速要求を、t2から遅延時間TMsが経過するt3まで実行せず、t3に至ってはじめて当該変速要求を実行し、自動変速機を現在の低速段選択状態からから高速段へとアップシフトさせる。よって、トルク低下(アクセルペダル釈放)応答のアップシフト変速要求瞬時t2の直後(t2〜t3)に、ブレーキ操作によるモータ回生トルクの増大要求があっても、これに呼応した変速が発生せず、低速段→高速段→低速段の反復変速が短時間のうちに発生するのを回避可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の変速制御装置に関し、特に、電動モータからの動力を伝達する伝動系に挿置された自動変速機の変速品質を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かようにモータ伝動系に挿置した自動変速機の変速制御技術としては従来、例えば特許文献1に記載のごとく、電動モータの要求モータトルクに応じて自動変速機を変速制御する技術が知られている。
【0003】
この特許文献1に記載のものに代表される従来の変速制御技術は、制動時であれば、ブレーキ操作に基づいて、電動モータの回生制動(負の要求モータトルク)により実現すべき目標減速度を求め、これを実現可能な自動変速機の変速段と、変速機出力回転速度との関係マップを基に、現在の変速機出力回転速度から、目標減速度を実現可能な要求変速段を求め、この要求変速段へ自動変速機を変速させるものである。
換言すれば、目標減速度が大きいとき、自動変速機を現在よりもロー側変速段へダウンシフトさせるというものである。
【0004】
また加速時は、アクセル操作に基づいて、電動モータの駆動トルク(正の要求モータトルク)により実現すべき目標駆動力を求め、これを実現可能なロー側変速段へ自動変速機を変速させるものである。
換言すれば、アクセル操作によって目標駆動力が増大するときも、自動変速機を現在よりもロー側変速段へダウンシフトさせるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−224713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上記した従来の変速制御技術では、ブレーキ操作の解除により目標減速度が小さくなるとき、自動変速機をハイ側変速段へとアップシフトさせることとなる。
ところで、ブレーキ操作の解除により目標減速度が小さくなった後は、その直後にアクセル操作による加速要求(目標駆動力の増大)が発生する可能性が高く、これに呼応して自動変速機のダウンシフト要求が高い確率で発生することを意味する。
【0007】
従って従来の変速制御技術によると、上記のような運転操作が行われたとき、自動変速機が一旦アップシフトしたものの、その直後にダウンシフトするというような反復変速(例えば1速→2速→1速のような変速)が短時間のうちに繰り返され、違和感を与えるだけでなく、短時間のうちに複数回の変速ショックが発生し、いずれにしても変速品質の低下に関する問題を免れない。
【0008】
本発明は、上記のような運転操作が行われたときも、自動変速機が短時間のうちに上記の反復変速を行うことのないようにして、変速品質の低下に関する上記の問題を回避し得るようにした自動変速機の変速制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明による自動変速機の変速制御装置は、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の前提となる自動変速機の変速制御装置を説明するに、これは、
電動モータからの動力を伝達する伝動系に挿置された自動変速機に用いられ、該自動変速機を、上記電動モータのモータトルク絶対値に応じ変速制御するようにしたものである。
【0010】
本発明の変速制御装置は、上記に付加して以下のようなトルク低下応答変速要求判定手段およびトルク低下応答変速遅延手段を設けた構成に特徴づけられる。
【0011】
前者のトルク低下応答変速要求判定手段は、上記モータトルク絶対値の低下に伴う上記自動変速機の変速要求を判定するものであり、また、
後者のトルク低下応答変速遅延手段は、前者の手段により判定したトルク低下応答変速要求の実行開始を、該判定時から設定時間が経過する時まで遅延させるものである。
【発明の効果】
【0012】
かかる本発明による自動変速機の変速制御装置にあっては、
モータトルク絶対値の低下に伴う自動変速機の変速要求があっても、これを直ちに実行せず、その実行開始を、当該変速要求時から設定時間が経過する時まで遅延させるため、以下のような効果を得ることができる。
【0013】
つまり、モータトルク絶対値の低下に伴う自動変速機の変速要求があったときは、その直後にモータトルク絶対値の増大を要求する操作を行う可能性が高く、これに呼応して自動変速機の戻り方向への変速要求が高い確率で発生するため、前記したような反復変速が短時間のうちに繰り返され、違和感を与えるだけでなく、短時間のうちに複数回の変速ショックが発生し、いずれにしても変速品質の低下に関する問題を生ずる。
