説明

色予測装置、画像形成装置、色予測方法およびそのプログラム

【課題】トナーの最大付着量が基準値と異なる場合において、負荷が少なく高精度に再現色を予測することができるようにする。
【解決手段】基準のトナー最大付着量で、所定の第1のサンプリング格子点用に出力した第1のカラーパッチの実効面積率を予め保持する記憶手段と、基準以外のトナー最大付着量で、第1のサンプリング格子点よりも少ない数の第2のサンプリング格子点用に第2のカラーパッチを出力する出力手段と、出力された第2のカラーパッチの分光反射率を測色する測色手段と、上記実効面積率と、測色手段により測色された第2のカラーパッチの分光反射率とを用いて、基準以外のトナー最大付着量における第1のサンプリング格子点の分光反射率を予測する予測手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色予測装置、画像形成装置、色予測方法およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタや複写機では、用途に応じてトナーの最大付着量を変えて印刷するモードが搭載されつつある。モードごとに最適な色変換パラメータを設定するためには、最大付着量の違いによる再現色を予測する技術が必要であるが、手軽に行えることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、画像出力装置において、色再現可能な範囲を、負荷を少なくして予測する目的で、まず、インクの打ち込み量を粗いサンプリング間隔で変化させた補正用のパッチを作成し、補正用パッチにおける、色予測理論値と実測値との差分により、各サンプリング格子点における補正値を推定している。そして、その補正値を色予測理論値に加算し、全サンプリング格子点における再現色を予測する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術等、今までの少ないパッチと色予測理論に基づく補正により再現色を予測する技術では、トナー(インク)の打ち込み量(網点面積率)が100%時の色情報を基準とした予測理論を使用しているため、トナーの最大付着量が異なると打ち込み量100%時の色が変わってしまうため、混色の推定をするための補正係数を算出し直さなくてはならない、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、トナーの最大付着量が基準値と異なる場合において、負荷が少なく高精度に再現色を予測することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の色予測装置は、基準のトナー最大付着量で、所定の第1のサンプリング格子点用に出力した第1のカラーパッチの実効面積率を予め保持する記憶手段と、基準以外のトナー最大付着量で、前記第1のサンプリング格子点よりも少ない数の第2のサンプリング格子点用に第2のカラーパッチを出力する出力手段と、前記出力された第2のカラーパッチの分光反射率を測色する測色手段と、前記実効面積率と、前記測色手段により測色された第2のカラーパッチの分光反射率とを用いて、基準以外のトナー最大付着量における第1のサンプリング格子点の分光反射率を予測する予測手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の画像形成装置は、基準のトナー最大付着量で、所定の第1のサンプリング格子点用に出力した第1のカラーパッチの実効面積率を予め保持する記憶手段と、基準以外のトナー最大付着量で、前記第1のサンプリング格子点よりも少ない数の第2のサンプリング格子点用に第2のカラーパッチを出力する出力手段と、前記出力された第2のカラーパッチの分光反射率を測色する測色手段と、前記実効面積率と、前記測色手段により測色された第2のカラーパッチの分光反射率とを用いて、基準以外のトナー最大付着量における第1のサンプリング格子点の分光反射率を予測する予測手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の色予測方法は、記憶手段に、基準のトナー最大付着量で、所定の第1のサンプリング格子点用に出力した第1のカラーパッチの実効面積率を予め保持する工程と、出力手段により、基準以外のトナー最大付着量で、前記第1のサンプリング格子点よりも少ない数の第2のサンプリング格子点用に第2のカラーパッチを出力する工程と、測色手段により、前記出力された第2のカラーパッチの分光反射率を測色する工程と、予測手段により、前記実効面積率と、前記測色手段により測色された第2のカラーパッチの分光反射率とを用いて、基準以外のトナー最大付着量における第1のサンプリング格子点の分光反射率を予測する工程とを具備することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、コンピュータを、基準以外のトナー最大付着量で、第1のサンプリング格子点よりも少ない数の第2のサンプリング格子点用に第2のカラーパッチを出力する出力手段と、前記出力された第2のカラーパッチの分光反射率を測色する測色手段と、記憶手段に予め保持している基準のトナー最大付着量で所定の第1のサンプリング格子点用に出力した第1のカラーパッチの実効面積率と、前記測色手段により測色された第2のカラーパッチの分光反射率とを用いて、基準以外のトナー最大付着量における第1のサンプリング格子点の分光反射率を予測する予測手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1のサンプリング格子点に対する基準のトナー最大付着量の実効面積率を予め保持しておき、第1のサンプリング格子点より少ない数の第2のサンプリング格子点での上記実効面積率と分光反射率の実測値とを用いて、第1のサンプリング格子点に対するトナー最大付着量が基準値以外の再現色予測を行うので、トナーの最大付着量が基準値と異なる場合の再現色を予測する際の処理負荷を低減することができるとともに高精度にその予測をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、色予測装置の主要部を示すブロック図である。
【図2】図2は、全格子点について説明する図である。
【図3】図3は、粗格子点について説明する図である。
【図4】図4は、分光反射率について説明する図である。
【図5】図5は、基準最大付着量LUTの作成方法の一例を説明するフローチャートである。
【図6】図6は、分光ノイゲバウアモデルについて説明する図である。
【図7】図7は、マーレイ・デービスモデルで与えられる網点面積率と実効面積率の関係を示す図である。
【図8】図8は、実効面積率について説明する図である。
【図9】図9は、全格子点色予測LUTの作成方法について説明するフローチャートである。
【図10】図10は、分光反射率の予測結果について説明する図である。
【図11】図11は、粗格子点差分LUTの作成方法について説明するフローチャートである。
【図12】図12は、分光反射率の予測差分について説明する図である。
【図13】図13は、全格子点差分LUTの作成方法について説明するフローチャートである。
【図14】図14は、重み係数、及び補間値の算出方法について説明するための図である。
【図15】図15は、合成部の処理について説明するフローチャートである。
【図16】図16は、分光反射率の補間結果について説明する図である。
【図17】図17は、複合機のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる色予測装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
はじめに、一実施形態である色予測装置の構成について、図1を用いて説明する。図1は、色予測装置の主要部を示すブロック図である。
【0014】
本実施形態の色予測装置は、図1に示すように、その主要部として、記憶部1、カラーパッチ出力部2、測色部3、記憶部4、粗格子点差分予測部5、全格子点差分予測部6、全格子点色予測部7、および、合成部8を備え、最終的に基準値以外の対象値のトナー最大付着量における再現色の予測結果を示すルックアップテーブル(LUT9)を出力する。以下に、各部の機能および動作の詳細を説明する。なお、記憶部1としてはRAM等の揮発性メモリを用いることができ、記憶部4としては、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いることができる。また、その他の各部は、具体的なハードウェアとしては、色予測装置に備えたCPU等の制御手段が、ROMまたはHDD等の記憶手段に格納された色予測用の制御プログラムを実行することにより、その機能を実現する。
【0015】
記憶部1には、カラーパッチの画像及び網点面積率(%)のデータが格納されている。上記カラーパッチの画像は、予め決められたサンプリング間隔の網点面積率で作成されている。ここでのサンプリング間隔は粗いため、このサンプリング点(第2のサンプリング格子点)を以後「粗格子点」と記述する。
【0016】
記憶部4には、基準最大付着量LUTが格納されている。基準最大付着量LUTには、基準のトナー最大付着量で色材各色のカラーパッチを出力して測色した分光反射率に対し、ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルを適用して取得した実効面積率(%)が格納されている。なお、網点面積率はトナーを紙に打つための理論的な面積率であり、実効面積率は紙上のトナーの面積が理論的な面積率よりも大きくなる現象であるドットゲインなどの影響が付加された面積率である。実効面積率は色材単色ごとに算出し、基準最大付着量LUTには色材単色毎に実効面積率を格納する。また、サンプリング間隔は粗格子点のそれよりも細かいため、この場合のサンプリング点(第1のサンプリング格子点)を以後「全格子点」と記述する。
【0017】
最終的に出力する、基準値以外の対象値のトナー最大付着量に対するLUT9を得るには、まず、感光体への書き込み条件を変更するなどしてトナー最大付着量を対象値に調整し、記憶部1に格納されている画像データを基にカラーパッチを出力する。そして、出力したカラーパッチを測色部3にて測色する。つまり粗格子点に対する網点面積率100%の色材各色の分光反射率データを取得する。
