説明

色変動検知装置、画像形成装置及び色変動検知制御プログラム

【課題】画像の記録中に発生した色変動を、当該画像を記録している間に検知する。
【解決手段】入力画像データ102をレンダリング処理して生成されるインク吐出信号104から同一色からなる所定の範囲を連続色として検出する連続色吐出検出モジュール201と、インク吐出信号104に基づいて記録媒体に画像を記録する記録ヘッド21〜24によって連続色が記録された画像の色測定を行う撮像ユニット30と、連続色吐出検出モジュール201によって検出された連続色データ202、及び撮像ユニット30によって撮像された連続色の撮像データを保持するデータ保存モジュール203及びメモリ165と、このメモリ165に保持された連続色データ202と撮像データ105のうちの位置情報及び色情報を参照し、連続色と同一位置情報を有する撮像データ105の実測値を比較して色変動を判断する色変動判断部205と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変動検知装置、画像形成装置及び色変動検知制御プログラムに係り、特に画像形成時の経時的な色の変動を検知する色変動検知装置、及びこの色変動検知装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、デジタル複合機などの画像形成装置、及びこの色変動検知をコンピュータによって実行させるための色変動検知制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタなどの画像形成装置においては、温度変化あるいは湿度変化によるインクの状態変化によって記録媒体上に再現される色が経時的に変化する可能性がある。そこで色の変化を検知し、色補正することが行われている。この技術として、例えば特許文献1(特開2002−120388号公報)に記載の発明が公知である。この発明では、スキャナなどの入力機器を用い、複数の有彩色の色材の混合比率を変化させた複数の暗灰色の混合色パッチからなる2種類のテストパターンを印字し、これら印字された2種類のテストパターンから選択された2つの混合色パッチに基づいて記録装置の入出力信号の特性を推定し補正するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記特許文献1記載の発明を含め、従来実施されている色補正では、テストパターンを記録媒体上に記録し、記録されたテストパターンを読み取って補正データを取得しているが、補正データの取得は記録が全て終了した後であった。そのため、実際に画像を記録している間に記録中の画像に生じる色の変化や変動を検出し、あるいは色の変化あるいは変動の状態を監視することはできなかった。
【0004】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、画像の記録中に発生した色変動を、当該画像を記録している間に検知することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、第1の手段は、同一色の色変動を検知する色変動検知装置であって、入力画像データをレンダリング処理して生成されるインク吐出信号から同一色からなる所定の範囲を連続色として検出する検出手段と、前記インク吐出信号に基づいて記録媒体に画像を記録する記録手段によって前記連続色が記録された画像の色測定を行う撮像手段と、前記検出手段によって検出された連続色データ、及び前記撮像手段によって撮像された撮像データを保持する保持手段と、前記保持手段に保持された前記連続色データ及び撮像データのうちの位置情報及び色情報を参照し、連続色と同一位置情報を有する撮像データの実測値を比較して色変動を判断する判断手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
第2の手段は、第1の手段において、前記判断手段は、前記保持手段に保持された連続色の位置情報及び色情報から判断対象となる記録位置に該当するものを選択し、同一色の記録指示がなされた部分の実測値を比較し、1枚の画像記録中における色変動を判断することを特徴とする。
【0007】
第3の手段は、第1の手段において、前記判断手段は、複数枚に同一情報を記録する際、2枚目以降の色変動を判断することを特徴とする。
【0008】
第4の手段は、第1又は第3の手段において、前記判断手段は、複数枚に同一情報を記録する際、1枚目の実測値と2枚目以降の実測値を比較し、1枚ごとの色変動を判断することを特徴とする。
【0009】
第5の手段は、第1又は第3の手段において、前記検出手段は、複数枚に同一情報を記録する際、2枚目からは1枚目とは異なる連続色の色情報を用いて連続色を検出すること
を特徴とする。
【0010】
第6の手段は、第1ないし第5のいずれかの手段において、前記判断手段は、画像の記録開始から記録終了までの間に色変動を判断することを特徴とする。
【0011】
