説明

自動車用内装部品並びにその製造方法

【課題】複数の樹脂成形品とそれらの境界部に位置するフィニッシャーとからなる多色成形品を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品並びにその製造方法であって、多色成形品の構造を簡素化するとともに、製作コストを低減化させ、かつ外観性能を高める。
【解決手段】成形上下型110,120を型締めするとともに、分割バー131を上昇させることでキャビティC1,C2を区画し、異なる樹脂成形品であるドアトリムアッパー40、ドアトリムセンター50を所要形状に成形した後、分割バー131を下降操作して形成される新たなキャビティC3内に溶融樹脂M2を射出充填して、ドアトリムアッパー40、ドアトリムセンター50を支持するフィニッシャー60を一体化する。このように、単一の成形金型100を使用して、二色射出成形工法によりドアトリムアッパー40、ドアトリムセンター50とフィニッシャー60を一体成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多色成形品を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品並びにその製造方法に関するもので、多色成形品の構造を簡素化するとともに、成形サイクルも短縮化でき、廉価に製作できる自動車用内装部品並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、車両のフロント側ドアパネルの室内面側に内装される自動車用ドアトリム1を示すもので、このドアトリム1は、成形金型のコンパクト化並びに外観性能を高めるために、アッパー側メンバー2とロア側メンバー3との上下二分割体から構成されているとともに、アッパー側メンバー2は多色成形品からなり、ロア側メンバー3は樹脂単体品から構成されている。
【0003】
ところで、上記多色成形品からなるアッパー側メンバー2は、図13に示すように、ウエスト部に位置するドアトリムアッパー4、ウエスト部より下方でアームレストより上方に位置するドアトリムセンター5、そして両者の境界部分に位置するフィニッシャー6の3部材から構成されている。更に詳しくは、ドアトリムアッパー4、並びにドアトリムセンター5は、それぞれ樹脂芯材4a,5aの表面に表皮4b,5bを積層一体化した積層構造体から構成されており、外観上のアクセント効果を強調するためには、表皮4b,5bの外観や感触を相違させるとともに、フィニッシャー6は、木目調や金属調のように樹脂外観と相違させた製品外観を備えている。
【0004】
そして、従来では、アッパー側メンバー2を製作するには、ドアトリムアッパー4並びにドアトリムセンター5をそれぞれ専用の成形金型(図示せず)で成形した後、ドアトリムアッパー4、ドアトリムセンター5のいずれか一方側に設けた超音波用ボス5cを他方側の取付孔4c内に差し込んで、超音波用ボス5cの先端を超音波カシメ加工することにより、ドアトリムアッパー4とドアトリムセンター5とを一体化した後、ドアトリムアッパー4とドアトリムセンター5の接合部分の製品表面にフィニッシャー6を被覆して、このフィニッシャー6の超音波用ボス6aをドアトリムアッパー4の取付孔4d内に挿入して、超音波用ボス6aの先端を超音波溶着加工することにより、フィニッシャー6を取り付けていた。この種の従来例としては、特許文献1にフィニッシャーを有するドアトリム及びその製造方法が示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−347834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の多色成形品によるアッパー側メンバー2の構成としては、ドアトリムアッパー4、ドアトリムセンター5、及びフィニッシャー6の三者をそれぞれ別個の専用型で成形したものを超音波溶着加工により一体化しているため、専用の金型個数を多く必要とし、かつ成形工数、組付工数が嵩み、生産性を大幅に低下させるという欠点が指摘されている。更に超音波溶着加工による一体化工程においては、フィニッシャー6等に浮き不良が生じ易いため、強固な取付強度を確保することが難しく、外観不良やガタツキ等の原因となることから、品質性能を低下させる要因となっている。