説明

自然通気層とシステム換気装置を有する建築物

【課題】 外断熱構造における通気層は自然対流が起こり難く、また、システム換気装置は、屋内全体を新鮮な空気が満遍なく循環し、床下空間部までも同じ温湿度の快適空間にすることができなかった。
【解決手段】 戸建て住宅において、自然通気層は、外装材と断熱層との間の隙間を外壁通気層となし、屋根下地材と断熱層との間の隙間を屋根通気層となし、屋根下地材の下端は塞いで壁外装材の上端と連結することにより密封状態の通気層とし、システム換気装置は、外気の吹出口を2階の階段ホールと玄関ホールの天井面に設け、2階居室部では、吸込口を天井面に設け、流入した空気が居室部全体を満遍なく換気するようになし、1階居室部では、通気口を床面に設けるとともに、床下空間部には空気排出管の開口を配設し、1階居室部を循環した空気を、さらに床下空間部に流入させて循環させ、その後排気するようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、高気密、高断熱化された木造戸建て住宅等の建築物に係り、自然換気作用を利用した通気層を壁内及び屋根裏に設け、居室部のみならず、床下空間部を通して換気するようにした自然通気層とシステム換気装置を有する建築物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】木造戸建て住宅などの建築物においては、快適な温湿度の居住空間を確保し、また、冷暖房のエネルギーを節約するため、建築物の全体を高断熱化、高気密化することが普及している。これらの建築物では、四季を通して高断熱化、高気密化をはかるために、外壁はグラスウールや発泡樹脂などの断熱材による断熱層を室内側に配設し、室外側の壁外装材による仕上げ層との間に外壁通気層を備えている。
【0003】これらの外壁通気層は、外壁の下端に設けられた空気流入口と仕上げ層の一階及び二階の庇に相応する部分に設けられた空気流入口を有しており、棟換気フードに連通している。前記外壁下端の空気流入口と庇の空気流入口とから流入した空気は、外壁通気層を通り、屋根裏空間を経て棟換気フードから流出する。
【0004】また、快適な温湿度の居住空間を確保するために、、システム換気装置が用いられている。従来のシステム換気装置は、外部の新鮮な空気を熱交換器を介して取り込み、熱交換されて暖められた空気が、1階居室部、2階居室部における複数の吹出口から吹き出す。そして、廊下や階段ホール等に設けられた吸込口から吸引されて排気ダクトを通って排出される。1階居室部と2階居室部とは、それぞれ別個独立した排気装置を設けて換気している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記外壁通気層は、主に、室内外の断熱機能を持たせているにすぎず、外壁の上下に空気流入口があるために自然の対流が起き難くなっており、換気効率が低いという欠点があった。また、従来は、外断熱構造の場合、断熱材を各通気胴縁の間に配設していたから、通気胴縁の存在によって幅(横)方向の連続性が遮断されてしまい、断熱性能が低下してしまうという問題がある。
【0006】また、上記住宅用システム換気装置においては、各部屋の吹出口から吹き出した空気は、各部屋の吸込口から吸い込まれるため、ショートカットして部屋の隅々まで循環し難いという問題があった。また、各部屋に吹き出された空気は、押入やクローゼット等の収納部には循環することがないから、これらの中では空気が淀み、最適な温湿度を確保することができない。そのために、押入やクローゼットの中の温湿度管理が高気密、高断熱化された住宅の問題点とされていた。
【0007】さらに、1階居室部と2階居室部とに、独立した換気装置を設けているために、温度、湿度が一様でないとともに、合計の電気消費量が嵩み、施工工事も煩雑でコストアップになるという問題がある。
