説明

自動車のリアアクスル

【課題】自動車の新規のリアアクスルを提供する。
【解決手段】自動車のリアアクスル、特に、操向可能なリアアクスルに関し、このリアアクスルは、いずれの場合も1つのリアホイールを保持するホイール担体10を有し、いずれの場合も、1つの上側横リンク11、1つの下側横リンク12、および1つのトラックロッド13が各リアホイールと相互作用し、トラックロッド13が、自動車の長手方向で見て、リアホイールまたはホイール担体10の中心の後ろに配置され、自動車の長手方向で見て、いずれの場合も、リアホイールまたはホイール担体10の中心の後ろに配置された両方のトラックロッド13が、同様に、自動車の長手方向で見て、いずれの場合も、リアホイールまたはホイール担体10の中心の後ろに配置された共有ステアリングアクチュエータ15によって係合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による自動車のリアアクスル(車軸)に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、いずれの場合も1つの車両ホイールを保持するホイール担体を有する、自動車の操向可能なアクスルを開示しており、前記文献に開示された操向可能なアクスルの各ホイール担体は、いずれの場合も、1つの上側横リンク、1つの下側横リンク、および1つのトラックロッドをあてがわれている。ホイール担体にあてがわれたトラックロッドは、自動車の長手方向、すなわち進行方向に見て、車両ホイールまたは操向可能なアクスルのホイール担体の中心の後ろに配置される。上側横リンク及び下側横リンクは、いずれの場合も、ホイール担体の中心、またはホイール担体に保持された車両ホイールの中心において、それぞれのホイール担体の連結点で係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第39 12 924A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2007 024 755A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第40 30 819A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第39 24 950A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記を原点として、本発明は、自動車の新規のリアアクスルを提供するという課題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、請求項1に記載した自動車のリアアクスルを用いて解決される。本発明によれば、自動車の長手方向で見て、いずれの場合も、リアホイール又はホイール担体の中心の後ろに配置された両方のトラックロッドが、同様に、自動車の長手方向で見て、いずれの場合も、リアホイール又はホイール担体の中心の後ろに配置された共有のステアリングアクチュエータによって係合される。
【0006】
本発明は、自動車の操向可能なリアアクスルのための、全く新規の概念を提案する。リアホイールのホイール担体と相互作用するトラックロッドは、いずれの場合も、自動車の長手方向、又は進行方向で見て、リアホイールの中心またはホイール担体の中心の後ろに配置され、前記2つのトラックロッドは、操向可能なリアアクスル用の共有または中央ステアリングアクチュエータによって係合され、このステアリングアクチュエータは、同様に、自動車の長手方向、又は進行方向で見て、リアホイールまたはホイール担体の中心の後ろに配置される。そのようなリアアクスルは、自動車に組み込まれるのが特に好ましい。
【0007】
本発明の1つの有益な改良によれば、上側横リンクが、いずれの場合も、第1の連結点でそれぞれのホイール担体に連結され、第2の連結点でサブフレームに連結され、各上側横リンクの領域において、第1および第2の連結点は、自動車の長手方向で見て、リアホイールまたはホイール担体の中心の前に配置される。上側横リンクの連結点の前記構成により、キャンバモーメントを特に有利に支持することが可能になる。
【0008】
本発明のさらに有益な改良によれば、下側横リンクが、いずれの場合も、第1の連結点でそれぞれのホイール担体に連結され、複数の第2の連結点でサブフレームに連結され、各下側横リンクの領域において、第1の連結点および第2の連結点の1つが、自動車の長手方向で見て、リアホイールまたはホイール担体の中心の前に配置され、第2の連結点の1つが、自動車の長手方向で見て、リアホイールまたはホイール担体の中心の後ろに配置される。下側横リンクの連結点の前記構成により、制動トルク及び駆動トルクを特に好ましく支持することが可能になる。
【0009】
それぞれのホイール担体に対する上側横リンクの第1の連結点が、自動車の長手方向で見て、それぞれのホイール担体に対する下側横リンクの第1の連結点の後ろに位置するのが好ましく、そのため、前記連結点を通ってのびる軸が、底部から上部へ見たときに、後方に傾く。これらの連結点を通る軸の上記の傾斜により、トーインをもった操向動作時に、キャンバのマイナスの変化を得ることができる。
【0010】
本発明の有益な改良によれば、下側横リンクは、いずれの場合も、連結器を介してそれぞれのホイール担体に支持され、各連結器は、自動車の長手方向で見て、リアホイールまたはホイール担体の中心の後ろに延在する。連結器の使用により、制動トルク及び駆動トルクを特に好ましい態様で支持することができる。
【0011】
本発明の好ましい改良が、従属請求項および以下の説明から明らかになるであろう。
【0012】
