説明

自動車の運転者をトレーラ運転中の後進時に支援する方法

【課題】トレーラ付き自動車の後進走行を、運転者にとって一層単純化し、特に予め与えられた基準定角軌道と無関係とされるように改善する。
【解決手段】自動車の運転者をトレーラ運転中の後進時に支援する方法に関する。自動車は、その少なくとも1つの舵取り可能車輪5a、5bに対する所望の舵取り角δFmのための基準量としてステアリングホィール角δSを与えるための操縦ハンドル2を備えた電子制御サーボ式ステアリング装置1を有する。後進走行中、基準信号として実際与えられたステアリングホィール角δSから、運転者の所望走行方向に応じ、少なくとも1つの舵取り可能車輪5a、5bに対する当該舵取り角δFmが、トレーラ運転に対するモデルを考慮して、連続して制御され、ステアリング装置1を介して、運転者と無関係に調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の運転者をトレーラ運転中の後進時に支援する方法に関する。その自動車は、自動車の少なくとも1つの舵取り可能車輪の所望舵取り角のための基準量としてステアリングホイール角を与える操縦ハンドルを備えた電子制御サーボ式ステアリング装置を有している。本発明はまた、その方法を実施するための、コンピュータプログラム、プログラムコード手段付きコンピュータプログラムプロダクト、並びに重畳式ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレーラについての後進走行が特に未熟な運転者にとって難しい、ことは良く知られている。その際に実施すべき運転操縦に対して、しばしば数回にわたる操作が必要である。
【0003】
特許文献1において、車両操縦の際に例えば駐車操縦時ないし操車操縦時に運転者を支援する方法が知られている。その場合、車両がたどらねばならない基準軌道が決定される。そして、車両操縦中、車両が基準軌道をたどるように調整すべきステアリングホイール位置が運転者に与えられる。運転者によって実際に調整された実際舵取り角と、必要なステアリングホイール位置に相当する設定舵取り角との舵取り角偏差は、運転者と無関係に補正される。その補正は、サーボ式ステアリング装置の調整手段を介して、並びに自動車の駆動装置とブレーキを介して調整される。運転者はトレーラを連結してトレーラ運転する間における後進中にも同様に支援される。また予め決められた基準軌道をたどる際にも、同様に支援が行われる。
【特許文献1】独国特許出願公開第10336985号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の方法を、トレーラ付き自動車の後進走行を、運転者にとって一層単純化し、特に予め与えられた基準軌道と無関係とされる、ように改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、特許請求の範囲の請求項1に記載の特徴によって解決される。
【0006】
本発明に基づく方法によって、トレーラを伴う後進走行を一層単純化するアシスト機能が、簡単且つ有利に用意される。そのアシスト機能は、例えば重畳式ステアリング装置(アクティブ フロント ステアリング装置/AFS)、EPS・ステアリング装置(Electric Power Steering:電動パワーステアリング装置)、ドライブ・バイ・ワイヤ・ステアリング装置、ハンドモーメントコントローラのような電子制御サーボ式ステアリング装置、あるいは上述したサーボ式ステアリング装置の有意義な複合装置に影響を与える。運転者は、操縦ハンドルないしステアリングホィールにより、所望の走行方向を与える。
【0007】
本発明に基づく方法は、そこから、適切な前輪舵取り角を決定し、この前輪舵取り角を指定量として電子制御サーボ式ステアリング装置に与える。本発明に基づいて、後進中、基準信号として実際与えられたステアリングホィール角から、運転者の所望走行方向に応じ、少なくとも1つの舵取り可能車輪に対する舵取り角が、トレーラ運転に対するモデルを考慮して、連続して制御され、電子制御サーボ式ステアリング装置を介して、運転者と無関係に調整される。
【0008】
電子制御サーボ式ステアリング装置は、好適には、重畳(重ね合わせ)手段を有し、この重畳手段により、少なくとも1つの舵取り可能車輪の当該舵取り角が調整される。
【0009】
基準信号として、因数ないし関数によって修正されたステアリングホィール角が利用される、ことが有利である。
【0010】
これによって、基準信号と運転者のステアリングホィール角調整の比が精確に決定される。ここで、関数や特性線図を介して、あるいは定数との単純な乗算により、ステアリングホィール角の修正が行われる。この定数の大きさによって、例えば、直接的に作用されるか、あるいは間接的に作用されるかについて決定される。
【0011】
また本発明に基づいて、制御量(制御変数)として、トレーラの縦軸線と自動車の縦軸線との成す角度が利用され、そのトレーラの縦軸線と自動車の縦軸線との成す角度が、センサにより連続して検出される。トレーラとトラクタないし自動車との成す角度は、トレーラ継手において測定ないし検出され、制御回路において所望の基準信号と比較される。
