説明

自動車の車体構造

【課題】軽量化を図りながら、正面衝突や側面衝突に対する強度の向上を実現した自動車の車体構造を提供する。
【解決手段】ダッシュボードサイドメンバ19を備えた自動車のボディ1において、ダッシュボードサイドメンバ19は、水平分割線19aおよび垂直分割線19bによって分割された前方下部片41と後方上部片42とから構成され、前方下部片41および後方上部片42は、水平分割線19aに沿って互いを接合する水平フランジ41a,42aと、垂直分割線19bに沿って互いを接合する垂直フランジ41b、42bとを車幅方向外側にそれぞれ有し、前方下部片41にはダンパベース27が接合され、後方上部片42は、車体前方視において両フランジ42a,42bがフロントサイドピラーアッパ7とラップした状態で、フロントサイドピラーアッパ7の車幅方向内側に接合されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体構造に係り、軽量化を図りながら、フルラップ衝突やオフセット衝突に対する強度の向上を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モノコック構造の自動車(以下、モノコック車と記す)は、薄鋼板をプレス成型することで多数のボディパネルや骨格部材を製造した後、これらをスポット溶接等により接合することでボディが製造される。そして、このようなモノコック車には、車体の前方へ左右一対のフロントサイドフレームを延ばすとともに、これら両フロントサイドフレームの前端をバンパビームで連結し、フロントサイドフレームの後部上方に設けられた一対のフロントピラーの前端から左右一対のアッパメンバを前方へ延ばすとともに、連結部材を介してこれら前端を両フロントサイドフレームの前端外側に接合した車体構造を採用しているものがある。
【0003】
上記構成の車体構造では一般に、フロントサイドフレームの車幅方向外側にホイールハウスが設けられ、ホイールハウス上部に設けられたダンパベースが両アッパメンバの車幅方向内側に接合されている。ホイールハウスの後方には、ダッシュボードロアパネルが設けられ、これにより、エンジンルームと車室空間とが画成されている。そして、正面衝突による荷重は、フロントサイドフレームへ伝達されるだけでなく、アッパメンバを介してフロントピラーにも伝達されるようになっており、衝突荷重が所定値以上である場合には、フロントサイドフレームやアッパメンバ等の前部が大きく変形することで衝突エネルギを吸収し、車室空間の変形を防止して乗員の安全を図っている。
【0004】
低速運転中のフルラップ衝突と異なり、高速運転時における衝突やオフセット衝突などの場合、その衝突荷重は非常に大きいため、このような条件下では衝突荷重をフロントピラーへ効率的に分散させる必要がある。そして、この課題を解決するために、上記構成の車体構造において、アッパメンバを車体後方に向けて上がり勾配となるように略直線状に形成した自動車前部の車体構造が本出願人によって提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−112173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フロントサイドフレーム等の前部の変形のみでは衝突エネルギが吸収されない場合、衝突荷重は前輪へ入力し、ダンパベースを介してアッパメンバへ伝達されるため、板厚を厚くする等してアッパメンバ後部の剛性を高める必要があった。また、各フレームを構成するパネルや骨格部材は上述したようにスポット溶接により接合されているのが一般的であるが、アッパメンバ後部の剛性を高めた場合には、アッパメンバとフロントピラーとの接合強度も高める必要があった。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、軽量化を図りながら、オフセット衝突およびフルラップ衝突に対する強度の向上を実現した自動車の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、自動車の車体構造において、車体前部に配置され、前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、前記フロントサイドフレームの後部上方に配置された左右一対のフロントサイドピラーアッパと、その前端が連結部材を介して前記フロントサイドフレームの前端に接合され、その後端が前記フロントサイドピラーアッパの前端に接合され、更に、車幅方向内側にダンパベースが接合された左右一対のアッパメンバと、その左右側部が前記両フロントサイドピラーアッパの前端における車幅方向内側に接合されたダッシュボードアッパとを備え、前記ダッシュボードアッパの左右側部は、前方へ延出して前記ダンパベースに接合するとともに、車体前方視において前記フロントサイドピラーアッパとラップする係止部を車幅方向外側に備えるように構成する。
【0008】
