説明

自動車構造体

【課題】本発明は、自動車ボディーの外パネルに生じた振動を低減して外パネルの振動が車内に伝達するのを抑えることができると共に、車内空間を大きくとることができる自動車構造体を提供する。
【解決手段】 本発明の自動車構造体Aは、自動車ボディーの外パネル1の車内側面11上に制振シート2及び内装材3がこの順序で積層一体化されてなることを特徴とするので、内装材3を制振シート2の拘束層として作用させることができ、よって、制振シート2の制振性能を向上させることができると共に、拘束層を別途、設ける必要がないので部品数を少なくすることによって軽量化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ボディーの外パネルに生じた振動を低減して外パネルの振動が車内に伝達するのを抑えることができる自動車構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車ボディーの外パネルの車内側面には内装材が配設されているが、外パネルの車内側に内装材を配設する要領としては、外パネルの車内側面上に接着剤を介して内装材を貼着一体化する方法や、内装材の外周縁部を外パネルに一体化させ、内装材と外パネルとの対向面間に空間部を形成した状態にして外パネルの車内側に内装材を配設する方法が挙げられる。
【0003】
しかしながら、前者の配設方法では、エンジンからの振動や、走行時に生じる振動が外パネルに伝達され、この振動が内装材に直接、伝達することとなり、その結果、振動が内装材を介して放射音となって車内に伝達され、車内の静粛性が損なわれるといった問題点があった。そして、接着剤に制振性能を備えたものも提供されているが、接着剤の厚みを充分なものとしないと制振性能が発揮されないといった問題点を有していた。
【0004】
又、外パネルに直接、内装材を貼着させていることから、車内の断熱性に劣り、夏季及び冬季などの気温が高い時や低い時には車内環境の悪化を招くといった問題点を有していた。
【0005】
一方、後者の配設方法では、図6に示したように、外パネル4と内装材5との対向面間に空間部Bが形成されており、この空間部B内に制振材6を配設して外パネル4からの振動が車内側に伝達するのを抑制することが行われている。
【0006】
このような制振材としては、特許文献1に、特定の発泡性熱硬化性樹脂シートよりなるスペーサー層61、該スペーサー層61上に積層される特定の樹脂からなる制振材シート62及び制振材シート62上に積層される拘束材シート63より構成された制振材6が提案されているものの、上記制振材は、制振材シート62の両面にスペーサー層61及び拘束材シート63を備えており、軽量性に欠けるといった問題点を有していた。
【0007】
又、後者の配設方法では、制振材6と内装材5との対向面間にも空間部が形成されており、その分だけ車内空間が狭くなるといった問題点も有していた。
【0008】
【特許文献1】特許第3257848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、自動車ボディーの外パネルに生じた振動を低減して外パネルの振動が車内に伝達するのを抑えることができると共に、車内空間を大きくとることができる自動車構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の自動車構造体は、自動車ボディーの外パネルの車内側面上に制振シート及び内装材がこの順序で積層一体化されてなることを特徴とする。
【0011】
又、上記自動車構造体において、制振シートの車内側面に内装材が密着一体化されていることを特徴とする。
【0012】
更に、上記自動車構造体において、制振シートは、その厚みが0.5〜20mmであると共に、tanδのピーク温度が−20〜40℃で且つtanδのピーク値が0.5以上である合成樹脂を含むことを特徴とする。
【0013】
そして、上記自動車構造体において、制振シートが、発泡倍率が1〜50倍の発泡シートであることを特徴とする。
【0014】
又、上記自動車構造体において、外パネルがルーフパネルであることを特徴とする。更に、上記自動車構造体において、内装材が不織布から形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自動車構造体は、自動車ボディーの外パネルの車内側面上に制振シート及び内装材がこの順序で積層一体化されてなることを特徴とするので、内装材を制振シートの拘束層として作用させることができ、よって、制振シートの制振性能を向上させることができると共に、拘束層を別途、設ける必要がないので部品数を少なくすることによって軽量化を図ることができる。
【0016】
