説明

自動車用電子制御装置

【課題】自動車用電子制御装置の放熱性を向上させる。
【解決手段】発熱素子HEが実装された回路基板20と、回路基板20を内部に収容する筐体30と、を含んで構成される自動車用電子制御装置10において、筐体30を構成する本体32及び蓋34の内面及び外面のうち少なくとも片面に、熱の吸収及び放射を促進する絶縁材料の塗布又は電着等,アルマイト処理などの表面処理を施す。また、回路基板20の発熱素子HEに対向する蓋34の内面の少なくとも一部、即ち、発熱素子HEの対向箇所を含む部分に、受熱するための表面積を増やす連続した略同形の凹凸34Aを形成する。そして、凹凸34Aを介して、発熱素子HEで発熱した熱を蓋34へと伝達し、その外面から大気中へと放熱させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載される電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される電子制御装置は、金属製の筐体と、筐体内部に収容される回路基板と、を含んで構成される。回路基板には、半導体スイッチング素子などの発熱素子が実装されているため、発熱素子で発生した熱を筐体へと移動させ、筐体の外面から大気中へと放熱する放熱構造が採用されている。そして、発熱素子から筐体への熱移動、筐体から大気中への放熱を良好ならしめるため、特開2004−304200号公報(特許文献1)に記載されるように、筐体表面に表面処理を施す技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−304200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の提案技術では、筐体表面に施した表面処理で、発熱素子からの放射熱を吸収する構造であったため、発熱素子に対向する筐体の表面積が小さいと、発熱素子から筐体への熱移動が十分行われないおそれがあった。
そこで、本発明は従来技術の問題点に鑑み、発熱素子から筐体への熱伝達構造を見直すことで、放熱性を向上させた自動車用電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明では、電子部品を実装する回路基板と、回路基板を内部に収容する金属製の筐体と、を備えた自動車用電子制御装置において、筐体の内面及び外面のうち少なくとも片面に、熱の吸収及び放射を促進する表面処理を施す。また、回路基板の電子部品実装面に対向する筐体の内面の少なくとも一部に、表面積を増やす凹凸を形成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、回路基板で発生した熱は、凹凸を介して筐体へと伝達される。このとき、凹凸は受熱面積を増やすため、回路基板で発生した熱を筐体へと効果的に伝達することができる。そして、筐体へと伝達された熱は、その外面から大気中へと放熱される。ここで、凹凸を含む筐体の内面に表面処理を施しておけば、回路基板で発生した熱の吸収を促進することができる。一方、筐体の外面に表面処理を施しておけば、その外面から大気中への放熱効果を高めることができる。このため、自動車用電子制御装置の放熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】自動車用電子制御装置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】凹凸の第1変形例を示す平面図である。
【図4】発熱素子の他の実装方法を示す断面図である。
【図5】凹凸の第2変形例を示す断面図である。
【図6】凹凸の第3変形例を示す断面図である。
【図7】凹凸の第4変形例を示し、(A)は蓋を裏から見た平面図、(B)は蓋を表から見た平面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
図1は、自動車用電子制御装置(以下「電子制御装置」という)の一例を示す。
電子制御装置10は、電子部品としての発熱素子HEが少なくとも表面に実装された回路基板20と、回路基板20を内部に収容する筐体30と、を含んで構成される。筐体30は、回路基板20を収容するための凹部32Aが陥凹形成された本体32と、本体32の開口を閉塞する蓋34と、を含んで構成される。本体32及び蓋34は、夫々、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),鉄(Fe)などを主成分とする合金からなり、金型を用いた鋳造,プレス又は切削加工などにより製造される。
【0009】
