説明

自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子及びその製造方法

【課題】自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成するための方法及び関連する構造を説明する。
【解決手段】本方法は、基板上に自立形部分を有するような方法でカーボンナノチューブ12を形成する段階を含む。カーボンナノチューブの自立形部分を形成する1つの方法は、基板の一部分を除去することである。カーボンナノチューブの自立形部分を形成する別の記載した方法は、第1の基板部分上に一対の金属電極24,26を配置し、金属電極に隣接した第1の基板部分の一部分を除去し、かつ第1の基板部分上に第2の基板部分を共形状に配置して溝を形成することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはナノテクノロジーの分野に関する。より具体的には、本発明は、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成するための方法及び関連する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、ダイオード、トランジスタ及び半導体回路のようなナノスケール電子素子としての使用に対するそれらの可能性により、近年多大な注目を集めてきた。構造的には、カーボンナノチューブは、円筒形に丸めた炭素の六方格子に似ており、2つのタイプ、すなわち単層タイプ及び多層タイプの1つに属することになる。これらのタイプのいずれも、それらのキラリティ(すなわち、立体構造幾何学形状)に応じて、その全体又は一部が金属又は半導体材料の挙動を示すことができる。
【0003】
半導体材料の挙動を示すカーボンナノチューブは一般的に、各種の化学的方法を使用してドープされる。つまり、異なる化学物質を使用して、カーボンナノチューブ内にp型(正孔多数キャリア)領域及びn型(電子多数キャリア)領域を作り出す。これにより、適切な電圧を印可したとき光を放出する(発光ダイオード(LED)の場合において)P−N接合が得られる。しかしながら、カーボンナノチューブをドープする化学的方法には、一般的にp型領域及びn型領域が十分に特性化されず、性能特性が低いナノスケール電子素子を生じるという問題がある。
【特許文献1】米国特許第6,423,583号公報
【非特許文献1】Al Javey et al. − High-Dielectrics for Advanced Carbon-Nanotube Transistors and Logic Gates, Nature Materials, 11-17-02
【非特許文献2】Bright-Band Gap Photoluminescence from Unprocessed Single-walled Carbon Nanotubes − Lefebvre, et al.. The American Physical Society .−pp 217401-217401-4-May 2003
【非特許文献3】Carbon Nanotube P-n Junction Diodes − Lee et al − American Institute of physics − pps. 145147--July 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、必要とされるのは、十分に特性化したp型領域及びn型領域を有し、例えば高い性能特性を有する光ダイオード、光検出器、光起電素子、センサ及び電源素子のようなナノスケール電子素子を作り出すことを可能にする、静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成するための方法及び関連する構造である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、その少なくとも一部分が自立形になるように基板上に配置されたカーボンナノチューブを含む、静電ドープカーボンナノチューブ素子を提供する。
【0006】
本発明の実施形態は、静電ドープカーボンナノチューブ素子を含む光起電素子を提供する。
【0007】
本発明の実施形態は、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を提供する。本方法は、基板上にカーボンナノチューブを形成する段階を含む。カーボンナノチューブは、第1の端部と、第2の端部と、それらの間の自立形部分とを含む。
【0008】