【0012】
あるいはまた、制御量として、走行半径(走行曲線の曲率半径)ないしトレーラの立体的な位置制御も利用できる。
【0013】
カスケード制御が利用される、ことが有利である。
【0014】
複数の調整器の採用によって、種々の制御状況が形成できる。
【0015】
制御が操縦ハンドルへのフィードバックに関して最適化される、ことが非常に有利である。
【0016】
ステアリングホィール角が基準信号となっているので、電子制御サーボ式ステアリング装置の作用時、唯一のアクチュエータしか孤立して利用されない場合、操縦ハンドルないしステアリングホィールへのフィードバックが生ずる。これは、運転者が感知できるステアリングホィールにおけるトルクで現れる。さらに、操縦ハンドル自体がステアリング系への運転者の要望指定となっているので、ステアリング系は或る条件下で不安定になる。
【0017】
制御が操縦ハンドルへのフィードバックに関して最適化されることによって、即ち、最良の制御が実施されることによって、調整器は、所望の基準信号と測定信号との差を最小にするだけでなく、同時にステアリングホィールへのフィードバックを最小にし、これにより、ステアリング系を安定させる、ことを試みる。調整すべき差は、ここでは、トレーラと自動車との成す角度あるいは走行半径に関連づけできる。
【0018】
さらに本発明に基づいて、操縦ハンドルへのフィードバックを減少するために、基準信号についてフィルタ特に低域フィルタが利用される。
【0019】
それに応じて、ステアリングホィール・トルクを制限するために、およびフィードバックを減少するために、ステアリングホィール角測定信号の角速度が減少される。
【0020】
フィードバックを一層減少するために、電子制御サーボ式ステアリング装置の一部も採用でき、ないしは、電子制御サーボ式ステアリング装置に複数の舵取りアクチュエータが存在する場合にはそのうちの少なくとも1つの舵取りアクチュエータも採用できる。例えば、重畳式ステアリング装置とEPS・ステアリング装置あるいはハンドモーメントコントローラを組み合わせて、ないしは、ドライブ・バイ・ワイヤ・ステアリング装置を利用して、角度重ね合わせの影響が完全に除去される。この場合、EPS・ステアリング装置が車輪を舵取りし、重畳式ステアリング装置が角度補償を行う。
【0021】
追加的にトレーラ継手の領域における力および/又はトルク(力とトルクの少なくとも一方)がセンサにより検出され、制御に考慮される、ことが有利である。その場合、状態調整器も利用できる。
【0022】
トレーラ継手における力および/又はトルクの測定によって、それに応じて、(例えば状態調整器を介して)制御方策が広げられる。また、拡張された力測定によって、例えば他の車両あるいは縁石のような障害物に向かう運転が検出できる。この情報は、アシスト機能において、障害物を迂回するために、あるいは障害物の存在を運転者に警報ランプや警報信号で報せるために利用される。力の認識は、制御方策において、上り走行あるいは下り走行の情報としても利用できる。トレーラ継手における引張り力の検出によって、運転者は、トレーラの万一の過積載について、あるいはトラクタにとって過大なトレーラ荷重について知らせられる。引張り力の検出によって、トレーラの車輪スリップが判断され、実際に忠実な車両モデルないしトレーラ運転に対するモデルが採用できる。
【0023】
本発明に基づく方法は後進走行時に稼動する。その稼動は、例えば後進段の投入を(例えばCANインターフェースを介して)検出することにより行われる。
【0024】
自動車の運転者をトレーラ運転中の後進時に支援する本発明に基づく方法は、好適には、電子制御サーボ式ステアリング装置ないし重畳式ステアリング装置の制御装置におけるコンピュータプログラムとして実現され、その場合、他の方式も勿論利用できる。そのために、コンピュータプログラムは制御装置の記憶要素に記憶されている。この方法は、制御装置のマイクロプロセッサへの働きかけによって実施される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読取り可能データキャリヤ(ディスケット、CD、DVD、ハードディスク、USBメモリなど)あるいはコンピュータプログラムプロダクトとしてのインターネットサーバーに記憶され、そこから、制御装置の記憶要素に転送される。かかるコンピュータプログラムないしプログラムコード手段付きのコンピュータプログラムプロダクトは、請求項12ないし請求項13に記載されている。
【0025】
請求項14は、自動車の重畳式ステアリング装置に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図を参照して、本発明の実施例を原理的に説明する。
【0027】
