説明

自動車インテリア装備品に裂け目線を作る方法及び装置

【課題】自動車インテリア装備品に裂け目線を作るための、残留壁厚を検出するために超音波センサ以外のセンサが使用される様々な方法及びそれに適する装置を提供する。
【解決手段】レーザービーム8が裂け目線に沿ってガイドされ、残留壁厚を有する穴の形式で材料除去が行われ、自動車インテリア装備品2に裂け目線を作る際に、レーザービームに面するサイドに、裂け目線の全範囲が固定マトリクスカメラ6で検出される。予め設定されている測定放射線の入射は、この加工サイトで予想される、CMOSマトリクスカメラ6のピクセルで測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグが乗員室に展開するための通路開口を開けるために、エアバッグカバーの自動車インテリア装備品上に定められる裂け目線であって、その背後に配置されたエアバッグが作動すると裂ける裂け目線に沿って、自動車インテリア装備品の内側サイドを弱める方法及び装置に関する。
現在の一般タイプに従う、これに適する方法及び装置が特許文献1から知られている。
【背景技術】
【0002】
多数の方法が、一体化したエアバッグを備えた自動車インテリア装備品にレーザーを用いて裂け目線を製造するための従来技術から知られている。これらは、特に、第一に自動車インテリア装備品から認知できない線であって、第二にその長さに沿って最適な、画定された、再生可能な裂け抵抗を有する裂け目線を創出するために採られる様々な手段において異なる。
【0003】
以下の2つの刊行物によれば、これらの2つの問題は、本発明のように裂け目線に沿って材料除去を実行することで解決される。残留壁厚に関する測定値が決定され、レーザーが制御され、所定の残留材料厚さが除去ボリュームの下に維持される。
【0004】
特許文献2によれば、センサにより外側から透過放射線を検出することで、ある残留壁厚(材料厚さ)が保証される。このために、センサが自動車内部に向けられたレーザーの光軸上に配置されなければならない。裂け目線を製造するのに必要な自動車インテリア装備品とレーザービームの相対運動を実現するための情報は何も与えられていない。実際、出願人がこの特許を用いて製造するVOTAN A レーザー切断装置を使用する際、自動車インテリア装備品は移動し、レーザーとセンサは固定されている。
【0005】
レーザービームとセンサは自動車インテリア装備品に対して移動してもよい。レーザービームの安定位置を保証するためには、制限された移動範囲しか残さない、レーザービームをガイドするロボットアームとセンサの機械的に安定した結合を創出する必要がある。スキャナーを用いたレーザービームの移動は、スキャナーの偏向要素の運動とスキャナーの運動を同期させるための付加的なドライブユニットを必要とする。
【0006】
これらの困難は、レーザービームの作業範囲をカバーし、よってそれと共に移動する必要なく、固定されたままでよいセンサが使用される特許文献1に従うソリューションには存在しない。
【0007】
前述の文献に記載された方法及び装置の実施形態では、自動車インテリア装備品は超音波センサで保持され、レーザービームは裂け目線に沿ってガイドされ、除去は連続溝又は一連の穿孔(ブラインドホール)の形式で実行される。超音波センサは、材料の厚さに対応する信号を検出し、従ってフィードバック信号を中央コンピュータに送信し、レーザージェネレータの位置及び/又はその出力は変更され、従ってノッチング後に残る材料の厚さが制御される。
【0008】
特許文献1に従うソリューションは、センサと自動車インテリア装備品が固定保持されるので、特許文献2に従うソリューションに比べて有利である。必要ならば、レーザービームの運動だけが、レーザービームと裂け目線上のそれぞれの加工位置の速い位置決め速度を可能にする。しかしながら、特許文献1に従う幅広い超音波センサの制限されない機能は疑問を抱かせる。センサ表面が自動車インテリア装備品の表面と空気なしで接触することが前提条件である。これは、特に自動車インテリア装備品の表面が3次元に広がった自由形状の表面を有する場合又はその表面が構造化された高さプロフィールを有する場合でも、困難となる。
【0009】
【特許文献1】EP0711627B1
【特許文献2】EP0827802B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、残留壁厚を検出するために超音波センサ以外のセンサが使用される様々な方法及びそれに適する装置を創出する問題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この問題は、請求項1の特徴を備えた方法及び請求項8の特徴を備えた装置により解決される。本発明の有利な改良形態は従属請求項に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法及び装置を図面に基づき例として以下に説明する。