これらの及び他の利点及び特徴は、添付の図面に関連してなした本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより容易に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の記載した実施形態は、十分に特性化したp型領域及びn型領域を有し、高い性能特性を有する光起電ダイオード、電源素子、光ダイオード、光検出器、発光ダイオード(「LEDs」)及び同種のもののようなナノスケール電子素子を作り出すことを可能にする、静電的にドープされた(静電ドープ)カーボンナノチューブ素子を形成するための方法及び関連する構造を提供する。静電ドープカーボンナノチューブ素子の1つの特定の形態は、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子である。より具体的には、本発明の実施形態は、複数のバイアス電極から分離された複数のドーピング電極を使用することを行う。従って、カーボンナノチューブのドーピングは、複数のバイアス電極の各々のバイアスを変えることによって、細かく調整することができる。記載した方法及び関連する構造により、P−N接合、P−I−P接合、P−I−N接合、N−I−P接合、N−I−N接合、P−N−P接合又はN−P−N接合を有するカーボンナノチューブを得ることができる利点がある。
【0010】
図1を参照すると、静電ドープカーボンナノチューブ素子10を示しており、静電ドープカーボンナノチューブ素子10は、第1の端部14と第2の端部16とを有するカーボンナノチューブ12を含む。カーボンナノチューブ12は、単層カーボンナノチューブ(「SWCNT」)又は多層カーボンナノチューブ(「MWCNT」)のいずれかとすることができる。カーボンナノチューブ12は、約0.1ミクロン〜約10ミクロンの長さ及び約0.4ナノメートル(nm)〜約20ナノメートル(nm)の直径を有するが、他の適当な寸法を使用することもできる。一般的に、カーボンナノチューブは、そのキラリティ(すなわち、立体構造幾何学形状)に応じて金属又は半導体材料として作用することができる。本発明のカーボンナノチューブ12は、半導体材料として作用するのが好ましい。カーボンナノチューブ12の第1の端部14は、第1の金属接点18に隣接しかつ該第1の金属接点18と直接電気接触した状態で配置される。同様に、カーボンナノチューブ12の第2の端部16は、第2の金属接点20に隣接しかつ該第2の金属接点20と直接電気接触した状態で配置される。第1の金属接点18及び第2の金属接点20は各々、Ti、Mo、Au、Cr又は同種のもので作られ、その各々が、約0.1ミクロン×約10ミクロン〜約1ミクロン×約10ミクロンの面積又は寸法を有する。一般的に、カーボンナノチューブ12の第1の端部14及びカーボンナノチューブ12の第2の端部16と適切な電気接触が得られるあらゆる寸法を使用することができる。第1の金属接点18及び第2の金属接点20は、それぞれカーボンナノチューブ12の第1の端部14及びカーボンナノチューブ12の第2の端部16の上方又は下方のいずれかに配置することができる。
【0011】
第1の金属接点18及び第2の金属接点20は、誘電体材料22の表面上に配置される。誘電体材料22には、SiO、Si、Al、ZrO又は同種のものが含まれる。第1の金属電極24及び第2の金属電極26は、それぞれ第1の金属接点18及び第2の金属接点20に隣接しかつ該第1の金属接点18及び第2の金属接点20からある距離を置いて誘電体材料22内部に配置される。この分離の故に、第1の金属電極24は、カーボンナノチューブ12の第1の端部14に容量結合され、また第2の金属電極26は、カーボンナノチューブ12の第2の端部16に容量結合される。第1の金属電極24とカーボンナノチューブ12の第1の端部14との間の距離及び第2の金属電極26とカーボンナノチューブ12の第2の端部16との間の距離は、それぞれ約2nm〜約100nmであるのが好ましい。第1の金属電極24及び第2の金属電極26は各々、Mo、Ti、Pt、Au、Cr又は同種のもので作られ、その各々が、約0.1ミクロン×約10ミクロン〜約1ミクロン×約10ミクロンの面積又は寸法を有する。第1の金属電極24及び第2の金属電極26の面積又は寸法は、該第1の金属電極24と第2の金属電極26との間の望ましい間隔を達成するように選択することができる利点がある。この間隔の重要性を以下に詳細に説明する。第1の金属電極24は、第2の金属電極から約100nm〜約1ミクロンの距離だけ分離されるのが好ましい。
【0012】
