説明

自動車の後部車体構造

【課題】車体重量及びコストの上昇を招くことなく、突き上げ荷重に対する捩じれ剛性を高めることができる自動車の後部車体構造を提供する。
【解決手段】左,右のクォータメンバ11及びロアバック部材12を、大略筒状の閉断面部a,bを有するものとし、かつ該閉断面部a,bが連続するように一体的に結合し、前記左,右のクォータメンバ11とロアバック部材12とのコーナー部(連続部材)35に、ストラットタワー13の上壁面を結合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左,右のピラー部材と、該左,右のピラー部材から後方に延びるクォータメンバと、該左,右のクォータメンバの後端部間に配設されたロアバック部材とを備えた自動車の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばオープンカーでは、ルーフがないことから路面からの突き上げ荷重に対する車体の捩じれ剛性を高める構造を採用している。例えば、特許文献1では、左,右のピラー部材(符号なし)から後方に延びるクォータメンバ70,56及び64,58の後端面にロアバック部材60を結合し、この左,右のクォータメンバと左,右のロッカ部材72,66とをストラットタワー50,52により結合した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−522291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来構造のように、左,右のクォータメンバの後端面をロアバック部材の前壁面に突き合わせて結合する構造とした場合には、剛性部間の結合が途切れることとなる。このためストラットタワーからの突き上げ荷重に対して結合部が断点となり、後フレーム全体が捩じれ変形を起こし易くなるという懸念がある。このような結合部の剛性不足を補うには、新たに補強部材を追加する必要があり、車体重量及びコストが上昇するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、車体重量及びコストの上昇を招くことなく、突き上げ荷重に対する捩じれ剛性を高めることができる自動車の後部車体構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、車幅方向外側に配設され、車両上下方向に延びる左,右のピラー部材と、該左,右のピラー部材から車両後方に延びるよう配設されたクォータメンバと、該左,右のクォータメンバの後端部に車幅方向に延びるよう配設されたロアバック部材と、該ロアバック部材と前記左,右のクォータメンバとの間に配設され、後輪に連結されたショックアブソーバを支持するストラットタワーとを備えた自動車の後部車体構造であって、前記左,右のクォータメンバ及び前記ロアバック部材を、大略筒状の閉断面部を有するものとし、かつ該閉断面部が連続するように一体的に結合し、前記左,右のクォータメンバと前記ロアバック部材とのコーナー部に、前記ストラットタワーの上壁面を結合したことを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の自動車の後部車体構造において、前記ロアバック部材は、ロアバックインナとロアバックアウタとで構成され、前記ロアバック部材の閉断面部は、前記ロアバックインナの上方部位に前記ロアバックアウタを結合することにより形成され、前記ロアバックインナの下方部位には、車両前後方向に延びる左,右のリヤサイドメンバの後端部が結合され、前記ロアバックインナのリヤサイドメンバの後端部が結合された部位と、前記ロアバックアウタの閉断面部とを、第1補強部材により上下方向に橋渡しするように結合したことを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の自動車の後部車体構造において、前記ロアバック部材は、ロアバックインナとロアバックアウタとで構成され、前記ロアバック部材の閉断面部は、前記ロアバックインナの上方部位に前記ロアバックアウタを結合することにより形成され、前記ロアバックインナの下方部位には車両後方に突出する凸部が形成され、該凸部の左,右側部には、車両前後方向に延びる左,右のリヤサイドメンバの後端部が結合され、前記ロアバックインナの前記凸部と前記リヤサイドメンバの後端部が結合された部位とを第2補強部材により車幅方向に橋渡しするように結合し、該第2補強部材はボックス状に形成され、前記凸部の後端面と略同じ車両前後方向高さを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係る後部車体構造によれば、左,右のクォータメンバ及びロアバック部材を、大略筒状の閉断面部が連続するように一体的に結合し、左,右のクォータメンバとロアバック部材とのコーナー部にストラットタワーの上壁面を結合する構成とした。