本体32は、平面視で略角丸四角形の外形を有し、その一面から反対側に位置する他面に向けて、回路基板20を収容するための凹部32Aが陥凹形成される。本体32の四隅には、締結部材の一例としてのネジ40を用いて、蓋34を締結するための雌ネジ32Bが形成される。また、本体32の凹部32Aには、図2に示すように、締結部材の一例としてのネジ50を用いて、回路基板20を支持しつつ固定するために、先端に雌ネジが形成されたボス(台座)32Cが複数立設される。さらに、本体32の凹部32Aの周囲には、蓋34との間のシールを確保する目的で、例えば、Oリング,シリコーン,接着剤などの弾性部材60が嵌合する周溝32Dが陥凹形成される。一方、蓋34は、平面視で略角丸四角形の外形を有し、その四隅にネジ40が挿通する挿通孔が夫々開設される。
【0010】
回路基板20は、図2に示すように、発熱素子HEが実装されている部分にサーマルビア20Aが開設され、伝熱性を有する接着剤70を介在させて、本体32の凹部32Aの底面と接触している。また、発熱素子HEが接触する本体32の外面には、発熱素子HEから本体32へと伝達された熱を大気中に放熱するため、公知の放熱フィン32Eが列設される。なお、接着剤70の代わりに、伝熱性を有するグリース,放熱シートなどを用いてもよい。
【0011】
本体32及び蓋34の内面及び外面のうち少なくとも片面には、発熱素子HEからの放射熱吸収及び筐体30からの熱放射を促進するための表面処理が施される。表面処理の一例としては、絶縁材料の塗布又は電着等,アルマイト処理などが適用できる。
また、蓋34の内面には、図2に示すように、発熱素子HEを含む回路基板20で発生した熱を吸収し易くするため、一端から他端に向けて、表面積を増やす連続した略同形の凹凸34Aが形成される。凹凸34Aは、その先端が発熱素子HEを含む回路基板20に接触しない高さを有する。ここで、凹凸34Aの一例としては、例えば、フィン形状,正弦波形状,矩形波形状,のこぎり波形状,三角波形状,錐状を含む突起形状,梨肌形状などを採用することができる(以下同様)。なお、凹凸34Aは、少なくとも、発熱素子HEに対向する部分に形成すればよい。
【0012】
蓋34の凹凸34Aは、蓋34を鋳造するときの湯流れ及び蓋34の剛性の少なくとも一方を向上させる部位及び形状とすることが望ましい。また、鋳造時の湯流れを向上させるべく、図3に示すように、凹凸34Aを形成しない平坦部34Bを設けるようにし、例えば、ここに剛性を向上させるリブを形成するようにしてもよい。なお、平坦部34B及びリブの個数は、蓋34の寸法などを考慮して適宜決定すればよい。また、蓋34における直行方向の剛性がリブにより変化することを補うように、例えば、蓋34の凹凸34Aが波形状をなしている場合には、これと直行するようにリブを設けることが望ましい。
【0013】
このような電子制御装置10によれば、回路基板20の発熱素子HEで発生した熱は、次のような2つの経路を経て筐体30へと伝達され、その外面から大気中へと放熱される。即ち、発熱素子HEで発生した熱は、サーマルビア20A及び接着剤70を介して本体32へと伝達される。また、発熱素子HEで発生した熱は、凹凸34Aを介して蓋34へと伝達される。このとき、蓋34の内面には表面積を増やす凹凸34Aが形成されているため、発熱素子HEからの放射熱の吸収が促進され、発熱素子HEで発生した熱を蓋34へと効果的に伝達することができる。そして、本体32及び蓋34へと伝達された熱は、放熱フィン32E及び外面から大気中へと放熱される。ここで、凹凸34Aを含む蓋34の内面に表面処理を施しておけば、発熱素子HEで発生した熱の吸収を促進することができる。一方、本体32及び蓋34の外面に表面処理を施しておけば、その外面から大気中への放熱効果を高めることができる。
【0014】
また、本体32,蓋34の内面又は外面のうち少なくとも片面を、平面から多面又は曲面に変更したことで、電磁波の透過を抑制でき、電磁波による機器の誤動作等の影響を軽減することができる。
発熱素子HEは、図4に示すように、本体32の凹部32Aの底面に対向する回路基板20の裏面に取り付けるようにしてもよい。この場合には、凹部32Aの底面に、表面積を増やす連続した略同形の凹凸32Fが形成される。要するに、回路基板20の発熱素子HEの実装面に対向する筐体30の内面の少なくとも一部に、表面積を増やす凹凸32Fが形成される。
【0015】
さらに、発熱素子HEから受熱し易くするため、凹部32Aの底面には、回路基板20の発熱素子HEに近接する(接触しない限度において)ように、発熱素子HEへと向かって延びる、先端に凹凸32Fを有する突出部32Gを突出形成してもよい。このようにすれば、図2に示す構成の電子制御装置10の作用及び効果に加え、凹凸32Fへの放熱により、回路基板20の表面からの放熱分を軽減できることから、従来サーマルビアなどを配設して専ら放熱に用いていた回路基板20の表面は、発熱素子HEの放熱のために使用されず、ここに他の電子部品(発熱素子を含む)を実装することが可能となり、電子制御装置10の小型化を図ることができる。また、この場合、蓋34は積極的な熱伝達及び放熱等の役割が減少するため、蓋34の材料として樹脂などの熱伝導の小さい材料を使用したり、蓋34の代わりに樹脂等を充填して本体32の開口を閉塞するようにしてもよい。
【0016】
