自動変速機の油圧制御装置
【課題】飛び越し変速が可能で断線フェール対策を両立した自動変速機の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】前記前進n段の変速段を自在に切り替える自動変速モードを実現するために所定の摩擦係合要素毎に配置される電磁弁と、オンオフの組み合わせにより各シフトパターンに対応する油路を構成する複数のシフトバルブ(以下、SV)と、を有し、SVのオンオフ状態の組み合わせを、少なくとも前記電磁弁を個別に動作させる自動変速シフトパターンと、第1の前進変速段を構成する第1固定シフトパターンと、第2の前進変速段を構成する第2固定シフトパターンとにそれぞれ割り当て、前記固定シフトパターンを選択可能とし、前記各固定シフトパターンにおいて、前記SVを介して油圧が供給される電磁弁の排出ポートにも、前記SVを介して油圧を供給し、摩擦係合要素を強制締結させる。
【解決手段】前記前進n段の変速段を自在に切り替える自動変速モードを実現するために所定の摩擦係合要素毎に配置される電磁弁と、オンオフの組み合わせにより各シフトパターンに対応する油路を構成する複数のシフトバルブ(以下、SV)と、を有し、SVのオンオフ状態の組み合わせを、少なくとも前記電磁弁を個別に動作させる自動変速シフトパターンと、第1の前進変速段を構成する第1固定シフトパターンと、第2の前進変速段を構成する第2固定シフトパターンとにそれぞれ割り当て、前記固定シフトパターンを選択可能とし、前記各固定シフトパターンにおいて、前記SVを介して油圧が供給される電磁弁の排出ポートにも、前記SVを介して油圧を供給し、摩擦係合要素を強制締結させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧源からの油圧を比例電磁弁にて直接制御する方式の自動変速機の油圧制御装置に関し、特にその断線フェールに対する耐性ないし信頼性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
特公平5−63664号公報には、摩擦係合要素の数と同数の電磁弁を用意して、前進6段を選択的に設定可能とした変速機制御装置が開示されている。同公報記載の変速機制御装置は、摩擦係合要素C1〜C5にそれぞれ1つ、計5つの電磁弁(リニアソレノイド等)と、1つのON/OFFソレノイドと、2つのシフトバルブと、を備えて、断線フェール(電気的中断発生)時に、現在選択されている変速段に応じ、変速段の自動切り換え(1st→3rd、2nd〜5th→4th、6th→5th)ができるよう構成されている。
【0003】
また、特許2925505号公報、特許2925506号公報には、5つの摩擦係合要素に対し、2つの電磁弁と3つのシフトバルブ及びシフトバルブを制御する3つのON/OFFソレノイドで前進6段を選択的に設定可能とした変速機制御装置が開示されている。この変速機制御装置は、反力要素となる摩擦係合要素へのライン圧の導入と2つの電磁弁による摩擦係合要素の交換により変速を行うとともに、断線フェール時(電気的中断発生)に対しては、所定の変速段(1st、6thを除く)又は該変速段より高い変速段に維持するよう構成されている。
【0004】
上記特許2925505号公報、特許2925506号公報の構成では、3rd⇔5th、2nd⇔4th⇔6thのような飛び越し変速(以下、スキップシフトという)ができないため、例えば、3rd⇔5thでは3rd⇔4th⇔5thと1段ずつ変速しなければならず変速過多や応答性劣化を感じさせてしまう。そこで、米国特許第6585617号では、上記特許2925505号公報、特許2925506号公報に対し、リニアソレノイドを2個追加(計4個)、シフトバルブを1本低減(計2本)、ON/OFFソレノイドを2個低減(計1個)とし、更に、油圧スイッチ(以下油圧SWという)を1個追加することで、2nd〜6th間のスキップシフトを実現している。
【0005】
また、特開2005−24059号公報には、自動変速機の電磁弁のオフフェールに対するフェールセーフ機構として、電磁弁と摩擦係合要素間に切換弁を複数配置し、オフフェール時には、当該切換弁の位置に応じた摩擦係合要素に元圧PDを供給し、適切な走行段にて走行できるようにした油圧制御回路が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特公平5−63664号公報
【特許文献2】特許2925505号公報
【特許文献3】特許2925506号公報
【特許文献4】米国特許第6585617号
【特許文献5】特開2005−24059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した自動変速機の油圧制御装置の電磁弁として、図20に示すとおり、2wayブリードリニアソレノイド(同図(c))、3wayタイプのスプールリニアソレノイド(同図(b))、直動タイプのスプールリニアソレノイド(同図(a))が知られているが、コスト低減、省スペース化、高性能化の要請から、パイロット圧が不要で直接ライン圧を制御できる図20の(c)の直動タイプのスプールリニアソレノイドの開発が盛んである。
【0008】
また、上記直動タイプのリニアソレノイドには、断線時に解放状態に遷移するノーマルロータイプ(以下、NLともいう)と、断線時に係合状態を保持するノーマルハイタイプ(以下、NHともいう)がある。前者は高精度かつ必要な流量を確保できるものが実用化されているが、後者は所謂クラッチツウクラッチ制御を行う自動変速機に適したものがないのが現状である。ノーマルハイタイプの電磁弁において、必要な流量を確保しつつ、指示電流の減少とともに出力圧を上げるためには、スプリング力を大きくすることが考えられるが、限られたスペースでスプリング力を上げるとスプリング荷重のバラツキによって性能が悪化してしまう。また、スプールバルブの直径を小さくすることも考えられるが、この場合当然にスプールバルブの直径を小さくすると大流量の出力ができなくなる。
【0009】
従って、すべてのリニアソレノイドを上記直動タイプとする自動変速機の油圧制御装置では、コストやスペースの関係から上記ノーマルロータイプの電磁弁しか採用できないこととなるが、その場合、断線フェール時に走行段を確保できないという問題点がある。
【0010】
特許文献5記載の技術では、ノーマルロータイプの電磁弁のみで構成した油圧回路のオフフェール対策を施したものであるが、実際には、オフフェール用切換弁のほかに、所謂オンフェール用の切換弁も必要であり、しかも、これら複数の切換弁がリニアソレノイドの下流に配置され、遮断(ライン圧の導入)ないし分岐(ドレンとの連通)を行うとなると、各電磁弁と摩擦係合要素間の油路長が長くなり、油圧制御装置のスリム化の障害となるほか、油圧振動等の原因ともなりかねない。また、切換弁弁体の固着(スティック)等まで考慮に入れると、フェール時に走行段を確保できないことも充分考えられる。このように分析すると、従来技術においては、なお、断線フェール時に走行段を如何に確保するかが課題として残っている。
【0011】
よって本発明は、電磁弁のタイプに拘わらず適用可能であり、コストやスペースに加えて、断線フェールに対する耐性ないし信頼性も良好な自動変速機の油圧制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の視点によれば、係合・非係合の組み合わせにより少なくとも前進n段の変速段を構成可能な複数の摩擦係合要素と、油圧源からの油圧を調圧する電磁弁を介した油圧制御により前記各摩擦係合要素の係合・非係合を制御する制御部とを有する自動変速機の油圧制御装置であって、前記前進n段の各変速段を自在に切り替える自動変速モードを実現するために所定の摩擦係合要素毎に配置されるとともに、前記油圧源からの油圧を排出する排出ポート及び調圧して出力する出力ポートを含む電磁弁と、オンオフの組み合わせにより前記前進n段の各変速段に対応したシフトパターンに応じて、前記所定の電磁弁から前記所定の摩擦係合要素までの油路を構成する複数のシフトバルブと、を有し、前記シフトバルブのオンオフ状態の組み合わせを、前記自動変速モードに対応した前記電磁弁を個別に動作させる自動変速シフトパターンと、第1の前進変速段を構成する第1固定シフトパターンと、第2の前進変速段を構成する第2固定シフトパターンとに割り当て、前記シフトバルブの動作によって前記各シフトパターンを選択可能とし、かつ、前記各固定シフトパターンにおいて、所定の電磁弁の前記排出ポートに前記シフトバルブを介して前記油圧源からの油圧が供給されるように油路が連通するシフトパターンを設定し、前記所定の電磁弁から所定の摩擦係合要素へは強制的に油圧が供給され、前記摩擦係合要素が強制締結されること、を特徴とする自動変速機の油圧制御装置が提供される。
【0013】
より具体的には、前記シフトバルブに、所定の固定シフトパターンで使用する電磁弁の排出ポートと油圧源を連通状態ないし非連通状態に切換可能な切換回路を配設し、前記シフトバルブのオンオフの組み合わせによって所定の電磁弁の排出ポートと油圧源とを連通状態とし、前記電磁弁の供給ポートに加えて前記排出ポート側からも油圧を導入し、前記固定シフトパターンに対応付けられた摩擦係合要素を強制的に締結することによって、前記摩擦係合要素の強制締結が行われるようにする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電磁弁のタイプに拘わらず適用可能であり、コストやスペースに加えて、断線フェールに対する耐性ないし信頼性も良好な自動変速機の油圧制御装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
続いて、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[実施例1]
図1は、本発明の第1の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図2は、シフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。本実施形態に係る自動変速機の油圧制御装置は、ECU(Electronic Control Unit;図示せず)と、3つのシフトバルブ(以下、それぞれSV1〜SV3という)と、これらシフトバルブをON/OFFする3つのソレノイド(以下、それぞれS1〜S3という)とを有し、ソレノイドS1〜S3の操作により、23の8のシフトパターンを構成可能となっている(図2のレンジD参照)。そして、前記8つのシフトパターンのうち2つを、スキップシフトができる多重変速パターン(第1の自動変速パターン)と、低速段変速ができる低速段変速パターン(第2の自動変速パターン)に割り当て、残りの6のシフトパターンを固定段に割り当てた構成としている。