【0010】
このように構成したので、左,右のクォータメンバからロアバック部材に渡って途切れることのない連続した閉断面部を有し、かつクォータメンバの前端部がピラー部材に結合されたフレーム構造とすることができる。これにより、コーナー部に加わるストラットタワーからの突き上げ荷重に対する断点をなくすことができ、該突き上げ荷重を後部車体全体で受け止めることができ、捩じれ変形を抑えることができる。即ち、左,右のクォータメンバ及びロアバック部材がスタビライザーとして機能することにより突き上げ荷重による後部車体の捩れ変形を抑えることができる。
【0011】
このように請求項1の発明では、左,右のクォータメンバとロアバック部材とを閉断面部が連続するように一体に結合する構造を採用しているので、新たに補強部材を追加することなく捩じれ剛性を高めることができ、車体重量及びコストの上昇を抑制でき、ひいては軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0012】
請求項2の発明では、ロアバックインナのリヤサイドメンバの後端部が結合された部位とロアバックアウタの閉断面部とを第1補強部材により上下方向に橋渡しするように結合したので、リヤサイドメンバからの上下方向,前後方向の入力を、第1補強部材を介して剛性の高いロアバック部材の閉断面部に効率よく伝達することができる。これにより、左,右のリヤサイドメンバ間に生じる変位差を抑制することができ、後部車体の捩じれ変形を効果的に抑えることができる。
【0013】
またショックアブソーバからの突き上げ荷重を、前記第1補強部材を介してロアバック部材の閉断面部に効率よく伝達することができ、ショックアブソーバを支持する左,右のストラットタワー間の変位差を効果的に抑えることができる。
【0014】
さらにまた、リヤサイドメンバとロアバック部材とを第1補強部材により上下方向に連結したので、例えば左,右のリヤサイドメンバ同士を車幅方向に延びる閉断面構造のボックス状部材により結合する構造に比べて、コスト及び車体重量を低減でき、かつリヤサイドメンバからの前後方向の入力によりロアバック部材が前後に変形して倒れるのを防止することができる。
【0015】
請求項3の発明では、車両後方に突出するよう形成された凸部と、ロアバックインナのリヤサイドメンバ結合部位とを第2補強部材により車幅方向に橋渡しするように結合したので、前記凸部及び車体後部の変形を効果的に抑えることができる。
【0016】
即ち、ロアバックインナの下方部位に車両後方に突出する凸部を形成した場合、該凸部の稜線が断点となって変形が生じやすいが、本発明では、第2補強部材により、前記凸部とリヤサイドメンバ結合部位と断点なく橋渡しして結合したので、凸部の変形を抑えることができる。また前記凸部及び第2補強部材は、左,右のサイドメンバ間を橋渡し結合する機能も有し、この点からも車体後部の変形をより一層確実に抑えることできる。
【0017】
ここで前記左,右のサイドメンバ間を橋渡しする場合に、車幅に応じた長尺の補強部材を採用すると、重量増加,コスト増加の問題が生じるが、本発明では、ロアバックインナに形成されている凸部を介在させて左,右のサイドメンバ間を橋渡ししたので、それだけ補強部材の必要長さを短縮でき、重量増加,コスト増加の問題を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1による自動車の車体の斜視図である。
【図2】前記自動車の後部車体の斜視図である。
【図3】前記後部車体の断面平面図である。
【図4】前記後部車体の外側方から見た斜視図である。
【図5】前記後部車体の断面図である(図3のV-V線断面図)である。
【図6】前記後部車体のセンターピラーの断面図(図4のVI-VI線断面図)である。
【図7】前記後部車体のクォータメンバの断面平面図(図4のVII-VII線断面図)である。
【図8】前記クォータメンバの断面図(図4のVIII-VIII線断面図)である。
【図9】本発明の実施例2による後部車体を説明するための斜視図である。
【図10】前記後部車体のロアバックパネルの後方から見た斜視図である。