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、多色成形品を全体、あるいは一部に採用した自動車用内装部品並びにその製造方法であって、多色成形品を一体成形することで、構造を簡素化するとともに、成形工数、組付工数を低減でき、しかも外観見栄えについても良好に維持できる自動車用内装部品並びにその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の樹脂成形品の境界部分にフィニッシャーを配置することで、上記樹脂成形品とフィニッシャーとを一体化してなる多色成形品を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品において、前記多色成形品における樹脂成形品並びにフィニッシャーは、同一の成形金型を使用して、二色射出成形工法により一体成形されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、多色成形品は2種類の外観の異なる樹脂成形品と、双方の樹脂成形品の間に位置するこれも外観の異なるフィニッシャーとから構成されており、用途としては、車両の室内面に装着される内装トリム全般、例えば、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、リヤコーナートリム、トランクサイドトリム等に適用することができる。また、多色成形品で内装部品全体を構成するか、あるいは内装部品の一部を多色成形品で構成することもできる。
【0010】
次いで、樹脂成形品は、樹脂単体品でも、あるいは樹脂単体品の表面に表皮を一体化した積層構造体のどちらでも良い。ただ、複数の樹脂成形品それぞれの製品外観が異なるように、樹脂単体品の場合は彩色を相違させている。一方、表皮を積層する積層構造体においては、表皮の色彩や材質を相違させるようにする。尚、フィニッシャーとしては、樹脂成形品の表面に木目調、あるいは金属調のような外観を付与するのが外観アクセント上好ましい。
【0011】
従って、本発明に係る自動車用内装部品によれば、自動車用内装部品の全体、あるいは一部を構成する多色成形品は、同一の成形金型を使用して、射出成形工法により一体成形されているため、従来のように、取付用ボスを超音波溶着加工することで部材同士を接合する手間が省けるとともに、取付不良等が原因となるガタツキや浮き等の外観不良も確実に防止することができる。
【0012】
次いで、上記自動車用内装部品の製造方法は、複数の樹脂成形品の境界部分にフィニッシャーを配置することで、上記樹脂成形品とフィニッシャーとを一体化してなる多色成形品を全体、あるいは一部に採用した自動車用内装部品の製造方法において、前記多色成形品の成形方法は、成形金型を構成する成形上下型を型締めするとともに、成形下型に内装された分割バーをシリンダ駆動により上昇させ、この分割バーにより成形上下型間に画成されるキャビティを複数のキャビティに区画し、各キャビティ内に溶融樹脂を射出充填することにより、複数の樹脂成形品を所要形状に成形する樹脂成形品の成形工程と、前記樹脂成形品の成形工程後、分割バーを下降操作し、双方の樹脂成形品の境界部分にキャビティを形成し、このキャビティ内に溶融樹脂を射出充填することにより、複数の樹脂成形品と一体化するフィニッシャーを成形するフィニッシャーの成形工程とからなることを特徴とする。
【0013】
更に、多色成形品を成形する成形金型は、複数の樹脂成形品の境界部分にフィニッシャーを配置することで、上記樹脂成形品とフィニッシャーとを一体化してなる多色成形品を成形する成形金型において、前記成形金型は、相互に型締め、型開き可能な成形上下型と、成形下型に内装され、複数のキャビティに区画する分割バーとから構成され、分割バーの上昇時には、複数のキャビティを良好なシール性でもって区画するとともに、分割バーの下降時には、溶融樹脂のゲートがキャビティに臨むような開口が分割バーに設けられていることを特徴とする。
【0014】
ここで、成形金型については、成形上型には、所定ストローク上下動可能となるように昇降シリンダが連結されており、成形下型には、各キャビティと溶融樹脂を供給するための樹脂通路としてのホットランナ、ゲートが設けられている。そして、樹脂成形品を成形するための溶融樹脂を供給するゲートは、成形下型の所定位置に設けられているが、フィニッシャーを成形するためのゲートは、分割バーの昇降動作時において、分割バーとゲートとが干渉しないように分割バーに開設した開口内にゲートが挿通自在に収容されている。
【0015】