【0014】
しかるに本発明によれば、モータトルク絶対値の低下に伴う変速要求の実行開始を、上記の設定時間だけ遅延させるため、
モータトルク絶対値の低下に伴う変速要求があった直後に、モータトルク絶対値の増大を要求する操作が行われても、これに呼応した自動変速機の変速が生起されことがなく、前記したような反復変速が短時間のうちに繰り返されるのを回避することができる。
従って、かかる反復変速による違和感や、短時間内における複数回の変速ショックに関する問題を生ずることがなく、変速品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例になる変速制御装置を具えた自動変速機を内包するハイブリッド車両の駆動装置を、自動変速機の変速制御システムと共に示す略線図である。
【図2】図1における自動変速機の変速パターンを例示する変速線図である。
【図3】図2において運転点がA1→A2→A3→A4のように変化する場合における変速動作タイムチャートである。
【図4】図2において運転点がB1→B2→B3→B4のように変化する場合における変速動作タイムチャートである。
【図5】図1におけるコントローラが、反復変速防止用に実行する変速制御プログラムを示すフローチャートである。
【図6】図5におけるトルク低下応答アップシフト変速処理に関したサブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】図5の制御プログラムにおいて設定する、アクセルペダル操作速度対応の変速遅延時間を示す変化特性図である。
【図8】図5の制御プログラムにおいて設定する、ブレーキペダル操作速度対応の変速遅延時間を示す変化特性図である。
【図9】図5の変速制御による変速動作タイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<実施例の構成>
図1は、本発明の一実施例になる変速制御装置を具えた自動変速機を内包するハイブリッド車両の駆動装置を示し、これを以下に説明するような構成となす。
【0017】
この駆動装置は動力源として、内燃機関であるエンジン(ENG)1と、主に発電機として用いる第1のモータ/ジェネレータMG1と、電動モータとして用いる第2のモータ/ジェネレータMG2とを有する。
エンジン1および第1のモータ/ジェネレータMG1は相互に同軸にして向かい合わせに配置し、これら両者間に動力分配装置2を、同軸に配して介在させる。
【0018】
動力分配装置2は、中心のサンギヤSGと、これを包囲する同心のリングギヤRGと、これらサンギヤSGおよびリングギヤRGに噛合する複数個のピニオンPGと、これらピニオンPGを回転自在に支持するピニオンキャリアPCとから成る単純遊星歯車組で構成する。
【0019】
エンジン1は、その出力軸(クランクシャフト)4を動力分配装置2のピニオンキャリアPCに結合し、第1のモータ/ジェネレータMG1は、その出力軸5を動力分配装置2のサンギヤSGに結合する。
【0020】
上記のごとく同軸に配置したエンジン1、動力分配装置2およびモータ/ジェネレータMG1の配列軸線に平行に配置して第1軸6および第2軸7をそれぞれ並置する。
電動モータとして用いる第2のモータ/ジェネレータMG2は第2軸7に駆動結合し、該モータ/ジェネレータMG2から第2軸7および第1軸6を順次経てモータ動力を出力する際に用いる自動変速機を、以下のようなロー側変速機構8およびハイ側変速機構9により構成する。
【0021】
ロー側変速機構8は、上記モータ動力の出力に際しロー側伝動経路を選択するためのもので、第1軸6上に配置して設ける。
ハイ側変速機構9は、上記モータ動力の出力に際しハイ側伝動経路を選択するためのもので、第2軸7上に配置して設ける。
【0022】
ロー側変速機構8は、第1軸6上に回転自在に支持した歯車8a、および第2軸7と共に回転する歯車8bより成る低速段歯車組が、第1軸6および第2軸7間を駆動結合するよう、歯車8aを第1軸6に回転係合させたり、この回転係合を解くためのもので、以下のような係合式変速要素としてのドグクラッチ8cにより構成する。
【0023】
ドグクラッチ8cは、歯車8aに設けたクラッチギヤ8dと、第1軸6に結合したクラッチハブ8eと、カップリングスリーブ8fとを具え、クラッチギヤ8dおよびクラッチハブ8eの外周にそれぞれ、同仕様のクラッチ歯を形成する。
【0024】
カップリングスリーブ8fが、クラッチギヤ8dおよびクラッチハブ8eの外周クラッチ歯の双方に噛合した図示の噛み合い位置にあるとき、ドグクラッチ8cは、歯車8aを第1軸6に結合して、モータ/ジェネレータMG2からのモータ動力を歯車8b,8aにより第2軸7から第1軸6へ伝達して出力可能な噛み合い状態となる。
【0025】
カップリングスリーブ8fが図示位置から軸線方向へのシフトにより、クラッチギヤ8dおよびクラッチハブ8eの外周クラッチ歯の一方と噛合しなくなった非噛み合い位置になるとき、ドグクラッチ8cは、歯車8aを第1軸6から切り離して、モータ/ジェネレータMG2からのモータ動力を歯車8b,8aにより第2軸7から第1軸6へ伝達することができない非噛み合い状態となる。