【図11】前記ロアバックパネルの断面図(図10のXI-XI線断面図)である。
【図12】本発明の実施例3による後部車体を説明するための斜視図である。
【図13】前記後部車体の補強部材を斜め後方から見た斜視図である。
【図14】本発明の実施例4による後部車体を説明するための斜視図である。
【図15】前記後部車体の補強部材を斜め後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1ないし図8は、本発明の実施例1による自動車の後部車体構造を説明するための図である。なお、本実施例の説明の中で、前後,左右という場合は、シートに着座した状態で車両前進方向に見た場合の前後,左右を意味する。
【0021】
図において、1はオープンカーの後部車体を示している。この後部車体1は、車幅方向左,右外側に配設された外装品であるサイドアウタパネル2とサイドインナパネル3とを中空状をなすよう結合してなる左,右のサイドパネル4,4と、該左,右のサイドパネル4の下端部に配設され、ロッカアウタ5aとロッカインナ5bとの間に前記サイドインナパネル3の下部3aを介在させて一体に結合してなる前後方向に延びるロッカパネル5,5と、該左,右のロッカパネル5に架け渡して結合されたリヤフロアパネル6とを有する。この左,右のロッカパネル5の前側には、不図示のシートが搭載されるフロントフロアパネル9が配設されている(図1参照)。
【0022】
前記リヤフロアパネル6の下面の左,右側縁部には、前後方向に延びる左,右のリヤサイドメンバ7,7が結合されており、該左,右のリヤサイドメンバ7には、車幅方向に延びるリヤクロスメンバ8が結合されている。
【0023】
前記後部車体1は、左,右のサイドパネル4の前部に配設され、その下端部が前記ロッカパネル5に結合された車両上下方向に延びる左,右のセンターピラー10,10と、該左,右のセンターピラー10の上端部から車両後方に延びるよう配設されたクォータメンバ11,11と、該左,右のクォータメンバ11の後端部間に配設された車幅方向に延びるロアバックパネル12と、該ロアバックパネル12と左,右のクォータメンバ11との間に配設されたストラットタワー13とを備えている。
【0024】
この左,右のストラットタワー13は、不図示の後輪の上方を覆うように配設されたホイールハウス14,14の後端部に形成されており、前記後輪に連結されたショックアブソーバ15の上端部が固定されている(図5参照)。
【0025】
前記左,右のクォータメンバ11及びロアバックパネル12の上縁によりラゲージルーム開口1aが形成されており、該ラゲージルーム開口1aには、ラゲージドア18が開閉可能に配設されている。
【0026】
前記左,右のロッカパネル5の前端部には、上下方向に延びるフロントピラー19,19の下端部が結合されている。このフロントピラー19,前記ロッカパネル5及びセンターピラー10によりドア開口1bが形成されている。該ドア開口1bには、フロントピラー19に回動可能に支持されたドア(不図示)が配設されている。
【0027】
前記左,右のセンターピラー10間には、転倒時,側面衝突時の荷重に対する車体剛性を高めるためのロールバー装置20が配設されている。
【0028】
このロールバー装置20は、左,右一対のロールバー21,21が結合された上側クロスバー22と、該上側クロスバー22の前側下方にオフセット配置された下側クロスバー23と、この両クロスバー22,23の左,右端部同士を上下方向に連結する連結バー24,24と、該連結バー24と共に上側,下側クロスバー22,23が結合された左,右のブラケット25,25とを備えている。
【0029】
この左,右のブラケット25は、前記センターピラー10の閉断面内に車幅方向に架け渡して配置された円筒状の各カラー部材26にボルト27を挿入して締め付けることにより、該センターピラー10に結合されている。
【0030】
前記左,右のセンターピラー10は、前記サイドインナパネル3の前部3bと、サイドアウタパネル2の車内側に配設されたピラーアウタパネル29との間にピラーリインホース30を配設し、これの前,後縁部同士及び上縁部同士を一体に結合することにより上下方向に延びる角筒状の閉断面を形成した構造を有する。
【0031】
この左,右のセンターピラー10は、ロッカパネル5の大略後半部に渡る前後長を有し、これによりセンターピラー10とロッカパネル5との重合部は前後に幅広となっている。
【0032】
前記左,右のクォータメンバ11は、前記サイドパネル4内のサイドインナパネル3の上辺部に沿って配置され、車内側に開口する概ね断面ハット形状をなしている。
