説明

色変換表作成装置、色変換表作成方法、色変換表作成プログラムを記録した記録媒体、および、上記装置または方法によって作成された色変換表に基づいてプロファイルを作成するプロファイル作成装置

【課題】複数の色を備えた被写体を撮影することにより、被写体の色の数や性質に依存することなく、精度の高い色変換表を簡便に作成する方法を提供する。
【解決手段】ディジタルスチルカメラにより基準露出量,基準露出量からのλ倍シフト量でカラーチャートが撮影されると、異なるYCbCr表色値の情報を有する二種類のチャート画像データが生成され、このデータを受け取ったプリンタの関係決定部は、各カラーパッチごとに、チャート画像データのYCbCr表色値と基準画像データの基準色彩値との対応関係を第1テーブルに書き込むと共に、チャート画像データのYCbCr表色値と、λ倍という露出量の相違を基準画像データに反映することにより生成された修正基準画像データとの対応関係を第2テーブルに書き込む。色変換表作成部は、テーブルに書き込まれた二つの対応関係に基づいてYCbCr色空間とL色空間との間の第2色変換表を作成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーチャート等の複数の色から構成された被写体を撮影することによって生成され、機器依存色の色空間によって表現された撮影画像データに基づいて、機器依存色の色空間から機器非依存色の色空間への色変換表を作成する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、被写体の撮影によりデジタル画像データを生成する装置(例えば、ディジタルスチルカメラ、ディジタルビデオカメラ等)の需要が高まっている。このような画像データ生成装置において生成された画像データは、一般に、コンピュータやプリンタ等の他のデジタル処理装置において利用される。例えば、撮影した被写体の画像を、コンピュータの表示画面として標準的に用いられるモニタに表示したり、或いは、紙やコンパクトディスク等の印刷媒体上に印刷したりするのである。
【0003】
こうした画像データ生成装置や他のデジタル処理装置では、画像データを表現する色空間として、RGB,YCbCr,CMYK等のような、ある特定の機器に依存した色を用いた色空間(以下、機器依存色の色空間という)が採用されている。一方、各装置において採用される色空間や、色空間における白色点、ガンマ値等の色再現特性等は各装置ごとに異なるため、従来では、画像データ生成装置と他のデジタル処理装置との間で再現色のずれが生じることがあった。このようなデバイス間における再現色のずれに対処すべく、近年では、カラーマネジメントシステムが提案されている。このカラーマネジメントシステムは、各デバイスの特性をパラメータとして記述したプロファイルを予め作成しておき、このプロファイルを利用して、画像データ生成装置の色空間によって表現された画像データを、XYZ表色系やL表色系のような、機器とは関係ない人間の色覚特性に基づいた色を用いた色空間(以下、機器非依存色の色空間という)を介して他のデジタル処理装置の色空間の画像データに変換するシステムである。
【0004】
こうしたプロファイルを作成するためには、画像データ生成装置が基準とする機器依存色の色空間と機器非依存色の色空間との間の色変換表を作成することが必要になる。このような色変換表の作成手法として、複数の色から構成された特定の被写体を画像データ生成装置によって撮影し、この撮影により生成された画像データ(以下、撮影画像データという)を利用して色変換表を作成する手法を考えることができる。この手法について以下に説明する。
【0005】
まず、特定の被写体につき、該被写体を構成する色(以下、実体色という)を機器非依存色の色空間において表わしたときの色彩値を予め記憶しておき、この被写体を画像データ生成装置によって撮影する。この被写体の撮影により、画像データ生成装置は、被写体の各実体色を認識し、撮影画像データを生成する。なお、本明細書において「色を認識する」とは、ある色と他の色とを見分けることをいう。
【0006】
この場合において、画像データ生成装置は、通常は、被写体の実体色を、該実体色そのままの色として認識せず、該実体色がsRGB特性を有するデジタル処理装置(例えば、モニタ)で観察されたときに好ましく見えるように、該実体色とは異なる色として認識する。このように、実体色を有する特定の被写体を撮影することにより画像データ生成装置が認識した色のことを、以下、取得色という。画像データ生成装置は、この取得色を画像データ生成装置が基準とする機器依存色の色空間で表現して、機器依存色の色空間における表色値を特定し、この表色値を備えた撮影画像データを生成するのである。
【0007】
こうして撮影画像データが生成された後、上記特定の被写体について、撮影画像データが有する各取得色の表色値と予め記憶された各実体色の色彩値との対応関係を規定する。これにより、「画像データ生成装置において実際に認識された色(表色値)が、機器非依存色の色空間におけるどの色(色彩値)に相当するか」ということが、現実の撮影画像データに基づいて特定される。
【0008】
次に、画像データ生成装置では被写体に表わされた実体色以外の色(以下、観念色という)も認識ないし再現が可能であるので、こうした未撮影の観念色について、画像データ生成装置が基準とする機器依存色の色空間における表色値と機器非依存色の色空間における色彩値との対応関係を求める。こうした観念色についての対応関係は、前記規定された各取得色の表色値と各実体色の色彩値との対応関係に基づいて所定の演算処理を行なうことにより求められる。これにより、「観念色の被写体を撮影したときに画像データ生成装置において認識される色(表色値)が、機器非依存色の色空間におけるどの色(色彩値)に相当するか」ということが推定される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した色変換表の作成手法では、画像データ生成装置が認識した範囲外の観念色については、表色値と色彩値との対応関係を求めるために外挿演算を行なう必要があった。例えば、機器非依存色の色空間の高彩度域に属する色については、現実の被写体として用意することが必ずしも容易でなく、画像データ生成装置が、これを他の色と区別された色として認識することが難しい。このため、高彩度域に属する色については、表色値と色彩値との対応関係を求めるために外挿演算を行なわざるを得ない。こうした外挿演算では誤差が大きくなりがちで、精度の高い色変換表を作成することが困難であった。
【0010】
ここで、外挿演算を用いることなく色変換表を作成する手法として、画像データ生成装置によって撮影される特定の被写体に高彩度域に属する全ての色を付与しておく手法を考えることができる。しかし、このような手法では、高彩度域には極めて多数の色が属することから、高彩度域に属する色が具現化された被写体を多種類準備して多種類の被写体の全てを撮影しなければならず、色変換表の作成が極めて煩雑となってしまう。加えて、高彩度域に属する各色を有する被写体を作り出すためには、機器非依存色の色空間の高彩度領域を現実の色として再現可能な装置を用いなければならず、色変換表作成用の被写体を簡便に作り出すことはできないという難点があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記の課題を解決し、複数の色を備えた被写体を撮影することにより、撮影される被写体の色の数や性質に依存することなく、精度の高い色変換表を簡便に作成することを目的として、以下の構成を採った。
【0012】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明の色変換表作成装置は、
複数の色から構成された被写体を撮影することによって生成され、機器依存色の色空間によって表現された撮影画像データを入力し、該入力された撮影画像データに基づいて前記機器依存色の色空間と前記機器非依存色の色空間との間の色変換表を作成する色変換表作成装置であって、
前記被写体の複数の各色を機器非依存色の色空間によって表現したデータを基準画像データとして予め記憶する記憶部と、
前記撮影画像データとして、前記被写体を露出調整を経て撮影することにより生成された露出調整済画像データと、前記露出調整における露出と異なる露出で前記被写体を撮影することにより生成された変更画像データとを入力する入力部と、
該入力部に入力された前記露出調整済画像データと前記変更画像データとの露出の相違状況を判定する判定部と、
該判定部に判定された相違状況を前記基準画像データに反映することにより、前記機器非依存色の色空間によって表現された修正基準画像データを生成する修正データ生成部と、
前記露出調整済画像データの表色値と前記記憶された基準画像データの基準色彩値との対応関係と、前記変更画像データの表色値と前記修正基準画像データの色彩値との対応関係とに基づいて前記色変換表の作成を行なう色変換表作成部と
を備えたことを要旨とする。
【0013】
また、同様の技術を用いてなされた本発明の色変換表作成方法は、
複数の色から構成された被写体を撮影することによって生成され、機器依存色の色空間によって表現された撮影画像データを入力し、該入力された撮影画像データに基づいて前記機器依存色の色空間と前記機器非依存色の色空間との間の色変換表を作成する色変換表作成方法であって、
前記被写体の複数の各色を機器非依存色の色空間によって表現したデータを基準画像データとして予め記憶し、
前記撮影画像データとして、前記被写体を露出調整を経て撮影することにより生成された露出調整済画像データと、前記露出調整における露出と異なる露出で前記被写体を撮影することにより生成された変更画像データを入力し、
該入力された前記露出調整済画像データと前記変更画像データとの露出の相違状況を判定し、
該判定された相違状況を前記基準画像データに反映することにより、前記機器非依存色の色空間によって表現された修正基準画像データを生成し、
前記露出調整済画像データの表色値と前記記憶された基準画像データの基準色彩値との対応関係と、前記変更画像データの表色値と前記修正基準画像データの色彩値との対応関係とに基づいて前記色変換表を作成することを要旨とする。
【0014】
本発明の色変換表作成装置および色変換表作成方法では、複数の色から構成された被写体を撮影することによって生成され、機器依存色の色空間によって表現された撮影画像データとして、露出調整を経た撮影により生成された露出調整済画像データと、該露出調整における露出と異なる露出での撮影により生成された変更画像データとを入力し、露出調整済画像データと変更画像データとの露出の相違状況を判定する。次に、判定された相違状況を、被写体の複数の各色を機器非依存色の色空間によって表現したデータである基準画像データに反映することにより、機器非依存色の色空間によって表現された修正基準画像データを生成し、露出調整済画像データの表色値と基準画像データの基準色彩値との対応関係と、変更画像データの表色値と修正基準画像データの色彩値との対応関係とに基づいて機器依存色の色空間と機器非依存色の色空間との間の色変換表を作成する。
【0015】
このように、被写体を異なる露出で撮影することにより生成された露出調整済画像データと変更画像データとは、一の被写体について互いに異なる色の情報を保持する。つまり、一の被写体を異なる露出で撮影することにより、被写体の実体色の数を仮想的に増加させて、撮影画像データを得ることができるのである。このため、被写体の実体色のみならず、仮想的に増加された色についても、機器依存色の色空間における表色値と機器非依存色の色空間における色彩値との対応関係を求めることが可能となる。このように、色変換表の作成の基礎となる情報量が増加することで、この対応関係に基づいて作成される色変換表の精度を高めることが可能となり、観念色についての機器依存色の色空間における表色値と機器非依存色の色空間における色彩値との対応関係をより正確に求めることができる。
【0016】
加えて、露出調整における露出と異なる露出での撮影時において、被写体の各色の一部は、露出調整を経た撮影時よりも、見かけ上、高彩度の色として認識させることが可能となる。このため、被写体の撮影によって認識される色の範囲は露出調整を経た撮影時よりも高彩度領域に広がり、この結果、機器依存色の色空間における表色値と機器非依存色の色空間における色彩値との対応関係が内挿演算により求められる範囲が高彩度領域にまで拡大される。従って、観念色についての機器依存色の色空間における表色値と機器非依存色の色空間における色彩値との対応関係を求める際に外挿演算を減らすことが可能となり、作成される色変換表の精度をより一層高めることができる。特に、このような色変換表を高彩度の色を再現可能なデバイスに提供すれば、撮影画像データに現わされた高彩度の色を上記デバイスにおいて正確に再現することができる。