本発明に係る多色成形品の成形方法は、樹脂成形品の成形工程とフィニッシャーの成形工程とに大別できる。まず、樹脂成形品の成形工程については、例えば、樹脂成形品の仕様として、樹脂芯材の表面に表皮を貼着する積層構造品を用いる場合には、成形上下型が型開き状態にある時、型内に予め樹脂成形品の表皮をセットする。そして、樹脂成形品を成形するには、成形上下型が型締めされて、かつ分割バーが上昇し、成形上下型間のキャビティが分割バーにより複数のキャビティに区画され、区画されたキャビティ内に溶融樹脂がゲートを通じて射出充填され、樹脂成形品が所要形状に成形される。この時、分割バーのシール機能によりキャビティ外部に樹脂漏れが生じることがない。また、表皮貼着構造においては、樹脂成形品の成形と同時に表皮が一体化される。
【0016】
その後、フィニッシャーの成形工程が行なわれるが、樹脂成形品の成形工程が完了すれば、分割バーがシリンダの駆動により下降して、樹脂成形品の境界部分に新たなキャビティが形成され、このキャビティ内に溶融樹脂が射出充填されて、フィニッシャーが所要形状に成形され、このフィニッシャーが双方の樹脂成形品の端末部分を支持する支持機能を持つことで、樹脂成形品とフィニッシャーとが一体化する。この時、ガス注入により中空断面を形成させるようにすれば、特に、意匠面の不具合や剛性差が出ることがなく、強度や外観見栄えも良好なフィニッシャーを成形することができる。
【0017】
従って、本発明方法によれば、成形上下型を型締めするとともに、分割バーを上昇させることで、キャビティを区画し、次いで、各区画キャビティ内に溶融樹脂を射出充填することにより、樹脂成形品を成形した後、分割バーを下降操作し、更に、キャビティ内に溶融樹脂を射出充填して、フィニッシャーを一体化するという工程を採用しているため、従来のように、多数の成形金型を必要とすることなく、単一の成形金型を使用するだけで済むことから、金型設備を簡素化できる。更に、二色射出成形工法を用いることにより、連続工程で成形でき、従来のように、異なる部材を位置決めし、超音波溶着用治具にセットして、超音波溶着加工を施す等の面倒な作業を廃止でき、成形工程も短縮化できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した通り、本発明に係る自動車用内装部品並びにその製造方法によれば、同一の成形金型による二色射出成形工法を採用し、複数の樹脂成形品並びにフィニッシャーを一体成形するというものであるから、多色成形品の構造を簡素化するとともに、成形設備も廉価に実施できる等、コストを大幅に引き下げることが可能になるとともに、製品外観上においても一体感を強調でき、かつガタツキや浮き等の外観不良を可及的に防止できるため、外観見栄えを美麗に保ち、かつ製品剛性を強固に維持できる等、品質性能を向上させることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る自動車用内装部品並びにその製造方法の好適な実施例について説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0020】
図1乃至図11は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明を適用した自動車用ドアトリムを示す正面図、図2は同自動車用ドアトリムの構成を示す断面図、図3は同自動車用ドアトリムにおけるアッパー側メンバー(多色成形品)を示す正面図、図4乃至図6は同自動車用ドアトリムにおけるアッパー側メンバーの成形に使用する成形金型を示すもので、図4は全体図、図5は同成形金型における成形下型の平面図、図6は同成形金型における分割バーの構成を示す説明図、図7乃至図11は同自動車用ドアトリムにおけるアッパー側メンバー(多色成形品)の成形方法を示す各説明図である。
【0021】
図1乃至図3において、本発明を適用したドアトリム10の構成について説明する。ドアトリム10は、アッパー側メンバー(多色成形品)20とロア側メンバー(樹脂単体品)30との上下二分割体から構成されている。更に詳しくは、アッパー側メンバー20には、インサイドハンドルユニット11が取り付けられているとともに、アッパー側メンバー20の下縁側には、アームレスト12が室内側に膨出するように形成され、アームレスト12の上面にはパワーウインドウスイッチユニット13が取り付けられている。また、ロア側メンバー30には、ポケット用開口14が開設され、そのフロント側にスピーカグリル15がロア側メンバー30と一体、あるいは別体に設けられている。
【0022】
そして、図2に示すように、アッパー側メンバー20とロア側メンバー30は、ロア側メンバー30の上縁側裏面に車両の長手方向に沿って所定ピッチ間隔で取付用ボス31が立設され、この取付用ボス31をアッパー側メンバー20に対応して設けられた取付孔21内に挿通させ、取付用ボス31の先端を超音波溶着加工、熱溶着加工等によりカシメ加工することにより、アッパー側メンバー20とロア側メンバー30とが強固に接合一体化されている。