【0033】
この左,右のクォータメンバ11は、これの上フランジ部11aを前記サイドインナパネル3の上フランジ部3cに結合するとともに、下フランジ部11bを前記サイドインナパネル3の外壁面に結合することにより、該サイドインナパネル3とで車両前後方向に延びる角筒状の第1閉断面部a,aを形成した構造を有する。
【0034】
また各クォータメンバ11の後端壁11cをサイドインナパネル3に結合することにより、前記第1閉断面部aの後端は閉塞されている(図3参照)。
【0035】
前記ロアバックパネル12は、ロアバックインナ31とロアバックアウタ32とを一体に結合することにより車幅方向に延びる角筒状の第2閉断面部bを形成した構造を有する。このロアバックインナ31は、下方に延長形成されて前記リヤフロアパネル6に結合されている。
【0036】
前記左,右のクォータメンバ11の前部11dは、前記センターピラー10の閉断面内に該センターピラー10の図心より前方に位置するよう挿入され、該センターピラー10に一体に結合されている。このように左,右のクォータメンバ11はセンターピラー10に串刺し状に結合されている。
【0037】
詳細には、図6に示すように、各クォータメンバ11の前部11dの上フランジ部11aは、前記ピラーアウタパネル29の上フランジ部29a,ピラーリインホース30の上フランジ部30a及び前記サイドインナパネルの上フランジ部3cに重ね合わせて一体に結合されている。また下フランジ部11bは、前記ピラーリインホース30,サイドインナパネル3及び前記ブラケット25と共に前記ボルト27によりカラー部材26を介在させて一体に共締め固定されている。
【0038】
また前記ピラーアウタパネル29のクォータメンバ11に対向する部分には、該クォータメンバ11に当接する複数の凹部29bが形成されており、該各凹部29bはクォータメンバ11に結合されている。
【0039】
そして前記左,右のクォータメンバ11及びロアバックパネル12は、それぞれ第1,第2閉断面部a,bが連続するように一体に結合されている。
【0040】
前記左,右のクォータメンバ11とロアバックパネル12とは、連続部材35,35を介在させて結合されている。この左,右の連続部材35の車外側には、リヤコンビネーションランプ36,36が配設されている。
【0041】
前記左,右の連続部材35は、左,右のクォータメンバ11とロアバックパネル12とのコーナー部を形成しており、アウタ部材35aとインナ部材35bとを結合することにより角筒状の第3閉断面部cを形成した構造を有する。これにより左,右の第3閉断面部cを介在させて前記第1,第2閉断面部a,bは途切れることなく連続している。
【0042】
前記左,右の連続部材35には、前記ストラットタワー13の上壁面が結合されている。詳細には、ストラットタワー13の外縁に屈曲形成された上辺部13aがインナ部材35bの内側面に結合されている(図5参照)。これにより左,右のショックアブソーバ15は、ストラットタワー13から連続部材35を介してクォータメンバ11及びロアバックパネル12により支持されている。
【0043】
本実施例によれば、左,右のクォータメンバ11及びロアバックパネル12を略角筒状の第1,第2閉断面部a,bを有するものとし、該第1,第2閉断面部a,bを連続部材35の第3閉断面部cを介して連続するように一体的に結合し、左,右のクォータメンバ11とロアバックパネル12とのコーナー部を形成する連続部材35にストラットタワー13の上辺部13aを結合した。
【0044】
このように構成したので、左,右のクォータメンバ11からロアバックパネル12に渡って途切れることのない連続した第1〜第3閉断面部a,c,bを有し、その前端部がセンターピラー10に串刺し状に結合されたフレーム構造とすることができる。
【0045】
これにより、連続部材35に加わるストラットタワー13からの突き上げ荷重に対する断点をなくすことができるとともに、左,右のクォータメンバ11及びロアバックパネル12がスタビライザーとして機能し、前記突き上げ荷重を後部車体1全体で負担することができ、後部車体1の捩れ変形を抑えることができる。
【0046】