【0016】
図1の自動変速機は、5つの摩擦係合要素によって6変速段を構成可能となっており、その油圧制御装置は、低速段変速パターン(第2の自動変速パターン)では、1st⇔2nd変速が可能なように4つのリニアソレノイドのうち3つ(SL1、SL2、SL4)を制御可能とし(図2のレンジD 1−2参照)、スキップシフトができるパターン(第1の自動変速パターン)では、2nd〜6thの間の変速が可能なように4つのリニアソレノイドすべて(SL1〜SL4)を制御可能とする(図2のレンジD 2〜6参照)。また、1st、2nd、3rd、4th、5th、6thの固定段のシフトパターンでは、油圧制御装置は、当該固定段を構成すべくリニアソレノイド4つのうちの2つを自動的に係合制御する構成としている(図2のレンジD 1、2、3、4、5、6参照)。
【0017】
また、C2クラッチとB2ブレーキで共用するSL2の出力油路のみSV1にて切換えるが、その他のリニアソレノイド(SL1、SL3、SL4)はそれぞれC1クラッチ、C3クラッチ、B1ブレーキの制御用に専属させている。従って、リニアソレノイドと摩擦係合要素間の油路は短くなっている。
【0018】
なお、本実施例では、ガレージ制御用に、B2ブレーキを、小さいピストン油室を持つB2Sブレーキと大きいピストン油室を持つB2Lブレーキとに2分割しているが、シングルピストンタイプとする場合は、B2Sへの油路を省略すれば良い。
【0019】
また、図2の表中の↑で表された箇所は、リニアソレノイドに拠らず、マニュアルバルブからの圧を直接摩擦係合要素に供給することによって、強制的に係合させることを表している。例えば、S1、S3がともにオフとなる固定段の1st、3rdが選択された時に、SL1の排出ポートにD圧を強制的に供給し、SL1の出力圧をD圧としてC1クラッチを締結する油路が構成される。同様に、S1がオン、S2がオフとなる固定段の5th、6thが選択された時には、SL2の排出ポートにD圧を強制的に供給し、SL2の出力圧をD圧として、C2クラッチを締結する油路が構成される。更に、S2、S3がともにオフとなる固定段の3rd、5thが選択された時に、SL3の排出ポートにD圧を強制的に供給し、SL3の出力圧をD圧としてC3クラッチを締結する油路が構成される。
【0020】
また、本実施例では、S1のオン時に、スキップシフトができる多重変速パターン(第1の自動変速パターン)と、4th、5th、6thの固定段のシフトパターンが選択され、S1のオフ時に、その他の低速段が構成されるようになっており、更に後記するように、C2クラッチへの供給圧でSV1をオン側にラッチするよう構成しているため、S1の故障時に、高速段から低速段への急減速が回避されるようになっている。
【0021】
以上のようにして、上記リニアソレノイドはすべてノーマルロータイプであるが、後記するリニアソレノイドの全断線時には、シフトバルブの選択により固定段を構成することで、一次故障としての全断線による締結不能や、リニアソレノイドのON故障によるインターロックを回避することが可能となる。またシフトバルブを含む全断線時には、S1〜S3が全オフとなるため、リニアソレノイドを用いずに固定段の3rd走行が可能となる。
【0022】
また、図1を参照すると、オリフィス111が配置されたSV1端部に連通するラッチ回路にアキュームACC3が設置されている。これにより、高速走行時に全断線が発生した場合、SV2がSV1に先行してオンからオフに切り換わり、S1をオン、S2、S3をオフが保持されるため、固定段の5thを構成し走行可能となる。従って、本構成によれば、特許文献5相当のオフフェール用の複数の切換弁は不要となる。
【0023】
また、1st固定シフトパターンでは、C1クラッチにライン圧が直接供給される構成となっている。例えば、ストール発進時等にリニアソレノイドの出力最大圧を超える圧力が必要な場合に、ライン圧を導くためのロックバルブやゲイン切換バルブを追加する必要がないことを意味している。従って、油路構成はシンプルとなり、コストの低減も可能である。
【0024】
また、1st固定シフトパターンでは、SV1の上から1番目の切換回路から中継されたD圧をSV2、SV3の切換回路を経由してB2Sブレーキと接続されたシャトル弁へと導く油路が構成されるため、D圧がB2Sブレーキに供給され、大きい面積のB2LブレーキにはSL2が連結される。この構成によれば、多段化によるトルク容量の増大とコスト・スペース低減のため1−2ワンウェイクラッチ(O.W.C)を廃止することが可能となる。即ち、SL2がOFF故障した場合にも、上記C1クラッチとB2Sブレーキによる1st発進と、コースト制御を実行することが可能となっている。
【0025】
また、図1に示されたとおり、SL1、SL3の排出側油路にも、それぞれアキュムレータ(N−D ACC、N−R ACC)ACC1、ACC2が配設されており、SL1、SL3側へのマニュアルバルブからの油圧の供給を所定時間遅らせることで、ライン圧の直接導入による変速ショックを来たすことなくN→D、N→R変速を行うことが可能となっている。例えば、NレンジからDレンジとしS1、S2、S3をそれぞれオフ、オン、オフ(×○×)の状態とすることで、ガレージ変速が成立し、更に、S1、S2、S3をそれぞれオフ、オン、オン(×○○)の状態ととすれば、C1クラッチ圧をSL1の出力圧にて制御することによる自動変速も可能となる。同様に、NレンジからRレンジとし、S1、S2、S3をそれぞれオフ、不定、オフ(×−×)の状態とすることで、ガレージ変速が成立する。
【0026】
また、本実施例の油路構成では、図1の後進圧(以下、R圧)をSV1の切換回路に導く油路と、更に、前記R圧をSV2に導き強制的にSV2をON(○)状態にする油路と、が設けられ、SV1がOFF(×)状態の場合であってもR圧が入っていれば、SV2をON(○)状態にし、SL3によって後進段で使用されるC3クラッチを係合できる構成となっている。
【0027】
以上のように、本実施例では、各摩擦係合要素と電磁弁(リニアソレノイド)間の油路長を短縮するとともに、AT本体の各摩擦係合要素の配置に適った電磁弁の配置が実現されている。
【0028】
図1の回路例では、B2のピストン面積を最適に分割した場合を想定してB2SにD圧を直接連結したが、断面構成にて最適にできない場合や、車両やエンジンによってコースト制御をきめ細かく設定したい場合などは、図3に示したようにB2Sブレーキとシャトル弁との間にブレーキコントロールバルブ(減圧弁)131を配設することもできる。この構成によれば、Rレンジ選択時、R圧がブレーキコントロールバルブ131のスプリング室に入ることによってブレーキコントロールバルブ131のスプールが同図左側に移動し、R圧がシャトル弁を経由して、ブレーキコントロールバルブ131の供給ポートから出力ポートに連通して、R圧をB2Sブレーキに導くようにし、また1st固定シフトパターンが選択された時には、SV1、SV2、SV3を経由したD圧をシャトル弁経由でブレーキコントロールバルブ131の供給ポートに導き、スロットル圧をブレーキコントロールバルブ131のバネ力を助長するようにすれば、スロットル圧に比例して、D圧を減圧してB2Sブレーキを制御する構成が得られる。
【0029】
続いて、本実施例における各シフトパターンが選択された場合の動作を個別に説明する。
[Dレンジ1−2変速モード]
Dレンジ1−2変速モードでは、図4に示すように、マニュアルバルブ(図示せず)からのD圧は常時SL2の供給ポートに連結されている。また、S3はON(○)状態であるため、前記D圧は、SV3の下から2番目の切換回路を経由してSL4の供給ポートに供給される。また、S2がON(○)状態であるため、D圧は同様に、SV2の上から1番目の切換回路を経由してSL1の供給ポートに供給される。
【0030】
一方、SV3の下から2番目の切換回路を経由してSV1にD圧を導く油路があるが、SV1がOFF(×)状態であるため遮断され、SL3の供給ポートにD圧は供給されない。またSV1の上から1番目の切換回路を経由するD圧もSV2及びSV3に遮断され、B2SやSL1の排出ポートに供給されることはない。SL2の出力油路はSV1の下から2番目の切換回路を経由し、SV2の下から2番目の切換回路を経過してシャトル弁(チェックボール弁)を経由してB2Lに到達する。
【0031】
上記にてC1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)、B2Lブレーキ(SL2)が制御可能となり、C1クラッチ(SL1)とB2Lブレーキ(SL2)を用いた1st⇔C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)を用いた2nd間の自動変速が可能な、低速域の自動変速用シフトパターンが達成されている。
【0032】
[Dレンジ2〜6変速モード]
Dレンジ2〜6変速モードでは、図5に示すように、マニュアルバルブ(図示せず)からのD圧は常時SL2の供給ポートに連結されている。S1がON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から3番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。また、S3がON(○)状態であるため、SV3の下から2番目の切換回路を経由して、SL4の供給ポートにD圧が供給される。また、S2がON(○)状態であるため、SV2の上から1番目の切換回路を経由してSL1の供給ポートにD圧が供給され、SV3の下から2番目の切換回路、SV1の下から4番目の切換回路、SV2の下から3番目の切換回路を経由して、SL3の供給ポートにD圧が供給される。
【0033】
一方、D圧をSV1の上から1番目の切換回路に導く油路があるが、これはSV1がON(○)状態であるため遮断され、B2Sブレーキ及びSL1の排出ポートには到達しない。
【0034】
上記にてC1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)、B1ブレーキ(SL4)が制御可能となり、下記変速段間のスキップシフトが可能な中高速域の自動変速用シフトパターンが達成されている。
2nd C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)
3rd C1クラッチ(SL1)、C3クラッチ(SL3)
4th C1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)
5th C2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)
6th C2クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL4)