第7の手段は、第1ないし第6のいずれかの手段において、前記撮像手段は前記記録手段と一体に移動し、当該記録手段の記録動作と並行して撮像することを特徴とする。
【0012】
第8の手段は、第1ないし第7のいずれかの手段に係る色変動検知装置を画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0013】
第9の手段は、第8の手段において、色補正手段をさらに備え、前記判断手段によって色変動ありと判断したとき、前記記録手段による記録を終了し、次の行からテストパターンを記録して当該ペストパターンを読み取り、読み取った画像の色に基づいて前記色補正手段によって色補正を行うことを特徴とする。
【0014】
第10の手段は、第8の手段において、色補正手段をさらに備え、前記判断手段によって色変動ありと判断したとき、前記記録手段による記録を終了し、記録媒体の余白にテストパターンを記録して当該ペストパターンを読み取り、読み取った画像の色に基づいて前記色補正手段によって色補正を行うことを特徴とする。
【0015】
第11の手段は、第8ないし第10のいずれかの手段において、色変動が発生した旨を報告する報告手段を備え、前記判断手段が色変動ありと判断した直後に前記報告手段はその旨報告し、前記記録手段は画像記録を中断することを特徴とする。
【0016】
第12の手段は、同一色の色変動を検知し、判断する制御をコンピュータによって実行させる色変動検知制御プログラムであって、入力画像データをレンダリング処理して画像を形成するためのインク吐出信号から同一色からなる所定の範囲を連続色として検出する第1の手順と、前記インク吐出信号に基づいて記録媒体に画像を記録する記録手段によって前記連続色が記録された画像を撮像手段によって撮像し、色測定を行う第2の手順と、前記第1の手順で検出された連続色の位置情報及び色情報、並びに前記撮像手段によって撮像された連続色の位置情報及び実測値を保持手段に保持させる第3の手順と、前記第4の手順で前記保持手段に保持された前記位置情報及び色情報のうち、連続色と同一位置情報を有する実測値を比較して色変動を判断する第4の手順と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
なお、後述の実施形態では、色変動検知装置は色変動検知システム200に、入力画像データは画像データ102に、インク吐出信号は符号104に、検出手段は連続色吐出検出モジュール201に、記録手段は記録ヘッド21〜24に、撮像手段は撮像ユニット30に、保持手段はメモリ165に、判断手段は色変動判断部205に、位置情報は座標A及び座標Bに、色情報は再現RGB値に、実測値は実測RGB値に、画像形成装置はプリンタ100に、それぞれ対応する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、画像の記録中に発生した色変動を、当該画像を記録している間に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタの印字部の概略構成を示す図である。
【図2】図1におけるキャリッジの要部を示す平面図である。
【図3】図2に示したキャリッジの要部の斜視図である。
【図4】色変動検知システムを含むプリンタのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図5】色変動検知システムの処理構成を示すブロック図である。
【図6】色変動検知システムで実行される検知処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図7】記録媒体に対する撮像可能範囲を示す説明図である。
【図8】撮像データの使用範囲を示す説明図である。
【図9】連続色吐出検出手順を示すフローチャートを含む説明図である。
【図10】連続色データと撮像データを示す説明図である。
【図11】連続色データと撮像データの処理手順を示す説明図である。
【図12】色変動判断部の判断処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、画像記録中に連続色のインク吐出を判断し、インク吐出直後に連続箇所を撮像し、印字中に撮像されたRGBデータを比較することが特徴になっている。
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタ100の印字部の概略構成を示す図である。同図において、プリンタ100の印字部は、インクジェット方式(液滴吐出型)の記録ヘッド21,22,23,24を搭載したキャリッジ5を中心に構成されている。キャリッジ5は、左右の側板3,4間に掛け渡されたガイドロッド1及び副ガイド2に図示しない軸受け及び副ガイド受け部11を介してそれぞれ保持され、矢印X1,X2方向(主走査方向)に摺動可能となっている。キャリッジ5には黒(K)のインク滴を吐出する記録ヘッド21,22、イエロー(Y)、マゼンタ(M)のインク滴を吐出する記録ヘッド23、シアン(C)のインク滴を吐出する記録ヘッド24が搭載されている。
