説明

船外機

【課題】簡単な構造で、船外機を大型化することなく、吸気管の有効管長を変えることが可能である。
【解決手段】船体に搭載され、カウル3内にエンジン10をクランク軸が航走時に略垂直をなすように縦置きに配設してなる船外機1において、エンジン10のクランク軸10aに対してエンジン10のシリンダヘッド32とは逆側に配置される第1サージタンク200aと、第1サージタンク200aとエンジン10の吸気ポート32eを連通するロング吸気管36aと、第1サージタンク200aと連通しており、ロング吸気管36aとエンジン10との間に設けられる第2サージタンク200bと、ロング吸気管36aの中途部のエンジン側に設けられ、第2サージタンク200bと連通するショート吸気管36bと、ショート吸気管36bを開閉する開閉弁201とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸気管長が可変であるエンジンを備える船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
船体に搭載される船外機には、カウル内にエンジンをクランク軸が航走時に略垂直をなすように縦置きに配設してなり、例えば吸気の慣性過給効果を得るためエンジン回転数に応じて吸気管の有効管長を変えるものが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002-195118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1の場合、低・中回転時に吸気する吸気管は、サージタンクのエンジン側に位置している。よって、低・中回転時に吸気する吸気管が湾曲することとなるが、あまり湾曲させると吸気抵抗の増大につながるため、ある程度エンジンから離して配置し穏やかな湾曲とする必要がある。その結果、吸気管の占有スペースが増大し、船外機が大型化してしまう虞がある。
【0004】
この発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、船外機を大型化することなく、吸気管の有効管長を変えることが可能な船外機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成されている。
【0006】
請求項1に記載の発明は、
船体に搭載され、カウル内にエンジンをクランク軸が航走時に略垂直をなすように縦置きに配設してなる船外機において、
前記エンジンのクランク軸に対して前記エンジンのシリンダヘッドとは逆側に配置される第1サージタンクと、
前記第1サージタンクと前記エンジンの吸気ポートを連通するロング吸気管と、
前記第1サージタンクと連通しており、前記ロング吸気管と前記エンジンとの間に設けられる第2サージタンクと、
前記ロング吸気管の中途部のエンジン側に設けられ、前記第2サージタンクと連通するショート吸気管と、
前記ショート吸気管を開閉する開閉弁と、
を備えることを特徴とする船外機である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、
前記エンジンは、左バンクと右バンクを有するV型エンジンであり、
前記ロング吸気管は、前記V型エンジンの各シリンダ列の外側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の船外機である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、
前記開閉弁を開閉するアクチュエータを、前記開閉弁の弁軸と同軸上に配置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船外機である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、
前記第2サージタンクは、前記エンジンの左右両側に設けられ、前記第2サージタンク同士で連通していることを特徴とする請求項2乃至請求項3のいずれか1項に記載の船外機である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、
前記エンジンと前記ロング吸気管との間のデットスペースに、補機部品を配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の船外機である。
【発明の効果】
【0011】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0012】