【0018】
次に、全格子点色予測部7において、測色部3で得た粗格子点に対する網点面積率100%の色材各色の分光反射率と、記憶部4に格納されている基準最大付着量LUTである実効面積率を用いて、全格子点に対する再現色を予測(分光反射率を算出)し、全格子点色予測LUTを作成する(詳細は後述する)。
【0019】
次に差分予測を行う。差分予測に関する機能ブロックは図1の点線で囲った部分であり、粗格子点差分予測部5と全格子点差分予測部6とから成る。粗格子点差分予測部5では、全格子点色予測部7で算出した値の内、粗格子点に対応する色予測値と、測色部3で得た実測値との差分値を算出して、この差分値からなる差分LUTを作成する。ここで作成されるのは粗格子点に対する差分LUT(以下、粗格子点差分LUTと記す)となる。
【0020】
次に全格子点差分予測部6では、実効面積率に基づく比率で粗格子点差分LUTを補間して、全格子点に対する差分LUT(以下、全格子点差分LUTと記す)を得る(詳細は後述する)。
【0021】
合成部8は、全格子点色予測LUTと全格子点差分LUTとを合成(ここでは加算演算)して、対象値のトナー最大付着量に対するLUT9を作成する。
【0022】
ここで、全格子点について説明する。図2は、全格子点について説明する図である。
【0023】
例えば、CMYK各色256階調を32階調間隔で、つまり階調の最小値を0%、最大値を100%として表現すると、1色当り12.5%間隔の9格子点で構成される。4色の場合、格子点総数は9^4=6561個となる。これを全格子点とする。
【0024】
続いて、粗格子点について説明する。図3は、粗格子点について説明する図である。
【0025】
上記全格子点に対し、例えばサンプリング間隔を2倍にした格子点を粗格子点とする。この場合、1色当たり25%間隔の5格子点で構成される。4色の場合、粗格子点の総数は5^4=625個となる。
【0026】
記憶部1に格納されている画像データは、上述した図3の粗格子点上の階調値を網点面積率として構成される。測定用カラーパッチは上記画像データを対象の出力機器(例えば、図17に示すEngine60)で出力して得ることになる。なお、その出力の際は、露光条件や感光体への書き込み条件を変更し、トナー最大付着量を対象値となるよう設定しておく。
【0027】
続いて、分光反射率について説明する。図4は、分光反射率について説明する図である。
【0028】
測色部3では、カラーパッチ出力部2にて出力したカラーパッチを測色し、分光反射率データを得る。なお、図4に示す例は、粗格子点におけるシアンに関する分光反射率の例であり、横軸を波長、縦軸を分光反射率とし、未着色(paper)、階調25%、50%、75%および100%のそれぞれについてグラフ化したものである。
【0029】
次に、記憶部4に格納される基準最大付着量LUTの作成方法の一例を、図5のフローチャートを用いて説明する。図5は、基準最大付着量LUTの作成方法の一例を説明するフローチャートである。
【0030】
まず、実効面積率取得用のカラーパッチを出力する(S501)。カラーパッチは、全格子点のサンプリング間隔に対する網点面積率からなりCMYK各色について作成する。本実施例では、1色9格子点のため、出力パッチ数は9×4=36パッチとなる。
【0031】
次に、出力したカラーパッチの測色を行い、分光反射率を得る(S502)。
【0032】
次に、取得した分光反射率に対しユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル(図中、“ユール・ニールセン予測式”と略記)を適用し(S503)、実効面積率を得る(S504)。
【0033】
ここで、ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルについて説明を行う。このモデルは、よく知られた分光ノイゲバウアモデルとユール・ニールセンモデルとに基づいている。なお、以下の説明では、説明の簡略化のためCMYの3種類の色材を用いた場合のモデルについて説明するが、同様のモデルを本実施形態のCMYK4色セットを用いたモデルに拡張することは容易である。
【0034】
分光ノイゲバウアモデルでは、任意の色材セットで印刷したときの分光反射率R(λ)は、以下の式(1)で与えられる(図6参照)。
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、aはi番目の領域の面積率であり、R(λ)はi番目の領域の分光反射率である。添え字iは、色材の無い領域(w)と、シアン色材のみの領域(c)と、マゼンタ色材のみの領域(m)と、イエロー色材のみの領域(y)と、マゼンタ色材とイエロー色材が印刷される領域(r)と、イエロー色材とシアン色材が印刷される領域(g)と、シアン色材とマゼンタ色材が印刷される領域(b)と、CMYの3つの色材が印刷される領域(k)をそれぞれ意味している。また、f,f,fは、CMY各色材を1種類のみ印刷したときにその色材で覆われる面積の割合、すなわち実効面積率である。
