説明

船舶

【課題】各国や各地域の規制に適合しない船舶が当該国や地域において使用されることを抑制する。
【解決手段】船舶は、船舶本体と、GNSS受信機68と、記憶部69と、制御部10と、を備える。GNSS受信機は、船舶本体に搭載され、船舶本体の位置情報を受信する。記憶部は、特定エリアの位置情報を含むエリア情報を記憶する。制御部は、GNSS受信機によって得られる船舶本体の現在位置を特定エリアの位置情報と照合する。制御部は、船舶本体の現在位置が特定エリアに含まれるときには、通常モードにて船舶本体を制御する。制御部は、船舶本体の現在位置が特定エリアに含まれないときには、通常モードと比べて少なくとも一部の船舶本体の機能が制限された制限モードにて船舶本体を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、船舶において、GPSなどの全地球航法衛星システム(global navigation satellite system、以下「GNSS」という)の受信機を搭載することが提案されている。例えば、特許文献1に開示されている小型船舶では、GPSのアンテナをデッキ部材に設置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−43093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、船舶に関する規制は、国や地域によって異なる。例えば、排気ガスに含まれる有害物質の量に関する規制の有無や規制量は、国や地域によって異なる。このため、メーカーは、船舶の仕向地ごとに異なる仕様の船舶を製造し、各国や各地域の規制に適合する仕様の船舶を当該国や地域に販売している。しかし、船舶が商品として一旦、市場に出されると、メーカーが設定した仕向地とは異なる国や地域に船舶が輸出される場合がある。この場合、各国や各地域の規制に適合しない船舶が当該国や地域において使用されることになる。
【0005】
本発明の課題は、各国や各地域の規制に適合しない船舶が当該国や地域において使用されることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる船舶は、船舶本体と、GNSS受信機と、記憶部と、制御部と、を備える。GNSS受信機は、船舶本体に搭載され、船舶本体の位置情報を受信する。記憶部は、特定エリアの位置情報を含むエリア情報を記憶する。制御部は、GNSS受信機によって得られる船舶本体の現在位置を特定エリアの位置情報と照合する。制御部は、船舶本体の現在位置が特定エリアに含まれるときには、通常モードにて船舶本体を制御する。制御部は、船舶本体の現在位置が特定エリアに含まれないときには、通常モードと比べて少なくとも一部の船舶本体の機能が制限された制限モードにて船舶本体を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、船舶本体が特定エリア内に位置しているときには、通常モードにて船舶本体が制御される。また、船舶が特定エリア外に位置しているときには制限モードにて船舶本体が制御される。従って、当該船舶の仕向地を特定エリアとしたエリア情報を記憶部に保存しておくことによって、船舶が仕向地ではないエリアで使用されているときには、船舶本体の機能の少なくとも一部が制限される。これにより、各国や各地域の規制に適合しない船舶が当該国や地域において使用されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る船舶の全体構成を示す断面図。
【図2】船舶の制御系を示すブロック図。
【図3】表示装置の一例を示す図。
【図4】エリア情報の一例を示す図。
【図5】他の実施形態に係るエリア情報の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る船舶について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る船舶100の全体構成を示す断面図である。図2は、船舶100の制御系を示すブロック図である。船舶100は、いわゆるパーソナルウォータークラフト(PWC)である。船舶100は、図1に示す船舶本体1と、図2に示すECU10(Engine Control Unit)とを備える。
【0010】