【0023】
このように、ドアトリム10は、アッパー側メンバー20とロア側メンバー30との上下二分割体から構成することで、外観上のアクセント効果を強調して、外観意匠性を向上させるとともに、パーツを小型化することで成形金型の小型化によるコストダウンも見込める。更に、本発明においては、多色成形品であるアッパー側メンバー20の構造を簡素化することでコストダウンを図るとともに、外観意匠性を高めるという構成が採用されている。すなわち、本発明においては、アッパー側メンバー20を構成するドアトリムアッパー40、ドアトリムセンター50、及び両者の境界部分に配置するフィニッシャー60の3部材を単一の成形金型による二色射出成形方法を採用して一体成形したことが特徴である。
【0024】
更に詳しくは、ドアトリムアッパー40並びにドアトリムセンター50は、それぞれ所要形状に成形された樹脂芯材41,51の表面に表皮42,52を貼付した積層構造体が使用されているが、樹脂芯材41,51単体で使用することもできる。尚、ドアトリムアッパー40並びにドアトリムセンター50は、外観上の対比効果を強調するために、それぞれ表皮42,52の色彩を相違させるか、あるいは材質を相違させることで、外観性能を向上させているが、樹脂芯材41,51単体を使用した場合は、異なる彩色の顔料を添加して色彩を相違させるようにしても良い。上記樹脂芯材41,51の素材としては、好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アイオノマー系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂等が使用できる。また、これら熱可塑性樹脂中に各種充填剤を混入しても良い。使用できる充填剤としては、カーボン繊維等の無機繊維、タルク、クレイ、シリカ、炭酸カルシウム等の無機粒子がある。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、低収縮剤等の各種添加剤が配合されても良い。
【0025】
次いで、ドアトリムアッパー40並びにドアトリムセンター50に使用する表皮42,52は、TPO(サーモプラスチックオレフィン)等の熱可塑性エラストマー系樹脂、PVC樹脂、合皮(TPU(サーモプラスチックウレタン)樹脂)等の樹脂シートや、クロス、不織布等の布地シートを使用することができ、これら樹脂シート、あるいは布地シートの裏面にポリウレタンフォーム、ポリオレフィン系樹脂フォーム等のクッション層を裏打ちしても良い。そして、樹脂芯材41,51は、射出成形により所要形状に成形されるが、その際、射出成形金型内に表皮42,52を予めインサートしておき、樹脂芯材41,51の射出成形時に表皮42,52を一体成形するのが量産性を考慮した場合好ましい。
【0026】
更に、ドアトリムアッパー40とドアトリムセンター50との境界部分に配置されるフィニッシャー60は、その製品外観は木目調模様61が成形金型側から転写されており、外観意匠性を向上させているが、木目調模様61以外にも、ステンレス等の金属調外観を現出するようにしても良い。また、フィニッシャー60は、中空部62が形成されており、後述するが、中空部62をガスインジェクション工法で形成することで、この部位の剛性を強化するとともに、表皮42,52の端末処理が良好に行なえる等、外観性能を高めることが可能となる。
【0027】
このように、本発明に係る自動車用ドアトリム10は、多色成形品であるアッパー側メンバー20と、単一成形品であるロア側メンバー30との上下二分割体から構成され、更に多色成形品であるアッパー側メンバー20は、ドアトリムアッパー40、ドアトリムセンター50及びフィニッシャー60が同一の成形金型で二色射出成形工法により一体成形されていることが特徴である。すなわち、ドアトリムアッパー40、ドアトリムセンター50及びフィニッシャー60の三者を一体成形する構成であるため、従来のように、取付用ボスを相手側の取付孔内に挿通させて取付用ボス先端を超音波溶着等によりカシメ加工するという手間が省け、製造工程を大幅に短縮化できるとともに、フィニッシャー60が一体成形されているため、従来のようにフィニッシャー60と相手部品との間に隙間が発生することがないことから、外観性能においても優れている。
【0028】