【0035】
[Dレンジ1st固定モード]
Dレンジ1st固定モードでは、図6に示すように、S1がOFF(×)状態、S2がON(○)状態、S3がOFF(×)状態であるため、SL2の出力油圧はSV1の下から2番目の切換回路、SV2の下から2番目の切換回路、シャトル弁を経由し、B2Lに供給される。また、SV2の上から1番目の切換回路を経由してSL1の供給ポートにD圧が供給されるとともに、SV1の上から1番目の切換回路、SV3の上から2番目の切換回路も経由してSL1の排出ポートとアキュムレータ(N−D ACC)ACC1にD圧が供給され、結果として、C1クラッチにD圧を供給したことになる。また、SV1の上から1番目の切換回路を経由したD圧は、SV2の上から3番目の切換回路、SV3の下から1番目の切換回路、シャトル弁を経由してB2Sにも到達する。
【0036】
一方、S3がOFF(×)状態であるため、D圧はSV3の下から2番目の切換回路にて遮断され、SL4の供給ポートには到達しない。同様にSV3の上から3番目の切換回路を経由するD圧も、SV2の下から4番目の切換回路にて遮断されて、SL3の供給ポートには到達しない。
【0037】
上記にてC1クラッチ(D圧)、B2Sブレーキ(D圧)、B2Lブレーキ(SL2)が係合状態となり1stが構成される。ここで、B2Lブレーキを駆動するSL2がOFF故障しても、B2Sブレーキを利用したコースト制御は可能であり、また、ストール発進は無理としても1st走行は可能である。
【0038】
[Dレンジ2nd固定モード]
Dレンジ2nd固定モードでは、図7に示すように、S1、S2がともにOFF(×)状態であるため、SL2の出力油路は、SV1の下から2番目の切換回路は通過するものの、SV2の下から2番目の切換回路で遮断され、B2LブレーキにもC2クラッチにも到達しない。S3はON(○)状態であるため、SV3の下から2番目の切換回路を経由してSL4の供給ポートにD圧が供給される。同様に、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から2番目の切換回路を経由して、SL1の供給ポートにもD圧が供給される。
【0039】
一方、SV3の下から2番目の切換回路を経由するD圧は、SV1の上から3番目の切換回路に遮断されるので、SL3の供給ポートにD圧を供給することはない。同様に、前記SV1の上から1番目の切換回路を経由したD圧は、SV3の上から2番目の切換回路にも到達するが、そこで遮断されてB2SブレーキやSL1の排出ポートに供給されることはない。上記にてC1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)が係合状態となり2ndが構成される。
【0040】
[Dレンジ3rd固定モード]
Dレンジ3rd固定モードでは、図8に示すように、S1、S2、S3が全部OFF(×)の全断線状態であるため、SL2の出力油路は、SV1の下から2番目の切換回路は通過するものの、SV2の下から2番目の切換回路で遮断され、B2LブレーキにもC2クラッチにも到達しない。また、SV3の下から3番目の切換回路、SV2の上から4番目の切換回路を経由したD圧は、SL3の供給ポートに供給され、SV2の下から1番目の切換回路、シャトル弁、SV3の上から1番目の切換回路を経由したD圧は、SL3の排出ポートとアキュムレータ(N−R ACC)ACC2にも到達する。また、SV1の上から1番目の切換回路を経由するD圧は、SV2の上から3番目の切換回路に遮断され、B2Sブレーキには到達しないが、SV2の上から2番目の切換回路を経由するD圧は、SL1の供給ポートに到達し、SV3の上から2番目の切換回路を経由するD圧は、SL1の排出ポートとアキュムレータ(N−D ACC)ACC1にも到達する。結果として、C1クラッチ及びC3クラッチにD圧を供給することになる。
【0041】
また、上記状態において、SV3の下から2番目の切換回路によって、SL4の供給ポートへのD圧は遮断されている。上記にてC1クラッチ(D圧)、C3クラッチ(SL3)が係合状態となり3rdが構成され、全リニヤ断線だけでなくON/OFFソレノイドを含めた全断線でも走行ができる。
【0042】
[Dレンジ4th固定モード]
Dレンジ4th固定モードでは、図9に示すように、S1、S2がともにON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から3番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。また、SV2の上から1番目の切換回路を経由して、SL1の供給ポートにD圧が供給される。一方、SV2の上から1番目の切換回路の手前で分岐するD圧は、SV1の上から1番目の切換回路に遮断されて、SL1の排出ポート及びB2Sブレーキに供給されることはない。
【0043】
また、S3がOFF(×)状態であるため、D圧は、SV3の下から2番目の切換回路に遮断されて、SL4の供給ポートにも到達しない。またSV3の上から3番目の切換回路を経由するD圧もSV2の下から4番目の切換回路に遮断されて、SL3の供給ポートに到達することはない。上記にてC1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)が係合状態となり4thが構成される。
【0044】
[Dレンジ5th固定モード]
Dレンジ5th固定モードでは、図10に示すように、S1がON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から3番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。一方、S2、S3がともにOFF(×)状態であるため、SV3の下から3番目の切換回路、SV2の上から4番目の切換回路を経由したD圧は、SL3の供給ポートに供給され、SV2の下から1番目の切換回路、シャトル弁、SV3の上から1番目の切換回路を経由したD圧は、SL3の排出ポートとアキュムレータ(N−R ACC)ACC2にも到達する。
【0045】
また、D圧は、それぞれSV3の下から2番目の切換回路、SV2の上から1番目の切換回路、SV1の上から1番目の切換回路に遮断されて、SL4の供給ポート、SL1の供給ポート、SL1の排出ポート、B2Sブレーキにも到達しない。上記にてC2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)が係合状態となり5thが構成され、全リニヤ断線となっても走行が可能な状態となる。
【0046】
また、C2クラッチが係合している4th以上(後記する6thを含む)で全ソレノイド断線の場合、前記ラッチ回路にアキュムレータACC3が配設されSV1をON(○)側にラッチしているため、S1がON状態(○)からOFF状態(×)になっても、SV1はその位置を保持し、SL2の給排出ポートにD圧の供給が続けられるため、5th走行が可能である。即ち、本実施例の構成によれば、2〜6変速モードで4th以上にて走行している状態において全断線故障が生じた場合は、3rd固定モードにならず5th固定モードとなり、急減速が生じないよう構成されているのである。また、停車後、DレンジからNレンジ、Pレンジ、Rレンジにする操作、イグニッションのOFF操作等により、C2クラッチ圧が下げられた場合には、上記SV1のラッチは解除されるため、再発進では3rd発進が可能であり、更に、S2をオン状態(○)にできる場合には、1st発進が可能な構成となっている。
【0047】
[Dレンジ6th固定モード]
Dレンジ6th固定モードでは、図11に示すように、S1、S3がともにON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から3番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。また、SV3の下から2番目の切換回路を経由して、D圧がSL4の供給ポートに供給される。
【0048】
一方、S2がOFF(×)状態であるため、SV3の下から2番目の切換回路、SV1の下から4番目の切換回路を経由したD圧は、SV2の下から3番目の切換回路によって遮断され、SL3の供給ポートに到達することはない。また、D圧は、それぞれSV2の上から1番目の切換回路、SV1の上から1番目の切換回路に遮断されて、SL1の供給ポート、SL1の排出ポート、B2Sブレーキにも到達しない。上記にてC2クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL4)が係合状態となり6thが構成される。
【0049】
以上、本発明の第1の実施例について説明したが、上記構成に対する、均等要素の置換、油路の追加、制御の追加など各種の変形を加えることも可能である。例えば、上記した実施例では、SV1をC2クラッチとの間に、SV1のラッチ用のアキュムレータACC3を配設するものとして説明したが、図12に示すようにSV1とACC3とを一体化したものに置き換えることが可能である。
【0050】
また、リニアソレノイドのON故障(オンフェール)に対する切換弁を配設することを妨げるものでなく、図1の油路構成に対し、ON故障(オンフェール)検知時に動作する切換弁を設けて、フェール時に油圧を排出するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施例では油路の簡素化のため、SL4のみ排出ポートにD圧を供給する油路を持たない構成としているが、SV3にS3がON(○)状態の時に連通する切換回路を設け、S2がOFF(×)状態、S3がON(○)状態のときに、D圧をSL4の排出ポートに供給し、B1ブレーキを強制締結できるようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施例では、すべてのリニアソレノイドの出力側に油圧スイッチを設置した構成(計4個使用)としているが、タービン回転や変速段によりソフトウェア手段でインターロックを検知することにより、上記油圧スイッチを削減することも可能である。
【0053】
[実施例2]
また、上記した第1の実施例は、ノーマルロータイプのリニアソレノイドのみを用いて、オフフェール時に走行を可能としているが、例えば、SL2とSL3をノーマルハイタイプとし、アキュムレータを廃止することを妨げるものではなく、またこの場合に油圧回路を変える必要もない。図2からも明白なようにシフトパターンを固定段モードにすることができれば、走行段を確保できることはいうまでもない。以下、上記した第1の実施例のSL2とSL3をノーマルハイタイプのリニアソレノイドに変更し、アキュムレータを廃止した本発明の第2の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0054】
