説明

自動変速機の油圧制御装置

【課題】発進装置から潤滑油路に異物が流入することを防止し、また、低油温時における非ロックアップ時の管路抵抗を低減することを可能とする自動変速機の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】自動変速機の油圧制御装置1は、ロックアップ状態の際にセカンダリ圧PSECAを発進装置4に供給すると共に、セカンダリ圧の排圧PSECBをオイルクーラ8を通して自動変速機構の潤滑油路9に供給し、ロックアップ解放状態の際にセカンダリ圧PSECAを発進装置4及びオイルクーラ8を通してオイルパンへ排出すると共に、セカンダリ圧の排圧PSECBを自動変速機構の潤滑油路9に供給するロックアップリレーバルブ7を備えている。これにより、ロックアップ状態及びロックアップ解放状態ともに、発進装置4と自動変速機構の潤滑油路9とが直列的に配置されて油が流れる油路構成にならないようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌等に搭載される自動変速機の油圧制御装置に係り、詳しくは、流体伝動装置及び該流体伝動装置をロックアップし得るクラッチを有する発進装置内に油を給排させると共に、オイルクーラに油を送出して該油を冷却し、かつ自動変速機構内に油を供給して該自動変速機構を潤滑する自動変速機の油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車輌等に搭載される自動変速機には、駆動源の出力を変速機構の入力軸に伝達するための発進装置が備えられており、即ち該発進装置には、流体伝動を行うことによりエンジンの出力軸(クランク軸)と変速機構の入力軸との回転数差を許容することができるトルクコンバータが備えられている。また、このような自動変速機の発進装置においては、燃費向上等を図るため、エンジンの出力軸と変速機構の入力軸とを直結状態(ロックアップ)することが可能なロックアップクラッチを備えたものがある。
【0003】
一般に、上述のようなトルクコンバータを備えた自動変速機の油圧回路においては、上記ロックアップクラッチの解放時に、トルクコンバータで高温となった油を冷却するために、該発進装置から排出された油がオイルクーラに供給されるように構成し、また、変速機構の各部の冷却性を高めるため、オイルクーラを介して該変速機構の潤滑油路に油が供給されるように構成している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−135772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動変速機のトルクコンバータは、製造時に微小な異物が発生する場合があるため、製造工程にこれら異物を除去する工程を有するようにしている。しかし、異物除去の工程を経てもなお異物を完全に除去することができず、上記特許文献1のもののようにトルクコンバータから潤滑油路が直列に構成されていると、これら異物が潤滑油路に入り、変速機構各部の磨耗の原因になる虞があった。
【0006】
また、上記特許文献1のように、トルクコンバータ、オイルクーラ、及び潤滑油路が直列に配置された油圧回路では、例えばエンジン始動直後等の低油温時には、油の粘度も高く、管路抵抗が大きいため、変速機構各部への潤滑油の供給が不足したり、変速機構に配置されたクラッチの遠心油圧をキャンセルするための油室への油の供給が遅れたりする等の問題もあった。
【0007】
そこで本発明は、発進装置から潤滑油路に異物が流入することを防止し、また、低油温時における非ロックアップ時の管路抵抗を低減することを可能とする自動変速機の油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は(例えば図1参照)、駆動源と自動変速機構(9)との間に介在された流体伝動装置(2)及び該流体伝動装置をロックアップし得るクラッチ(3)を有する発進装置(4)内に油を給排させると共に、オイルクーラ(8)に油を送出して該油を冷却し、かつ自動変速機構(9)内に油を供給して該自動変速機構を潤滑する自動変速機の油圧制御装置(1)において、
前記クラッチ(3)のロックアップ時と非ロックアップ時とに基づき切換えられるロックアップ切換えバルブ(7)を備え、