【0017】
上記の色変換表作成装置および色変換表作成方法には、様々な展開を考えることができる。以下、色変換表作成装置を例にとって説明するが、色変換表作成方法としても、ほぼ同様の展開が可能である。
【0018】
色変換表作成部が、前記露出調整済画像データの表色値と前記記憶された基準画像データの基準色彩値との対応関係と、前記変更画像データの表色値と前記修正基準画像データの色彩値との対応関係とから、前記機器依存色の色空間における表色値と前記機器非依存色の色空間における色彩値との関係を表わす演算式を求め、この演算式を前記色変換表として作成することも望ましい。このように色変換表が演算式の形式で作成されることで、前記機器依存色の色空間における表色値と前記機器非依存色の色空間における色彩値との多数の組み合わせを記憶する必要がなく、色変換処理の効率を高めることができる。
【0019】
入力部が、露出調整における露出と異なる複数の露出での撮影により生成された複数の変更画像データを入力する構成を採ることも好適である。こうすれば、被写体の撮影によって認識される色の範囲が変更画像データが単数の場合よりも拡大され、機器依存色の色空間における表色値と機器非依存色の色空間における色彩値との対応関係が内挿演算により求められる範囲がより一層拡大される。従って、広範な彩度を有する色に精度よく対応する色変換表を作成することができる。
【0020】
複数の露出に、露出調整における露出よりも露光量の大きな露出と、露出調整における露出よりも露光量の小さな露出とが含まれる構成としてもよい。露出調整における露出よりも大きな露出での撮影により認識される色の範囲は、露出調整における露出よりも小さな露出での撮影時と異なった彩度方向に拡大される。従って、被写体の撮影により認識される色の範囲を異なる複数の高彩度領域に拡大することが可能となり、色変換表の作成において外挿演算を行なう頻度をより一層低減することができる。
【0021】
被写体が有する灰色の部分を認識する手段を備え、判定部が、露出の相違状況を、露出調整済画像データと変更画像データとの間における灰色の部分の光の反射率の違いに基づいて判定する構成としてもよい。こうすれば、種々の場所で被写体が撮影された場合であっても、被写体の反射光量の違いが正確に判定される。従って、撮影場所における光に関する条件の違いに拘らず、露出調整済画像データ,変更画像データが備える色情報の精度をほぼ均一なものに保つことが可能となり、色変換表の信頼性を確保することができる。
【0022】
色変換表作成装置を、所定の色空間によって表現された画像データを出力する画像出力装置により所定の媒体上に出力されたカラーチャートを前記被写体として撮影することにより生成された撮影画像データに基づいて前記色変換表を作成する装置とすることも可能である。この場合には、記憶部が、前記出力されたカラーチャートに配置された複数の各カラーパッチの色を機器非依存色の色空間によって表現したデータを前記基準画像データとして予め記憶し、入力部が、前記複数のカラーパッチが配置されたカラーチャートを撮影することにより生成されたデータを、前記露出調整済画像データ,前記変更画像データとして入力する構成とすればよい。こうすれば、画像出力装置により所定の媒体上に出力されたカラーチャートを異なる露出で撮影するだけで、機器依存色の色空間と機器非依存色の色空間との色変換表が精度よく作成される。従って、色変換表を作成するためのカラーチャートを、高彩度域に属する色が多種類配置された専用品として別途作成する必要がなく、色変換表の作成を簡便に実現することができる。
【0023】
入力部に異なる光源下で撮影された複数の撮影画像データが入力されたとき、該入力された各撮影画像データに基づいて撮影光源を推定する光源推定部を備え、色変換表作成部が、推定された撮影光源の種類ごとに色変換表を作成する構成とすることも望ましい。こうすれば、撮影光源の違いによって生じる色かぶりの影響を考慮して色変換表を作成することが可能となり、撮影光源ごとに正確な色変換表を作成することができる。
【0024】
上記のように作成された色変換表に基づいて、被写体の撮影により撮影画像データを生成した画像データ生成装置と該画像データ生成装置以外の他の装置との間のプロファイルを作成するプロファイル作成装置として、発明を把握することもできる。こうすれば、画像データ生成装置について作成された機器依存色の色空間と機器非依存色の色空間との色変換表が他の装置との間のプロファイルとして利用されるので、プロファイルの正確性を確保することができる。また、色変換表は高彩度領域における正確性が確保されている。従って、他の装置が高彩度の色再現域を有する場合であっても、この色再現域に属する高い彩度の色を他の装置において正確に再現することが可能となる。
【0025】
本発明のコンピュータプログラムを記録した記録媒体は、
複数の色から構成された被写体を撮影することによって生成され、機器依存色の色空間によって表現された撮影画像データを入力し、該入力された撮影画像データに基づいて前記機器依存色の色空間と前記機器非依存色の色空間との間の色変換表を作成するためのコンピュータプログラムを記録した記録媒体であって、前記撮影画像データとして、前記被写体を露出調整を経て撮影することにより生成された露出調整済画像データと、前記露出調整における露出と異なる露出で前記被写体を撮影することにより生成された変更画像データを入力する工程と、該入力された前記露出調整済画像データと前記変更画像データとの露出の相違状況を判定する工程と、
該判定された相違状況を、前記被写体の複数の各色を機器非依存色の色空間によって表現したデータである基準画像データに反映することにより、前記機器非依存色の色空間によって表現された修正基準画像データを生成する工程と、
前記露出調整済画像データの表色値と前記記憶された基準画像データの基準色彩値との対応関係と、前記変更画像データの表色値と前記修正基準画像データの色彩値との対応関係とに基づいて前記色変換表を作成する工程と
をコンピュータに実行させるためのプログラムをコンピュータに読み取り可能に記録したことを要旨とする。
【0026】
このような本発明のコンピュータプログラムを記録した記録媒体によれば、この記録媒体に記録された内容をコンピュータが読み取ることにより、露出調整済画像データの表色値と基準画像データの基準色彩値との対応関係と、変更画像データの表色値と修正基準画像データの色彩値との対応関係とに基づいて機器依存色の色空間と機器非依存色の色空間との間の色変換表が作成される。このため、色変換表の作成の基礎となる情報量が増加すると共に、被写体の撮影によって認識される色の範囲が拡大されることにより外挿演算の機会が減少する。従って、作成される色変換表の精度を高めることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下本発明の実施の形態を、以下の順序で説明する。
A.実施例(画像データ変換システムMA)
A−1.画像データ変換システムMAの全体構成
A−2.プロファイル作成モジュールMA1
A−3.画像印刷モジュールMA2
A−4.色変換表YL(式1)の精度を高める仕組み
B.変形例
【0028】
A.実施例:
A−1.画像データ変換システムMAの全体構成:
本実施例の画像データ変換システムMAの全体構成について図1ないし図11を参照しつつ説明する。図1は本発明の第1実施例である画像データ変換システムMAの概要を示す説明図であり、図2は画像データ変換システムMAにおけるプロファイル作成モジュールMA1の内容を示す説明図である。画像データ変換システムMAは、一の色空間によって表現された画像データを一の色空間とは異なる色空間によって表現された画像データに変換するシステムである。
【0029】
まず、画像データ変換システムMAの基本的な構成について説明する。図1に示すように、画像データ変換システムMAは、画像データ生成装置としてのディジタルスチルカメラ10と、色変換表作成装置ないしプロファイル作成装置としての色変換処理装置90と、画像出力装置としてのプリンタ40とを備える。
【0030】
ディジタルスチルカメラ10は、被写体を撮影することにより画像を取得し、取得した画像をデジタル形式の画像データとしてメモリカードMCに保存する機能を有し、撮影時における露出やホワイトバランスを調整する調整機能を備える。ディジタルスチルカメラ10は、これらの機能を実行するためにCPU,ROM,RAM等により構成された制御機構20を備える。
【0031】
図1に示すように、ディジタルスチルカメラ10は、RGB色空間,YCbCr色空間というディジタルスチルカメラ10特性に依存する二つの色空間を基準としている。YCbCr色空間は、RGB色空間よりも広い色再現域を有する。
【0032】
ディジタルスチルカメラ10の制御機構20は、被写体の撮影によりRGB色空間によって表現された画像データを生成し、生成された画像データをYCbCr色空間によって表現された画像データに変換する。この後、必要に応じてYCbCr色空間にて微調整してJPEG圧縮を行ない、圧縮後のYCbCr画像データをメモリカードMCに記録する。なお、メモリカードMCへの画像データの保存形式としては、上記JPEG形式のほか、TIFF形式、GIF形式、BMP形式等の保存形式を用いることができる。
【0033】
上記した画像データのYCbCr色空間への色変換処理は、メモリカードMCに記録されたYCbCr画像データをsRGB色空間を基準とするデジタル処理装置(例えば、モニタ)に適した色で再現するために行なわれる。このYCbCr色空間への色変換処理の内容は、一般には、ディジタルスチルカメラの種類ごとに異なっている。ディジタルスチルカメラは、その種類によって色再現特性が異なるからである。このように、YCbCr色空間はディジタルスチルカメラの色再現特性に依存した色空間である。特許請求の範囲にいう「機器依存色の色空間」は、本実施例ではYCbCr色空間に相当する。
【0034】
ディジタルスチルカメラ10における露出の調整に関して説明する。ここで、露出とは、撮影時に必要な光をCCDに送り込むことをいう。撮影時にCCDに送り込まれる光量のことを、以下、露光量という。露光量は、「EV(Exposure Value)」を単位として表わされる。
【0035】
ディジタルスチルカメラ10のレンズを通ってきた光がCCDの受光素子に当たると、受光素子は露光量を感知し、この露光量の大きさに応じた強さの電気信号を発生する。こうした電気信号の強弱に基づいてデータ生成部22(後述)により画像データが生成される。これにより、画像データに明るさ情報が付与される。なお、露光量の大きさは、原則として、後述するシャッター速度値と絞り値との組み合わせによって決定される。本実施例におけるディジタルスチルカメラ10は、設定可能な露出に関する項目として、シャッター速度,絞り,露出補正という設定項目を備える。
【0036】
露出が「オート」に設定されている場合について説明する。この場合には、シャッター速度および絞りの設定値が自動的に決定される。具体的には、被写体から来る光を測定した露出計は、測定結果に基づく演算により適正露出を求める。この適正露出の値がディジタルスチルカメラ10における撮影時の露光量として決定され、この露光量を実現するためのシャッター速度値と絞り値との最適な組み合わせが決定される。ここで、適正露出とは、撮影者が見たままと同じだと感じる露出のことをいう。この適正露出の演算は、「平均的な屋外の被写体の明るさや色をすべて混ぜ合わせると18%グレー(中性灰色)になる」という仮定に基づいてなされる。
【0037】
次に、露出補正の設定について説明する。露出補正とは、シャッター速度値と絞り値との組み合わせにより決定された露光量を修正することにより画像の明るさを補正する機能である。この機能は、例えば、著しく明るい被写体や著しく暗い被写体を撮影しようとする場合に適正露出を実現するために用いられる。
【0038】
露出補正の機能は、露出が「オート」に設定されている場合には、特に有用である。即ち、「オート」の場合には、「平均的な屋外の被写体の明るさや色をすべて混ぜ合わせると18%グレーになる」という仮定に基づいて適正露出の値が自動的に決定されるが、必ずしも被写体が18%グレーになるとは限らない。このような場合に露出補正を行なえば、露出計の演算値に対して補正を加えることができるので、真の適正露出を実現することが可能となる。