詳細には、前記連続した閉断面部を有し、平面視で略コ字形状を有し、クォータメンバ11の前端部をセンターピラー10に串刺し状に結合するフレーム構造としたので、左,右何れかのコーナー部に入力された突き上げ荷重に対して、センターピラー10が車両後方に倒れないように機能するとともに、入力と反対側のコーナー部が車両内側に変形しないように機能することから、突き上げ荷重と反対方向の反力によりコーナー部の捩じれ変形が抑制される。さらにクォータメンバ11には、下方に延びるサイドインナパネルが接続されており、またロアバックパネル12は下方に延びるロアバックアウタを有していることから、これらが剪断パネルとして機能することとなり、捩じれ変形をより確実に抑制することができる。
【0047】
このように本実施例では、左,右のクォータメンバ11とロアバックパネル12とを連続部材35を介して閉断面部a,b,cが連続するように一体に結合する構造を採用しているので、既存の車体部材を有効利用することで所要のフレーム構造を実現でき、新たに補強部材を追加することなく捩じれ剛性を高めることができる。その結果、車体重量及びコストの上昇を抑制でき、ひいては軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0048】
本実施例では、左,右のクォータメンバ11の前部11dをセンターピラー10の閉断面内に挿入して該センターピラー10に串刺し状に結合したので、ストラットタワー13からの突き上げ荷重を左,右のクォータメンバ11を介してセンターピラー10により受け止めることができ、捩じれ剛性をより一層高めることができる。この場合、センターピラー10への入力をロッカパネル5を介してフロントピラー19,アッパメンバ38に分散させて伝達することができ、後部車体1への荷重の負担を緩和することができる。
【0049】
また左,右のセンターピラー10をロールバー装置20により結合したので、平面視で、後部車体1全体を環状に囲む構造とすることができ、捩じれ変形しようとする力を環状の骨格部材全体で受け止めることができ、オープンカーにおける捩じれ剛性をより一層高めることができる。
【実施例2】
【0050】
図9ないし図11は、本発明の実施例2による後部車体構造を説明するための図である。図中、図1〜図8と同一符号は同一又は相当部分を示す。本実施例2は、前記実施例1において、車体後部のロアバックパネル12を第1補強部材により補強した例である。
【0051】
前記ロアバックパネル12は、前記ロアバックインナ31と前記ロアバックアウタ32とで構成され、該ロアバックパネル12の第2閉断面部bは、前記ロアバックインナ31の上方部位31cに前記ロアバックアウタ32を結合することにより形成されている。
【0052】
詳細には、断面ハット形状のロアバックインナ31とロアバックアウタ32との、上フランジ部31a,32a同士及び下フランジ部31b,32b同士をスポット溶接により結合することにより角筒状の第2閉断面部bを形成した構造を有する。
【0053】
前記ロアバックインナ31は、前記断面ハット形状をなす上方部位31cと、該上方部位31cの下フランジ部31bに続いて下方に延びる下方部位31dとを有する。この下方部位31dの上部には、前記下フランジ部31bから後下方に傾斜して延びる傾斜部31d′が屈曲形成されている。
【0054】
前記ロアバックインナ31の下方部位31dの車幅方向中央部には、凸部31eが後方に突出形成されている。この凸部31eは、前記リヤフロアパネル6に凹設されたスペアタイヤ収納凹部6aの後端部を構成している。また、前記ロアバックインナ31の下方部位31dの左,右側部には、車両前後方向に延びる前記左,右のリヤサイドメンバ7の後縁に車外側に屈曲形成された各後端フランジ部7aが結合されている。
【0055】
前記左,右のリヤサイドメンバ7は、上方に開口する断面ハット形状を有し、該リヤサイドメンバ7の上面に前記リヤフロアパネル6が結合されており、これにより閉断面部dが形成されている。
【0056】
また前記左,右のリヤサイドメンバ7の外側面には、前記ストラットタワー13の下辺部13bが結合されており、該ストラットタワー13の上辺部13aはロアバックインナ31の下フランジ31bに下フランジ32bとともに3枚重ねてスポット溶接により結合されている。
【0057】
そして、前記ロアバックインナ31の、前記左,右のリヤサイドメンバ7の後端フランジ部7aが結合された部分と、前記ロアバックアウタ32の閉断面部bに望む部分とは、第1補強部材40により上下方向に橋渡しすることにより結合されている。
【0058】
前記第1補強部材40は、上下方向に延びる縦壁部40aと、該縦壁部40aの左,右側縁から前方に屈曲して延びる左,右側壁部40b,40bと、前記縦壁部40aの下縁から前方に屈曲して延びる下壁部40cとを有する。このように第1補強部材40を大略ボックス形状のものとしたので、該第1補強部材単体の剛性が高くなっている。
