説明

自動車用の測定装置

測定装置(10…)と少なくとも1つの物体(20)の間の距離を測定するための、および/または、測定装置と少なくとも1つの物体(20)の間の速度差分(v)を測定するための、自動車(1)用の測定装置に関する。測定装置は、信号部分(A(t)…)の2つのシーケンスと、各々が2つの一時的に変化する信号部分(Al…)を有する信号部分(A(t))の第1シーケンスおよび信号部分(B(t))の第2シーケンスとを包括する、送信信号を送信するための放出装置(35、55)を備える。信号部分(A(t)…)のシーケンスの2つの信号部分(A1…)の周波数は、それぞれ1差分周波数だけ異なり、信号部分(A(t))の第1シーケンスの差分周波数は、信号部分(B(t))の第2シーケンスの差分周波数と異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、特に、測定装置と少なくとも1つの物体との間の距離を測定するための、および/または測定装置と少なくとも1つの物体との間の速度差分を測定するための、自動車用の測定装置に関し、この測定装置は、少なくとも2つの信号部分シーケンスを含む送信信号を送信するための放出装置と、それぞれが少なくとも2つの一時的に変化する信号部分を有する第1信号部分シーケンスおよび第2信号部分シーケンスと、各場合においてその周波数が1差分周波数だけ異なる信号部分シーケンスの少なくとも2つの信号部分を有する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】独国特許出願公開第10050278号
【特許文献2】独国特許出願公開第19922411号
【特許文献3】独国特許第4244608号
【特許文献4】独国特許出願公開第10025844号
【特許文献5】独国特許出願公開第4331440号
【特許文献6】独国特許第68913423号
【非特許文献1】Technical University Hamburg−Harburg発行、M.−M.Meinecke著、「自動車のレーダ用に最適化された送信信号の設計について(Regarding Optimized Transmission Signal Design for Automobile Radars)」(2001年)
【非特許文献2】Technical University Carolo−Wilhelmina、Braunschweig発行、R.Mende著、「自動車における自動距離制御のためのレーダシステム(Radar Systems for the Automatic Distance Control in Automobiles)」(1999年) レーダ装置として開発されたこのような測定装置は、独国特許出願公開第10050278号より、またはTechnical University Hamburg−Harburg発行、M.−M.Meinecke著の博士論文「自動車のレーダ用に最適化された送信信号の設計について(Regarding Optimized Transmission Signal Design for Automobile Radars)」(2001年)より知られている。そのため、独国特許出願公開第10050278号は、距離と、観察点から離れた場所にある少なくとも1つの物体の相対速度との決定を開示しており、これは、観察点から、第1周波数と第2周波数を交互に放出させた信号部分の形式にて放出され、その後物体により反射され、受信および評価される、電磁信号の補助によって行われ、上記2つの周波数の信号部分は、これらが各々の場合において1つの一定周波数増分だけシフトするように、測定インターバルの最中に放出されている。
【0003】
さらに、自動セクタ内へのレーダ装置の使用が、Technical University Carolo−Wilhelmina、Braunschweig発行、R.Mende著の博士論文「自動車における自動距離制御のためのレーダシステム(Radar Systems for the Automatic Distance Control in Automobiles)」(1999年)、さらに独国特許出願公開第19922411号、独国特許第4244608号、独国特許出願公開第10025844号より知られている。
【0004】