誘電体材料22は、Si、SiC又は同種のもののような半導体材料28の表面上に配置される。これに代えて、誘電体材料22は、Al、Cr、Mo、Ti、Pt又は同種のもののような金属層28の表面上に配置される。上述のように、カーボンナノチューブ12は、第1の端部14と第2の端部16とを有する。従って、中央部分30は、カーボンナノチューブ12の第1の端部14とカーボンナノチューブ12の第2の端部16との間に配置される。本発明の1つの実施形態では、半導体材料28の一部分は、誘電体材料22、第1の金属電極24の一部分及び第2の金属電極26の一部分が該半導体材料28とカーボンナノチューブ12の中央部分30との間に配置された状態で、カーボンナノチューブ12の中央部分30に隣接しかつ該中央部分30からある距離を置いて配置される。本発明の別の実施形態では、半導体材料28の一部分は、誘電体材料22のみが該半導体材料28とカーボンナノチューブ12の中央部分30との間に配置された状態で、カーボンナノチューブ12の中央部分30に隣接しかつ該中央部分30からある距離を置いて配置される。今一度言うが、この差異は、第1の金属電極24と第2の金属電極26との間の間隔に関係し、その重要性を以下に詳細に説明する。
【0013】
図2を参照すると、静電ドープカーボンナノチューブ素子10(図1)を形成するための構造を回路図によって示す。第1の金属接点(「M1」)18は、カーボンナノチューブ12の第1の端部14に電気結合され、また第2の金属接点(「M2」)20は、カーボンナノチューブ12の第2の端部16に電気結合される。同様に、第1の金属電極(「VC1」)24は、カーボンナノチューブ12の第1の端部14に容量結合され、また第2の金属電極(「VC2」)26は、カーボンナノチューブ12の第2の端部16に容量結合される。この点において、VC1 24及びVC2 26は、それぞれ第1のゲート及び第2のゲートを形成する。上述の本発明の別の実施形態では、半導体材料(「SI」)28は、誘電体材料22(図1)のみが該半導体材料28とカーボンナノチューブ12の中央部分30との間に配置された状態で、カーボンナノチューブ12の中央部分30に容量結合されて、そうでなければ存在しなかった第3のゲートを形成する。
【0014】
動作において、VC1 24には第1のバイアスが印加されて、カーボンナノチューブ12の第1の端部14の静電ドーピングをもたらす。同様に、VC2 26には第2のバイアスが印加されて、カーボンナノチューブ12の第2の端部16の静電ドーピングをもたらす。印加したバイアスに応じて、カーボンナノチューブ12の第1の端部14及びカーボンナノチューブ12の第2の端部16は各々、p型半導体(正孔多数キャリア)又はn型半導体(電子多数キャリア)になることができる。カーボンナノチューブ12の第1の端部14がp型半導体になりまたカーボンナノチューブ12の第2の端部16がn型半導体になった場合に又はその逆の場合に、P−N接合が得られる。P−N接合を使用して、当業者には公知のように、発光ダイオード(「LED」)を形成することができる。静電ドープカーボンナノチューブ素子10を形成するための構造の好ましい電圧範囲は、VC1 24及びVC2 26において約+/−1V〜約+/−30Vである。
【0015】
上述の本発明の別の実施形態では、SI28とカーボンナノチューブ12の中央部分30との間に誘電体材料22のみが配置された状態で、SI28を使用して、カーボンナノチューブ12の中央部分30のドーピングを調節する。従って、カーボンナノチューブ12の中央部分30は、p型半導体、I型(真性)半導体又はn型半導体になることができる。これによって、以下の表1に要約する多くの可能な構成及び当業者には公知の多くの可能な素子が得られる。
【0016】
【表1】

図3及び図4を参照すると、本発明の他の実施形態では、静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法は、最初に上述の半導体層28を準備する段階を含む。今一度言うが、半導体層28は、Si、SiC又は同種のものを含む。これに代えて、Al、Cr、Mo、Ti、Pt又は同種のもののような金属層28とすることもできる。半導体層28は、約1ミクロン〜約550ミクロンの厚さを有するのが好ましい。第1の絶縁層40は、熱酸化物、化学気相蒸着誘電体、プラズマ化学気相蒸着誘電体、低圧化学気相蒸着誘電体又は同種のものを使用して、半導体層28の表面上に蒸着させるか又は成長させる。第1の絶縁層40には、SiO、Si、Al、ZrO又は同種のものが含まれる。第1の絶縁層40は、約2nm〜約100nmの厚さを有するのが好ましい。第1の絶縁層40の蒸着又は成長の後に、第1の絶縁層40の表面上に金属電極材料をパターン化しかつ蒸着させて、上述の第1の金属電極24及び第2の金属電極26を形成する。金属電極材料には、Mo、Ti、Pt、Au、Cr又は同種のものが含まれる。第1の金属電極24及び第2の金属電極26は各々、約10nm〜約100nmの厚さを有するのが好ましい。