請求項1に記載の発明では、ロング吸気管のエンジン側に沿って第2サージタンクを配置したので、ロング吸気管の湾曲が最低限度で済む。また、第1サージタンクの形状は吸気管に比べて制約が少ないので、ロング吸気管とエンジンとの隙間を最大限活用してサージタンクとすることができ、エンジンとの間隔を詰めることができ、その結果船外機が大型化することを防ぐことができる。また、ショート吸気管を開閉する開閉弁がロング吸気管の内側にあるので、開閉弁を駆動するためのアクチュエータを、上面視でロング吸気管の外側よりもエンジン側に配置でき、アクチュエータの突出により船外機が大型化するのを防ぐことができる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、V型エンジンにおいてロング吸気管を各シリンダ列の外側に設けた場合、シリンダ列とクランクケースとロング吸気管の間に生じるデッドスペースを有効に利用できるため、船外機を大型化させずに第2サージタンクの容量を確保できる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、開閉弁を開閉するアクチュエータを、開閉弁の弁軸と同軸上に配置し、同軸とすることで、部品点数が少なく安価で済み、かつ直接接続が可能であり作動の信頼性が向上する。
【0015】
請求項4に記載の発明では、第2サージタンクは、エンジンの左右両側に設けられ、第2サージタンク同士で連通しており、より大きな容量を確保できる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、エンジンとロング吸気管との間のデットスペースを有効に利用して補機部品を配置することで、船外機が大型化するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の船外機の実施の形態について説明するが、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。この実施の形態では、船外機の前側を船体側とし、船外機の後側を船体側に対して反対側を示し、鉛直方向を上下方向とする。
【0018】
図1は船外機の側面図、図2は船外機のエンジンの配置を示す側面図、図3は船外機のエンジンの配置を示す平面図、図4は船外機のエンジンの配置を示す前面図、図5は吸気構造を示す横断面図、図6は吸気構造を示す縦断面図である。
【0019】
図1に示すように、船外機1は推進ユニット2を有し、そのハウジング部分がカウル3とアッパーケース4とロアーケース5により構成されていて、上方のカウル3にはクランク軸10aを縦置きにしたエンジン10が収納され、下方のロアーケース5にはエンジン10によって回転駆動されるプロペラ6が設けられている。エンジン10は、クランク軸10aを船体側にし、気筒10bを船体側に対して反対側にして配置されている。中央のアッパーケース4からロアーケース5にはエンジン10からの動力伝達機構11や排気通路など(図示せず)が収納されていて、エンジン10によって動力伝達機構11を介してプロペラ6が回転駆動される。動力伝達機構11はドライブ軸12、シフト切換機構13及びプロペラ軸14などから構成される。
【0020】
エンジンルーム15を形成するカウル3はトップカウル3aとボトムカウル3bとにより構成され、トップカウル3aの後側部に形成されたエンジン10の吸気取り入れ口3a1からエンジンルーム15内に空気が取り入れられる。アッパーケース4の上端にエキゾーストガイド16が配設され、このエキゾーストガイド16の上面にエンジン10が固定されている。
【0021】
ボトムカウル3bは、エキゾーストガイド16の上面周縁部にボルト締めにより固着され、エキゾーストガイド16の下面周縁部にアッパーケース4の上端がボルト締めにより固着され、アッパーケース4の上部とエキゾーストガイド16の周囲を覆うようにエプロン17が装着されている。エンジン10を上方から覆うトップカウル3aは、エキゾーストガイド16に固着されたボトムカウル3bに対して、上方から開閉自在に装着されて、着脱自在に連結されている。
【0022】
この船外機1は船体20の後端部に取付けられるが、船体20の船尾板20aにはクランプブラケット21が固定され、このクランプブラケット21にはスイベルブラケッ22がチルト軸23によって回動自在に枢着され、このスイベルブラケット22には推進ニット2が操舵軸24回りに回動自在に枢着されている。
【0023】
図2乃至図6に示すように、エンジン10は、左バンクと右バンクを有する4サイクルV型8気筒エンジンであり、船外機1は船尾板20aに、クランク軸10aが縦向きとなる航走時状態と略横向きとなる格納時位置との間で揺動可能に搭載される。エンジン10のシリンダブロック30の前側合面にはクランクケース31が接続され、クランクケース31にはクランクケースカバー31aが接続されている。シリンダブロック30の後側合面にはシリンダヘッド32が接続され、シリンダヘッド32のカム室側開口はヘッドバー33で覆われている。エンジン10は航走時状態では、ヘッドカバー33及びシリンヘッド32が船体前後方向後向きとなる。エンジン10の上部には、フライホイール100はクランク軸10aに接続して配置されている。