次いで、多色成形品の一例であるアッパー側メンバー20を成形するための成形金型100の構成について図4乃至図6を基に説明する。成形金型100は、相互に型締め、及び型開き可能な成形上型110、成形下型120と、成形下型120に内装される分割機構部130とから大略構成されている。更に詳しくは、成形上型110は、昇降シリンダ111により所定ストローク上下動可能であり、下死点まで下降した時に、成形上下型110,120の型締め圧により、ドアトリムアッパー40及びドアトリムセンター50を所要形状に成形する。
【0029】
一方、成形下型120は、ドアトリムアッパー40及びドアトリムセンター50における樹脂芯材41,51及びフィニッシャー60の各樹脂材料を供給するためのゲート121,122,123が設けられている。この各ゲート121,122,123の設置箇所は、図5に示すように、成形下型120におけるドアトリムアッパー対応箇所120aにゲート121が設定され、ドアトリムセンター対応箇所120bには、ゲート122が設定され、両対応箇所120a,120bの境界部位であるフィニッシャー対応箇所120cには、ゲート123が設定されている。尚、図示はしないが、各ゲート121,122,123はそれぞれホットランナに接続しており、ホットランナはこれも図示しない射出機に接続されている。従って、射出機から供給される溶融樹脂がホットランナを通して各ゲート121,122,123からキャビティC1,C2,C3内に供給される。また、この実施例では、ドアトリムアッパー40、ドアトリムセンター50は、それぞれ樹脂芯材41,51の表面に表皮42,52を貼付する積層構造体を使用するため、予め表皮42,52をセットするための表皮セット用パッド124が成形下型120の外周部分に上下動自在でかつ上方にバネ付勢された状態で設けられている。このように、上下動自在でかつ上方にバネ付勢することで表皮42,52の端末部分を保持して成形時、表皮42,52に適切なテンションを付与することができる。
【0030】
そして、上記分割機構部130は、長尺状で略断面コ字状の分割バー131がシリンダ132により所定ストローク上下動可能に支持されており、ドアトリムアッパー40、ドアトリムセンター50の成形時には、それぞれのキャビティC1,C2を良好にシールして、各キャビティC1,C2から外部に樹脂が漏れることがないように成形上型110の型面と分割バー131とが当接している。一方、フィニッシャー60の成形時には、分割バー131が下降して新たなキャビティC3を形成する機能を持つ。ここで、キャビティC1はドアトリムアッパー対応箇所120aに相当し、キャビティC2はドアトリムロア対応箇所120bに相当し、キャビティC3はフィニッシャー対応箇所120cに相当している。
【0031】
更に、この実施例では、フィニッシャー60は、中空部62をガスインジェクション工法で形成するため、図6に示すように、分割バー131の一方端には、スピルイン機構部133が設けられ、他方端にはスピルアウト機構部134が設けられている。具体的には、スピルイン機構部133としてはガスを供給するためのガス供給ピンが設置され、スピルアウト機構部134としては余剰樹脂を外部に排出するためのスピルアウト樹脂通路やスピルアウト樹脂の貯留部が設けられている。そして、分割機構部130における分割バー131は、上昇位置で各キャビティC1,C2をシールするとともに、フィニッシャー60の成形時には下降して新たなキャビティC3を設け、この新たなキャビティC3にゲート123から溶融樹脂を供給するために、ゲート123が分割バー131の上下動作時に干渉を回避する逃げ用開口135が分割バー131に設けられている。
【0032】
次いで、図7乃至図11に基づいて、ドアトリム10における多色成形品であるアッパー側メンバー20の成形方法について説明する。まず、図7に示すように、成形上下型110,120が型開き状態にある時、ドアトリムアッパー40、及びドアトリムセンター50のそれぞれの表皮42,52をセットするが、それぞれの表皮42,52は外側端末を表皮セット用パッド124に載置するとともに、他方側の中央側端末を分割機構部130における分割バー131上に載置する。従って、成形下型120におけるドアトリムアッパー対応箇所120aには表皮42が載置され、ドアトリムセンター対応箇所120bには表皮52がそれぞれ載置される。
【0033】
その後、図8,図9に示すように、昇降シリンダ111の駆動により、成形上型110が所定ストローク下降して、成形上下型110,120が型締めされる。成形上下型110,120の型締め時において、分割機構部130におけるシリンダ132の伸長動作により分割バー131は上方に位置しており、分割バー131の左右側の縦壁部130a,130bはそれぞれキャビティC1,C2のキャビティ壁部を構成する。そして、成形上下型110,120が型締めされるとともに、ゲート121,122から溶融樹脂M1がキャビティC1,C2内に射出充填される。この溶融樹脂M1の素材としては、本実施例では、ポリプロピレン系樹脂が使用されている。
