自動測定装置
【課題】部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合があった場合であっても、簡単に不具合の原因を特定することができる自動測定装置を提供する。
【解決手段】pH計(自動測定装置)1が、試料水中に浸漬されたガラス電極と比較電極との電位差の計測信号を出力する電位差信号出力部(信号出力部)11と、その計測信号から周波数と強度を分析する信号分析部12と、前記測定信号から試料水のpHを演算するpH演算部(指標成分量演算部)13と、少なくとも部品不良、または、取付けミスや組立ミスという不具合がある場合の信号の周波数と強度を予め記憶しておく異常信号記憶部14と、信号分析部12と異常信号記憶部14に記憶された周波数及び強度に基づいて、不具合の原因を特定する異常原因特定部15を備えることにより、設置現場において簡単に不具合の原因を特定することができ、非常に手間と時間がかかっていた作業を大幅に削減することができる。
【解決手段】pH計(自動測定装置)1が、試料水中に浸漬されたガラス電極と比較電極との電位差の計測信号を出力する電位差信号出力部(信号出力部)11と、その計測信号から周波数と強度を分析する信号分析部12と、前記測定信号から試料水のpHを演算するpH演算部(指標成分量演算部)13と、少なくとも部品不良、または、取付けミスや組立ミスという不具合がある場合の信号の周波数と強度を予め記憶しておく異常信号記憶部14と、信号分析部12と異常信号記憶部14に記憶された周波数及び強度に基づいて、不具合の原因を特定する異常原因特定部15を備えることにより、設置現場において簡単に不具合の原因を特定することができ、非常に手間と時間がかかっていた作業を大幅に削減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水質汚濁や大気汚染の指標成分、上下水の指標成分、工場あるいはプラント等で用いられる水や溶液の指標成分等を連続して監視するために、屋外や工場構内等の被測定試料の近くに設置される自動測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水質や溶液の最も基本的な指標の一つであるpHを測定するための自動測定装置として、従来からpH計が知られている。環境水、排水、上下水、プロセス等のpHは、河川や湖沼、屋外の処理槽、プラント内の溶液貯留槽などに浸漬されたpH計のセンサからの信号が、センサの設置場所近くに配設された変換器でpH測定値に変換され連続的に測定される(例えば、図1参照)。測定値は、pH計に表示されるとともに記録計や監視用の機器などに出力される。
【0003】
また、河川、湖沼、港湾等の水質や、工場排水等の有機物質による汚濁状態を測定するための自動測定装置として、従来から、COD(Chemical Oxygen Demand)計測器が知られている(例えば、特許文献1参照)。CODとは、化学的酸素要求量のことで、水中の被酸化性物質、主として有機物を、酸化剤によって酸化分解させ、その際に消費される酸素量をmgO/Lで表示する水質汚濁の指標であり、数値が小さいほど汚濁量が少ないことを意味する。すなわち、特定の酸化剤が、水中の有機物などの汚れに結合して酸素を与え、汚れが多いほど酸化剤が消費されるという原理に基づくものであり、例えば図5に示す構成となっている。
このCOD分析法については、JIS K 0102「工場排水試験方法」に定められた過マンガン酸カリウム法がある。また、現在もっとも多く利用されているCOD自動計測器は、JIS K 0806「化学的酸素消費量(COD)自動計測器」の規格にそって製作されている。この規格に適合する計測器は、河川、湖沼などの公共用水域の水及び工場、事業所などからの排出水を導入し、1時間以内の周期で連続して測定を行うものである。
【0004】
また、大気中の汚染物質を測定する自動測定装置の一例として、従来から、紫外線吸収法によるオゾン測定装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。これは、特定波長の紫外線がオゾンに吸収され、その吸収率がオゾン濃度に比例するという原理に基づくものであり、例えば図8に示す構成となっている。
図8のオゾン測定装置30において、31は試料ガス導入口、32は試料ガス流通管、33は三方切換弁、34はバイパス管、35はオゾン分解器、36は紫外線吸収セル、37は紫外線ランプ、38は検出器、39は比較演算回路、40は流量計、41はポンプ、42はパイプ、43は試料ガス排出口を示す。
このオゾン測定装置のような大気汚染自動測定装置は、市街地、無人の測定局舎内、トンネル内、工場構内などに設置され、指標成分量を連続的に測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−195412号公報
【特許文献2】特開平7−159313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、水質汚濁や大気汚染の指標成分、上下水の指標成分、工場あるいはプラント等で用いられる水や溶液の指標成分等を測定する自動測定装置は、指標成分量を連続して監視するために、屋外や工場構内等の被測定試料の近くに設置されている。そのような現場では、AC100V電源、スイッチング電源もしくはラジオ放送局の電波などのようなノイズ源の影響を受け、測定値が不安定となる場合がある。また、測定値が安定しない原因としては、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合によるものも考えられる。
しかし、上記のような、従来の自動測定装置では、設置現場において測定値が安定しないことにより不具合が発生していることがわかっても、どこに原因があるのかを特定することは難しく、部品交換、または、取付け直しや組立直しを設置現場で試行錯誤により繰り返すことによって原因を見つけることしかできなかったため、非常に手間と時間のかかる作業が発生するという課題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合があった場合であっても、設置現場において簡単に不具合の原因を特定することができる自動測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明は、試料に関する指標成分量を測定する自動測定装置において、前記指標成分量に基づく計測信号を出力する信号出力部と、前記計測信号から周波数と強度を分析する信号分析部と、前記計測信号から前記指標成分量を演算する指標成分量演算部と、少なくとも部品不良、または、取付けミスや組立ミスという不具合がある場合の信号の周波数と強度を予め記憶しておく異常信号記憶部と、前記信号分析部により分析された計測信号の周波数及び強度と前記異常信号記憶部に記憶された信号の周波数及び強度に基づいて、前記不具合の原因を特定する異常原因特定部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の自動測定装置によれば、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合があった場合であっても、設置現場において簡単に不具合の原因を特定することができ、非常に手間と時間がかかっていた作業を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