【0059】
前記縦壁部40aの上縁には、上フランジ部40fが上方に突出するよう形成され、前記下壁部40cの前縁には、下フランジ部40gが下方に屈曲形成されている。
【0060】
また前記左,右側壁部40bの前縁には、外,内フランジ部40h,40iが車外側,車内側に屈曲形成され、上縁には、横フランジ部40jが車外側に屈曲形成されている。
【0061】
前記上フランジ部40fは、前記ロアバックアウタ32の閉断面部bを形成する縦壁32cに前後方向のスポット溶接により結合されている。
【0062】
前記下フランジ部40g及び外,内フランジ部40h,40iは、ロアバックインナ31の下方部位31dに前記リヤサイドメンバ7の後端フランジ部7aとともに3枚重ねて前後方向のスポット溶接により結合されている。
【0063】
前記外フランジ部40hの上側部40h′は、前記下方部位31dの傾斜部31d′に前記ストラットタワー13の傾斜部13cとともに3枚重ねて斜め下向き方向のスポット溶接により結合されている。
【0064】
前記横フランジ部40jは、前記ロアバックアウタ32の閉断面部bを形成する下壁32dに上下方向のスポット溶接により結合されている。
【0065】
このようにして前記第1補強部材40と前記ロアバックパネル12とで角筒状の閉断面部eが形成され、該閉断面部eを介して前記ロアバックパネル2の閉断面部bとリヤサイドメンバ7の閉断面部dとは連結されている。
【0066】
これにより、リヤサイドメンバ7からの上下方向の入力は、外,内フランジ部40h,40i及び下フランジ部40gで剪断方向に受け、上フランジ部40fを介してロアバックアウタ32に剪断方向に伝達される。またリヤサイドメンバ7からの前後方向の入力は、横フランジ部40jを介してロアバックアウタ32に剪断方向に伝達される。さらにストラットタワー13からの上下方向の入力は、外フランジ部40hの上側部40h′で剪断方向に受け、上フランジ部40fを介してロアバックアウタ32に剪断方向に伝達される。
【0067】
このように、各フランジ部40f〜40jをそれぞれ異なる方向に指向するようスポット溶接したので、リヤサイドメンバ7やストラットタワー13からの上下方向,前後方向の入力を、剪断方向で受けるとともに、ロアバックパネル12の閉断面部bに剪断方向に伝達することができる。
【0068】
本実施例によれば、ロアバックインナ31のリヤサイドメンバ7の後端フランジ部7aの結合部分と、ロアバックアウタ32の閉断面部bに望む部分とを第1補強部材40により上下方向に連結したので、リヤサイドメンバ7からの上下方向,前後方向の入力を、第1補強部材40を介して剛性の高いロアバックパネル12の閉断面部bに効率よく伝達することができる。これにより、左,右のリヤサイドメンバ7間に生じる変位差を抑制することができ、後部車体1の捩じれ変形を効果的に抑えることができる。
【0069】
またショックアブソーバ15からの突き上げ荷重を、前記第1補強部材40を介してロアバックパネル12の閉断面部bに効率よく伝達することができ、ショックアブソーバ15を支持する左,右のストラットタワー13間の変位差を効果的に抑えることができ、この点からも後部車体1の捩じれ変形を抑制できる。
【0070】
ここで左,右のリヤサイドメンバの後端部同士を車幅方向に延びるボックス状の部材で結合することにより、前記捩れ変形を抑制することが考えられる。しかしこのようにすると大型の補強となることから、車体重量及びコストが上昇するという問題が生じ、またリヤサイドメンバからの前後方向の入力に対して、ロアバックアウタの閉断面部とボックス部材との間が断点となってロアバック部材が前後に倒れるように変形するおそれがある。
【0071】
これに対して本実施例では、前記リヤサイドメンバ7とロアバックパネル12とを第1補強部材40により上下方向に橋渡しするように結合したので、左,右のリヤサイドメンバを車幅方向に延びるボックス状の部材で結合する上述の構造に比べて、コスト及び車体重量を低減できるとともに、リヤサイドメンバ7からの前後方向の入力によりロアバックパネル12が前後に変形して倒れるのを防止することができる。
【実施例3】
【0072】
図12及び図13は、本発明の実施例3による後部車体構造を説明するための図である。図中、図1〜図11と同一符号は同一又は相当部分を示す。本実施例3は、前記実施例1において、車体後部のロアバックパネル12を第2補強部材により補強した例である。