図1に示すように、船舶本体1は、船体2と、エンジン3と、ジェット推進装置5と、を含む。船体2は、デッキ2aとハル2bとを含む。船体2の内部には、エンジンルーム2cが設けられている。エンジンルーム2cは、エンジン3および燃料タンク6などを収納する。デッキ2aにはシート7が取り付けられている。シート7は、エンジン3の上方に配置されている。シート7の前方には、船体2を操舵するためのステアリング8が配置されている。
【0011】
エンジン3は、例えば、直列4気筒4ストロークエンジンである。エンジン3は、クランク軸31を含む。クランク軸31は、前後方向に延びるように配置されている。図2に示すように、船舶本体1は、スタータモータ21と、燃料噴射装置22と、スロットルバルブ23と、点火装置24とを含む。スタータモータ21は、エンジン3を始動する。燃料噴射装置22は、エンジン3の燃焼室に供給する燃料を噴射する。スロットルバルブ23の開度が変更されることにより、燃焼室へ送られる混合気の量が調整される。点火装置24は、燃焼室内の燃料に点火する。なお、図2では図示されていないが、燃料噴射装置22と点火装置24とは、エンジン3の各気筒ごとに備えられている。スロットルバルブ23は、エンジン3の複数の気筒に対して共通に備えられている。或いは、スロットルバルブ23は、エンジン3の各気筒ごとに備えられてもよい。
【0012】
ジェット推進装置5は、エンジン3によって駆動され、船体2のまわりの水を吸い込んで噴射する。図1に示すように、ジェット推進装置5は、インペラシャフト50と、インペラ51と、インペラハウジング52と、ノズル53と、デフレクタ54と、リバースバケット55とを含む。インペラシャフト50は、エンジンルーム2cから後方に延びるように配置されている。インペラシャフト50の前部は、カップリング部33を介してクランク軸31に連結されている。インペラシャフト50の後部は、船体2の水吸引部2eを通ってインペラハウジング52内に導出されている。インペラハウジング52は、水吸引部2eの後部に接続されている。ノズル53は、インペラハウジング52の後方に配置されている。
【0013】
インペラ51は、インペラシャフト50の後部に取り付けられている。インペラ51は、インペラハウジング52の内部に配置されている。インペラ51は、インペラシャフト50とともに回転して、水吸引部2eから水を吸引する。インペラ51は、吸引した水をノズル53から後方に噴射させる。デフレクタ54は、ノズル53の後方に配置されている。デフレクタ54は、ノズル53からの水の噴射方向を左右方向に転換するように構成されている。リバースバケット55は、デフレクタ54の後方に配置されている。リバースバケット55は、ノズル53およびデフレクタ54からの水の噴射方向を前方に転換可能に構成されている。
【0014】
図2に示すように、船舶本体1は、スタート操作部材41、スロットル操作部材42、シフト操作部材43、支援機能操作部材44などの操作部材を含む。これらの操作部材は、オペレータによって操作される。スタート操作部材41は、エンジン3を始動させるための操作部材である。スタート操作部材41は、例えばスタートスイッチである。スロットル操作部材42は、エンジン回転速度を増減させるための操作部材である。スロットル操作部材42は、スロットルバルブ23の開度を操作することによりエンジン回転速度を増減させる。スロットル操作部材42は、例えばスロットルレバーである。シフト操作部材43は、船舶本体1の前進と後進とを切り換えるための操作部材である。シフト操作部材43は、リバースバケット55の位置を操作することで船舶本体1の前進と後進とを切り換える。シフト操作部材43は、例えばシフトレバーである。支援機能操作部材44は、支援機能の実行と停止とを切り換えるための操作部材である。支援機能操作部材44は、例えば、NO-WAKE-MODEスイッチと、クルーズコントロールスイッチとを含む。支援機能については後述する。
【0015】
ECU10は、エンジン3を制御する。ECU10は、本発明の制御部に相当する。ECU10は、スタート操作部材41が操作されると、スタータモータ21を駆動する。これにより、エンジン3が始動する。図2に示すように、船舶本体1は、速度センサ45、エンジン回転速度センサ46、及び、図示しないその他のセンサを含む。速度センサ45は、船舶本体1の速度を検出する。エンジン回転速度センサ46は、エンジン回転速度を検出する。その他のセンサは、例えば、外気温、水温、油温を検出するセンサを含む。ECU10は、これらのセンサが検出した情報に基づいて、エンジン3を制御する。
【0016】