独国特許出願公開第19922411号は、車両と1つまたはいくつかの障害物との間の距離および相対速度を測定するためのCWレーダ方法(継続波レーダ法)を開示しており、ここでは、送信信号は、いずれの場合にも異なる勾配を有する少なくとも4つの連続ブロックから成っている。距離/相対速度線図では、まず第1に、発見された全ての周波数位置の2つのブロックからの直線の交差点が、全て計算される。これらの交差点の妥当性を調べるためには、第3ブロックのフーリエスペクトル内の或る周波数位置に、距離/相対速度線図中の関連する直線がこの交差点の周囲領域と交差しているピークが存在するか否かが調べられる。この方法で妥当性を調べた交差点に第2条件が課され、第4ブロックのフーリエスペクトル内の或る周波数位置においてピークが存在し、距離/相対速度線図中のこれに関連する直線はこの交差点の周囲領域と交差している。両方の条件を満たしている場合には、これらの交差点は妥当であるとされる。
【0005】
独国特許第4244608号は、車両とその前方に在る障害物の間の距離と相対速度を測定するレーダ方法を開示しており、このレーダ方法は、連続送信信号を放出することと、これと同時に、連続送信信号の放出の最中に障害物によって反射された信号を受信することと、この反射された信号を連続送信信号と混合することで同期および直角信号を取得することと、これらの信号を処理して障害物の距離および相対速度のための出力信号にすることと、また、連続送信信号が、相互に関連し時間インターバルのない、一定の時間期間の一定の周波数増分に分割されていることと、さらに、反射された受信信号の一定の周波数増分の各々において、複合サンプリング値が記録され、同一の一定周波数増分の送信信号と混合されることと、を備える。
【0006】
独国特許出願公開第10025844号は、少なくとも2つの増分直線的に周波数変調した湾曲部が相互に混交している、増分直線的に周波数変調した送信信号を開示している。これに関連した特長は、これら2つ以上の湾曲部が、相互に対して一定の周波数シフトを有することである。周波数測定と位相差分測定により、受信した信号から物体の距離と物体の速度を明確に計算することが可能になる。
【0007】
さらに、独国特許出願公開第4331440号より、レーダ装置のために、信号評価用のI/Q信号の対、レーダアンテナとレーダフロントエンドの間で接続している位相シフタ、入力側に2つの信号チャネルを有する評価回路を形成することが知られており、レーダフロントエンドは、チャネルスイッチを介して2つの信号チャネルのうちの一方と接続可能であり、位相シフタとチャネルスイッチは同期クロックされており、位相シフタは位相を各クロック周期で0°から45°の間で切り換える。
【0008】
車両と障害物の間の距離を表示するための車両用ドップラレーダ装置が、独国特許第68913423号より知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、独国特許出願公開第10050278号と比較して測定の正確性が改善された測定装置を提示することである。この目的のために、測定装置を用いて、いわゆるゴースト対象の発生を低く維持するか、これを完全に除去することにより、10ms未満の測定時間を可能にし、また、非常に近い範囲(0m...1m)、および中程度の範囲、遠い範囲における物体の検出を可能にすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的は、測定装置、特に自動車用の測定装置によって達成され、この測定装置は、測定装置と少なくとも1つの物体との間の距離を測定するための、および/または測定装置と少なくとも1つの物体との間の速度差分を測定するための測定装置であり、測定装置は、少なくとも2つの信号部分シーケンスを含む送信信号を送信するための放出装置と、それぞれが少なくとも2つの一時的に変化する信号部分を有する第1信号部分シーケンスおよび第2信号部分シーケンスと、各場合においてその周波数が1差分周波数だけ異なる信号部分シーケンスの少なくとも2つの信号部分を有し、第1信号部分シーケンスの差分周波数は、第2信号部分シーケンスの差分周波数と、詳細には少なくとも5%、有利には少なくとも10%だけ異なっている。
【0011】
本発明の有利な改良型では、測定装置は、少なくとも1つの物体によって反射された送信信号の反射信号を受信するための受信装置を有し、有利には、第1混合信号を形成するために、第1信号部分シーケンスを、少なくとも1つの物体によって反射された第1信号部分シーケンスの一部分と混合するための混合機を有する。本発明のさらなる有利な改良型では、測定装置は、第1混合信号の周波数または複数の周波数を確定するための評価装置をさらに有する。評価は、例えばFFT(高速フーリエ変換)の補助によって生じる。
【0012】
本発明の別の有利な改良型では、評価装置により、測定装置と少なくとも1つの物体との間の距離、および/または測定装置と少なくとも1つの物体との間の速度差分を、測定された第1混合信号の周波数の関数として決定することが可能になる。
【0013】
