説明

航空巡視支援装置

【課題】航空巡視を安全に行え、かつ巡視に必要な情報を自動的に聞き取れ、巡視が確実に能率よく行えるようにする航空巡視支援装置を提供する。
【解決手段】飛行経路のうち巡視を行う巡視区間Prと、空輸区間Trと、巡視対象を設定する経路設定手段と、巡視区間Pr内における個々の鉄塔に航空機が近接したとき鉄塔の識別と過去の巡視記録を案内すると共に現在の巡視結果を記録する巡視支援手段と、航空機が巡視区間Prを飛行中は巡視支援手段を起動するモード切換え手段とからなる。モード切換え手段により航空機が巡視区間Pr近づいたときは巡視支援手段を自動的に起動するので、巡視対象に航空機が接近するだけで確実に巡視を行える。また、巡視支援手段は、航空機が接近した個々の鉄塔について、識別を案内すると共に過去の巡視記録も案内するので、巡視員は巡視に必要な情報を自動的に入手できるので巡視対象の監視に注意を集中できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空巡視支援装置に関する。さらに詳しくは、ヘリコプターや軽飛行機、飛行船、グライダー、無人飛行機その他の航空機を使って、送電線、鉄塔、変電所やダム等の各種施設に設置された種々の設備、これらの設備の付近の状況、送電線の下方の状況等を巡視し、撮影、測量などをする際に、これらの作業を支援する巡視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
全国の送電線総延長は約10万kmもの長さであり、この送電線に対して年間数回の巡視(パトロール)が法的に定められているが、ほとんどの送電線とこれを支える鉄塔は山間部に立地しており、地上からの巡視だけではカバーしきれない。このためヘリコプター等による空中からの巡視作業(以下、航空巡視という)が実施されている。この航空巡視では、目視またはビデオ撮影により、各設備(鉄塔、電線、碍子等)の異常の有無まで送電線の下方の状況(以下、線下状況という)などを調査している。
【0003】
上記の航空巡視を的確に行うには、つぎのような課題を解決する必要がある。
(1)航空巡視において巡視場所を特定するためには、鉄塔番号等を認識する必要がある。 この鉄塔番号の認識は鉄塔頂部に設置されている番号プレートを肉眼で読み取ることによって行われている。この方法では、番号プレートが読み取れなかったときは、ヘリコプター等を旋回もしくはホバリングして鉄塔に接近させ確認を行っており、機体が送電線や鉄塔に接触する恐れがあり危険を伴っている。
(2)複数線路の送電線が同一地区に密集して配置されている箇所(送電線の交差、並走している線路)の巡視や、送電線と交差している索道には注意が必要だが、線が細く認識しずらいため危険性が高い。
(3)巡視員は、前回までの巡視記録を参照しながら、鉄塔や線下状況等の確認を行っているが、この番号確認作業や前回記録のメモ等の読み取りには、手が塞がれ、視線を巡視対象に十分向けられない状況での巡視作業となるため、本来の巡視作業に注意力を集中できないという問題がある。
また、送電線巡視以外においても、道路や河川等の調査にヘリコプターが使用されているが、これらの調査においても、前回調査データや調査ポイントデータなどのメモ等を読み取る場合があり同様の問題がある。
(4)飛行中、前回巡視結果を確認するのに、写真、資料を確認する必要があるが、これらの資料が風圧により飛散する危険があった。
(5)鉄塔や送電線の線下状況を巡視した結果、地滑りや火災を発見しても、それがどの程度の規模で、どの場所か、具体的詳細に記録することができない。このため、巡視員の無線での報告によっているため、状況を正確に把握することができない。また、送電線の途中で、電線の素線切れ等の不具合が発見されても、どの位置か正確に記録できなかった。
(6)畜舎、人家等の上空を飛行するため、苦情等のトラブルを未然に防止できない。
【0004】
ところで、航空巡視用の従来技術としてはつぎのものがある。
a)運航経路や離脱距離、安全高度を視覚的に表示することによって、ヘリコプターの運航安定性を増すために、汎地球測位システムから受信された現在位置や高度値、入力された地形情報を用いる航空用運航情報装置(特許文献1参照)。
b)巡視コース上の鉄塔と鉄塔間を結ぶ送電線に対し異常接近した場合は警告を発するようにするため、GPSから取得した現在位置と予め設定しておいた危険空域情報とを対比する巡視コース監視装置(特許文献2参照)。