【0024】
シリンダブロック30には、左,右気筒10bが、これらの軸線がVバンクをなすように、かつクランク軸10a方向に偏位するように形成されている。シリンダヘッド32には、気筒当たり吸気弁開口32a及び排気弁開口32bが形成され、それぞれの吸気弁開口32a及び排気弁開口32bはVバンク内の燃焼室32dに連通している。
【0025】
また、排気弁開口32bは排気ポート32cによりVバンク内に導出され、各バンク毎の排気マニホールド34に集合するように連通されており、排気ガスは排気マニホールド34によりエンジン下方の水中に排出される。
【0026】
吸気弁開口32aは、吸気ポート32eによりシリンダヘッド32の側壁に導出されており、吸気ポート32eの外部接続開口32fには吸気マニホールド36が接続されている。このようにして、吸気ポート32e及び吸気マニホールド36により、吸気弁開口32aから略円弧状をなすように船体前方に屈曲する屈曲部39が形成され、さらに屈曲部39はサージタンク200に接続され、これによりにより前方に延びる吸気通路Aが構成されている。サージタンク200には、スロットルバルブ37aを内蔵するスロットルボディ37が接続され、スロットルボディ37の上流側には吸気サイレンサ38が接続されている。吸気サイレンサ38は、エンジン10の前方に配置されており、カウル3の略全幅に渡る大きさとなっており、空気取入れ口38aから空気が取り入れられる。
【0027】
次に、サージタンク200及び吸気マニホールド36の構成を、図5及び図6に基づいて詳細に説明する。サージタンク200は、第1サージタンク200aと2つの第2サージタンク200bからなり、吸気マニホールド36に対応して上下方向に長く形成されている。サージタンク200に接続される各吸気マニホールド36は、ロング吸気管36aとショート吸気管36bからなる。
【0028】
第1サージタンク200aは、エンジン10のクランク軸10aに対してエンジン10のシリンダヘッド32とは逆側に配置されている。この実施の形態では、エンジン10の前側、すなわち船体側に配置され、この第1サージタンク200aとそれぞれのロング吸気管36aが連通している。このそれぞれのロング吸気管36aは各気筒10bの吸気ポート32eと連通し、この吸気ポート32eは、V型のエンジン10の各シリンダ列の外側に設けられている。2つの第2サージタンク200bは、第1サージタンク200aと連通しており、ロング吸気管36aとエンジン10との間に設けられている。このエンジン10の左右両側に設けられる2つの第2サージタンク200bは、第2サージタンク200b同士で連通しており、より大きな容量を確保できる。また、左バンクと右バンクを有するV型エンジンでは、ロング吸気管36aが各シリンダ列の外側に設けられ、ロング吸気管36aを各シリンダ列の外側に設けた場合、シリンダ列とクランクケース31とロング吸気管36aの間に生じるデッドスペースを有効に利用できるため、2つの第2サージタンク200bはクランクケースカバー31aからクランクケース31の略中央部まで延びており、船外機1を大型化させずに第2サージタンク200bの容量を確保できる。
【0029】
ショート吸気管36bは、第2サージタンク200bの内部まで延びてロング吸気管36aの中途部の内側、すなわちエンジン側に設けられ、それぞれの第2サージタンク200bと開口部200cによって連通している。それぞれの第2サージタンク200は、ロング吸気管36aとエンジン側との間に設けられ、それぞれのショート吸気管36bのロング吸気管36aへの開口部200cには、ショート吸気管36bを開閉する開閉弁201が設けられている。それぞれの開閉弁201は、上下方向に連通して配置される弁軸202に設けられ、弁軸202の上端部にはアクチュエータ203が配置され、アクチュエータ203によって弁軸202を回転して開閉弁201により開口部200cを開閉する。アクチュエータ203は、開閉弁201の弁軸202と同軸上に配置され、同軸とすることで、部品点数が少なく安価で済み、かつ直接接続が可能であり作動の信頼性が向上する。この実施の形態では、開閉弁201は、クランク軸10a方向に延びる1本の弁軸202を連結したバタフライ式のものであり、弁軸202の上端部に配置されるアクチュエータ203は駆動モータが用いられるが、例えば負圧ダイヤフラム、DCモータ、ステッピングモータなどが好ましい。また、アクチュエータ203は、開閉弁201の直上に配置しているが直下に配置して、アクチュエータと弁軸を同一軸上に設けてもよい。このように、アクチュエータ203を開閉弁201の直上に配置する場合は、最上部の吸気マニホールド36、フライホイール100、トップカウル3aに囲まれたデッドスペースにアクチュエータ203を配置でき、開閉弁201の直上に配置する場合は、最下部の吸気マニホールド36とボトムカウル3bの間のデッドスペースにアクチュエータ203を配置でき、これらのカウル3の外形サイズを大きくすることなくアクチュエータ203を装着することができる。