又、自動車ボディーの外パネルの車内側面に制振シートを積層一体化し、更に、この制振シートの車内側面に内装材を積層一体化させているので、外パネル、制振シート及び内装材において、互いに隣接する部材が密着して部材間に空間部が形成されておらず、車内空間を広くすることができる。
【0017】
そして、上記自動車構造体において、制振シートの車内側面に内装材が密着一体化されている場合には、内装材を制振シートの拘束層として効果的に作用させることができ、制振シートの制振性能をより向上させて外パネルの振動の低減をより確実に図ることができる。
【0018】
更に、上記自動車構造体において、制振シートが、その厚みが0.5〜20mmであると共に、tanδのピーク温度が−20〜40℃で且つtanδのピーク値が0.5以上である合成樹脂を含む場合には、自動車の使用条件下において生じる外パネルの振動をより効果的に低減して快適な車内環境を得ることができる。
【0019】
特に、自動車の走行時には、図1に示したように、周波数が1000Hz以下、特に周波数が500Hz以下の振動が主に生じるが、上記自動車構造体によれば、自動車走行時に主に生じる周波数が1000Hz以下、特に500Hz以下の振動をより効果的に低減して更に快適な車内空間を得ることができる。なお、図1は、60km/時間の速度で自動車を走行させた時の自動車ボディーの外パネルの振動を、この外パネルの車内側面に加速度センサーを取り付けて測定したものである。
【0020】
又、上記自動車構造体において、制振シートが、発泡倍率1〜50倍の発泡シートである場合には、自動車構造体の更なる軽量化と車内空間の断熱化を図ることができ、より快適な車内空間を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の自動車構造体Aの一例を図面を参照しつつ説明する。図2乃至図4において、1は自動車ボディーの外パネルであるルーフパネルであって、鋼板、アルミニウム板、炭素繊維を熱硬化性樹脂で固めてなるものなどから形成されている。このルーフパネル1の車内側面11には、図示しない接着剤或いは両面粘着テープを介して制振シート2が、この制振シート2の室外側面22を全面的に密着させて、外パネル1と制振シート2との対向面間に隙間がない状態で積層一体化されている。
【0022】
この制振シート2は、制振性能を発揮すればよく、発泡シートから構成されることが好ましい。このような発泡シートとしては、合成樹脂からなり且つ内部に連続又は不連続な気泡を有する粘着性を有しない発泡シートの他に、粘着性を有する合成樹脂中に空気を微分散させ発泡させてなる粘接着発泡シートであってもよい。
【0023】
上記粘着性を有しない発泡シートを構成する合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン−(ジエン)共重合体、エチレン−ブテン−1−(ジエン)共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、アクリルゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンラジアルテレブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、SEBSなどの水素添加ジエン系ブロック重合体又はランダム共重合体、ポリウレタンゴム、シリコーンゴムなどのゴム状重合体、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを重合又は共重合させてなるアクリル系重合体や、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などのポリエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体などのポリプロピレン系樹脂などのオレフィン系樹脂などが挙げられ、アクリル系重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。なお、合成樹脂は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0024】
又、この粘接着発泡シートを構成する粘着性を有する合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリウレタン系粘着剤、ポリアクリル系粘着剤などが挙げられ、ポリアクリル系粘着剤を含有していることが好ましい。
【0025】
そして、制振シート2を構成する合成樹脂は、tanδのピーク温度が−20〜40℃で且つtanδのピーク値が0.5以上である合成樹脂を含むことが好ましく、このような条件を備えた複数種類の合成樹脂を用いることによって、広範な温度領域にて優れた制振性能を制振シート2に付与させることができる。
【0026】