図1は装置の原理を示す。
本発明の装置は図1に示される。図には、自動車インテリア装備品2が保持された保持ユニット1、レーザージェネレータ4及びビームガイドユニットからなるレーザーユニット3、レーザースキャナー5、固定マトリクスカメラ(この場合、CMOSマトリクスカメラ6)及び制御・計算ユニット7がある。
【0013】
偏向要素の傾き角度の変位経路で決定されるその作業範囲が、保持ユニット1で保持される自動車インテリア装備品2の指定された裂け目線を完全に覆い、レーザービーム8が保持ユニット1における自動車インテリア装備品の内側サイドに指向するように、レーザースキャナー5は保持ユニット1に対して位置決めされる。
【0014】
CMOSマトリクスカメラ6は、マトリクスのサイズで決定されるその視野が指定された裂け目線の完全なイメージングを可能にするように、保持ユニット1に対して配置される。このイメージングを完全に可能にするために、ビーム偏向及び/又はビーム整形光学素子がCMOSマトリクスカメラ6の前に設置されてもよい。
【0015】
制御・計算ユニット7は、信号ラインを介してレーザージェネレータ4、レーザースキャナー5及びCMOSカメラ6に接続している。このユニットは、レーザージェネレータ4とレーザースキャナー5を駆動させ、またCMOSマトリクスカメラ6の読み取られた電圧信号を処理及び記憶する機能を有する。
【0016】
当該方法を実行するために、加工すべき自動車インテリア装備品2の裂け目線に沿う全ての加工ポイントのための基準データが、制御・計算ユニット7に記憶される。加工ポイントは、連続的に又は所定の操作モードに従って操作されてもよい。
【0017】
基準データは、それぞれの加工サイトに関連して、
それぞれの加工サイトにおいて放射線への露光が加工中に予想されるCMOSマトリクスカメラ6の個々のセンサ(ピクセル)を識別するための位置データ、
所定の残留壁厚に達したときに、そのピクセルに当たる放射線によって生じる信号強度に関する基準測定値、
レーザー放射線が加工サイトに導かれるレーザースキャナー5の偏向要素の位置データ、
を有する。
【0018】
基準測定値は個々の加工サイトで異なってもよい。これは、加工サイトが3次元に成形された自動車インテリア装備品2のためにCMOSマトリクスカメラ6から様々な距離を置いて存在し、従ってカメラまでの距離にわたって強度ロスが異なる場合でも必要である。
【0019】
基準測定値は、基準自動車インテリア装備品の調査又はテスト加工により得られ、それぞれの加工サイトに関連して記憶される。
【0020】
マトリクス、すなわち行と列に配置されたCMOSマトリクスカメラ6の個々のセンサは、アクティブピクセルセンサであり、これから、それぞれのピクセルのための放射線強度により誘起される電圧信号が直接読み取られる。ピクセルを予め知っている結果、おそらくそのそれぞれは所与の加工サイトにおいて放射線を受け、これらのピクセルしか読まれない。CMOSマトリクスカメラ6は、その低いIR強度のために熱放射線を検出するのに適さない。IR放射も検出でき、誘起された電圧信号がそれぞれのピクセルのために読み取られるマトリクスカメラが将来誕生するだろう。本発明では本質的に、使用されるCMOSマトリクスカメラ6はそれぞれ読み取られる多数のピクセルからなり、裂け目線の完全な広がりがイメージされる画像平面を形成する。このようなCMOSマトリクスカメラ6は、理想的には測定放射線を含む狭い範囲にわたってのみ感知する。これは、カメラ光学素子において適切なフィルタを使用することで実現できる。
【0021】
しかし、通常のCMOSマトリクスカメラ6は全ての可視光を感知し、そのため全ての迷光を遮断する必要がある。ゆえに、CMOSマトリクスカメラ6は、裂け目線が形成されるべき自動車インテリア装備品2の部分で閉じられた光密(light-tight)な室内に収容される。
放射線強度は距離の二乗で減少し、非常に低い強度しか検出されないので、CMOSマトリクスカメラ6はできるだけ外側サイドの後ろに近接して配置されると好ましい。他方で、受信表面(マトリクス)は、裂け目線が完全に囲まなければならない対象物表面より実質的に小さく、アパーチャの角度(開口角)に応じて最小の距離が生じる。それに代えて、それぞれが裂け目線の小区域しかイメージしない複数のカメラを使用し、従って互いに近接して配置されてもよい。