以下において、自動車の運転者をトレーラ運転中の後進時に支援する本発明に基づく方法は、重畳式ステアリング装置(アクティブ・フロント・ステアリング装置/AFS)により実施される。他の形態において、例えばEPSステアリング装置、ステア/ドライブ・バイ・ワイヤ・ステアリング装置、ハンドモーメントコントローラ、あるいはそれらの相応した複合装置によって、並びに上位に付設された車両システムによっても勿論実施できる。
【0028】
図1に、電子制御サーボ式ステアリング装置として、自動車13の重畳式ステアリング装置1が示されている(図2参照)。重畳式ステアリング装置1はステアリングホィール2として形成された操縦ハンドルを有している。ステアリングホィール2は作動軸3を介して舵取り機構4に結合されている。舵取り機構4は、作動軸3のひねり角を、自動車13の舵取り可能車輪5a、5bの舵取り角δFmに転換するために使われる。舵取り機構4は、ラック6と、作動軸3が作用するピニオン7とを有している。また、重畳式ステアリング装置1は重畳手段8を有し、この重畳手段8は、電動機9として形成された調整駆動装置ないし重畳角調整装置と、これにより駆動される重畳伝動装置10とを有している。重畳伝動装置10は遊星歯車装置として形成されている。他の形態において、重畳伝動装置10は軸伝動装置などとしても形成できる。
【0029】
ステアリングホィール2によって、舵取り可能車輪5a、5bの所望舵取り角δFmのための基準量として、ステアリングホィール角δSが与えられる。それから、電動機9によって、重畳角ないし調整角δMが発生され、これが、重畳伝動装置10によりステアリングホィール角δSと重ねられる。調整角δMは基本的には、自動車13の走行特性ないし快適性を改善するために発生される。ステアリングホィール角δSと調整角δMとの合計は、舵取り機構4の入力角を生じ、ないしこの実施例の場合、ピニオン角δGを生ずる。
【0030】
図示されていない異なった実施例において、重畳式ステアリング装置1は、重畳手段8に後置して補助的に他の舵取りアクチュエータとしてサーボ装置を有し、これは特に、可変トルク支援(アシスト)に用いられる。
【0031】
重畳式ステアリング装置1は電子制御装置11を有し、この電子制御装置11は特に、電動機9の調整角δMと発生トルクを調整するために用いられる。そのために電子制御装置11において、この制御装置11の図示されていないマイクロプロセッサ上の制御組織として、ないしは、コンピュータプログラムとして実施される制御運転が進行する。電動機9は、この電動機9で発生すべき調整角δMの設定値に相当する電気制御信号δMdで制御される。電動機9の制御ないし調整は、好適には、自動車13の車速VXに関係して行われ、即ち、ステアリングホィール角δSとピニオン角δGないし車輪5a、5bの舵取り角δFmとの伝達比は、車速VXに関係して、ステアリングホィール角δSと種々の車速依存調整角δMとの重畳によって調整される。これにより、例えば低い車速VXの場合、比較的小さな伝達比を与えることができ、その伝達比の場合、ステアリングホィール2の比較的小さな回転が、車輪5a、5bの比較的大きな舵取り角δFmを生じさせる。同様に、高い車速VX時に安定性の理由から、比較的大きな伝達比を与えることが考えられる。しかし、この車速VXの依存性は純粋に選択的なもの(オプショナル)である。
【0032】
上述した制御ないし調整機能が実施できるようにするために、制御装置11は入力信号として、(例えば自動車のCANバスを介して)実際車速VXを受ける。さらに、重畳式ステアリング装置1は、ステアリングホィール角δS、調整角δM、ピニオン角δGを測定し、ないしは、それらの角度δS、δM、δGを決定できる等価信号を発信するセンサ12a、12b、12cを有している。図1に示されているように、制御装置11には、センサ12a、12b、12cと図示されていない他の車両システムを介して、特に、入力信号、ステアリングホィール角δS、ピニオン角δG、調整角δMおよび調整角設定値δMdが、(例えば他の走行動特性系の仕様として)供給される。その代わりに、あるいはそれに加えて、これらの複数の量は、もう一つの、あるいはそれ以上の入力量(例えば車輪回転数など)をもとに、特に適当なモデルにより計算することもできる。
【0033】
図2に、トラクタとしての自動車13とトレーラ14から成る連結車が示されている。自動車13の後輪に符号5cが付され、トレーラ14の車輪に符号5dが付されている。トレーラ14の縦軸線と自動車13の縦軸線との成す角度に符号γが付されている。
【0034】
トレーラ14付き自動車13の後進走行時に運転者を支援するための本発明に基づく方法は、重畳式ステアリング装置1の制御装置11におけるコンピュータプログラムとして実現される。その場合、後進走行中、基準信号として実際に与えられたステアリングホィール角δSから、運転者の所望走行方向に応じて、トレーラ運転に対するモデルを考慮して、舵取り可能車輪5a、5bの舵取り角δFmが、連続して制御され、重畳式ステアリング装置1を介して、即ち、重畳手段8を介して、運転者と無関係に調整される。
【0035】