図13は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図14は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。図14を参照すると明らかなとおり、上記SL2とSL3をノーマルハイタイプにすることによって、Dレンジ2〜6変速モードにおける全SL断線時でも5th走行が可能となり、また、1st固定モードでも全SL断線時に、B2Lブレーキの締結によるストール発進が可能となっている。
【0055】
また、Rレンジでは、S1がON(○)状態では、リニアソレノイドの全断線時N状態となるが、S1をOFF(×)状態とすることで、Rレンジとすることができる。
【0056】
上記のとおり、精度がよくかつ必要な流量を確保できるノーマルハイタイプのリニアソレノイドを使用するとの前提の下では、上記した第1の実施例より、良好なフェール耐性を有し、また、部品点数も削減することのできる構成が得られる。
【0057】
[実施例3]
続いて、上記した第2の実施例に対し、一層のコスト低減効果が望める第3の実施例について説明する。図15は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図16は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【0058】
図15を参照すると、本実施例では、SL3がノーマルハイタイプであることから、3rdと5thにおけるC3クラッチへのライン圧の供給を廃止することによって、第1、第2の実施例で使用していたシャトル弁を1つ廃止したものである。
【0059】
また、図16を参照すると明らかなとおり、本構成でも、全SL断線時に走行は可能であり、また、SL4がオフ故障した場合でも5thでの走行が可能な構成となっている。また、SL2がオフ故障した場合は、6th固定モードで走行することも可能である。更に、SL3がオフ故障した場合は、6th固定モード、4th走行固定モードで走行可能であり、SL2がオフ故障した場合は、5th、6th走行が可能となる。
【0060】
[実施例4]
続いて、本発明の第4の実施例について説明する。図17は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。シフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表は図16と同一のため省略する。
【0061】
図17を参照すると、本実施例では、第3の実施例のSV1の下から1番目の切換回路を省いて、SV1の軸長の短縮(省スペース化)と、油路本数の低減が図られている。本構成でも、第3の実施例同様(図16参照)、S2がOFF(×)状態の場合、即ち、5thと、6thにおいて、SL2の排出ポートにD圧を供給し、C2クラッチにライン圧を供給することが可能となっている。
【0062】
第3の実施例と異なる点は、SV1の下から1番目の切換回路を経由しないことにしたため、Dレンジ2〜6変速モードで3速以下の低速段で走行中に、全断線が発生しS2がS1より早く切り換わると、3rd維持でなく5thになるケースが生じることであるが、いずれにしてもダウンシフトとはならない。もちろん、一旦停車し、Dレンジから他のレンジへの切換操作や、イグニッションの再操作が行われた場合には、3rdにて走行することが可能である。
【0063】
[実施例5]
続いて、本発明の第5の実施例について説明する。図18は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図19は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【0064】
図18を参照すると、本実施例では、第4の実施例のSV3の下から2番目の切換回路の出力油路とSV2の下から1番目の切換回路の入力油路を連結することによって、6thのみC2クラッチにライン圧を供給することとしている。
【0065】
第4の実施例では、Dレンジ2〜6変速モードで3速以下の低速段で走行中に、全断線が発生しS2がS1より早く切り換わると、3rd維持でなく5thになるケースが生じることを説明したが、本実施例によれば、当該状況で5thになることを回避することができる。
【0066】
また、本実施例によれば、SL4がオフ故障した場合は5th走行が、SL1、SL2、SL3がオフ故障した場合でも6th走行が可能となっており、第3の実施例と同等の走行性が確保されている。
【0067】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、油路の追加、制御の追加など各種の変形を加えることが可能である。例えば、上記した各実施例において、S3がON(○)状態のときのみ、図示していないロックアップ用リニアソレノイドを連結し、車速等による上記1−2自動変速モード等への切換えの検知後、ロックアップを行う構成とすれば、1stでリニアソレノイドが故障しても直ちにエンストすることを回避できる。
【0068】
また、上記した実施の形態では、5つの摩擦係合要素で前進6速段を有する自動変速機に適用した例を挙げて説明したが、その他の自動変速機にも適用可能である。例えば、上記した実施の形態では、3個のシフトバルブを用いた23=8パターンをそれぞれ2つの自動変速モードと、すべての固定段モードに割り当てるものとしたが、自動変速モードを1つとした場合には、残りの一つを予備パターンとしたり、7つの固定段に割り当てることが可能である。
【0069】
また、7速段以上でスキップシフトを実現するには、各摩擦係合要素を駆動するリニアソレノイドの数が増大することになるが、その場合にも本発明を同様に適用可能であり、適宜シフトバルブを増やすことによって、シフトパターンを増やし、フェールに対する信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る油圧回路に、ブレーキコントロールバルブ(減圧弁)を配設した例である。
【図4】本発明の第1の実施例における1−2変速モードの状態を表した図である。
【図5】本発明の第1の実施例における2〜6変速モードの状態を表した図である。
【図6】本発明の第1の実施例における1st固定モードの状態を表した図である。
【図7】本発明の第1の実施例における2nd固定モードの状態を表した図である。
【図8】本発明の第1の実施例における3rd固定モードの状態を表した図である。
【図9】本発明の第1の実施例における4th固定モードの状態を表した図である。
【図10】本発明の第1の実施例における5th固定モードの状態を表した図である。
【図11】本発明の第1の実施例における6th固定モードの状態を表した図である。
【図12】本発明に適用可能なシフトバルブの一例である。
【図13】本発明の第2の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。
【図14】本発明の第2の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図15】本発明の第3の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。
【図16】本発明の第3の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図17】本発明の第4の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。
【図18】本発明の第5の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。
【図19】本発明の第5の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図20】本発明の実施例で使用可能な電磁弁を説明するための図である。
【符号の説明】
【0071】
ACC1、ACC2、ACC3 アキュムレータ
EX 排出ポート
IN 供給ポート
OUT 出力ポート
S1、S2、S3 ON/OFFソレノイド
SL1、SL2、SL3、SL4 リニアソレノイド
SV1、SV2、SV3 シフトバルブ
SW 油圧スイッチ
111 オリフィス
131 ブレーキコントロールバルブ(減圧弁)
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧源からの油圧を比例電磁弁にて直接制御する方式の自動変速機の油圧制御装置に関し、特にその断線フェールに対する耐性ないし信頼性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
特公平5−63664号公報には、摩擦係合要素の数と同数の電磁弁を用意して、前進6段を選択的に設定可能とした変速機制御装置が開示されている。同公報記載の変速機制御装置は、摩擦係合要素C1〜C5にそれぞれ1つ、計5つの電磁弁(リニアソレノイド等)と、1つのON/OFFソレノイドと、2つのシフトバルブと、を備えて、断線フェール(電気的中断発生)時に、現在選択されている変速段に応じ、変速段の自動切り換え(1st→3rd、2nd〜5th→4th、6th→5th)ができるよう構成されている。
【0003】
また、特許2925505号公報、特許2925506号公報には、5つの摩擦係合要素に対し、2つの電磁弁と3つのシフトバルブ及びシフトバルブを制御する3つのON/OFFソレノイドで前進6段を選択的に設定可能とした変速機制御装置が開示されている。この変速機制御装置は、反力要素となる摩擦係合要素へのライン圧の導入と2つの電磁弁による摩擦係合要素の交換により変速を行うとともに、断線フェール時(電気的中断発生)に対しては、所定の変速段(1st、6thを除く)又は該変速段より高い変速段に維持するよう構成されている。
【0004】
上記特許2925505号公報、特許2925506号公報の構成では、3rd⇔5th、2nd⇔4th⇔6thのような飛び越し変速(以下、スキップシフトという)ができないため、例えば、3rd⇔5thでは3rd⇔4th⇔5thと1段ずつ変速しなければならず変速過多や応答性劣化を感じさせてしまう。そこで、米国特許第6585617号では、上記特許2925505号公報、特許2925506号公報に対し、リニアソレノイドを2個追加(計4個)、シフトバルブを1本低減(計2本)、ON/OFFソレノイドを2個低減(計1個)とし、更に、油圧スイッチ(以下油圧SWという)を1個追加することで、2nd〜6th間のスキップシフトを実現している。
【0005】