【0039】
露出補正によって調整される値を露出補正値といい、EVを単位として表わす。本実施例におけるディジタルスチルカメラ10では、露出が「オート」に設定されている場合に、露出補正を「−2.0EV」から「+2.0EV」までの範囲の設定値に0.1EV刻みで設定することができる。この設定値を+方向に設定することを露出オーバー側への補正といい、−方向に設定することを露出アンダー側への補正という。この露出補正は、既に設定されている絞りあるいはシャッタースピードの設定値を露出補正値に応じて変化させることにより実現される。
【0040】
色変換処理装置90は、ディジタルスチルカメラ10によって生成された画像データに基づいてディジタルスチルカメラ10とプリンタ40との間のプロファイルを作成する機能を有する。ここで、プロファイルとは、デバイスに依存する一の色空間で表現された色をデバイスに依存する他の色空間で再現することを目的として、機器依存色の色空間(例えば、YCbCr,RGB等)で表現される色と機器非依存色の色空間(例えば、L,XYZ)で表現される色との関係を記述したファイルを意味する。こうした機能を実行するために、色変換処理装置90は、メモリカードMCの記録内容を読み取るメモリカードドライブ41と、CPUやROM,RAM等の制御部品によって構成された制御機構95とを備える。
【0041】
図1に示す画像データ変換システムMAでは、ディジタルスチルカメラ10から色変換処理装置90への画像データの受け渡しは、ディジタルスチルカメラ10のメモリカードスロットル11から引き抜かれたメモリカードMCを色変換処理装置90のメモリカードドライブ41に差し込むことにより実現される。即ち、メモリカードドライブ41に接続された色変換処理装置90の制御機構95は、メモリカードMCに記録されたYCbCr画像データを読み取り、読み取った画像データに基づいてプロファイルYWを作成するのである。
【0042】
また、色変換処理装置90の入出力ポートは、ケーブルCVを介してプリンタ40の入出力ポートに接続されている。これにより、色変換処理装置90とプリンタ40との間でのデータのやり取りが可能となる。
【0043】
プリンタ40は、色変換処理装置90から画像データを受け取り、受け取った画像データをプリンタが有する色空間で表現された画像データに変換し、変換後の画像データに基づいて画像を出力する機能を有しており、より具体的には、紙や布,CD−R等の記録メディア,OHPシート等の印刷媒体上に画像を印刷する機能を有する。こうした機能を実行するために、プリンタ40は、CPU,ROM,RAM等により構成された制御機構50を備える。
【0044】
本実施例にて用いるプリンタ40は独自のRGB色空間を採用している。この独自のRGB色空間のことを、以下、wRGB色空間という。図1に示すように、プリンタ40は、wRGB色空間,CMYK色空間(図示せず)というプリンタ40特性に依存する二つの色空間を基準としている。wRGB色空間は、ディジタルスチルカメラ10が基準とするRGB色空間やsRGB色空間よりも広い色再現域を有する。
【0045】
プリンタ40がwRGB色空間以外の色空間によって表現された画像データを受け取った場合には、制御機構50は、この画像データを、色変換処理装置90によって作成されたプロファイルYWを参照してwRGB色空間によって表現された画像データに変換し、変換後の画像データを色分解してCMYK色空間によって表現された画像データに変換する。制御機構50は、このCMYK画像データに基づいてC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)K(ブラック)の4色のインクの吐出態様を決定し、決定された吐出態様に基づいた印刷の実行を指示する。
【0046】
図1に示すように、画像データ変換システムMAは、プロファイル作成モジュールMA1,画像印刷モジュールMA2という二つのモジュールから構成されている。
【0047】
A−2.プロファイル作成モジュールMA1:
プロファイル作成モジュールMA1では、ディジタルスチルカメラ10とプリンタ40という二つのデバイス間のプロファイルYWを作成する処理を行なう。本実施例では、プロファイルYWとして、YCbCr色空間とL色空間との関係を記述した色変換表YLと、L色空間とwRGB色空間との関係を記述した色変換表LWとを作成することとしている。この色変換表YLないし色変換表LWの詳細については後述する。
【0048】
図1に示すように、プロファイル作成モジュールMA1において行なわれる一連の処理のうち、プリンタ40側における処理は、プリンタ40の制御機構50内に設けられた指令部53,色空間変換部68,L−w演算部55,色分解部56,出力部58という各機能部によって実行される。また、ディジタルスチルカメラ10側における処理は、ディジタルスチルカメラ10の制御機構20内に設けられたデータ生成部22,色変換部24および圧縮部26という各機能部によって実行される。色変換処理装置90側における処理は、色変換処理装置90の制御機構95内に設けられた記憶部51,データ受取部60,関係決定部64,表色値特定部65,色変換表作成部66および色変換表記憶部67という各機能部によって実行される。
【0049】
このプロファイル作成モジュールMA1において上記の各機能部が行なう処理につき、図1および図2を中心としつつ、図3ないし図10を適宜参照しながら具体的に説明する。図1では、プロファイル作成モジュールMA1において各機能部が実行する処理の流れを黒色の細い矢印で示している。また、図2では、プロファイル作成モジュールMA1において制御機構50,制御機構20ないし制御機構95が全体として行なう処理の流れをプロファイル作成処理ルーチンとしてフローチャートを用いて示している。以下の説明においては、図1を中心として各機能部が実行する処理の内容を説明するとともに、図2にも記載されている処理内容については説明文中に図2に相当するステップ名を付記するものとする。
【0050】
図1に示すように、記憶部51には、複数の色のカラーパッチa1〜l20を有するカラーチャートEP(図4を参照)を特定するための情報である基準画像データE0が予め記憶されている。この基準画像データE0は、240個のカラーパッチa1〜l20の各色をL色空間によって表現したときの色彩値(以下、基準色彩値という)の情報を有しており、この情報は、後述する記憶部51の基準テーブルBTに記憶されている(図3を参照)。特許請求の範囲にいう「機器非依存色の色空間」は本実施例ではL色空間に相当し、特許請求の範囲にいう「基準画像データ」は本実施例では基準画像データE0に相当する。
【0051】
使用者による所定の操作によりカラーチャートEPの出力指示を受けた指令部53は、カラーチャートEPの出力データを形成する指令を色空間変換部68に送る。指令を受けた色空間変換部68は、まず、記憶部51からL色空間によって表現された基準画像データE0を読み出し(ステップS200、ステップS210)、この基準画像データE0をwRGB色空間によって表現されたwRGB基準画像データE1に変換する(ステップS220)。
【0052】
基準画像データE0からwRGB基準画像データE1への変換は、色空間変換部68内のL−w演算部55により、以下の要領で行われる。
【0053】
色変換表記憶部67には、プロファイルYWの一内容をなすL色空間からwRGB色空間への色変換表LWとして、以下の式2のような、L色空間において表現される色彩値(以下、L色彩値という)からwRGB色彩値への変換式が予め記憶されている。
[式2]
Fy=(L+16)/116
Fy≧0.20456のとき、Y=Y・Fy
Fy<0.20456のとき、Y=(Y/7.787)・(L−16/116)
Fx=(Fy+a/500)
Fx≧0.20456のとき、X=X・Fx
Fx<0.20456のとき、X=(X/7.787)・(Fy+a/500−16/116)
Fz=(Fy−b/200)
Fz≧0.20456のとき、Z=Z・Fx
Fz<0.20456のとき、Z=(Z/7.787)・(Fy−b/200−16/116)
ただし、X,Y,Zは、白色点での三刺激値
(R/255)γ=m11・X+m12・Y+m13・Z
(G/255)γ=m21・X+m22・Y+m23・Z
(B/255)γ=m31・X+m32・Y+m33・Z
ただし、m11〜m33は、XYZ→RGB色空間変換マトリクス
【0054】
カラーチャートEPの出力データを形成する旨の指令を色空間変換部68から受け取ったL−w演算部55は、色変換表記憶部67を参照して上記の式2を読み出し、各カラーパッチについての基準色彩値のL(明度),a(赤⇔緑方向の色度),b(黄⇔青方向の色度)の各値を上記の式2に代入して演算結果を算出する。こうした演算により、wR(wRGB色空間における赤),wG(wRGB色空間における緑),wB(wRGB色空間における青)の各値からなるwRGB表色値が求められる。このwRGB表色値は、基準色彩値をプリンタ40の色空間であるwRGB色空間によって表現した表色値である。これにより、各カラーパッチについて、基準色彩値(L,a,b)の値に対応するwRGB表色値(wR,wG,wB)の値が求まり、基準画像データE0をwRGB基準画像データE1に変換することができる。
【0055】
色空間変換部68は、上記演算によって求められたwRGB基準画像データE1の表色値を受け取り、この表色値を、各カラーパッチa1〜l20の基準色彩値との対応関係をとりながら、図3に示す記憶部51の基準テーブルBTに一時的に記憶する。例えば、図3において、配列情報FLが「a1」のカラーパッチには、基準色彩値(L,a,b)の値(m0,n0,o0)に対応するwRGB表色値(wR,wG,wB)として、(p0,q0,r0)という値が付与されている。
【0056】
なお、基準画像データE0からwRGB基準画像データE1への変換をL−w演算部55による演算を行なうことなく実現することも可能である。具体的には、wRGB色空間によって表現されたwRGB基準画像データE1を予め記憶部51に記憶しておき、指令部53からの指令を受けたときに色空間変換部68が記憶部51を参照してwRGB基準画像データE1を読み出す構成等を考えることができる。
【0057】
色空間変換部68は、演算によって求められたwRGB基準画像データE1を色分解部56に送る。色分解部56は、受け取ったwRGB基準画像データE1を色分解してCMYK色空間によって表現されたCMYK基準画像データE2に変換し(ステップS230)、このCMYK基準画像データE2を出力部58が出力する。これにより、カラーチャートEPが印刷された状態の用紙Pがプリンタ40の外部に排出される(ステップS240)。
【0058】
カラーチャートEPが印刷された状態の用紙Pを図4(A)に示す。図4(A)に示すように、カラーチャートEPは、互いに異なる色を有する240個(縦12個×横20個)のカラーパッチa1〜l20が配列された領域であるパッチデータ領域VSを備える。なお、240個(縦12個×横20個)のカラーパッチのうちのいくつかは同じ色であっても差し支えない。なお、用紙P上に印刷された各カラーパッチa1〜l20の色を、以下、「パッチ実体色」という。
【0059】
カラーチャートEPは、パッチデータ領域VSよりも外側の周囲に、240個のカラーパッチの背景領域であるバックグラウンドデータ領域BSを備える。バックグラウンドデータ領域BSは、Lの値が50近傍の無彩色とされている。なお、「L≒50の無彩色」とは、「約18%のグレー」を意味する。バックグラウンドデータ領域BS内には、カラーチャートEPの天地左右を識別するための黒色の識別マークZ1,Z2と、赤色の識別マークZ3,Z4が配置されている。バックグラウンドデータ領域BSの周囲には、用紙Pの色である白色の余白領域が形成されている。
【0060】
パッチデータ領域VSにおけるカラーパッチの配列は、各カラーパッチの画素ごとの色彩値の情報をカラーチャートEPの走査方向順に並べることにより特定することができる。こうした配列の特定に関し、本実施例では、図4(A)に示すように、カラーパッチの配列情報FLをカラーチャートEP内の行位置および桁位置の組み合わせによって定義している。即ち、カラーチャートEPには、第a行〜第l行(計12行)の各行に20桁分のカラーパッチが配置されるものとし、1行目の1桁目に位置するカラーパッチの配列情報FLを「a1」と表わし、12行目の20桁目に位置するカラーパッチの配列情報FLを「l20」と表わしている。本明細書の発明の実施の形態では、「a1」という配列情報FLを有するカラーパッチのことを「カラーパッチa1」のように表現する。なお、各カラーパッチの配列情報FLは、各カラーパッチの色をL色空間によって表現した基準色彩値とともに、基準画像データE0として記憶部51の基準テーブルBTに予め記憶されている(図3を参照)。