【0022】
キャリッジ5を移動走査する主走査機構は、主走査方向の一方側に配置される主走査モータ8と、主走査モータ8によって回転駆動される駆動プーリ7と、主走査方向他方側に配置された従動プーリ15と、駆動プーリ7と従動プーリ15との間に掛け回されたタイミングベルト9とを備えている。なお、従動プーリ15は、図示しないテンションスプリングによって外方(駆動プーリ7に対して離れる方向)に張力が加えられている。タイミングベルト9は、キャリッジ5の背面側に設けたベルト保持部10に一部分が固定保持され、これによりキャリッジ5はタイミングベルト9の回転移動に伴って主走査方向に移動する。
【0023】
また、キャリッジ5の主走査方向に沿うようにエンコーダシート26が配置されており、キャリッジ5に設けたエンコーダセンサ27によって当該エンコーダシート26を読み取り、キャリッジ5の主走査位置を検知することができる。このキャリッジ5の主走査領域のうち、記録領域では、シート状記録媒体(以下、単に記録媒体と称する。)が図示しない送り機構によってキャリッジ5の主走査方向と直交する矢印Y1方向(副走査方向)に間欠的に搬送される。
【0024】
また、キャリッジ5の主走査方向の移動方向に対して下流側の端部には(図1では右横)、撮像ユニット30が取り付けられ、キャリッジ5と一体に主走査方向に移動する。撮像ユニット30の中心は記録ヘッド21,22,23,24の中心とX軸方向(矢印X1,X2方向)で1つの直線上に組み付けられる。これにより記録ヘッド21,22,23,24により記録媒体に記録された直後の画像を主走査方向に移動しながら撮像することができる。なお、符号14は記録ヘッド21〜24のインク吐出作用を維持するための維持機構である。
【0025】
このように、本実施形態に係るプリンタ100では、キャリッジ5を主走査方向に移動し、図示しない記録媒体を間欠的に副走査方向に送りながら、記録ヘッド21〜24を画像情報に応じて駆動して液滴を吐出させ、記録媒体上に画像データに基づいたフルカラーの可視画像を形成することができる。
【0026】
図2は図1におけるキャリッジの要部を示す平面図、図3はその斜視図である。これらの図において、図2及び図3に示したキャリッジ5には記録ヘッド21,22,23,24が搭載され、後述の画像記録モジュール201からの指示により、画像データにしたがってノズル列21a,22a,23a,24aからそれぞれ各色のインクを吐出し、記録媒体に画像を記録する。
【0027】
撮像ユニット30はキャリッジ5に取り付けられ、記録ヘッド21〜24と共に主走査方向に往復動作し、画像記録と共に撮像を行う。撮像ユニット30はイメージセンサ31を備え、レンズ32を介して記録媒体上に記録された画像を撮像する。撮像ユニット30はキャリッジ5の前後左右いずれに取り付けても良いが、画像形成直後の画像を撮像することを意図すれば、前述の図2及び図3に示すように主走査方向下流側の面に設置することが望ましい。また、2次元イメージセンサ31に代えて各色のフィルタを介して受光するフォトダイオードを使用し、色味を比較して色ずれを検知するようにすることもできる。撮像ユニット30は、記録中のキャリッジ移動速度で色を撮像できる装置であれば十分である。
【0028】
なお、撮像ユニット30の位置は、前述のようにエンコーダシート26をエンコーダセンサ27によって読み取り、取得したエンコーダ値で判断することができる。あるいは記録ヘッド21〜24のノズルへのデータ列を主走査方向にカウントしていくことにより吐出データの主走査方向の位置を得ることができる。
【0029】
図4は色変動検知システムを含むプリンタのハードウェア構成を示すブロック図である。同図において、プリンタ100は、操作部110、モニタ120、コントローラ130、インターフェース140、画像処理部150、制御部160、記録部170、及び撮像部180から構成され、インターフェース140を介してホストPC101と接続されている。
【0030】
操作部110はユーザが操作入力するためのものであり、モニタ120は入力のための表示及びシステムの状態の表示などを行い、両者でユーザI/Fを構成する。また、色変動が発生したときの報告をする。なお、報告先はホストPC101でも良い。コントローラ130はプリンタ全体及び各部の制御を司り、CPU( Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの制御要素を含む。外部のホストPC101とプリンタ100内の各部はインターフェース140によって接続される。CPUはROMに格納されたプログラムコードを読み出し、RAMに展開し、各部の制御を実行する。ホストPC101からは、インターフェース304を介して、画像処理部305に対して画像データが送られる。
【0031】
画像処理部150は、記録画像処理部151及びメモリ152を含み、記録画像処理部151で画像記録を行うための画像処理データを生成し、生成された画像処理データをメモリ152に記憶する。