合成樹脂のtanδのピーク温度が−20〜40℃であることが好ましいのは、この温度領域以外においてtanδがピーク温度を有すると、自動車の使用状況下において制振シートが優れた制振性能を発揮しない虞れがあるからである。
【0027】
更に、合成樹脂のtanδのピーク値が0.5以上であることが好ましいのは、tanδのピーク値が0.5未満であると、自動車構造体の制振性能が不充分となることがあるからである。
【0028】
制振シート2を構成する合成樹脂中において、tanδのピーク温度が−20〜40℃で且つtanδのピーク値が0.5以上である合成樹脂の含有量は、少ないと、制振シートの制振性能が低下する虞れがあるので、20重量%以上が好ましく、30〜100重量%がより好ましい。
【0029】
なお、合成樹脂のtanδの測定方法としては、JIS K7244−4に準拠して周波数1Hz、歪み量0.1%の条件下にて測定されたものをいう。
【0030】
そして、上記発泡シートの発泡倍率は、低いと、自動車構造体の軽量性が低下することがある一方、高いと、断熱性は向上するものの、制振性が低下し、又、発泡シートを外パネルの車内側面に沿って配設することが困難となったり、或いは、非常にへたり易くなって工業資材としての取扱性が低下することがあるので、1〜50倍が好ましい。なお、発泡シートの発泡倍率は、JIS K6767で測定した見掛け密度の逆数とする。
【0031】
又、上記発泡シートの厚みは、薄いと、制振シートの制振性能が低下することがある一方、厚いと、車内空間が狭くなったり或いは軽量性が低下することがあるので、0.5〜20mmが好ましく、2〜8mmがより好ましい。
【0032】
更に、図3及び図4に示したように、上記制振シート2の車内側面21上には内装材3が積層一体化されており、制振シート2の車内側面21、好ましくは、図3のように、制振シート2の車内側面21の全面と、これに対向する内装材3との間に隙間が生じないように構成されている。なお、内装材3が不織布などのように繊維から構成されている場合には、上述した制振シート2と内装材3との対向面間の隙間は、繊維間に形成される空間部を含まない。即ち、不織布などの繊維から形成された内装材3を一枚のフィルムと見なした場合に、制振シート2と内装材3との間に隙間が生じていなければよい。
【0033】
このように、制振シート2の車内側面21とこれに対向する内装材3との間に隙間が生じないように構成することによって、内装材3を拘束層として作用させて制振シート2の制振性能を向上させていると共に、制振シート2と内装材3との対向面間に隙間を形成させないことによって車内空間を広くすることができ、更に、内装材3を拘束層として用いていることから部品点数を減らすことができ、軽量性を図ることができる。
【0034】
上記内装材3としては、従来から自動車内の装飾材として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、織布、不織布、編布などの他に、ガラス繊維を熱可塑性樹脂で結着してなるシート、ポリウレタン系樹脂発泡シートの両面をガラスチョップドストランドで補強してなるシート、ポリオレフィン系樹脂発泡シート、段ボール、プラスチックス段ボール、射出成形品、発泡射出成形品、天然繊維からなるシートなどが挙げられる。
【0035】
そして、制振シート2の車内側面21上への内装材3の積層一体化は公知の方法が用いられ、例えば、制振シート2の車内側面21上に内装材3を接着剤や両面粘着テープを介して積層一体化する方法、制振シート2と内装材3を熱融着一体化させる方法が挙げられる。
【0036】
又、制振シート2自体が粘着性や接着性を有している場合には、制振シート2の粘着性又は接着性を利用して制振シート2と内装材3とを積層一体化してもよい。更に、内装材が射出成形によって成形されるものである場合には、制振シート2を金型内に配設し、この金型内に溶融状態の合成樹脂を射出して、内装材の成形と同時に、内装材と制振シートとを積層一体化させてもよい。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
平面長方形状のSPCC鋼板(日本テストパネル社製、幅:15mm、長さ:250mm、厚み1.0mm、JIS G3141 SBに準拠)を用意し、自動車ボディーの外パネル1とした。
【0038】
次に、スチレン/ビニル結合−イソプレン/スチレントリブロック重合体(クラレ社製 商品名「ハイブラー#5127」、tanδのピーク温度:14℃、tanδのピーク値:1.8)100重量部、可塑剤としてフタル酸2−エチルヘキシル13重量部、架橋剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂社製 商品名「パークミルD40」)0.7重量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ドンジン社製 商品名「D3000CS」)13重量部及びフェノール系酸化防止剤(旭電化社製 商品名「AO60」)0.6重量部空なる発泡性樹脂組成物をプラストミルに供給して120℃にて5分間に亘って混練した。