【0008】そこで、この発明は、自然対流が起こり易く、その断熱性能を一層向上させることができる自然通気層とシステム換気装置を有する建築物を提供することを目的とする。また、新鮮な空気が満遍なく循環し、床下空間部までも同じ温湿度の快適空間にする自然通気層とシステム換気装置を有する建築物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、この発明に係る自然通気層とシステム換気装置を有する建築物は、次のような構成とした。居室部と屋根裏空間部と床下空間部とを備えた住宅において、自然通気層とシステム換気装置とを備えている。そして、自然通気層は、次のように構成されている。即ち、壁外装材及び屋根下地材とその室内側に配設された構造用面材との間に通気胴縁および断熱層を介設し、前記断熱層は壁外装材及び屋根下地材との間に設けた隙間によって形成されてなり、前記壁外装材と断熱層との間の隙間を外壁通気層となし、屋根下地材と断熱層との間の隙間を屋根通気層となし、屋根下地材の下端は塞いで壁外装材の上端と連結することにより、前記自然通気層を密封状態の通気層としている。また、システム換気装置は、次のように構成されている。即ち、外気の吹出口を2階の階段ホールの天井面に設け、吸込口を2階居室部の天井面に設け、流入した空気が居室部全体を満遍なく換気するようにしている。前記外壁通気層は壁外装材の下端に多孔性の通気部材によって形成した空気流入口に連通しており、屋根通気層は屋根に設けた空気流出口に連通し、吸込口を設ける位置が、室内収納部の天井面とする。また、空気流出口は、屋根に棟換気フードを設け、棟換気フードにおける屋根葺き材の突き合わせ部に開口を設けることによって形成されており、吸込口を設ける位置が、各部屋の開口部から最も離間した位置の天井面とする。前記吹出口に連結する吸気管は、吸気手段を備えている。
【0010】さらに、この目的を達成するために、次のような構成とした。居室部と屋根裏空間部と床下空間部とを備えた住宅において、自然通気層とシステム換気装置とを備えている。そして、自然通気層は、次のように構成されている。即ち、壁外装材及び屋根下地材とその室内側に配設された構造用面材との間に通気胴縁および断熱層を介設し、前記断熱層は壁外装材及び屋根下地材との間に設けた隙間によって形成されてなり、前記壁外装材と断熱層との間の隙間を外壁通気層となし、屋根下地材と断熱層との間の隙間を屋根通気層となし、屋根下地材の下端は塞いで壁外装材の上端と連結することにより、前記自然通気層を密封状態の通気層とする。また、システム換気装置は、次のように構成してなる。外気の吹出口を1階の玄関ホールの天井面に設け、通気口を1階居室部の床面に設けるとともに、床下空間部には空気排出管の開口を配設し、1階居室部を循環した空気を、さらに床下空間部に流入させて循環させ、その後排気するようにした。
【0011】前記外壁通気層は壁外装材の下端に多孔性の通気部材によって形成した空気流入口に連通しており、屋根通気層は屋根に設けた空気流出口に連通し、通気口を設ける位置が室内収納部の床面とする。また、前記空気流出口は屋根に棟換気フードを設け、棟換気フードにおける屋根葺き材の突き合わせ部に開口を設けることによって形成されており、通気口を設ける位置が各部屋の開口部から最も離間した位置の床面とする。前記吸込口に連結する排気管は、排気手段を備えている。吸込口に連結する空気排出管と床下空間部に開口する空気排出管とは、分岐されて形成されており、1つの排気手段を備えている。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。参照する図面において、図1はこの発明の一実施形態に係る木造建築物の説明用部分縦断面図である。図1に示すように、この木造建築物は、布基礎11上に土台12が構築され、土台12上に軸組構造としての柱13が支持され、柱13の上に屋根構造が支持されている。
【0013】床構造は、複数の根太が格子状に組まれた床根太14上に構造用合板からなる床材17が敷設されている。この発明では、1階の居室と床下空間とは同じ温度になることから、通常使用されている床材下面の断熱材は不要である。また、床下の土間19は、砕石層の上に敷設された砂層の上面を防湿ポリエチレンフィルムで覆い、その上にコンクリート層を打設する、いわゆるベタ基礎によって形成されている。