【0017】
図5を参照すると、次に、化学気相蒸着誘電体、プラズマ化学気相蒸着誘電体、低圧化学気相蒸着誘電体又は同種のものを使用して、第1の金属電極24及び第2の金属電極26を実質的に囲んで第1の絶縁層40の表面上に、第2の絶縁層42を蒸着させるか又は成長させる。第2の絶縁層42には、SiO、Si、Al、ZrO又は同種のものが含まれる。第2の絶縁層42は、約2nm〜約100nmの厚さを有するのが好ましい。全体として、第1の絶縁層40及び第2の絶縁層42は、上述の誘電体層22を形成する。第2の絶縁層42の蒸着又は成長の後に、第2の絶縁層42の表面上に金属接点材料をパターン化しかつ蒸着させて、上述の第1の金属接点18及び第2の金属接点20を形成する。金属接点材料には、Ti、Mo、Au、Cr又は同種のものが含まれる。第1の金属接点18及び第2の金属接点20は各々、約10nm〜約100nmの厚さを有するのが好ましい。
【0018】
図6を参照すると、次に、カーボンナノチューブを成長させるのに適した触媒材料44を、例えば当業者には公知のリフトオフ法を使用して第1の金属接点18及び第2の金属接点20の表面上にパターン化しかつ被着させる。触媒材料44は、薄膜又はナノ粒子の形態を取ることができ、Ni、Fe、Co、Mo、硝酸鉄内のAl又は同種のものを含む。触媒材料44は、約0.1nm〜約1nmの厚さを有するのが好ましい。第1の金属接点18及び第2の金属接点20の表面上に触媒材料44を被着させるのに先だって、第1の金属接点18及び第2の金属接点20並びに誘電体層22の表面は、フォトレジストで選択的に被覆することができる。このフォトレジストは、触媒材料44の被着の適切なパターンを形成し、その後除去される。触媒材料は、第1の金属接点18及び第2の金属接点20の1つのみの表面上に選択的に被着させることができることに注目されたい。触媒材料44の被着の後に、図7に示すように上述のカーボンナノチューブ12を成長させる。カーボンナノチューブ12は、誘電体層22の表面に対してほぼ平行に整列するのが好ましい。一般的に、カーボンナノチューブ12は、約700℃〜約1000℃で、メタン源又はアセチレン源のような流動炭素(炭化水素)源に結合した化学気相蒸着(CVD)チューブの形態で成長する。触媒材料44は、これらの温度において複数の「島」を形成し、炭素で過飽和された状態になる。最終的には、これらの触媒の島からカーボンナノチューブ12が成長する。このプロセスは、当業者には公知である。
【0019】
図8を参照すると、カーボンナノチューブ112を有する自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子110を示す。自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子110は、光起電素子、センサ及び/又は電源素子において有用となる可能性がある。図示するようにカーボンナノチューブ112を懸架させたとき、得られたダイオードは、より理想的な挙動を示し、そのような構造は、一般的な電子素子、より具体的には光電池に対するより優れた適性を有する。カーボンナノチューブ112は、第1の端部114と第2の端部116とを有する。カーボンナノチューブ112は、第1の金属接点18と第2の金属接点20との間で延びかつ第1の端部114を介して第1の金属接点18とまた第2の端部116を介して第2の金属接点20と接触する。カーボンナノチューブ112は、単層カーボンナノチューブ(「SWCNT」)又は多層カーボンナノチューブ(「MWCNT」)のいずれかとすることができる。カーボンナノチューブ112は、カーボンナノチューブ12(図1)と物理的外観、構成及び寸法が類似している。第1の金属接点18及び第2の金属接点20は、Ti、Mo、Au、Cr又は同種のものを含むことができ、その各々が、約0.1ミクロン×約10ミクロン〜約1ミクロン×約10ミクロンの面積又は寸法を有することができる。しかしながら、一般的に、カーボンナノチューブ112の端部との適切な電気接触をもたらすあらゆる寸法を使用することができることを理解されたい。第1の金属接点18及び第2の金属接点20は、カーボンナノチューブ112の端部114、116の上方又は下方のいずれかに配置することができる。
【0020】