【0026】
カップリングスリーブ8fの軸線方向シフトは、図示せざる油圧アクチュエータによりこれを行うこととする。
【0027】
ハイ側変速機構9は、第2軸7上に回転自在に支持した歯車9a、および第1軸6と共に回転する歯車9bより成る高速段歯車組が、第1軸6および第2軸7間を駆動結合するよう歯車9aを第2軸7に結合したり、歯車9aを第2軸7から切り離すためのもので、以下のような摩擦式変速要素としての摩擦クラッチ9cにより構成する。
摩擦クラッチ9cは、歯車9aと共に回転するドリブン側クラッチディスク9dと、第2軸7と共に回転するドライブ側クラッチディスク9eと、油圧式クラッチピストン9fとを具え、以下のように機能するものである。
【0028】
クラッチピストン9fが油圧により、クラッチディスク9d, 9eを相互に摩擦接触させるよう作動するとき、摩擦クラッチ9cは歯車9aを第2軸7に駆動結合させることにより、モータ/ジェネレータMG2からのモータ動力を歯車9a,9bにより第2軸7から第1軸6へ伝達して出力可能な締結状態となる。
クラッチピストン9fが作動油圧の消失により作動しないことによって、クラッチディスク9d, 9eが相互に摩擦接触されないとき、摩擦クラッチ9cは歯車9aを第2軸7に駆動結合させないことにより、モータ/ジェネレータMG2からのモータ動力を歯車9a,9bにより第2軸7から第1軸6へ伝達することができない解放状態となる。
【0029】
なお、歯車9a,9bのギヤ比は高速段歯車組として機能するよう、低速段歯車組を構成する歯車8b,8a間のギヤ比よりも小さく設定すること勿論である。
そして、動力分配装置2を構成するリングギヤRGの外周に歯車を設定し、この歯車に、高速段歯車組を構成する歯車9bを噛合させて、第1軸6と動力分配装置2のリングギヤRGとの間で動力伝達を行い得るようになす。
【0030】
第1軸6に歯車11を結着し、この歯車11と、これに噛合する歯車12とからなるファイナルドライブギヤ組を介して、ディファレンシャルギヤ装置13を第1軸6に駆動結合する。
これにより、第1軸6に達したモータ/ジェネレータMG2のモータ動力がファイナルドライブギヤ組11,12およびディファレンシャルギヤ装置13を経て左右駆動車輪14(図1では一方の駆動車輪のみを示した)に伝達されるようにする。
【0031】
<実施例の作用>
エンジン1は動力分配装置2を介してモータ/ジェネレータMG1を駆動し、このモータ/ジェネレータMG1が発電した電力を図示せざるバッテリに蓄電する。
モータ/ジェネレータMG2は上記バッテリの電力を得て駆動され、モータ/ジェネレータMG2からのモータ動力が以下のように伝達される。
【0032】
ドグクラッチ8cが、歯車8aを第1軸6に回転係合させない非噛み合い状態であって、モータ/ジェネレータMG2からのモータ動力を歯車8b,8aにより第2軸7から第1軸6へ伝達し得ず、且つ、摩擦クラッチ9cが歯車9aを第2軸7に駆動結合させない解放状態であって、モータ/ジェネレータMG2からのモータ動力を歯車9a,9bにより第2軸7から第1軸6へ伝達し得ない場合、
自動変速機は、モータ動力を駆動車輪に向かわせることのないニュートラル状態であって、車両を停止させることができる。
【0033】
ドグクラッチ8cが、歯車8aを第1軸6に回転係合させた噛み合い状態であって、モータ/ジェネレータMG2からのモータ動力を歯車8b,8aにより第2軸7から第1軸6へ伝達し得る低速段選択時は、
第2軸7へのモータ動力が歯車8b,8a、噛み合い状態のドグクラッチ8c、第1軸6、ファイナルドライブギヤ組11,12、およびディファレンシャルギヤ装置13を経て駆動車輪14に向かうこととなり、自動変速機は低速段で車輪14を駆動して車両を低速走行させることができる。
【0034】
摩擦クラッチ9cが、歯車9aを第2軸7に駆動結合させた締結状態であって、モータ/ジェネレータMG2からのモータ動力を歯車9a,9bにより第2軸7から第1軸6へ伝達し得る高速段選択時は、
第2軸7へのモータ動力が歯車9a,9b、締結状態の摩擦クラッチ9c、第1軸6、ファイナルドライブギヤ組11,12、およびディファレンシャルギヤ装置13を経て駆動車輪14に向かうこととなり、自動変速機は高速段で車輪14を駆動して車両を高速走行させることができる。
【0035】
上記の低速・高速走行中における回生制動時はモータ/ジェネレータMG1に発電負荷を与えることで、車輪14に常時結合されている第1軸6と共に回転する歯車9bにより動力分配装置2を介して駆動されるモータ/ジェネレータMG1が、発電負荷に応じた発電を行って所定の回生制動を行うと共に、このときの発電電力を前記のバッテリに蓄電することができる。
なお、モータ/ジェネレータMG1はかように発電機として用いるだけでなく、モータ/ジェネレータMG2からの動力のみでは動力不足になる運転状態であるとき、動力不足を補完するよう電動モータとしても機能するものとする。
このとき、必要に応じてエンジン1も、当該動力不足を補完するよう運転するものとする。
【0036】
<変速制御システム>