【0014】壁構造は、柱13の室内側の面に内装下地材21を、柱13の室外側の面に構造用面材22をそれぞれ釘打ちまたはネジ止めによって取り付けてなり、さらに、構造用面材22の室外側に通気胴縁23を配設して、前記通気胴縁23に壁外装材24を釘打ちまたはネジ止めによって取り付けてなる。構造用面材22の室外側には、壁外装材24との間に外壁通気層25となる隙間を有するように、硬質発泡樹脂断熱層26を付設してなる。
【0015】また、屋根構造は、構造用面材22aの上面側に通気胴縁23aを配設し、通気胴縁23aに屋根野地板31を設ける。そして、構造用面材22aの上面側に屋根野地板31との間に屋根裏通気層29となる隙間を有するように硬質発泡樹脂断熱層26aを付設する。前記硬質発泡樹脂断熱層26aは、壁構造と屋根構造において連続して建物全体を覆っており、屋根野地板31の上面には、アスファルトフェルト等の屋根下地材32を介して屋根葺き材33が敷設されている。
【0016】上記外壁通気層25と屋根通気層29とは連通している。、外壁通気層25は、壁外装材24の下端に設けられた空気流入口35に連通している。空気流入口35は、土台12と壁外装材24との間に取り付けられた多孔性の通気部材によって形成されている。一方、屋根通気層29は、屋根の最高位置部分に設けられた棟換気フード40の空気流出口41に連通している。前記棟換気フード40における屋根葺き材33の突き合わせ部に設けた開口42を介して、屋根通気層29と空気流出口41とが連通している。
【0017】屋根下地材31の下端は塞がれており、壁外装材24の上端と連結している。従って、外壁通気層25と屋根通気層29とは完全に密封された通気層を形成している。空気流入口35から流入した空気は、外壁通気層25,屋根通気層29を通り、開口42を介して棟換気フード40の空気流出口41から流出する。
【0018】尚、図2に示すように、壁外装材24が配設される通気胴縁23、および、屋根野地板31が配設される通気胴縁23aは、、ブロック状の断熱スペーサ44を介してそれぞれ構造用面材22、22a及び柱13に固定されている。そして、構造用面材22,22aには、前記の断熱スペーサ44を埋没させ、かつ、壁外装材24または屋根野地板31との間に外壁通気層25または屋根通気層29を形成する状態で硬質発泡樹脂断熱層26、26aが付設されてなる。
【0019】硬質発泡樹脂断熱層26、26aは、現場発泡によって断熱スペーサ40を埋め込むように構造用面材22,22aの全面に形成され、壁外装材24との間に20mm程度の外壁通気層25及び屋根通気層29を形成している。前記断熱スペーサ44は、木製、樹脂製または硬質発泡樹脂製であって、構造用面材22の室外側において、柱13と通気胴縁23との間に配置される。前記の硬質発泡樹脂断熱層26は、硬質発泡樹脂断熱成形板及び現場発泡により布基礎11の外側表面にも壁構造の一部として形成するのが好ましい。
【0020】上記構成において、壁外装材24,屋根葺き材33が太陽熱で加熱されて高温になればなるほど、外壁通気層25及び屋根通気層29内の対流は激しくなる。屋根葺き材33の方がより加熱されて高温になるから、通気層内の空気は上昇し空気流出口41から排出される。空気流入口35から流入した空気は、壁外装材24,屋根葺き材33が高温になるほど空気流入口35からの流入量が多くなるから、室内側への熱の遮断効果を上げることができる。
【0021】また、現場発泡により構造用面材22の室外側の面に付設された硬質発泡樹脂断熱層26が、左右の通気胴縁23によって遮断されることなく幅方向にも連続し、建築物の壁部または屋根部の全体を覆っているから、外壁通気層25及び屋根通気層29の構成と相まって木造建築物の外断熱構造として、その断熱性能を一層向上させることができる。
【0022】次に、この発明に係るシステム換気装置の実施形態について説明する。図1に示すように、2階天井45の上面の屋根裏空間部50には、熱交換器52,吸気ファンを備えた吸気手段53及び排気ファンを備えた排気手段54が配設されている。前記熱交換器52には、屋外に開口する吸気ダクト55と排気ダクト56が連結されており、前記熱交換器52と吸気手段53及び排気手段54との間には、それぞれ吸気管57及び排気管58が連結されている。