第1の金属接点18及び第2の金属接点20は、例えば誘電体材料のような基板22の表面上に配置される。誘電体材料22は、SiO、Si、Al、ZrO又は同種のもので形成することができる。第1の金属電極24及び第2の金属電極26が、それぞれ第1の金属接点18及び第2の金属接点20に隣接しかつ該第1の金属接点18及び第2の金属接点20からある距離を置いて誘電体材料22内部に配置される。この分離の故に、第1の金属電極24は、カーボンナノチューブ112の第1の端部114に容量結合され、また第2の金属電極26は、カーボンナノチューブ112の第2の端部116に容量結合される。特定の実施形態では、第1の金属電極24とカーボンナノチューブ112の第1の端部114との間の距離及び第2の金属電極26とカーボンナノチューブ112の第2の端部116との間の距離は、それぞれ約2nm〜約100nmである。第1の金属電極24及び第2の金属電極26は各々、Mo、Ti、Pt、Au、Cr又は同種のもので作られ、その各々が、約0.1ミクロン×約10ミクロン〜約1ミクロン×約10ミクロンの面積又は寸法を有する。第1の金属電極24及び第2の金属電極26の面積又は寸法は、第1の金属電極24と第2の金属電極26との間の望ましい間隔を達成するように選択することができる利点がある。この間隔の重要性は、既に詳細に説明した。
【0021】
誘電体材料22は、基板材料28の表面上に配置される。基板材料28は、Si、SiC又は同種のもので形成した半導体材料とすることができる。それに代えて、基板材料28は、Al、Cr、Mo、Ti、Pt又は同種のものを含む層のような金属層28とすることができる。溝128が、誘電体材料22内に形成され、従ってカーボンナノチューブ112がその位置で自立形になるのを可能にする。カーボンナノチューブ112が誘電体材料22から自立形になるのを可能にすることによって、P−N接合ダイオードとしてカーボンナノチューブ112にバイアスをかけたときに、発光を強化することが可能になる。
【0022】
特に図9を参照すると、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子110を回路図によって示す。第1の金属接点(「M1」)18は、カーボンナノチューブ112の第1の端部114に電気結合され、また第2の金属接点(「M2」)20は、カーボンナノチューブ112の第2の端部116に電気結合される。同様に、第1の金属電極(「VC1」)24は、カーボンナノチューブ112の第1の端部114に容量結合され、また第2の金属電極(「VC2」)26は、カーボンナノチューブ112の第2の端部116に容量結合される。この点において、VC1 24及びVC2 26は、それぞれ第1のゲート及び第2のゲートを形成する。
【0023】
動作において、VC1 24には第1のバイアスが印加されて、カーボンナノチューブ112の第1の端部114の静電ドーピングをもたらす。同様に、VC2 26には第2のバイアスが印加されて、カーボンナノチューブ112の第2の端部116の静電ドーピングをもたらす。印加したバイアスに応じて、カーボンナノチューブ112の第1の端部114及びカーボンナノチューブ112の第2の端部116は各々、p型半導体(正孔多数キャリア)又はn型半導体(電子多数キャリア)になることができる。カーボンナノチューブ112の第1の端部114がp型半導体になりまたカーボンナノチューブ112の第2の端部116がn型半導体になった場合に又はその逆の場合に、P−N接合が得られる。P−N接合を使用して、発光ダイオード(「LED」)、光起電ダイオード、電源素子、光ダイオード、光検出器又は同種のものを形成することができる。静電ドープカーボンナノチューブ素子10を形成するための構造の好ましい電圧範囲は、VC1 24及びVC2 26において約+/−1V〜約+/−30Vである。
【0024】
単層カーボンナノチューブは、直接遷移型バンドギャップ半導体であり、従って自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子110の1つ又はそれ以上は、光起電素子、センサ及び/又は電源素子に利用することができる。図10は、単一の自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子110の光起電力応答性を示す。グラフは、次第に照度を高めた下での、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子110の電流電圧特性の変化を示す。第4象限に向って進展する変化は、より大きい電力がダイオードによって発生していることを意味する。
【0025】