上記した自動変速機の低速段および高速段間での変速を司る変速制御システムを、図1に基づき以下に説明する。
自動変速機の変速に際して行うべき、ドグクラッチ8c(カップリングスリーブ8f)の噛み合い状態および非噛み合い状態間におけるシフト切り替え制御と、摩擦クラッチ9c(クラッチピストン9f)の解放状態および締結状態間における油圧作動制御とを遂行するコントローラ21を設ける。
【0037】
そしてこのコントローラ21には、車速VSPを検出する車速VSPセンサ22からの信号と、アクセルペダルの踏み込みストローク量STaccを検出するアクセルセンサ23からの信号と、ブレーキペダルの踏み込みストローク量STbrkを検出するブレーキセンサ24からの信号とを入力する。
【0038】
コントローラ21は、これら入力情報を用いて、図2に例示する変速マップを基に、以下のごとくに自動変速機を変速制御する。
図2において、太い実線は、車速VSPごとのモータ/ジェネレータMG2の最大モータ駆動トルク値を結んで得られる最大モータ駆動トルク線と、車速VSPごとのモータ/ジェネレータMG2の最大モータ回生トルク値を結んで得られる最大モータ回生トルク線を示し、これらにより囲まれた領域が実用可能領域である。
【0039】
この実用可能領域内に、自動変速機の変速機損失およびモータ/ジェネレータMG2のモータ損失を考慮して、一点鎖線で示す(Low→High)アップシフト線および破線で示す(High→Low)ダウンシフト線を設定する。
(Low→High)アップシフト線は(High→Low)ダウンシフト線よりも、ヒステリシス分だけ高車速側に位置する。
【0040】
アクセルペダルが踏み込まれていればコントローラ21は、アクセルペダル踏み込みストローク量STaccから求めた要求モータ駆動トルクと、車速VSPとを用いて、図2の変速マップを基に、現在の運転状態に好適な目標変速段(低速段または高速段)を求める。
【0041】
ブレーキペダルが踏み込まれていればコントローラ21は、ブレーキペダル踏み込みストローク量STbrkから求めた要求モータ回生トルクと、車速VSPとを用いて、図2の変速マップを基に、現在の運転状態に好適な目標変速段(低速段または高速段)を求める。
【0042】
そしてコントローラ21は、上記のようにして求めた目標変速段が低速段であれば、ドグクラッチ8cを前記の噛み合い状態にして歯車8aを第1軸6に回転係合させると共に、摩擦クラッチ9cを前記の解放状態にして歯車9aを第2軸7から切り離すことにより、モータ/ジェネレータMG2からのモータ動力が歯車8b,8aを経て第2軸7から第1軸6へ伝達される低速段選択状態にする。
【0043】
またコントローラ21は、上記のようにして求めた目標変速段が高速段であれば、摩擦クラッチ9cを前記の締結状態にして歯車9aを第2軸7に駆動結合させると共に、ドグクラッチ8cを前記の非噛み合い状態にして歯車8aを第1軸6から切り離すことにより、モータ/ジェネレータMG2からのモータ動力が歯車9a,9bを経て第2軸7から第1軸6へ伝達される高速段選択状態にする。
【0044】
そしてコントローラ21は、低速段選択状態(実変速段=低速段)である場合、実用可能領域内の運転点が(Low→High)アップシフト線を超えてハイ(High)側変速段領域に入るとき、目標変速段を高速段に切り替えて、自動変速機を低速段から高速段へアップシフトさせ、高速段選択状態(実変速段=高速段)である場合、実用可能領域内の運転点が(High→Low)ダウンシフト線を超えてロー(Low)側変速段領域に入るとき、目標変速段を低速段に切り替えて、自動変速機を高速段から低速段へダウンシフトさせる。
【0045】
<通常の変速制御の問題点と対策>
上記した変速制御は通常の変速制御であるが、この場合、以下に説明するような問題を生ずる。
【0046】
先ず、運転点が図2のA1からA2,A3を経てA4に至るような運転を行った場合につき、問題点を説明する。
運転点A1は、図3の瞬時t1以前におけるごとく、アクセルペダルの踏み込み(アクセルペダル踏み込みストローク量STacc>0)によってモータ/ジェネレータMG2がモータ駆動トルクを発生しており、また目標変速段=(Low)に呼応して自動変速機が低速段選択状態にされており、モータ/ジェネレータMG2からのモータ駆動トルクが低速段選択状態の自動変速機を経て駆動車輪14へ向かっている状態である。
【0047】
この状態(運転点A1)から、図3の瞬時t1以降におけるごとく、アクセルペダルの釈放(アクセルペダル踏み込みストローク量STaccの低下)によりモータ駆動トルクを0に向け低下させると、運転点が図2のA1からA2を経て更に低下し、A0に達するる。
運転点がA2を通過する図3の瞬時t2に、図2のハイ(High)側変速段領域に入るため、目標変速段が図3のごとく高速段となり、当該高速段へのアップシフト変速要求が発生して、自動変速機は低速段選択状態から高速段へアップシフトされる。
【0048】