本発明の別の有利な改良型では、混合機によって、第2信号部分シーケンスを、少なくとも1つの物体によって反射された第2信号部分シーケンスの一部分と混合して、第2混合信号を形成することが可能になり、また、評価装置により、測定した第2混合信号の周波数を確定することが可能になる。
【0014】
本発明の別の有利な改良型では、評価装置により、測定装置と少なくとも1つの物体の間の距離、および/または測定装置と少なくとも1つの物体の間の速度差分を、測定した第1混合信号の周波数、および測定した第2混合信号の周波数の関数として決定することが可能になる。
【0015】
本発明の別の有利な改良型では、評価装置により、第1混合信号の絶対位相と第2混合信号の絶対位相との間の差分を決定することが可能になる。
【0016】
本発明の別の有利な改良型では、評価装置により、測定装置と少なくとも1つの物体の間の距離、および/または測定装置と少なくとも1つの物体の間の速度差分を、第1混合信号の位相と第2混合信号の位相の間の差分の関数として決定することが可能になる。
【0017】
本発明の別の有利な改良型では、放出装置と受信装置の各々はアンテナである。しかし、放出装置と受信装置を共通のアンテナで実現することも可能である。
【0018】
本発明の別の有利な実施形態では、放出装置は光学素子、特にレーザである。本発明の別の有利な改良型では、この場合の受信装置は、反射されたレーザ光の位相を測定するのに適した感光素子、特に光素子またはフォトダイオードである。
【0019】
上述の目的はさらに、放出装置と少なくとも1つの物体との間の距離を測定する、および/または、放出装置と少なくとも1つの物体との間の速度差分を測定する方法により達成され、送信信号は、少なくとも2つの信号部分シーケンスと、第1信号部分シーケンスおよび第2信号部分シーケンスとを有し、これらの各々は、放出装置によって送出される少なくとも2つの一時的に変化する信号部分と、その周波数が各々の場合において一定でない差分周波数だけ異なる信号部分シーケンスの少なくとも2つの信号部分を有する。第1信号部分シーケンスの差分周波数は、第2信号部分シーケンスの差分周波数と、詳細には少なくとも5%、有利には少なくとも10%だけ異なる。
【0020】
本発明の別の有利な改良型では、少なくとも1つの物体によって反射された送信信号の反射信号が受信され、第1信号部分シーケンスが、少なくとも1つの物体により反射された第1信号部分シーケンスの一部分と有利に混合されて、第1混合信号を形成し、また、第1混合信号の優勢な(測定された)周波数が有利に確定される。
【0021】
本発明の別の有利な改良型では、放出装置と少なくとも1つの物体の間の距離、および/または放出装置と少なくとも1つの物体の間の速度差分が、第1混合信号の優勢な周波数の関数として決定される。
【0022】
本発明の別の有利な改良型では、第2信号部分シーケンスが、少なくとも1つの物体によって反射された第2信号部分シーケンスの一部分と混合されて、第2混合信号を形成し、また、本発明の別の有利な改良型では、第2混合信号の優勢な周波数が確定される。
【0023】
本発明の別の有利な改良型では、放出装置と少なくとも1つの物体の間の距離、および/または放出装置と少なくとも1つの物体の間の速度差分が、第1混合信号の優勢な周波数の、また第2混合信号の優勢な周波数の関数として決定される。
【0024】
本発明の別の有利な改良型では、第1混合信号の位相と第2混合信号の位相の間の差分が決定され、また、本発明の別の有利な改良型では、放出装置と少なくとも1つの物体の間の距離、および/または放出装置と少なくとも1つの物体の間の速度差分が、第1混合信号の位相と第2混合信号の位相の間の差分の関数として決定される。
【0025】
本発明で言及する自動車とは、特に、道路交通に独立的に使用できる陸上車両である。特に、本発明で言及する自動車とは、内燃エンジンを有する陸上車両に限定されるものではない。
【0026】
さらなる利点および詳細は、以下の例証的実施形態の説明から導出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1と図2は、例証的実施形態における自動車1を示す。図1は自動車1の正面図を、図2は自動車1の側面図を示す。自動車1はフロントバンパ2とリアバンパ3を有する。例証的実施形態では、フロントバンパ2は、例えば自動車1と、少なくとも1つの物体あるいは他の自動車のような障害物20との間の距離Rを測定するため、および/または、自動車1と少なくとも1つの物体または障害物20との間の速度差分vを測定するための、距離および/または速度センサ10、11、12、13、14、15、16を有しており、上記速度差分vは障害物20の速度vHと自動車1の速度vFの間の差である。