1におけるpH計(自動測定装置)の基本的構成の一例を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1〜3における自動測定装置において、アース取付け不良なし/ありの場合の測定信号の周波数スペクトルを示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるpH計(自動測定装置)の機能ブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるpH計(自動測定装置)の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態2におけるCOD計測器(自動測定装置)の系統の一例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2におけるCOD計測器(自動測定装置)の機能ブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態2におけるCOD計測器(自動測定装置)の動作を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態3における紫外線吸収法によるオゾン測定装置(自動測定装置)の概略構成の一例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態3におけるオゾン測定装置(自動測定装置)において、スイッチング電源で使用されている部品故障なし/ありの場合の測定信号の周波数スペクトルを示す図である。
【図10】この発明の実施の形態3におけるオゾン測定装置(自動測定装置)の機能ブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態3におけるオゾン測定装置(自動測定装置)の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、前述のとおり、pH計(自動測定装置)1の基本的構成の一例を示す図である。pH計(自動測定装置)1は、変換器2と電極ホルダ3に組み込まれたセンサ4とから構成されている。センサ4は、ガラス電極(図示せず)と比較電極(図示せず)とを備えている。また、このセンサ4が、後述する電位差信号出力部(信号出力部)11を構成する。
このpH計(自動測定装置)1による試料水のpH(指標成分量)の測定は、試料水に浸漬されたセンサ4のガラス電極に発生した起電力を、比較電極との電位差として計測して変換器2に出力することにより行われる。変換器2では、この計測信号をpH測定値に変換する。また、この変換器2が、後述するpH演算部(指標成分量演算部)13を構成する。
【0012】
ここで、上記の計測信号に対して、FFT(Fast Fourier Transform)などのフーリエ変換を行うことにより、周波数と強度とを示す周波数スペクトルを得ることができる。
【0013】
図2(a)は、正常な計測信号、すなわち、少なくとも部品不良、及び、アース取付け不良等の取付けミスやねじが緩んでいる等の組立ミスなどの人為的な不具合がない状態で計測された電位差に対応する計測信号のFFT波形(周波数スペクトル)を示す図である。pH計(自動測定装置)1は、少なくとも部品不良、及び、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合がない状態で計測された信号の周波数スペクトルを、予め記憶しておく。
【0014】
一方、図2(b)は、アース取付け不良という不具合があった場合の周波数スペクトルを示す図である。この図を見るとわかるとおり、アース取付け不良という不具合があった場合には、アース取付け不良による商用電源ノイズの基本波が重畳するとともに、その商用電源ノイズ付近と、計測信号の基本波付近に、アース取付け不良による商用電源ノイズの高調波が検出される。この信号を、アース取付け不良という不具合があった場合の異常信号として、予め記憶しておく。
またこの他に、ねじが緩んでいる等の組立ミスや、部品が故障しているという部品不良など、様々な不具合がある場合の信号についても、異常信号として予め計測し、記憶しておく。
【0015】
図3は、この発明の実施の形態1におけるpH計(自動測定装置)1の機能ブロック図であり、図4は、pH計(自動測定装置)1の動作を示すフローチャートである。この図3,図4に従って、この発明の実施の形態1におけるpH計(自動測定装置)1の動作について説明する。
【0016】
ここで、異常信号記憶部14には、前述のとおり、部品不良、または、アース取付け不良等の取付けミスやねじの緩み等の組立ミスなど、様々な不具合がある場合について予め計測された信号が、予め記憶されている。そして、この異常信号記憶部14に記憶されている複数の異常信号に対する分析結果が異常原因特定部15に出力される。
なお、ここでは、異常信号記憶部14には、既に予め複数の異常信号が記憶され、その異常信号の周波数と強度を分析した分析結果も記憶されているものとして説明する。
【0017】
まず初めに、電位差信号出力部(信号出力部)11が、試料水中に浸漬されたガラス電極と比較電極との電位差の計測信号を出力する(ステップST11)。この出力により得られた計測信号から、信号分析部12が周波数と強度を分析し、異常原因特定部15に出力する(ステップST12)。次に、異常原因特定部15が、信号分析部12において分析された計測信号の周波数と強度と、異常信号記憶部14から送られてきた複数の異常信号の周波数と強度とを比較することにより、前記計測信号に異常原因が含まれているか否か、及び、含まれている場合にはどのような異常原因であるのかを特定する(ステップST13)。
【0018】
この結果、異常原因が含まれていない場合(ステップST14のNOの場合)には、pH演算部(指標成分量演算部)13によりpHを求める(ステップST15)。pHを求める方法は周知の方法であるため、ここでは説明を省略する。
【0019】
一方、ステップST13において特定された異常原因が、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合であった場合(ステップST14のYESの場合)には、どこに異常原因があるのかを報知して(ステップST16)、処理を終了する。ここで、異常原因を報知する方法としては、表示部(図示せず)または外部に接続されたPC等の情報表示装置に文字や図を示すことによるものや、ランプの点灯、アラーム音の発生など、様々な方法が考えられるが、いずれの方法によるものでもよい。
【0020】
これにより、部品不良、または、アース取付け不良等の取付けミスやねじの緩み等の組立ミスなどの不具合があった場合に、その不具合が異常原因として報知されることにより、その不具合に即座に対応することができ、手間や時間をかけて試行錯誤により異常原因を見つける必要がなく、また、異常な状態のまま測定を続けてしまうということを防止することができる。
【0021】
以上のように、この発明の実施の形態1におけるpH計(自動測定装置)によれば、上記のような構成にしたので、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合があった場合であっても、設置現場において簡単に不具合の原因を特定することができ、非常に手間と時間がかかっていた作業を大幅に削減することができる。
【0022】
実施の形態2.