その後、図3の瞬時t3以降におけるごとく、ブレーキペダルの踏み込みによりブレーキペダル踏み込みストローク量STbrkが発生すると、モータ/ジェネレータMG2は、ブレーキペダル踏み込みストローク量STbrkの増大と共に大きくなるモータ回生トルクを発生するようになり、運転点が図2のA3を経て最終的にA4に至る。
【0049】
運転点A3に至る図3の瞬時t4までは、未だ図2のハイ(High)側変速段領域にあるため、目標変速段が高速段のままであって自動変速機は高速段選択状態を維持する。
従って、モータ/ジェネレータMG2からの上記モータ回生トルクは高速段選択状態の自動変速機を経て駆動車輪14に向かっている。
【0050】
運転点がA3を通過する図3の瞬時t4に、図2のロー(Low)側変速段領域に入るため、目標変速段が図3のごとく低速段となり、当該低速段へのダウンシフト変速要求が発生して、自動変速機は高速段選択状態から低速段へとダウンシフトされる。
【0051】
運転点A4は、図3の瞬時t4以降におけるごとく、ブレーキペダルの踏み込み(ブレーキペダル踏み込みストローク量STbrk>0)によってモータ/ジェネレータMG2が上記の通りモータ回生トルクを発生しており、また目標変速段=低速段に呼応して自動変速機が上記の通り低速段選択状態にされており、モータ/ジェネレータMG2からのモータ回生トルクが低速段選択状態の自動変速機を経て駆動車輪14へ向かっている状態である。
【0052】
以上の説明から明らかなように、アクセルペダルを踏み込み状態から釈放し、その後ブレーキペダルを踏み込んで、運転点が図2のA1からA2,A3を経てA4に至るような運転を行った場合、
自動変速機が一旦、低速段選択状態から高速段選択状態へとアップシフトしても、その直後に高速段選択状態から低速段選択状態へとダウンシフトするというような反復変速を短時間のうちに繰り返し、運転者に違和感を与えるだけでなく、短時間のうちに複数回の変速ショックが発生し、いずれにしても変速品質の低下を免れない。
【0053】
運転点が図2のB1からB2,B3を経てB4に至るような運転を行った場合も、以下に説明するように同様な問題を生ずる。
運転点B1は、図4の瞬時t1以前におけるごとく、ブレーキペダルの踏み込み(ブレーキペダル踏み込みストローク量STbrk>0)によってモータ/ジェネレータMG2がモータ回生トルクを発生しており、また目標変速段=低速段に呼応して自動変速機が低速段選択状態にされており、モータ/ジェネレータMG2からのモータ回生トルクが低速段選択状態の自動変速機を経て駆動車輪14に向かっている状態である。
【0054】
この状態(運転点B1)から、図4の瞬時t1以降におけるごとく、ブレーキペダルの釈放(ブレーキペダル踏み込みストローク量STbrkの低下)によりモータ回生トルクを0に向け低下させると、運転点が図2のB1からB2を経て更に上昇する。
運転点がB2を通過する図4の瞬時t2に、図2のハイ(High)側変速段領域に入るため、目標変速段が図4のごとく高速段となり、当該高速段へのアップシフト変速要求が発生して、自動変速機は低速段選択状態から高速段へアップシフトされる。
【0055】
その後、図4の瞬時t3以降におけるごとく、アクセルペダルの踏み込みによりアクセルペダル踏み込みストローク量STaccが発生すると、モータ/ジェネレータMG2は、アクセルペダル踏み込みストローク量STaccの増大と共に大きくなるモータ駆動トルクを発生するようになり、運転点が図2のB3を経て最終的にB4に至る。
【0056】
運転点B3に至る図4の瞬時t4までは、未だ図2のハイ(High)側変速段領域にあるため、目標変速段が高速段のままであって自動変速機は高速段選択状態を維持する。
従って、モータ/ジェネレータMG2からの上記モータ駆動トルクは高速段選択状態の自動変速機を経て駆動車輪14へ向かっている。
【0057】
運転点がB3を通過する図4の瞬時t4に、図2のロー(Low)側変速段領域に入るため、目標変速段が図4のごとく低速段となり、当該低速段へのダウンシフト変速要求が発生して、自動変速機は高速段選択状態から低速段へダウンシフトされる。
【0058】
運転点B4は、図4の瞬時t4以降におけるごとく、アクセルペダルの踏み込み(アクセルペダル踏み込みストローク量STacc>0)によってモータ/ジェネレータMG2が上記の通りモータ駆動トルクを発生しており、また目標変速段=低速段に呼応して自動変速機が上記の通り低速段選択状態にされており、モータ/ジェネレータMG2からのモータ駆動トルクが低速段選択状態の自動変速機を経て駆動車輪14へ向かっている状態である。
【0059】
以上の説明から明らかなように、ブレーキペダルを踏み込み状態から釈放し、その後アクセルペダルを踏み込んで、運転点が図2のB1からB2,B3を経てB4に至るような運転を行った場合も、
自動変速機が一旦、低速段選択状態から高速段選択状態へとアップシフトした直後に、高速段選択状態から低速段選択状態へとダウンシフトするというような反復変速を短時間のうちに繰り返し、運転者に違和感を与えるだけでなく、短時間のうちに複数回の変速ショックが発生し、いずれにしても変速品質の低下を免れない。
【0060】