本発明に基づく方法の実行は、この実施例の場合、運転者による後進段の投入の検出によって行われる。
【0036】
次いで、トレーラ運転ないしトラクタ・トレーラ・モデルに対する単純な運動モデルの自動車13とトレーラ14との成す角度γについての微分方程式(1)が、本発明に基づく方法における制御方策の構想に対する基礎として与えられる。
【数1】

ここで、δFmは以下のように規定される。
即ち、|δFm|≦BδFmであり、
また、図2におけるように、
− l1は、自動車13の軸距、
− l2は、トレーラ14の車輪軸線間の距離、あるいは、図示されていない他の実施例においてトレーラ14が多車軸構造である場合、トレーラ14の仮想中心軸線と、回転中心ないし(トレーラ14と自動車13との)継手15との距離、
− l12は、回転中心ないし(トレーラ14と自動車13との)継手15と、自動車13の後車輪軸線あるいは多車軸構造の場合には仮想中心軸線との間の距離、
− VXは、自動車13の縦方向における車速である。
【0037】
運動学微分方程式(1)は、ステアリング系における追加的なばね・減衰力が考慮される場合には、動力学微分方程式に移される。そのような力は特にトレーラ14と自動車13との間の継手15並びに車両連結器において生ずる。また、車輪スリップを考慮することもできる。
【0038】
トレーラ14の縦軸線と自動車13の縦軸線との成す角度γは、センサ16で連続して検出される。
【0039】
制御のために複数の方策が利用される。しかし、ステアリングホィール角が基準信号を形成する。場合によっては、このステアリングホィール角は因数kないし関数fによってその都度の状態に合わされる。制御方策についての一層の詳細は、グラッド(Glad),T.、リュング(Ljung),L.、「コントロール セオリ(Control Theory)、」内の章“マルチバリアブル アンド ノンリニア メソッド(Multivariable and Nonlinear Methods)”、2000年、テイラー アンド フランシス(Taylor and Francis)社(ロンドン、ニューヨーク)に記載されている。
【0040】
その第1の方式は、自動車13の縦軸線とトレーラ14の縦軸線との成す角度γの制御であり、即ち、トレーラ14の縦軸線と自動車13の縦軸線との成す角度γが制御量として利用される。
【0041】
トレーラ運転に対する上述のモデルは非線形であるので、調整器は、本発明に基づく方法に応じて、精確な線形化が計画されている。トレーラ14の縦軸線と自動車13の縦軸線との成す角度γは、トレーラ継手15の領域で測定され、調整器によって、所望の角度と比較され、即ち、修正されたステアリングホィール角δSから生ずる基準信号rγと比較される。次の修正式(2)は、比例調整器(P調整器)を利用した場合の例である。
【数2】

ここで、rγは、rγ=k・δSないしrγ=f(δS)についての基準信号であり、KPは調整器定数である。
【0042】
もう1つの調整方式は、トレーラ14の立体的な位置ないし所望の走行半径RTを制御することにある。走行半径RTの商qは次式で表される。
【数3】

【0043】
その換算によって、次式の平均前輪舵取り角δFmが生ずる。
【数4】

ここで、BδFmは、トレーラがなお影響される最大角度である。他のすべての場合に次式が当てはまる。
【数5】

ここで、rqは、rq=k・δSないしrq=f(δS)についての基準信号である。最大角度BδFmに達した場合、運転者は警報(例えばランプや他の信号)を受け、これにより、運転者が再び少し前に進まねばならないことを認識する。
【0044】
平均前輪舵取り角δFmから、いまや、重畳式ステアリング装置1の舵取り幾何学関係ないし供託特性図などを介して、調整角δMdの調整すべき設定値が推論できる。
【0045】
異なった実施例において、カスケード制御も採用でき、これにより、種々の制御状況が形成できる。
【0046】
ステアリングホィール角δSが基準信号となっているので、重畳式ステアリング装置1の作用時、唯一の舵取りアクチュエータ(例えば重畳手段8)が単独利用される場合、操縦ハンドルないしステアリングホィール2へのフィードバックが生ずる。これは、運転者が感知できるステアリングホィール2におけるトルクで現れる。さらに、ステアリングホィール2自体がステアリング系への運転者の要望指定となっているので、このステアリング系は或る条件下において不安定となる。
【0047】
ステアリングホィール2へのフィードバックに関連して制御を最適化すること、即ち、最良の制御を実施することが考えられる。その場合、調整器は、所望の基準信号と測定信号との差を最小にするだけでなく、同時にステアリングホィール2へのフィードバックを最小にし、これにより、ステアリング系を安定させる、ことを試みる。制御すべき差は、ここでは、トレーラと自動車との成す角度γあるいは走行半径RTに関連づけできる。
【0048】