本発明を限定しない、本発明の実施形態が、図面に基づいてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による自動車のリアアクスルの詳細を斜視図で示している。
【図2】図1の詳細を平面図で示している。
【図3】図1の詳細を側面図で示している。
【図4】図1の詳細を後方からの図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、リアアクスル、特に、自動車の操向可能なリアアクスルに関し、前記タイプのリアアクスルは、いずれの場合も1つのリアホイールを保持する2つのホイール担体を含む。図1〜4は、リアホイールを保持するホイール担体の領域における、本発明による自動車のリアアクスルの詳細を示している。
【0015】
上側横リンク11、下側横リンク12、およびトラックロッド13は、本発明による操向可能なリアアクスルの各ホイール担体10と相互作用する。
【0016】
トラックロッド13は、自動車の長手方向F、したがって前進方向で見て、リアホイールの中心またはホイール担体10の中心の後ろに配置されており、リアホイールまたはホイール担体10の中心は、軸14上に位置している。
【0017】
図1および図2から最も明瞭に分かるように、本発明による操向可能なリアアクスルの2つのホイール担体10にあてがわれた両方のトラックロッド13に対して、自動車の長手方向Fで見て、同様に、軸14の後ろに、したがって、リアホイールの中心またはホイール担体10の中心の後ろに配置された共有または中央ステアリングアクチュエータ15があてがわれている。
【0018】
図1から分かるように、図1および図2に示すトラックロッド13は、第1の連結点16で共有または中央ステアリングアクチュエータ15に関節式に係合し、第2の連結点17でそれぞれのホイール担体10に関節式に係合している。
【0019】
上側横リンク11は、いずれの場合も、第1の連結点18でそれぞれのホイール担体10に、また、第2の連結点19でサブフレーム20に関節式に連結されている。
【0020】
サブフレーム20は、図示した本体構造部の長手方向ビーム21を用いて、操向可能なリアアクスルを本体構造部に連結する働きをする。
【0021】
各上側横リンク11の領域において、前記2つの連結点18、19は、自動車の長手方向Fで見て、いずれの場合も、リアホイールの中心またはホイール担体10の中心の前に、したがって軸14の前に配置されている。この場合、上側横リンク11は、長手方向Fで見て、軸14、したがって、ホイール担体10の中心のすぐ前に、またはこの中心の前に少し離れて位置している。上側横リンク11の前記連結により、キャンバモーメントを有利に支持することが可能になる。
【0022】
下側横リンク12は、いずれの場合も、第1の連結点22でそれぞれのホイール担体10に、また、複数の第2の連結点23、24、特に、図示した例示的な実施形態では2つの第2の連結点でサブフレーム20に関節式に連結されている。各下側横リンク12の領域において、それぞれの横リンク12がそれぞれのホイール担体10に連結された、それぞれの第1の連結点22が、自動車の長手方向Fで見て、軸14の前に、したがって、リアホイールまたはそれぞれのホイール担体10の中心の前に位置していることが、特に図2から分かる。同様に、第2の連結点の最初のもの、具体的には連結点23は、自動車の長手方向Fで見て、軸14の前に、したがってそれぞれのホイール担体10の前に位置し、それに対して、第2の連結点の2番目のもの、具体的には連結点24は、自動車の長手方向Fで見て、軸14の後ろに、したがって、それぞれのホイール担体10の中心の後ろに位置している。このようにして、制動トルクおよび駆動トルクを特に好ましい態様で吸収することができる。
【0023】
図3から最も明瞭に分かるように、ステアリング軸25は、上側横リンク11の第1の連結点18を通ってそれぞれのホイール担体10に延び、下側横リンク12の第1の連結点22を通ってそれぞれのホイール担体10に延び、このステアリング軸25は、図3に一点鎖線で示され、図3によると、底部から上部へ見たときに、後方に、すなわち、自動車の長手方向Fとは反対の方向に傾いている。この傾斜は比較的小さく、数度の範囲で適宜変わる。このようにして、トーインをもった操向動作時に、キャンバのマイナスの変化を得ることができる。
【0024】
すでに説明した部品に加えて、連結器26もまた、本発明による操向可能なリアアクスルの各ホイール担体10と相互作用する。この場合、各連結器26は、それぞれの下側横リンク12をそれぞれのホイール担体10上に支持するように働き、各連結器26は、自動車の長手方向Fで見て、ホイール担体10の中心の後ろに、したがって、軸14の後ろに配置されている。
【0025】
この場合、各連結器26は、連結点27でそれぞれの下側横リンク12に、また、連結点28でそれぞれのホイール担体10に係合し、前記2つの連結点27、28は、自動車の長手方向Fで見て、軸14の後ろに、したがって、ホイール担体10の中心の後ろに配置されている。連結器26を使用することで、本発明によるリアアクスルの制動トルクおよび駆動トルクの支持をさらに改善することができる。
【0026】