本実施例は、上記のような運転操作(A1→A2→A3→A4、またはB1→B2→B3→B4)が行われたときも、自動変速機が短時間のうちに上記の反復変速を行うことのないようにして、変速品質の低下に関する問題を回避し得るよう、図1におけるコントローラ21が図5,6に示す制御プログラムを実行して、自動変速機を変速制御するようにしたものである。
【0061】
図2の変速マップに基づく変速の場合、前記の問題を生じさせる反復変速は、低速段→高速段→低速段のみであり、高速段→低速段→高速段の反復変速が存在しないことから、先ず図5のステップS11においては、コントローラ21自身の内部情報を基に、現在における自動変速機の変速段選択状態(実変速段)が低速段(Low)か否かをチェックする。
実変速段が低速段でなければ、つまり実変速段が高速段である場合は、反復変速が起きえず、前記の問題を生じないことから、制御をそのまま終了する。
【0062】
ステップS11で実変速段=低速段と判定する場合は、前記問題の原因となる反復変速が起きる可能性があることから、ステップS12においてこの可能性を、図2に基づいて求めた目標変速段が高速段か否かにより判定する。
【0063】
目標変速段が高速段でなければ、つまり低速段であれば、実減速段=目標変速段=低速段であって変速の必要がないことから、ステップS13において、後述する制御のための計時タイマTMを0にリセットした後、ステップS14において、自動変速機を現在の低速段選択状態のままに維持する。
【0064】
ステップS11で実変速段=低速段と判定し、且つステップS12で目標変速段=高速段と判定したということは、アクセルペダルの釈放による(図2のA1→A2で示す)モータ駆動トルクの低下に伴って、またはブレーキペダルの釈放による(図2のB1→B2で示す)モータ回生トルクの低下に伴って実変速段(低速段)に対する目標変速段の乖離(トルク低下応答アップシフト変速要求)が発生したことを意味する。
従ってステップS11およびステップS12は、本発明におけるトルク低下応答変速要求判定手段に相当する。
【0065】
ステップS11で実変速段=低速段と判定し、且つステップS12で目標変速段=高速段と判定した場合は、前記の反復変速(低速段→高速段→低速段)が起きて前記の問題を生ずる可能性があることから、この反復変速が起きないよう、制御をステップS15以降に進める。
【0066】
ステップS15においては変速遅延時間TMsを設定し、かかる変速遅延時間TMsの設定に際しては、これを以下のごとくに行う。
アクセルペダルの釈放による(図2のA1→A2で示す)モータ駆動トルクの低下に伴うアップシフト変速要求である場合は、図7のマップを基にアクセルペダルの釈放速度(d/dt)STaccから変速遅延時間TMsを設定し、
ブレーキペダルの釈放による(図2のB1→B2で示す)モータ回生トルクの低下に伴うアップシフト変速要求である場合は、図8のマップを基にブレーキペダルの釈放速度(d/dt)STbrkから変速遅延時間TMsを設定する。
【0067】
なお、変速遅延時間TMsは図7,8に示すごとく、アクセルペダル釈放速度(d/dt)STaccおよびブレーキペダルの釈放速度(d/dt)STbrkが速いほど長くする。
ところで、図2から明らかなように自動変速機の変速要求は、車速VSP(変速機出力回転速度)の変化によっても発生し、図7,8に例示する変速遅延時間TMsは、車速VSP(変速機出力回転速度)に応じた変速時の変速遅れ時間よりも長くする。
【0068】
次のステップS16においては、ステップS13で0にリセットさせたタイマTMをインクリメント(歩進)させて、ステップS11およびステップS12でモータトルクの低下に伴うトルク低下応答アップシフト変速要求が判定されてからの経過時間を計測する。
ステップS17においては、当該タイマTMの計測時間(図面では便宜上、同じ符号TMによって示す)が、ステップS15で設定した変速遅延時間TMsに達したか否かをチェックし、達していない間は、制御をステップS16に戻して上記の計時を引き続き行う。
【0069】
ステップS17で、上記タイマTMの計測時間が変速遅延時間TMsに達したと判定するとき、ステップS18において、上記トルク低下応答のアップシフト変速要求を実行し、自動変速機を現在の低速段選択状態からから高速段へとアップシフトさせる。
従ってステップS16〜ステップS18は、本発明におけるトルク低下応答変速遅延手段に相当する。
【0070】
変速遅延時間TMsの経過時にステップS18で実行されるトルク低下応答アップシフト変速は、詳しくは図6に示すごときものである。
ステップS21においては、上記のトルク低下応答アップシフト変速が実行されているか中か否かをチェックする。
トルク低下応答アップシフト変速が実行中でなければ、図6の制御が不要であるから、そのまま図6の制御プログラムから抜ける。
【0071】
ステップS21でトルク低下応答アップシフト変速が実行中と判別するときは、ステップS22において、図2の変速パターンに基づく目標変速段が低速段か否かをチェックする。
目標変速段が低速段でなく高速段であれば、ステップS21で判別したアップシフト変速に対し順方向の変速段であって、当該アップシフトを継続しても差し支えないことから、制御をそのまま終了することにより、当該アップシフトを引き続き進行させる。