【0022】
当該方法を実施形態に基づき以下に説明する。
【0023】
自動車インテリア装備品2が保持ユニット1に固定され、CMOSマトリクスカメラ6がそれに対して光密に配置された後、レーザージェネレータ4から来るレーザービーム8が、自動車インテリア装備品2の所定の裂け目線上の第1加工サイトに導かれるように、レーザースキャナー5の偏向要素が位置決めされる。
【0024】
レーザージェネレータ4のスイッチが入れられ、レーザー放射線が第1加工サイトに当たり、そこで指定された残留壁厚まで増加する深さを有する穴が作られる。この第1加工サイトに関連した位置データに対応して、この第1加工サイトで誘起された放射線が当たるピクセルが正確に読み取られる。
【0025】
加工のためのレーザー放射線、すなわち、材料を透過するレーザービーム8の部分の検出が有利である。
【0026】
CMOSマトリクスカメラ6の検出特性に依存して、検出される放射線(測定放射線)は補助放射線、加工から生じる熱放射線又は誘起されたプラズマ放射線でもよい。
【0027】
アクティブピクセルに当たる放射線強度はこれらのピクセルを介して空間にわたって、所定のタイムウィンドウにわたって統合され、この加工サイトのために記憶された基準測定値と比較される。基準測定値が実現されるまで、測定は繰り返される。次いで、レーザージェネレータ4はスイッチが切られる。
【0028】
次いで、レーザースキャナー5の偏向要素は第2加工サイトの位置データに従い別な位置に移動し、レーザービーム8は第2加工サイトにおいて自動車インテリア装備品2に当たる。このプロセスは、第1加工サイトのために説明したように、全ての加工サイトで穴が作られるまで繰り返される。
【0029】
第1の実施形態では、レーザースキャナー4がオンになっている間、レーザースキャナー5の偏向要素はそれぞれの位置のままである。このようにして、加工時間にかかわりなく丸い穴が生じる。レーザースキャナー5によって実現される速い可能な位置決め速度、すなわち1つの加工サイトから次に行く速度のために、レーザースキャナー5によるレーザービーム8のガイドのためのプロセス所要時間は、たとえ個々の穴の加工時間が低レーザーパワーのために増加しても、加工の間その場に残るにもかかわらず、連続的にガイドされるレーザービーム8に比べて著しく短縮される。
【0030】
第2の実施形態は、放射線ユニットがレーザージェネレータ4に連結した駆動ロボットアームである点で第1の実施形態と異なる。ロボットアームは、予測される裂け目線に沿って一様な動きをする。第1の実施形態のように、レーザービーム8が加工サイトに達するたびにレーザージェネレータ4はスイッチが入れられる。第1の実施形態とは異なり、レーザービーム8は除去プロセスの間連続的に移動する。形成される穴が円形の断面を有するものからできるだけ異ならないように、レーザーパワーと前進速度を互いに合わせなければならない。より低いレーザーパワーのためには、前進速度は比較的低く選択されなければならない。さもなければ細長い穴が形成されるからである。従って、位置決め速度も第1の実施形態に比べて低い。この第2の実施形態は、互いに隣接する加工サイトのみを加工できることに限定される。
【0031】
自動車インテリア装備品2の多層構造のカバー層を支持するため、ウェブを穴の間に保持するために、ブラインドホールが最小間隔で作られる。隣接する加工サイトの加工において、第1サイトでの加工の結果第2サイトに既に加わった熱応力が、この最小間隔の選択において考慮されなければならない。所定のモードに従って、隣接する穴が次々に加工されず、むしろ互いから離れた穴が連続的に加工される場合、熱応力は減少され、それぞれの加工サイトでの冷却が可能になる。
加工物、すなわち自動車インテリア装備品2とセンサ(この場合、CMOSマトリクスカメラ6)は固定され、従ってレーザースキャナー5を介してレーザービーム8の素早い運動が完全に利用できるので、本発明に従う方法は特にこのような加工モードに有利である。例えば、400の穴を作るためのこのような所定の操作モードは、1+n,50+n,100+n,150+n,1≦n≦48のサイクルで行われる。サイクルのそれぞれの第1の穴が作られた後、この加工サイトは1つの穴のための3倍の時間冷まされ、その後隣接する穴が作られる。
【0032】
裂け抵抗が大きくなりすぎず、同時に裂け目線を認知できないようにするため残留壁厚がどれだけ大きければよいかは、材料の強度(多層材料では、カバー層の強度)、裂け目線の線パターン及び表面構造に依存する。
