説明

自動臨床アナライザに用いるランダム・アクセス試薬給送システム

試薬容器シャトルを使用して装填トレイおよび少なくとも1つのリニア試薬容器トレイおよび少なくとも1つの円形の試薬用回転コンベヤ間で試薬容器を移動させるランダム・アクセス試薬容器取り扱いシステム。試薬容器トレイは、必要に応じて、試薬トレイ・シャトルによって試薬容器シャトル下方に位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿、血清、血漿、脳脊髄液などのような患者の生物学的流体を自動的に処理する装置に関する。特に、本発明は、試薬容器を受け取り、試薬取り扱い位置および/または試薬容器移送シャトルに給送するための自動システムを提供する。
【背景技術】
【0002】
患者の感染部、体液または膿瘍部のサンプルの分析測定によって患者の診断および治療に関連した種々タイプの検査を実施できる。このような患者サンプルは、代表的には、サンプル・バイアルに入れ、バイアルから抽出し、特殊な反応キュベットまたは反応チューブ内で種々の試薬と混ぜ合わせ、しばしばインキュベートし、分析して患者の治療の助けとする。代表的な臨床化学分析では、1つまたは2つの分析評価試薬を別々の時間に液体サンプルに添加し、このサンプル−試薬の組み合わせを反応キュベット内で混合し、インキュベートする。サンプル−試薬の組み合わせと相互作用する検査用放射線ビームを使用する分析測定(たとえば、濁度読み取りまたは蛍光読み取りまたは吸収率読み取り等)を行ってエンドポイント値または比率値を確認する。周知の較正技術を使用してこれらの値から被検物質の量を決定できる。
【0003】
サンプルの化学的、免疫化学的、生物学的な検査のためには種々の公知の臨床アナライザが利用できるが、分析臨床技術は、今、分析レベルの向上を迫られている。報告可能な結果当たりのコストを減らすよう臨床検査室への圧力が高まっていることにより、自動臨床アナライザの総コストパフォーマンスの向上が絶えず必要である。特に、サンプル分析は、評価分析処理量を高めるかまたはそのコストを低減するかという点でより効率良くなることが絶えず必要である。
【0004】
評価分析処理量を向上させるということに対する確実な要因は、免疫測定を含めた広範囲にわたる臨床評価分析を実施するのに必要な試薬を連続供給できる能力である。
【0005】
米国特許第6,261,521号が、操作前にメイン・コンベアラインに沿って設置した複数の分析ユニットを有するサンプル分析システムを開示している。これは、異なったタイプの試薬供給ユニットと組み合わせて分析ユニットのシステム・セットアップと、どの分析項目をどの試薬供給タイプを有するどの分析ユニットに割り当てるか各分析ユニットに対する分析項目のセットアップを含む。
【0006】
米国特許第6,103,193号が、標識化試薬を反応チューブに分配する手段ならびに評価分析用試薬を反応チューブに分配する手段を有する自動免疫測定装置を開示している。
【0007】
米国特許第6,027,691号が、試薬プローブアーム・アセンブリが試薬プローブ・アーム、中空試薬プローブおよび回転可能な試薬撹拌ロッドを含む自動化学アナライザを開示している。試薬プローブは、試薬プローブ・アーム内にほぼ垂直に配置してあり、下方試薬プローブ位置と上方試薬プローブ位置との間を試薬プローブ・モータによって移動可能である。
【0008】
米国特許第5,902,549号が、マルチアナライザ・システムを開示しており、ここでは、アナライザ・ユニットが、移送管路への/からの移送経路として用いるサンプル採取管路と、反応容器内での指定のサンプル、試薬に応じた反応プロセスを測定する手段と、複数の試薬給送機構とを有し、これら試薬給送機構のあるものはピペット法に基づき、他のものはディスペンサ法に基づいて作動する。
【0009】
米国特許第5,885,529号が、複数のくさび形の試薬パックを収める回転可能な試薬用回転コンベヤを有する免疫測定アナライザを開示しており、各試薬パックは、そこに形成した個別の区画に複数の異なった試薬を保持できる。
【0010】
米国特許第5,849,247号が、分析評価試薬を支持している2つのターンテーブルを有する免疫測定アナライザを開示している。
【0011】