【0028】
使用する距離および/または速度センサ10、11、12、13、14、15、16の数によっては、より多いまたはより少ない数の距離および/または速度センサをバンパ2上に据え付けることができる。つまり、センサを1つだけ使用することも可能である。あるいはまたはこれに加えて、距離および/または速度センサは、リアバンパ3上、サイドミラー4、5上、サイドドア6、7上、A、B、Cピラー上、および/またはハッチバック8上に据え付けることもできる。距離および/または速度センサは、異なった方向および/または異なったレベルで配向することができる。このような距離および/速度センサの使用の例は、Technical University Carolo−Wilhelmina, Braunschweig、R.Mende著の博士論文「自動車における自動距離制御のためのレーダシステム(Radar Systems for the Automatic Distance Control in Automobiles)」(1999年)から収集することができる。
【0029】
図3は、例えば、距離および/または速度センサ10、11、12、13、14、15、16として使用できるレーダ装置30を示す。レーダ装置30は、レーダセンサ40と評価装置41を有する。レーダ装置30は、発振器、または送信信号s(t)を生成する信号生成器31、送信信号s(t)を発する送信アンテナ35、発信され障害物20のような物体により反射された、送信信号s(t)の反射信号r(t)を受信する受信アンテナ36を有する。tはこれに関連した時間を示す。
【0030】
信号生成器31により生成された送信信号s(t)は、第1信号部分シーケンスと第2信号部分シーケンスの少なくとも2つの信号部分シーケンスを含み、これらの信号部分シーケンスの各々は、少なくとも2つの一時的に変形する信号部分、信号部分シーケンスの、各場合においての周波数が1差分周波数だけ異なった少なくとも2つの信号部分を有し、第1信号部分シーケンスの差分周波数は第2信号部分シーケンスの差分周波数と、詳細には少なくとも5%、有利には少なくとも10%異なる。このような送信信号の1つの例証的実施形態を図4中の周波数/時間線図に示す。
【0031】
これに関し、A1、A2、A3、...は、第1信号部分シーケンスA(t)の信号部分を示し、B1、B2、B3、...は、第2信号部分シーケンスB(t)の信号部分を示す。このような信号部分はチャープとも呼ばれている。この例証的実施形態では、時間期間TBurstは信号部分A1、A2、A3、...についてのものであり、B1、B2、B3、...の長さは等しい。図4では、信号部分A1、A2、A3、...の時間期間TBurstを実線で示し、信号部分B1、B2、B3、...の時間期間TBurstを破線で示している。
【0032】
信号部分A1、A2、A3、...、またはB1、B2、B3...中の周波数は、定キャリア周波数f(t)であってよいが、さらに、変調周波数で変調した定キャリア周波数f(t)であってもよい。
【0033】
第1信号部分シーケンスA(t)の個々の信号部分A1、A2、A3、...は、各々の場合においてのその周波数またはそのキャリア周波数f(t)が、差分周波数fHub.A/(N−1)だけ異なっており、fHub.Aは、第1信号部分シーケンスA(t)の第1信号部分A1のキャリア周波数と第1信号部分シーケンスA(t)のN番目の信号部分のキャリア周波数との差分であり、また、Nは第1信号部分シーケンスA(t)の信号部分A1、A2、A3、...の数である。第1[sic;second]信号部分シーケンスB(t)の個々の信号部分B1、B2、B3、...は、各々の場合においてその周波数またはそのキャリア周波数f(t)が、差分周波数fHub.B/(N−1)だけ異なっており、fHub.Bは、第2信号部分シーケンスB(t)の第1信号部分B1のキャリア周波数と第2信号部分シーケンスB(t)のN番目の信号部分のキャリア周波数との間の差分であり、また同様にNは、第1[sic;second]信号部分シーケンスB(t)の信号部分B1、B2、B3、...の数である。意外にも、第1信号部分シーケンスA(t)の差分周波数fHub.A/(N−1)を、特に第2信号部分シーケンスB(t)の差分周波数fHub.B/(N−1)と、詳細には少なくとも5%、有利には少なくとも10%異なるように選択することが、特に有利であることが分かる。
【0034】
さらに、第1信号部分シーケンスA(t)の信号部分A1と第2信号部分シーケンスB(t)の信号部分B1との間に、周波数シフトfShiftを供給してもよい。
【0035】
したがって、第1信号部分シーケンスA(t)は次式のとおりになり、
【数1】