ECU10は、上述した操作部材の操作に応じて支援機能を実行する。支援機能は、リバース制御と、NO-WAKE-MODEと、クルーズコントロールとを含む。リバース制御は、リバースバケット55によって船舶本体1を後進させるときにエンジン回転速度が所定の回転速度を超えないようにエンジン3を制御する制御である。ECU10は、シフト操作部材43が後進位置に配置されたときにリバース制御を実行する。NO-WAKE-MODEは、予め定められたエンジン回転速度を維持して低速走行を行う制御である。ECU10は、NO-WAKE-MODEスイッチがオンされたときに、NO-WAKE-MODEを実行する。クルーズコントロールは、エンジン回転速度を、操作部材(クルーズコントロールスイッチ)が操作された時点での回転速度に保つ制御である。ECU10は、クルーズコントロールスイッチがオンされたときに、クルーズコントロールを実行する。
【0017】
図1及び図2に示すように、船舶本体1は、表示装置47を含む。表示装置47は、船舶100に関する情報を表示する。表示装置47は、例えば、液晶モニタを含む。図3は、表示装置47の一例である。なお、図3では、同時に表示可能な全ての表示が行われている状態の表示装置47が示されている。表示装置47は、第1表示部61と、第2表示部62と、第3表示部63とを含む。第1表示部61は、船舶本体1の速度とエンジン回転速度とを表示する。具体的には、第1表示部61は、アナログ速度メータとアナログタコメータとを切り換えて表示する。
【0018】
第2表示部62は、デジタル速度メータ64と、アワ(Hour)/電圧表示部65とを含む。デジタル速度メータ64は、船舶本体1の速度をデジタル表示する。なお、上述した支援機能の実行時には、デジタル速度メータ64が点滅して速度を表示することにより、支援機能の実行中であることをオペレータに知らせる。アワ(Hour)/電圧表示部65は、エンジン3の累積運転時間とバッテリの電圧とを切り換えて表示する。また、第2表示部62は、燃料計66と各種の警告灯67a−67eとを表示する。燃料計66は、燃料の残量を表示する。各種の警告灯67a−67eは、例えば、燃料残量警告67a、オーバーヒート警告67b、チェックエンジン警告67c、触媒警告67d、オイル警告67eを含む。燃料残量警告67aは、燃料が残り少なくなったときに点灯する。オーバーヒート警告67bは、エンジン温度が著しく高くなったときに点灯する。チェックエンジン警告67cは、センサの故障や断線などの異常が検出されたときに点灯する。触媒警告67dは、エンジン3からの排気を浄化する図示しない触媒の温度が著しく高くなったときに点灯する。オイル警告67eは、エンジンオイルの油圧が著しく低くなったときに点灯する。
【0019】
第3表示部63は、船舶本体1の様々な情報を切り換えて表示する。例えば、第3表示部63は、平均速度、経過時間、走行距離を切り換えて表示する。また、第3表示部63は、船舶本体1の前進方向の方位を表示する。具体的には、”NORTH” ,”EAST” ,”SOUTH” ,”WEST” ,”N-EAST” ,”S-EAST” ,”N-WEST” ,”S-WEST” などの文字が表示される。また、第3表示部63は、外気温、水温、燃費などの情報を表示する。
【0020】
図2に示すように、船舶本体1は、GNSS受信機68と、記憶部69とを含む。GNSS受信機68は、船舶本体1の位置情報を受信する。記憶部69は、特定エリアの位置情報を含むエリア情報を記憶している。具体的には、エリア情報は、特定エリアを示すGNSS系座標を含む。例えば図4に示すように、特定エリアA1は、当該船舶100の仕向地である。すなわち、特定エリアA1は、船舶100の使用が予定されている販売地域を示している。ECU10は、GNSS受信機68によって得られる船舶本体1の現在位置を特定エリアA1の位置情報と照合する。ECU10は、船舶本体1の現在位置が特定エリアA1に含まれるときには、通常モードにて船舶本体1を制御する。ECU10は、船舶本体1の現在位置が特定エリアA1に含まれないときには、制限モードにて船舶本体1を制御する。ECU10は、制限モードでは、通常モードと比べて少なくとも一部の船舶本体1の機能を制限する。制限モードにおける制限の内容は、以下に説明する(1)から(4)のいずれかである。或いは、制限モードにおける制限の内容は、以下に説明する(1)から(4)の全て、又は、(1)から(4)の一部の組み合わせであってもよい。
【0021】
(1)エンジン3の始動禁止