米国特許第5,814,277号が、複数のサンプル容器と複数のもっと大きい試薬容器とを円形アレイで着脱自在に支持するターンテーブルを有する免疫測定アナライザを開示している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の主目的は、試薬容器を装填トレイから取り出し、少なくとも1つの試薬サーバに試薬容器を配置するようになっている試薬容器シャトルに基づく非常に融通のきくランダム・アクセス試薬容器取り扱いシステムを提供することにある。さらに、シャトルは、試薬容器をサーバから取り出し、同心の試薬用回転コンベヤに試薬容器を配置すると共に、2つの同心の試薬用回転コンベヤ間、または、必要に応じてサーバ間で試薬容器を移動させるようにもなっている。付加的な試薬容器シャトルによって、試薬容器トレイに配置された試薬容器のうち任意のものを試薬容器シャトル下方の装填位置または試薬吸引位置に置くことができる。したがって、このシステムは、少なくとも1つの試薬サーバと少なくとも1つの試薬用回転コンベヤのところで、試薬容器装填トレイ間で試薬容器を移動させることによって多数の異なった試薬容器を異なった吸引位置に位置決めする融通性のあるランダム・アクセス試薬供給システムとなる。
【0013】
本発明は、本出願の一部をなす添付図面と関連して行った以下の詳細な説明からより完全に理解して貰えよう。
図1は、本発明が有効に使用され得る自動アナライザの概略平面図である。
図2は、図1のアナライザの一部拡大概略平面図である。
図3は、図1のアナライザの自動アリコート容器アレイ保管・取り扱いユニットの斜視図である。
図4は、図1のアナライザで役に立つアリコート容器アレイの斜視図である。
図5は、図1のアナライザで役に立つ反応容器の斜視図である。
図5Aは、図1のアナライザで役に立つバイアル・キャリアの斜視図である。
図6は、本発明を説明する、ランダム・アクセス試薬容器管理システムの平面図である。
図7は、図1のアナライザで役に立つ第1の容器シャトルの斜視図である。
図8は、図1のアナライザで役に立つ第2の容器シャトルの斜視図である。
図9は、図6のランダム・アクセス試薬容器管理システムの簡略平面図である。
【0014】
図1は、図2と共に、本発明を有利に実行できる自動化学アナライザ10の諸要素を概略的に示している。このアナライザ10は、キュベット・ポート20を形成した外側キュベット回転コンベヤ14と、容器ポート22を形成した内側キュベット回転コンベヤ16とを支持している反応回転コンベヤ12を含む。外側キュベット回転コンベヤ14と内側キュベット回転コンベヤ16は開放溝18によって分離されている。キュベット・ポート20は、在来の臨床評価分析および免疫測定評価分析のための種々の試薬およびサンプル液を収容している複数の反応キュベット24を受け入れるようになっている。一方、容器ポート22は、超高感度発光免疫測定専用の試薬を収容している複数の反応容器25を受け入れるようになっている。反応回転コンベヤ12は、一定方向に段階的に移動するように回転可能であり、この段階的移動は一定の停止時間を間に挟んであり、この停止時間中、回転コンベヤ12は静止状態に保たれ、そして、センサ、試薬添加ステーション、混合ステーションなどのようなコンピュータ制御式の評価分析操作装置13が、必要に応じて、キュベット24内に収容されている評価分析混合物に作用する。
【0015】
アナライザ10は、代表的にはイリノイ州ディアフィールドのDade Behring Inc.の販売しているDimension(登録商標)臨床化学アナライザで使用されており、コンピュータ・ベースの電気機械制御プログラミングの分野で当業者によって広く使用されているような機械語で書かれたコンピュータ・プログラムに基づいてコンピュータ15によって実行されるソフトウェアによって制御される。コンピュータ15は、アナライザ10内の種々の分析手段17によって行われる評価分析を実施するためのアプリケーション・ソフトウェア・プログラムも実行する。
【0016】
温度制御式の試薬保管領域26、27、28が、図5に示し、本発明の譲受人に譲渡された審査係属中の米国特許出願番号09/949,132に記載されているような複数の