また、特開2005−24059号公報には、自動変速機の電磁弁のオフフェールに対するフェールセーフ機構として、電磁弁と摩擦係合要素間に切換弁を複数配置し、オフフェール時には、当該切換弁の位置に応じた摩擦係合要素に元圧PDを供給し、適切な走行段にて走行できるようにした油圧制御回路が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特公平5−63664号公報
【特許文献2】特許2925505号公報
【特許文献3】特許2925506号公報
【特許文献4】米国特許第6585617号
【特許文献5】特開2005−24059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した自動変速機の油圧制御装置の電磁弁として、図20に示すとおり、2wayブリードリニアソレノイド(同図(c))、3wayタイプのスプールリニアソレノイド(同図(b))、直動タイプのスプールリニアソレノイド(同図(a))が知られているが、コスト低減、省スペース化、高性能化の要請から、パイロット圧が不要で直接ライン圧を制御できる図20の(c)の直動タイプのスプールリニアソレノイドの開発が盛んである。
【0008】
また、上記直動タイプのリニアソレノイドには、断線時に解放状態に遷移するノーマルロータイプ(以下、NLともいう)と、断線時に係合状態を保持するノーマルハイタイプ(以下、NHともいう)がある。前者は高精度かつ必要な流量を確保できるものが実用化されているが、後者は所謂クラッチツウクラッチ制御を行う自動変速機に適したものがないのが現状である。ノーマルハイタイプの電磁弁において、必要な流量を確保しつつ、指示電流の減少とともに出力圧を上げるためには、スプリング力を大きくすることが考えられるが、限られたスペースでスプリング力を上げるとスプリング荷重のバラツキによって性能が悪化してしまう。また、スプールバルブの直径を小さくすることも考えられるが、この場合当然にスプールバルブの直径を小さくすると大流量の出力ができなくなる。
【0009】
従って、すべてのリニアソレノイドを上記直動タイプとする自動変速機の油圧制御装置では、コストやスペースの関係から上記ノーマルロータイプの電磁弁しか採用できないこととなるが、その場合、断線フェール時に走行段を確保できないという問題点がある。
【0010】
特許文献5記載の技術では、ノーマルロータイプの電磁弁のみで構成した油圧回路のオフフェール対策を施したものであるが、実際には、オフフェール用切換弁のほかに、所謂オンフェール用の切換弁も必要であり、しかも、これら複数の切換弁がリニアソレノイドの下流に配置され、遮断(ライン圧の導入)ないし分岐(ドレンとの連通)を行うとなると、各電磁弁と摩擦係合要素間の油路長が長くなり、油圧制御装置のスリム化の障害となるほか、油圧振動等の原因ともなりかねない。また、切換弁弁体の固着(スティック)等まで考慮に入れると、フェール時に走行段を確保できないことも充分考えられる。このように分析すると、従来技術においては、なお、断線フェール時に走行段を如何に確保するかが課題として残っている。
【0011】
よって本発明は、電磁弁のタイプに拘わらず適用可能であり、コストやスペースに加えて、断線フェールに対する耐性ないし信頼性も良好な自動変速機の油圧制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の視点によれば、係合・非係合の組み合わせにより少なくとも前進n段の変速段を構成可能な複数の摩擦係合要素と、油圧源からの油圧を調圧する電磁弁を介した油圧制御により前記各摩擦係合要素の係合・非係合を制御する制御部とを有する自動変速機の油圧制御装置であって、前記前進n段の各変速段を自在に切り替える自動変速モードを実現するために所定の摩擦係合要素毎に配置されるとともに、前記油圧源からの油圧を排出する排出ポート及び調圧して出力する出力ポートを含む電磁弁と、オンオフの組み合わせにより前記前進n段の各変速段に対応したシフトパターンに応じて、前記所定の電磁弁から前記所定の摩擦係合要素までの油路を構成する複数のシフトバルブと、を有し、前記シフトバルブのオンオフ状態の組み合わせを、前記自動変速モードに対応した前記電磁弁を個別に動作させる自動変速シフトパターンと、第1の前進変速段を構成する第1固定シフトパターンと、第2の前進変速段を構成する第2固定シフトパターンとに割り当て、前記シフトバルブの動作によって前記各シフトパターンを選択可能とし、かつ、前記各固定シフトパターンにおいて、所定の電磁弁の前記排出ポートに前記シフトバルブを介して前記油圧源からの油圧が供給されるように油路が連通するシフトパターンを設定し、前記所定の電磁弁から所定の摩擦係合要素へは強制的に油圧が供給され、前記摩擦係合要素が強制締結されること、を特徴とする自動変速機の油圧制御装置が提供される。
【0013】
より具体的には、前記シフトバルブに、所定の固定シフトパターンで使用する電磁弁の排出ポートと油圧源を連通状態ないし非連通状態に切換可能な切換回路を配設し、前記シフトバルブのオンオフの組み合わせによって所定の電磁弁の排出ポートと油圧源とを連通状態とし、前記電磁弁の供給ポートに加えて前記排出ポート側からも油圧を導入し、前記固定シフトパターンに対応付けられた摩擦係合要素を強制的に締結することによって、前記摩擦係合要素の強制締結が行われるようにする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電磁弁のタイプに拘わらず適用可能であり、コストやスペースに加えて、断線フェールに対する耐性ないし信頼性も良好な自動変速機の油圧制御装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
続いて、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[実施例1]
図1は、本発明の第1の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図2は、シフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。本実施形態に係る自動変速機の油圧制御装置は、ECU(Electronic Control Unit;図示せず)と、3つのシフトバルブ(以下、それぞれSV1〜SV3という)と、これらシフトバルブをON/OFFする3つのソレノイド(以下、それぞれS1〜S3という)とを有し、ソレノイドS1〜S3の操作により、23の8のシフトパターンを構成可能となっている(図2のレンジD参照)。そして、前記8つのシフトパターンのうち2つを、スキップシフトができる多重変速パターン(第1の自動変速パターン)と、低速段変速ができる低速段変速パターン(第2の自動変速パターン)に割り当て、残りの6のシフトパターンを固定段に割り当てた構成としている。
【0016】
図1の自動変速機は、5つの摩擦係合要素によって6変速段を構成可能となっており、その油圧制御装置は、低速段変速パターン(第2の自動変速パターン)では、1st⇔2nd変速が可能なように4つのリニアソレノイドのうち3つ(SL1、SL2、SL4)を制御可能とし(図2のレンジD 1−2参照)、スキップシフトができるパターン(第1の自動変速パターン)では、2nd〜6thの間の変速が可能なように4つのリニアソレノイドすべて(SL1〜SL4)を制御可能とする(図2のレンジD 2〜6参照)。また、1st、2nd、3rd、4th、5th、6thの固定段のシフトパターンでは、油圧制御装置は、当該固定段を構成すべくリニアソレノイド4つのうちの2つを自動的に係合制御する構成としている(図2のレンジD 1、2、3、4、5、6参照)。
【0017】
また、C2クラッチとB2ブレーキで共用するSL2の出力油路のみSV1にて切換えるが、その他のリニアソレノイド(SL1、SL3、SL4)はそれぞれC1クラッチ、C3クラッチ、B1ブレーキの制御用に専属させている。従って、リニアソレノイドと摩擦係合要素間の油路は短くなっている。
【0018】
なお、本実施例では、ガレージ制御用に、B2ブレーキを、小さいピストン油室を持つB2Sブレーキと大きいピストン油室を持つB2Lブレーキとに2分割しているが、シングルピストンタイプとする場合は、B2Sへの油路を省略すれば良い。
【0019】
また、図2の表中の↑で表された箇所は、リニアソレノイドに拠らず、マニュアルバルブからの圧を直接摩擦係合要素に供給することによって、強制的に係合させることを表している。例えば、S1、S3がともにオフとなる固定段の1st、3rdが選択された時に、SL1の排出ポートにD圧を強制的に供給し、SL1の出力圧をD圧としてC1クラッチを締結する油路が構成される。同様に、S1がオン、S2がオフとなる固定段の5th、6thが選択された時には、SL2の排出ポートにD圧を強制的に供給し、SL2の出力圧をD圧として、C2クラッチを締結する油路が構成される。更に、S2、S3がともにオフとなる固定段の3rd、5thが選択された時に、SL3の排出ポートにD圧を強制的に供給し、SL3の出力圧をD圧としてC3クラッチを締結する油路が構成される。
【0020】
また、本実施例では、S1のオン時に、スキップシフトができる多重変速パターン(第1の自動変速パターン)と、4th、5th、6thの固定段のシフトパターンが選択され、S1のオフ時に、その他の低速段が構成されるようになっており、更に後記するように、C2クラッチへの供給圧でSV1をオン側にラッチするよう構成しているため、S1の故障時に、高速段から低速段への急減速が回避されるようになっている。
【0021】
以上のようにして、上記リニアソレノイドはすべてノーマルロータイプであるが、後記するリニアソレノイドの全断線時には、シフトバルブの選択により固定段を構成することで、一次故障としての全断線による締結不能や、リニアソレノイドのON故障によるインターロックを回避することが可能となる。またシフトバルブを含む全断線時には、S1〜S3が全オフとなるため、リニアソレノイドを用いずに固定段の3rd走行が可能となる。
【0022】
また、図1を参照すると、オリフィス111が配置されたSV1端部に連通するラッチ回路にアキュームACC3が設置されている。これにより、高速走行時に全断線が発生した場合、SV2がSV1に先行してオンからオフに切り換わり、S1をオン、S2、S3をオフが保持されるため、固定段の5thを構成し走行可能となる。従って、本構成によれば、特許文献5相当のオフフェール用の複数の切換弁は不要となる。
【0023】
また、1st固定シフトパターンでは、C1クラッチにライン圧が直接供給される構成となっている。例えば、ストール発進時等にリニアソレノイドの出力最大圧を超える圧力が必要な場合に、ライン圧を導くためのロックバルブやゲイン切換バルブを追加する必要がないことを意味している。従って、油路構成はシンプルとなり、コストの低減も可能である。