【0039】
上記の混練した発泡性樹脂組成物を金型のシート状のキャビティ内に供給して180℃にて12分間に亘って加熱して架橋処理を施して1.4mmの発泡性樹脂シートを得た。この発泡性樹脂シートをオーブンに供給して220℃に加熱して発泡させて発泡倍率が7.1倍で且つ厚みが3mmの粘着性を有しない発泡シートを得た。この発泡シートを幅15mm、長さ250mmの平面長方形状に裁断して制振シート2とした。
【0040】
次に、ガラス繊維とポリプロピレン系樹脂繊維との混合繊維からなる基材不織布の両面にポリプロピレン系樹脂フィルムを且つ片面にスパンボンド不織布を配設した後、上記基材不織布におけるスパンボンド不織布の配設面を200℃に加熱した上で、基材不織布におけるスパンボンド不織布を配設していない面上に、目付が130g/m2の表面不織布を配設して積層シートを形成し、この積層シートを厚み方向に圧縮して、基材不織布内にポリプロピレン系樹脂フィルムを含浸させると共に基材不織布の片面に表面不織布を積層一体化させ、幅15mm、長さ250mmの平面長方形状に裁断して内装材3を得た。
【0041】
続いて、自動車ボディーの外パネル1の車内側面11に両面粘着テープ(積水化学工業社製 商品名「セキスイテープ#5761」)を介して制振シート2を積層一体化すると共に、制振シート2の車内側面21の全面に内装材3を両面粘着テープ(積水化学工業社製 商品名「セキスイテープ#5761」)を介して積層一体化して自動車構造体を得た。なお、自動車ボディーの外パネル1と制振シート2との対向面、及び、制振シート2と内装材3との対向面には隙間は形成されていなかった。なお、内装材3は、表面不織布が積層されていない面を制振シート2に対向させた。
【0042】
(実施例2)
スチレン/ビニル結合−イソプレン/スチレントリブロック重合体100重量部の代わりに、スチレン/ビニル結合−イソプレン/スチレントリブロック重合体(クラレ製 商品名「ハイブラー#5127」、tanδのピーク温度:14℃、tanδのピーク値:1.8)50重量部と、エチレン−酢酸ビニル共重合体(住友化学工業社製 商品名「H1011」、tanδのピーク温度:−20℃、tanδのピーク値:0.4)50重量部とし、フタル酸2−エチルヘキシルを13重量部の代わりに6.5重量部としたこと以外は実施例1と同様にして、厚みが3.1mmで且つ発泡倍率が7.0倍の粘着性を有しない発泡シートからなる、幅15mm、長さ250mmの平面長方形状の制振シート2を製造し、この制振シート2を用いて実施例1と同様にして自動車構造体を得た。
【0043】
(実施例3)
水−ポリアクリル系粘着剤エマルジョン(大日本インキ化学社製 商品名「ボンコート350」、ポリアクリル系粘着剤成分(樹脂成分):50重量%)90重量部、水−ポリウレタン系粘着剤エマルジョン(大日本インキ化学社製 商品名「ハイドランHW−930」、ポリウレタン系粘着剤成分(樹脂成分):60重量%)10重量部、エポキシ系架橋剤(大日本インキ化学社製 商品名「CR−5L」)3重量部、塩化アンモニウム系気泡剤(大日本インキ化学社製 商品名「F−1」)5重量部、シリコーン系整泡剤(大日本インキ化学社製 商品名「ボンコートNBA−1」)0.5重量部及びカルボキシメチルセルロース水溶液(ダイセル化学工業社製、カルボキシメチルセルロース:4重量%)6重量部を均一に混合後に濾過して粘着剤エマルジョンを作製し、この粘着剤エマルジョンに泡立て器を用いて空気を混合して発泡させ、発泡粘着剤エマルジョンを作製した。なお、ポリアクリル系粘着剤及びポリウレタン系粘着剤は、そのtanδのピーク温度が−20〜40℃の範囲内にあり且つtanδのピーク値が0.5以上であった。
【0044】
次に、一面が離型処理面とされたポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、このポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面に上記発泡粘着剤エマルジョンを均一な厚みとなるように塗布した後、発泡粘着剤エマルジョンの水分を蒸発、除去させて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚みが3.0mmで且つ発泡倍率が4.0倍の粘接着発泡シートを制振シート2として得た。
【0045】