細長い多区画試薬カートリッジ30を格納しているか、または、図5Aに示すバイアル・キャリア30Aを格納している。これらの多区画試薬カートリッジ30は、必要に応じて、所与の評価分析を実施するためにウェル32内に試薬を収容している。使用済みの試薬容器30を偶発的に再使用するのを防ぐためにロックアウト装置31が設けてある。後述するように、試薬保管領域26は、試薬カートリッジ30を水和や再混合のような試薬調製操作のためにここから移動させることができる第1の試薬操作回転コンベヤ26Aと、第2の試薬操作回転コンベヤ26Bとを含む。第2の試薬操作回転コンベヤ26Bには、試薬カートリッジ30が、試薬吸引・分配アーム60によるアクセスができるように格納されている。図1は、第1の試薬操作回転コンベヤ26Aと第2の試薬操作回転コンベヤ26Bが同心円に配置してある好ましい実施形態に示しており、第1の試薬操作回転コンベヤ26Aが第2の試薬操作回転コンベヤ26Bの内側にある。試薬容器30または試薬バイアル・キャリア30Aは、これを後述する往復動位置に向かって自動的に移動させるようになっている容器装填トレイ29内に容器30またはキャリア30Aを作業者が置くことによって装填できる。試薬バイアル・キャリア30Aは、バイアル30V内の既知被検物質濃度の溶液を運び、アナライザ10による較正・品質管理手順で使用される。
【0017】
入力レーン34Aおよび出力レーン34Bを有する双方向装入・送出サンプル・チューブ移送システム36が、検査しようとしている検体液を収容し、サンプル・チューブ・ラック42内に装着された個々の装入サンプル・チューブ40を液体サンプル採取アーム44のサンプル採取円弧内へ移送する。サンプル・チューブ40に収容された検体液は、その上に取り付けられたバーコード記号を在来のバーコード・リーダを用いて読み取ることによって識別され、項目の中でも特に患者の身元、実施すべき検査、サンプル・アリコートをアナライザ10内に保持すべきであるかどうか、またその場合にどのくらいの期間保持するのかという諸点を決定する。また、サンプル・チューブ・ラック42上にバーコード記号を設け、アナライザ10全体にわたって据え付けた多数の在来のバーコード・リーダを使用してサンプル・チューブ40およびサンプル・チューブ・ラック42の位置を確認、制御、追跡することもよく行われている。
【0018】
サンプル採取アーム44は、回転可能シャフト48に装着された液体サンプル採取プローブ46を支持しており、サンプル採取アーム44の動きは、サンプル・チューブ移送システム36および図3に示すようなアリコート容器アレイ移送システム50を横切る円弧を描く。サンプル採取アーム44は、サンプル・チューブ40から液体サンプルを吸い込み、必要な評価分析を実施するのに必要なサンプルの量に応じて図4に示すようにアリコート容器アレイ52の複数の容器52Vのうちの1つまたはそれ以上にアリコート・サンプルを分配し、アナライザ10によって環境室38内に保持されるべきサンプル・アリコートを提供するように作動可能である。
【0019】
アリコート容器アレイ移送システム50は、アリコート容器アレイ保管・分配モジュール56と、反応回転コンベヤ12に接近して設置したサンプル吸引・分配アーム54の下方にある多数のアリコート容器アレイ・トラック57内でアリコート容器アレイ52を双方向に移動させるようになっている多数のリニア駆動モータ58とを含む。サンプル吸引・分配アーム54は、コンピュータ15によって制御され、在来の液体プローブ54Pを使用して、トラック57内のサンプル採取位置に位置した個々の容器52Vから制御量のサンプルを吸引するようになっている。次いで、液体プローブ54Pが分配位置に動かされ、ここにおいて、適量の吸引サンプルがキュベット・ポート20にある1つまたはそれ以上のキュベット24に分配され、1つまたはそれ以上の被検物質についてアナライザ10が検査を行う。サンプルが反応キュベット24に分配された後、在来の移送手段が、必要に応じて、アリコート容器アレイ移送システム50、環境室38、廃棄領域(図示せず)間でアリコート容器アレイ52を移動させる。
【0020】
それぞれ在来の液体試薬プローブ、60P、61P、62Pを含む多数の試薬吸引・分配アーム60、61、62が、独立して装着してあり、試薬保管領域26、27、28のそれぞれと外側キュベット回転コンベヤ14との間を移動できる。プローブ60P、62Pは、試薬添加位置で適切な試薬カートリッジ30にあるウェル32から指定評価分析を行うのに必要な試薬を吸引する在来の機構を含む。次いで、プローブ60P、61P、62Pは試薬分配位置に戻され、そこにおいて、試薬が外側キュベット回転コンベヤ14にあるキュベット・ポート20に収容されている反応キュベット24に分配される。所望に応じて融通性を高めるために付加的なプローブを設けてもよい。多数の試薬カートリッジ30が、試薬保管領域26、27、28内部の制御された環境条件で保管されている。アナライザ10の高い評価分析処理量を維持する際の主要な要因は、試薬保管領域26Aおよび26B、27および28内に多種多様な試薬カートリッジ30を格納し、次いで、プローブ60P、61P、62Pがアクセスできるように試薬カートリッジ30をランダムに試薬添加位置に迅速に移送する能力である。