ECU10は、制限モードではエンジン3の始動を禁止する。エンジン3の始動禁止は、例えば、スタータモータ21を駆動しないことによって行われる。或いは、エンジン3の始動禁止は、燃料噴射装置22による燃料噴射を行わないことによって行われる。或いは、エンジン3の始動禁止は、燃料噴射装置22による燃料噴射量をエンジン3が始動できない量に制限することによって行われる。或いは、エンジン3の始動禁止は、点火装置24による点火を行わないことによって行われる。或いは、エンジン3の始動禁止は、スロットルバルブ23の開度をエンジン3が始動できない開度に制限することによって行われる。
【0022】
(2)支援機能の制限
ECU10は、通常モードでは上述した支援機能を作動させるが、制限モードでは支援機能の作動を制限する。例えば、ECU10は、制限モードでは、クルーズコントロールスイッチが押されてもクルーズコントロールを作動させない。或いは、ECU10は、制限モードではシフト操作部材43が後進位置に配置されてもリバース制御を行わない。或いは、ECU10は、制限モードでは、NO-WAKE-MODEスイッチが押されてもNO-WAKE-MODEを作動させない。
【0023】
(3)エンジン性能の制限
ECU10は、制限モードでは、エンジン回転速度が所定の回転速度を超えないように制限する。例えば、エンジン回転速度の制限は、燃料噴射装置22による燃料噴射量が所定量を超えないようにすることにより行われる。或いは、エンジン回転速度の制限は、点火装置24による点火時期を通常モードでの点火時期から、ずらすことにより行われる。或いは、エンジン回転速度の制限は、点火装置24による点火回数を制限することにより行われる。すなわち、エンジン回転速度の制限は、点火装置24による点火回数が通常モードでの点火回数よりも低減されることにより行われる。なお、「点火回数の制限」は、任意の少なくとも一つの気筒の点火を行わないこと、または、任意の少なくとも一つの気筒の点火の回数を少なくすることのいずれであってもよい。或いは、エンジン回転速度の制限は、スロットルバルブ23の開度が所定の開度を超えないようにすることにより行われる。
【0024】
ECU10は、制限モードでは、船舶100の速度が所定の速度を超えないように制限してもよい。例えば、船舶100の速度の制限は、燃料噴射装置22による燃料噴射量が所定量を超えないようにすることによって行われる。或いは、船舶100の速度の制限は、点火装置24による点火時期を通常モードでの点火時期から、ずらすことにより行われる。或いは、船舶100の速度の制限は、点火装置24による点火回数を制限することにより行われる。或いは、船舶100の速度の制限は、スロットルバルブ23の開度が所定の開度を超えないようにすることにより行われる。
【0025】
(4)表示装置47の表示制限
ECU10は、制限モードでは、通常モードにおいて表示装置47に表示される表示項目の少なくとも一部を表示させない。例えば、制限モードにおいて表示されない表示項目は、第1表示部61のアナログ速度メータ及びアナログタコメータの表示と、第2表示部62のデジタル速度メータ64である。或いは、制限モードにおいて表示されない表示項目は、支援機能の実行中であることをオペレータに知らせる表示である。すなわち、制限モードにおいては、支援機能の実行中であっても、デジタル速度メータ64の点滅が行われない。或いは、制限モードにおいて表示されない表示項目は、第3表示部63による情報の表示である。すなわち、制限モードでは、平均速度、経過時間、走行距離、船舶本体1の方位、外気温、水温、燃費などが第3表示部63に表示されない。
【0026】
ただし、ECU10は、制限モードであっても、船舶本体1の異常を警告する警告表示を表示させる。すなわち、制限モードであっても、船舶100に異常が発生したときには、上述した警告灯67a−67eが表示される。
【0027】
なお、ECU10は、スタート操作部材41が操作されたときに、GNSS受信機68によって得られる船舶本体1の現在位置を特定エリアA1の位置情報と照合する。そして、ECU10は、通常モードと制限モードとの何れの制御モードで船舶本体1を制御するかを決定する。ECU10は、船舶本体1の運転中に船舶本体1の現在位置が特定エリアA1内から特定エリアA1外に、又は、特定エリアA1外から特定エリアA1内に変わっても、制御モードを変更せずに、現在の制御モードを維持する。
【0028】