c)ヘリコプター等の航行により現在位置を視点とする鳥瞰図を描画し表示する搭載用航法装置(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−221108号
【特許文献2】特開2005−274284号
【特許文献3】特開平11−44551号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、上記従来技術a)では、運航経路や離脱距離等を視覚的に表示することは可能であるが、特定の送電線を認識したり、巡視に必要な注意事項をその場で提供できるものではない。また、従来技術b)でも異常接近を防止することはできても、やはり特定の送電線を認識したり、巡視に必要な注意事項をその場で提供できるものではない。さらに、従来技術c)では、飛行中の現在地点を確認できるだけである。
したがって、いずれの従来技術によっても、前記(1)〜(6)の問題を解消することはできなかった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、航空巡視を安全に行え、かつ巡視に必要な情報を自動的に聞き取れ、巡視が確実に能率よく行えるようにする航空巡視支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の航空巡視支援装置は、航空機で使用する航空巡視支援装置であって、巡視のための飛行経路と、該飛行経路のうち巡視を行う巡視区間と該巡視区間以外の空輸区間と、前記巡視区間内の巡視対象を設定する経路設定手段と、前記巡視区間内における個々の巡視対象に航空機が近接したとき当該巡視対象の識別と過去の巡視記録を案内すると共に現在の巡視結果を記録する巡視支援手段と、航空機が空輸区間を飛行中か、巡視区間を飛行中かを識別し、巡視区間を飛行中は前記巡視支援手段を起動するモード切換え手段とからなることを特徴とする。
第2発明の航空巡視支援装置は、第1発明において、前記巡視対象の識別および前記過去の巡視記録の案内が、音声案内により行うものであることを特徴とする。
第3発明の航空巡視支援装置は、第1発明において、前記現在の巡視結果の記録には、巡視対象の異常情報、異常発生個所に対する地図上でのエリアマークの設定、設定されたエリアマークの面積計算を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、経路設定手段により巡視区間を設定しておけば、モード切換え手段により航空機が巡視区間近づいたときは巡視支援手段を自動的に起動し、巡視区間を飛行中は起動状態にしておけるので、巡視対象に航空機が接近するだけで確実に巡視を行える。また、巡視支援手段は、航空機が接近した個々の巡視対象について、識別を案内すると共に過去の巡視記録も案内するので、巡視員は巡視に必要な情報を自動的に入手できるので巡視対象の監視に注意を集中できる。よって、巡視の精度が高くなる。
第2発明によれば、巡視対象の識別も巡視に必要な過去の巡視記録も音声によって自動的に聞き取れるので、情報入手に手間を要しない。よって、現状の監視に注意力を集中できるので、効果的な巡視が行える。
第3発明によれば、巡視対象の異常記録を記録しておけるので、次回の巡視に参照することにより、必要な個所へ注意を集中でき能率の良い巡視を行える。また、エリアマークの設定やこれに基づく面積計算は、被害状況等を客観的に把握することができ、災害対策に有効に役立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本明細書において、「航空機」とは、ヘリコプターが代表的であるが、これに限らず、軽飛行機や飛行船、グライダー、無人飛行機などが含まれる。以下では、ヘリコプターを用いた場合で説明する。
本明細書において、「巡視対象」という場合は、鉄塔、送電線が代表的であるが、変電所やダム等の設備も含まれる。
【0011】
((本発明の概要))
図1は本発明の巡視支援装置の概要説明図である。同図において、Aは空港、Hはヘリコプター、No.1〜No.nは巡視対象である鉄塔である。鉄塔と鉄塔の間には図示しない送電線が張られている。これも巡視対象である。
鉄塔No.1〜No.nを巡視区間とする場合に、ヘリコプターHが巡視に飛び立つ前に飛行計画を作成する。この飛行計画には、巡視すべき鉄塔の最初から最後までのルートを巡視区間Prとし、空港Aから巡視区間Prの起点までと巡視区間Prの終点から空港Aまでを空輸区間Trとして設定する。