逆向きに舵取りされることにより、ステアリング系の安定性が保証される。左旋回が望まれるとき、右向きに舵取りされ、そして逆向きに舵取りされねばならない。その逆向き舵取りは局所的に利用される。これは、のこぎり波形関数あるいは正弦波形関数により実現される。
【0049】
さらに、ステアリングホィール2へのフィードバックを減少するために、基準信号について低域フィルタが利用される。それに応じて、ステアリングホィール・トルクを制限し、フィードバックを減少するために、ステアリングホィール角速度が減少される。また、調整器において大きな微分動作(いわゆるD動作)も実行される。
【0050】
フィードバックを一層減少するために、重畳式ステアリング装置1の一部を採用することもでき、ないしは、複数の舵取りアクチュエータ(図示せず)が存在する場合には重畳式ステアリング装置1の舵取りアクチュエータのうちの1つを採用することもできる。例えば、重畳式ステアリング装置1とEPSステアリング装置あるいはハンドモーメントコントローラを組み合わせて、ないしは、ドライブ・バイ・ワイヤ・ステアリング装置を利用して、角度重ね合わせの影響が完全に除去できる。この場合、EPSステアリング装置が車輪5a、5bを舵取りし、他方で重畳式ステアリング装置1が角度補償を行う。
【0051】
図示されていない他の実施例において、走行中にトレーラ14の長さが評価されるようにすることも考えられる。しかしそのために、カーブ走行が必要である。その結果、トレーラ14は、その大きさを把握する必要なしに、自由に交換できる。その評価は、例えばトレーラ14と自動車13との成す角度γを基礎として、状態予測ミスの最小化によって行われる。
【0052】
トレーラ継手15における力および/又はトルクの補助的測定によって、即ち、センサ16によって、それに応じて、制御方策が(例えば状態調整器を介して)広げられる。また、拡張された力測定によって、例えば他の車両あるいは縁石のような障害物に向かう運転が検出できる。この情報は、アシスト機能において、障害物を迂回するために、あるいは障害物の存在を運転者に警報ランプや警報信号で報せるために利用される。力の認識は、制御方策において、上り走行あるいは下り走行の情報としても利用できる。トレーラ継手15における引張り力の検出によって、運転者は、トレーラ14の万一の過積載について、あるいはトラクタ13にとって過大なトレーラ荷重について知らせられる。引張り力の検出によって、トレーラ14の車輪スリップが判断され、実際に忠実な車両モデルないしトレーラ運転に対するモデルが採用できる。
【0053】
自動車13が間隔センサ(図示せず)を利用するとき、この補助的な情報は、対象物との衝突を防止するためのアシスト機能に利用される。トレーラ14が間隔センサを備えているとき、この間隔センサは同様に、衝突を回避するためあるいは所定の目標(例えば駐車場など)に到達するために利用される。自動車13の間隔センサにより、(トレーラ14無しの)自動車13の後進走行時、アシスト機能、即ち、本発明に基づく方法の実施態様は、継手位置の幾何学的認識により、トレーラ14への突き当てとその連結を容易化できる。
【0054】
さらに、GPSナビゲーション装置などが存在する場合、位置情報を所定の目標に到達するために利用することができ、および例えば、連結車が運転車のガレージの前に存在し、このガレージまでの経路が認識されたとき、運転者要望を相応して補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】重畳式ステアリング装置の概略図。
【図2】トレーラないし連結車を備えた自動車の概略図。
【符号の説明】
【0056】
1 重畳式ステアリング装置
2 ステアリングホィール
3 作動軸
4 舵取り機構
5a、5b 舵取り可能車輪
5c、5d 後輪、トレーラの車輪
6 ラック
7 ピニオン
8 重畳手段
9 重畳調整器、電動機
10 重畳伝動装置
11 電子制御装置
12a、12b、12c センサ
13 自動車
14 トレーラ
15 継手
16 センサ
δFm 舵取り可能車輪の舵取り角
δG ピニオン角
δM 調整角
δMd 調整角の設定値
γ 自動車とトレーラとの成す角度
X 車速
1 自動車の軸距
12、l2 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(13)の運転者をトレーラ運転中の後進時に支援する方法であって、自動車(13)が、その少なくとも1つの舵取り可能車輪(5a、5b)に対する所望の舵取り角(δFm)のための基準量としてステアリングホィール角(δS)を与えるための操縦ハンドル(2)を備えた電子制御サーボ式ステアリング装置(1)を有している、当該方法において、
後進中、基準信号として実際与えられたステアリングホィール角(δS)から、運転者の所望走行方向に応じ、少なくとも1つの舵取り可能車輪(5a、5b)に対する舵取り角(δFm)が、トレーラ運転に対するモデルを考慮して、連続して制御され、電子制御サーボ式ステアリング装置(1)を介して、運転者と無関係に調整される、ことを特徴とする自動車の運転者をトレーラ運転中の後進時に支援する方法。