本発明は、操向可能なリアアクスルのための全く新規の概念を提案する。本発明による操向可能なリアアクスルは、中央ステアリングアクチュエータ15を有し、このステアリングアクチュエータは、長手方向Fで見て、ホイール担体10の中心の後ろに、特に、トラックロッド13と共に配置され、このトラックロッドは、一方の側で共有ステアリングアクチュエータ15に、また、他方の側でそれぞれのホイール担体10に係合している。上側横リンク11の連結点18、19は、長手方向Fでホイール担体10の中心の前に配置されている。上記と同様に、それぞれのホイール担体10に対するそれぞれの下側横リンク12の連結点22が、長手方向Fで見て、ホイール担体10の中心の前に配置され、特に好ましくは、長手方向Fで見て、それぞれのホイール担体10に対する上側横リンク11の連結点18が、それぞれのホイール担体10に対する下側横リンク12の連結点22の後ろに位置し、それにより、前記連結点18、22を通るステアリング軸25が、底部から上部へ見たときに後方に傾く。それぞれのステアリング軸25の貫通点は、長手方向Fで見て、それぞれのホイール担体10の中心の前に位置する。下側横リンク12がホイール担体10にさらに連結される連結器26の連結点27、28は、長手方向Fで見て、ホイール担体10の中心の後ろに位置する。
【0027】
それぞれのホイール担体10にあてがわれたスプリングダンパシステム29は、一方の側でそれぞれの下側横リンク12に、また、他方の側で自動車本体に支持されている。
【符号の説明】
【0028】
10 ホイール担体
11 上側横リンク
12 下側横リンク
13 トラックロッド
14 軸
15 ステアリングアクチュエータ
16 連結点
17 連結点
18 連結点
19 連結点
20 サブフレーム
21 長手方向ビーム
22 連結点
23 連結点
24 連結点
25 ステアリング軸
26 連結器
27 連結点
28 連結点
29 スプリングダンパシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のリアアクスル、特に、操向可能なリアアクスルであって、いずれの場合も、1つのリアホイールを保持するホイール担体を有し、いずれの場合も、1つの上側横リンク、1つの下側横リンク、および1つのトラックロッドが各リアホイールと相互作用し、前記トラックロッドが、前記自動車の長手方向で見て、前記リアホイールまたは前記ホイール担体の中心の後ろに配置されたリアアクスルにおいて、前記自動車の前記長手方向で見て、いずれの場合も、前記リアホイールまたは前記ホイール担体の前記中心の後ろに配置された両方のトラックロッド(13)が、同様に、前記自動車の前記長手方向で見て、いずれの場合も、前記リアホイールまたは前記ホイール担体の前記中心の後ろに配置された共有ステアリングアクチュエータ(15)によって係合されることを特徴とする、リアアクスル。
【請求項2】
前記上側横リンク(11)は、いずれの場合も、第1の連結点(18)で前記それぞれのホイール担体(19)に連結され、第2の連結点(19)でサブフレーム(20)に連結されることを特徴とする、請求項1に記載のリアアクスル。
【請求項3】
各上側横リンク(11)の領域において、前記第1の連結点(18)および前記第2の連結点(19)は、前記自動車の前記長手方向で見て、前記リアホイールまたは前記ホイール担体(10)の前記中心の前に配置されることを特徴とする、請求項2に記載のリアアクスル。
【請求項4】
前記下側横リンク(12)は、いずれの場合も、第1の連結点(22)で前記それぞれのホイール担体(10)に連結され、複数の第2の連結点(23、24)で前記サブフレーム(20)に連結されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリアアクスル。
【請求項5】
各下側横リンク(12)の領域において、前記第1の連結点(22)および前記第2の連結点の1つ(23)は、前記自動車の前記長手方向で見て、前記リアホイールまたは前記ホイール担体(10)の前記中心の前に配置され、前記第2の連結点の1つ(24)は、前記自動車の前記長手方向で見て、前記リアホイールまたは前記ホイール担体(10)の前記中心の後ろに配置されることを特徴とする、請求項4に記載のリアアクスル。
【請求項6】
前記それぞれのホイール担体(10)に対する前記上側横リンク(11)の前記第1の連結点(18)は、前記自動車の前記長手方向で見て、前記それぞれのホイール担体(10)に対する前記下側横リンク(12)の前記第1の連結点(22)の後ろに位置して、前記連結点(18、22)を通る軸(25)が、底部から上部へ見たときに、後方に傾くことを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項に記載のリアアクスル。
【請求項7】
前記下側横リンク(12)は、いずれの場合も、連結器(26)を介して前記それぞれのホイール担体(10)に支持され、前記それぞれの連結器(26)は、前記自動車の前記長手方向で見て、前記リアホイールまたは前記ホイール担体の前記中心の後ろに延在することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリアアクスル。
【請求項8】
前記それぞれの連結器(26)は、連結点(27)で前記それぞれの下側横リンク(12)に連結され、連結点(28)で前記それぞれのホイール担体(10)に連結され、前記2つの連結点(27、28)は、前記モータの前記長手方向で見て、前記リアホイールまたは前記ホイール担体(10)の前記中心の後ろに配置されることを特徴とする、請求項7に記載のリアアクスル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−189928(P2011−189928A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−47392(P2011−47392)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(510238096)ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (63)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】