【0012】
ヘリコプターHにはパイロットと巡視員が乗り込み、巡視員は本発明の巡視支援装置Dを持込み操作する。この巡視支援装置Dは、電源をONにすると、以下の飛行中において自動的に後述する巡視支援を行う。
ヘリコプターHが空港Aを飛び立ち空輸区間Trを飛行中は、巡視支援装置Dは空輸モードで作動し、この間はルート案内等の従来公知の案内を行う。ヘリコプターHが巡視区間Prの起点に近づくと、巡視支援装置Dは自動的に巡視モードに切り替る。このため、巡視員は、確実に必要な鉄塔の巡視を開始できる。また、巡視区域の巡視を全て終え、ヘリコプターHが再び空輸区間Trに入ると、巡視支援装置Dは自動的に空輸モードに切り替り、ヘリコプターHが空港に到着するまで、ルートの画面表示や距離、方位、到着予想時間の表示を行う。
【0013】
巡視支援装置Dが巡視モードにあるとき、つぎの巡視支援を行う。この巡視支援は、本発明の特徴となるものである。
a)巡視対象の識別
・鉄塔番号の音声案内
b)過去の巡視記録の案内
・線下状況、飛行禁止区域等の警告
c)現在の巡視結果の記録
・異常情報の記録
・エリアマークの設定
・面積計算
【0014】
巡視支援装置Dが空輸モードおよび巡視モードにあるとき、以下の表示・案内を行い、航空巡視全般を支援している。
d)モニター上への付近地形図の表示、航空機(自機)の位置表示
e)巡視ルートまでの距離、方位、到着予想時間の表示
【0015】
((巡視支援装置))
つぎに、本発明の巡視支援装置Dの詳細説明を行う。
まず、巡視支援装置Dは、つぎのような構成と機能を有している。
(巡視支援装置Dの構成)
図2は同巡視支援装置の構成説明図である。同図に示す巡視支援装置Dは、携帯パソコンまたは航空機に搭載された小型パソコンに付属機器を組合わせて構成したものであり、パソコン本来の情報処理手段として、CPU1,ROM2、RAM3,HDD4,表示手段としてのモニター5,音声スピーカー6,入力手段としてのタッチパネルペン7,キーボード8,マウス9を備えている。これに加え、GPSユニット10を構成するGPS位置情報を利用するためのアンテナ11,レシーバー12,通信用1/F13,GPSデータ・オーバレイ1/F14を備えている。また、必要なデータベースとして、地図情報用データベース、付帯情報データベース22,音声案内データベース23を備えている。
【0016】
前記GPSユニット10は、ヘリコプターHの飛行中の現在位置の確認のために用いられる。
前記地図情報用データベース21は、地形図に、巡視ルート、鉄塔所在地等を記録したデータを重量表示でき、国土地理院発行の地図を元に作成されたもの等を利用できる。
前記付帯情報データベース22には、エリアマークをしたり、面積計算をしたりする際に必要な一切の情報が格納されている。
前記音声案内データベース23には、巡視モード中に必要な案内音声がパターン化されて格納されている。また、音声案内のパターン化された文言は、自由にテキストベースで変更できるようになっている。
【0017】
(巡視支援装置Dの機能)
図3は同巡視支援装置の機能説明図である。
巡視支援装置Dは、GPSユニット10により飛行中に自機位置を確認し、モニター5上に自機マークを表示する外、上記構成に基づき図3に示すような機能を備えている。すなわち、携帯パソコンPCは、CPU1等からなる情報処理機能に基づいて、以下の機能実現手段を構成している。
【0018】
(1)接近中の鉄塔No.1〜No.nの識別手段201
ヘリコプターHが飛行中に鉄塔に接近していくが、最接近の鉄塔が設定した巡視ルート中の多数の鉄塔のうち、どれかを識別する手段である。この機能実現手段は、地図データ上において鉄塔の位置(予めデータベースに格納されている)と、自機の位置(飛行中にGPSユニット10から入力されている)との間の距離を、それぞれ算出し、最短のものを選択することで得られる。この機能によって選別しなければならないのは、少なくとも下記の3つである。
・巡視ルート起点の鉄塔No.1
・巡視ルート終点の鉄塔No.n
・途中の鉄塔No.1〜No.n
この機能は、後述する距離算出手段202、モード切換手段203、音声案内手段204を機能させる前提となるものである。
【0019】
(2)自機・鉄塔間の距離算出手段202
この機能実現手段は、地図データ上において鉄塔の位置(飛行前に入力されている)と、自機の位置(飛行中にGPSユニット10から入力されている)との間の距離を、それぞれ算出することで実現できる。