前記ロックアップ切換えバルブ(7)は、
前記ロックアップ時に、入力された第1入力圧(PSECA)を前記発進装置(4)に供給すると共に、入力された第2入力圧(PSECB)を前記オイルクーラ(8)を通して前記自動変速機構(9)に供給する第1の位置(右半位置)に切換えられ、
前記非ロックアップ時に、前記第1入力圧(PSECA)を前記発進装置(4)及び前記オイルクーラ(8)を通してオイルパンへ排出すると共に、前記第2入力圧(PSECB)を前記自動変速機構(9)に供給する第2の位置(左半位置)に切換えられる、
ことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置(1)にある。
【0009】
請求項2に係る本発明は(例えば図1参照)、前記発進装置(4)は、前記ロックアップ時に油を入力すると共に前記非ロックアップ時に油を出力する第1給排ポート(4a)と、前記非ロックアップ時に油を入力すると共に前記ロックアップ時に油を出力する第2給排ポート(4b)と、の2つのポートを有し、
前記ロックアップ切換えバルブ(7)は、前記第1の位置(右半位置)と前記第2の位置(左半位置)とが切換えられることで、前記第1給排ポート(4a)及び前記第2給排ポート(4b)からの給排を逆転切換えしてなる、
ことを特徴とする請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置(1)にある。
【0010】
請求項3に係る本発明は(例えば図1参照)、前記ロックアップ切換えバルブ(7)は、前記第1入力圧(PSECA)を入力する第1ポート(7c)、前記第2入力圧(PSECB)を入力する第2ポート(7b)、前記第1給排ポート(4a)に接続された第3ポート(7g)、前記第2給排ポート(4b)に接続された第4ポート(7h)、前記オイルクーラ(8)の入力油路に接続された第5ポート(7f)、前記オイルクーラ(8)の出力油路に接続された第6ポート(7d)、前記自動変速機構(9)に接続された第7ポート(7e)、前記オイルパンに連通される第8ポート(7j)、を有してなり、
前記第1の位置(右半位置)にて、前記第1ポート(7c)及び前記第3ポート(7g)、前記第2ポート(7b)及び前記第5ポート(7f)、前記第6ポート(7d)及び前記第7ポート(7e)、を連通してなり、
前記第2の位置(左半位置)にて、前記第1ポート(7c)及び前記第4ポート(7h)、前記第3ポート(7g)及び前記第5ポート(7f)、前記第6ポート(7d)及び前記第8ポート(7j)、前記第2ポート(7b)及び前記第7ポート(7e)、を連通してなる、
ことを特徴とする請求項2記載の自動変速機の油圧制御装置(1)にある。
【0011】
請求項4に係る本発明は(例えば図1参照)、前記ロックアップ時に前記クラッチ(3)の係合力を設定する負圧を制御するロックアップ圧制御バルブ(6)を備え、
前記ロックアップ切換えバルブ(7)は、前記ロックアップ圧制御バルブ(6)に接続された第9ポート(7i)を有してなり、
前記第1の位置(右半位置)にて、前記第4ポート(7h)及び前記第9ポート(7i)を連通してなる、
ことを特徴とする請求項3記載の自動変速機の油圧制御装置(1)にある。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明によると、ロックアップ時に第1入力圧を発進装置に供給すると共に、第2入力圧をオイルクーラを通して自動変速機構に供給し、非ロックアップ時に第1入力圧を発進装置及びオイルクーラを通してオイルパンへ排出すると共に、第2入力圧を自動変速機構に供給するロックアップ切換えバルブを備えているので、ロックアップ時及び非ロックアップ時ともに、発進装置と自動変速機構とが直列的に配置されて油が流れる油路構成になることがなく、たとえ発進装置に異物が残ったとしても、自動変速機構の潤滑油路に流入することを防止することができる。
【0014】
また、低油温時の非ロックアップ時には、管路抵抗の大きいオイルクーラを経由せずに油を自動変速機構に供給するので、管路抵抗を低減することができ、自動変速機構各部への潤滑油の供給の不足や、自動変速機構に配置されたクラッチの遠心油圧をキャンセルするための油室への油の供給が遅れることの防止を図ることができる。
【0015】