図5は、前述のとおり、COD計測器(自動測定装置)20の系統の一例を示す図である。このCOD計測器(自動測定装置)20による、試料水における酸素消費量測定は、下記の手順で行われる。
(1)試料を適量採取し、希釈水を注入して100mLとする。
(2)硫酸溶液を添加し、硝酸銀1gを添加する。
(3)過マンガン酸カリウムを添加する。
(4)沸騰水浴中で、30分加熱し、しゅう酸ナトリウム溶液を添加する。
(5)消費した過マンガン酸カリウム量を電位差滴定により計測する。
(6)このようにして求められた過マンガン酸カリウム量を、酸素消費量(COD)に換算する。
【0023】
上記のように計測された電位差滴定の計測信号に対しては、実施の形態1と同様に、FFT(Fast Fourier Transform)などのフーリエ変換を行うことにより、周波数と強度とを示す周波数スペクトルを得ることができる。
【0024】
COD計測器(自動測定装置)20は、少なくとも部品不良、及び、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合がない状態で測定された信号の周波数スペクトルと、様々な不具合がある場合の異常信号とを予め計測し、記憶しておく。
【0025】
図6は、この発明の実施の形態2におけるCOD計測器(自動測定装置)20の機能ブロック図であり、図7は、COD計測器(自動測定装置)20の動作を示すフローチャートである。この図6,図7に従って、この発明の実施の形態2におけるCOD計測器(自動測定装置)20の動作について説明する。
【0026】
ここで、異常信号記憶部24には、前述のとおり、部品不良、または、アース取付け不良等の取付けミスやねじの緩み等の組立ミスなど、様々な不具合がある場合について予め計測された信号が、予め記憶されている。そして、この異常信号記憶部24に記憶されている複数の異常信号に対する分析結果が異常原因特定部25に出力される。
なお、ここでは、異常信号記憶部24には、既に予め複数の異常信号が記憶され、その異常信号の周波数と強度を分析した分析結果も記憶されているものとして説明する。
【0027】
まず初めに、電位差滴定信号出力部(信号出力部)21が、酸素消費量(指標成分量)を測定したい試料水を採取し、過マンガン酸カリウム(酸化剤)を添加して反応させた後、消費した過マンガン酸カリウムの量を求めるための電位差滴定の計測信号を出力する(ステップST21)。この出力により得られた計測信号から、信号分析部22が周波数と強度を分析し、異常原因特定部25に出力する(ステップST22)。次に、異常原因特定部25が、信号分析部22において分析された計測信号の周波数と強度と、異常信号記憶部24から送られてきた複数の異常信号の周波数と強度とを比較することにより、前記計測信号に異常原因が含まれているか否か、及び、含まれている場合にはどのような異常原因であるのかを特定する(ステップST23)。
【0028】
この結果、異常原因が含まれていない場合(ステップST24のNOの場合)には、酸素消費量演算部(指標成分量演算部)23により酸素消費量(COD)を求める(ステップST25)。酸素消費量(COD)を求める方法は周知の方法であるため、ここでは説明を省略する。
【0029】
一方、ステップST23において特定された異常原因が、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合であった場合(ステップST24のYESの場合)には、どこに異常原因があるのかを報知して(ステップST26)、処理を終了する。ここで、異常原因を報知する方法としては、表示部(図示せず)または外部に接続されたPC等の情報表示装置に文字や図を示すことによるものや、ランプの点灯、アラーム音の発生など、様々な方法が考えられるが、いずれの方法によるものでもよい。
【0030】
これにより、部品不良、または、アース取付け不良等の取付けミスやねじの緩み等の組立ミスなどの不具合があった場合に、その不具合が異常原因として報知されることにより、その不具合に即座に対応することができ、手間や時間をかけて試行錯誤により異常原因を見つける必要がなく、また、異常な状態のまま測定を続けてしまうということを防止することができる。
【0031】
以上のように、この発明の実施の形態2におけるCOD計測器(自動測定装置)によれば、上記のような構成にしたので、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合があった場合であっても、設置現場において簡単に不具合の原因を特定することができ、非常に手間と時間がかかっていた作業を大幅に削減することができる。
【0032】
実施の形態3.
図8は、前述のとおり、紫外線吸収法によるオゾン測定装置(自動測定装置)30の概略構成の一例を示す図である。このオゾン測定装置(自動測定装置)30において、31は試料ガス導入口、32は試料ガス流通管、33は三方切換弁、34はバイパス管、35はオゾン分解器、36は紫外線吸収セル、37は紫外線ランプ、38は検出器、39は比較演算回路、40は流量計、41はポンプ、42はパイプ、43は試料ガス排出口を示す。また、紫外線吸収セル36、紫外線ランプ37及び検出器38が、後述する紫外線吸光度信号出力部(信号出力部)51を構成し、比較演算回路39が、後述するオゾン濃度演算部(指標成分量演算部)53を構成する。
【0033】
図8に示すオゾン測定装置(自動測定装置)30による、試料ガス中のオゾン濃度(指標成分量)の測定は、下記の手順で行われる。
(1)ポンプ41の作動により試料ガス導入口31から流通管32内に試料ガスを一定流量で吸引し、三方切換弁33の操作によってバイパス管34を通さずに試料ガスをセル36に導入する。
(2)紫外線ランプ37から特定波長の紫外線をセル36内の試料ガスに照射する。これにより、試料ガス中のオゾン及びその他の紫外線に吸収を有する共存成分の濃度に比例した紫外線が試料ガスに吸収される。この減衰した紫外線を検出器38で計測してその強度に対応した電気信号に変換して出力する。
(3)三方切換弁33を切り換え、試料ガスをバイパス管34を通してセル36に導入し、同様の測定を行う。この場合、オゾン分解器35によって試料ガス中のオゾン(指標成分)のみが分解されるため、オゾン以外の共存成分の濃度に比例した紫外線が吸収される。この減衰した紫外線を検出器38で計測してその強度に対応した電気信号に変換して出力する。
(4)オゾン及びその他の共存成分によって減衰した紫外線強度の計測信号と、共存成分のみによって減衰した紫外線強度の計測信号とを比較演算回路39で比較演算し、その差をオゾン濃度の測定値として出力する。以上の操作を繰り返すことにより、試料ガス中のオゾン濃度(指標成分量)が間欠的に測定される。