そして、上記制振シート2を幅15mm、長さ250mmの平面長方形状に裁断した上で、ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離して、実施例1で用意した自動車ボディーの外パネル1の車内側面11に制振シート2自身の粘着性でもって制振シート2を積層一体化すると共に、制振シート2の車内側面の全面に実施例1で得られた内装材3を制振シート2の粘着性でもって積層一体化して自動車構造体を得た。なお、自動車ボディーの外パネル1と制振シート2との対向面、及び、制振シート2と内装材3との対向面には隙間は形成されていなかった。なお、内装材3は、表面不織布が積層されていない面を制振シート2に対向させた。
【0046】
(比較例1)
実施例1で用意したSPCC鋼板を自動車ボディーの外パネル1とし、この外パネル1のみからなる自動車構造体を用意した。
【0047】
(比較例2)
実施例1で用意したSPCC鋼板を自動車ボディーの外パネル1とし、この外パネル1の車内側面11に両面粘着テープ(積水化学工業社製 商品名「セキスイテープ#5761」)を介して実施例1で得られた内装材3を積層一体化して自動車構造体を得た。内装材3は、表面不織布が積層されていない面を外パネル1に対向させた。なお、自動車ボディーの外パネル1と内装材3との対向面には隙間は形成されていなかった。
【0048】
(比較例3)
制振シート2として、ブチルゴム系樹脂(tanδのピーク温度:0℃、tanδのピーク値:2.1)からなる幅15mm、長さ250mmの平面長方形状のシートを用い、実施例1で用いたSPCC鋼鈑を外パネル1として、この外パネル1の車内側面11に上記制振シート2を該制振シート2の粘着性でもって積層一体化し、更に、制振シート2の車内側面21に拘束層として幅15mm、長さ250mmの平面長方形状のアルミニウム板(厚み:260μm、目付:600g/m2)を制振シート2の粘着性でもって積層一体化して自動車構造体を得た。この自動車構造体は、拘束層としてアルミニウム板を用いており軽量性に欠けるものであった。
【0049】
なお、この構成は、図6に示したような、自動車ボディーの外パネル4の車内側に内装材5を外パネル4と内装材5との対向面間に空間部Bを形成した状態で配設し、この空間部B内に、制振シート2と拘束層とからなる制振材を配設することを想定したものである。
【0050】
得られた自動車構造体の制振性能を下記要領で測定し、その結果を図5に示した。
【0051】
(制振性能)
JIS G 0602に規定する中央支持定常加振法に準拠して自動車構造体の損失係数を測定し、測定された損失係数を自動車構造体の制振性能の指標とした。なお、測定温度は23℃とした。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】自動車を60km/時間の速度で走行させた時のルーフパネルの振動特性を示したグラフである。
【図2】自動車ホディーの外パネルであるルーフパネルを示した自動車の斜視図である。
【図3】本発明の自動車構造体を示した縦断面図である。
【図4】本発明の自動車構造体を示した縦断面図である。
【図5】実施例及び比較例の自動車構造体の制振性能を示したグラフである。
【図6】従来の自動車構造体の一例を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 外パネル(ルーフパネル)
2 制振シート
3 内装材
A 自動車構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ボディーの外パネルの車内側面上に制振シート及び内装材がこの順序で積層一体化されてなることを特徴とする自動車構造体。
【請求項2】
制振シートの車内側面に内装材が密着一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車構造体。
【請求項3】
制振シートは、その厚みが0.5〜20mmであると共に、tanδのピーク温度が−20〜40℃で且つtanδのピーク値が0.5以上である合成樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車構造体。
【請求項4】
制振シートが、発泡倍率が1〜50倍の発泡シートであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の自動車構造体。
【請求項5】
外パネルがルーフパネルであることを特徴とする請求項1に記載の自動車構造体。
【請求項6】
内装材が不織布から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−179343(P2008−179343A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280636(P2007−280636)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】