【0036】
また、第2信号部分シーケンスB(t)は次式のとおりになり、
【数2】

【0037】
この場合、fTA1は信号部分A1のキャリア周波数を指し、rectは矩形関数を指す。
【0038】
したがって、送信信号s(t)は次式のとおりになる。
【0039】
s(t)=A(t)+B(t)
送信信号s(t)と反射信号r(t)を混合するために、結合器32を介して送信信号s(t)が混合機38に供給される。混合機38は同相信号I(t)を出力する。
【0040】
さらに、別の結合器33を介して送信信号s(t)が位相シフタ37に供給されるが、これにより、送信信号s(t)の位相がキャリア周波数に対して90°、つまりп/2だけシフトされる。この位相シフトされた送信信号が混合機39に供給されることで、位相シフトされた送信信号と反射信号r(t)が混合され、これが結合器34を介して混合機39に供給される。混合機39は直角信号Q(t)を出力する。
【0041】
同相信号I(t)と直角信号Q(t)は、特許請求の範囲の観念において混合信号である。
【0042】
レーダ装置30は、直角信号Q(t)に複素数jを乗算してjQ(t)を算出するために使用される乗法子42を有する。I(t)とJQ(t)を加算して複合混合信号m(t)を形成する。複合混合信号m(t)は、特許請求の範囲の観念においても同様に混合信号である。レーダ装置30はさらに、周波数Kにかけて複合混合信号m(t)のスペクトルM(K)を形成するために使用する、周波数分析器43を有する。検出器44を使用することで、混合信号m(t)の優勢な周波数Kが第1信号シーケンスA(t)に関連して確定され、混合信号m(t)の優勢な周波数Kが第2信号シーケンスB(t)に関連して確定される。
【0043】
この例では、個々の信号シーケンスA(t)とB(t)の処理が、有利には一時的な分離によって別個に実行されるため、混合機38、39の補助により第1信号部分シーケンスA(t)が、第1混合信号I(t)、Q(t)またはm(t)を形成するべく、少なくとも1つの物体20によって反射された(反射信号r(t)の)第1信号部分シーケンスA(t)の一部分と混合され、また、第2混合信号I(t)、Q(t)またはm(t)を形成するべく、第2信号部分シーケンスB(t)が、少なくとも1つの物体20によって反射された(反射信号r(t))の第2信号部分シーケンスB(t)の一部分と混合される。この目的のために、周波数分析器43が、周波数xにかけて複合混合信号m(t)の複合スペクトルM(K)を形成し、周波数Kにかけて複合混合信号m(t)の複合スペクトルM(K)を形成する。検出器44を使用することで、複合混合信号m(t)の周波数K(つまり第1信号シーケンスA(t)に関連する)と、複合混合信号m(t)の周波数K(つまり第2信号シーケンスB(t)に関連する)が確定される。
【0044】
レーダ装置30は、距離Rおよび/または差分速度vを決定するための評価装置45を有する。この目的のために、評価装置45は以下の方程式系を解き、
【数3】

【数4】

【0045】
ここで、cは光速である。
【0046】
これに加え、複合混合信号m(t)の位相と複合混合信号m(t)の位相との間の差分ΔΨをさらに確定するために、検出器44を設けることもできる。この場合(距離Rおよび/または速度差分vを決定するために)評価装置45を使用し、例えば最小二乗アルゴリズムにより、例えば以下の優決定の方程式系を解くことができる。
【数5】