【0034】
ここで、上記のように計測された紫外線吸光度の計測信号に対して、実施の形態1,2と同様に、FFT(Fast Fourier Transform)などのフーリエ変換を行うことにより、周波数と強度とを示す周波数スペクトルを得ることができる。
【0035】
オゾン測定装置(自動測定装置)30は、少なくとも部品不良、及び、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合がない状態で測定された信号の周波数スペクトルと、様々な不具合がある場合の異常信号とを予め計測し、記憶しておく。
【0036】
また、紫外線吸収法によるオゾン測定装置では、吸収により減衰する紫外線の量はごくわずかであるため、小さな信号しか得ることができず、ノイズに弱いという問題がある。
そのため、AC100V電源、スイッチング電源もしくはラジオ放送局の電波などによるノイズの影響を受けた上で、さらに、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合があった場合、異常原因の特定がますます困難になってしまう。
【0037】
そこで、通常、ノイズがのりやすいAC100V電源やスイッチング電源による影響、その他、ラジオ等の放送波の影響を受けることにより、どの周波数帯域でピーク信号が得られるかは既知の情報であるので、それらのノイズ情報についても予め記憶しておく。
図9(a)は、スイッチング電源のノイズ成分が検出されている正常な計測信号の周波数スペクトルを示す図であり、図9(b)は、スイッチング電源で使用されている電解コンデンサが故障している場合の周波数スペクトルを示す図である。
これらの信号を記憶しておくことにより、既知のノイズ成分の強度が極端に高い場合には、そのノイズ成分に関連する部品の故障(部品不良)であることを特定することができる。
【0038】
図10は、この発明の実施の形態3におけるオゾン測定装置(自動測定装置)30の機能ブロック図であり、図11は、オゾン測定装置(自動測定装置)30の動作を示すフローチャートである。この図10,図11に従って、この発明の実施の形態3におけるオゾン測定装置(自動測定装置)30の動作について説明する。
【0039】
ここで、異常信号記憶部54には、前述のとおり、部品不良、または、アース取付け不良等の取付けミスやねじの緩み等の組立ミスなど、様々な不具合がある場合について予め計測された信号、及び、AC100V電源、スイッチング電源、ラジオ等の放送波などの様々なノイズの影響を受けた状態で予め計測された信号、さらには、これらの様々なノイズの影響を受けた状態かつ前記様々な不具合がある場合について予め計測された信号が、予め記憶されており、これら予め計測された複数の異常信号から周波数と強度を分析した分析結果も記憶される。そして、この異常信号記憶部54に記憶されている複数の異常信号に対する分析結果が異常原因特定部55に出力される。
なお、ここでは、異常信号記憶部54には、既に予め複数の異常信号が記憶され、その異常信号の周波数と強度を分析した分析結果も記憶されているものとして説明する。
【0040】
まず初めに、含まれるオゾン濃度(指標成分量)を測定したい試料ガスを導入し、紫外線吸光度信号出力部(信号出力部)51により紫外線吸光度の計測信号を出力する(ステップST31)。この出力により得られた計測信号から、信号分析部52が周波数と強度を分析し、異常原因特定部55に出力する(ステップST32)。次に、異常原因特定部55が、信号分析部52において分析された計測信号の周波数と強度と、異常信号記憶部54から送られてきた複数の異常信号の周波数と強度とを比較することにより、前記計測信号に異常原因が含まれているか否か、及び、含まれている場合にはどのような異常原因であるのかを特定する(ステップST33)。
【0041】
この結果、異常原因が含まれていない、または、異常原因が既知のノイズによるもののみである場合(ステップST34のNOの場合)には、そのノイズによる影響を計測信号から除去し(ステップST35)、オゾン濃度演算部(指標成分量演算部)53によりオゾン濃度を求める(ステップST36)。オゾン濃度を求める方法は、ノイズを除去したあとの周波数スペクトルを逆フーリエ変換することにより求めることができるが、これについては周知の方法であるため、ここでは説明を省略する。
【0042】
一方、ステップST33において特定された異常原因が、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合であった場合(ステップST34のYESの場合)には、どこに異常原因があるのかを報知して(ステップST37)、処理を終了する。ここで、異常原因を報知する方法としては、表示部(図示せず)または外部に接続されたPC等の情報表示装置に文字や図を示すことによるものや、ランプの点灯、アラーム音の発生など、様々な方法が考えられるが、いずれの方法によるものでもよい。
【0043】
これにより、たとえAC100V電源、スイッチング電源もしくはラジオ放送局の電波などによるノイズの影響を受けていたとしても、部品不良、または、アース取付け不良等の取付けミスやねじの緩み等の組立ミスなどの不具合があった場合に、その不具合が異常原因として報知されることにより、その不具合に即座に対応することができ、手間や時間をかけて試行錯誤により異常原因を見つける必要がなく、また、異常な状態のまま測定を続けてしまうということを防止することができる。
【0044】
以上のように、この発明の実施の形態3におけるオゾン測定装置(自動測定装置)によれば、上記のような構成にしたので、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合があった場合であっても、設置現場において簡単に不具合の原因を特定することができ、非常に手間と時間がかかっていた作業を大幅に削減することができる。
【0045】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 pH計(自動測定装置)、2 変換器、3 電極ホルダ、4 センサ、11 電位差信号出力部(信号出力部)、12,22,52 信号分析部、13 pH演算部(指標成分量演算部)、14,24,54 異常信号記憶部、15,25,55 異常原因特定部、20 COD計測器(自動測定装置)、21、電位差滴定信号出力部(信号出力部)、23 酸素消費量演算部(指標成分量演算部)、30 オゾン測定装置(自動測定装置)、31 試料ガス導入口、32 試料ガス流通管、33 三方切換弁、34 バイパス管、35 オゾン分解器、36 紫外線吸収セル、37 紫外線ランプ、38 検出器、39 比較演算回路、40 流量計、41 ポンプ、42 パイプ、43 試料ガス排出口、51 紫外線吸光度信号出力部(信号出力部)、53 オゾン濃度演算部(指標成分量演算部)。