【0073】
前記ロアバックパネル12を構成するロアバックインナ31の下方部位31dの車幅方向略中央部には、上述のスペアタイヤ収納凹部6aの後端部を構成する凸部31eが形成されている。この凸部31eは平面視で略台形状をなすように車両後方に突出しており、その後端面31fの車両前後方向位置は、前記ロアバックアウタ32の縦壁32cと略同じに設定されている。
【0074】
そして前記ロアバックインナ31の、前記凸部31eと前記リヤサイドメンバ7,7の後端部が結合された部位とは第2補強部材41,41により車幅方向に橋渡しするように結合されている。
【0075】
前記第2補強部材41は、後壁41a,上,下壁41b,側壁41cを有する横断面ハット状をなしており、その周縁には上,下フランジ部41d,41d、側フランジ部41e、傾斜フランジ部41fが形成されている。
【0076】
前記第2補強部材41の後壁41aの車幅方向内端部41gは前記凸部31eの後端面31fにスポット溶接により接合されている。前記後壁41aと後端面31fとは略同じ車両前後方向高さに設定されている。
【0077】
また前記傾斜フランジ部41fは前記凸部31eの側面31gにスポット溶接により接合されており、さらに前記上,下フランジ部41d,41d及び側フランジ部41eは、前記ロアバックインナ31の下方部位31dを挟んで前記左,右のリヤサイドメンバ7,7のフランジ部7aに3枚重ねのスポット溶接により接合されている。このようにして前記第2補強部材41は前記ロアバックインナ31の下方部位31d,凸部31eとで閉塞されたボックス状をなしている。
【0078】
本実施例が対象とするコンパクトな車両では、ロアバックパネル12の下方部位31dにスペアタイヤ収納凹部6aの一部を構成する凸部31eが形成される場合がある。ロアバックパネル12の上方部位31cは、閉断面構造を有するので必要な強度,剛性を確保し易いが、下方部位31dについては、凸部31eを形成した場合、この凸部31eの稜線を起点とする変形が発生し易い。
【0079】
本実施例では、左,右の第2補強部材41,41により前記凸部31eと左,右のサイドメンバ7,7の後端部とを車幅方向に橋渡ししたので、前記凸部31eが稜線部分で変形するのを抑制できる。
【0080】
また、前記左,右の第2補強部材41,41及び凸部31eは、左,右のサイドメンバ7,7間を車幅方向に橋渡しする部材としても機能し、ロアバックパネル12の下方部位31dの強度,剛性を向上できる。その結果、ロアバックパネル12の上方部位31c及び下方部位31dにより車体後部の変形を効果的に抑えることができる。
【0081】
上述のように、左,右のサイドメンバ7,7を長尺の補強部材により橋渡し結合した場合、車両重量増加,コスト増加の問題が生じるが、本実施例3では、スペアタイヤ収納凹部6aの一部として車両後方に突出する凸部31eを利用したので、その分補強部材の長さを短縮でき、車両重量増加,コスト増加の問題を回避できる。
【実施例4】
【0082】
図14及び図15は、本発明の実施例4による後部車体構造を説明するための図である。図中、図1〜図13と同一符号は同一又は相当部分を示す。本実施例4は、前記実施例2において、ロアバックパネル12を第2補強部材により補強した例である。
【0083】
前記ロアバックインナ31の下方部位31dの車幅方向略中央部には、上述のスペアタイヤ収納凹部6aの後端部を構成する凸部31eが形成されている。この凸部31eは前記実施例3の凸部31eと同様の構造を有する。
【0084】
前記ロアバックインナ31の、前記左,右のリヤサイドメンバ7,7の後端フランジ部7aが結合された部分と、前記ロアバックアウタ32の閉断面部bに望む部分とは、第1補強部材40により上下方向に橋渡しすることにより結合されている。この第1補強部材40は前記実施例2における第1補強部材40と同様の構造を有する。
【0085】
そして前記ロアバックインナ31の、前記凸部31eと前記リヤサイドメンバ7,7の後端部が結合された部位とは、前記1補強部材40,40を介して第2補強部材42,42により橋渡しするように結合されている。
【0086】
前記第2補強部材42は、後壁42a,上,下壁42bを有する横断面ハット状をなしており、その周縁には上,下フランジ部42d,42d、側フランジ部42e、傾斜フランジ部42fが形成されている。
【0087】