【0023】前記熱交換器52には、2階天井45に配設した吹出口60に連結する空気供給管61と、1階天井62に配設した吹出口63に連結する空気供給管64とが連結されている。また、前記熱交換器52には、2階の適所に配設した複数の吸込口65,66、67、68に連結する空気排出管69と、床下空間部70に開口する空気排出管71とが連結されている。尚、上記実施形態では、説明の便宜上、熱交換器52、吸気手段53及び排気手段54は、独立しさせて図示したが、一体型であってもよく、あるいは、吸気手段53と排気手段54を一台のモータで駆動する一体型としてもよい。
【0024】前記吹出口60は、2階から1階に下る階段の下り口にある階段ホール74の天井面に設けられており、吹出口63は、玄関ホール75の天井面に設けられている。従って、吹出口60から吹き出された新鮮な空気は、各部屋の開口部から入り込み、各吸込口65〜68から吸い込まれて外部へ排出される。また、吹出口63から吹き出された新鮮な空気は、各部屋の開口部から入り込み、後述するように、床面に設けた通気口から床下空間部に吸引され、空気排出管71によって外部へ排出される。
【0025】次に、図示する実施形態では、2階階段ホール74を囲んで部屋A、B、C、Dが配設されており、これら部屋A、B、C、Dは、仕切壁76、77、78によって仕切られている。
【0026】部屋Aと階段ホール74との間には、ドア80によって開閉される開口部81が形成されている。このドア80は、下部に複数のスリットによる通気部を形成するか、床面との間に僅かな隙間を有するように設けられており、階段ホール74と部屋Aとの間で空気が流通するようになっている。部屋Aには、室内収納部としてクローゼット82が設けられている。クローゼット82は、下部に複数のスリットによる通気部を形成した引き違い式の戸83で開閉されるようになっている。このクローゼット82の天井面には、部屋Aの空気を外部へ排出するための吸込口65が設けられている。
【0027】前記部屋Aにおいては、吹出口60から吹き出された新鮮な空気(外気)は、ドア80の通気部を通って入り込み、部屋A内を循環してクローゼット82に流入し、吸込口65から吸い込まれる。このとき、クローゼット82全体で空気を吸い込むことになるので、吸込口65にショートカットすることなく、空気は部屋A全体を循環することになる。また、クローゼット82内の空気も吸い込まれることになるから、臭いもなく快適環境が保持される。
【0028】また、部屋Bと階段ホール74との間には、部屋Aと同様に、開口部84が形成されており、この開口部84はドア85によって開閉されるようになっている。このドア85は、前記ドア80と同様に形成されており、階段ホール74と部屋Bとの間で空気が流通するようになっている。部屋Bには、室内収納部であるクローゼット86が設けられており、複数のスリットによる通気部を形成した引き違い式の戸87で開閉されるようになっている。このクローゼット86の天井面に、部屋Bの空気を外部へ排出するための吸込口66が設けられている。
【0029】前記部屋Bにおいては、部屋Aと同様に、吹出口60から吹き出された新鮮な空気(外気)は、ドア85の通気部を通って入り込み、部屋B内を循環してクローゼット86に流入し、吸込口66から吸い込まれる。空気は、吸込口66にショートカットすることなく、部屋B全体を循環し、また、クローゼット86内の空気も吸い込みながら吸込口66から排出される。
【0030】また、部屋Cと階段ホール74との間には、開口部90が形成されており、この開口部90はドア91によって開閉されるようになっている。また、部屋Dと階段ホール74との間には、開口部92が形成されており、この開口部92はドア93によって開閉されるようになっている。このドア91、93は、前記ドア80と同様に形成されており、階段ホール74と部屋C、部屋Dとの間で空気が流通するようになっている。部屋C、部屋Dには、階段ホール74から最も離間した位置の天井面に部屋C内の空気を排出するための吸込口67、部屋D内の空気を排出するための吸込口68が設けられている。