【0061】
カラーチャートEPのパッチデータ領域VSには、同程度の明度を有するカラーパッチが一の領域にまとめて配置されている。即ち、図4(B)に丸囲みの数字で示すように、カラーチャートEP左下隅の領域▲1▼内には、基準色彩値のL(明度)の値が「10前後」であるカラーパッチがまとめて配置されている。同様に、領域▲1▼の右隣の領域▲2▼,領域▲2▼の右隣の領域▲3▼には、それぞれLの値が「20前後」,「30前後」であるカラーパッチがまとめて配置されている。また、領域▲3▼,領域▲2▼,領域▲1▼の直ぐ上に位置する領域▲4▼,領域▲5▼,領域▲6▼には、それぞれLの値が「40前後」,「50前後」,「60前後」であるカラーパッチがまとめて配置されている。更に、領域▲6▼,領域▲5▼,領域▲4▼の直ぐ上に位置する領域▲7▼,領域▲8▼,領域▲9▼には、それぞれLの値が「70前後」,「80前後」,「90前後」であるカラーパッチがまとめて配置されている。このように、カラーチャートEPは、明度の値の大きさに応じて領域▲1▼から領域▲9▼までの9つの領域に区分されている。また、カラーチャートEPの中央部に位置する領域▲5▼内の中心部(図4(B)において点線ハッチングで示した部分)には、Lの値が50である無彩色のカラーパッチが配置されている。
【0062】
図1および図2に戻って説明する。こうした用紙P上のカラーチャートEPが所定の撮影指示に基づいてディジタルスチルカメラ10によって撮影されると、データ生成部22は、カラーチャートEPの光の情報をCCD上に結像させることによりカラーチャートEPの画像を取得し(ステップS300、ステップS310)、取得した画像についてCCDによる光電変換およびA/DコンバータによるA/D変換を行なうことによりRGB色空間によって表現されたRGB基準画像データE3を生成する(ステップS320)。データ生成部22は、このRGB基準画像データE3を色変換部24に送る。色変換部24は、受け取ったRGB基準画像データE3をYCbCr色空間によって表現されたYCbCr基準画像データE4に変換し(ステップS330)、必要に応じてYCbCr色空間にて微調整して、YCbCr基準画像データE4を圧縮部26に送る。圧縮部26は、データ量を削減するために、受け取ったYCbCr基準画像データE4のCb成分およびCr成分を間引いて、YCbCr基準画像データE4をYCbCr基準画像データE5に圧縮する(ステップS340)。こうして圧縮されたYCbCr基準画像データE5はメモリカードMCに記録される(ステップS350)。特許請求の範囲にいう「撮影画像データ」は、本実施例ではYCbCr基準画像データE5に相当する。なお、YCbCr基準画像データE4のデータ量が少ない場合には、上記の圧縮を行なうことなく、YCbCr基準画像データE4をそのままメモリカードMCに記録することとしても差し支えない。
【0063】
この後、YCbCr基準画像データE5を記録したメモリカードMCが色変換処理装置90のメモリカードドライブ41に差し込まれ、色変換処理装置90に対してプロファイルYWを作成する旨の所定の指示がなされると、データ受取部60はメモリカードMCの記録内容を読み出してYCbCr基準画像データE5を受け取り(ステップS250、ステップS260)、このYCbCr基準画像データE5を関係決定部64に送る。
【0064】
関係決定部64は、YCbCr基準画像データE5を表色値特定部65に送る。表色値特定部65は、YCbCr基準画像データE5の表色値を特定し、特定された表色値の情報を関係決定部64に渡す。関係決定部64は、受け取ったYCbCr基準画像データE5の表色値とL色空間によって表現された基準画像データE0の基準色彩値との対応関係を決定し(ステップS270)、決定した対応関係に基づいて、YCbCr基準画像データE5の表色値を基準色彩値と対応付けながら記憶部51に一時的に記憶し、記憶した旨を色変換表作成部66に送る。
【0065】
図5は、図2のステップS270における対応関係決定処理の詳細を対応関係決定処理ルーチンとして示すフローチャートである。本ルーチンは、メモリカードMC内のYCbCr基準画像データE5を関係決定部64が受け取ったときに起動する。本ルーチンが起動されると、まず、YCbCr基準画像データE5をイメージデータとしてバッファに展開し(ステップS600)、このイメージデータ上に四つの識別マークZ1〜Z4が存在するか否かを判断する処理を行なう(ステップS610)。四つの識別マークZ1〜Z4が全て存在しないと判断した場合には、カラーチャートEPが全範囲に亘って撮影されていないとみなし、この旨を表示ランプの点滅等により警告する処理(ステップS690)を行ない、図2のステップS250の処理に戻る。
【0066】
四つの識別マークZ1〜Z4が全て存在すると判断した場合には、各識別マークZ1〜Z4のYCbCr色空間における表色値を読み取る処理を行なう(ステップS620)。上記の表色値の読み取り処理は、JPEG形式の画像データの解析プログラムを予めROM等に格納しておくことにより実現することができる。
【0067】
次に、読み取られた各識別マークZ1〜Z4の色彩値の違いに基づいてYCbCr基準画像データE5の天地左右を決定する処理を行なう(ステップS630)。具体的には、二つの黒色の識別マークZ1,Z2の位置する方向がカラーチャートEPの上方向に相当し、二つの赤色の識別マークZ3,Z4の位置する方向がカラーチャートEPの下方向に相当する旨を決定する。
【0068】
こうしてYCbCr基準画像データE5の天地左右を決定した後、YCbCr基準画像データE5中のカラーパッチに相当するデータについてYCbCr色空間における表色値(以下、YCbCr表色値という)を読み取る処理を行なう(ステップS640)。この読み取り処理は、イメージデータの上から順に、左から右に向かって行なわれる。図4に示したカラーチャートEPで言えば、配列情報FLが「a1」,「a2」,…,「a20」,「b1」,…,「b20」,…,「l1」,…,「l20」の順に、YCbCr表色値が読み取られる。
【0069】
次に、YCbCr表色値を読み取り順に記憶部51の対応テーブルCTに書き込む処理を行なう(ステップS650)。YCbCr基準画像データE5のYCbCr表色値が書き込まれた状態の対応テーブルCTを図6に示す。図6に示すように、対応テーブルCTには、各カラーパッチa1〜l20の基準色彩値の情報が書き込まれている。読み取られたYCbCr表色値の情報は、各カラーパッチa1〜l20の基準色彩値との対応関係をとりながら、対応テーブルCTに書き込まれる。YCbCr色空間における表色値は、Y(輝度),Cb(彩度),Cr(彩度)という三つの成分の値の組み合わせによって特定される。例えば、図6において、配列情報FLが「a1」のカラーパッチには、基準色彩値(L,a,b)の値(m0,n0,o0)に対応するYCbCr表色値(Y,Cb,Cr)として、(s0,t10,u20)という値が書き込まれており、このYCbCr表色値は、Y,Cb,Crの各値がそれぞれs0,t10,u20であるという内容を表わしている。
【0070】
YCbCr基準画像データE5についてYCbCr表色値の書き込みが完了することにより、対応テーブルCTは、図6に示すようなYCbCr表色値と基準色彩値との対応関係が記述された一覧表となる。全てのカラーパッチに相当するデータについてYCbCr表色値の書き込みが完了したと判断した場合には、書き込みが完了した旨を色変換表作成部66に送り(ステップS660,ステップS670)、本ルーチンを終了する。
【0071】
以上説明した対応関係決定処理が制御機構95の各機能部によって行なわれる様子をブロック図として図7に示した。対応関係決定処理が終了したときには、図7に示すように、記憶部51に基準テーブルBTおよび対応テーブルCTという二つのテーブルが作成済みとなる。この基準テーブルBTと対応テーブルCTの記憶内容を併せることにより、カラーパッチa1〜l20のパッチ実体色につき、両テーブルBT,CTに共通の基準色彩値を介して、wRGB表色値とYCbCr表色値との対応関係を取ることができる。例えば、基準色彩値が(m0,n0,o0)という値の色であるカラーパッチa1は、wRGB表色値が(p0,q0,r0)という値の色でプリンタ40により印刷され(図3を参照)、このwRGB表色値に基づいて印刷された用紙Pがディジタルスチルカメラ10に撮影されることにより、YCbCr表色値が(s0,t10,u20)という値の色を有するYCbCr基準画像データE5が生成される(図6を参照)。従って、ディジタルスチルカメラ10による被写体の撮影により、YCbCr表色値が(s0,t10,u20)という値をとる画像データが生成された場合には、この画像データをwRGB表色値が(p0,q0,r0)という値をとる画像データに変換してプリンタ40で印刷すれば、ディジタルスチルカメラ10が撮影時に取得した色と同様の色で撮影画像を印刷することができる。
【0072】
一方、用紙Pに印刷されたカラーパッチa1〜l20のパッチ実体色以外の色(以下、「観念色」という)を有する被写体がディジタルスチルカメラ10により撮影された場合には、上記対応テーブルCTにはないYCbCr表色値を有する画像データが生成される。本実施例では、このような画像データについてもディジタルスチルカメラ10が撮影時に取得した色と同様の色で撮影画像を印刷することを可能とすべく、上記の対応関係決定処理に続いて、以下に説明する回帰演算処理(図2のステップS280)を行なう。
【0073】
図1ないし図2に示すように、YCbCr基準画像データE5の表色値を記憶した旨を受け取った色変換表作成部66は、まず、記憶部51に記憶されたYCbCr基準画像データE5の表色値と基準色彩値の対応関係に基づいて後述する回帰演算処理を行なう(ステップS280)。続いて、回帰演算処理による演算結果を利用してYCbCr色空間からwRGB色空間への色変換表であるプロファイルYWを作成して、このプロファイルYWを色変換表記憶部67に記憶する処理を行ない(ステップS290)、プロファイル作成処理ルーチン(図2)を終了する。なお、本実施例では、プロファイルYWをYCbCr表色値からwRGB表色値への変換式(後述する式1と前述した式2)の形式で作成し、この変換式を色変換表記憶部67に記憶している。
【0074】
図8は、図2のステップS280における回帰演算処理の詳細を回帰演算処理ルーチンとして示すフローチャートである。本ルーチンは、対応関係決定処理の終了後に起動する。本ルーチンが起動されると、まず、対応テーブルCTを参照し、先頭の配列情報FLを解析対象として設定する処理を行なう(ステップS700)。次に、解析対象として設定された配列情報FLについて対応テーブルCTに記録されている基準色彩値およびYCbCr表色値を読み出す処理を行なう(ステップS710)。以上の処理により、図6に示した例で言えば、カラーパッチa1を表わす配列情報FL「a1」が解析対象として設定され、配列情報FL「a1」に属する(m0,n0,o0)という値の基準色彩値および(s0,t10,u20)という値のYCbCr表色値が読み出される。
【0075】
次に、読み出した基準色彩値およびYCbCr表色値を、以下三つの基礎演算式JMに代入し(ステップS720)、代入後の各基礎演算式JMを演算バッファに記憶する処理を行なう(ステップS730)。
<基礎演算式JM>
=(α,α,…α20)A
=(β,β,…β20)A
=(γ,γ,…γ20)A
なお、上記の基礎演算式JMにおいて、Aは、(1,Y,Cb,Cr,Y,Cb,Cr,Y*Cb,Y*Cr,Cb*Cr,Y,Cb,Cr,Y*Cb,Y*Cr,Y*Cb,Y*Cr,Cb*Cr,Cb*Cr,Y*Cb*Cr)であり、α,α,…α20、β,β,…β20、γ,γ,…γ20は未知の定数である。上記の基礎演算式JMは、色変換表作成部66内の記憶領域に予め記憶されている。
【0076】
次に、次の配列情報FLが存在するか否かを判断する処理を行ない(ステップS740)、次の配列情報FLが存在すると判断した場合には、次の配列情報FLを解析対象として設定し(ステップS750)、ステップS710に戻って上記の処理を繰り返す。以上の処理により、図7に示した例で言えば、「a1」から「l20」までの各配列情報FLごとの基準色彩値およびYCbCr表色値を代入した基礎演算式JMが、順次に演算バッファに記憶される。