【0032】
制御部160は記録制御部161、連続色吐出検知部162、撮像制御部163、色変動検知部164及びメモリ165を含み、記録制御部161において記録部170を制御し、主走査エンコーダセンサ27からの位置情報にしたがい、記録ヘッド21〜24からインクを吐出させることによって、記録媒体上に入力画像データに対応した画像を形成する。記録媒体の送り量は副走査エンコーダセンサからの位置情報により制御する。
【0033】
記録制御部161は画像処理部150で処理された画像データに基づいて画像記録を制御する。連続色吐出検知部162は、記録制御部161で扱われている記録ヘッド21〜24のインク吐出情報を読み取り、連続する同一色の記録領域を検出する。連続する同一色の記録領域をここでは連続色と称している。撮像制御部163は、撮像部180を制御し、記録媒体上に形成された記録画像をイメージセンサ31により撮像する。色変動検知部164は、撮像した撮像データと、検出された連続色の情報から色変動を検知する。撮像データは座標とRGB値である。メモリ165は撮像データを蓄積し、検知された連続色の情報、そして色変動の情報を保存する。メモリは撮像データを一時蓄積し、連続色のデータでないものを破棄することもできる。
【0034】
記録部170は記録ヘッド21〜24、主走査エンコーダセンサ27及び副走査エンコーダセンサ28を含み、記録媒体に対して画像記録を行う。画像記録は記録ヘッド21〜24からインクを吐出することによって行われる。その際の記録ヘッド21〜24の位置情報は、例えば、主走査エンコーダセンサ27及び副走査エンコーダセンサ28により取得し、制御部160に渡される。
【0035】
撮像部180はイメージセンサ31を含み、記録媒体上に記録した画像を撮像する。
【0036】
図5は、色変動検知システムの処理構成を示すブロック図である。プリンタ100の色変動検知システム200は、連続色ブロック検出モジュール201、データ保存モジュール203、メモリ165及び色変動判断部204を含み、入力されるインク吐出信号104を処理し、色変動を判断する。
【0037】
インク吐出信号104は、記録ヘッド21〜24を駆動し、画像記録を行うための信号であり、画像記録モジュール103から出力される。画像記録モジュール103は、ホストPC101から送られてくる画像データ102をレンダリング処理してスキャンデータを作成し、記録ヘッド21〜24によって記録するためのインク吐出信号104を出力する。画像データ102は記録媒体に形成するデータである。
【0038】
画像記録モジュール103は記録制御部161で動作し、画像データ102が入力され、画像の記録が開始されると、記録ヘッド21〜24にインク吐出信号104を出力する。
【0039】
撮像ユニット30は撮像部315で動作し、画像の記録が開始されると、イメージセンサ31から得た撮像データ105をデータ保存モジュール203に送る。
【0040】
報告部106は、外部に色変動についての情報を報告するものである。色変動の判断がされた場合はメモリ165に情報を保存しておき、記録終了時にモニタ120を使用して報告する。色変動の判断時に同時に報告しても良い。また、報告の方法はモニタ120表示に限定するものではなく、例えば、ホストPC101に報告するようにしても良い。
【0041】
以下、色変動検知システム200各モジュールの機能について説明する。
連続色吐出検出モジュール201は連続色吐出検知部162内で動作し、画像記録モジュール103から記録ヘッド21〜24へのインク吐出信号104を受け取り、連続色吐出を検出した場合に、データ保存モジュール203へと、連続色データ202を送る。したがって画像記録モジュール103は、色変動検知システムを意識することなく画像を記録することができる。
【0042】
データ保存モジュール203は、色変動検知部164で動作する。入力される連続色データ202と撮像データ105は、それぞれ一時的にメモリ165に保存される。
【0043】
色変動判断部205は色変動検知部164で動作し、メモリ165に保存された撮像データ105中から、連続色データ202の記録位置に該当するものを選択する。その実測されたRGB値を、同一色の吐出指示が出た部分同士で比較し、1枚の画像記録中における色変動を判断する。ここでは、一例としてRGB値を使用しているが、色を指示できるものであれば良く、LABやCMYKなどを使用することもできる。なお、連続色データ202の記録位置に該当しない撮像データは色変動判断に使用しないので、メモリ165に保存することなく破棄しても良い。
【0044】
図6は色変動検知システムで実行される検知処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
【0045】