また、図2に示すように、船舶本体1は、オペレータに注意を促すための報知部70を含む。ECU10は、制限モードでは、報知部70によって船舶本体1の現在位置が特定エリアA1外であることを報知する。報知部70は、音声によってオペレータに注意を促す。ECU10は、制限モードでは、報知部70から音声を常時出力させる。なお、ここでいう「常時出力」とは、ブザーなどによって断続的に音声を出力することを排除するものではない。また、報知部70は、音声ではなく、表示装置47に表示される警告表示であってもよい。或いは、音声による報知と、警告表示による報知との両方が実行されてもよい。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る船舶100では、船舶100が特定エリアA1内に位置しているときには、通常モードにて船舶100が制御される。また、船舶100が特定エリアA1外に位置しているときには制限モードにて船舶100が制御される。従って、船舶100が仕向地ではないエリアで使用されているときには、船舶100の機能の少なくとも一部が制限される。これにより、各国や各地域の規制に適合しない船舶100が当該国や地域において使用されることを抑制することができる。
【0030】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0031】
上記の実施形態の船舶100は、パーソナルウォータークラフトであるが、本発明の船舶はスポーツボートであってもよい。本発明の船舶は、水ジェット推進艇などの小型船舶であることが好ましい。表示装置は、液晶モニタに限らず、他の方式によって情報を表示する装置であってもよい。表示装置の表示項目及びレイアウトは、上述した表示装置47の表示項目及びレイアウトに限らず、変更されてもよい。
【0032】
上記の実施形態では、ECU10は、スタート操作部材41が操作されたときに、GNSS受信機68によって得られる船舶本体1の現在位置を特定エリアA1の位置情報と照合する。しかし、ECU10は、通常モードと制限モードとの何れの制御モードで船舶本体1を制御するかの決定を、船舶本体1の運転中に継続して行ってもよい。この場合、ECU10は、船舶本体1の運転中に船舶本体1の現在位置が特定エリアA1内から特定エリアA1外に、又は、特定エリアA1外から特定エリアA1内に変わったときには、制御モードを変更する。
【0033】
図5(a)に示すように、エリア情報は、特定エリアA1と異なる準特定エリアA2の位置情報をさらに含んでもよい。この場合、ECU10は、船舶本体1の現在位置が準特定エリアA2に含まれるときには、第1制限モードにて船舶本体1を制御する。第1制限モードにおいては、通常モードと比べて少なくとも一部の船舶本体1の機能が制限される。ECU10は、船舶本体1の現在位置が特定エリアA1及び準特定エリアA2のいずれにも含まれないときには、第2制限モードにて船舶本体1を制御する。第2制限モードにおいては、第1制限モードと比べて船舶本体1の機能がさらに制限される。例えば、第2制限モードにおいて制限される項目は、第1制限モードにおいて制限される項目よりも多い。或いは、第2制限モードにおける制限の程度は、第1制限モードにおける制限の程度よりも大きい。すなわち、仕向地である特定エリアA1から離れるほど、制限が段階的に強化されてもよい。例えば、第1制限モードでは上述した支援機能が制限され、第2制限モードでは、エンジンの始動が禁止されてもよい。或いは、第1制限モードでは、エンジン回転速度が制限され、第2制限モードではエンジンの始動が禁止されてもよい。
【0034】
図5(b)に示すように、エリア情報は、特定エリアA1に含まれる速度制限エリアA3の位置情報をさらに含んでもよい。この場合、ECU10は、船舶本体1の現在位置が速度制限エリアA3に含まれるときには、船舶本体1の速度が所定の制限速度を超えないように、エンジン3を制御する。或いは、ECU10は、船舶本体1の現在位置が速度制限エリアA3に含まれるときには、エンジン回転速度が所定の制限回転速度を超えないように、エンジン3を制御する。また、図5(a)に示す特定エリアA1に、複数の速度制限エリアA3が含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、各国や各地域の規制に適合しない船舶が当該国や地域において使用されることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 船舶本体
3 エンジン
5 水ジェット推進装置
10 ECU
21 スタータモータ