この機能によって、設定された巡視ルートにおける起点の鉄塔No.1、また終点の鉄塔No.nに近づくと、後述するモード切換手段203が働くことになる。
【0020】
(3)空輸モード・巡視モードの切換手段203
前記距離算出手段202により鉄塔までの距離が算出されるので、その算出値が予め定めている設定値に到達すると、切換手段203が起動し、接近した鉄塔が起点の鉄塔No.1か終点の鉄塔No.nかによって、つぎのとおり動作する。
(a)巡視開始地点の鉄塔No.1に一定の距離以内に接近すると、巡視支援装置Dを空輸モードから巡視モードに切り替える。
(b)巡視終了地点の鉄塔No.nから一定の距離以上離れると、巡視支援装置Dを巡視モードから空輸モードに切り替える。
【0021】
(4)鉄塔番号と巡視情報の音声案内手段204
この音声案内手段204は、音声案内データベース23に格納している多数ある音声案内データのうち該当するものを呼出し、警報手段6(スピーカー)で発声させることにより実行できる。どの音声案内データを呼び出すかは、距離算出手段202で算出した距離が最短となった鉄塔について識別手段201で識別すれば、どの鉄塔について案内するかを判断できる。
また、複数の鉄塔に接近したとき、優先して案内すべき鉄塔を選択するプログラムも含まれている。
よって、つぎの案内が可能である。
(a)全ての鉄塔に対し、一定の距離だけ接近すると、接近した鉄塔の鉄塔番号を音声案内し、かつ当該鉄塔の線下状況(前回巡視で記録していたもの)を音声案内する。
(b)複数の鉄塔に近接したとき、設定された距離が保たれると優先路線を案内し、保たれない場合は、優先路線の選択を表示や音声で促すことができる。なお、手動で選択することも可能である。
【0022】
(5)マーク表示手段205
巡視支援装置Dのモニター5上に表示された地図に、タッチパネルペン7でタッチすると、必要な表示マークを表示できる。
【0023】
(6)エリア表示手段206
前記表示マークを複数個入力すると、地図上に囲み線が表示される。
【0024】
(7)エリア面積計算手段207
前記囲み線で表示された領域の面積計算が行える。面積計算は、囲み線内の領域を三角形や四角形に区切って、それぞれの面積を算出し、合算する公知の方法で実現できる。
【0025】
(8)記録手段208
タッチパネルペン7で文字入力すると、必要な情報(追加または最近の線下状況など)をHDDなどのメモリに記録できる。
【0026】
((巡視方法))
つぎに、本発明による航空巡視方法の詳細を説明する。
図4は本発明による航空巡視支援のフローチャートである。図5は巡視飛行計画の一例を示す説明図である。
【0027】
(巡視飛行計画作成・入力)
巡視の準備として、巡視コース名、出発・最終空港(ヘリポート)、巡視線路の始点・終点鉄塔を決定し、ペーパー上で巡視(飛行)計画を作成する。
つぎに、飛行前に作成されたペーパーに基づき、巡視支援装置Dに、巡視飛行計画を入力する。例えば、つぎの項目を入力する。
・飛行コース、出発・経由地点・巡視路線の始点(最初の鉄塔)・巡視路線の終点(最後の鉄塔)・最終空港、を表示画面にダイレクト、もしくは座標を数値入力する。
・GPSからのデータ取得、データ異常の有無を確認する。そのうえで、GPSより自機位置情報を取得する。
・データベース内に格納されている鉄塔、送電線位置情報などの情報を必要量読み込む。
・ルートマッピング・ソフトウェア レイヤー表示選択情報により、選択されているレイヤー情報を地図情報とともに読み込む。
・自機位置情報をレイヤー情報、地図上にモニター表示する。
・巡視コースを選択する。
・選択された巡視コースについて鉄塔位置および送電線を色分け表示する。
【0028】
(巡視開始・空輸モード )
図5および図6の(1)はヘリコプターHが空港Aを飛び立ち、巡視開始点に向かっている状況である。
このとき、巡視支援装置Dは空輸モードになっており、GPSからの位置座標をもとに、ヘリの現在位置、進行方向を地図上に表示する。また、空輸目的位置までの残距離、方位を音声案内と画面表示する。さらに、空輸時・巡視時速度を入力すれば予想飛行時間等が表示される。
【0029】
(巡視モード)
指定された巡視計画の区間にヘリが到着した時点で巡視支援装置Dは自動的に巡視モードに切り替わり、以下の項目の音声案内と画面表示を行い、巡視や調査作業を支援する。