【0024】
また、1st固定シフトパターンでは、SV1の上から1番目の切換回路から中継されたD圧をSV2、SV3の切換回路を経由してB2Sブレーキと接続されたシャトル弁へと導く油路が構成されるため、D圧がB2Sブレーキに供給され、大きい面積のB2LブレーキにはSL2が連結される。この構成によれば、多段化によるトルク容量の増大とコスト・スペース低減のため1−2ワンウェイクラッチ(O.W.C)を廃止することが可能となる。即ち、SL2がOFF故障した場合にも、上記C1クラッチとB2Sブレーキによる1st発進と、コースト制御を実行することが可能となっている。
【0025】
また、図1に示されたとおり、SL1、SL3の排出側油路にも、それぞれアキュムレータ(N−D ACC、N−R ACC)ACC1、ACC2が配設されており、SL1、SL3側へのマニュアルバルブからの油圧の供給を所定時間遅らせることで、ライン圧の直接導入による変速ショックを来たすことなくN→D、N→R変速を行うことが可能となっている。例えば、NレンジからDレンジとしS1、S2、S3をそれぞれオフ、オン、オフ(×○×)の状態とすることで、ガレージ変速が成立し、更に、S1、S2、S3をそれぞれオフ、オン、オン(×○○)の状態ととすれば、C1クラッチ圧をSL1の出力圧にて制御することによる自動変速も可能となる。同様に、NレンジからRレンジとし、S1、S2、S3をそれぞれオフ、不定、オフ(×−×)の状態とすることで、ガレージ変速が成立する。
【0026】
また、本実施例の油路構成では、図1の後進圧(以下、R圧)をSV1の切換回路に導く油路と、更に、前記R圧をSV2に導き強制的にSV2をON(○)状態にする油路と、が設けられ、SV1がOFF(×)状態の場合であってもR圧が入っていれば、SV2をON(○)状態にし、SL3によって後進段で使用されるC3クラッチを係合できる構成となっている。
【0027】
以上のように、本実施例では、各摩擦係合要素と電磁弁(リニアソレノイド)間の油路長を短縮するとともに、AT本体の各摩擦係合要素の配置に適った電磁弁の配置が実現されている。
【0028】
図1の回路例では、B2のピストン面積を最適に分割した場合を想定してB2SにD圧を直接連結したが、断面構成にて最適にできない場合や、車両やエンジンによってコースト制御をきめ細かく設定したい場合などは、図3に示したようにB2Sブレーキとシャトル弁との間にブレーキコントロールバルブ(減圧弁)131を配設することもできる。この構成によれば、Rレンジ選択時、R圧がブレーキコントロールバルブ131のスプリング室に入ることによってブレーキコントロールバルブ131のスプールが同図左側に移動し、R圧がシャトル弁を経由して、ブレーキコントロールバルブ131の供給ポートから出力ポートに連通して、R圧をB2Sブレーキに導くようにし、また1st固定シフトパターンが選択された時には、SV1、SV2、SV3を経由したD圧をシャトル弁経由でブレーキコントロールバルブ131の供給ポートに導き、スロットル圧をブレーキコントロールバルブ131のバネ力を助長するようにすれば、スロットル圧に比例して、D圧を減圧してB2Sブレーキを制御する構成が得られる。
【0029】
続いて、本実施例における各シフトパターンが選択された場合の動作を個別に説明する。
[Dレンジ1−2変速モード]
Dレンジ1−2変速モードでは、図4に示すように、マニュアルバルブ(図示せず)からのD圧は常時SL2の供給ポートに連結されている。また、S3はON(○)状態であるため、前記D圧は、SV3の下から2番目の切換回路を経由してSL4の供給ポートに供給される。また、S2がON(○)状態であるため、D圧は同様に、SV2の上から1番目の切換回路を経由してSL1の供給ポートに供給される。
【0030】
一方、SV3の下から2番目の切換回路を経由してSV1にD圧を導く油路があるが、SV1がOFF(×)状態であるため遮断され、SL3の供給ポートにD圧は供給されない。またSV1の上から1番目の切換回路を経由するD圧もSV2及びSV3に遮断され、B2SやSL1の排出ポートに供給されることはない。SL2の出力油路はSV1の下から2番目の切換回路を経由し、SV2の下から2番目の切換回路を経過してシャトル弁(チェックボール弁)を経由してB2Lに到達する。
【0031】
上記にてC1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)、B2Lブレーキ(SL2)が制御可能となり、C1クラッチ(SL1)とB2Lブレーキ(SL2)を用いた1st⇔C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)を用いた2nd間の自動変速が可能な、低速域の自動変速用シフトパターンが達成されている。
【0032】
[Dレンジ2〜6変速モード]
Dレンジ2〜6変速モードでは、図5に示すように、マニュアルバルブ(図示せず)からのD圧は常時SL2の供給ポートに連結されている。S1がON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から3番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。また、S3がON(○)状態であるため、SV3の下から2番目の切換回路を経由して、SL4の供給ポートにD圧が供給される。また、S2がON(○)状態であるため、SV2の上から1番目の切換回路を経由してSL1の供給ポートにD圧が供給され、SV3の下から2番目の切換回路、SV1の下から4番目の切換回路、SV2の下から3番目の切換回路を経由して、SL3の供給ポートにD圧が供給される。
【0033】
一方、D圧をSV1の上から1番目の切換回路に導く油路があるが、これはSV1がON(○)状態であるため遮断され、B2Sブレーキ及びSL1の排出ポートには到達しない。
【0034】
上記にてC1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)、B1ブレーキ(SL4)が制御可能となり、下記変速段間のスキップシフトが可能な中高速域の自動変速用シフトパターンが達成されている。
2nd C1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)
3rd C1クラッチ(SL1)、C3クラッチ(SL3)
4th C1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)
5th C2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)
6th C2クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL4)
【0035】
[Dレンジ1st固定モード]
Dレンジ1st固定モードでは、図6に示すように、S1がOFF(×)状態、S2がON(○)状態、S3がOFF(×)状態であるため、SL2の出力油圧はSV1の下から2番目の切換回路、SV2の下から2番目の切換回路、シャトル弁を経由し、B2Lに供給される。また、SV2の上から1番目の切換回路を経由してSL1の供給ポートにD圧が供給されるとともに、SV1の上から1番目の切換回路、SV3の上から2番目の切換回路も経由してSL1の排出ポートとアキュムレータ(N−D ACC)ACC1にD圧が供給され、結果として、C1クラッチにD圧を供給したことになる。また、SV1の上から1番目の切換回路を経由したD圧は、SV2の上から3番目の切換回路、SV3の下から1番目の切換回路、シャトル弁を経由してB2Sにも到達する。
【0036】
一方、S3がOFF(×)状態であるため、D圧はSV3の下から2番目の切換回路にて遮断され、SL4の供給ポートには到達しない。同様にSV3の上から3番目の切換回路を経由するD圧も、SV2の下から4番目の切換回路にて遮断されて、SL3の供給ポートには到達しない。
【0037】
上記にてC1クラッチ(D圧)、B2Sブレーキ(D圧)、B2Lブレーキ(SL2)が係合状態となり1stが構成される。ここで、B2Lブレーキを駆動するSL2がOFF故障しても、B2Sブレーキを利用したコースト制御は可能であり、また、ストール発進は無理としても1st走行は可能である。
【0038】
[Dレンジ2nd固定モード]
Dレンジ2nd固定モードでは、図7に示すように、S1、S2がともにOFF(×)状態であるため、SL2の出力油路は、SV1の下から2番目の切換回路は通過するものの、SV2の下から2番目の切換回路で遮断され、B2LブレーキにもC2クラッチにも到達しない。S3はON(○)状態であるため、SV3の下から2番目の切換回路を経由してSL4の供給ポートにD圧が供給される。同様に、SV1の上から1番目の切換回路、SV2の上から2番目の切換回路を経由して、SL1の供給ポートにもD圧が供給される。
【0039】
一方、SV3の下から2番目の切換回路を経由するD圧は、SV1の上から3番目の切換回路に遮断されるので、SL3の供給ポートにD圧を供給することはない。同様に、前記SV1の上から1番目の切換回路を経由したD圧は、SV3の上から2番目の切換回路にも到達するが、そこで遮断されてB2SブレーキやSL1の排出ポートに供給されることはない。上記にてC1クラッチ(SL1)、B1ブレーキ(SL4)が係合状態となり2ndが構成される。
【0040】
[Dレンジ3rd固定モード]
Dレンジ3rd固定モードでは、図8に示すように、S1、S2、S3が全部OFF(×)の全断線状態であるため、SL2の出力油路は、SV1の下から2番目の切換回路は通過するものの、SV2の下から2番目の切換回路で遮断され、B2LブレーキにもC2クラッチにも到達しない。また、SV3の下から3番目の切換回路、SV2の上から4番目の切換回路を経由したD圧は、SL3の供給ポートに供給され、SV2の下から1番目の切換回路、シャトル弁、SV3の上から1番目の切換回路を経由したD圧は、SL3の排出ポートとアキュムレータ(N−R ACC)ACC2にも到達する。また、SV1の上から1番目の切換回路を経由するD圧は、SV2の上から3番目の切換回路に遮断され、B2Sブレーキには到達しないが、SV2の上から2番目の切換回路を経由するD圧は、SL1の供給ポートに到達し、SV3の上から2番目の切換回路を経由するD圧は、SL1の排出ポートとアキュムレータ(N−D ACC)ACC1にも到達する。結果として、C1クラッチ及びC3クラッチにD圧を供給することになる。
【0041】
また、上記状態において、SV3の下から2番目の切換回路によって、SL4の供給ポートへのD圧は遮断されている。上記にてC1クラッチ(D圧)、C3クラッチ(SL3)が係合状態となり3rdが構成され、全リニヤ断線だけでなくON/OFFソレノイドを含めた全断線でも走行ができる。