ユーザの例えばホストPC101からの指示により画像記録が開始されると記録媒体への画像記録が始まる。この画像記録では、画像に再現される色は温度変化や湿度変化によるインクの状態変化により常に変化する可能性がある。そこで、画像記録が開始されると(ステップS101)、キャリッジ5にしたがって撮像ユニット30が移動し、インク吐出後の記録媒体の画像を撮像する(ステップS102)。インクが記録ヘッド21〜24から吐出された後、その部分を撮像するまでの間に、記録ヘッド21〜24から撮像ユニット30までの移動距離とそのときの動作速度に応じた遅れが生じても不都合はない。
【0046】
撮像が終了した後、連続色があるかどうかを判断する(ステップS103)。連続色と判断された場合は連続色データを保存し(ステップS104)、連続色と判断されなかった場合に記録終了でなければ(ステップS108:No)ステップS102に戻って撮像を継続し、記録終了であれば(ステップS108:Yes)、色変動検知の結果が報告される(ステップS109)。
【0047】
他方、ステップS103で、連続色データがメモリ165に保存された場合(ステップS104)、メモリ165に一時保存されている撮像データから、連続色の位置に相当する撮像データを選別する(ステップS105)。撮像データの選別は、撮像データ同士のRGB値の比較によって行われ、この比較結果に基づいて記録画像内に色変動があると判断された場合(ステップS106:Yes)、メモリ165へ判断結果を蓄積する(ステップS107)。蓄積後は記録終了かどうかを判断し(ステップS108)、記録が終了していなければ、ステップS102以降の処理を繰り返し、終了していれば、蓄積結果が報告される(ステップS109)。なお、ステップS106で色変動であると判断されない場合も、ステップS108の記録終了判断が実行される。
【0048】
このほかに記録終了後、蓄積された撮像データから、同一色になる部分を選択し、各色で色変動を判別し、その情報を報告することもできる。色変動の報告は、画像記録終了後でなくとも、画像記録中に行うこともできる。報告のタイミングは任意である。
【0049】
図7は記録媒体に対する撮像可能範囲を示す説明図である。イメージセンサ31に記録ヘッド21〜24の幅よりも小さな範囲を撮像させる場合に限り撮像できる範囲が限られるため、撮像可能範囲を設定する必要がある。イメージセンサ31に記録ヘッド幅よりも大きい範囲を撮像させる場合はこの範囲を設定する必要はない。記録媒体上に画像を形成する場合、キャリッジ5が主走査方向に往復移動することによって記録ヘッド21〜24も主走査方向に移動し、インクを吐出する。1行の記録が終わると、副走査方向に記録媒体が動作し、次の行の記録に移る、という動作を繰り返す。このように、1行の記録が終わると副走査方向に記録媒体が動作し、次の行の記録に移るようなワンパスと呼ばれる印字シーケンスの場合であると、撮像ユニット30が図2に示すように取り付けられているため、キャリッジ5の1スキャンでは、記録媒体上の限られた範囲の画像を取得することしかできない。
【0050】
そこで、記録媒体の副走査方向の送りに対し順に行番号D1を設定する。図7の例では、行番号D1としてAからUまでの番号が付与されている。また、1スキャンで吐出できる範囲がヘッド印字幅D2であり、そのなかの撮像ユニット30が通過する部分が撮像可能範囲D3となる。撮像可能範囲D3は、連続色を検出する際に限定される位置である。この撮像可能範囲D3は、記録媒体上に形成された画像を撮像するための撮像ユニット30をキャリッジ5への取り付け位置に依存するが、図2及び図3に示したような位置に取り付けた場合、記録ヘッドの印字幅D2の中央部に所定の幅で存在する。それはキャリッジ5に取り付けられた撮像ユニット30が通る軌跡に沿った帯状の範囲であり、その範囲が撮像可能範囲D3に相当する。撮像できる範囲が限定されているため、連続色を検出する際にはこの撮像可能範囲D3以外の場所から選ぶことはできない。撮像は片方向印字でも、往復印字でも良く、また印、字シーケンスによらない。複数スキャンによる重ね打ちの場合も、連続色と判断されたときの撮像データを選択するため、色変動の検知を行うことが可能である。そのため重ね途中の場合の撮像データを比較することも可能で、複数スキャン後の最後の重ねのときの撮像データを比較に使用することもできる。
【0051】
図8は、撮像データの使用範囲を示す説明図である。図において横方向を主走査方向、縦方向を副走査方向としている。取得可能範囲D3の中に連続色の領域が存在している。連続色の幅は、1ピクセルD4単位で判別され、連続色と判断される最小の幅を最小連続色幅D5とする。また、撮像データのRGB値を出すのに使用する範囲は、前記最小連続色幅D5のマトリクス(図8では、8×8ピクセル)の回りのノイズになる可能性がある部分を避け、撮像位置のずれ量分のマージンをとって当該マトリクスの中心部分の撮像画像有効範囲D6のみを使用する。
【0052】