【0077】
ステップS740において、次の配列情報FLが存在しないと判断した場合には、全てのカラーパッチの配列情報FLについて基準色彩値およびYCbCr表色値の基礎演算式JMへの代入処理が終了したとみなし、演算バッファに記憶された全ての式を読み出して回帰演算を行なう(ステップS760)。具体的には、代入後の各式について最小二乗法の原理を適用することにより、回帰係数である60個の未知の定数(α,α,…α20、β,β,…β20、γ,γ,…γ20)の値を求める。求められる回帰係数の値は、ステップS720の処理において代入される基準色彩値およびYCbCr表色値の値によって異なるが、ここでは、60個の各回帰係数α,α,…α20、β,β,…β20、γ,γ,…γ20の値が、それぞれ、d,d,…d20、e,e,…e20、f,f,…f20という値で求められたとする。
【0078】
次に、求められた回帰係数の値を上記の基礎演算式JMに代入する処理を行なう(ステップS770)。この回帰係数の値を代入した後の基礎演算式JMが、YCbCr色空間とL色空間との間の色変換表YLとしての「式1」となる。
[式1]
=(d,d,…d20)A
=(e,e,…e20)A
=(f,f,…f20)A
なお、上記の式1において、Aは、(1,Y,Cb,Cr,Y,Cb,Cr,Y*Cb,Y*Cr,Cb*Cr,Y,Cb,Cr,Y*Cb,Y*Cr,Y*Cb,Y*Cr,Cb*Cr,Cb*Cr,Y*Cb*Cr)である。
【0079】
次に、この式1を色変換表記憶部67に記憶する処理を行ない(ステップS780)、本ルーチンを終了する。回帰係数が代入された式1は、YCbCr表色値とL色彩値との間の変換式となる。従って、この変換式に任意のYCbCr表色値(Y,Cb,Crの各値)を代入することにより、代入されたYCbCr表色値に対応するL色彩値(L,a,bの各値)を求めることが可能となる。
【0080】
以上説明した回帰演算処理が制御機構95の各機能部によって行なわれる様子をブロック図として図9に示した。図9に示すように、回帰演算処理が終了したときには、色変換表記憶部67に、YCbCr色空間とL色空間との間の色変換表YLとしての式1およびL色空間からwRGB色空間への色変換表LWとしての式2の二つの式が記憶された状態となる。回帰演算処理の後に行なわれるプロファイルYWの作成ないし記憶処理(図3のステップS290)では、上記二つの式を合わせて「YCbCr表色値→L色彩値→wRGB色空間への変換式」とし、これをディジタルスチルカメラ10用のプロファイルYWとして色変換表記憶部67に保持する処理を行なう(図9を参照)。
【0081】
A−3.画像印刷モジュールMA2:
以上、プロファイル作成モジュールMA1において行なわれる処理の内容について説明した。次に、プロファイル作成モジュールMA1の終了後に行なわれる画像印刷モジュールMA2について説明する。画像印刷モジュールMA2で行なわれる一連の処理のうち、ディジタルスチルカメラ10側における処理は、ディジタルスチルカメラ10の制御機構20内に設けられたデータ生成部22,色変換部24および圧縮部26という各機能部によって実行される(図1を参照)。また、プリンタ40側における処理は、プリンタ40の制御機構50内に設けられたデータ受取部60,表色値特定部65,色空間変換部68,色変換表記憶部67,Y−w演算部69,色分解部56および出力部58という各機能部によって実行される(図1を参照)。
【0082】
画像印刷モジュールMA2において上記の各機能部が行なう処理につき、図1および図10を中心としつつ、図11を適宜参照しながら具体的に説明する。図1では、画像印刷モジュールMA2において各機能部が実行する処理の流れを黒色の太い矢印で示している。また、図10では、画像印刷モジュールMA2において制御機構20ないし制御機構50が全体として行なう処理の流れを画像忠実印刷処理ルーチンとしてフローチャートを用いて示している。以下の説明においては、図1を中心として各機能部が実行する処理の内容を説明するとともに、図10にも記載されている処理内容については説明文中に図10に相当するステップ名を付記するものとする。
【0083】
プロファイルYWが作成されたディジタルスチルカメラ10により被写体としての対象物Hが撮影されると、図1に示すように、データ生成部22は、対象物Hの光の情報をCCD上に結像させることにより対象物Hの画像を取得し(ステップS400、ステップS410)、取得した画像についてCCDによる光電変換、A/DコンバータによるA/D変換を行なうことによりRGB色空間によって表現されたRGB画像データH1を生成する(ステップS420)。データ生成部22は、このRGB画像データH1を色変換部24に送る。色変換部24は、受け取ったRGB画像データH1をYCbCr色空間によって表現されたYCbCr画像データH2に変換し(ステップS430)、このYCbCr画像データH2を圧縮部26に送る。圧縮部26は、受け取ったYCbCr画像データH2のCb成分およびCr成分を間引くことによりデータ量を削減する。これにより、YCbCr画像データH2は圧縮されてYCbCr画像データH3となる(ステップS440)。特許請求の範囲にいう第一画像データは、第1実施例ではYCbCr画像データH3に相当する。こうして圧縮されたYCbCr画像データH3はメモリカードMCに記録される(ステップS450)。
【0084】
YCbCr画像データH3を記録したメモリカードMCが色変換処理装置90のメモリカードドライブ41に差し込まれ、プリンタ40に対して印刷を実行する旨の所定の指示がなされると、プリンタ40は色変換処理装置90に対してメモリカードMC内のデータの読み取りを指示する。この指示を受け取ったデータ受取部60はメモリカードMCの記録内容を読み出してYCbCr画像データH3を受け取り(ステップS500、ステップS510)、このYCbCr画像データH3を表色値特定部65に送る。表色値特定部65は、受け取ったYCbCr画像データH3のYCbCr色空間における表色値を特定した後(ステップS520)、YCbCr画像データH3を色空間変換部68に送る。
【0085】
色空間変換部68は、色変換表記憶部67に記憶されたプロファイルYWを参照し、YCbCr画像データH3の表色値に対応するwRGB色空間の表色値を求める(ステップS530)。このYCbCr表色値に対応するwRGB表色値を求める処理は、色空間変換部68内のY−w演算部69が、プロファイルYWとしてのYCbCr表色値からwRGB表色値への変換式に画像データH3のYCbCr表色値を代入して演算することにより実現される。色空間変換部68は、Y−w演算部69の演算結果に基づいてYCbCr画像データH3をwRGB画像データH4に変換し(ステップS540)、wRGB画像データH4を色分解部56に送る。
【0086】
プロファイルYWに基づくYCbCr色空間からwRGB色空間への変換処理(図4のステップS530,S540の処理)が制御機構95,50の各機能部によって行なわれる様子をブロック図として図11に示した。図11に示すように、色空間変換部68内のY−w演算部69は、▲1▼表色値特定部65からYCbCr画像データH3のYCbCr表色値を受け取ると、▲2▼色変換表記憶部67からプロファイルYW(式1および式2)を読み出し、▲3▼受け取ったYCbCr表色値を式1に代入して演算を行なうことによりYCbCr表色値に対応するL色彩値を求めた後、このL色彩値を式2に代入して演算を行なうことによりL色彩値に対応するwRGB表色値を求める。▲4▼色空間変換部68は、こうして求められたwRGB表色値に基づいてYCbCr画像データH3をwRGB画像データH4に変換し、wRGB画像データH4を色分解部56に送る。従って、YCbCr色空間によって表現された画像データH3を迅速かつ正確にwRGB色空間に置き換えることができる。
【0087】
図1および図10に戻って説明する。変換後のwRGB画像データH4を受け取った色分解部56は、wRGB画像データH4を色分解してCMYK色空間によって表現されたCMYK画像データH5に変換し(ステップS540)、このCMYK画像データH5を出力部58が出力する(ステップS550)。これにより、対象物Hの画像が印刷された状態の用紙Pがプリンタ40の外部に排出される(ステップS560)。
【0088】
上記の画像データ変換システムMAを適用した場合における、ディジタルスチルカメラ10によって取得された画像の色とプリンタ40によって印刷される色との関係を図12に示す。図12に示すように、ディジタルスチルカメラ10による撮影によって生成されたYCbCr画像データH3の表色値がYCbCrカラースペースにおける座標点v1上の値(橙色寄りの赤色を表わす値)であった場合に、このYCbCr画像データH3を受け取ったプリンタ40側でのプロファイルYWを用いた色空間変換により、YCbCr画像データH3の表色値はxy色度図上における座標点w1上の値(橙色寄りの赤色を表わす値)に対応付けられる。従って、プリンタ40においては、撮影時に取得された色と同様の色を有するwRGB画像データH4に基づいて画像の印刷が行なわれる。
【0089】
以上説明した画像データ変換システムMAによれば、プリンタ40から出力印刷されたカラーチャートEPをディジタルスチルカメラ10により撮影し、撮影により生成されたYCbCr基準画像データE5をプリンタ40に入力するだけで、ディジタルスチルカメラ10の色空間(YCbCr色空間)からプリンタ40の色空間(wRGB色空間)への色変換表であるプロファイルYWが作成される。以降、このプロファイルYWを利用することで、ディジタルスチルカメラ10により撮影される被写体(対象物H)の色をプリンタ40により忠実かつ簡単に再現することができる。
【0090】
A−4.色変換表YL(式1)の精度を高める仕組み:
プロファイルYWを構成するYCbCr色空間とL色空間との間の色変換表YL(式1)は、ディジタルスチルカメラ10によってカラーチャートEPを異なる露出で撮影することにより二種類のYCbCr基準画像データE5を生成し、この二種類のYCbCr基準画像データE5を利用して作成することにより、その精度をより一層高めることができる。こうした精度の高い色変換表YL(以下、第2色変換表YL2という)が作成される仕組みについて、図13ないし図15を参照しつつ以下に説明する。
【0091】
以下の図13ないし図15に関する説明においては、ディジタルスチルカメラ10により、カラーチャートEPの一部である18個のカラーパッチa1〜c6(Lの値が「70前後」のもの)が撮影されたものとして説明する。また、こうした撮影により、二種類のYCbCr基準画像データE5として、YCbCr色空間によって表現されたチャート画像データEM5,EQ5が生成されたものとして説明する。
【0092】
チャート画像データEM5は、カラーチャートEPを基準露出量で撮影することにより生成されたデータである。基準露出量とは、ある光量環境下において、露出を「オート」に設定し、且つ、露出補正を設定しない状態でカラーチャートEPを撮影した場合に、ディジタルスチルカメラ10が自動的に決定した露光量を意味する。特許請求の範囲にいう「露出調整済画像データ」は、本実施例ではチャート画像データEM5に相当する。
【0093】
チャート画像データEQ5は、基準露出量をλ倍シフトさせた露出量でカラーチャートEPを撮影することにより生成されたデータである。基準露出量をλ倍シフトさせた露出量とは、基準露出量で撮影した場合と同じ光量環境下において、露出を「オート」に設定し、且つ、露出補正を「+1.5EV」という値に設定した状態でカラーチャートEPを撮影した場合に、ディジタルスチルカメラ10が自動的に決定した露光量を意味する。特許請求の範囲にいう「変更画像データ」は、本実施例ではチャート画像データEQ5に相当する。
【0094】
第2色変換表YL2の作成処理を行なう機能部の構成と働きを図13に示す。第2色変換表YL2の作成処理は、色変換処理装置90の制御機構95内に設けられた記憶部51,データ受取部60,条件判定部61,修正部62,関係決定部64,表色値特定部65,色変換表作成部66および色変換表記憶部67という各機能部によって実行される。なお、図13では、第2色変換表YL2の作成に際し、チャート画像データEM5に基づいて行なわれる処理を点線で、チャート画像データEQ5に基づいて行なわれる処理を実線で示しており、二つのチャート画像データEM5,EQ5に基づいて行なわれる処理を太い実線で示している。