【0037】
この実効面積率f,f,fは、マーレイ・デービスモデルで与えられる。マーレイ・デービスモデルでは、図7に示すように、例えばシアンの実効面積率fは、シアンの網点面積率xの非線形関数となる(他の色についても同様)。従って、この非線形関数に対応した1次元ルックアップテーブルによって網点面積率を実効面積率に換算することができる。
【0038】
ここで、分光反射率に関するユール・ニールセンモデルを適用すると、上記式(1)は以下の式(2a)、または式(2b)に書き換えられる。
【0039】
【数2】

【0040】
なお、nは1以上の所定の係数であり、例えばn=4.0に設定することができる。上記式(2a)および式(2b)は、ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル(Yule−Nielsen Spectral Neugebauer Model)を表す式である。
【0041】
本実施形態では、前述のS502で得た1次色の分光反射率と上記式(2a)もしくは式(2b)より、CMY各色の各網点面積率における実効面積率f,f,fを算出する。算出方法の一例としては、分光反射率の全波長データを使用したフィッティングモデルを使用する。例えば、分光反射率の測定波長範囲が400から700nm、測定間隔が10nmの場合、31個のデータを得る。そして、式(2a)もしくは式(2b)において、実測値との平均差分が最小になるように実効面積率を決める。
【0042】
ここで注意することは、式(2a)もしくは式(2b)における分光反射率は、最大付着量が基準値の時の分光反射率でということある。よって算出される実効面積率f,f,fは、最大付着量が基準値に対するものとなるが、これらの値を最大付着量が基準値以外の場合に適用するためLUTとして保存する。図8のグラフは、基準最大付着量と対象最大付着量(基準値以外の対象のトナー最大付着量)の実効面積率の関係を表している。このようにトナー最大付着量が異なっても、実効面積率はほぼ等しい関係にある。
【0043】
図5に戻り、最後に、S504で得られた実効面積率f,f,f,fを基準最大付着量LUTとして作成し、記憶部4に記憶する(S505)。
【0044】
次に、全格子点色予測部7により作成される全格子点色予測LUTの作成方法を、図9のフローチャートを用いて説明する。図9は、全格子点色予測LUTの作成方法について説明するフローチャートである。
【0045】
まず、出力機器のトナー最大付着量を対象値に設定し(S901)、CMYK各色における網点面積率100%のカラーパッチを出力する(S902)。
【0046】
次に、出力パッチの測色を行い、分光反射率を得る(S903)。
【0047】
次に、記憶部4から基準最大付着量LUTを読み込み(S904)、S903で得た分光反射率と、S904で得た実効面積率に対し、前述の式(2a)もしくは(2b)のユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル(図中、“ユール・ニールセン予測式”と略記)を適用し、全格子点における分光反射率を算出して(S905)、全格子点色予測LUTを作成する(S906)。
【0048】
図10は、ある網点面積率におけるブルーの分光反射率を示しており、四角マークは対象最大付着量での実測値、実線は基準対象付着量での実効面積率を用いてユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルを適用し予測した値である。横軸は波長、縦軸が分光反射率である。図10に示すように予測値は実測値をほぼ追従しているが、僅かな誤差があることが分かる。
【0049】
次に、粗格子点差分予測部5により作成される粗格子点差分LUTの作成方法を、図11のフローチャートを用いて説明する。図11は、粗格子点差分LUTの作成方法について説明するフローチャートである。
【0050】
まず、出力機器のトナー最大付着量を対象値に設定し(S1101)、粗格子点のカラーパッチを出力する(S1102)。
【0051】
次に、出力したカラーパッチの測色を行い、分光反射率を得る(S1103)。
【0052】
一方で、前述で算出しておいた、全格子点色予測LUTを読み込み(S1104)、粗格子点に対応する格子点における分光反射率の差分値を算出し(S1105)、算出した差分値を基に粗格子点差分LUTを作成する(S1106)。
【0053】
図12に、ブルーの分光反射率における予測差分を示す。横軸は波長、縦軸が差分反射率(予測差分)である。図12において網点面積率は、(1201)<(1202)<(1203)、の関係となっており、網点面積率が高くなると予測差分が大きくなることを示している。
【0054】
次に、全格子点差分予測部6により作成される全格子点差分LUTの作成方法を、図13のフローチャートを用いて説明する。図13は、全格子点差分LUTの作成方法について説明するフローチャートである。