【0072】
しかし、ステップS22で目標変速段が低速段(アクセルペダルまたはブレーキペダルの踏み込みによるモータトルク絶対値の増大で目標変速段=低速段になった)と判定する場合は、ステップS21で判別したアップシフト変速に対し逆方向の変速段であって、当該アップシフトを継続すると、この変速が目標変速段=低速段に逆らう変速であることから、ステップS23において、現在行われているアップシフトを中止し、自動変速機を低速段選択状態に戻す変速を行うこととする。
従って、ステップS22は本発明における逆方向変速要求判定手段に相当し、またステップS23は、本発明における逆方向変速実行手段に相当する。
【0073】
なおステップS23で、現在進行中のアップシフトを中止して低速段選択状態に戻す変速を行うに当たっては、アップシフト中に締結過渡期であった摩擦クラッチ9cの締結力を即座に保持し、この状態でモータ/ジェネレータMG2のモータトルクを増大させることにより摩擦クラッチ9cのスリップを介してドグクラッチ8cを回転同期させ、この回転同期状態でドグクラッチ8cを係合させた後、摩擦クラッチ9c解放させることにより、進行中のアップシフトの中止および低速段選択状態への復帰変速を行わせることができる。
【0074】
<実施例の効果>
図5,6につき上述した本実施例の変速制御によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0075】
図9に示すごとく瞬時t1より、図3と同様なアクセルペダル釈放操作(アクセルペダル踏み込みストローク量STaccの0への低下)によりモータ駆動トルクを0に向け低下させたことで、運転点が図2のA1からA2を経て、モータ駆動トルク=0に対応したA0に至った場合につき説明すると、
運転点がA2を通過する図9の瞬時t2に、図2のハイ(High)側変速段領域に入るため、目標変速段が図9のごとく高速段となり、トルク低下に伴う当該高速段へのトルク低下応答アップシフト変速要求が発生する。
【0076】
しかし本実施例では、図9のトルク低下応答アップシフト変速要求瞬時t2に自動変速機を即座に低速段選択状態から高速段へアップシフトさせず、当該トルク低下応答アップシフト変速要求の実行開始を以下のように遅延させる。
【0077】
つまり、図9のトルク低下応答アップシフト変速要求瞬時t2からの経過時間を、同図に示すようなタイマTMのインクリメント(歩進)により計測する(ステップS16)。
そしてタイマTMの計測値(トルク低下応答アップシフト変速要求瞬時t2からの経過時間)が、図5のステップS15で設定した遅延時間TMsを示すようになる図9の瞬時t3に至ったとき(ステップS17)、
上記トルク低下応答アップシフト変速要求を実行して、自動変速機を現在の低速段選択状態からから高速段へとアップシフトさせる(ステップS18)。
【0078】
ところで、上記のごとくトルク低下(アクセルペダル釈放)応答のアップシフト変速要求があったときは、その直後に、ブレーキ操作によりモータ回生トルクの増大を要求する可能性が高く、これに呼応して自動変速機の戻り方向へのダウンシフト変速要求が高い確率で発生する。
そのため、トルク低下(アクセルペダル釈放)応答のアップシフト変速要求が発生したとき直ちにこの変速要求を実行すると、図3につき前述した通り反復変速が短時間のうちに繰り返され、違和感を与えるだけでなく、短時間のうちに複数回の変速ショックが発生し、いずれにしても変速品質の低下に関する問題を生ずる。
【0079】
しかるに本実施例によれば、トルク低下(アクセルペダル釈放)応答のアップシフト変速要求が発生しても(図9の瞬時t2)、直ちにこの変速要求を実行せず、この変速要求から遅延時間TMsが経過した瞬時t3に至ってはじめて変速要求を実行するため、
トルク低下(アクセルペダル釈放)応答のアップシフト変速要求瞬時t2の直後(t2〜t3)に、ブレーキ操作によるモータ回生トルクの増大要求があっても、これに呼応した変速が発生せず、上記したような反復変速が短時間のうちに繰り返されるのを回避することができる。
従って、かかる反復変速による違和感や、短時間内における複数回の変速ショックに関する問題を生ずることがなく、変速品質を向上させることができる。
【0080】
なお、図9につき上述したアクセルペダル釈放時の作用効果は、図4につき前述したと同様なブレーキペダル釈放操作(ブレーキペダル踏み込みストローク量STbrkの0への低下)によりモータ回生トルクを0に向け低下させたことで、運転点が図2のB1からB2を経て、モータ回生トルク=0に対応した運転点に至った時においても同様に奏し得られること勿論である。
【0081】
また本実施例においては、変速遅延時間TMsを、車速VSP(変速機出力回転速度)の変化に伴う変速時の変速開始応答遅れよりも長くしたため、上記の作用効果を一層確実なものにすることができる。
【0082】