22 燃料噴射装置
23 スロットルバルブ
24 点火装置
41 スタート操作部材
44 支援機能操作部材
47 表示装置
55 リバースバケット
68 GNSS受信機
69 記憶部
70 報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶本体と、
前記船舶本体に搭載され、前記船舶本体の位置情報を受信するGNSS受信機と、
特定エリアの位置情報を含むエリア情報を記憶する記憶部と、
前記GNSS受信機によって得られる前記船舶本体の現在位置を前記特定エリアの位置情報と照合し、前記船舶本体の現在位置が前記特定エリアに含まれるときには通常モードにて前記船舶本体を制御し、前記船舶本体の現在位置が前記特定エリアに含まれないときには前記通常モードと比べて少なくとも一部の前記船舶本体の機能が制限された制限モードにて前記船舶本体を制御する制御部と、
を備える船舶。
【請求項2】
前記船舶本体は、エンジンを含み、
前記制御部は、前記制限モードでは前記エンジンの始動を禁止する、
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記船舶本体は、前記エンジンを始動するスタータモータを含み、
前記制御部は、前記制限モードではスタータモータを駆動しない、
請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
前記船舶本体は、前記エンジンに燃料を供給する燃料噴射装置を含み、
前記制御部は、前記制限モードでは前記燃料噴射装置による燃料噴射を行わない、
請求項2に記載の船舶。
【請求項5】
前記船舶本体は、前記エンジンに燃料を供給する燃料噴射装置を含み、
前記制御部は、前記制限モードでは前記燃料噴射装置による燃料噴射量を前記エンジンが始動できない量に制限する、
請求項2に記載の船舶。
【請求項6】
前記船舶本体は、前記エンジンにおいて燃料に点火する点火装置を含み、
前記制御部は、前記制限モードでは前記点火装置による点火を行わない、
請求項2に記載の船舶。
【請求項7】
前記船舶本体は、前記エンジンへの空気の供給量を調整するスロットルバルブを含み、
前記制御部は、前記制限モードでは前記スロットルバルブの開度を前記エンジンが始動できない開度に制限する、
請求項2に記載の船舶。
【請求項8】
前記船舶本体は、エンジンと、オペレータによって操作される操作部材とを含み、
前記制御部は、前記通常モードにおいて前記操作部材が操作されたときには、前記操作部材の操作に対応した特定の支援機能を作動させるように前記エンジンを制御し、
前記制御部は、前記制限モードでは前記支援機能の作動を制限する、
請求項1に記載の船舶。
【請求項9】
前記支援機能は、前記エンジンの回転速度を、前記操作部材が操作された時点での回転速度に保つクルーズコントロールであり、
前記制御部は、前記制限モードでは前記クルーズコントロールを作動させない、
請求項8に記載の船舶。
【請求項10】
前記船舶本体は、前記エンジンによって駆動される水ジェット推進装置と、前記水ジェット推進装置からの水の噴き出し方向を変更するリバースバケットと、を含み
前記支援機能は、前記リバースバケットによって前記船舶本体を後進させるときに前記エンジンの回転速度が所定の回転速度を超えないように前記エンジンを制御するリバース制御であり、
前記制御部は、前記制限モードでは前記リバース制御を行わない、
請求項8に記載の船舶。
【請求項11】
前記船舶本体は、エンジンを含み、
前記制御部は、前記制限モードでは、前記エンジンの回転速度が所定の回転速度を超えないように制限する、
請求項1に記載の船舶。
【請求項12】
前記船舶本体は、前記エンジンに燃料を供給する燃料噴射装置を含み、
前記制御部は、前記制限モードでは前記燃料噴射装置による燃料噴射量が所定量を超えないようにする、
請求項11に記載の船舶。
【請求項13】
前記船舶本体は、前記エンジンにおいて燃料に点火する点火装置を含み、
前記制御部は、前記制限モードでは前記点火装置による点火時期を前記通常モードでの点火時期からずらす、
請求項11に記載の船舶。
【請求項14】
前記船舶本体は、前記エンジンにおいて燃料に点火する点火装置を含み、
前記制御部は、前記制限モードでは前記点火装置による点火回数を制限する、
請求項11に記載の船舶。
【請求項15】
前記船舶本体は、前記エンジンへの空気の供給量を調整するスロットルバルブを含み、
前記制御部は、前記制限モードでは前記スロットルバルブの開度が所定の開度を超えないようにする、