【0055】
まず、粗格子点、及び全格子点における網点面積率を読み込み(S1301)、実効面積率へ変換する(S1302)。ここで、実効面積率への変換には図7を用いて説明した1次元ルックアップテーブルを用いる。
【0056】
次に、粗格子点差分LUTを読み込む(S1303)。
【0057】
次に、S1302で得た粗格子点の実効面積率を用いて、後述のように全格子点における補間のための重み係数を算出する(S1304)。
【0058】
次に、算出した重み係数を用いて、後述のように全格子点各々における補間値(分光反射率)を算出する(S1305)。
【0059】
ここで、上記重み係数、及び補間値の算出方法を、図14を用いて説明する。図14は、上記重み係数、及び補間値の算出方法について説明するための図である。
【0060】
図14においてx,x,xは網点面積率を表す。このうち、x,xは粗格子点に属し、x,x,xは全格子点に属する。ただし、x<x<xである。一方、f(x),f(x)は粗格子点における実効面積率であり、f(x)は全格子点における実効面積率である。このとき、実効面積率f(x)の格子点における重み係数df12,df23は以下の式(3)で算出する。
【0061】
【数3】

【0062】
また、実効面積率f(x)の格子点における補間値(分光反射率)dR(x)は、以下の式(4)で算出する。
【0063】
【数4】

【0064】
ここで、dR(x)は、粗格子点差分LUTにおける、実効面積率xに対応する分光反射率の予測差分値である(図12を用いて前述)。
【0065】
図13に戻り、すべての全格子点について予測差分値を求めた後に、全格子点差分LUTを作成する(S1306)。
【0066】
次に、合成部8の処理について、図15のフローチャートを用いて説明する。図15は、合成部8の処理について説明するフローチャートである。
【0067】
まず、全格子点色予測LUTを読み込み(S1501)、続いて、全格子点差分LUTを読み込む(S1502)。
【0068】
次に、同じ実効面積率において読み込んだ上記二つのLUTを加算する(S1503)。
【0069】
次いで、全格子点の各々について加算演算を行い、分光反射率を算出し、その結果を対象最大付着量におけるLUT9とする(S1504)。
【0070】
図16は、図10に対して補間を行った結果を示している。四角マークは対象最大付着量の実測値、実線は基準対象付着量の実効面積率を用いてユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデル予測した値(全格子点色予測LUTの中身)、点線は補間結果(LUT9の中身)である。横軸は波長、縦軸が分光反射率である。補間を行った結果、予測精度は飛躍的に向上し、実測値をほぼ正確に予測できていることが分かる。
【0071】
ところで、上述した色予測装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等の画像形成装置に適用できるものである。以下に、そのような画像形成装置の一例として複合機のハードウェア構成について説明する。図17は、複合機のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、上述した色予測装置の機能は、下記の複写機等の画像形成装置に備わるCPUが、図9,11,13,15を用いて上述した各処理を実現する制御プログラムを実行し、その画像形成装置に備わるハードウェア構成要素を制御することにより達成される。
【0072】
図17に示すように、この複合機は、コントローラ10とエンジン部(Engine)60とをPCI(Peripheral Component Interface)バスで接続した構成となる。コントローラ10は、複合機全体の制御と描画、通信、図示しない操作部からの入力を制御するコントローラである。エンジン部60は、PCIバスに接続可能なプリンタエンジンなどであり、たとえば白黒プロッタ、1ドラムカラープロッタ、4ドラムカラープロッタ、スキャナまたはファックスユニットなどである。なお、このエンジン部60には、プロッタなどのいわゆるエンジン部分に加えて、誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分が含まれる。
【0073】
コントローラ10は、CPU11と、ノースブリッジ(NB)13と、システムメモリ(MEM−P)12と、サウスブリッジ(SB)14と、ローカルメモリ(MEM−C)17と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)16と、ハードディスクドライブ(HDD)18とを有し、ノースブリッジ(NB)13とASIC16との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス15で接続した構成となる。また、MEM−P12は、ROM(Read Only Memory)12aと、RAM(Random Access Memory)12bと、をさらに有する。
【0074】