【0033】
残留壁厚は、穴の断面に完全にわたって維持される必要はなく、すなわち、原則としてブラインドホールである穴は微小穿孔(マイクロパフォーレーションホール)として構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の装置の原理を示す。
【符号の説明】
【0035】
1 保持ユニット
2 自動車インテリア装備品
3 レーザーユニット
4 レーザージェネレータ
5 レーザースキャナー
6 CMOSマトリクスカメラ
7 制御・計算ユニット
8 レーザービーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車インテリア装備品(2)に裂け目線を作る方法であって、
レーザービーム(8)が、保持ユニット(1)に固定して設置された自動車インテリア装備品(2)の内側サイドの裂け目線に沿って導かれ、裂け目線に沿う複数の加工サイトで残留壁厚を有する穴の形式で材料除去が行われ、残留壁厚と同等な測定値が裂け目線の全範囲にわたって固定センサで検出され、レーザービーム(8)を放出するレーザージェネレータ(4)が、少なくとも1つの基準測定値と比較して測定値に応じて制御される方法において、
測定値は、予め分かっているマトリクスカメラのピクセルに当たる、それぞれの加工サイトで誘起される測定放射線の強度により形成される電圧値であり、これらのピクセルだけの電圧値が読み取られることを特徴とする方法。
【請求項2】
測定放射線はレーザービーム(8)の一部であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
測定放射線は別な補助放射線であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
測定放射線は赤外線放射であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
測定放射線はプラズマ放射であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
先の加工サイトの冷却を可能にするために、次々に位置するが、互いに隣接しない穴が加工されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
レーザービーム(8)が走査によりガイドされることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
レーザーユニット(3)を用いて、自動車インテリア装備品(2)における様々な加工サイトに穴で形成される裂け目線を製造する装置であって、
レーザージェネレータ(4)と、ビームガイドユニットと、自動車インテリア装備品(2)がレーザーユニット(3)に向かうその内側サイドで保持された保持ユニット(1)と、測定領域が裂け目線全体をカバーする外側サイドに固定設置されたセンサと、信号技術に関して当該センサ及びレーザージェネレータ(4)に結合した制御・計算ユニット(7)とを有する装置において、
センサはマトリクスカメラであり、そのピクセルは個々に読み取られ、制御・計算ユニット(7)は、それぞれの加工サイトで放射線を受けると予期される当該ピクセルから個々の加工サイトに関連する位置データを記憶するよう構成され、これらのピクセルだけの読み取りが行われることを特徴とする装置。
【請求項9】
マトリクスカメラは、CMOSマトリクスカメラ(6)であることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
1つのマトリクスカメラに代えて、複数のマトリクスカメラが配置され、そのそれぞれの測定領域が裂け目線の小区域をカバーすることを特徴とする請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
ビームガイドユニットはレーザースキャナー(5)であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−746(P2009−746A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−106792(P2008−106792)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(502122347)イェーノプティク アウトマティジールングステヒニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【Fターム(参考)】