【0021】
反応キュベット装填ステーション63および反応容器装填ステーション65が、それぞれ、外側キュベット回転コンベヤ14および内側容器回転コンベヤ16に接近して設置してあり、たとえば移動可能なロボットアーム67を使用して、後に説明するように反応キュベット24を横向きにキュベット・ポート20に装填し、また、反応容器25を容器ポート22に装填するようになっている。操作に当たって、評価分析を最終的に行った使用済みのキュベット24は、本発明の譲受人に譲渡された審査係属中の米国特許出願番号10/623,360に開示されるように洗浄ステーション67で洗浄され、乾燥させられる。本発明の譲受人に譲渡された審査係属中の米国特許出願番号10/318,804に開示されているような理由のために他の指示がない限り、清掃された使用済みのキュベット24で引き続いて評価分析が行われる。キュベット取り出しステーション59が、装填ステーション61、63に示すような移動可能なロボットアーム65を再び使用してキュベット・ポート20から使用不可な反応キュベット24を取り出すようになっている。
【0022】
図6は、試薬容器シャトル72下方の装填位置に容器30を自動的に位置させるモータ駆動式レーキ73を有する試薬容器装填トレイ29から試薬容器30を取り出すようになっているただ1つの双方向直線試薬容器シャトル72を含むものとして本発明を示している。試薬容器30は、在来のバーコード記号と試薬容器装填トレイ29に接近して設けたバーコード・リーダ41とを使用して、ウェル32内に収容されている評価分析化学物質のタイプによって識別される。コンピュータ15は、試薬容器30のどれもこれもがアナライザ10内で移送されるにつれてその位置を追跡するようにプログラムされている。シャトル72は、さらに、それぞれ、少なくとも1つの試薬保管領域27または28内にある少なくとも1つのスロット付き試薬容器トレイ27Tまたは28Tのスロット内に試薬容器30を配置するようになっている。説明の目的で、2つのスロット付き試薬容器トレイは27Tおよび28Tが示してあるが、以下、これら両方を使用する実施形態として発明を説明する。ここで、2つのスロット付き試薬容器トレイ27Tおよび28Tの選択は本発明を限定するものではなく、必要とされるのはこのようなスロット付き試薬容器トレイの1つ27Tまたは28Tを使用することであるということは理解されるべきである。同じようにして、シャトル72は、またさらに、試薬容器トレイ27T、28Tから試薬容器30を取り出し、試薬保管領域26内の2つの同心の試薬用回転コンベヤ26A、26Bのいずれかにこの試薬容器30を配置するようになっている。シャトル72は、また、2つの同心の試薬用回転コンベヤ26A、26B間で試薬容器30を移動させるようにもなっている。双頭円弧状矢印で示すように、試薬用回転コンベヤ26Aは、左右両方向に回転してそこに配置された試薬容器30のうちの任意特定のものを試薬吸引アーム60下方に置くことができる。試薬用回転コンベヤ26Bもまた試薬吸引アーム60によってアクセスできる試薬容器30を収容していてもよいが、好ましい実施形態においては、回転コンベヤ26Bは、試薬容器30および較正溶液または品質管理溶液を収容したバイアル・キャリア30Aの過剰分のみを格納するようになっている。試薬容器トレイ27T、28T内に配置された試薬容器30のうち任意のものを、試薬保管領域27、28のそれぞれにある試薬容器シャトル27S、28Sによって試薬容器シャトル72下方にある装填位置または吸引・分配アーム61、62下方の試薬吸引位置にそれぞれ置くことができる。以下、「サーバ」なる用語は、試薬容器シャトルのいずれか27Sまたは28Sと、試薬保管領域のいずれか27または28と、試薬容器トレイのいずれか27Tまたは28Tとの組み合わせを意味するものとする。試薬容器シャトル27S、28Sは、図7に示すように試薬容器シャトル72と同様の設計である。試薬吸引アーム60、61、62は点線で示してあり、これは回転コンベヤ26Bおよび試薬容器トレイ27T、28Tのそれぞれに格納された試薬容器30の表面より上方に位置していることを表している。外側キュベット回転コンベヤ14に支持された反応キュベット24も点線で示してあるが、これは試薬容器30の表面よりも上方に位置していることを同様に表している。