【請求項2】
電子制御サーボ式ステアリング装置(1)が重畳手段(8)を有し、この重畳手段(8)により、当該舵取り角(δFm)が調整される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基準信号として、因数ないし関数によって修正されたステアリングホィール角(δS)が利用される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
トレーラ(14)の縦軸線と自動車(13)の縦軸線との成す角度(γ)が、センサ(16)により連続して検出される、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
制御量として、トレーラ(14)の縦軸線と自動車(13)の縦軸線との成す角度(γ)が利用される、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
制御量として、走行半径が利用される、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
カスケード制御が利用される、ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
制御が操縦ハンドルへのフィードバックに関して最適化される、ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
操縦ハンドル(2)へのフィードバックを減少するために、基準信号についてフィルタ、特に低域フィルタが利用される、ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
電子制御サーボ式ステアリング装置(1)に複数の舵取りアクチュエータが存在する場合において、そのうちの少なくとも1つの舵取りアクチュエータが、操縦ハンドルへのフィードバックを減少するために利用される、ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
追加的にトレーラ継手(15)の領域における力および/又はトルクが、センサ(16)により検出され、制御において考慮される、ことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
自動車(13)の運転者をトレーラ運転中の後進時に支援する請求項1ないし11のいずれか1つに記載の方法を実施するためのプログラムコード手段付きのコンピュータプログラムにおいて、プログラムがコンピュータのマイクロプロセッサ上に、特に電子制御サーボ式ステアリング装置(1)の制御装置(1)上で実行される、ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項13】
自動車(13)の運転者をトレーラ運転中の後進時に支援する請求項1ないし11のいずれか1つに記載の方法を実施するためのプログラムコード手段付きのコンピュータプログラムプロダクトにおいて、プログラムがコンピュータのマイクロプロセッサ上に、特に電子制御サーボ式ステアリング装置(1)の制御装置(1)上で実行される、ことを特徴とするコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項14】
− 自動車(13)の少なくとも1つの舵取り可能車輪(5a、5b)に対する所望の舵取り角(δFm)の大きさとしてステアリングホィール角(δS)を与えるための操縦ハンドル(2)と、
− ステアリングホィール角(δS)を、自動車(13)の少なくとも1つの舵取り可能車輪(5a、5b)の舵取り角(δFm)に転換する舵取り機構(4)と、
− 重畳角調整器(9)により調整角(δM)を発生するため、およびステアリングホィール角(δS)と調整角(δM)との重ね合わせから舵取り機構(4)の入力角(δG)を発生するための重畳手段(8)であって、重畳角調整器(9)が制御装置(11)を介して制御され、制御装置(11)において、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の自動車(13)の運転者をトレーラ運転中の後進時に支援する方法が実施される重畳手段(8)と、
を備えている、ことを特徴とする自動車(13)の重畳式ステアリング装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−191143(P2007−191143A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9160(P2007−9160)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(500396654)ツェットエフ、レンクジステメ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】ZF LENKSYSTEME GMBH
【Fターム(参考)】