【0031】上記のように、部屋C、部屋Dにおいても、部屋A、Bと同様に、吹出口60から吹き出された新鮮な空気(外気)は、ドア91、93の通気部を通って入り込み、部屋C、部屋D内を循環した後、吸込口67、68から吸い込まれる。吸込口67、68は、階段ホール74から最も離間した位置に設けられているので、吹出口60から吹き出された空気は部屋全体を循環することになる。
【0032】次いで、1階においては、玄関ホール75の天井面に吹出口63が設けられている。図示する実施形態では、前記玄関ホール75に続く廊下95の突き当たりに、トイレE,洗面室F,浴室Gが配設されており、さらに部屋H,J,Kが配設されている。
【0033】前記トイレEと廊下95を仕切る壁には、開口部96が形成されており、この開口部96はドア97によって開閉されるようになっている。このドア97は、上記に示すドアと同様に形成されており、下部は空気が流通するようになっている。そして、開口部96から最も離間した位置の床面にトイレEの空気を排出するための通気口98が設けられている。前記通気口98は、床下空間部70に連通している。従って、トイレEにおいては、吹出口63から吹き出された空気は、前記ドア97の通気部を通って入り込み、トイレE内を循環して通気口98から吸い込まれる。
【0034】洗面室Fと廊下95を仕切る壁には、開口部100が形成されており、この開口部100はドア101によって開閉されるようになっている。このドア101にも通気部が形成されている。この通気部を通して玄関ホール75と洗面室Fとの間で空気が流通するようになっている。開口部100から最も離間した位置の床面に洗面室Fの空気を排出するための通気口102が設けられている。
【0035】前記通気口102は、床下空間部70に連通している。従って、洗面室Fにおいては、吹出口63から吹き出された空気は、前記ドア101の通気部を通って入り込み、洗面室F内を循環して通気口102から吸い込まれる。尚、上記実施形態における通気口98、102は省略してもよい。このように、前記通気口98、102を省略した場合には、排気ダクトで排気するか、個別に設けた換気扇を用いて排気すればよい。
【0036】また、部屋Hと廊下95との間に開口部103が形成されており、この開口部103には廊下95から部屋Hに出入りするための引込戸104が取り付けられている。この引込戸104の下部には、通気部が形成されており、玄関ホール75から空気が流入するようになっている。そして、部屋Hの開口部103から最も離間した位置の床面に通気口105が設けられている。従って、吹出口63から吹き出された空気は、前記引込戸104の通気部を通って入り込み、部屋E内を循環して通気口105から吸い込まれる。
【0037】次に、部屋Jと玄関ホール75を仕切る壁には開口部106が形成されており、この開口部106はドア107によって開閉されるようになっている。このドア107の下部には通気部が形成されており、この通気部を通して吹出口63から吹き出された空気が流入する。そして、部屋Jの開口部106から最も離間した位置の床面に通気口108が設けられている。吹出口63から吹き出された空気は、前記ドア107の通気部を通って入り込み、部屋J内を循環して通気口108から吸い込まれる。
【0038】部屋Jに隣接する台所Kと部屋Jとの間を仕切る壁には、行き来するための開口部110が形成されている。台所Kにおいては、流し台の下面に通気口111設けられている。従って、部屋Jに流入した空気の一部は、前記開口部110から台所Kに流入して、通気口111から床下空間部70へと吸い込まれる。空気は、台所全体に行き渡り、台所の臭いや湿気と一緒に床下空間部70へと排出される。
【0039】床下空間部70においては、床下空間部70に流入した空気に淀みを生じさせることなく、最も効率の良い位置に空気排出管71の開口が配設されており、1階居室部から流入した空気を換気する。尚、上記実施形態では、台所Kの流し台の下面に通気口111を設ける場合について説明したが、前記通気口111は省略してもよい。前記通気口111を省略した場合には、排気ダクトで排気するか、個別に設けた換気扇を用いて排気すればよい。