【技術分野】
【0001】
この発明は、水質汚濁や大気汚染の指標成分、上下水の指標成分、工場あるいはプラント等で用いられる水や溶液の指標成分等を連続して監視するために、屋外や工場構内等の被測定試料の近くに設置される自動測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水質や溶液の最も基本的な指標の一つであるpHを測定するための自動測定装置として、従来からpH計が知られている。環境水、排水、上下水、プロセス等のpHは、河川や湖沼、屋外の処理槽、プラント内の溶液貯留槽などに浸漬されたpH計のセンサからの信号が、センサの設置場所近くに配設された変換器でpH測定値に変換され連続的に測定される(例えば、図1参照)。測定値は、pH計に表示されるとともに記録計や監視用の機器などに出力される。
【0003】
また、河川、湖沼、港湾等の水質や、工場排水等の有機物質による汚濁状態を測定するための自動測定装置として、従来から、COD(Chemical Oxygen Demand)計測器が知られている(例えば、特許文献1参照)。CODとは、化学的酸素要求量のことで、水中の被酸化性物質、主として有機物を、酸化剤によって酸化分解させ、その際に消費される酸素量をmgO/Lで表示する水質汚濁の指標であり、数値が小さいほど汚濁量が少ないことを意味する。すなわち、特定の酸化剤が、水中の有機物などの汚れに結合して酸素を与え、汚れが多いほど酸化剤が消費されるという原理に基づくものであり、例えば図5に示す構成となっている。
このCOD分析法については、JIS K 0102「工場排水試験方法」に定められた過マンガン酸カリウム法がある。また、現在もっとも多く利用されているCOD自動計測器は、JIS K 0806「化学的酸素消費量(COD)自動計測器」の規格にそって製作されている。この規格に適合する計測器は、河川、湖沼などの公共用水域の水及び工場、事業所などからの排出水を導入し、1時間以内の周期で連続して測定を行うものである。
【0004】
また、大気中の汚染物質を測定する自動測定装置の一例として、従来から、紫外線吸収法によるオゾン測定装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。これは、特定波長の紫外線がオゾンに吸収され、その吸収率がオゾン濃度に比例するという原理に基づくものであり、例えば図8に示す構成となっている。
図8のオゾン測定装置30において、31は試料ガス導入口、32は試料ガス流通管、33は三方切換弁、34はバイパス管、35はオゾン分解器、36は紫外線吸収セル、37は紫外線ランプ、38は検出器、39は比較演算回路、40は流量計、41はポンプ、42はパイプ、43は試料ガス排出口を示す。
このオゾン測定装置のような大気汚染自動測定装置は、市街地、無人の測定局舎内、トンネル内、工場構内などに設置され、指標成分量を連続的に測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−195412号公報
【特許文献2】特開平7−159313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、水質汚濁や大気汚染の指標成分、上下水の指標成分、工場あるいはプラント等で用いられる水や溶液の指標成分等を測定する自動測定装置は、指標成分量を連続して監視するために、屋外や工場構内等の被測定試料の近くに設置されている。そのような現場では、AC100V電源、スイッチング電源もしくはラジオ放送局の電波などのようなノイズ源の影響を受け、測定値が不安定となる場合がある。また、測定値が安定しない原因としては、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合によるものも考えられる。
しかし、上記のような、従来の自動測定装置では、設置現場において測定値が安定しないことにより不具合が発生していることがわかっても、どこに原因があるのかを特定することは難しく、部品交換、または、取付け直しや組立直しを設置現場で試行錯誤により繰り返すことによって原因を見つけることしかできなかったため、非常に手間と時間のかかる作業が発生するという課題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合があった場合であっても、設置現場において簡単に不具合の原因を特定することができる自動測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明は、試料に関する指標成分量を測定する自動測定装置において、前記指標成分量に基づく計測信号を出力する信号出力部と、前記計測信号から周波数と強度を分析する信号分析部と、前記計測信号から前記指標成分量を演算する指標成分量演算部と、少なくとも部品不良、または、取付けミスや組立ミスという不具合がある場合の信号の周波数と強度を予め記憶しておく異常信号記憶部と、前記信号分析部により分析された計測信号の周波数及び強度と前記異常信号記憶部に記憶された信号の周波数及び強度に基づいて、前記不具合の原因を特定する異常原因特定部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の自動測定装置によれば、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合があった場合であっても、設置現場において簡単に不具合の原因を特定することができ、非常に手間と時間がかかっていた作業を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1におけるpH計(自動測定装置)の基本的構成の一例を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1〜3における自動測定装置において、アース取付け不良なし/ありの場合の測定信号の周波数スペクトルを示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるpH計(自動測定装置)の機能ブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるpH計(自動測定装置)の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態2におけるCOD計測器(自動測定装置)の系統の一例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2におけるCOD計測器(自動測定装置)の機能ブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態2におけるCOD計測器(自動測定装置)の動作を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態3における紫外線吸収法によるオゾン測定装置(自動測定装置)の概略構成の一例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態3におけるオゾン測定装置(自動測定装置)において、スイッチング電源で使用されている部品故障なし/ありの場合の測定信号の周波数スペクトルを示す図である。