以下に、巡視の詳細を説明する。
【0030】
図4のステップ(101)
図5に示す地図上では、鉄塔No.5〜No.12が一つの巡視区間、鉄塔No.3〜No.6が他の巡視区間として設定されている。
最初の巡視区間である鉄塔No.5にヘリコプターHが近づくと、巡視コース開始地点かどうか確認する。YESの場合、以下の巡視支援が始まる。
【0031】
図4のステップ(102)
図5の(2)〜(5)、(7)はヘリコプターHが巡視区間を飛行していることを示している。
この巡視中に鉄塔番号および線下状況案内を音声で開始する。なお、この音声案内の具体例は後述する。これらの案内により、巡視員は、鉄塔番号や線下状況をメモ等を手作業で読み取らなくてよいので、巡視対象の観察に全神経を注視できる。
【0032】
図4のステップ(103),(104)
巡視区間の飛行中、巡視対象のルートが分岐していたり、近接して並行したコースはないか確認する。
図5では鉄塔No.7から巡視ルートが分岐し、鉄塔No.9と鉄塔No.10の間では、巡視ルートが交差しているが、このような場合に、優先路線を選択するように警告する。警告は音声並びに画面表示で行われるが、手動で優先路線を選択することも可能である。
なお、巡視対象が片側のみの場合は、優先路線警告はしない。
【0033】
図4のステップ(105),(106)
巡視場所は初めて飛行するか確認する。案内の終了した鉄塔は誤案内防止のため案内しない。ただし、大きく離れて再度巡視コースに復帰する場合には案内を開始する。
【0034】
図4のステップ(107)
音声メモ、画像表示等、の設定されている位置データより機体が近づくことにより案内、表示処理する。巡視区間の飛行中において線下異常個所Yや飛行禁止個所Zは、巡視支援装置Dのモニターにも表示され、音声でも案内されるので、確実に線下異常個所に注意を払うことができ、また飛行禁止個所を回避して飛行することができる。
【0035】
図4のステップ(108),(109)
巡視区間の飛行中に山火事や土砂崩れ等を発見した場合は、山火事や土砂崩れ等の記録等が必要か否か巡視員が判断する。
【0036】
図4のステップ(110)
巡視中に発見した山火事や土砂崩れ等につき、記録が必要なものは、その範囲をモニター5上にエリアマークにより設定する。また、ポイントの緯度経度情報とともに図としても記録保存する。
【0037】
図4のステップ(111),(112)
災害発見箇所につき、その範囲の面積計算は必要か巡視員が判断する。
エリアマークとして保存された範囲は、面積計算が可能なので、機上において、巡視支援装置Dに指示すると、内蔵ソフトにより面積計算を行う。
【0038】
図4のステップ(113)
巡視コースの終了地点かどうかは常時判断している。したがって、ヘリコプターHが鉄塔No.12から離れると巡視が終了し、巡視支援装置Dは空輸モードに切り替わる。また、つぎの巡視区間に移ると、例えば鉄塔No.3に接近すると、別の巡視区間に入ると、巡視支援装置Dは再び巡視モードに切り替えられる。そして、全ての巡視区間の巡視を終えて空港へ帰投するときも、巡視支援装置Dは空輸モードに切り替わる。
【0039】
(空輸モード・巡視終了)
図4のステップ(114), (115), (116)
巡視が終了すると、案内解除され、記録されたデータ保存が必要かどうかを判断して、必要なものについては、データ入出力により書出し保存する。
【0040】
(巡視中の音声案内の例)
図6は巡視中における音声案内とモニター上の表示を示す説明図である。
音声案内の一例を以下に示す。また、モニター上の画面に表示される内容は、図6に示すとおりである。符号(1)〜(8)は、図5の符号(1)〜(8)と一致している。
巡視の状態 音声内容
(1)巡視開始位置へ移動中 目的地まで残り〇キロ方位△度
(2)通常時(No.6)手前 前、6号
(3)分岐鉄塔(No.7)手前 前、分岐鉄塔7号
(4)送電線交差箇所(No.9)手前 次径間注意、送電線交差有り
(5)線下異常箇所(No.11)手前 次径間、〇〇有り(〇〇=線下異常内容(※))
(6)次の巡視開始位置へ移動中 目的地まで残り〇キロ方位△度
(7)飛行禁止箇所(No.4)手前 次径間注意、飛行禁止箇所
(8)最終地へ移動中 目的地まで残り〇キロ方位△度
【0041】
上記表において(※)で示す線下異常内容には造成、道路工事、林道工事、建物工事、地滑り、索道、伐採、その他工事等の編集が可能である。