なお、突出部32Gの先端は、発熱素子HEとのクリアランスを小さくする目的で、平坦面とすることも考えられる。この場合には、突出部32Gの先端と発熱素子HEとの間に、伝熱性を有するグリースなどを介在させるようにしてもよい。
蓋34の外面であって、内面に凹凸34Aが形成されている領域に対応する外面に、表面積を増やす連続した略同形の凹凸34Cを更に形成するようにしてもよい。蓋34の外面に形成された凹凸34Cは、図5に示すように、内面の凹凸34Aに倣った同位相の形状、又は、図6に示すように、内面の凹凸34Aと線対称の形状などとすればよい。即ち、蓋34の外面に形成された凹凸34Cは、その内面に形成された凹凸34Aに対応する形状を有していればよい。なお、図4に示す電子制御装置10では、本体32の外面に凹凸を更に形成するようにすればよい。
【0017】
そして、外面の凹凸34Cを内面の凹凸34Aと同位相とすれば、蓋34の肉厚が薄くなることから、吸熱のための表面積を確保しつつ、その外面からの放熱を良好ならしめることができる。また、外面の凹凸34Cを内面の凹凸34Aと線対称とすれば、熱容量が大きくなることから、吸熱性能を向上させることができる。
さらに、蓋34の内面及び外面に形成された凹凸34A及び凹凸34Cは、図7に示すように、その形成方向が90度ずれていてもよい。このようにすれば、蓋34の熱容量を大きくしつつ、その剛性を向上させることができる。なお、凹凸34Aと凹凸34Cとは、90度に公差する構成に限らず、剛性を向上可能な交差角度をなしていればよい。
なお、本実施形態においては、各図面に記載した構成を適宜組み合わせてもよい。
【0018】
ここで、前記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)前記表面処理は、絶縁材料の塗布又は電着等,アルマイト処理などであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の自動車用電子制御装置。
この発明によれば、熱の吸収及び放射を促進する表面処理を容易に実現することができる。
【0019】
(ロ)前記凹凸は、フィン形状,正弦波形状,矩形波形状,のこぎり波形状,三角波形状,錐状を含む突起形状,梨肌形状であることを特徴とする請求項1〜請求項4及び(イ)のいずれか1つに記載の自動車用電子制御装置。
この発明によれば、熱吸収が良好な凹凸を容易に実現することができる。
【0020】
(ハ)前記筐体に、前記凹凸を分断する平坦部が形成され、前記平坦部に、リブが形成されていることを特徴とする請求項2記載の自動車用電子制御装置。
この発明によれば、平坦部を形成することで、筐体を鋳造するときの湯流れを向上させることができる。また、平坦部にリブを形成することで、筐体の剛性を向上させることができる。
【0021】
(ニ)前記筐体の外面に形成された凹凸は、前記筐体の内面に形成された凹凸に倣った同位相、前記筐体の内面に形成された凹凸と線対称、又は、前記筐体の内面に形成された凹凸と所定角度を持って交差する形状であることを特徴とする請求項4記載の自動車用電子制御装置。
この発明によれば、筐体の外面に形成された凹凸の形状を適宜選択することで、筐体の熱容量を増加、筐体の強度向上などを図ることができる。
【符号の説明】
【0022】
10 電子制御装置
20 回路基板
30 筐体
32 本体
32F 凹凸
34 蓋
34A 凹凸
34C 凹凸
HE 発熱素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を実装する回路基板と、
前記回路基板を内部に収容する金属製の筐体と、
を備えた自動車用電子制御装置において、
前記筐体の内面及び外面のうち少なくとも片面に、熱の吸収及び放射を促進する表面処理を施すと共に、前記回路基板の電子部品実装面に対向する筐体の内面の少なくとも一部に、表面積を増やす凹凸を形成したことを特徴とする自動車用電子制御装置。
【請求項2】
前記凹凸は、前記筐体を鋳造するときの湯流れ及び前記筐体の剛性の少なくとも一方を向上させる部位及び形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の自動車用電子制御装置。
【請求項3】
前記筐体の外面であって内面に凹凸が形成されている領域に対応する外面に、表面積を増やす凹凸を更に形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車用電子制御装置。
【請求項4】
前記筐体の外面に形成された凹凸は、内面に形成された凹凸に対応する形状を有していることを特徴とする請求項3記載の自動車用電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−199092(P2011−199092A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65508(P2010−65508)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】