【図10】この発明の実施の形態3におけるオゾン測定装置(自動測定装置)の機能ブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態3におけるオゾン測定装置(自動測定装置)の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、前述のとおり、pH計(自動測定装置)1の基本的構成の一例を示す図である。pH計(自動測定装置)1は、変換器2と電極ホルダ3に組み込まれたセンサ4とから構成されている。センサ4は、ガラス電極(図示せず)と比較電極(図示せず)とを備えている。また、このセンサ4が、後述する電位差信号出力部(信号出力部)11を構成する。
このpH計(自動測定装置)1による試料水のpH(指標成分量)の測定は、試料水に浸漬されたセンサ4のガラス電極に発生した起電力を、比較電極との電位差として計測して変換器2に出力することにより行われる。変換器2では、この計測信号をpH測定値に変換する。また、この変換器2が、後述するpH演算部(指標成分量演算部)13を構成する。
【0012】
ここで、上記の計測信号に対して、FFT(Fast Fourier Transform)などのフーリエ変換を行うことにより、周波数と強度とを示す周波数スペクトルを得ることができる。
【0013】
図2(a)は、正常な計測信号、すなわち、少なくとも部品不良、及び、アース取付け不良等の取付けミスやねじが緩んでいる等の組立ミスなどの人為的な不具合がない状態で計測された電位差に対応する計測信号のFFT波形(周波数スペクトル)を示す図である。pH計(自動測定装置)1は、少なくとも部品不良、及び、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合がない状態で計測された信号の周波数スペクトルを、予め記憶しておく。
【0014】
一方、図2(b)は、アース取付け不良という不具合があった場合の周波数スペクトルを示す図である。この図を見るとわかるとおり、アース取付け不良という不具合があった場合には、アース取付け不良による商用電源ノイズの基本波が重畳するとともに、その商用電源ノイズ付近と、計測信号の基本波付近に、アース取付け不良による商用電源ノイズの高調波が検出される。この信号を、アース取付け不良という不具合があった場合の異常信号として、予め記憶しておく。
またこの他に、ねじが緩んでいる等の組立ミスや、部品が故障しているという部品不良など、様々な不具合がある場合の信号についても、異常信号として予め計測し、記憶しておく。
【0015】
図3は、この発明の実施の形態1におけるpH計(自動測定装置)1の機能ブロック図であり、図4は、pH計(自動測定装置)1の動作を示すフローチャートである。この図3,図4に従って、この発明の実施の形態1におけるpH計(自動測定装置)1の動作について説明する。
【0016】
ここで、異常信号記憶部14には、前述のとおり、部品不良、または、アース取付け不良等の取付けミスやねじの緩み等の組立ミスなど、様々な不具合がある場合について予め計測された信号が、予め記憶されている。そして、この異常信号記憶部14に記憶されている複数の異常信号に対する分析結果が異常原因特定部15に出力される。
なお、ここでは、異常信号記憶部14には、既に予め複数の異常信号が記憶され、その異常信号の周波数と強度を分析した分析結果も記憶されているものとして説明する。
【0017】
まず初めに、電位差信号出力部(信号出力部)11が、試料水中に浸漬されたガラス電極と比較電極との電位差の計測信号を出力する(ステップST11)。この出力により得られた計測信号から、信号分析部12が周波数と強度を分析し、異常原因特定部15に出力する(ステップST12)。次に、異常原因特定部15が、信号分析部12において分析された計測信号の周波数と強度と、異常信号記憶部14から送られてきた複数の異常信号の周波数と強度とを比較することにより、前記計測信号に異常原因が含まれているか否か、及び、含まれている場合にはどのような異常原因であるのかを特定する(ステップST13)。
【0018】
この結果、異常原因が含まれていない場合(ステップST14のNOの場合)には、pH演算部(指標成分量演算部)13によりpHを求める(ステップST15)。pHを求める方法は周知の方法であるため、ここでは説明を省略する。
【0019】
一方、ステップST13において特定された異常原因が、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合であった場合(ステップST14のYESの場合)には、どこに異常原因があるのかを報知して(ステップST16)、処理を終了する。ここで、異常原因を報知する方法としては、表示部(図示せず)または外部に接続されたPC等の情報表示装置に文字や図を示すことによるものや、ランプの点灯、アラーム音の発生など、様々な方法が考えられるが、いずれの方法によるものでもよい。
【0020】
これにより、部品不良、または、アース取付け不良等の取付けミスやねじの緩み等の組立ミスなどの不具合があった場合に、その不具合が異常原因として報知されることにより、その不具合に即座に対応することができ、手間や時間をかけて試行錯誤により異常原因を見つける必要がなく、また、異常な状態のまま測定を続けてしまうということを防止することができる。
【0021】
以上のように、この発明の実施の形態1におけるpH計(自動測定装置)によれば、上記のような構成にしたので、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合があった場合であっても、設置現場において簡単に不具合の原因を特定することができ、非常に手間と時間がかかっていた作業を大幅に削減することができる。
【0022】
実施の形態2.