【0040】また、屋根裏空間部50における排気についての説明は省略したが、屋根裏空間部50も床下空間部70と同様に構成することができる。即ち、2階居室部の吸込口65〜68の部分を通気口として屋根裏空間部50と連通させ、屋根裏空間部50に流入した空気に淀みを生じさせることなく、最も効率の良い位置に空気排出管69の開口を配設させ、2階居室部から流入した空気を換気すればよい。このように、屋根裏空間も換気することによって、床下空間部から屋根裏空間部に至るまで全館を一様に換気することができる。
【0041】上記のように、2階の階段ホールに吹出口60を設けたので、吹出口60の近傍に冷房装置113を配設すると、冷気は空気の流れによって各部屋に流入すると共に、冷気は下降するという性質から、階段等の空間部から1階居室部に流れ込み、1階居室部の全体を冷房することになる。従って、1台の冷房装置によって全館を効率よく冷房することが可能となる。
【0042】また、玄関ホール75に暖房装置114を配設すると、吹出口63から吹き出された空気の流れによって1階居室部全体の暖房が行われるっと共に、暖気は上昇するという性質から、階段等の空間部から2階居室部に流れ込み、吹出口60からの気流によって2階居室部全体を暖房することになる。従って、1台の暖房装置によって全館を効率よく暖房することが可能となる。
【0043】
【発明の効果】上述するところから明らかなように、この発明に係る自然通気層とシステム換気装置を有する建築物によれば、外壁通気層及び屋根通気層を完全な密封状態の通気層としたから、通気層内における上方と下方の温度差によって自然対流が生じ、空気はいずれの部分にも停滞または滞留することなく流れて、自然換気により壁外装材内の湿気を運び出すように流れることができる。また、屋根や外壁が太陽光によって加熱すると、通気層内の空気が自然換気され、室内側への熱の伝導されるのを防止する。
【0044】また、新鮮な空気を玄関ホールや階段ホール等の共有空間に吹き出し、室内収納部か部屋の開口部から最も離間した位置の天井に吸込口を設けたから、吹き出された空気は、部屋全体を循環しながら、効果的に換気することができる。また、1階居室部においては、通気口を室内収納部、流し台、部屋等の床面に設け、1階に流入した空気を床下空間部内を循環させた後、外部に排出するから、1階居室部と床下空間部は一様に換気される。特に、床下空間部においては、専用の特別な空調装置を設ける必要がなく、暖房、冷房、除湿、換気ができ、空気流を効率よく起こすことができる。1階居室部の空気が床下空間部に流入して換気されることによって、床の底冷え感が解消される。また、効率的な換気により、電力エネルギーも減少し、省エネを図ることができると共に、施工工事も簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る木造建築物の部分縦断面図である。
【図2】外壁の一部を切り欠いて示す拡大要部斜視図である。
【図3】2階居室部の説明用平面図である。
【図4】1階居室部の説明用平面図である。
【符号の説明】
11:布基礎
12:土台
13:柱
14:床根太
17:床材
18:断熱材
19:土間
21:内装下地材
22、22a:構造用面材
23、23a:通気胴縁
24:壁外装材
25:外壁通気層
26、26a:硬質発泡樹脂断熱層
29:屋根通気層
31:屋根野地板
32:屋根下地材
33:屋根葺き材
35:空気流入口
40:棟換気フード
41:空気流出口
42:開口
44:スペーサ
45:2階天井
50:屋根裏空間部
52:熱交換器
53:吸気手段
54:排気手段
55:吸気ダクト
56:排気ダクト
57:吸気管
58:排気管
60:2階吹出口
61:2階空気供給管
62:1階天井
63:1階吹出口
64:1階空気供給管
65〜68:2階吸込口
69:空気排出管
70:床下空間部
71:空気排出管
74:2階の階段ホール
75:玄関ホール
78:仕切壁
110:開口部
80、85、91、93、97、107:ドア
82:クローゼット
83:引き違い戸
95:廊下