【数6】

【数7】

【0047】
さらに、2つよりも多くの信号部分シーケンスを使用することもできる。これにより、例えば、異なる差分周波数fHub.A/(N−1)、fHub.B/(N−1)、fHub.C/(N−1)の3つの信号部分シーケンスA(t)、B(t)、C(t)を使用し、適切に放出し、処理することができる。この場合(距離Rおよび/または速度差分vを決定するために)評価装置45を、例えば最小二乗アルゴリズムにより、例えば以下の優決定の方程式形を解くために使用できる。
【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【0048】
この場合、
【数12】

【0049】
であり、
【数13】

【0050】
この場合、
【数14】

【0051】
である。
【0052】
したがって、例えば、異なる差分周波数fHub.A/(N−1)、fHub.B/(N−1)、fHub.C/(N−1)、fHub.D/(N−1)の、4つの信号部分シーケンスA(t)、B(t)、C(t)、D(t)を使用し、適切に放出し、処理することもできる。この場合、(距離Rおよび/または速度差分vを決定するために)評価装置45を使用し、例えば最小二乗アルゴリズムにより、例えば以下の優決定の方程式系を解くこともできる。
【数15】

【数16】

【数17】

【数18】

【0053】
ΔΨAB=上記参照
ΔΨAC=上記参照
【数19】

【0054】
この場合、
【数20】

【0055】
である。
【0056】
さらに、異なる信号シーケンスの信号部分に、異なる時間期間を提供することもできる。
【0057】
図5は、速度差分vまたは距離Rの改善された測定を行うための、光学測定装置50の例証的実施形態を示す。光学測定装置50は、光学センサ60と、本質的に評価装置41に対応した評価装置61とを有する。光学測定装置50は、送信信号sl(t)を生成するための発振器または信号生成器51、送信信号sl(t)の周波数にて発光するレーザ55、障害物20のような少なくとも1つの物体により反射された光を受光し、反射された光の周波数に関連した周波数にて反射信号rl(t)を生成するための光素子56を有する。信号生成器51によって生成された送信信号sl(t)は送信信号s(t)に対応しているが、別の周波数範囲内に配置されている。送信信号sl(t)と反射信号rl(t)を混合するために、結合器52を介して送信信号sl(t)が混合機58に供給される。混合機58は同相信号I(t)を出力する。
【0058】
別の結合器53を介して、送信信号sl(t)がさらに位相シフタ57に供給され、これにより送信信号sl(t)の位相が、キャリア周波数に対して90°、つまりп/2だけシフトされる。この位相シフトされた送信信号が混合機59に供給されることで、位相シフトされた送信信号と反射信号rl(t)が混合され、これが結合器54を介して混合機59に供給される。混合機59は直角信号Q(t)を出力する。
【0059】
図面中の要素、信号、周波数範囲は、簡素性および明確性を考慮して、必ずしも正確な比率に準じずに描かれている。そのため、本発明の例証的実施形態の理解を促進する目的で、例えばいくつかの要素、信号、または周波数範囲の大きさが強調されている。
【0060】
(参照符号一覧)
1…自動車、2、3…バンパ、4、5…サイドミラー、6、7…サイドドア、8…ハッチバック、10、14、15、16…距離および/または速度センサ、20…物体または障害物、30…レーダ装置、51…信号生成器、33、34、52、53、54…結合器、35…送信アンテナ、36…受信アンテナ、57…位相シフタ、39、58、89…混合機、40…レーダ装置、41、61…評価装置、42…乗算器、43…周波数分析装置、44…検出器、45…評価装置、50…光学測定装置、55…レーザ、56…光素子、60…光学センサ、A、B…信号シーケンス、A1、A2、A3、B1、B2、B3…信号部分、fHub.A、fHub.B…信号部分シーケンスの第1信号部分のキャリア周波数と、信号部分シーケンスの最終信号部分のキャリア周波数との間の差、fShift…周波数シフト、f(t)…キャリア周波数、I(t)…同相信号、m(t)…複合混合信号、M(K)…複合スペクトル、Q(t)…直角信号、R…距離、r(t)、rl(t)…反射信号、s(t)、sl(t)…送信信号、t…時間、TBurst…時間期間、v…速度差分、vF…自動車の速度、vH…障害物の速度、ΔΨ…2つの混合信号の位相の差分、K…周波数、K、K…測定した複合混合信号の周波数
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】自動車の正面図である。
【図2】自動車の側面図である。
【図3】レーダ装置の例証的実施形態である。
【図4】周波数/時間線図の例証的実施形態である。
【図5】光学測定装置の例証的実施形態である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)、特に、測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)と少なくとも1つの物体(20)との間の距離を測定するための、および/または前記測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)と前記少なくとも1つの物体(20)との間の速度差分(v)を測定するための、自動車(1)用の測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)であって、前記測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)は、少なくとも2つの信号部分シーケンス(A(t)、B(t)、C(t)、D(t))を含む送信信号(s(t)、sl(t))を送信するための放出装置(35、55)と、それぞれが少なくとも2つの一時的に変化する信号部分(A1、A2、A3、B1、B2、B3)を有する第1信号部分シーケンス(A(t))および第2信号部分シーケンス(B(t))と、各場合においてその周波数が1差分周波数fHub.A/(N−1)、fHub.B/(N−1)だけ異なる信号部分シーケンス(A(t)、B(t)、C(t)、D(t))の少なくとも2つの信号部分(A1、A2、A3、B1、B2、B3)を有し、
前記第1信号部分シーケンス(A(t))の前記差分周波数(fHub.A/(N−1))は、前記第2信号部分シーケンス(B(t))の差分周波数(fHub.B/(N−1))と異なる、測定装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの物体(20)によって反射された前記送信信号(s(t)、sl(t))の反射信号(r(t)、rl(t))を受信するための受信装置(36、56)を有する、請求項1に記載の測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)。