【0034】
尚、この実施例では、ゲート121,122を通して同じ樹脂を使用してそれぞれキャビティC1,C2内に射出充填したが、材料を相違させてゲート121,122から異なる樹脂材料をそれぞれキャビティC1,C2に射出充填するようにしても良い。この時、表皮42,52は、外側端末がそれぞれ表皮セット用パッド124に保持され、内側端末が分割バー131の縦壁部131a,131bに保持されているため、キャビティC1,C2の形状が複雑な形状をしていても、表皮42,52に適切なテンションが付与されて、樹脂芯材41,51の成形時に表皮42,52が良好に一体化される。
【0035】
そして、ドアトリムアッパー40、ドアトリムセンター50が所要形状に成形された後、図10,図11に示すように分割機構部130が駆動する。すなわち、シリンダ132が収縮動作することで、分割バー131が所定ストローク下降して、ドアトリムアッパー40とドアトリムセンター50との間に新たなキャビティC3を形成する。そして、この新たなキャビティC3内にゲート123を通じてフィニッシャー60用の溶融樹脂M2を射出充填するとともに、スピルイン機構部133からガスが注入されて、余剰樹脂がスピルアウト機構部134から排出され、中空部62を備えたフィニッシャー60が所要形状に成形されるとともに、成形上型110の型面から木目調模様61を精度良く転写することができる。
【0036】
従って、本発明方法においては、単一の成形金型100を使用する二色射出成形工法を採用し、第一段階としてドアトリムアッパー40、ドアトリムセンター50を射出成形し、次いで、第二段階としてドアトリムアッパー40とドアトリムセンター50との境界部分にフィニッシャー60を射出成形することにより三者を一体化することができる。よって、本発明によれば、構造を簡素化できるとともに、二色射出成形工法という生産性に優れた工法で製作できるため、工数を大幅に低減でき、コストも廉価に実施することができる。更に、中空部62を形成するように、ガスインジェクション工法を採用したため、ドアトリムアッパー40、ドアトリムセンター50におけるそれぞれ表皮42,52の端末がキャビティC3に位置しても、ガスインジェクション工法により射出圧を高めることで板厚バラツキがなく、かつ木目調模様61等も精度良く現出させることができ、外観性能も良好に維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明した実施例では、上下二分割構造のドアトリム10におけるアッパー側メンバー20に本発明構造を適用したが、ドアトリム10全体を多色成形品で構成しても良く、更に、多色成形品構造を備える構成であれば、リヤパーセルシェルフ、フロアトリム、ラゲージトリム、トランクトリム、リヤサイドトリム、ピラーガーニッシュ、ルーフトリム等、内装トリム全般に適用することができる。
【0038】
また、ドアトリムアッパー40、ドアトリムセンター50は、それぞれ樹脂芯材41,51の表面に表皮42,52を貼付した積層構造体を使用したが、彩色を相違させた樹脂単体品を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る自動車用内装部品を適用したドアトリムを示す正面図である。
【図2】図1中II−II線断面図である。
【図3】図1に示すドアトリムにおけるアッパー側メンバーを示す正面図である。
【図4】図1に示すドアトリムにおけるアッパー側メンバーを成形する成形金型の全体構成を示す説明図である。
【図5】図4に示す成形金型における成形下型を示す平面図である。
【図6】図4に示す成形金型に使用する分割機構部の構成を示す説明図である。
【図7】図1に示すドアトリムにおけるアッパー側メンバーの成形方法における表皮のセット工程を示す説明図である。
【図8】図1に示すドアトリムにおけるアッパー側メンバーの成形方法における樹脂成形品の成形工程を示す説明図である。
【図9】図8に示す樹脂成形品の成形工程における要部拡大断面図である。
【図10】図1に示すドアトリムにおけるアッパー側メンバーの成形方法におけるフィニッシャーの成形工程を示す説明図である。
【図11】図10に示すフィニッシャーの成形工程を示す要部拡大断面図である。
【図12】従来の上下二分割タイプのドアトリムを示す正面図である。