98、102、105,111:通気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】 居室部と屋根裏空間部と床下空間部とを備えた住宅において、自然通気層は、壁外装材及び屋根下地材とその室内側に配設された構造用面材との間に通気胴縁および断熱層を介設し、前記断熱層は壁外装材及び屋根下地材との間に設けた隙間によって形成されてなり、前記壁外装材と断熱層との間の隙間を外壁通気層となし、屋根下地材と断熱層との間の隙間を屋根通気層となし、屋根下地材の下端は塞いで壁外装材の上端と連結することにより、前記自然通気層を密封状態の通気層とし、システム換気装置は、外気の吹出口を2階の階段ホールの天井面に設け、吸込口を2階居室部の天井面に設け、流入した空気が居室部全体及び床下を満遍なく換気するようにしたことを特徴とする自然通気層とシステム換気装置を有する建築物。
【請求項2】 外壁通気層は壁外装材の下端に多孔性の通気部材によって形成した空気流入口に連通しており、屋根通気層は屋根に設けた空気流出口に連通し、吸込口を設ける位置が、室内収納部の天井面であることを特徴とする請求項1記載の自然通気層とシステム換気装置を有する建築物。
【請求項3】 空気流出口は、屋根に棟換気フードを設け、棟換気フードにおける屋根葺き材の突き合わせ部に開口を設けることによって形成されており、吸込口を設ける位置が、各部屋の開口部から最も離間した位置の天井面であることを特徴とする請求項1又は2記載の自然通気層とシステム換気装置を有する建築物。
【請求項4】 吸込口に連結する排気管は、排気手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自然通気層とシステム換気装置を有する建築物。
【請求項5】 居室部と屋根裏空間部と床下空間部とを備えた住宅において、自然通気層は、壁外装材及び屋根下地材とその室内側に配設された構造用面材との間に通気胴縁および断熱層を介設し、前記断熱層は壁外装材及び屋根下地材との間に設けた隙間によって形成されてなり、前記壁外装材と断熱層との間の隙間を外壁通気層となし、屋根下地材と断熱層との間の隙間を屋根通気層となし、屋根下地材の下端は塞いで壁外装材の上端と連結することにより、前記自然通気層を密封状態の通気層とし、システム換気装置は、外気の吹出口を1階の玄関ホールの天井面に設け、通気口を1階居室部の床面に設けるとともに、床下空間部には空気排出管の開口を配設し、1階居室部を循環した空気を、さらに床下空間部に流入させて循環させ、その後排気するようにしたことを特徴とする自然通気層とシステム換気装置を有する建築物。
【請求項6】 外壁通気層は壁外装材の下端に多孔性の通気部材によって形成した空気流入口に連通しており、屋根通気層は屋根に設けた空気流出口に連通し、通気口を設ける位置が室内収納部の床面であることを特徴とする請求項5記載の自然通気層とシステム換気装置を有する建築物。
【請求項7】 空気流出口は屋根に棟換気フードを設け、棟換気フードにおける屋根葺き材の突き合わせ部に開口を設けることによって形成されており、通気口を設ける位置が各部屋の開口部から最も離間した位置の床面であることを特徴とする請求項5又は6記載の自然通気層とシステム換気装置を有する建築物。
【請求項8】 吹出口に連結する吸気管は、吸気手段を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の自然通気層とシステム換気装置を有する建築物。
【請求項9】 吸込口に連結する空気排出管と床下空間部に開口する空気排出管とは、分岐されて形成されており、排気手段を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の自然通気層とシステム換気装置を有する建築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2002−285646(P2002−285646A)
【公開日】平成14年10月3日(2002.10.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−87495(P2001−87495)
【出願日】平成13年3月26日(2001.3.26)
【出願人】(501001670)株式会社角大建築設計研究所 (1)
【Fターム(参考)】