【0030】
このエンジン9にはコントローラなどの電装部品300、リレー、フューズなどの電装補機301が備えられている。この電装部品300は、サージタンク200の前側壁の中央部と上部に取り付けてカウル3内に配置されており、不図示のエンジン回転数センサ、船体速度センサ、スロットル開度センサ、吸気圧センサ、O2センサ等の各種センサからの検出値が入力され、これらの検出値から内蔵する各種の運転制御マップなどに基づいて燃料噴射量、噴射時期及び点火時期を制御し、またアクチュエータ203を制御して開閉弁201により開口部200cを開閉する。リレー、フューズなどの電装補機301は、サージタンク200の前側壁の右側上部に取り付けてカウル3内に配置されている。
【0031】
アクチュエータ203を制御して開閉弁201により開口部200cを開閉し、例えば高速運転域では開閉弁201を開き、低・中速運転域では閉じ、吸気管長を低,中側運転時に適した長さと、高速運転時に適した長さに切り替えることができ、エンジン10の運転状態に適した吸気管長を得ることができ、これによりエンジン10の全ての運転域において慣性過給効果を得ることができ、目標とするトルク特性を得ることが可能となる。
【0032】
このように、ロング吸気管36aのエンジン側に沿って第2サージタンク202を配置したので、ロング吸気管36aの湾曲が最低限度で済む。また、エンジン10の船体側に配置される第1サージタンク200aの形状は吸気マニホールド36に比べて制約が少ないので、ロング吸気管36aとエンジン10との隙間を最大限活用してサージタン200とすることができ、エンジン10との間隔を詰めることができ、その結果船外機1が大型化することを防ぐことができる。また、ショート吸気管36bを開閉する開閉弁201がロング吸気管36aの内側,すなわちエンジン側にあるので、開閉弁201を駆動するためのアクチュエータ203を、上面視でロング吸気管36aの外側よりもエンジン側に配置でき、アクチュエータ203の突出により船外機1が大型化するのを防ぐことができ、簡単な構造で、船外機を大型化することなく、吸気管の有効管長を変えることが可能である。
【0033】
また、図5に示すように、エンジン10のシリンダブロック30と、左右のロング吸気管36aとの間には、上面視でそれぞれデットスペースK3,K4が形成され、デットスペースK3には、補機部品としてスタータモータなどの大型電装部品400が配置され、デットスペースK4には燃料系部品401が配置される。このように、エンジン10とロング吸気管36aとの間のデットスペースK3,K4を有効に利用して補機部品を配置することで、船外機1が大型化するのを防ぐことができる。
【0034】
シリンダヘッド32の各気筒における吸気ポート32e部分に燃料噴射弁40が挿入配置されている。燃料噴射弁40の噴射ノズルは燃焼室32dに臨んでおり、筒状の燃料供給レール41がクランク軸10a方向に向けて、かつシリンダヘッド32の外方に位置するよう配設されている。
【0035】
燃料噴射弁40に燃料を供給するための燃料供給装置50は、主として、以下のように構成されている。エンジン10の側壁前部に燃料フィルタ57、密閉容器58内に内蔵された燃料供給用の低圧の1次ポンプ52、ベーパセパレータ53が取り付けられている。
【0036】
この燃料供給装置50では、船体側に搭載された燃料タンク55内の燃料が低圧の1次ポンプ52の駆動により低圧の燃料配管54a、燃料フィルタ57、低圧の燃料配管54b、1次ポンプ52を介してベーパセパレータ53に供給される。1次ポンプ52の吐出口52aから吐出された燃料の余剰分はリターン通路52bにより1次ポンプ52の吸込口52c側に戻される。
【0037】
ベーパセパレータ53に内蔵された1次ポンプ52の駆動により燃料が燃料配管56を介して高圧の2次ポンプ42に供給され、この2次ポンプ42で昇圧された燃料が高圧の燃料配管43及び左,右分岐ホース44を介して左,右の燃料供給レール41の上端部に供給される。そして、燃料噴射弁40の噴射ノズルが開とされている期間、燃料が燃焼室32d内に噴射供給される。
【0038】
そして、ベーパセパレータ53にはキャニスタ60が取付け固定されている。このキャニスタ60は、ベーパセパレータ53に連通接続されたケース60a内に活性炭等の吸着活性剤60bを充填してなるものである。ペーパセパレータ53内のベーパはキャニスタ60内に進入し、ここでベーパ中の燃料が吸着される。なお、燃料が吸着分離された空気は排出管61を通ってカウル3内に放出されるようになっている。キャニスタ60は、左側の吸気マニホールド36の下方に位置し、燃料系部品401を構成するベーパセパレータ53及びキャニスタ60は、図2及び図4、図5に示すように、シリンダブロック30の左側にVバンクによって形成されるデットスペースK4に配置され、コンパクトな配置になっている。