上記構成の自動車の車体構造において、前記係止部を、前記ダッシュボードアッパの左右側部に突設されたビードで構成することや、前記ダッシュボードアッパの左右側部に接合されたキャッチャーで構成することが可能である。また、前記ダッシュボードアッパの左右側部を、略水平な水平分割線および略垂直な垂直分割線によって、前記フロントサイドピラーアッパの前端に接合された後方上部片と、前記ダンパベースに接合する前方下部片とに分割し、前記係止部を、前記前方下部片および後方上部片にそれぞれ形成されるとともに、前記水平分割線に沿って互いを接合する水平フランジと、前記垂直分割線に沿って互いを接合する垂直フランジとで構成するとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フロントサイドフレームまたは前輪から入力した衝突荷重は、アッパメンバを介してフロントサイドピラーアッパへ伝達されるが、衝突荷重がアッパメンバのフロントサイドピラーアッパとの接合強度より大きく、当該接合が外れた場合であっても、係止部がフロントサイドピラーアッパによって係止され、アッパメンバおよびダンパベースの後退を制限できる。これにより、ダンパベースがアッパメンバと共に後退してダッシュボードロアに干渉する虞が低減され、正面衝突時における乗員の安全性が向上する。
【0010】
そして、プレス加工時にダッシュボードアッパの左右側部にビードを突設することにより、容易に係止部を形成することができる。また、ダッシュボードアッパの左右側部にキャッチャーを接合して係止部を形成すれば、所望の強度確保が容易であるとともに、設計自由度の高い車体構造を実現できる。また、ダッシュボードアッパの左右側部を分割して垂直フランジおよび水平フランジによって係止部を形成することにより、所望の強度を確保し易く、且つ製造および組立ても容易な係止部を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図7を参照して、本発明を適用した自動車用車体構造の第1実施形態を詳細に説明する。本実施形態は、ハッチバック乗用車用のボディに本発明を適用したものであり、図1は第1実施形態に係る車体骨格構造を示す斜視図であり、図2は第1実施形態に係る車体骨格構造の前部を示す右側面図である。なお、図2以降においては、ボディ1の骨格構造が概ね左右対称の構成をなしているため、ボディ1の右側構造について説明し、左側構造についてはその説明を省略する。
【0012】
≪第1実施形態の構成≫
図1、図2に示すように、実施形態のボディ1は、その前部主要部材として、車体前部に配置された前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム2,3と、両フロントサイドフレーム2,3の後部側方に鉛直方向に延びる左右一対のフロントサイドピラーロア4,5と、両フロントサイドピラーロア4,5の上方に一体形成され、両フロントサイドフレーム2,3の後部上方に配置された左右一対のフロントサイドピラーアッパ6,7と、その前端が連結部材8,9を介して両フロントサイドフレーム2,3の前端に接合され、その後端が両フロントサイドピラーアッパ6,7の前端に接合された左右一対のアッパメンバ10,11とを備えている。
【0013】
両フロントサイドフレーム2,3の前端には、前方に延出する左右一対のフロントサイドフレームエクステンション12,13が接合され、その前端には左右方向に延在するバンパビーム14が設けられている。また、両フロントサイドフレーム2,3の前端部車幅方向内側には、左右のバルクヘッドサイドステイ15,16が垂設され、その上端がバルクヘッドアッパフレームで連結されると共に、その下方には左右にフロントロアクロスメンバ17が設けられている。
【0014】
左右のフロントサイドピラーアッパ6,7と左右のアッパメンバ10,11との接合部には、その左右のダッシュボードサイドメンバ18,19(側部)が接合されたダッシュボードアッパ20が水平に延設されており、その下方にはダッシュボードロア21が垂設されてエンジンルーム22と車室23とを画成している。左右のアッパメンバ10,11の車幅方向内側であってダッシュボードロア21の前方には、その上下がアッパメンバ10,11とフロントサイドフレーム2,3とにそれぞれ接合された左右一対のホイールハウス24,25が設けられており、その上端部にはそれぞれダンパベース26,27が一体形成されている。
【0015】
図2に示すように、ダッシュボードサイドメンバ19は、フロントサイドピラーアッパ7の前端7aを前方へ延出するような形態で、フロントサイドピラーアッパ7の車幅方向内側にスポット溶接により接合されている。そして、アッパメンバ11の後端は、フロントサイドピラーアッパ7の前端7aおよびダッシュボードサイドメンバ19にスポット溶接されている。また、アッパメンバ11は後端に近づくほど横断面形状における縦寸法が大きくなっている。
【0016】