前記第2補強部材42の後壁42aの、車幅方向内端部42gは前記凸部31eの後端面31fに、車幅方向外端部42hは前記第1補強部材40の縦壁部40aにそれぞれスポット溶接により接合されている。前記後壁42a,後端面31f及び縦壁部40aは略同じ車両前後方向高さに設定されている。
【0088】
また前記傾斜フランジ部42fは前記凸部31eの側面31gにスポット溶接により接合されており、さらに前記上,下フランジ部42d,42d、側フランジ部42eは、前記ロアバックインナ31の下方部位31d、第1補強部材40の側壁部4bにそれぞれスポット溶接により接合されている。
【0089】
このようにして前記第2補強部材42は前記ロアバックインナ31の下方部位31d,凸部31e及び第1補強部材40とで閉塞されたボックス状をなしている。
【0090】
このように本実施例4では、前記リヤサイドメンバ7とロアバックパネル12とを第1補強部材40により上下方向に橋渡しするように結合し、さらに第2補強部材42,42によりロアバックパネル12の凸部31eとリヤサイドメンバ7とを第1補強部材40を介して車幅方向に橋渡しするように結合したので、より一層車体後部の強度,剛性を高めることができ、より一層確実に車体後部の変形を抑制できる。
【符号の説明】
【0091】
1 後部車体
7 リヤサイドメンバ
7a 後端フランジ部(後端部)
10 センターピラー(ピラー部材)
11 クォータメンバ
12 ロアバックパネル(ロアバック部材)
13 ストラットタワー
13a 上辺部(上壁面)
15 ショックアブソーバ
31 ロアバックインナ
31c 上方部位
31d 下方部位
32 ロアバックアウタ
35 連続部材(コーナー部)
40 第1補強部材
41,42 第2補強部材
a,b,c 閉断面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向外側に配設され、車両上下方向に延びる左,右のピラー部材と、
該左,右のピラー部材から車両後方に延びるよう配設されたクォータメンバと、
該左,右のクォータメンバの後端部に車幅方向に延びるよう配設されたロアバック部材と、
該ロアバック部材と前記左,右のクォータメンバとの間に配設され、後輪に連結されたショックアブソーバを支持するストラットタワーと
を備えた自動車の後部車体構造であって、
前記左,右のクォータメンバ及び前記ロアバック部材を、大略筒状の閉断面部を有するものとし、かつ該閉断面部が連続するように一体的に結合し、
前記左,右のクォータメンバと前記ロアバック部材とのコーナー部に、前記ストラットタワーの上壁面を結合した
ことを特徴とする自動車の後部車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車の後部車体構造において、
前記ロアバック部材は、ロアバックインナとロアバックアウタとで構成され、
前記ロアバック部材の閉断面部は、前記ロアバックインナの上方部位に前記ロアバックアウタを結合することにより形成され、
前記ロアバックインナの下方部位には、車両前後方向に延びる左,右のリヤサイドメンバの後端部が結合され、
前記ロアバックインナの、リヤサイドメンバの後端部が結合された部位と、前記ロアバックアウタの閉断面部とを、第1補強部材により上下方向に橋渡しするように結合した
ことを特徴とする自動車の後部車体構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動車の後部車体構造において、
前記ロアバック部材は、ロアバックインナとロアバックアウタとで構成され、
前記ロアバック部材の閉断面部は、前記ロアバックインナの上方部位に前記ロアバックアウタを結合することにより形成され、
前記ロアバックインナの下方部位には車両後方に突出する凸部が形成され、該凸部の左,右側部には、車両前後方向に延びる左,右のリヤサイドメンバの後端部が結合され、
前記ロアバックインナの前記凸部と前記リヤサイドメンバの後端部が結合された部位とを第2補強部材により車幅方向に橋渡しするように結合し、
該第2補強部材はボックス状に形成され、前記凸部の後端面と略同じ車両前後方向高さを有する
ことを特徴とする自動車の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−28322(P2013−28322A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231406(P2011−231406)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】