請求項11に記載の船舶。
【請求項16】
前記船舶本体は、エンジンを含み、
前記制御部は、前記制限モードでは、前記船舶の速度が所定の速度を超えないように前記エンジンを制御する、
請求項1に記載の船舶。
【請求項17】
前記船舶本体は、前記エンジンに燃料を供給する燃料噴射装置を含み、
前記制御部は、前記制限モードでは前記燃料噴射装置による燃料噴射量が所定量を超えないようにする、
請求項16に記載の船舶。
【請求項18】
前記船舶本体は、前記エンジンにおいて燃料に点火する点火装置を含み、
前記制御部は、前記制限モードでは前記点火装置による点火時期を前記通常モードでの点火時期からずらす、
請求項16に記載の船舶。
【請求項19】
前記船舶本体は、前記エンジンにおいて燃料に点火する点火装置を含み、
前記制御部は、前記制限モードでは前記点火装置による点火回数を制限する、
請求項16に記載の船舶。
【請求項20】
前記船舶本体は、前記エンジンへの空気の供給量を調整するスロットルバルブを含み、
前記制御部は、前記制限モードでは前記スロットルバルブの開度が所定の開度を超えないようにする、
請求項16に記載の船舶。
【請求項21】
前記船舶本体は、前記船舶に関する情報を表示する表示装置を含み、
前記制御部は、前記制限モードでは、前記通常モードにおいて前記表示装置に表示される表示項目の少なくとも一部を表示させない、
請求項1に記載の船舶。
【請求項22】
前記表示項目は、前記船舶本体の異常を警告する警告表示を含み、
前記制御部は、前記制限モードと前記通常モードとのいずれにおいても前記警告表示を表示させる、
請求項21に記載の船舶。
【請求項23】
前記船舶本体は、オペレータに注意を促すための報知部を含み、
前記制御部は、前記制限モードでは、前記報知部によって前記船舶本体の現在位置が前記特定エリア外であることを報知する、
請求項1に記載の船舶。
【請求項24】
前記報知部は、音声によってオペレータに注意を促し、
前記制御部は、前記制限モードでは、前記報知部から音声を常時出力させる、
請求項23に記載の船舶。
【請求項25】
前記船舶本体は、エンジンと、前記エンジンを始動させるスタート操作部材と、を含み、
前記制御部は、前記スタート操作部材が操作されたときに、前記通常モードと前記制限モードとの何れの制御モードで前記船舶本体を制御するかを決定し、
前記制御部は、前記船舶本体の運転中に前記船舶本体の現在位置が前記特定エリア内から前記特定エリア外に、又は、前記特定エリア外から前記特定エリア内に変わっても、前記制御モードを変更しない、
請求項1に記載の船舶。
【請求項26】
前記制御部は、前記通常モードと前記制限モードとの何れの制御モードで前記船舶本体を制御するかの決定を、前記船舶本体の運転中に継続して行い、
前記制御部は、前記船舶本体の運転中に前記船舶本体の現在位置が前記特定エリア内から前記特定エリア外に、又は、前記特定エリア外から前記特定エリア内に変わったときには、前記制御モードを変更する、
請求項1に記載の船舶。
【請求項27】
前記エリア情報は、前記特定エリアと異なる準特定エリアの位置情報をさらに含み、
前記制御部は、前記船舶本体の現在位置が前記準特定エリアに含まれるときには、前記通常モードと比べて少なくとも一部の前記船舶本体の機能が制限された第1制限モードにて前記船舶本体を制御し、
前記制御部は、前記船舶本体の現在位置が前記特定エリア及び前記準特定エリアのいずれにも含まれないときには、前記第1制限モードと比べて前記船舶本体の機能がさらに制限された第2制限モードにて前記船舶本体を制御する、
請求項1に記載の船舶。
【請求項28】
前記船舶本体は、エンジンを含み、
前記エリア情報は、前記特定エリアに含まれる速度制限エリアの位置情報をさらに含み、
前記制御部は、前記船舶本体の現在位置が前記速度制限エリアに含まれるときには、前記船舶本体の速度が所定の制限速度を超えないように、又は、前記エンジンの回転速度が所定の制限回転速度を超えないように、前記エンジンを制御する、
請求項1に記載の船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86668(P2013−86668A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229466(P2011−229466)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】