さらに、ロックアップ時には、オイルクーラを介して自動変速機構の潤滑油路に油を供給するように構成され、非ロックアップ時には、発進装置から排出された油をオイルクーラに供給するように構成されているので、車速が高くなり、自動変速機構に冷却が必要となりがちなロックアップ時には、オイルクーラを介して冷却された油を潤滑油路に供給することができ、流体伝動装置で高温となった油を冷却する必要がある非ロックアップ時には、発進装置から排出された油を直ちにオイルクーラに供給することができる。
【0016】
請求項2に係る本発明によると、第1の位置と第2の位置とが切換えられることで、第1給排ポート及び第2給排ポートからの給排を逆転切換えするロックアップ切換えバルブを備えているので、ロックアップ時に油を入力すると共に非ロックアップ時に油を出力する第1給排ポートと、非ロックアップ時に油を入力すると共にロックアップ時に油を出力する第2給排ポートと、の2つのポートを有する発進装置を備えたものにあって、異物を自動変速機構の潤滑油路に流入することを防止することができる。
【0017】
請求項3に係る本発明によると、ロックアップ時に第1の位置に切換えることで、オイルクーラを介して自動変速機構の潤滑油路に油が供給されるように構成し、非ロックアップ時に第2の位置に切換えることで、発進装置から排出された油がオイルクーラに供給されるように構成することができる。
【0018】
請求項4に係る本発明によると、ロックアップ切換えバルブは、ロックアップ圧制御バルブに接続された第9ポートを有し、第1の位置にて、第4ポート及び第9ポートを連通するように構成されているので、ロックアップ時にロックアップ圧制御バルブによってクラッチの係合力を設定する負圧を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態に係る油圧制御装置を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態を図1に沿って説明する。
【0021】
例えば車輌等に搭載される自動変速機(全体図省略)は、エンジン(駆動源)のクランク軸に接続し得る入力軸と、該入力軸の回転(駆動力)を発進装置4と、該発進装置4を介して入力された回転を歯車機構や摩擦係合要素(クラッチやブレーキ)によって変速し、出力軸に伝達する自動変速機構9とを備えており、さらに、該自動変速機構9の摩擦係合要素の係合状態や上記発進装置を油圧制御するための、本発明に係る自動変速機の油圧制御装置1を備えて構成されている。
【0022】
上記発進装置4は、図1に示すように、入力軸の回転を入力するポンプインペラ2a、該ポンプインペラ2aからのオイルの流れを受けて回転される(流体伝動される)タービンランナ2b、及びタービンランナ2bからポンプインペラ2aに戻るオイルを整流しつつトルク増大効果を生じさせるステータ2cを有するトルクコンバータ(流体伝動装置)2を備えており、また、詳しくは後述する油圧供給に基づき入力軸とタービンランナ2bとを直結状態にするロックアップクラッチ(クラッチ)3を備えて構成されている。なお、ステータ2cは、ワンウェイクラッチFによって、ポンプインペラ2aの回転よりタービンランナ2bの回転が下回る状態で回転が固定されて、オイルの流れの反力を受圧してトルク増大効果を生じさせ、タービンランナ2bの回転が上回る状態になると空転して、オイルの流れが負方向に作用しないように構成されている。
【0023】
また、発進装置4には、上記ロックアップクラッチ3がロックアップ状態の際にオイルが入力され、ロックアップ解放状態の際にオイルが出力される給排ポート(第1給排ポート)4aと、ロックアップ解放状態の際にオイルが入力され、ロックアップ状態の際にオイルが出力される給排ポート(第2給排ポート)4bとが備えられている。
【0024】
つづいて、本発明に係る自動変速機の油圧制御装置1について説明する。自動変速機の油圧制御装置1は、図1に示すように、リニアソレノイドバルブSLU(不図示)、セカンダリレギュレータバルブ5、ロックアップリレーバルブ(ロックアップ切換えバルブ)7、ロックアップコントロールバルブ(ロックアップ圧制御バルブ)6、チェックバルブ10、チェックバルブ11、オイルクーラ8、及び自動変速機構内部の歯車機構等を潤滑するための潤滑油路(自動変速機構)(LUBE)9、等を備えて構成されている。
【0025】