【0095】
ディジタルスチルカメラ10により、基準露出量,基準露出量からのλ倍シフト量というそれぞれの露出状況でカラーチャートEPが撮影されると、メモリカードMCには、二種類のチャート画像データEM5,EQ5と共に、各チャート画像データEM5,EQ5が生成されたときの露出状況(基準露出量,λ倍シフト量)が記録される。こうした露出状況の記録は、ディジタルスチルカメラ10が、撮影時における露出の設定値を読み出してメモリカードMCに書き込むことにより実現される。
【0096】
メモリカードMCが色変換処理装置90のメモリカードドライブ41に差し込まれ、色変換処理装置90に対してプロファイルを作成する旨の所定の指示がなされると、データ受取部60はメモリカードMCの記録内容を読み出してチャート画像データEM5,EQ5に関する情報を受け取り、この情報を関係決定部64に送る。
【0097】
関係決定部64は、チャート画像データEM5,EQ5を表色値特定部65に送る。表色値特定部65は、各チャート画像データEM5,EQ5における各カラーパッチa1〜c6のYCbCr表色値を特定し、特定されたYCbCr表色値の情報を関係決定部64に渡す。関係決定部64は、露出状況が基準露出量であるチャート画像データEM5のYCbCr表色値を各カラーパッチa1〜c6ごとに記憶部51内の対応テーブルCTのうちの第1テーブルCT1に書き込み、露出状況がλ倍シフト量であるチャート画像データEQ5のYCbCr表色値を各カラーパッチa1〜c6ごとに対応テーブルCTのうちの第2テーブルCT2に書き込む。
【0098】
関係決定部64は、条件判定部61、修正部62という補助機能部を備える。関係決定部64は、各チャート画像データEM5,EQ5についての露出状況の情報を条件判定部61に送る。条件判定部61は、受け取った情報に基づいてチャート画像データEQ5についての露出状況がチャート画像データEM5についての露出状況の何倍であるかを判定し、判定結果を修正部62に送る。本実施例の場合には、「チャート画像データEQ5の露出状況はチャート画像データEM5のλ倍」という判定結果が修正部62に送られる。
【0099】
この判定結果を受け取った修正部62は、まず、露出状況が基準露出量であるチャート画像データEM5を基準画像データE0と対応させる旨を決定し、基準画像データE0における各カラーパッチa1〜c6の基準色彩値を、チャート画像データEM5のYCbCr表色値と対応させながら第1テーブルCT1に書き込む。これにより、基準露出時における各カラーパッチa1〜c6のパッチ実体色について、YCbCr表色値とL色彩値との対応関係が規定される。
【0100】
次に、修正部62は、λ倍という露出量の相違を基準画像データE0に反映することによりL色空間によって表現された修正基準画像データEQ0を生成する。特許請求の範囲にいう「修正基準画像データ」は、本実施例では修正基準画像データEQ0に相当する。修正基準画像データEQ0における各カラーパッチa1〜c6のL色彩値は、各カラーパッチa1〜c6の基準色彩値を以下のように修正したものである。即ち、修正基準画像データEQ0におけるLの値は、基準色彩値のLの値をλ1/3倍した値から「16(1−λ1/3)」を引いた値であり、修正基準画像データEQ0におけるa,bの値は、基準色彩値のa,bの値をそれぞれλ1/3倍した値である。この根拠については後述する。このように修正されたL色彩値を、以下、修正基準色彩値という。特許請求の範囲にいう「修正基準画像データの色彩値」は、本実施例では修正基準色彩値に相当する。
【0101】
修正部62は、上記の修正基準画像データEQ0を露出状況がλ倍シフト量であるチャート画像データEQ5に対応させる旨を決定し、基準画像データEQ0における各カラーパッチa1〜c6のL色彩値を、チャート画像データEQ5のYCbCr表色値と対応させながら第2テーブルCT2に書き込む。これにより、λ倍露出時における各カラーパッチa1〜c6の色について、YCbCr表色値とL色彩値との対応関係が規定される。各カラーパッチa1〜c6のYCbCr表色値,基準色彩値,修正基準色彩値が書き込まれた状態の第1テーブルCT1,第2テーブルCT2を図14(A),図14(B)にそれぞれ示した。
【0102】
図14(A)には、チャート画像データEM5のYCbCr表色値が「×××,…」という記号で略記されており、図14(B)には、チャート画像データEQ5のYCbCr表色値が「○○○,…」という記号で略記されている。このような略記された記号の相違は、各カラーパッチa1〜c6の色についてのYCbCr表色値が、チャート画像データEM5とチャート画像データEQ5との間で異なることを表わしている。
【0103】
色変換表作成部66は、第1テーブルCT1および第2テーブルCT2に書き込まれた二つの対応関係に基づいて既述した回帰演算処理を行ない、YCbCr色空間とL色空間との間の第2色変換表YL2としての式1Aを求める。この式1Aは、色変換表記憶部67にプロファイルYWの一部として記憶される。上記の式1Aに基づいて任意の(例えば、観念色の)YCbCr表色値とL色彩値との組み合わせを求め、この組み合わせを表形式に整理したものが第2色変換表YL2である。第2色変換表YL2の例を図14(C)に示した。
【0104】
図14(A)および図14(B)に示したように、一のカラーチャートEPを露出量を異ならせて撮影することにより、ディジタルスチルカメラ10は、カラーパッチa1〜l20の240種類のパッチ実体色を異なる色として認識する。露出量を異にする2度の撮影により、一のカラーチャートEPから最大で480種類の色が認識されるのである。このため、上記の回帰演算処理において、式1Aにおける回帰係数の値は、基準色彩値とYCbCr表色値との最大480通りの組み合わせに基づいて求められる。つまり、第2色変換表YL2は、図14(C)に示したように、最大480種類の色のYCbCr表色値とL色彩値との関係に基づいて作成されるのである。
【0105】
ここで、カラーチャートEPを露出量を異ならせて撮影することにより、ディジタルスチルカメラ10が一のカラーパッチの色を異なった色として認識する根拠について説明する。図14(A)および図14(B)に示したように、λ倍という露出量の相違を基準画像データE0に反映して修正基準画像データEQ0を生成すると、この修正基準画像データEQ0のL色彩値におけるLの値は、各カラーパッチa1〜c6において、基準画像データE0のλ1/3倍から「16(1−λ1/3)」を引いた値となり、a,bの値は、各カラーパッチa1〜c6において、基準画像データE0のλ1/3倍となる。このことは、以下の説明における式(4)ないし(6)により明らかである。
【0106】
XYZ色空間において(X,Y,Z)という色彩値で表現される色の被写体を基準露出量で撮影する場合(以下、基準露出撮影Aという)に、ディジタルスチルカメラ10は(X,Y,Z)という色彩値の情報を受け取るものとする。この基準露出量に対してλ倍露出シフトを施した場合(以下、シフト露出撮影Bという)には、撮影によりディジタルスチルカメラ10が受け取る色彩値の情報は(λX,λY,λZ)となる。ここで、基準露出撮影Aとシフト露出撮影Bとの場合において白色点(Xn,Yn,Zn)を同じとすれば、(X,Y,Z)という色彩値で表現される色と(λX,λY,λZ)という色彩値で表現される色とは異なった色となる。この二つの色は、L色空間において以下のような色彩値で表わされる。
<基準露出撮影Aの場合>
A=116(Y/Yn)1/3−16
A=500{(X/Xn)1/3−(Y/Yn)1/3
A=200{(X/Xn)1/3−(Z/Zn)1/3
<シフト露出撮影Bの場合>
B=116(λ・Y/Yn)1/3−16
B=500{(λ・X/Xn)1/3−(λ・Y/Yn)1/3
B=200{(λ・X/Xn)1/3−(λ・Z/Zn)1/3
ここで、μ=λ1/3とすると、
B=μ・LA−16(1−μ) ・・・・(4)
B=μ・aA         ・・・・(5)
B=μ・bA         ・・・・(6)
【0107】
このように、シフト露出撮影Bの場合にディジタルスチルカメラ10が受け取る色彩値の情報(LB,aB,bB)は、基準露出撮影Aの場合にディジタルスチルカメラ10が受け取る色彩値の情報(LA,aA,bA)と異なる。このことから、ディジタルスチルカメラ10により一の色のカラーパッチを撮影した場合であっても、撮影時の露出条件が異なる場合には、画像データ生成装置は一の色を異なった色として認識することがわかる。
【0108】
次に、上記の第2色変換表YL2を利用してYCbCrからLへの色変換を行なうことにより、外挿演算を要する頻度を減らすことができる根拠について説明する。上述したディジタルスチルカメラ10による異なった色としての認識は、本実施例の場合には、チャート画像データEM5とチャート画像データEQ5との間のYCbCr表色値の違いとして現れる。この違いを図15に示した。図15は、基準露出量,基準露出量に対するλ倍シフト量という二つの露出条件でカラーパッチa1〜c6を撮影した場合に、ディジタルスチルカメラ10が認識した色の範囲の相違を模式的に示す説明図である。
【0109】
図15に示す「●」印は、チャート画像データEM5においてYCbCr表色値で表わされた各カラーパッチa1〜c6の色(つまり、基準露出の場合にディジタルスチルカメラ10が認識した各カラーパッチa1〜c6の色)と同じ色を表わすL色彩値をL色空間上に表わしたものである。「★」印は、チャート画像データEQ5においてYCbCr表色値で表わされた各カラーパッチa1〜c6の色(つまり、基準露出からλ倍シフトした場合にディジタルスチルカメラ10が認識した各カラーパッチa1〜c6の色)と同じ色を表わすL色彩値をL色空間上に表わしたものである。また、「◇」印は、Lの値が「70前後」であって彩度が高めの観念色(カラーパッチa1〜c6のパッチ実体色以外の色)である色Jyについて、そのL色彩値を表わしたものである。
【0110】
図15では、露出条件を基準露出量として撮影した場合にディジタルスチルカメラ10が認識した色の範囲(以下、基準認識範囲RE1という)を一点鎖線内に右下がりの斜線ハッチングを用いて示している。また、露出条件を基準露出量に対してλ倍シフトさせた量として撮影した場合にディジタルスチルカメラ10が認識した色の範囲(以下、シフト認識範囲RE2という)を破線内に左下がりの斜線ハッチングを用いて示している。
【0111】
図15に示すように、シフト認識範囲RE2は、L色空間上において、基準認識範囲RE1の外側の領域に広がり、基準認識範囲RE1よりも高彩度の領域に広がる。つまり、露出条件を基準露出量に対してλ倍シフトさせることにより、ディジタルスチルカメラ10が認識する色の範囲が変化するのである。
【0112】
このようにディジタルスチルカメラ10が認識する色の範囲が変化することで、図15に示すように、基準認識範囲RE1内に含まれない高彩度の色Jyは、シフト認識範囲RE2内に含まれることになる。よって、色JyについてのYCbCr表色値は、内挿演算(即ち、基準露出量やλ倍シフト量での撮影により得られたカラーパッチa1〜c6のYCbCr表色値について、複数のYCbCr表色値の中間値を計算すること)により求められる。このような内挿演算は上記の式1Aによって正確に実現される。よって、色JyについてのYCbCr表色値は、外挿演算による場合よりも正確に求められる。従って、第2色変換表YL2の精度を確保することができる。
【0113】
以上説明した本実施例の画像データ変換システムMAでは、カラーチャートEPにおける各カラーパッチの色をL色空間によって表現した基準色彩値を有する基準画像データE0を予め保持しておき、このカラーチャートEPを異なる露出で撮影することにより各カラーパッチについての色情報として異なったYCbCr表色値を有する二つのデータ(チャート画像データEM5,チャート画像データEQ5)を生成すると共に、この二つのデータ間における露出の相違量を基準画像データE0の基準色彩値に反映することにより修正基準色彩値を有する修正基準画像データEQ0を生成する。このチャート画像データEQ5のYCbCr表色値と基準画像データE0の基準色彩値との対応関係、チャート画像データEQ5のYCbCrの表色値と修正基準画像データEQ0の修正基準色彩値との対応関係という二つの対応関係に基づいて、YCbCr色空間とL色空間との間の色変換表YL2が作成される。