次に図11〜図16を参照すると、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子110を形成するためのプロセス段階を示す。最初の段階(図11及び図12)として、半導体層28の表面上に絶縁層40を蒸着させるか又は成長させる。第1の絶縁層40は、熱酸化物、化学気相蒸着誘電体、プラズマ化学気相蒸着誘電体、低圧化学気相蒸着誘電体又は同種のものを使用して形成することができる。第1の絶縁層40は、SiO、Si、Al、ZrO又は同種のものを含むことができる。第1の絶縁層40は、約2nm〜約1000nmの厚さを有するのが好ましい。第1の絶縁層40の蒸着又は成長の後に、第1の絶縁層40の表面上に金属電極材料をパターン化しかつ蒸着させて、上述の第1の金属電極24及び第2の金属電極26を形成する。金属電極材料は、Mo、Ti、Pt、Au、Cr又は同種のもので形成することができる。第1の金属電極24及び第2の金属電極26は各々、約10nm〜約100nmの厚さを有するのが好ましい。
【0026】
図13を参照すると、次に、第1の金属電極24及び第2の金属電極26を実質的に囲んで第1の絶縁層40の表面上に、第2の絶縁層42を蒸着させるか又は成長させる。第2の絶縁層42は、化学気相蒸着誘電体、プラズマ化学気相蒸着誘電体、低圧化学気相蒸着誘電体又は同種のものを使用して形成することができる。第2の絶縁層42には、SiO、Si、Al、ZrO又は同種のものが含まれる。第2の絶縁層42は、約2nm〜約100nmの厚さを有するのが好ましい。全体として、第1の絶縁層40及び第2の絶縁層42は、上述の誘電体層22を形成する。第2の絶縁層42の蒸着又は成長の後に、第2の絶縁層42の表面上に金属接点材料をパターン化しかつ蒸着させて、上述の第1の金属接点18及び第2の金属接点20を形成する(図15)。金属接点材料は、Ti、Mo、Au、Cr又は同種のものを含むことができる。第1の金属接点18及び第2の金属接点20は各々、約10nm〜約100nmの厚さを有するのが好ましい。
【0027】
図14を参照すると、次に、カーボンナノチューブを成長させるのに適した触媒材料44を、例えば当業者には公知であるリフトオフ法を使用して第1の金属接点18及び第2の金属接点20の表面上にパターン化しかつ被着させる。触媒材料44は、薄膜又はナノ粒子の形態を取ることができ、Ni、Fe、Co又はMoのような元素或いは硝酸鉄内のAlのような混合物或いは同種のものを含むことができる。幾つかの実施形態では、触媒材料44は、約0.1nm〜約1nmの厚さを有するのが好ましい。第1の金属接点18及び第2の金属接点20の表面上に触媒材料44を被着させるのに先だって、第1の金属接点18及び第2の金属接点20並びに誘電体層22の表面は、フォトレジストで選択的に被覆することができる。フォトレジストは、触媒材料44の被着の適切なパターンを形成する働きをし、その後除去される。触媒材料44は、第1の金属接点18及び第2の金属接点20の1つのみの表面上に選択的に被着させることができることに注目されたい。
【0028】
触媒材料44の被着の後に、図15に示すように上述のカーボンナノチューブ112を成長させる。カーボンナノチューブ112は、誘電体層22の表面に対してほぼ平行に整列するのが好ましい。一般的に、カーボンナノチューブ112は、約700℃〜約1000℃で、メタン源又はアセチレン源のような流動炭素(炭化水素)源に結合した化学気相蒸着(CVD)チューブの形態で成長する。触媒材料44は、これらの温度において複数の「島」を形成し、炭素で過飽和された状態になる。最終的には、これらの触媒の島からカーボンナノチューブ112が成長する。このプロセスは、当業者には公知である。最後に図16に示すように、誘電体層22内に溝128をエッチングして、カーボンナノチューブ112が自立形になるのを可能にする。
【0029】
次に図17〜図21を参照すると、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子110を形成する別の方法を示す。最初の段階(図17)として、半導体層28の表面上に絶縁層40を蒸着させるか又は成長させる。第1の絶縁層40は、熱酸化物、化学気相蒸着誘電体、プラズマ化学気相蒸着誘電体、低圧化学気相蒸着誘電体又は類似のものを使用して形成することができる。第1の絶縁層40の蒸着又は成長の後に、第1の絶縁層40の表面上に金属電極材料をパターン化しかつ蒸着させて、上述の第1の金属電極24及び第2の金属電極26を形成する。
【0030】
図18を参照すると、第1の絶縁層40の一部分を除去して、変更した第1の絶縁層40aを形成する。適当な除去プロセスには、エッチング法及びリソグラフィー法が含まれる。第1及び第2の金属電極24、26は、エッチング及びリソグラフィー処理の間にマスクとして使用することができる。第1の絶縁層40aをエッチングするための適当なエッチング液には、SiO用の緩衝酸化物エッチのようなウエットエッチャント又はプラズマドライエッチャントが含まれる。エッチングプロセスによって第1及び第2の金属電極24、26の間に空きスペース127が形成される。図21を参照すると、次に、第1の金属電極24及び第2の金属電極26を実質的に囲んで、エッチングした第1の絶縁層40aの表面上に、第2の絶縁層42aを蒸着させるか又は成長させる。第2の絶縁層42aは、エッチングした第1の絶縁層40aと共形である。空きスペース127における第2の絶縁層42aの共形(conformance)によって、第1及び第2の金属電極24、26の間に溝128を形成することが可能になる。第2の絶縁層42aの蒸着又は成長の後に、第2の絶縁層42aの表面上に金属接点材料をパターン化しかつ蒸着させて、第1の金属接点18及び第2の金属接点20を形成する。