【0023】
この説明から当業者には明らかなように、試薬容器装填トレイ29と、試薬容器トレイ27T、28Tと、試薬用回転コンベヤ26A、26Bとの間で試薬容器30を移動させるというシャトル72の能力を、試薬容器トレイ27T、28T内の試薬容器30を適切な吸引位置へ(またはシャトル72下方の装填位置へ)移動させるというシャトル27S、28Sの能力ならびに試薬吸引アーム60下方に任意の試薬容器30を置くという試薬用回転コンベヤ26A、26Bの能力とを組み合わせることによって、多数の異なった試薬容器を異なった吸引位置に位置決めするという融通性を持ったランダム・アクセス試薬供給システムを得ることができる。シャトル72、27S、28Sがアナライザ10内で試薬容器30を移送する速度は、先に説明したようにシステム内の時間制限因子であってもよい。後に説明するように、これらのシャトル72、27S、28Sは、シャトル速度を有意に高めてアナライザ10で試薬供給を行うのに必要な時間が処理量制限とならないようにする自動張力制御器を備えている。
【0024】
図6は、また、第1の試薬容器移送装置75によって試薬操作回転コンベヤ26Bに接続した試薬調製ステーション74も示している。この試薬調製ステーション74は、必要に応じて化学物質添加、再混合、乾燥試薬粉末水和などのような多数の試薬調製作業を実施する。さらに、モータ駆動式ベルト・シャトル78が、第2の試薬容器移送装置77によって試薬操作回転コンベヤ26Bに接続してあり、同様の装備のアナライザ間での試薬容器30の交換を可能にしている。
【0025】
双方向モータ駆動式ベルト・シャトル78は、本発明の譲受人に譲渡された審査係属中の米国特許出願番号10/373,297に開示されているように、少なくとも2つの自動臨床アナライザ10が二重操作で相互に結びつけてあるときに試薬容器をアナライザ10から取り出し、別のアナライザ10に移送できるように設けてある。双方向ベルト・シャトル78は、2つまたはそれ以上のアナライザ10間で一度に1つだけの試薬容器またはバイアル容器またはサンプル・ラックまたはアリコート容器アレイを移動させるようになっている。これらのアナライザ10は、機構に関しては基本的に互いに同一であるが、ただし、個々のアナライザ10で実施され得る評価分析のメニューが場合により選択的に異なっていることがある。すなわち、双方のアナライザ10は、物理的に同一のサンプル取り扱い装置、試薬保管・サンプル処理装置、評価分析装置などを備えている。しかしながら、アナライザ10は、共に、初めにわずかに異なった評価分析メニューを実施できるように異なった種類の試薬容器30にオンボード格納されたわずかに異なった目録の試薬を備えていてもよい。スタンドアロン・モードにおいては、各アナライザ10は、独立して操作可能な双方向装入・送出自動サンプル・ラック移送システム36を有し、検査されるべきサンプル40をアナライザ10上に置き、自動的に必要な評価分析プロトコルを受けさせ、最後に検査されたサンプル40の目録に戻すことができるようになっている。しかしながら、アナライザ10が双方向シャトル78によって相互に結びつけられているときには、2つのアナライザ10のうちの第1のアナライザの双方向装入・送出サンプル・ラック移送システム36が自動的に一方向装入サンプル・ラック移送システム36に変換され、いずれかのアナライザ10で分析しようとしているサンプル・チューブ40を運ぶすべてのサンプル・ラック42を受け入れるようになっている。同様にして、2つのアナライザ10のうちの第2のアナライザの装入サンプル・チューブ移送システム36は、アナライザ10のいずれかで最後に検査されたサンプルを備えたサンプル・チューブ40を有するすべてのサンプル・ラック42を処分するようになっている一方向送出移送システム36に自動的に変換される。双方向シャトル78がアナライザ10間でただ1つのサンプル・ラック42または試薬容器30のみを移動させるようになっているので、2つのアナライザ10のうちの一方が操作ミスをしたり、双方向シャトル78が操作ミスをしたりした場合には、アナライザ・システムは、操作可能なアナライザ10のみを使用しているただ1つのアナライザ・システムに自動的に復帰することができ、サンプル40を操作可能なアナライザ10にのみ供給し、操作可能なアナライザ10によってのみ分析できる。
【0026】