【0039】
また、燃料フィルタ57はトップカウル3aとボトムカウル3bとにより構成されるカウル3内において、エンジン10のクランク軸10aに対してシリンダヘッド32とは逆側に設置され、エンジン10の船体側に設置されてサージタンク200の前方に位置している。
【0040】
この燃料フィルタ57は、本体部57aと、キャップ部57bと、フィルタ部57cとを有し、本体部57aをブラケット59に締め付け固定している。ブラケット59は、サージタンク200の船体側に固定されている。本体部57aの凹み部57a4には雌ネジが形成され、キャップ部57bの取付部57b1が雄ネジが形成され、ネジ構造によって着脱自在になっている。本体部57aには供給開口57a2と、排出開口57a3が形成され、供給開口57a2には低圧の燃料配管54aが接続され、排出開口57a3には低圧の燃料配管54bが接続されている。
【0041】
この燃料フィルタ57は、少なくとも断熱材70で覆われており、断熱材70は、燃料フィルタ57の形状に適合する形状に形成されている。断熱材70が本体部57aを覆う部分70aと、キャップ部57bを覆う部分70bとの複数の部分からなり、この複数の部分により燃料フィルタ57を被覆している。この断熱材70が発泡ゴムであり、本体部57aを覆う部分70aが本体部57aの外形形状に適用するように予め形成され、キャップ部57bを覆う部分70bがキャップ部57bの外形形状に適合するように予め形成されている。
【0042】
燃料フィルタ57を、少なくとも断熱材70で覆うことで、燃料フィルタ57がエンジン10の熱により加熱されるのを防止でき、燃料の蒸散を防ぐことができる。また、断熱材70は、燃料フィルタ57の形状に適合する形状であり、断熱材70がフィルタ形状に適合しているので、燃料フィルタ57と断熱材70の間に隙間ができにくく断熱効率が向上する。また、断熱材70は複数の部分からなり、複数の部分により燃料フィルタ57を被覆することで、本体部57aを覆う部分70aが本体部57aに、またキャップ部57bを覆う部分70bがキャップ部57bに別々にして容易に装着することができる。また、本体部57aからキャップ部57bを取り外してフィルタ部57cを清掃したり、フィルタ部57cを新たなものと交換する場合でも断熱材70を燃料フィルタ57に装着しやすくなり、組立が簡単となり、交換やメンテナンス作業も向上する。
【0043】
また、これらの作業時には、燃料フィルタ57は、カウル3内において、エンジン10の船体側に設置されており、作業者が船体側からトップカウル3aをボトムカウル3bからはずして装着しやすく、組立が簡単となり、燃料フィルタ57の交換やメンテナンス作業も向上する。
【0044】
また、燃料フィルタ57は、カウル3内において、エンジン10のクランク軸10aに対してシリンダヘッド32とは逆側に設置されており、シリンダヘッド32から延出する排気マニホールド34から燃料フィルタ57を離間させることができ、燃料フィルタ57の加熱をより抑制できる。
【0045】
また、燃料フィルタ57は、カウル3内に開口するエンジン10の吸気開口38aよりも下方に位置しており、エンジンルーム15内では、空気取り入れ口3a1から空気Xが吸気サイレンサ38の吸気開口38aに向かって流れ、エンジン10により加熱された空気Yも流れるが、その流れの影響を受けない位置であるから燃料フィルタ57が加熱されることを抑制できる。
【0046】
この燃料フィルタ57に接続される燃料配管54の少なくとも一部、燃料配管54a,54bも断熱材71,72で覆われている。この燃料配管54aは、ボトムカウル3bの右前側3b11から貫通してボトムカウル3bの右内側に延び、サージタンク200の近傍でサージタンク200の下方を通過するように屈曲して燃料フィルタ57の下方から曲げて立ち上げ、燃料フィルタ57の左側から供給開口57a2に接続されている。燃料配管54bは、燃料フィルタ57の右側の排出開口57a3に接続され、燃料フィルタ57の右側から燃料フィルタ57に沿って下方に延び、燃料フィルタ57の下方を通過して左側に延びて密閉容器58内に内蔵された1次ポンプ52に接続されている。
【0047】