図5は、前述のとおり、COD計測器(自動測定装置)20の系統の一例を示す図である。このCOD計測器(自動測定装置)20による、試料水における酸素消費量測定は、下記の手順で行われる。
(1)試料を適量採取し、希釈水を注入して100mLとする。
(2)硫酸溶液を添加し、硝酸銀1gを添加する。
(3)過マンガン酸カリウムを添加する。
(4)沸騰水浴中で、30分加熱し、しゅう酸ナトリウム溶液を添加する。
(5)消費した過マンガン酸カリウム量を電位差滴定により計測する。
(6)このようにして求められた過マンガン酸カリウム量を、酸素消費量(COD)に換算する。
【0023】
上記のように計測された電位差滴定の計測信号に対しては、実施の形態1と同様に、FFT(Fast Fourier Transform)などのフーリエ変換を行うことにより、周波数と強度とを示す周波数スペクトルを得ることができる。
【0024】
COD計測器(自動測定装置)20は、少なくとも部品不良、及び、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合がない状態で測定された信号の周波数スペクトルと、様々な不具合がある場合の異常信号とを予め計測し、記憶しておく。
【0025】
図6は、この発明の実施の形態2におけるCOD計測器(自動測定装置)20の機能ブロック図であり、図7は、COD計測器(自動測定装置)20の動作を示すフローチャートである。この図6,図7に従って、この発明の実施の形態2におけるCOD計測器(自動測定装置)20の動作について説明する。
【0026】
ここで、異常信号記憶部24には、前述のとおり、部品不良、または、アース取付け不良等の取付けミスやねじの緩み等の組立ミスなど、様々な不具合がある場合について予め計測された信号が、予め記憶されている。そして、この異常信号記憶部24に記憶されている複数の異常信号に対する分析結果が異常原因特定部25に出力される。
なお、ここでは、異常信号記憶部24には、既に予め複数の異常信号が記憶され、その異常信号の周波数と強度を分析した分析結果も記憶されているものとして説明する。
【0027】
まず初めに、電位差滴定信号出力部(信号出力部)21が、酸素消費量(指標成分量)を測定したい試料水を採取し、過マンガン酸カリウム(酸化剤)を添加して反応させた後、消費した過マンガン酸カリウムの量を求めるための電位差滴定の計測信号を出力する(ステップST21)。この出力により得られた計測信号から、信号分析部22が周波数と強度を分析し、異常原因特定部25に出力する(ステップST22)。次に、異常原因特定部25が、信号分析部22において分析された計測信号の周波数と強度と、異常信号記憶部24から送られてきた複数の異常信号の周波数と強度とを比較することにより、前記計測信号に異常原因が含まれているか否か、及び、含まれている場合にはどのような異常原因であるのかを特定する(ステップST23)。
【0028】
この結果、異常原因が含まれていない場合(ステップST24のNOの場合)には、酸素消費量演算部(指標成分量演算部)23により酸素消費量(COD)を求める(ステップST25)。酸素消費量(COD)を求める方法は周知の方法であるため、ここでは説明を省略する。
【0029】
一方、ステップST23において特定された異常原因が、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合であった場合(ステップST24のYESの場合)には、どこに異常原因があるのかを報知して(ステップST26)、処理を終了する。ここで、異常原因を報知する方法としては、表示部(図示せず)または外部に接続されたPC等の情報表示装置に文字や図を示すことによるものや、ランプの点灯、アラーム音の発生など、様々な方法が考えられるが、いずれの方法によるものでもよい。
【0030】
これにより、部品不良、または、アース取付け不良等の取付けミスやねじの緩み等の組立ミスなどの不具合があった場合に、その不具合が異常原因として報知されることにより、その不具合に即座に対応することができ、手間や時間をかけて試行錯誤により異常原因を見つける必要がなく、また、異常な状態のまま測定を続けてしまうということを防止することができる。
【0031】
以上のように、この発明の実施の形態2におけるCOD計測器(自動測定装置)によれば、上記のような構成にしたので、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合があった場合であっても、設置現場において簡単に不具合の原因を特定することができ、非常に手間と時間がかかっていた作業を大幅に削減することができる。
【0032】
実施の形態3.
図8は、前述のとおり、紫外線吸収法によるオゾン測定装置(自動測定装置)30の概略構成の一例を示す図である。このオゾン測定装置(自動測定装置)30において、31は試料ガス導入口、32は試料ガス流通管、33は三方切換弁、34はバイパス管、35はオゾン分解器、36は紫外線吸収セル、37は紫外線ランプ、38は検出器、39は比較演算回路、40は流量計、41はポンプ、42はパイプ、43は試料ガス排出口を示す。また、紫外線吸収セル36、紫外線ランプ37及び検出器38が、後述する紫外線吸光度信号出力部(信号出力部)51を構成し、比較演算回路39が、後述するオゾン濃度演算部(指標成分量演算部)53を構成する。
【0033】
図8に示すオゾン測定装置(自動測定装置)30による、試料ガス中のオゾン濃度(指標成分量)の測定は、下記の手順で行われる。
(1)ポンプ41の作動により試料ガス導入口31から流通管32内に試料ガスを一定流量で吸引し、三方切換弁33の操作によってバイパス管34を通さずに試料ガスをセル36に導入する。
(2)紫外線ランプ37から特定波長の紫外線をセル36内の試料ガスに照射する。これにより、試料ガス中のオゾン及びその他の紫外線に吸収を有する共存成分の濃度に比例した紫外線が試料ガスに吸収される。この減衰した紫外線を検出器38で計測してその強度に対応した電気信号に変換して出力する。
(3)三方切換弁33を切り換え、試料ガスをバイパス管34を通してセル36に導入し、同様の測定を行う。この場合、オゾン分解器35によって試料ガス中のオゾン(指標成分)のみが分解されるため、オゾン以外の共存成分の濃度に比例した紫外線が吸収される。この減衰した紫外線を検出器38で計測してその強度に対応した電気信号に変換して出力する。
(4)オゾン及びその他の共存成分によって減衰した紫外線強度の計測信号と、共存成分のみによって減衰した紫外線強度の計測信号とを比較演算回路39で比較演算し、その差をオゾン濃度の測定値として出力する。以上の操作を繰り返すことにより、試料ガス中のオゾン濃度(指標成分量)が間欠的に測定される。
【0034】
ここで、上記のように計測された紫外線吸光度の計測信号に対して、実施の形態1,2と同様に、FFT(Fast Fourier Transform)などのフーリエ変換を行うことにより、周波数と強度とを示す周波数スペクトルを得ることができる。
【0035】
オゾン測定装置(自動測定装置)30は、少なくとも部品不良、及び、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合がない状態で測定された信号の周波数スペクトルと、様々な不具合がある場合の異常信号とを予め計測し、記憶しておく。
【0036】
また、紫外線吸収法によるオゾン測定装置では、吸収により減衰する紫外線の量はごくわずかであるため、小さな信号しか得ることができず、ノイズに弱いという問題がある。
そのため、AC100V電源、スイッチング電源もしくはラジオ放送局の電波などによるノイズの影響を受けた上で、さらに、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合があった場合、異常原因の特定がますます困難になってしまう。