CPU11は、複合機の全体制御をおこなうものであり、NB13、MEM−P12およびSB14からなるチップセットを有し、このチップセットを介して他の機器と接続される。
【0075】
NB13は、CPU11とMEM−P12、SB14、AGP15とを接続するためのブリッジであり、MEM−P12に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCIマスタおよびAGPターゲットとを有する。
【0076】
MEM−P12は、プログラムやデータの格納用メモリ、プログラムやデータの展開用メモリ、プリンタの描画用メモリなどとして用いるシステムメモリであり、ROM12aとRAM12bとからなる。ROM12aは、プログラムやデータの格納用メモリとして用いる読み出し専用のメモリであり、RAM12bは、プログラムやデータの展開用メモリ、プリンタの描画用メモリなどとして用いる書き込みおよび読み出し可能なメモリである。
【0077】
SB14は、NB13とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。このSB14は、PCIバスを介してNB13と接続されており、このPCIバスには、ネットワークインターフェース(I/F)部なども接続される。
【0078】
ASIC16は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGP15、PCIバス、HDD18およびMEM−C17をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC16は、PCIターゲットおよびAGPマスタと、ASIC16の中核をなすアービタ(ARB)と、MEM−C17を制御するメモリコントローラと、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などをおこなう複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)と、エンジン部60との間でPCIバスを介したデータ転送をおこなうPCIユニットとからなる。このASIC16には、PCIバスを介してFCU(Facsimile Control Unit)30、USB(Universal Serial Bus)40、IEEE1394(the Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)インターフェース50が接続される。操作表示部20はASIC16に直接接続されている。
【0079】
MEM−C17は、コピー用画像バッファ、符号バッファとして用いるローカルメモリであり、HDD(Hard Disk Drive)18は、画像データの蓄積、プログラムの蓄積、フォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。
【0080】
AGP15は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレーターカード用のバスインターフェースであり、MEM−P12に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレーターカードを高速にするものである。
【0081】
なお、前述した色予測装置、または上記複写機等の画像形成装置上で実行される前述の色予測装置の機能を実現する制御プログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供されるが、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。あるいは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供または配布するように構成しても良い。
【0082】
なお、上記にて、発明を実施するための実施の形態について説明を行ったが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を損なわない範囲で変更することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 記憶部
2 カラーパッチ出力部(出力手段)
3 測色部(測色手段)
4 記憶部(記憶手段)
5 粗格子点差分予測部(予測手段の一部)
6 全格子点差分予測部(予測手段の一部)
7 全格子点色予測部(予測手段の一部)
8 合成部
9 LUT
10 コントローラ
11 CPU
12 システムメモリ(MEM−P)
12a ROM(Read Only Memory)
12b RAM(Random Access Memory)
13 ノースブリッジ(NB)
14 サウスブリッジ(SB)
15 AGP(Accelerated Graphics Port)バス
16 ASIC
17 ローカルメモリ(MEM−C)
18 ハードディスクドライブ(HDD)
20 操作表示部
30 FCU(Facsimile Control Unit)