図2及び図4に示すように、船体側に搭載された燃料タンク55内の燃料を供給する低圧の燃料配管54a、燃料フィルタ57から1次ポンプ52までの低圧の燃料配管54bが燃料フィルタ57に周りやサージタンク200の下方のデッドスペースK2を利用して配管され、船体側に搭載された燃料タンク55内の燃料を供給する低圧の燃料配管54a、燃料フィルタ57から1次ポンプ52までの低圧の燃料配管54bが断熱材71,72で覆われ、燃料フィルタ57だけでなく、燃料配管54の少なくとも一部も燃料の加熱をより抑制できる。特に、燃料配管54の低圧の1次ポンプ52までが断熱材71,72で覆われており、燃料フィルタ57だけでなく、燃料配管54a,54bが低圧の1次ポンプ52の駆動により負圧になり蒸散しやすくなる部分であり、この燃料配管54a,54bを断熱材71,72により覆うことで燃料の加熱をより抑制できる。
【0048】
この断熱材70、断熱材71,72も発泡ゴムであり、カウル3内は水が入りやすいが、水が入ったとしても断熱性や耐久性を損なうことがなく、しかも安価に製作でき、装着しやすく、組立が簡単となり、交換やメンテナンス作業も向上する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明は、吸気管長が可変であるエンジンを備える船外機に適用でき、簡単な構造で、船外機を大型化することなく、吸気管の有効管長を変えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】船外機の側面図である。
【図2】船外機のエンジンの配置を示す側面図である。
【図3】船外機のエンジンの配置を示す平面図である。
【図4】船外機のエンジンの配置を示す前面図である。
【図5】吸気構造を示す横断面図である。
【図6】吸気構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 船外機
2 推進ユニット
3 カウル
3a1 吸気取り入れ口
4 アッパーケース
5 ロアーケース
10 エンジン
10a クランク軸
10b 気筒
11 動力伝達機構 12 ドライブ軸
13 シフト切換機構
14 プロペラ軸
15 エンジンルーム
16 エキゾーストガイド
20 船体
20a 船尾板
21 クランプブラケット
22 スイベルブラケット
30 シリンダブロック
31 クランクケース
32 シリンダヘッド
32e 吸気ポート
33 ヘッドカバー
36 吸気マニホールド
36a ロング吸気管
36b ショート吸気管
37 スロットルボディ
38 吸気サイレンサ
40 燃料噴射弁
41 燃料供給レール
42 高圧の2次ポンプ
43 高圧の燃料配管
44 左,右分岐ホース
50 燃料供給装置
53 ベーパセパレータ
54a、54b 低圧の燃料配管
55 燃料タンク
56 燃料配管
57 燃料フィルタ
58 密閉容器
60 キャニスタ
91 フィルタ
92 レギュレータ
200a 第1サージタンク
200b 第2サージタンク
201 開閉弁



【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に搭載され、カウル内にエンジンをクランク軸が航走時に略垂直をなすように縦置きに配設してなる船外機において、
前記エンジンのクランク軸に対して前記エンジンのシリンダヘッドとは逆側に配置される第1サージタンクと、
前記第1サージタンクと前記エンジンの吸気ポートを連通するロング吸気管と、
前記第1サージタンクと連通しており、前記ロング吸気管と前記エンジンとの間に設けられる第2サージタンクと、
前記ロング吸気管の中途部のエンジン側に設けられ、前記第2サージタンクと連通するショート吸気管と、
前記ショート吸気管を開閉する開閉弁と、
を備えることを特徴とする船外機。
【請求項2】
前記エンジンは、左バンクと右バンクを有するV型エンジンであり、
前記ロング吸気管は、前記V型エンジンの各シリンダ列の外側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記開閉弁を開閉するアクチュエータを、前記開閉弁の弁軸と同軸上に配置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船外機。
【請求項4】
前記第2サージタンクは、前記エンジンの左右両側に設けられ、前記第2サージタンク同士で連通していることを特徴とする請求項2乃至請求項3のいずれか1項に記載の船外機。
【請求項5】
前記エンジンと前記ロング吸気管との間のデットスペースに、補機部品を配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の船外機。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−285227(P2007−285227A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114735(P2006−114735)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】