更に変速遅延時間TMsを、図7,8につき前述したごとく、アクセルペダル釈放速度(d/dt)STaccおよびブレーキペダルの釈放速度(d/dt)STbrkが速いほど、つまりモータトルク絶対値の低下速度が速いほど長くしたため、以下のような効果を得ることができる。
【0083】
つまり、アクセルペダル釈放速度(d/dt)STaccおよびブレーキペダルの釈放速度(d/dt)STbrkが速いほど、その直後にアクセルペダルからブレーキペダルへの、またブレーキペダルからアクセルペダルへのペダルの踏み替えを行う確率が高く、前記の反復変速が生じやすいところながら、変速遅延時間TMsをアクセルペダル釈放速度(d/dt)STaccおよびブレーキペダルの釈放速度(d/dt)STbrkが速いほど長くすることで、反復変速の発生を確実に防止して前記の効果を一層顕著なものにし得る。
【0084】
そして、アクセルペダル釈放速度(d/dt)STaccおよびブレーキペダルの釈放速度(d/dt)STbrkがゆっくりである場合は、変速遅延時間TMsが不必要に長くなることがなくなり、変速遅延時間TMsによる変速応答遅れを必要最小限にとどめつつ上記の効果を達成することができる。
【0085】
更に本実施例では、ステップS18でのトルク低下応答変速(アップシフト)中に、これとは逆方向への変速要求をもたらす目標変速段=低速段となった場合は(ステップS22)、上記のトルク低下応答変速(アップシフト)を中断して、目標変速段=低速段に呼応した逆方向変速を実行させるようにしたため、
トルク低下応答変速(アップシフト)でも、目標変速段=低速段に呼応した逆方向変速が保証されることとなり、運転者のペダル操作通りの駆動力を実現して走行性能が犠牲になるのを防止することができる。
【0086】
<その他の実施例>
なお上記した図示の実施例では、自動変速機が低速段と高速段しか持たない2段自動変速機である場合について説明したが、それより多段の自動変速機にも同様にして適用可能であり、この場合も隣接変速段間における反復変速を防止して、同様な効果を達成することができる。
【0087】
また上記した図示の実施例では、変速パターンが図2に示すものであるが故に、反復変速が低速段→高速段→低速段である場合につき、これを防止する技術として説明したが、変速パターンによっては反復変速が高速段→低速段→高速段となることがあり、このような反復変速を防止する技術として構成しても同様な作用効果を奏し得る。
【符号の説明】
【0088】
1 エンジン
MG1 第1のモータ/ジェネレータ(発電機)
MG2 第2のモータ/ジェネレータ(電動モータ)
2 動力分配装置
6 第1軸
7 第2軸
8 ロー側変速機構
8a,8b 低速段歯車組
8c ドグクラッチ
9 ハイ側変速機構
9a,9b 高速段歯車組
9c 摩擦クラッチ
11,12 ファイナルドライブギヤ組
13 ディファレンシャルギヤ装置
14 駆動車輪
21 コントローラ
22 車速センサ
23 アクセルペダルセンサ
24 ブレーキセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータからの動力を伝達する伝動系に挿置された自動変速機に用いられ、該自動変速機を、前記電動モータのモータトルク絶対値に応じ変速制御するようにした自動変速機の変速制御装置において、
前記モータトルク絶対値の低下に伴う前記自動変速機の変速要求を判定するトルク低下応答変速要求判定手段と、
該手段により判定したトルク低下応答変速要求の実行開始を、該判定時から設定時間が経過する時まで遅延させるトルク低下応答変速遅延手段とを具備してなることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
【請求項2】
前記自動変速機を変速機出力回転速度に応じても変速制御するようにした、請求項1に記載された、自動変速機の変速制御装置において、
前記変速遅延用の設定時間は、前記変速機出力回転速度に応じた変速時の変速開始遅れ時間よりも長いものであることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された、自動変速機の変速制御装置において、
前記変速遅延用の設定時間は、前記モータトルク絶対値の低下速度が速いほど長いものであるあることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載された、自動変速機の変速制御装置において、
前記設定時間の経過後に遅延して開始された、前記トルク低下応答変速中に、該変速とは逆方向への変速要求が発生したのを判定する逆方向変速要求判定手段と、
該手段により逆方向変速要求が判定されたとき、前記トルク低下応答変速を中断して、前記逆方向変速要求を実行させる逆方向変速実行手段とを具備してなることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−68299(P2013−68299A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208387(P2011−208387)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】