一般的に、露光中に撮像ユニット30が動くと、鮮明な読み取りを行うことができない。しかしながら本システムでは、主走査方向に動きながらの撮像になる。そこで1つの最小連続色幅D5の主走査方向の長さを、イメージセンサ31の露光時間内に進む距離よりも長く設定する。これにより、最小連続色幅D5内には一色しか存在しないことになるため、露光中に動きがあって撮像した画像がぶれてしまっても色の取得には全く問題がない。つまり最小連続色幅D5の長さは露光時間(シャッタースピード)でも変わってくる。このように設定することにより、撮像した画像が高速移動中の記録によりぶれてしまっても、問題なくRGB値に変換できる箇所を連続色として検出することができる。高速シャッターを使用した場合、すなわち、露光時間が短い場合には、より小さな最小連続色幅D5で連続色を探索することが可能となる。なお、スキャン中に撮像する範囲は正方形でなく、長方形あるいは楕円なども良い。
【0053】
連続色1つ1つはデータとして位置情報(座標)と色情報(RGB値)を持ち、連続色データとしてメモリ165に保存されている。そこで、同じ色情報を持つ連続色の撮像データのRGB値と比較することにより色変動を検出することが可能となり、各色の色変動を記録中に判別することができる。
【0054】
図9は連続色吐出検出手順を示すフローチャートを含む説明図である。
【0055】
一般的に、インクジェット方式のカラープリンタでの記録は、記録画像データを分解し、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(黄)、K(墨)の各分版画像を作成し、各色のインクを吐出して媒体上に重ねることによってカラー画像を再現している。具体的には、図5に示した画像記録モジュール103によってCMYKの各分版画像からインク吐出信号104が作られる。
記録ヘッド21〜24には、1〜300の配列番号D7の振られた列ごとのノズルがあり、各ノズルに図5の画像記録モジュール103からインク吐出信号104が送られる。インク吐出信号104は、0(なし)、1(小滴)、2(中滴)、3(大滴)を示す情報である。各ノズルはインク吐出信号104に基づいてインクを吐出する。
また、連続色検出では、制御部160のメモリ165は、画像記録モジュール103から出力される前記各色のインク吐出信号104をそれぞれ記憶している。1〜300のノズル全てに関連する情報を記憶してもいいが、例ではメモリ165の削減のため、予め分かっている撮像可能範囲D3の情報のみ記憶している(ステップS111)。この撮像可能範囲D3は、撮像ユニット30の取り付け位置によって決まっている。以下、この記憶された情報を撮像可能範囲D3のノズル吐出情報と称す。
【0056】
画像合成処理では、ステップS111で記憶されている撮像可能範囲D3のノズル吐出情報を重ね合わせ、記録媒体上に形成される連続した同一色領域を検出する(ステップS112)。以下、この連続した同一色領域を「連続領域」と称す。
【0057】
この連続領域は、実際にメモリ165上でカラー画像を合成しても良いし、YMCKそれぞれの滴量の情報がほぼ同じ場合に同一色としても良い。例えばこの同一色の判断は、YMCKそれぞれの値が5%以下の違いであり、かつ図8の撮像画像有効範囲D6の使用範囲の平均値が3%以下の違いであるときに同一色とする判断とする(ステップS113)。上記判断に余裕を持たせた理由は、前記分版画像の作成時にデータとしては異なるものになってしまうが、記録された色が同じになる場合があるためである。もちろん上記方式と異なる方法で同一色の判断を行っても良い。すなわち、同一色と判断できれば、その方式を問うものではない。さらに、同一色の判定基準も上記に限定されるものではない。
【0058】
ステップS113の判断で連続領域でない場合は、メモリ165に一時保存され(ステップS114)、ステップS112に戻って重ね合わせを待つ。
【0059】
ステップS113において同一色の領域が連続していることを判断するが、その際、座標情報が必要である。そこで、主走査方向と副走査方向の位置情報を取得する。主走査方向の位置は、1スキャンの初めから記録ヘッド21〜24へのインク吐出信号104をカウントすることで得る。その位置はキャリッジ5のエンコーダセンサ101の値を見ても良い。副走査の位置はノズル配列番号から得ることができる。
【0060】
そして連続色データ202を送る場合には、副走査方向の記録媒体と同一の位置を取得する必要がある。その位置は副走査エンコーダセンサ28から取得する。
【0061】
図10は連続色データと撮像データを示す説明図、図11は連続色データと撮像データの処理手順を示す説明図である。図10は撮像後の連続色データ202と撮像データ105を蓄積し、色変動判断部205によってソートされたデータの分布をイメージ的に示したものである。
【0062】
まず、同一色の再現RGB値D11で分配されている連続色データがある。ソート後のデータD10は、連続色データと撮像データからできたデータで、連続色データの座標A:D8と同一座標(30,485)を持つ撮像データの座標B:D9の実測RGB値D12(095,0,0)である。そして、各再現RGB値D11のRGB値中の実測RGB値D12を比較し、色変動を判断する。