なお、自動変速機の油圧制御装置1には、図1に示した部分の他に、上記自動変速機構のクラッチやブレーキの油圧サーボに油圧を供給するための各種バルブや油路等が備えられているが、説明の便宜上、本発明の要部を除き、省略して説明する。
【0026】
図1に示すように、自動変速機の油圧制御装置1は、エンジンの回転(スロットル開度)に連動して、駆動されるオイルポンプ(不図示)を備えており、該オイルポンプにより発生された油圧は、プライマリレギュレータバルブ(不図示)によってライン圧Pに調圧される。また、リニアソレノイドバルブSLUは、不図示の電子制御装置からの信号に基づき、上記ライン圧Pを車輌の走行状況に応じたコントロール圧PSLUに調圧して出力する。
【0027】
セカンダリレギュレータバルブ5は、スプール5pと、該スプール5pを上方に付勢するスプリング5sとを備えていると共に、該スプール5pの上方に油室5aと、入力ポート5cと、出力ポート5dと、出力ポート5eとを備えている。また、油室5aには、詳しくは後述するセカンダリ圧PSECAがフィードバック圧として入力される。
【0028】
セカンダリレギュレータバルブ5のスプール5pの位置は、図中の右側の状態(以下、「右半位置」という)であると、入力ポート5cと出力ポート5dとが連通し、また、スプール5pがスプリング5sの付勢力に反して図中の左側の状態(以下、「左半位置」という)に移動制御されると、入力ポート5cと出力ポート5eとが連通して(絞り量が少なくなって)いく。つまり、出力ポート5dから出力され、油路b1,b3を介して上記油室5aに入力されるフィードバック圧の大きさ(即ち、プライマリレギュレータバルブから出力され、入力ポート5cに入力される油圧)によってスプール5pが移動制御されると共に、出力ポート5eより排出される油圧量が調整されることで出力ポート5dから出力される油圧が調圧され、これによって油路b1,b2,b3,b4,b5の油圧がスロットル開度に応じたセカンダリ圧(第1入力圧)PSECAとして調圧される。
【0029】
また、出力ポート5eより油路a1に排出された油圧は、セカンダリレギュレータバルブ5から排出された排圧(第2入力圧)PSECBとして、油路a1を介して、詳しくは後述するロックアップリレーバルブ7のポート7bに供給される。
【0030】
ロックアップリレーバルブ7は、スプール7pと、該スプール7pを上方に付勢するスプリング7sとを備えていると共に、該スプール7pの上方に油室7aと、ポート(第2ポート)7bと、ポート(第1ポート)7cと、ポート(第6ポート)7dと、ポート(第7ポート)7eと、ポート(第5ポート)7fと、ポート(第3ポート)7gと、ポート(第4ポート)7hと、ポート(第9ポート)7iと、ポート(第8ポート)7jとを備えている。
【0031】
上記油室7aには、油路c1を介して上記リニアソレノイドバルブSLUが接続されており、該リニアソレノイドバルブSLUよりコントロール圧PSLUが出力されると、該コントロール圧PSLUが入力される。即ち、ロックアップリレーバルブ7は、該リニアソレノイドバルブSLUよりコントロール圧PSLUが出力されていない状態又はコントロール圧PSLUが所定圧力よりも低い状態では、左半位置(第2の位置)となり、該リニアソレノイドバルブSLUより出力されるコントロール圧PSLUが所定圧力よりも高い状態では、右半位置(第1の位置)となる。
【0032】
該ロックアップリレーバルブ7のスプール7pが左半位置であると、ポート7bとポート7e、ポート7cとポート7h、ポート7fとポート7g、ポート7dとポート7jがそれぞれ連通状態となり、該スプール7pが右半位置であると、ポート7bとポート7f、ポート7cとポート7g、ポート7dとポート7e、ポート7hとポート7iがそれぞれ連通状態となる。
【0033】
上記リニアソレノイドバルブSLUからのコントロール圧PSLUが出力されていない状態又はコントロール圧PSLUが所定圧力よりも低い状態では、油室7aに油圧が入力されない又は所定圧力より低い圧力が入力され、この状態ではスプリング7sの付勢力により、スプール7pが左半位置となる。すると、油路a1を介してポート7bに入力されているセカンダリ圧の排圧PSECBがポート7eより出力され、油路e1,e2,e3を介して自動変速機構の潤滑油路9に供給される。
【0034】