【0042】
巡視や調査時に必要な情報として、例えば送電線巡視においては 鉄塔番号、分岐、交差状況、送電線下における地滑り、土地造成工事、索道架設状況などの様々な情報があるが、これらの情報を音声案内や画面表示により巡視員に情報を伝えることが出来るため、巡視員は、本来の巡視の業務に集中することが出来る。
【0043】
図7は本発明の巡視支援装置におけるモニター画面の一例を示す説明図である。
図7において、a〜gの符号は、つぎを意味している。
a:巡視ルートに選択された送電
b:航空機の位置
c:線下警告表示
d:線下状況内容表示
e:エリアマーク
f:メモ
g:ポイントマーク
モニター5上には、基本情報として、巡視ルートに選択された送電、航空機の位置が表示され、線下警告表示と線下状況内容表示が前回巡視結果に基づいて表示されるようになっている。
そして、GPSからの位置座標をもとに、ヘリの現在位置をタッチパネル等によりエリアマークeを記入することができる。巡視中において山火事や土砂崩れ等の災害現場が発見された場合にエリア上空を飛行しながらエリアマークeを記録すると地図上にエリアが網線等の図柄で表示される。
GPSからの位置座標をもとに、ヘリの現在位置bはタッチパネル等によりポイントでマークできる。巡視中において新たな線下異常等が発見された場合にポイントマークgを記入し、メモfによるコメント入力も可能である。こうすることにより、より正確な巡視作業を支援することができる。
【0044】
巡視支援装置Dは測定機能を有しており、飛行中に測定モードに切り替えて、エリアマークを指定することで、そのエリアの面積を表示することができる。これにより、土砂崩れ等、災害時の被災面積の概算が分かり迅速な巡視作業を支援する。
また、2つのポイントを指定することで必要な距離の計算もすることが出来るので、鉄塔から鉄塔の径間での送電線不具合個所の距離を計算できる。
【0045】
そして、面積や距離の計算結果は、HDD4等に保存する事により、後でデータとして活用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の巡視支援装置の概要説明図である。
【図2】同巡視支援装置の構成説明図である。
【図3】同巡視支援装置の機能説明図である。
【図4】本発明による航空巡視支援のフローチャートである。
【図5】巡視飛行計画の一例を示す説明図である。
【図6】巡視中における音声案内とモニター上の表示を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 CPU
2 ROM
3 RAM
4 HDD
5 モニター
6 音声スピーカー
21 地図情報用データベース
22 付帯情報データベース
23 音声案内データベース
H ヘリコプター
A 空港
Tr 空輸区間
Pr 巡視区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機で使用する航空巡視支援装置であって、
巡視のための飛行経路と、該飛行経路のうち巡視を行う巡視区間と該巡視区間以外の空輸区間と、前記巡視区間内の巡視対象を設定する経路設定手段と、
前記巡視区間内における個々の巡視対象に航空機が近接したとき当該巡視対象の識別と過去の巡視記録を案内すると共に現在の巡視結果を記録する巡視支援手段と、
航空機が空輸区間を飛行中か、巡視区間を飛行中かを識別し、巡視区間を飛行中は前記巡視支援手段を起動するモード切換え手段とからなる
ことを特徴とする航空巡視支援装置。
【請求項2】
前記巡視対象の識別および前記過去の巡視記録の案内が、音声案内により行うものである
ことを特徴とする請求項1記載の航空巡視支援装置。
【請求項3】
前記現在の巡視結果の記録には、巡視対象の異常情報、異常発生個所に対する地図上でのエリアマークの設定、設定されたエリアマークの面積計算を含む
ことを特徴とする請求項1記載の航空巡視支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−247293(P2008−247293A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93576(P2007−93576)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000180324)四国航空株式会社 (3)
【Fターム(参考)】