【0031】
図20を参照すると、次に、カーボンナノチューブを成長させるのに適した触媒材料44を、例えば当業者には公知であるリフトオフ法を使用して第1の金属接点18及び第2の金属接点20の表面上にパターン化しかつ被着させる。第1の金属接点18及び第2の金属接点20の表面上に触媒材料44を被着させるのに先だって、第1の金属接点18及び第2の金属接点20並びに誘電体層22の表面は、フォトレジストで選択的に被覆することができる。フォトレジストは、触媒材料44の被着の適切なパターンを形成する働きをし、その後除去される。触媒材料44は、第1の金属接点18及び第2の金属接点20の1つのみの表面上に選択的に被着させることができることに注目されたい。触媒材料44の被着の後に、図21に示すように上述のカーボンナノチューブ112を成長させる。
【0032】
本発明を限られた数の実施形態のみに関連して詳細に説明したが、本発明はそのような開示した実施形態に限定されるものではないことを容易に理解されたい。むしろ、本発明は、これまで説明しなかったが本発明の技術思想及び技術的範囲に属する変形、変更、置換又は均等構成をいくらでも組み入れるように修正することができる。例えば、本発明の実施形態は単一の静電ドープカーボンナノチューブに関して説明したが、静電ドープカーボンナノチューブ12、112の配列又は一組を配置して多数の電源素子を形成することができることを理解されたい。さらに、本発明の様々な実施形態を説明したが、本発明の態様は、説明した実施形態の幾つかのみを含む可能性があることを理解されたい。従って、本発明は、上述の説明によって限定されると見做すべきではなく、特許請求の範囲の技術的範囲によってのみ限定される。
【0033】
本特許によって保護されることを望みかつ新規なものは、特許請求の範囲に記載したものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態により作製した静電ドープカーボンナノチューブ素子の断面図。
【図2】図1の静電ドープカーボンナノチューブ素子を表わす回路図。
【図3】本発明の実施形態による、静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図4】本発明の実施形態による、静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図5】本発明の実施形態による、静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図6】本発明の実施形態による、静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図7】本発明の実施形態による、静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図8】本発明の実施形態により作製した自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子の断面図。
【図9】図8の自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を表わす回路図。
【図10】図8の自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子により得られた光起電力を示すグラフ。
【図11】本発明の実施形態による、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図12】本発明の実施形態による、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図13】本発明の実施形態による、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図14】本発明の実施形態による、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図15】本発明の実施形態による、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