また、油路b1,b2,b5を介してポート7cに入力されているセカンダリ圧PSECAがポート7hより出力され、油路h1,h2を介して発進装置4の給排ポート4bに供給され、つまり発進装置4内にセカンダリ圧PSECAが供給され、該発進装置4がロックアップ解放状態とされる。発進装置4内に供給されたオイルは給排ポート4aより出力され、油路g2,g1を介して上記ロックアップリレーバルブ7のポート7gに入力され、更にポート7fより出力されて、油路f1,f3,f4等を介してオイルクーラ(COOLER)8に入力される。なお、オイルクーラ8に入力されたオイルは、該オイルクーラ8により冷却された後、油路f5を介してロックアップリレーバルブ7のポート7dに入力され、更にポート7jより出力されて、不図示のオイルパンへ排出される。なお、油路f1,f3,f4の区間には、油路f2を介してチェックバルブ10、油路f3,f4の間にチェックバルブ11がそれぞれ配置されており、オイルクーラ8に供給される油圧が一定の範囲内となるように調整されている。
【0035】
また、上記リニアソレノイドバルブSLUからのコントロール圧PSLUが所定圧力よりも高い状態では、油室7aにコントロール圧PSLUが入力され、スプリング7sの付勢力に反してスプール7pが右半位置となる。すると、油路a1を介してポート7bに入力されているセカンダリ圧の排圧PSECBがポート7fより出力され、油路f1,f3,f4等を介してオイルクーラ8に入力される。オイルクーラ8に入力されたオイルは、該オイルクーラ8により冷却された後、油路f5を介してロックアップリレーバルブ7のポート7dに入力され、更にポート7eより出力されて、油路e1,e2,e3を介して自動変速機構の潤滑油路9に供給される。
【0036】
さらに、油路b1,b2,b5を介してポート7cに入力されているセカンダリ圧PSECAがポート7gより出力され、油路g1,g2を介して発進装置4の給排ポート4aに供給され、つまり発進装置4内にセカンダリ圧PSECAが供給され、該発進装置4がロックアップ状態とされる。発進装置4内に供給されたオイルは給排ポート4bより出力され、油路h2,h1を介して上記ロックアップリレーバルブ7のポート7hに入力され、更にポート7iより出力されて、油路j1を介して、詳しくは後述するロックアップコントロールバルブ6のポート6dに入力される。
【0037】
ロックアップコントロールバルブ6は、スプール6pと、該スプール6pを下方に付勢するスプリング6sとを備えており、該スプール6pの下方に油室6bと、該スプール6pの上方に油室6aと、スプール6pのランド部の径の差違(受圧面積の差違)により形成された油室6cと、ポート6dと、ポート6eとを備えている。
【0038】
上述のようにロックアップリレーバルブ7が左半位置(即ち、ロックアップ解放状態)の際、ロックアップコントロールバルブ6の油室6bには、ロックアップリレーバルブ7のポート7hから出力されたセカンダリ圧PSECAが油路h1,h3を介して入力され、油室6cには、不図示のリニアソレノイドバルブSLUより電子制御装置からの信号に基づくコントロール圧PSLUが油路k1を介して入力される。また、油室6aには、発進装置4の給排ポート4aから出力された油圧が油路g2,g3を介して入力される。
【0039】
ロックアップコントロールバルブ6は、上述のようにリニアソレノイドバルブSLUからのコントロール圧PSLUが出力されていない状態又はコントロール圧PSLUが所定圧力よりも低い状態なので、油室6aに作用する油圧とスプリング6sの付勢力とが上回るため、スプール6pが左半位置となる。なお、ロックアップコントロールバルブ6のスプール6pが左半位置となる際には、上記ポート6dとポート6eとが連通するが、該ポート6dと油路j1を介して接続されるロックアップリレーバルブ7のポート7iは遮断状態であるので、油圧は作用しない。
【0040】
一方、上述のようにロックアップリレーバルブ7が右半位置(即ち、ロックアップ状態)の際、ロックアップコントロールバルブ6の油室6bには、発進装置4の給排ポート4bから出力された油圧が油路h2,h3を介して入力され、油室6cには、不図示のリニアソレノイドバルブSLUより電子制御装置からの信号に基づくコントロール圧PSLUが油路k1を介して入力される。また、油室6aには、ロックアップリレーバルブ7のポート7gから出力されたセカンダリ圧PSECAが油路g1,g3を介して入力される。