【0037】
そこで、通常、ノイズがのりやすいAC100V電源やスイッチング電源による影響、その他、ラジオ等の放送波の影響を受けることにより、どの周波数帯域でピーク信号が得られるかは既知の情報であるので、それらのノイズ情報についても予め記憶しておく。
図9(a)は、スイッチング電源のノイズ成分が検出されている正常な計測信号の周波数スペクトルを示す図であり、図9(b)は、スイッチング電源で使用されている電解コンデンサが故障している場合の周波数スペクトルを示す図である。
これらの信号を記憶しておくことにより、既知のノイズ成分の強度が極端に高い場合には、そのノイズ成分に関連する部品の故障(部品不良)であることを特定することができる。
【0038】
図10は、この発明の実施の形態3におけるオゾン測定装置(自動測定装置)30の機能ブロック図であり、図11は、オゾン測定装置(自動測定装置)30の動作を示すフローチャートである。この図10,図11に従って、この発明の実施の形態3におけるオゾン測定装置(自動測定装置)30の動作について説明する。
【0039】
ここで、異常信号記憶部54には、前述のとおり、部品不良、または、アース取付け不良等の取付けミスやねじの緩み等の組立ミスなど、様々な不具合がある場合について予め計測された信号、及び、AC100V電源、スイッチング電源、ラジオ等の放送波などの様々なノイズの影響を受けた状態で予め計測された信号、さらには、これらの様々なノイズの影響を受けた状態かつ前記様々な不具合がある場合について予め計測された信号が、予め記憶されており、これら予め計測された複数の異常信号から周波数と強度を分析した分析結果も記憶される。そして、この異常信号記憶部54に記憶されている複数の異常信号に対する分析結果が異常原因特定部55に出力される。
なお、ここでは、異常信号記憶部54には、既に予め複数の異常信号が記憶され、その異常信号の周波数と強度を分析した分析結果も記憶されているものとして説明する。
【0040】
まず初めに、含まれるオゾン濃度(指標成分量)を測定したい試料ガスを導入し、紫外線吸光度信号出力部(信号出力部)51により紫外線吸光度の計測信号を出力する(ステップST31)。この出力により得られた計測信号から、信号分析部52が周波数と強度を分析し、異常原因特定部55に出力する(ステップST32)。次に、異常原因特定部55が、信号分析部52において分析された計測信号の周波数と強度と、異常信号記憶部54から送られてきた複数の異常信号の周波数と強度とを比較することにより、前記計測信号に異常原因が含まれているか否か、及び、含まれている場合にはどのような異常原因であるのかを特定する(ステップST33)。
【0041】
この結果、異常原因が含まれていない、または、異常原因が既知のノイズによるもののみである場合(ステップST34のNOの場合)には、そのノイズによる影響を計測信号から除去し(ステップST35)、オゾン濃度演算部(指標成分量演算部)53によりオゾン濃度を求める(ステップST36)。オゾン濃度を求める方法は、ノイズを除去したあとの周波数スペクトルを逆フーリエ変換することにより求めることができるが、これについては周知の方法であるため、ここでは説明を省略する。
【0042】
一方、ステップST33において特定された異常原因が、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合であった場合(ステップST34のYESの場合)には、どこに異常原因があるのかを報知して(ステップST37)、処理を終了する。ここで、異常原因を報知する方法としては、表示部(図示せず)または外部に接続されたPC等の情報表示装置に文字や図を示すことによるものや、ランプの点灯、アラーム音の発生など、様々な方法が考えられるが、いずれの方法によるものでもよい。
【0043】
これにより、たとえAC100V電源、スイッチング電源もしくはラジオ放送局の電波などによるノイズの影響を受けていたとしても、部品不良、または、アース取付け不良等の取付けミスやねじの緩み等の組立ミスなどの不具合があった場合に、その不具合が異常原因として報知されることにより、その不具合に即座に対応することができ、手間や時間をかけて試行錯誤により異常原因を見つける必要がなく、また、異常な状態のまま測定を続けてしまうということを防止することができる。
【0044】
以上のように、この発明の実施の形態3におけるオゾン測定装置(自動測定装置)によれば、上記のような構成にしたので、部品不良、または、取付けミスや組立ミスなどの人為的な不具合があった場合であっても、設置現場において簡単に不具合の原因を特定することができ、非常に手間と時間がかかっていた作業を大幅に削減することができる。
【0045】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 pH計(自動測定装置)、2 変換器、3 電極ホルダ、4 センサ、11 電位差信号出力部(信号出力部)、12,22,52 信号分析部、13 pH演算部(指標成分量演算部)、14,24,54 異常信号記憶部、15,25,55 異常原因特定部、20 COD計測器(自動測定装置)、21、電位差滴定信号出力部(信号出力部)、23 酸素消費量演算部(指標成分量演算部)、30 オゾン測定装置(自動測定装置)、31 試料ガス導入口、32 試料ガス流通管、33 三方切換弁、34 バイパス管、35 オゾン分解器、36 紫外線吸収セル、37 紫外線ランプ、38 検出器、39 比較演算回路、40 流量計、41 ポンプ、42 パイプ、43 試料ガス排出口、51 紫外線吸光度信号出力部(信号出力部)、53 オゾン濃度演算部(指標成分量演算部)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に関する指標成分量を測定する自動測定装置において、
前記指標成分量に基づく計測信号を出力する信号出力部と、
前記計測信号から周波数と強度を分析する信号分析部と、
前記計測信号から前記指標成分量を演算する指標成分量演算部と、
少なくとも部品不良、または、取付けミスや組立ミスという不具合がある場合の信号の周波数と強度を予め記憶しておく異常信号記憶部と、
前記信号分析部により分析された計測信号の周波数及び強度と前記異常信号記憶部に記憶された信号の周波数及び強度に基づいて、前記不具合の原因を特定する異常原因特定部
を備えることを特徴とする自動測定装置。
【請求項1】
試料に関する指標成分量を測定する自動測定装置において、
前記指標成分量に基づく計測信号を出力する信号出力部と、
前記計測信号から周波数と強度を分析する信号分析部と、
前記計測信号から前記指標成分量を演算する指標成分量演算部と、
少なくとも部品不良、または、取付けミスや組立ミスという不具合がある場合の信号の周波数と強度を予め記憶しておく異常信号記憶部と、
前記信号分析部により分析された計測信号の周波数及び強度と前記異常信号記憶部に記憶された信号の周波数及び強度に基づいて、前記不具合の原因を特定する異常原因特定部
を備えることを特徴とする自動測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−202948(P2012−202948A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70454(P2011−70454)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】
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