【0042】
[Dレンジ4th固定モード]
Dレンジ4th固定モードでは、図9に示すように、S1、S2がともにON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から3番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。また、SV2の上から1番目の切換回路を経由して、SL1の供給ポートにD圧が供給される。一方、SV2の上から1番目の切換回路の手前で分岐するD圧は、SV1の上から1番目の切換回路に遮断されて、SL1の排出ポート及びB2Sブレーキに供給されることはない。
【0043】
また、S3がOFF(×)状態であるため、D圧は、SV3の下から2番目の切換回路に遮断されて、SL4の供給ポートにも到達しない。またSV3の上から3番目の切換回路を経由するD圧もSV2の下から4番目の切換回路に遮断されて、SL3の供給ポートに到達することはない。上記にてC1クラッチ(SL1)、C2クラッチ(SL2)が係合状態となり4thが構成される。
【0044】
[Dレンジ5th固定モード]
Dレンジ5th固定モードでは、図10に示すように、S1がON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から3番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。一方、S2、S3がともにOFF(×)状態であるため、SV3の下から3番目の切換回路、SV2の上から4番目の切換回路を経由したD圧は、SL3の供給ポートに供給され、SV2の下から1番目の切換回路、シャトル弁、SV3の上から1番目の切換回路を経由したD圧は、SL3の排出ポートとアキュムレータ(N−R ACC)ACC2にも到達する。
【0045】
また、D圧は、それぞれSV3の下から2番目の切換回路、SV2の上から1番目の切換回路、SV1の上から1番目の切換回路に遮断されて、SL4の供給ポート、SL1の供給ポート、SL1の排出ポート、B2Sブレーキにも到達しない。上記にてC2クラッチ(SL2)、C3クラッチ(SL3)が係合状態となり5thが構成され、全リニヤ断線となっても走行が可能な状態となる。
【0046】
また、C2クラッチが係合している4th以上(後記する6thを含む)で全ソレノイド断線の場合、前記ラッチ回路にアキュムレータACC3が配設されSV1をON(○)側にラッチしているため、S1がON状態(○)からOFF状態(×)になっても、SV1はその位置を保持し、SL2の給排出ポートにD圧の供給が続けられるため、5th走行が可能である。即ち、本実施例の構成によれば、2〜6変速モードで4th以上にて走行している状態において全断線故障が生じた場合は、3rd固定モードにならず5th固定モードとなり、急減速が生じないよう構成されているのである。また、停車後、DレンジからNレンジ、Pレンジ、Rレンジにする操作、イグニッションのOFF操作等により、C2クラッチ圧が下げられた場合には、上記SV1のラッチは解除されるため、再発進では3rd発進が可能であり、更に、S2をオン状態(○)にできる場合には、1st発進が可能な構成となっている。
【0047】
[Dレンジ6th固定モード]
Dレンジ6th固定モードでは、図11に示すように、S1、S3がともにON(○)状態であるため、SL2の出力油圧は、SV1の下から3番目の切換回路を経由し、SV1をON(○)側にラッチするとともにC2クラッチに供給される。また、SV3の下から2番目の切換回路を経由して、D圧がSL4の供給ポートに供給される。
【0048】
一方、S2がOFF(×)状態であるため、SV3の下から2番目の切換回路、SV1の下から4番目の切換回路を経由したD圧は、SV2の下から3番目の切換回路によって遮断され、SL3の供給ポートに到達することはない。また、D圧は、それぞれSV2の上から1番目の切換回路、SV1の上から1番目の切換回路に遮断されて、SL1の供給ポート、SL1の排出ポート、B2Sブレーキにも到達しない。上記にてC2クラッチ(SL2)、B1ブレーキ(SL4)が係合状態となり6thが構成される。
【0049】
以上、本発明の第1の実施例について説明したが、上記構成に対する、均等要素の置換、油路の追加、制御の追加など各種の変形を加えることも可能である。例えば、上記した実施例では、SV1をC2クラッチとの間に、SV1のラッチ用のアキュムレータACC3を配設するものとして説明したが、図12に示すようにSV1とACC3とを一体化したものに置き換えることが可能である。
【0050】
また、リニアソレノイドのON故障(オンフェール)に対する切換弁を配設することを妨げるものでなく、図1の油路構成に対し、ON故障(オンフェール)検知時に動作する切換弁を設けて、フェール時に油圧を排出するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施例では油路の簡素化のため、SL4のみ排出ポートにD圧を供給する油路を持たない構成としているが、SV3にS3がON(○)状態の時に連通する切換回路を設け、S2がOFF(×)状態、S3がON(○)状態のときに、D圧をSL4の排出ポートに供給し、B1ブレーキを強制締結できるようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施例では、すべてのリニアソレノイドの出力側に油圧スイッチを設置した構成(計4個使用)としているが、タービン回転や変速段によりソフトウェア手段でインターロックを検知することにより、上記油圧スイッチを削減することも可能である。
【0053】
[実施例2]
また、上記した第1の実施例は、ノーマルロータイプのリニアソレノイドのみを用いて、オフフェール時に走行を可能としているが、例えば、SL2とSL3をノーマルハイタイプとし、アキュムレータを廃止することを妨げるものではなく、またこの場合に油圧回路を変える必要もない。図2からも明白なようにシフトパターンを固定段モードにすることができれば、走行段を確保できることはいうまでもない。以下、上記した第1の実施例のSL2とSL3をノーマルハイタイプのリニアソレノイドに変更し、アキュムレータを廃止した本発明の第2の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0054】
図13は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図14は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。図14を参照すると明らかなとおり、上記SL2とSL3をノーマルハイタイプにすることによって、Dレンジ2〜6変速モードにおける全SL断線時でも5th走行が可能となり、また、1st固定モードでも全SL断線時に、B2Lブレーキの締結によるストール発進が可能となっている。
【0055】
また、Rレンジでは、S1がON(○)状態では、リニアソレノイドの全断線時N状態となるが、S1をOFF(×)状態とすることで、Rレンジとすることができる。
【0056】
上記のとおり、精度がよくかつ必要な流量を確保できるノーマルハイタイプのリニアソレノイドを使用するとの前提の下では、上記した第1の実施例より、良好なフェール耐性を有し、また、部品点数も削減することのできる構成が得られる。
【0057】
[実施例3]
続いて、上記した第2の実施例に対し、一層のコスト低減効果が望める第3の実施例について説明する。図15は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図16は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【0058】
図15を参照すると、本実施例では、SL3がノーマルハイタイプであることから、3rdと5thにおけるC3クラッチへのライン圧の供給を廃止することによって、第1、第2の実施例で使用していたシャトル弁を1つ廃止したものである。
【0059】
また、図16を参照すると明らかなとおり、本構成でも、全SL断線時に走行は可能であり、また、SL4がオフ故障した場合でも5thでの走行が可能な構成となっている。また、SL2がオフ故障した場合は、6th固定モードで走行することも可能である。更に、SL3がオフ故障した場合は、6th固定モード、4th走行固定モードで走行可能であり、SL2がオフ故障した場合は、5th、6th走行が可能となる。
【0060】
[実施例4]
続いて、本発明の第4の実施例について説明する。図17は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。シフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表は図16と同一のため省略する。
【0061】
図17を参照すると、本実施例では、第3の実施例のSV1の下から1番目の切換回路を省いて、SV1の軸長の短縮(省スペース化)と、油路本数の低減が図られている。本構成でも、第3の実施例同様(図16参照)、S2がOFF(×)状態の場合、即ち、5thと、6thにおいて、SL2の排出ポートにD圧を供給し、C2クラッチにライン圧を供給することが可能となっている。
【0062】
第3の実施例と異なる点は、SV1の下から1番目の切換回路を経由しないことにしたため、Dレンジ2〜6変速モードで3速以下の低速段で走行中に、全断線が発生しS2がS1より早く切り換わると、3rd維持でなく5thになるケースが生じることであるが、いずれにしてもダウンシフトとはならない。もちろん、一旦停車し、Dレンジから他のレンジへの切換操作や、イグニッションの再操作が行われた場合には、3rdにて走行することが可能である。
【0063】
[実施例5]
続いて、本発明の第5の実施例について説明する。図18は、本実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図であり、図19は、本実施例におけるシフトバルブのパターンと摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【0064】
図18を参照すると、本実施例では、第4の実施例のSV3の下から2番目の切換回路の出力油路とSV2の下から1番目の切換回路の入力油路を連結することによって、6thのみC2クラッチにライン圧を供給することとしている。
【0065】
第4の実施例では、Dレンジ2〜6変速モードで3速以下の低速段で走行中に、全断線が発生しS2がS1より早く切り換わると、3rd維持でなく5thになるケースが生じることを説明したが、本実施例によれば、当該状況で5thになることを回避することができる。