【0041】
ロックアップコントロールバルブ6のスプール6pは、油室6cにコントロール圧PSLUが所定圧力よりも高い状態で入力されていくと、上記油室6aに作用する油圧とスプリング6sの付勢力とに反し、スプール6pが上方に(図中の左半位置より右半位置に)移動制御される。すると、スプール6pが上方に移動するにつれてポート6dとドレーンポートEXとが徐々に連通し(絞り量が少なくなり)、油路j1、ロックアップリレーバルブ7のポート7i,7h、油路h1,h3を介して油室6bの油圧が低下する。つまり、油路k1を介して上記油室6cに入力されるコントロール圧PSLUの大きさ(即ち、車輌の走行状況に応じた油圧)によってスプール6pが移動制御されると共に、ドレーンポートEXより排出される油圧量が調整され、これによって油路j1、ロックアップリレーバルブ7のポート7i,7h、油路h1,h2,h3の油圧、即ちロックアップクラッチ3のロックアップ状態の係合力を設定する負圧が制御される。
【0042】
以上のように、本発明の実施の形態に係る自動変速機の油圧制御装置1によると、ロックアップ状態の際にセカンダリ圧PSECAを発進装置4に供給すると共に、セカンダリ圧の排圧PSECBをオイルクーラ8を通して自動変速機構の潤滑油路9に供給し、ロックアップ解放状態の際にセカンダリ圧PSECAを発進装置4及びオイルクーラ8を通してオイルパンへ排出すると共に、セカンダリ圧の排圧PSECBを自動変速機構の潤滑油路9に供給するロックアップリレーバルブ7を備えているので、ロックアップ状態及びロックアップ解放状態ともに、発進装置4と自動変速機構の潤滑油路9とが直列的に配置されて油が流れる油路構成になることがなく、たとえ発進装置4に異物が残ったとしても、自動変速機構の潤滑油路9に流入することを防止することができる。
【0043】
また、低油温時のロックアップ解放状態の際には、管路抵抗の大きいオイルクーラ8を経由せずに油を自動変速機構の潤滑油路9に供給するので、管路抵抗を低減することができ、自動変速機構各部への潤滑油の供給の不足や、自動変速機構に配置されたクラッチの遠心油圧をキャンセルするための油室への油の供給が遅れることの防止を図ることができる。
【0044】
さらに、ロックアップ状態の際には、オイルクーラ8を介して自動変速機構の潤滑油路9に油を供給するように構成され、ロックアップ開放状態の際には、発進装置4から排出された油をオイルクーラ8に供給するように構成されているので、車速が高くなり、自動変速機構の潤滑油路9に冷却が必要となりがちなロックアップ状態の際には、オイルクーラ8を介して冷却された油を潤滑油路9に供給することができ、トルクコンバータ2で高温となった油を冷却する必要があるロックアップ解放状態の際には、発進装置4から排出された油を直ちにオイルクーラ8に供給することができる。
【0045】
また、ロックアップリレーバルブ7が左半位置と右半位置とに切換えられることで、給排ポート4a及び給排ポート4bからの給排を逆転切換えするロックアップリレーバルブ7を備えているので、ロックアップ状態の際に油を入力すると共にロックアップ解放状態の際に油を出力する給排ポート4aと、ロックアップ解放状態の際に油を入力すると共にロックアップ状態の際に油を出力する給排ポート4bと、の2つのポートを有する発進装置4を備えたものにあって、異物を自動変速機構の潤滑油路9に流入することを防止することができる。
【0046】
また、ロックアップ状態の際に右半位置に切換えることで、オイルクーラ8を介して自動変速機構の潤滑油路9に油が供給されるように構成し、ロックアップ解放状態の際に左半位置に切換えることで、発進装置4から排出された油がオイルクーラ8に供給されるように構成することができる。
【0047】
また、ロックアップリレーバルブ7は、ロックアップコントロールバルブ6に接続されたポート7iを有し、右半位置にて、ポート7h及びポート7iを連通するように構成されているので、ロックアップ状態の際にロックアップコントロールバルブ6によってロックアップクラッチ3の係合力を設定する負圧を制御することができる。
【0048】