図3は第1実施形態に係る車体骨格構造の要部を示す透視右側面図であり、図4は第1実施形態に係る車体骨格構造の要部を示す透視斜視図であり、図5は図3中のV−V断面図であり、図6は図3中のVI−VI断面図である。図3〜図6に示すように、アッパメンバ11は、その車幅方向外側面および上面を構成するアッパメンバアウタ31と、その車幅方向内側面および下面を構成するアッパメンバインナ32とから構成された閉断面を有している。そして、ダッシュボードアッパ20との接合部においては、ダッシュボードサイドメンバ19がアッパメンバアウタ31とアッパメンバインナ32とに接合されることによって、閉断面を形成している(図4参照)。そして、アッパメンバインナ32のダッシュボードサイドメンバ19とのラップ部位における車幅方向内側面に、ダンパベース27が接合されている。
【0017】
ダッシュボードサイドメンバ19は、略水平な水平分割線19aおよび略垂直な垂直分割線19bによって分割された前方下部片41と後方上部片42とから構成されている。前方下部片41は、後方上部片42と互いに接合する水平分割線19aに沿った水平フランジ41aと、後方上部片42と互いに接合する垂直分割線19bに沿った垂直フランジ41bとを車幅方向外側に有している。同様に、後方上部片42は、前方下部片41と互いに接合する水平分割線19aに沿った水平フランジ42aと、前方下部片41と互いに接合する垂直分割線19bに沿った垂直フランジ42bとを車幅方向外側に有している。そして、両水平フランジ41a,42aおよび両垂直フランジ41b,42bを突き合わせた状態で、前方下部片41と後方上部片42とが接合されている。
【0018】
図5に示すように、後方上部片42がフロントサイドピラーアッパ7の車幅方向内側に接合され、両垂直フランジ41b,42bが各分割片41,42の車幅方向外側に形成されているため、両垂直フランジ41b,42bは、車体前方視においてフロントサイドピラーアッパ7とラップした状態となっている。また、両水平フランジ41a,42aも、車体前方視(換言すれば、アッパメンバ11の荷重伝達方向視)においてフロントサイドピラーアッパ7とラップした状態となっている。
【0019】
≪実施形態の作用効果≫
次に、本実施形態のボディ1における作用効果について説明する。自動車の走行時あるいは停車時において、ボディ1の前面に車両や障害物が衝突する(すなわち、正面衝突が起きる)ことがある。正面衝突によってバンパビーム14から入力した衝突荷重は、フロントサイドフレーム2,3を伝って後方のフロアフレームやサイドシルインナ等に伝達される。また、アッパメンバ10,11に入力した衝突荷重は、後方のフロントサイドピラーアッパ6,7に伝達される。衝突荷重が大きい場合には、フロントサイドフレーム2,3およびアッパメンバ10,11の前部が最初に潰れることにより、衝突エネルギが吸収される。
【0020】
しかし、高速走行時におけるフルラップ衝突の場合や、オフセット衝突の場合など、フレーム前部の変形のみでは衝突エネルギが吸収されない場合、障害物または潰れたアッパメンバ11の前部が前輪(図示せず)に干渉し、前輪およびダンパベース27を押し下げる。この際、アッパメンバ11には、長手方向への圧縮荷重だけでなく、後端接合部を支点とする下方向への曲げモーメントが作用するが、後端に近づくほど横断面形状における縦寸法が大きくなっているため、アッパメンバ11後部の衝突に対する曲げ剛性が高められている。また、ダンパベース27がアッパメンバインナ32のダッシュボードサイドメンバ19とのラップ部位に接合されているため、ダンパベース27から入力した衝突荷重に対しても、アッパメンバ11の剛性が高められている。
【0021】
ここで、フレーム等の前部の変形のみでは衝突エネルギが吸収されない場合、アッパメンバ11後部の剛性の他に、アッパメンバ11とフロントサイドピラーアッパ7との接合強度も問題となる。衝突荷重によって当該接合部の溶接等が外れると、アッパメンバ11と共に前輪およびダンパベース27が後退して干渉によるダッシュボードロア21の変形を引き起こすからである。そこで、図7を参照しながら本実施形態における正面衝突時の作用について説明する。
【0022】
図7(A)は正面衝突前のアッパメンバ11とフロントサイドピラーアッパ7との接合状態を示しており、図7(B)は正面衝突時のアッパメンバ11とフロントサイドピラーアッパ7との接合状態を示している。(A)に示すように、後方上部片42は、その後端がフロントサイドピラーアッパ7の車幅方向内側にスポット溶接されており、その車幅方向内側にはアッパメンバインナ32を挟んでダンパベース27が接合されている。また、アッパメンバアウタ31がフロントサイドピラーアッパ7の車幅方向外側にスポット溶接等により接合されている。
【0023】
高速走行時におけるフルラップ衝突やオフセット衝突等により、フレーム前部の変形のみでは吸収されない衝突荷重がアッパメンバ11に加わると、(B)に示すように、後方上部片42のフロントサイドピラーアッパ7との溶接部および、アッパメンバアウタ31のフロントサイドピラーアッパ7との溶接部が外れ、アッパメンバ11がダンパベース27と共に後退する。しかし、ダッシュボードサイドメンバ19の車幅方向外側に突設した両垂直フランジ41b,42bがフロントサイドピラーアッパ7に係止されるため、アッパメンバ11の後退が防止される。なお、両垂直フランジ41b,42bを係止するフロントサイドピラーアッパ7先端と垂直フランジ41b後面との距離を、ダンパベース27とダッシュボードロア21との間隙Sよりも小さく設定することは言うまでもない。これにより、正面衝突によってアッパメンバ11の接合が外れてダンパベース27が後退しても、ダッシュボードロア21の変形が抑止され、即ち車室23が確保され、乗員に対する安全性が向上している。