【0066】
また、本実施例によれば、SL4がオフ故障した場合は5th走行が、SL1、SL2、SL3がオフ故障した場合でも6th走行が可能となっており、第3の実施例と同等の走行性が確保されている。
【0067】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、油路の追加、制御の追加など各種の変形を加えることが可能である。例えば、上記した各実施例において、S3がON(○)状態のときのみ、図示していないロックアップ用リニアソレノイドを連結し、車速等による上記1−2自動変速モード等への切換えの検知後、ロックアップを行う構成とすれば、1stでリニアソレノイドが故障しても直ちにエンストすることを回避できる。
【0068】
また、上記した実施の形態では、5つの摩擦係合要素で前進6速段を有する自動変速機に適用した例を挙げて説明したが、その他の自動変速機にも適用可能である。例えば、上記した実施の形態では、3個のシフトバルブを用いた23=8パターンをそれぞれ2つの自動変速モードと、すべての固定段モードに割り当てるものとしたが、自動変速モードを1つとした場合には、残りの一つを予備パターンとしたり、7つの固定段に割り当てることが可能である。
【0069】
また、7速段以上でスキップシフトを実現するには、各摩擦係合要素を駆動するリニアソレノイドの数が増大することになるが、その場合にも本発明を同様に適用可能であり、適宜シフトバルブを増やすことによって、シフトパターンを増やし、フェールに対する信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る油圧回路に、ブレーキコントロールバルブ(減圧弁)を配設した例である。
【図4】本発明の第1の実施例における1−2変速モードの状態を表した図である。
【図5】本発明の第1の実施例における2〜6変速モードの状態を表した図である。
【図6】本発明の第1の実施例における1st固定モードの状態を表した図である。
【図7】本発明の第1の実施例における2nd固定モードの状態を表した図である。
【図8】本発明の第1の実施例における3rd固定モードの状態を表した図である。
【図9】本発明の第1の実施例における4th固定モードの状態を表した図である。
【図10】本発明の第1の実施例における5th固定モードの状態を表した図である。
【図11】本発明の第1の実施例における6th固定モードの状態を表した図である。
【図12】本発明に適用可能なシフトバルブの一例である。
【図13】本発明の第2の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。
【図14】本発明の第2の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図15】本発明の第3の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。
【図16】本発明の第3の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図17】本発明の第4の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。
【図18】本発明の第5の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置の油圧回路を表したブロック図である。
【図19】本発明の第5の実施例に係る自動変速機の油圧制御装置のシフトバルブのパターンと摩擦係合要素及びリニアソレノイドの対応関係を表した表である。
【図20】本発明の実施例で使用可能な電磁弁を説明するための図である。
【符号の説明】
【0071】
ACC1、ACC2、ACC3 アキュムレータ
EX 排出ポート
IN 供給ポート
OUT 出力ポート
S1、S2、S3 ON/OFFソレノイド
SL1、SL2、SL3、SL4 リニアソレノイド
SV1、SV2、SV3 シフトバルブ
SW 油圧スイッチ
111 オリフィス
131 ブレーキコントロールバルブ(減圧弁)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合・非係合の組み合わせにより少なくとも前進n段の変速段を構成可能な複数の摩擦係合要素と、油圧源からの油圧を調圧する電磁弁を介した油圧制御により前記各摩擦係合要素の係合・非係合を制御する制御部とを有する自動変速機の油圧制御装置であって、
前記前進n段の各変速段を自在に切り替える自動変速モードを実現するために所定の摩擦係合要素毎に配置されるとともに、前記油圧源からの油圧を排出する排出ポート及び調圧して出力する出力ポートを含む電磁弁と、
オンオフの組み合わせにより前記前進n段の各変速段に対応したシフトパターンに応じて、前記所定の電磁弁から前記所定の摩擦係合要素までの油路を構成する複数のシフトバルブと、を有し、
前記シフトバルブのオンオフ状態の組み合わせを、前記自動変速モードに対応した前記電磁弁を個別に動作させる自動変速シフトパターンと、第1の前進変速段を構成する第1固定シフトパターンと、第2の前進変速段を構成する第2固定シフトパターンとに割り当て、前記シフトバルブの動作によって前記各シフトパターンを選択可能とし、かつ、
前記各固定シフトパターンにおいて、所定の電磁弁の前記排出ポートに前記シフトバルブを介して前記油圧源からの油圧が供給されるように油路が連通するシフトパターンを設定し、前記所定の電磁弁から所定の摩擦係合要素へは強制的に油圧が供給され、前記摩擦係合要素が強制締結されること、
を特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記シフトバルブのすべてがオフ状態である場合に、所定の変速段に対応する摩擦係合要素に油圧を供給する固定シフトパターンが選択され、前記各摩擦係合要素に油圧を供給する各電磁弁の供給ポートに加えて前記ドレンポート側からも油圧を導入し、摩擦係合要素の締結動作を実行すること、
を特徴とする請求項1に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記シフトバルブのオンオフの組み合わせによって、自動変速シフトパターンのうち、後進段を構成する際に使用する後進用の摩擦係合要素に油圧が供給される1−2自動変速モードと、2〜n自動変速モードとを切り替え可能であり、
前記2〜n自動変速モードで、前記後進用の摩擦係合要素への油路が遮断されるよう油路を構成したこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記シフトバルブの内、所定のシフトバルブのオンオフによって、高速段側のシフトパターンと低速段側のシフトパターンとが決定され、
高速段構成時の摩擦係合要素からの油圧によって前記所定のシフトバルブの状態を保持するラッチ回路と、
前記ラッチ回路の上流側に、アキュムレータと、オリフィスとを配設し、
前記ラッチ回路への油圧供給が遮断されても所定時間前記一のシフトバルブの状態を保持し、該シフトバルブの故障による急減速を回避可能としたこと、
を特徴とする請求項1乃至3いずれか一に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項1】
係合・非係合の組み合わせにより少なくとも前進n段の変速段を構成可能な複数の摩擦係合要素と、油圧源からの油圧を調圧する電磁弁を介した油圧制御により前記各摩擦係合要素の係合・非係合を制御する制御部とを有する自動変速機の油圧制御装置であって、
前記前進n段の各変速段を自在に切り替える自動変速モードを実現するために所定の摩擦係合要素毎に配置されるとともに、前記油圧源からの油圧を排出する排出ポート及び調圧して出力する出力ポートを含む電磁弁と、
オンオフの組み合わせにより前記前進n段の各変速段に対応したシフトパターンに応じて、前記所定の電磁弁から前記所定の摩擦係合要素までの油路を構成する複数のシフトバルブと、を有し、
前記シフトバルブのオンオフ状態の組み合わせを、前記自動変速モードに対応した前記電磁弁を個別に動作させる自動変速シフトパターンと、第1の前進変速段を構成する第1固定シフトパターンと、第2の前進変速段を構成する第2固定シフトパターンとに割り当て、前記シフトバルブの動作によって前記各シフトパターンを選択可能とし、かつ、
前記各固定シフトパターンにおいて、所定の電磁弁の前記排出ポートに前記シフトバルブを介して前記油圧源からの油圧が供給されるように油路が連通するシフトパターンを設定し、前記所定の電磁弁から所定の摩擦係合要素へは強制的に油圧が供給され、前記摩擦係合要素が強制締結されること、
を特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記シフトバルブのすべてがオフ状態である場合に、所定の変速段に対応する摩擦係合要素に油圧を供給する固定シフトパターンが選択され、前記各摩擦係合要素に油圧を供給する各電磁弁の供給ポートに加えて前記ドレンポート側からも油圧を導入し、摩擦係合要素の締結動作を実行すること、
を特徴とする請求項1に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記シフトバルブのオンオフの組み合わせによって、自動変速シフトパターンのうち、後進段を構成する際に使用する後進用の摩擦係合要素に油圧が供給される1−2自動変速モードと、2〜n自動変速モードとを切り替え可能であり、
前記2〜n自動変速モードで、前記後進用の摩擦係合要素への油路が遮断されるよう油路を構成したこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記シフトバルブの内、所定のシフトバルブのオンオフによって、高速段側のシフトパターンと低速段側のシフトパターンとが決定され、
高速段構成時の摩擦係合要素からの油圧によって前記所定のシフトバルブの状態を保持するラッチ回路と、
前記ラッチ回路の上流側に、アキュムレータと、オリフィスとを配設し、
前記ラッチ回路への油圧供給が遮断されても所定時間前記一のシフトバルブの状態を保持し、該シフトバルブの故障による急減速を回避可能としたこと、
を特徴とする請求項1乃至3いずれか一に記載の自動変速機の油圧制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−32809(P2007−32809A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221016(P2005−221016)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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