試薬容器シャトル72、27S、28Sは、駆動方向の急な変更とは無関係に駆動ベルトを一定の張力に維持することによって駆動ベルトの未知の長さ変化を自動的に補正するようになっており、その結果、本発明の譲受人に譲渡された審査係属中の米国特許出願番号10/623,311に開示されているように、駆動ベルトが摩滅したときに試薬容器30を試薬容器シャトル72下方またはその内部の意図した位置に正確に位置させることができる。
【0027】
試薬容器シャトル72が図7に示すように単一の試薬容器30または試薬バイアル・キャリア30Aのいずれかを移送している例においては、シャトル72は、使用時に往復動している駆動ベルト72Bに生じる可能性のある長さ変化を補正したり、急な方向転換時に駆動ベルト72Bに生じる可能性のある張力変化を補正したりする自動テンショナ72Gを含み、その結果、駆動ベルト72Bが摩滅したときでも試薬カートリッジ30を意図した位置に正確に位置決めすることができる。テンショナ72Gの使用例では、モータ72Mがコンピュータ15によって制御されて、駆動ベルト72Bを時計回り方向、反時計回り方向に循環させ、試薬バイアル・キャリア30Aまたは試薬カートリッジ30を試薬操作回転コンベヤ26S、26Aのスロット内に位置決めする。図7において、駆動ベルト72Bにはエッジ・ガイド72Cによって、バイアル・キャリア30Aが取り付けてある。その結果、たとえば較正液または制御液のバイアル30Vを収容しているバイアル・キャリア30Aが、双頭矢印によって示す方向に沿って双方向に往復動させられる。同様にして、図8に示すように、試薬容器トレイ28Tは、駆動ベルト28Bの片方の脚部にのみ固定具28TDによって固定してあり、双頭矢印で示すように、駆動ベルト28Bの方向に沿って前後に自由に駆動されるようになっている。したがって、トレイ28Tのスロット内にある試薬カートリッジ30を試薬容器シャトル72下方にあるピックアップ位置に自動的に位置決めすることができる。
【0028】
上記のランダム・アクセス試薬給送システムを使用してのアナライザ10の操作に当たって、ここでは、7つの特別な試薬容器30と1つの試薬キャリア30Aを作業者が容器装填トレイ29に装填する非常に簡略化した例を考える。説明のためにのみ、ここでは以下のことがあるものと考える。
1.RC1で示す第1の試薬容器30が、吸引し、サンプル分析で使用する前にそれが収容している乾燥試薬の水和を必要とするということ。
2.RC2で示す第2の試薬容器30が、直ちに吸引でき、高い要求頻度のサンプル分析で使用するのに適した試薬を収容していること。
3.RC3で示す第3の試薬容器30が、直ちに吸引でき、低い要求頻度のサンプル分析で使用するのに適した試薬を収容していること。
4.RC4で示す第4の試薬容器30が、直ちに吸引でき、アナライザ10以外のアナライザで実施されるべきサンプル分析で使用するのに適した試薬を収容していること。
5.RC5で示す第5の試薬容器30が、直ちに吸引でき、第2の試薬容器RC2内の試薬でのサンプル分析とは異なっているが、高い要求頻度のサンプル分析で使用するのに適した試薬を収容していること。
6.RC6で示す第6の試薬容器30が、直ちに吸引でき、第3の試薬容器RC3内の試薬でのサンプル分析とは異なっているが、低い要求頻度のサンプル分析で使用するのに適した試薬を収容していること。
7.RC7で示す第7の試薬容器30が、直ちに吸引でき、アナライザ10で実施されるべき較正プロトコルで使用するのに適した試薬を収容していること。
【0029】
簡略化した図9は、まず最初に7つの試薬容器RC1〜RC7のすべてを容器装填トレイ29内に置いた例を示している。各個別の試薬容器RC1〜RC7は、バーコード・リーダ41によって識別され、シャトル70、27S、28Sおよび試薬用回転コンベヤ26A、26Bからなるシステムがコンピュータ15によって制御され、図6、9と関連して以下の表1に記載するように試薬容器RC1〜RC7を適切な位置に位置させる。任意の試薬容器RC1〜RC7をさらにアナライザ10上で移動させる前に、ロックアウト装置31の状態が点検され、使用済みの試薬容器30を偶発的に再使用しないようにする。
【0030】
【表1】

【表2】

【表3】

【0031】