【0024】
本実施形態では、上述したように、ダッシュボードサイドメンバ19をアッパメンバ11の(閉断面を形成する)構成部材として利用し、フロントサイドピラーアッパ7による被係止手段として水平および垂直のフランジを形成することにより、補強材や重量部材の使用を回避し、ボディ1の軽量化を図りながら、オフセット衝突およびフルラップ衝突に対するボディ1の強度向上を実現できた。
【0025】
また、ダッシュボードサイドメンバ19を前方下部片41と後方上部片42とに分割し、プレス加工におけるフランジ成形によって両水平フランジ41a,42aおよび両垂直フランジ41b,42bを各分割片41,42と一体形成することにより、必要に応じた板厚や材質の選択が可能となり、成型性や生産性の向上を実現できた。
【0026】
〔第2実施形態〕
次に、図8〜図11を参照して、本発明を適用した自動車用車体構造の第2実施形態について説明する。図8は第2実施形態に係る車体骨格構造の要部を示す透視斜視図であり、図9は図7中のIX−IX断面図であり、図10は図7中のX−X断面図であり、図11は第2実施形態に係る車体骨格構造の作用説明図であって、(A)は正面衝突前のアッパメンバ11とフロントサイドピラーアッパ7との接合状態を、(B)は正面衝突時のアッパメンバ11とフロントサイドピラーアッパ7との接合状態を示している。なお、図中において、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付すとともにその説明を省略し、第1実施形態と異なる点について重点的に説明する。
【0027】
図8〜図10に示すように、ダッシュボードサイドメンバ51は、フロントサイドピラーアッパ7の前端7aを前方へ延出するような形態で、フロントサイドピラーアッパ7の車幅方向内側にスポット溶接により接合されている。ダッシュボードサイドメンバ51の車幅方向外側には、プレス成形時に形成された車体前後方向に延びる上下2条のビード52,53が突設されている。ダッシュボードサイドメンバ51は、その後端がフロントサイドピラーアッパ7の車幅方向内側に接合されており、その車幅方向内側にはアッパメンバインナ32を挟んでダンパベース27が接合されている。両ビード52,53は、車体前方視(或いは荷重伝達方向視)においてフロントサイドピラーアッパ7とラップした状態となっている。
【0028】
図11(A)に示すように、ビード53はフロントサイドピラーアッパ7の前方に間隔を空けて形成されている。そして正面衝突時には、図11(B)に示すように、ダッシュボードサイドメンバ51のフロントサイドピラーアッパ7との溶接部および、アッパメンバアウタ31のフロントサイドピラーアッパ7との溶接部が外れ、アッパメンバ11がダンパベース27と共に後退する。しかし、ダッシュボードサイドメンバ19の車幅方向外側に突設したビード53がフロントサイドピラーアッパ7に係止されるため、アッパメンバ11の後退が防止される。
【0029】
〔第3実施形態〕
次に、図12〜図15を参照して、本発明を適用した自動車用車体構造の第3実施形態について説明する。図12は第3実施形態に係る車体骨格構造の要部を示す透視斜視図であり、図13は図12中のXIII−XIII断面図であり、図14は図12中のXIV−XIV断面図であり、図15は第3実施形態に係る車体骨格構造の作用説明図であって、(A)は正面衝突前のアッパメンバ11とフロントサイドピラーアッパ7との接合状態を、(B)は正面衝突時のアッパメンバ11とフロントサイドピラーアッパ7との接合状態を示している。なお、第2実施形態と同様に、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付すとともにその説明を省略し、第1,第2実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0030】
図12〜図14に示すように、ダッシュボードサイドメンバ61の車幅方向外側には、キャッチャー62が溶接されている。キャッチャー62は、上辺62aと下辺62bとを備えたコ字状断面を有し、上辺62aおよび下辺62bが車体後方へ向けて上下に開く形状を呈している。そして、キャッチャー62は、車体前方視(或いは荷重伝達方向視)においてフロントサイドピラーアッパ7とラップした状態でダッシュボードサイドメンバ61に接合されている。ここで、「キャッチャー」とは、正面衝突時にフロントサイドピラーアッパ7に係止されて衝突荷重を受け、フロントサイドピラーアッパ7へ伝達する機能を果たす部材を意味する。
【0031】