【図13】従来の上下二分割タイプのドアトリムにおけるアッパー側メンバーの構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
10 ツートンタイプのドアトリム
20 アッパー側メンバー(多色成形品)
30 ロア側メンバー(樹脂単体品)
40 ドアトリムアッパー
41 樹脂芯材
42 表皮
50 ドアトリムセンター
51 樹脂芯材
52 表皮
60 フィニッシャー
61 木目調模様
62 中空部
100 成形金型
110 成形上型
111 昇降シリンダ
120 成形下型
120a ドアトリムアッパー対応箇所
120b ドアトリムセンター対応箇所
120c フィニッシャー対応箇所
121,122,123 ゲート
124 表皮セット用パッド
130 分割機構部
131 分割バー
132 シリンダ
133 スピルイン機構部
134 スピルアウト機構部
135 逃げ用開口
C1,C2,C3 キャビティ
M1,M2 溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の樹脂成形品(40,50)の境界部分にフィニッシャー(60)を配置することで、上記樹脂成形品(40,50)とフィニッシャー(60)とを一体化してなる多色成形品(20)を全体、あるいは一部に採用してなる自動車用内装部品(10)において、
前記多色成形品(20)における樹脂成形品(40,50)並びにフィニッシャー(60)は、同一の成形金型(100)を使用して、二色射出成形工法により一体成形されていることを特徴とする自動車用内装部品。
【請求項2】
複数の樹脂成形品(40,50)の境界部分にフィニッシャー(60)を配置することで、上記樹脂成形品(40,50)とフィニッシャー(60)とを一体化してなる多色成形品(20)を全体、あるいは一部に採用した自動車用内装部品(10)の製造方法において、
前記多色成形品(20)の成形方法は、成形金型(100)を構成する成形上下型(110,120)を型締めするとともに、成形下型(120)に内装された分割バー(131)をシリンダ駆動により上昇させ、この分割バー(131)により成形上下型(110,120)間に画成されるキャビティを複数のキャビティ(C1,C2)に区画し、各キャビティ(C1,C2)内に溶融樹脂(M1)を射出充填することにより、複数の樹脂成形品(40,50)を所要形状に成形する樹脂成形品(40,50)の成形工程と、
前記樹脂成形品(40,50)の成形工程後、分割バー(131)を下降操作し、双方の樹脂成形品(40,50)の境界部分にキャビティ(C3)を形成し、このキャビティ(C3)内に溶融樹脂(M2)を射出充填することにより、複数の樹脂成形品(40,50)と一体化するフィニッシャー(60)を成形するフィニッシャー(60)の成形工程と、
からなることを特徴とする自動車用内装部品の製造方法。
【請求項3】
前記フィニッシャー(60)の成形工程において、分割バー(131)の一方端側にスピルイン機構部(133)、他方端側にスピルアウト機構部(134)をそれぞれ設け、分割バー(131)の下降操作により形成されるキャビティ(C3)内に溶融樹脂(M2)を射出充填した後、ガスを注入してフィニッシャー(60)に中空部(62)を形成することを特徴とする請求項2に記載の自動車用内装部品の製造方法。
【請求項4】
複数の樹脂成形品(40,50)の境界部分にフィニッシャー(60)を配置することで、上記樹脂成形品(40,50)とフィニッシャー(60)とを一体化してなる多色成形品(20)を成形する成形金型(100)において、
前記成形金型(100)は、相互に型締め、型開き可能な成形上下型(110,120)と、成形下型(120)に内装され、複数のキャビティ(C1,C2)に区画する分割バー(131)とから構成され、分割バー(131)の上昇時には、複数のキャビティ(C1,C2)を良好なシール性でもって区画するとともに、分割バー(131)の下降時には、溶融樹脂(M2)のゲート(124)がキャビティ(C3)に臨むような開口(135)が分割バー(131)に設けられていることを特徴とする多色成形品の成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−173793(P2008−173793A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7131(P2007−7131)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】