【請求項3】
第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))を形成するために、前記第1信号部分シーケンス(A(t))を、前記少なくとも1つの物体(20)によって反射された前記反射信号(r(t)、rl(t))の前記第1信号部分シーケンス(A(t))の一部分と混合するための混合機(38、39、58、59)を有する、請求項2に記載の測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)。
【請求項4】
前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の前記測定された周波数または複数の周波数(K)を確定するための評価装置(41、61)を有する、請求項3に記載の測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)。
【請求項5】
前記評価装置(41、61)により、前記測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)と前記少なくとも1つの物体(20)との間の距離を、前記測定された周波数または前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の周波数(K)の関数として決定することができる、請求項4に記載の測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)。
【請求項6】
前記評価装置(41、61)により、前記測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)と前記少なくとも1つの物体(20)との間の前記速度差分(v)を、前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の前記測定された周波数または複数の周波数(K)の関数として決定することができる、請求項4または5に記載の測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)。
【請求項7】
前記混合機(38、39、58、59)によって、第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))を形成するために、前記第2信号部分シーケンス(B(t))を、前記少なくとも1つの物体(20)により反射された前記反射信号(r(t)、rl(t))の第2信号部分シーケンス(B(t))の一部分と混合できる、請求項3から6のいずれか1項に記載の測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)。
【請求項8】
前記評価装置(41、61)により、前記第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の前記測定された周波数または複数の周波数(K)を確定することが可能になる、請求項7に記載の測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)。
【請求項9】
前記評価装置(41、61)により、前記測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)と前記少なくとも1つの物体(20)との間の前記距離を、前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の前記測定した周波数または複数の周波数の関数として、または、前記第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の前記優勢な周波数(K)の関数として決定することが可能になる、請求項8に記載の測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)。
【請求項10】
前記評価装置(41、61)により、前記測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)と前記少なくとも1つの物体(20)の間の速度差分(v)を、前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の前記測定された周波数または複数の周波数(K)の関数として、または前記第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の前記測定された周波数または複数の周波数(K)の関数として決定することが可能になる、請求項8または9に記載の測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)。
【請求項11】
前記評価装置(41、61)により、前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の位相と前記第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の位相との間の差分(ΔΨ)を決定することが可能になる、請求項7から10のいずれか1項に記載の測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)。
【請求項12】
前記評価装置(41、61)により、前記測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)と前記少なくとも1つの物体(20)との間の距離を、前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の位相と前記第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の位相との間の前記差分(ΔΨ)の関数として決定することが可能になる、請求項11に記載の測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)。
【請求項13】
前記評価装置(41、61)により、前記測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)と前記少なくとも1つの物体(20)の間の前記速度差分(v)を、前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の位相と前記第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の位相との間の差分(ΔΨ)の関数として決定することが可能になる、請求項11または12に記載の測定装置(10、11、12、13、14、15、16、30、50)。