図16】本発明の実施形態による、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図17】本発明の実施形態による、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図18】本発明の実施形態による、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図19】本発明の実施形態による、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図20】本発明の実施形態による、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【図21】本発明の実施形態による、自立形静電ドープカーボンナノチューブ素子を形成する方法を示す断面図。
【符号の説明】
【0035】
10、110 静電ドープカーボンナノチューブ素子
12、112 カーボンナノチューブ
14、114 カーボンナノチューブの第1の端部
16、116 カーボンナノチューブの第2の端部
18 第1の金属接点
20 第2の金属接点
22誘電体層
24 第1の金属電極
26 第2の金属電極
28 半導体層
40 絶縁層
44 触媒材料
128 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その少なくとも一部分が自立形になるように基板(22)上に配置されたカーボンナノチューブ(112)を含む、静電ドープカーボンナノチューブ素子(10)。
【請求項2】
前記基板が溝(128)を含むことを特徴とする請求項1記載の静電ドープカーボンナノチューブ素子。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブが、第1の端部(114)と第2の端部(116)とを含み、該素子が、
前記カーボンナノチューブの第1の端部に直接隣接して配置された第1の金属接点(18)と、
前記カーボンナノチューブの第2の端部に直接隣接して配置された第2の金属接点(20)と、をさらに含み、
前記カーボンナノチューブが、前記第1及び第2の金属接点に電気結合されていることを特徴とする請求項1記載の静電ドープカーボンナノチューブ素子。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブの第1の端部に隣接しかつ該第1の端部からある距離を置いて前記基板内に配置された第1の金属電極(24)と、
前記カーボンナノチューブの第2の端部に隣接しかつ該第2の端部からある距離を置いて前記基板内に配置された第2の金属電極(26)とをさらに含み、前記第1の金属電極が、前記カーボンナノチューブの第1の端部に容量結合され、第1のバイアスを受けて前記カーボンナノチューブの第1の端部を静電ドープするように動作可能であり、
前記第2の金属電極が、前記カーボンナノチューブの第2の端部に容量結合され、第2のバイアスを受けて前記カーボンナノチューブの第2の端部を静電ドープするように動作可能であることを特徴とする請求項3記載の静電ドープカーボンナノチューブ素子。
【請求項5】
前記第1の金属電極及び第2の金属電極が各々、Mo、Ti、Pt及びAuからなる群から選択された金属を含むことを特徴とする請求項3記載の静電ドープカーボンナノチューブ素子。
【請求項6】
前記第1のバイアスが、前記カーボンナノチューブの第1の端部をp型半導体(正孔多数キャリア)又はn型半導体(電子多数キャリア)のいずれかにするように動作可能であることを特徴とする請求項3記載の静電ドープカーボンナノチューブ素子。
【請求項7】
前記第2のバイアスが、前記カーボンナノチューブの第2の端部をp型半導体(正孔多数キャリア)又はn型半導体(電子多数キャリア)のいずれかにするように動作可能であることを特徴とする請求項3記載の静電ドープカーボンナノチューブ素子。
【請求項8】
請求項1の静電ドープカーボンナノチューブ素子を含むことを特徴とする光起電素子。
【請求項9】
請求項1の静電ドープカーボンナノチューブ素子を含むことを特徴とする電源素子。
【請求項10】
請求項1の静電ドープカーボンナノチューブ素子を含むことを特徴とするセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−245566(P2006−245566A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38732(P2006−38732)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】