40 USB(Universal Serial Bus)
50 IEEE1394インターフェース
60 エンジン部(Engine)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特許第4073003号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準のトナー最大付着量で、所定の第1のサンプリング格子点用に出力した第1のカラーパッチの実効面積率を予め保持する記憶手段と、
基準以外のトナー最大付着量で、前記第1のサンプリング格子点よりも少ない数の第2のサンプリング格子点用に第2のカラーパッチを出力する出力手段と、
前記出力された第2のカラーパッチの分光反射率を測色する測色手段と、
前記実効面積率と、前記測色手段により測色された第2のカラーパッチの分光反射率とを用いて、基準以外のトナー最大付着量における第1のサンプリング格子点の分光反射率を予測する予測手段と
を具備することを特徴とする色予測装置。
【請求項2】
前記予測手段は、
前記実効面積率に対し、ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルを適用し、前記第1のサンプリング格子点の分光反射率の理論値を算出する理論値算出手段と、
前記理論値算出手段により算出した分光反射率のうち、前記第2のサンプリング格子点に対応する分光反射率の実測値との差分を算出する差分値算出手段と、
前記差分値算出手段により算出した前記第2のサンプリング格子点の差分値と、前記実効面積率とを用いて、前記第1のサンプリング格子点の補間値を算出する補間値算出手段と、
前記理論値と前記補間値とを用いて前記第1のサンプリング格子点の分光反射率を予測する手段と
を有することを特徴とする請求項1記載の色予測装置。
【請求項3】
基準のトナー最大付着量で、所定の第1のサンプリング格子点用に出力した第1のカラーパッチの実効面積率を予め保持する記憶手段と、
基準以外のトナー最大付着量で、前記第1のサンプリング格子点よりも少ない数の第2のサンプリング格子点用に第2のカラーパッチを出力する出力手段と、
前記出力された第2のカラーパッチの分光反射率を測色する測色手段と、
前記実効面積率と、前記測色手段により測色された第2のカラーパッチの分光反射率とを用いて、基準以外のトナー最大付着量における第1のサンプリング格子点の分光反射率を予測する予測手段と
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記予測手段は、
前記実効面積率に対し、ユール・ニールセン分光ノイゲバウアモデルを適用し、前記第1のサンプリング格子点の分光反射率の理論値を算出する理論値算出手段と、
前記理論値算出手段により算出した分光反射率のうち、前記第2のサンプリング格子点に対応する分光反射率の実測値との差分を算出する差分値算出手段と、
前記差分値算出手段により算出した前記第2のサンプリング格子点の差分値と、前記実効面積率とを用いて、前記第1のサンプリング格子点の補間値を算出する補間値算出手段と、
前記理論値と前記補間値とを用いて前記第1のサンプリング格子点の分光反射率を予測する手段と
を有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
記憶手段に、基準のトナー最大付着量で、所定の第1のサンプリング格子点用に出力した第1のカラーパッチの実効面積率を予め保持する工程と、
出力手段により、基準以外のトナー最大付着量で、前記第1のサンプリング格子点よりも少ない数の第2のサンプリング格子点用に第2のカラーパッチを出力する工程と、
測色手段により、前記出力された第2のカラーパッチの分光反射率を測色する工程と、
予測手段により、前記実効面積率と、前記測色手段により測色された第2のカラーパッチの分光反射率とを用いて、基準以外のトナー最大付着量における第1のサンプリング格子点の分光反射率を予測する工程と
を具備することを特徴とする色予測方法。
【請求項6】
コンピュータを、
基準以外のトナー最大付着量で、第1のサンプリング格子点よりも少ない数の第2のサンプリング格子点用に第2のカラーパッチを出力する出力手段と、
前記出力された第2のカラーパッチの分光反射率を測色する測色手段と、
記憶手段に予め保持している基準のトナー最大付着量で所定の第1のサンプリング格子点用に出力した第1のカラーパッチの実効面積率と、前記測色手段により測色された第2のカラーパッチの分光反射率とを用いて、基準以外のトナー最大付着量における第1のサンプリング格子点の分光反射率を予測する予測手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−255943(P2012−255943A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129522(P2011−129522)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】