【0114】
このように一のカラーチャートEPを異なる露出量で2度撮影することにより、各カラーパッチa1〜l20のパッチ実体色は撮影ごとに異なった色として認識される。つまり、ディジタルスチルカメラ10による上記のような2度の撮影により、カラーパッチa1〜l20のパッチ実体色が仮想的に増加され、この仮想的に増加された色がパッチ実体色と共にディジタルスチルカメラ10に認識されるのである。このため、色変換処理装置90では、カラーチャートEPのパッチ実体色のみならず、仮想的に増加された色についても、YCbCr色彩値とL色彩値との対応関係を求めることが可能となる。このようにYCbCr色彩値とL色彩値との対応関係の数が増加することで、この対応関係に基づいて作成される色変換表YL2の精度を高めることが可能となり、観念色についてのYCbCr色彩値とL色彩値との対応関係をより正確に求めることができる。
【0115】
加えて、一のカラーチャートEPを基準露出量からシフトさせて撮影することにより、カラーチャートEPの撮影によってディジタルスチルカメラ10が認識する色の範囲は基準露出量での撮影時よりも高彩度領域に広がる。この結果、YCbCr色彩値とL色彩値との対応関係が内挿演算により求められる範囲が高彩度領域に拡大される。従って、観念色についてのYCbCr色彩値とL色彩値との対応関係を求める際に外挿演算を減らすことが可能となり、作成される色変換表YL2の精度をより一層高めることができる。
【0116】
また、上記実施例の画像データ変換システムMAでは、上記のように精度よく作成された色変換表YL2に基づいてディジタルスチルカメラ10とプリンタ40との間のプロファイルYWが作成される。従って、プロファイルYWの正確性を確保することができる。また、色変換表YL2は高彩度領域における正確性が確保されている。こうした色変換表YL2をプロファイルYWに含めることで、プリンタ40が高彩度の色再現域を有する場合であっても、この色再現域に属する高彩度の観念色Jyをプリンタ40で正確に再現することができる。
【0117】
上記実施例の画像データ変換システムMAでは、複数の色のカラーパッチa1〜l20が配置されたカラーチャートEPを、wRGB色空間によって表現された画像データを出力するプリンタ40によって用紙Pに出力する。この用紙P上に出力されたカラーチャートEPをディジタルスチルカメラ10により異なる露出で撮影するだけで、YCbCr色空間とL色空間との色変換表が精度よく作成される。従って、色変換表YL2を作成するためのカラーチャートを、高彩度域に属する色が多種類配置された専用品として別途作成する必要がなく、色変換表YL2の作成を簡便に実現することができる。
【0118】
なお、前記した図15においては、露出量をシフトさせた撮影に基づいて形成されたシフト認識範囲RE2を、L色空間上に円状の範囲として模擬的に示した。ここで、ディジタルスチルカメラの実機において露出量に差を設けてカラーチャートEPを撮影した場合に、ディジタルスチルカメラが認識する色の範囲が広がる程度を図16に示した。この図16では、カラーチャートEPの撮影によってディジタルスチルカメラ10が認識した色の範囲(以下、ディジタルスチルカメラ10の認識範囲という)を、撮影されるカラーチャートEPの領域(図4(B)を参照)ごとに表わしている。また、図17では、露出の設定値を「オート」に設定し、露出補正を行なわずにカラーチャートEPを撮影した場合におけるディジタルスチルカメラ10の認識範囲を基準認識範囲RE0として示している。また、露出の設定値を「オート」に設定し、露出オーバー側,露出アンダー側に補正してカラーチャートEPを撮影した場合におけるディジタルスチルカメラ10の認識範囲を、それぞれ、シフト認識範囲RE+,シフト認識範囲RE−として示している。
【0119】
図16に示すように、撮影されるカラーパッチの平均的なL(明度)の値がいずれの場合においても、シフト認識範囲RE+,シフト認識範囲RE−は基準認識範囲RE0よりも外側に広がる。また、撮影されるカラーパッチの平均的なLの値が20〜70の場合には、シフト認識範囲RE+とシフト認識範囲RE−とが互いに異なる範囲に広がっている。よって、カラーチャートEPを、露出の設定値を「オート」に設定した上で、露出補正なし,露出オーバー側に補正,露出アンダー側に補正という3通りのパターンで撮影すれば、露出オーバー側と露出アンダー側のいずれかに補正した場合よりもディジタルスチルカメラ10の認識範囲を更に広げることが可能となる。従って、第2色変換表YL2の作成において外挿演算を行なう頻度をより一層低減することができる。
【0120】
B.変形例:
上記実施例では、ディジタルスチルカメラ10が撮影時における露出の設定値を読み出してメモリカードMCに書き込むことにより、各チャート画像データEM5,EQ5が生成されたときの露出状況をメモリカードMCに記録したが、これ以外の方法で、各チャート画像データEM5,EQ5が生成されたときの露出状況をメモリカードMCに記録することも可能である。例えば、図4(B)に示したカラーチャートEPの、Lの値が50近傍のカラーパッチが配列された領域▲5▼に配置された灰色のカラーパッチや、灰色のバックグラウンドデータ領域BSを利用することにより、撮影時の露出状況を判定する手法を考えることができる。具体的には、カラーチャートEPを撮影する際に、ディジタルスチルカメラ10が灰色のカラーパッチやバックグラウンドデータ領域BSの光の反射率の違いを検出し、この反射率の違いにより撮影時の露光量を求める構成を採用すればよい。この場合において、反射率の違いの検出や撮影時の露光量の演算は、ディジタルスチルカメラ10が備える露光計により行なうことができる。こうすれば、種々の場所でカラーチャートEPが撮影された場合であっても、カラーチャートEPの反射光量の違いが正確に判定される。従って、撮影場所における光に関する条件の違いに拘らず、各チャート画像データEM5,EQ5が備える色情報の精度をほぼ均一なものに保つことが可能となり、第2色変換表YL2の信頼性を確保することができる。
【0121】
また、灰色のカラーパッチやバックグラウンドデータ領域BSの光の反射率の基準値をディジタルスチルカメラ10が予め保持するものとし、灰色のカラーパッチやバックグラウンドデータ領域BSの撮影時における基準値からのシフト量を露光計等により求める構成とすることも可能である。こうすれば、露出状況の相違を簡単な構造で求めることができる。
【0122】
上記実施例において、各チャート画像データEM5,EQ5が異なる光源下での撮影により生成されている場合に対処し、各チャート画像データEM5,EQ5に基づいて撮影光源を推定する光源推定部をディジタルスチルカメラ10の制御機構20若しくは色変換処理装置90の制御機構95に設け、色変換表作成部66が、光源推定部により推定された撮影光源の種類ごとに第2色変換表YL2を作成する構成としてもよい。この構成を採れば、撮影光源の違いによって生じる色かぶりの影響を考慮して第2色変換表YL2を作成することが可能となり、撮影光源ごとに正確な第2色変換表YL2を作成することができる。なお、撮影光源の推定手法の一例としては、撮影時におけるホワイトバランスの設定状態(例えば、ホワイトバランスが「オート」に設定されている状態,撮影光源が「太陽光」,「蛍光灯」,「白熱灯」,「曇天」等のいずれかが設定されている状態)を各チャート画像データEM5,EQ5と関連付けてメモリカードMCに記録しておき、この記録内容を色変換処理装置90が読み取るといった手法を考えることができる。
【0123】
上記実施例では、色変換表作成装置ないしプロファイル作成装置としての色変換処理装置90を、ディジタルスチルカメラ10とは別の装置として構成したので、ディジタルスチルカメラ10についての色変換表YL2やディジタルスチルカメラ10とプリンタ40との間のプロファイルYWを、ディジタルスチルカメラ10以外の装置において作成ないし管理することが可能となり、ディジタルスチルカメラ10やプリンタ40の機種変更に容易に対応することができる。また、上記の構成を採れば、色変換表YL2ないしプロファイルYWの作成処理をプリンタ40内で行なう必要がなく、プリンタ40をよりコンパクトに構成することができる。
【0124】
また、上記の色変換処理装置90をディジタルスチルカメラ10に組み込んで、色変換表YL2やプロファイルYWの作成処理をディジタルスチルカメラ10において行なうこととしてもよい。こうすれば、プロファイルYWを作成するためにカラーチャートEPの撮影結果(基準画像データE3〜E5)を他の装置に入力する必要がなく、ディジタルスチルカメラ10を所持する使用者がプリンタ40でカラーチャートEPを印刷し、印刷されたカラーチャートEPを撮影するだけで、色変換表YL2やプロファイルYWがディジタルスチルカメラ10内で自動的に作成される。従って、色変換表YL2やプロファイルYWを簡便に作成することができる。
【0125】
この場合において、プロファイルYWに基づいてwRGB表色値を求める処理(図10におけるステップS530の処理)をディジタルスチルカメラ10によって実行する構成とすることも好適である。このような構成によれば、使用者がカラーチャート以外の対象物を撮影することにより画像データH1〜H3が生成された場合に、この画像データH1〜H3が有する色をプロファイルYWに基づいてプリンタ40からの出力に適した色に変換する処理が、ディジタルスチルカメラ10内で自動的に実行される。従って、使用者の使い勝手をより一層改善することができる。
【0126】
なお、図1において、黒色の太矢印は画像データやプロファイル等の補正データの受け渡し経路を示しているが、こうしたデータの受け渡しは、メモリカード等の記録媒体によるものに限らず、ケーブルや通信回線等を用いて行なうものであってもよい。
【0127】
上記実施例では、プリンタ40によってカラーチャートEPの画像を用紙P上に印刷し、この用紙P上のカラーチャートEPをディジタルスチルカメラ10で撮影することとしたが、カラーチャートの画像をプリンタ40から出力せず、テスト撮影用のカラーチャートEPKとして予め用意しておくことも可能である。このようなカラーチャートEPKの構成としては、例えば、各カラーパッチを本実施例と同様の配列で板体に張り付け、各カラーパッチの張り付け領域の周囲に18%グレーのフレームをセットする構成等を考えることができる。このような場合には、記憶部51に、各カラーパッチの色をL色空間によって表現したときの基準色彩値の情報と、この基準色彩値をwRGB色空間によって表現したときの表色値の情報を予め記憶しておけばよい。
【0128】
以上、本発明の実施例ないし変形例について説明したが、本発明は、こうした実施例等に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる態様で実施可能である。
【0129】
例えば、上述したチャート画像データEM5,EQ5ないし修正基準画像データEQ0を生成する処理やチャート画像データEM5,EQ5,基準画像データE0,修正基準画像データEQ0に基づいて色変換表YL2やプロファイルYWを作成する処理の内容を、ROMやCD−ROM等の記録媒体にコンピュータによる読み取りが可能な形式で記録する構成としてもよい。このような記録媒体によれば、記録媒体に記録された内容をコンピュータが読み取ることにより、精度の高い色変換表YL2やプロファイルYWを作成することができる。なお、上記した記録媒体の構成に関しては、チャート画像データEM5,EQ5ないし修正基準画像データEQ0を生成する処理やチャート画像データEM5,EQ5,基準画像データE0,修正基準画像データEQ0に基づいて色変換表YL2やプロファイルYWを作成する処理のうちの一部を、ROMやCD−ROM等の記録媒体にコンピュータによる読み取りが可能に記録する構成としてもよい。
【0130】
カラーチャートEPの構造は、上記実施例で示したものに限らず、適宜変更を加えることができる。
【0131】
また、上記実施例では、ディジタルスチルカメラ10とプリンタ40との間における画像データ変換システムMAについて説明したが、ディジタルスチルカメラ10に替えて、基準となる色空間がプリンタ40と異なる他の画像データ生成装置を適用することも可能である。このような画像データ生成装置としては、ディジタルスチルカメラを備えたデジタル機器(例えば、デジタルカメラ付きパソコンやデジタルカメラ付き携帯電話)やスキャナ,ディジタルビデオカメラ等を考えることができる。
【0132】