【0063】
データ保存モジュール203は、連続色検出モジュール201から送られる連続色データ202と、撮像ユニット30から送られてくる撮像データ105を入力値として持つ。そこで、送られてくる撮像データ105の中から、連続色データ202の座標A:D8(30,485)と、同じ座標B:D9(30,485)を持つ撮像データ105を選別する(ステップS105)。色変動判断部205へは、連続色データ202と選別された撮像データ105が送られる。
【0064】
選択外のデータを破棄する場合はステップS110で選択外のデータ破棄を実行する。メモリ容量に余裕がある場合は、画像記録と色変動検知終了後に破棄して良い。
【0065】
図12は色変動判断部の判断処理の処理手順を示すフローチャートである。同図において、色変動判断部205はデータ保存モジュール203より連続色データ202、選別された撮像データ105を受け取る。受け取ったデータを再現RGB値D11ごとにソートする(ステップS201)。ソート結果が図10に分布イメージである。ここでは色変動の判断をするために、撮像データ202と連続色データ105をソートすることにより、一般的な検知手法で色変動を判断できるようにしている。
【0066】
そして、実測RGB値D12と比較するための値を、実測RGB値比較値算出処理で算出する(ステップS202)。この例では印字開始からの実測RGB値105の平均値をとり、次の撮像データ202との比較値として使用する。
【0067】
色変動の判断は最初に取得した値を基準値とし、その基準値と前記算出した比較値とを比較する。前記比較で両者の差分値が予め設定しておいた閾値を越えた場合に、色変動ありと判断する(ステップS106)。この判断には、差分値の分散を見て判断することもできる。同一画像の記録が2枚以上の場合の平均値は、記録開始から複数枚にわたり平均値をとるが、これ以外に1枚ごとの平均値同士を比較することにより、色変動を検出することも可能である。なお、前記閾値は予め測定して設定しておく。
【0068】
ステップS106で色変動がなければ、ステップS203に戻って以降の処理を繰り返す。色変動ありと判断されれば、色変動と判断された撮像データ105は、報告のためにメモリ165に保存する(ステップS204)。
【0069】
色変動情報は、座標D9とそのRGB値である。また実測したRGB値D12のサンプル数、平均値、その平均値からの差分値などを保存しておくこともできる。このように色変動の情報を蓄積しておくことにより、ずれが発生したときにそのつど色変動と判断すること、あるいは一定回数連続してずれが発生したときに色変動と判断することが可能となる。
【0070】
同一画像の記録が2枚以上の場合は、同一の連続色データ202を用いて、1枚目と2枚目の撮像データの同一箇所を比較することにより、2枚目以降からは連続色を検出しないようにすることもできる。また、色変動と判断された直後に記録を中断し、次の行からテストパターンを印字し、あるいは紙の余白部分に印字して色補正を行うようにすることもできる。なお、色補正は制御部160で実行される。色補正自体は公知であるので、本実施形態では説明は省略する。
【0071】
以上のように、本実施形態によれば、インク吐出直後に記録画像を撮像ユニット30によって撮像し、連続色吐出検出モジュール201によって検出された連続色の座標と再現RGB値並びに撮像ユニット30によって撮像された連続色の座標及び実測値をメモリ165に保持し、保持された前記座標及び実測RGB値を比較して色変動を印字中に判断するので、記録開始から記録終了までに色の変化を検知することができる。
【0072】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲により規定される範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
21,22,23,24 記録ヘッド
30 撮像ユニット
100 プリンタ
102 画像データ
104 インク吐出信号
165 メモリ
200 色変動検知システム
201 連続色吐出検出モジュール
205 色変動判断部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開2002−120388号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一色の色変動を検知する色変動検知装置であって、
入力画像データをレンダリング処理して生成されるインク吐出信号から同一色からなる所定の範囲を連続色として検出する検出手段と、
前記インク吐出信号に基づいて記録媒体に画像を記録する記録手段によって前記連続色が記録された画像の色測定を行う撮像手段と、