なお、本実施の形態においては、第1入力圧及び第2入力圧をそれぞれセカンダリ圧及びセカンダリ圧の排圧であるように説明したが、これに限らず、例えばライン圧及びライン圧の排圧を用いるようにしても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 自動変速機の油圧制御装置
2 流体伝動装置(トルクコンバータ)
3 クラッチ(ロックアップクラッチ)
4 発進装置
4a 第1給排ポート(給排ポート)
4b 第2給排ポート(給排ポート)
6 ロックアップ圧制御バルブ(ロックアップコントロールバルブ)
7 ロックアップ切換えバルブ(ロックアップリレーバルブ)
7b 第2ポート
7c 第1ポート
7d 第6ポート
7e 第7ポート
7f 第5ポート
7g 第3ポート
7h 第4ポート
7i 第9ポート
7j 第8ポート
8 オイルクーラ
9 自動変速機構(潤滑油路)
SECA 第1入力圧(セカンダリ圧)
SECB 第2入力圧(セカンダリ圧の排圧)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と自動変速機構との間に介在された流体伝動装置及び該流体伝動装置をロックアップし得るクラッチを有する発進装置内に油を給排させると共に、オイルクーラに油を送出して該油を冷却し、かつ自動変速機構内に油を供給して該自動変速機構を潤滑する自動変速機の油圧制御装置において、
前記クラッチのロックアップ時と非ロックアップ時とに基づき切換えられるロックアップ切換えバルブを備え、
前記ロックアップ切換えバルブは、
前記ロックアップ時に、入力された第1入力圧を前記発進装置に供給すると共に、入力された第2入力圧を前記オイルクーラを通して前記自動変速機構に供給する第1の位置に切換えられ、
前記非ロックアップ時に、前記第1入力圧を前記発進装置及び前記オイルクーラを通してオイルパンへ排出すると共に、前記第2入力圧を前記自動変速機構に供給する第2の位置に切換えられる、
ことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記発進装置は、前記ロックアップ時に油を入力すると共に前記非ロックアップ時に油を出力する第1給排ポートと、前記非ロックアップ時に油を入力すると共に前記ロックアップ時に油を出力する第2給排ポートと、の2つのポートを有し、
前記ロックアップ切換えバルブは、前記第1の位置と前記第2の位置とが切換えられることで、前記第1給排ポート及び前記第2給排ポートからの給排を逆転切換えしてなる、
ことを特徴とする請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記ロックアップ切換えバルブは、前記第1入力圧を入力する第1ポート、前記第2入力圧を入力する第2ポート、前記第1給排ポートに接続された第3ポート、前記第2給排ポートに接続された第4ポート、前記オイルクーラの入力油路に接続された第5ポート、前記オイルクーラの出力油路に接続された第6ポート、前記自動変速機構に接続された第7ポート、前記オイルパンに連通される第8ポート、を有してなり、
前記第1の位置にて、前記第1ポート及び前記第3ポート、前記第2ポート及び前記第5ポート、前記第6ポート及び前記第7ポート、を連通してなり、
前記第2の位置にて、前記第1ポート及び前記第4ポート、前記第3ポート及び前記第5ポート、前記第6ポート及び前記第8ポート、前記第2ポート及び前記第7ポート、を連通してなる、
ことを特徴とする請求項2記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項4】
前記ロックアップ時に前記クラッチの係合力を設定する負圧を制御するロックアップ圧制御バルブを備え、
前記ロックアップ切換えバルブは、前記ロックアップ圧制御バルブに接続された第9ポートを有してなり、
前記第1の位置にて、前記第4ポート及び前記第9ポートを連通してなる、
ことを特徴とする請求項3記載の自動変速機の油圧制御装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−210061(P2010−210061A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59622(P2009−59622)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】