図15(A)に示すように、キャッチャー62はフロントサイドピラーアッパ7の前方に間隔を空けて形成されている。そして正面衝突時には、図11(B)に示すように、ダッシュボードサイドメンバ51のフロントサイドピラーアッパ7との溶接部および、アッパメンバアウタ31のフロントサイドピラーアッパ7との溶接部が外れ、アッパメンバ11がダンパベース27と共に後退する。しかし、ダッシュボードサイドメンバ19の車幅方向外側に突設したキャッチャー62がフロントサイドピラーアッパ7に係止されるため、アッパメンバ11の後退が防止される。
【0032】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態は本発明をハッチバック乗用車に適用したものであるが、セダン型4ドア/2ドア乗用車等、他の自動車に本発明を適用してもよい。また、上記実施形態ではダンパベース27がアッパメンバインナ32を介してダッシュボードサイドメンバ19に接合されているが、当然ダッシュボードサイドメンバ19に直接接合された形態であってもよい。更に、アッパメンバ10,11やフロントサイドピラーアッパ6,7、ビード52,53、キャッチャー62等の具体的形状や接合形態等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態に係る車体骨格構造を示す斜視図
【図2】第1実施形態に係る車体骨格構造の前部を示す右側面図
【図3】第1実施形態に係る車体骨格構造の要部を示す透視右側面図
【図4】第1実施形態に係る車体骨格構造の要部を示す透視斜視図
【図5】図3中のV−V断面図
【図6】図3中のVI−VI断面図
【図7】第1実施形態に係る車体骨格構造の作用説明図
【図8】第2実施形態に係る車体骨格構造の要部を示す透視斜視図
【図9】図7中のIX−IX断面図
【図10】図7中のX−X断面図
【図11】第2実施形態に係る車体骨格構造の作用説明図
【図12】第3実施形態に係る車体骨格構造の要部を示す透視斜視図
【図13】図12中のXIII−XIII断面図
【図14】図12中のXIV−XIV断面図
【図15】第3実施形態に係る車体骨格構造の作用説明図
【符号の説明】
【0034】
1 ボディ
2,3 フロントサイドフレーム
4,5 フロントサイドピラーロア
6,7 フロントサイドピラーアッパ
8,9 連結部材
10,11 アッパメンバ
18,19,51,61 ダッシュボードサイドメンバ
19a 水平分割線
19b 垂直分割線
20 ダッシュボードアッパ
21 ダッシュボードロア
22 エンジンルーム
23 車室
24,25 ホイールハウス
26,27 ダンパベース
31 アッパメンバアウタ
32 アッパメンバインナ
41 前方下部片
41a 水平フランジ
41b 垂直フランジ
42 後方上部片
42a 水平フランジ
42b 垂直フランジ
52,53 ビード
62 キャッチャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に配置され、前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームと、
前記フロントサイドフレームの後部上方に配置された左右一対のフロントサイドピラーアッパと、
その前端が連結部材を介して前記フロントサイドフレームの前端に接合され、その後端が前記フロントサイドピラーアッパの前端に接合され、更に、車幅方向内側にダンパベースが接合された左右一対のアッパメンバと、
その左右側部が前記両フロントサイドピラーアッパの前端における車幅方向内側に接合されたダッシュボードアッパと
を備え、
前記ダッシュボードアッパの左右側部は、前方へ延出して前記ダンパベースに接合するとともに、車体前方視において前記フロントサイドピラーアッパとラップする係止部を車幅方向外側に備えたことを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項2】
前記係止部は、前記ダッシュボードアッパの左右側部に突設されたビードであることを特徴とする、請求項1に記載の自動車の車体構造。
【請求項3】
前記係止部は、前記ダッシュボードアッパの左右側部に接合されたキャッチャーであることを特徴とする、請求項1に記載の自動車の車体構造。
【請求項4】
前記ダッシュボードアッパの左右側部は、略水平な水平分割線および略垂直な垂直分割線によって、前記フロントサイドピラーアッパの前端に接合された後方上部片と、前記ダンパベースに接合する前方下部片とに分割され、
前記係止部は、前記前方下部片および後方上部片にそれぞれ形成されるとともに、前記水平分割線に沿って互いを接合する水平フランジと、前記垂直分割線に沿って互いを接合する垂直フランジとであることを特徴とする、請求項1に記載の自動車の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−29202(P2009−29202A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193412(P2007−193412)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】