また、ディジタルスチルカメラ10,スキャナ,ディジタルビデオカメラという異なる種類の画像データ生成装置ごとに作成された複数のプロファイルをプリンタ40による読み取りが可能な形式で色変換表作成装置に記憶することも、異なる画像データ生成装置によって取得された一の画像を同じ色で印刷することが可能となる点で好適である。
【0133】
上記実施例の画像データ変換システムMAにおいて、色変換表YL2が利用される装置として、プリンタ40に替えて、基準とされる色空間が画像データ生成装置と異なる他の装置を適用することも可能である。このような他の装置としては、各種のデジタル機器に表示用として設けられるモニタ等を考えることができる。
【0134】
上記実施例において用いた色空間はあくまでも例示であり、ディジタルスチルカメラ10等の画像データ生成装置やプリンタ40等の色変換表YL2が利用される装置において他の機器依存色の色空間を用いても差し支えない。また、機器非依存色の色空間として、L色空間以外の色空間(例えば、XYZ色空間)を用いてもよい。
【0135】
また、画像データ生成装置やプリンタ40等の色変換表YL2が利用される装置において、画像データの生成に基準とされる色空間を複数の色空間の中から選択可能に構成してもよい。
【0136】
上記実施例における色変換処理装置90はあくまで例示であり、その構成は各実施例の記載内容に限定されるものではない。色変換処理装置90は、少なくとも撮影により生成された画像データの色情報を読み取り、この読み取り結果に基づいて機器依存色の色空間と機器非依存色の色空間との間の色変換表を作成できるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例である画像データ変換システムMAの概要を示す説明図である。
【図2】プロファイル作成処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】基準画像データE0が記憶された状態の基準テーブルBTを示す説明図である。
【図4】カラーチャートEPを示す説明図である。
【図5】図2のステップS270における対応関係決定処理の詳細を対応関係決定処理ルーチンとして示すフローチャートである。
【図6】YCbCr基準画像データE5のYCbCr表色値が書き込まれた状態の対応テーブルCTを示す説明図である。
【図7】対応関係決定処理が制御機構95の各機能部によって行なわれる様子を示すブロック図である。
【図8】図2のステップS280における回帰演算処理の詳細を回帰演算処理ルーチンとして示すフローチャートである。
【図9】回帰演算処理が制御機構95の各機能部によって行なわれる様子を示すブロック図である。
【図10】画像忠実印刷処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】プロファイルに基づくYCbCr色空間からwRGB色空間への変換処理が制御機構95,50の各機能部によって行なわれる様子を示すブロック図である。
【図12】画像データ変換システムMAを適用した場合における、ディジタルスチルカメラ10によって取得された画像の色とプリンタ40によって印刷される色との関係を示す説明図である。
【図13】第2色変換表YL2の作成処理を行なう機能部の構成と働きを示す説明図である。
【図14】各カラーパッチa1〜c6のYCbCr表色値,基準色彩値,修正基準色彩値が書き込まれた第1テーブルCT1,第2テーブルCT2と、この第1テーブルCT1,第2テーブルCT2に基づいて作成された第2色変換表YL2の例を示す説明図である。
【図15】基準露出量,基準露出量に対するλ倍シフト量という二つの露出条件でカラーパッチa1〜c6を撮影した場合に、ディジタルスチルカメラ10が認識した色の範囲の相違を模式的に示す説明図である。
【図16】ディジタルスチルカメラの実機において露出量に差を設けてカラーチャートEPを撮影した場合に、ディジタルスチルカメラが認識する色の範囲が広がる程度を示す説明図である。
【符号の説明】
10…ディジタルスチルカメラ
11…メモリカードスロットル
20…制御機構
22…データ生成部
24…色変換部
26…圧縮部
40…プリンタ
41…メモリカードドライブ
50…制御機構
51…記憶部
53…指令部
55…L−w演算部
56…色分解部
58…出力部
60…データ受取部
61…条件判定部
62…修正部
64…関係決定部
65…表色値特定部
66…色変換表作成部
67…色変換表記憶部
68…色空間変換部
69…Y−w演算部
90…色変換処理装置
95…制御機構
BS…バックグラウンドデータ領域
BT…基準テーブル
CT…対応テーブル
CT1…第1テーブル
CT2…第2テーブル
E0…基準画像データ
E1…wRGB基準画像データ
E2…CMYK基準画像データ
E3…RGB基準画像データ
E4…YCbCr基準画像データ
E5…YCbCr基準画像データ
EP…カラーチャート
EQ0…修正基準画像データ
EM5,EQ5…チャート画像データ
FL…配列情報
H…対象物
H1…RGB画像データ
H2…YCbCr画像データ
H3…YCbCr画像データ
H4…wRGB画像データ
H5…CMYK画像データ
JM…基礎演算式
MA…画像データ変換システム
MA1…プロファイル作成モジュール
MA2…画像印刷モジュール
MC…メモリカード
P…用紙
VS…パッチデータ領域
YL…色変換表
YL1…第1色変換表
YL2…第2色変換表
YW…プロファイル
Z1,Z2,Z3,Z4…識別マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色から構成された被写体を撮影することによって生成され、機器依存色の色空間によって表現された撮影画像データを入力し、該入力された撮影画像データに基づいて前記機器依存色の色空間と前記機器非依存色の色空間との間の色変換表を作成する色変換表作成装置であって、
前記被写体の複数の各色を機器非依存色の色空間によって表現したデータを基準画像データとして予め記憶する記憶部と、
前記撮影画像データとして、前記被写体を露出調整を経て撮影することにより生成された露出調整済画像データと、前記露出調整における露出と異なる露出で前記被写体を撮影することにより生成された変更画像データとを入力する入力部と、
該入力部に入力された前記露出調整済画像データと前記変更画像データとの露出の相違状況を判定する判定部と、
該判定部に判定された相違状況を前記基準画像データに反映することにより、前記機器非依存色の色空間によって表現された修正基準画像データを生成する修正データ生成部と、
前記露出調整済画像データの表色値と前記記憶された基準画像データの基準色彩値との対応関係と、前記変更画像データの表色値と前記修正基準画像データの色彩値との対応関係とに基づいて前記色変換表の作成を行なう色変換表作成部と
を備えた色変換表作成装置。
【請求項2】
前記色変換表作成部は、前記露出調整済画像データの表色値と前記記憶された基準画像データの基準色彩値との対応関係と、前記変更画像データの表色値と前記修正基準画像データの色彩値との対応関係とから、前記機器依存色の色空間における表色値と前記機器非依存色の色空間における色彩値との関係を表わす演算式を求め、この演算式を前記色変換表として作成する請求項1に記載の色変換表作成装置。
【請求項3】
前記入力部は、前記露出調整における露出と異なる複数の露出での撮影により生成された複数の変更画像データを入力する請求項1または2に記載の色変換表作成装置。
【請求項4】
前記複数の露出には、前記露出調整における露出よりも露光量の大きな露出と、前記露出調整における露出よりも露光量の小さな露出とが含まれる請求項3に記載の色変換表作成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の色変換表作成装置であって、
前記被写体が有する灰色の部分を認識する手段を備え、
前記判定部は、前記露出調整済画像データと前記変更画像データとの間における前記灰色の部分の光の反射率の違いに基づいて前記露出の相違状況を判定する
色変換表作成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の色変換表作成装置であって、
該装置は、所定の色空間によって表現された画像データを出力する画像出力装置により所定の媒体上に出力されたカラーチャートを前記被写体として撮影することにより生成された撮影画像データに基づいて前記色変換表を作成する装置であり、
前記記憶部は、前記出力されたカラーチャートに配置された複数の各カラーパッチの色を機器非依存色の色空間によって表現したデータを、前記基準画像データとして予め記憶し、
前記入力部は、前記複数のカラーパッチが配置されたカラーチャートを撮影することにより生成されたデータを、前記露出調整済画像データ,前記変更画像データとして入力する
色変換表作成装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の色変換表作成装置であって、
前記入力部に異なる光源下で撮影された複数の撮影画像データが入力されたとき、該入力された各撮影画像データに基づいて撮影光源を推定する光源推定部を備え、
前記色変換表作成部は、前記推定された撮影光源の種類ごとに前記色変換表を作成する
色変換表作成装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の色変換表作成装置によって作成された色変換表に基づいて、前記被写体の撮影により撮影画像データを生成した画像データ生成装置と該画像データ生成装置以外の他の装置との間のプロファイルを作成するプロファイル作成装置。
【請求項9】
複数の色から構成された被写体を撮影することによって生成され、機器依存色の色空間によって表現された撮影画像データを入力し、該入力された撮影画像データに基づいて前記機器依存色の色空間と前記機器非依存色の色空間との間の色変換表を作成する色変換表作成方法であって、
前記被写体の複数の各色を機器非依存色の色空間によって表現したデータを基準画像データとして予め記憶し、
前記撮影画像データとして、前記被写体を露出調整を経て撮影することにより生成された露出調整済画像データと、前記露出調整における露出と異なる露出で前記被写体を撮影することにより生成された変更画像データを入力し、
該入力された前記露出調整済画像データと前記変更画像データとの露出の相違状況を判定し、
該判定された相違状況を前記基準画像データに反映することにより、前記機器非依存色の色空間によって表現された修正基準画像データを生成し、
前記露出調整済画像データの表色値と前記記憶された基準画像データの基準色彩値との対応関係と、前記変更画像データの表色値と前記修正基準画像データの色彩値との対応関係とに基づいて前記色変換表を作成する
色変換表作成方法。
【請求項10】
複数の色から構成された被写体を撮影することによって生成され、機器依存色の色空間によって表現された撮影画像データを入力し、該入力された撮影画像データに基づいて前記機器依存色の色空間と前記機器非依存色の色空間との間の色変換表を作成するためのコンピュータプログラムを記録した記録媒体であって、
前記撮影画像データとして、前記被写体を露出調整を経て撮影することにより生成された露出調整済画像データと、前記露出調整における露出と異なる露出で前記被写体を撮影することにより生成された変更画像データを入力する工程と、
該入力された前記露出調整済画像データと前記変更画像データとの露出の相違状況を判定する工程と、
該判定された相違状況を、前記被写体の複数の各色を機器非依存色の色空間によって表現したデータである基準画像データに反映することにより、前記機器非依存色の色空間によって表現された修正基準画像データを生成する工程と、
前記露出調整済画像データの表色値と前記記憶された基準画像データの基準色彩値との対応関係と、前記変更画像データの表色値と前記修正基準画像データの色彩値との対応関係とに基づいて前記色変換表を作成する工程と
をコンピュータに実行させるためのプログラムをコンピュータに読み取り可能に記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2004−23207(P2004−23207A)
【公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−172239(P2002−172239)
【出願日】平成14年6月13日(2002.6.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】