前記検出手段によって検出された連続色データ、及び前記撮像手段によって撮像された撮像データを保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された前記連続色データ及び撮像データのうちの位置情報及び色情報を参照し、連続色と同一位置情報を有する撮像データの実測値を比較して色変動を判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とする色変動検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の色変動検知装置であって、
前記判断手段は、前記保持手段に保持された連続色の位置情報及び色情報から判断対象となる記録位置に該当するものを選択し、同一色の記録指示がなされた部分の実測値を比較し、1枚の画像記録中における色変動を判断すること
を特徴とする色変動検知装置。
【請求項3】
請求項1記載の色変動検知装置であって、
前記判断手段は、複数枚に同一情報を記録する際、2枚目以降の色変動を判断すること
を特徴とする色変動検知装置。
【請求項4】
請求項1又は3記載の色変動検知装置であって、
前記判断手段は、複数枚に同一情報を記録する際、1枚目の実測値と2枚目以降の実測値を比較し、1枚ごとの色変動を判断すること
を特徴とする色変動検知装置。
【請求項5】
請求項1又は3記載の色変動検知装置であって、
前記検出手段は、複数枚に同一情報を記録する際、2枚目からは1枚目とは異なる連続色の色情報を用いて連続色を検出すること
を特徴とする色変動検知装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の色変動検知装置であって、
前記判断手段は、画像の記録開始から記録終了までの間に色変動を判断すること
を特徴とする色変動検知装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の色変動検知装置であって、
前記撮像手段は前記記録手段と一体に移動し、当該記録手段の記録動作と並行して撮像することを特徴とする色変動検知装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の色変動検知装置を備えていること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8記載の画像形成装置であって、
色補正手段をさらに備え、
前記判断手段によって色変動ありと判断したとき、前記記録手段による記録を終了し、次の行からテストパターンを記録して当該ペストパターンを読み取り、読み取った画像の色に基づいて前記色補正手段によって色補正を行うこと
を特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項8記載の画像形成装置であって、
色補正手段をさらに備え、
前記判断手段によって色変動ありと判断したとき、前記記録手段による記録を終了し、記録媒体の余白にテストパターンを記録して当該ペストパターンを読み取り、読み取った画像の色に基づいて前記色補正手段によって色補正を行うこと
を特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか1項に記載の画像形成装置であって、
色変動が発生した旨を報告する報告手段を備え、
前記判断手段が色変動ありと判断した直後に前記報告手段はその旨報告し、前記記録手段は画像記録を中断すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
同一色の色変動を検知し、判断する制御をコンピュータによって実行させる色変動検知制御プログラムであって、
入力画像データをレンダリング処理して画像を形成するためのインク吐出信号を生成する第1の手順と、
前記第1の手順で生成されたインク吐出信号から同一色からなる所定の範囲を連続色として検出する第2の手順と、
前記インク吐出信号に基づいて記録媒体に画像を記録する記録手段によって前記連続色が記録された画像を撮像手段によって撮像し、色測定を行う第3の手順と、
前記第2の手順で検出された連続色の位置情報及び色情報、並びに前記撮像手段によって撮像された連続色の位置情報及び実測値を保持手段に保持させる第4の手順と、
前記第4の手順で前記保持手段に保持された前記位置情報及び色情報のうち、連続色と同一位置情報を有する実測値を比較して色変動を判断する第5の手順と、
を備えたことを特徴とする色変動検知制御プログラム。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図1】
image rotate

【図7】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−196791(P2012−196791A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60992(P2011−60992)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】