ここで、本明細書に開示した本発明の実施態様が発明の原理を説明するものであり、発明の範囲内に留まる他の変更もなし得ることは理解されるべきである。たとえば、多数の評価分析をアナライザ10によって実施して試薬容器30のどれかの試薬がなくなったときにはいつでも、警告メッセージが発生して、作業者が新しい試薬容器30を容器装填トレイ29に置くことができ、空になった試薬容器を交換して表1の操作を実施する。同様に、試薬容器が期限付き試薬を収容しており、試薬容器30をアナライザ10で使用し始めてから臨界の日数が経ってしまった場合に、警告メッセージが発生して、作業者が新しい試薬容器30を容器装填トレイ29に置くことができ、期限過ぎの試薬容器を交換して表1の操作を実施する。評価分析処理量を最大にするように、これらおよび他の同様の操作をシャトル70、27S、28Sおよび試薬用回転コンベヤ26A、26Bのシステムを使用して試薬容器30をアナライザ10の全体にわたって望ましい位置に位置決めすることができる。これらの理由により、本発明は、本明細書で明示し、説明した実施例に限定されることがなく、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明が有効に使用され得る自動アナライザの概略平面図である。
【図2】図1のアナライザの一部拡大概略平面図である。
【図3】図1のアナライザの自動アリコート容器アレイ保管・取り扱いユニットの斜視図である。
【図4】図1のアナライザで役に立つアリコート容器アレイの斜視図である。
【図5】図1のアナライザで役に立つ反応容器の斜視図である。
【図5A】図1のアナライザで役に立つバイアル・キャリアの斜視図である。
【図6】本発明を説明する、ランダム・アクセス試薬容器管理システムの平面図である。
【図7】図1のアナライザで役に立つ第1の容器シャトルの斜視図である。
【図8】図1のアナライザで役に立つ第2の容器シャトルの斜視図である。
【図9】図6のランダム・アクセス試薬容器管理システムの簡略平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬容器装填トレイ、少なくとも1つの試薬サーバ、および少なくとも1つの試薬用回転コンベヤ間で試薬容器を移動させることによって臨床アナライザ内の異なった位置に異なった試薬容器を位置させるようになっているただ1つの双方向リニア・シャトルを有するランダム・アクセス試薬供給システム。
【請求項2】
装填トレイが、リニア・シャトル下方に容器を自動的に位置決めするようになっているモータ駆動式レーキを含む、請求項1記載の試薬供給システム。
【請求項3】
試薬サーバが、試薬容器シャトル、試薬容器トレイ、および試薬容器シャトルが試薬容器トレイを試薬保管領域内で移動させて試薬容器トレイをリニア・シャトル下方に位置決めするように構成した試薬保管領域とを含む、請求項1記載の試薬供給システム。
【請求項4】
第1および第2の同心の試薬用回転コンベヤを有し、第1の回転コンベヤが第2の回転コンベヤの内側にあり、リニア・シャトルが、第1および第2の同心の試薬用回転コンベヤ間で試薬容器を移動させるようになっている、請求項1記載の試薬供給システム。
【請求項5】
さらに、第2の同心の試薬用回転コンベヤに接近して設けてあって試薬容器を第2の同心の試薬用回転コンベヤから試薬調製ステーションまで移送する第1の試薬容器移送装置を含む、請求項4記載の試薬供給システム。
【請求項6】
さらに、第2の同心の試薬用回転コンベヤに接近して設けてあって試薬容器を第2の同心の試薬用回転コンベヤからモータ駆動式ベルト・シャトルまで移送する第2の試薬容器移送装置を含む、請求項4記載の試薬供給システム。
【請求項7】
請求項1の試薬供給システムを含む自動化学アナライザであって、さらに、複数の反応キュベットを受け取るようにキュベット・ポートを形成した反応回転コンベヤを含み、試薬用回転コンベヤおよび試薬サーバ内の試薬容器から試薬を吸引し、反応キュベットに試薬を分配する試薬吸引・分配アームを含む、上記自動化学アナライザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−524082(P2007−524082A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520362(P2006−520362)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/022879
【国際公開番号】WO2005/006831
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(500029718)デイド・ベーリング・インコーポレイテッド (20)
【氏名又は名称原語表記】DADE BEHRING INC.
【Fターム(参考)】