【請求項14】
放出装置(35、55)と少なくとも1つの物体(20)との間の距離を測定するための、および/または、前記放出装置(35、55)と前記少なくとも1つの物体(20)との間の速度差分(v)を測定するための方法であって、前記放出装置(35、55)は、送信信号(s(t)、sl(t))を送信するために使用され、前記送信信号(s(t)、sl(t))は、少なくとも2つの信号部分シーケンス(A(t)、B(t)、C(t)、D(t))、すなわち第1信号部分シーケンス(A(t))および第2信号部分シーケンス(B(t))を有し、これらの各々は、少なくとも2つの一時的に変化する信号部分(A1、A2、A3、B1、B2、B3)と、各々の場合においてその周波数が1差分周波数(fHub.A/(N−1)、fHub.B/(N−1))だけ異なる信号部分シーケンス(A(t)、B(t)、C(t)、D(t))の少なくとも2つの信号部分(A1、A2、A3、B1、B2、B3)とを有し、
前記第1信号部分シーケンス(A(t))の前記差分周波数(fHub.A/(N−1))が、前記第2信号部分シーケンス(B(t))の前記差分周波数(fHub.B/(N−1))と異なる、方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの物体(20)によって反射された前記送信信号(s(t)、sl(t))の反射信号(r(t)、rl(t))が受信される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1信号部分シーケンス(A(t))は、前記少なくとも1つの物体(20)によって反射された反射信号(r(t)、rl(t))の前記第1信号部分シーケンス(A(t))の一部分と混合されて、第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))を形成する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の前記優勢な周波数(K)が確定される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記放出装置(35、55)と前記少なくとも1つの物体(20)の間の距離は、前記前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の優勢な周波数(K)の関数として決定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記放出装置(35、55)と前記少なくとも1つの物体(20)の間の前記速度差分(v)は、前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の前記優勢な周波数(K)の関数として決定される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2信号部分シーケンス(B(t))は、前記少なくとも1つの物体(20)により反射された前記反射信号(r(t)、rl(t))の前記第2信号部分シーケンス(B(t))の一部分と混合されて、第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))を形成し、また、前記第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の前記優勢な周波数(K)が確定される、請求項15から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記放出装置(35、55)と前記少なくとも1つの物体(20)との間の距離は、前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の、および前記第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の、優勢な周波数(K)の関数として決定される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記放出装置(35、55)と前記少なくとも1つの物体(20)との間の速度差分(v)は、前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の優勢な周波数(K)の関数として、および前記第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の前記優勢な周波数(K)の関数として決定される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の位相と前記第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の位相との間の差分(ΔΨ)が決定される、請求項20、21、または22に記載の方法。
【請求項24】
前記放出装置(35、55)と前記少なくとも1つの物体(20)との間の距離は、前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の位相と前記第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の位相との間の差分(ΔΨ)の関数として決定される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記放出装置(35、55)と前記少なくとも1つの物体(20)との間の速度差分(v)は、前記第1混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の位相と前記第2混合信号(I(t)、Q(t)、m(t))の位相との間の前記差分(ΔΨ)の関数として決定される、請求項23または24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−509330(P2007−509330A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535968(P2006−535968)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010550
【国際公開番号】WO2005/050249
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(501476454)エス・エム・エス・スマート・マイクロウェーブ・センサーズ・ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】