説明

荷重センサ及び変位量センサ

【課題】より簡単な構成で高精度の荷重検出を行うことができる荷重センサを提供する。
【解決手段】荷重センサ1は、固定側に取り付けられる基部3,及び基部3に対して弾性変形する起歪部4により両端部が支持され、印加される荷重に応じて基部3に対する相対位置が変位する可動部5を有してなる本体2と、VRセンサ部18との組み合わせで構成する。具体的には、1次コイル20及び2次コイル21を備えたステータコア19を基部3側、可動コア22を可動部5側にそれぞれ配置し、可動部5に荷重が加わり変位が生じるとステータコア19側のコイル20及び21と可動コア22との位置関係を変化させ、1次コイル20が発生した磁束に対して作用する磁気抵抗を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基部に対して弾性変形する起歪部により両端部が支持され、印加される荷重に応じて前記基部との相対位置が変位する可動部を有してなる起歪体を用い、前記荷重を検出する荷重センサ,及び何れか一方が固定側,他方が可動側に取り付けられる第1,第2コアを備えてなる変位量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、荷重を検出するセンサには様々な方式のものがある。このような荷重センサは、例えば長尺の紙やフィルム,ゴムなどを、ローラなどを介しある程度の距離に亘って搬送する場合に、搬送対象に適度なテンションを付与しながら送り出すため、ローラに係る荷重を検出する目的などに使用される。そして、一般的には、印加される荷重に応じて起歪部に生じる局部的な歪み量を歪みゲージの抵抗値の変化として、ホイットストーンブリッジ回路により検出する構成のセンサなどが採用されることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−201839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のように構成される荷重センサには以下のような問題があった。すなわち、歪みゲージの抵抗値変化を検出するので、測定環境の温度が変化する場合には、それに応じて抵抗値を補正する必要がある。また、歪みゲージを取り付ける位置の誤差が出力誤差に直結するので、取り付け後において、最終的に得られる出力結果についても補正を行う必要がある。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より簡単な構成で高精度の荷重検出を行うことができる荷重センサ,及び同様の原理によって可動側の変位量を検出できる変位量センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1記載の荷重センサは、固定側に取り付けられる基部,及びこの基部に対して弾性変形する起歪部により両端部が支持され、印加される荷重に応じて前記基部との相対位置が変位する可動部を有してなる起歪体と、
前記基部に配置され、ヨーク部の内周側に複数の突極部を有するステータコアと、
このステータコアにおいて、前記可動部の変位方向に沿って配置される突極部に巻装され、所定の交流信号が入力される1次コイルと、
この1次コイルと共に前記突極部に巻装される2次コイルと、
前記可動部に固定され、前記1次コイルが発生する磁束が通る磁気回路を前記ステータコアと共に形成し、前記可動部の変位に伴い前記突極部との間の空隙長が変化するように配置される可動コアとを備え、
前記2次コイルより、前記可動部の変位量に応じて変化する交流信号を出力することを特徴とする。
【0006】
斯様に構成すれば、起歪体の可動部に荷重が加わることで基部との相対位置が変化すると、ステータコアに巻装されているコイルと可動コアとの間の空隙長が変化するので、1次コイルが発生させた磁束に対して作用する磁気抵抗が変化する。その結果、2次コイルより出力される交流信号も変化するので、その信号変化は、印加された荷重に応じて可動部に生じた変位量に相当する。したがって、2次コイルより出力される交流信号から、可動部に印加された荷重の大きさを得ることができる。
【0007】
この場合、請求項2に記載したように、前記可動部は、前記可動コアが取り付けられる可動コア取付け部と、この可動コア取付け部の両端を、前記起歪部よりも低い剛性で支持する可動側支持部とを有し、前記基部に対して、前記可動コア取付け部の両端部を、前記起歪部よりも低い剛性で支持する補助支持部を備えると良い。すなわち、起歪部は、可動部の両端部を支持しているので、可動部に対して荷重が偏った状態で印加されると、起歪部における歪み分布が偏り、可動コアがステータ側に対して傾いた状態で変位するおそれがある。
そこで、可動部において可動コア取付け部を可動側支持部で支持すると共に、その可動コア取付け部の両端部を基部に対して補助支持部で支持すれば、可動部に印加される荷重に偏りが生じた場合でも、起歪部に生じる応力歪みの偏りを、可動側支持部及び補助支持部で吸収させて、可動コアがステータ側に対し平行を維持した状態で変位するようになる。
【0008】
また、請求項3に記載したように、前記可動部と前記基部との間に形成されて前記可動部の変位に伴い変形を生じる空間部に、前記可動部の変位量を制限する変位制限部材を配置するので、可動部に対して想定した以上の過大な荷重が印加された場合に、可動部が変位制限部材に当接することで起歪体が不可逆的に変形することを防止できる。
また、請求項4記載の変位量センサは、ヨーク部の内周側に複数の突極部を有する第1コアと、
前記突極部に巻装され、所定の交流信号が入力される1次コイルと、
この1次コイルと共に前記突極部に巻装される2次コイルと、
前記1次コイルが発生する磁束が通る磁気回路を前記第1コアと共に形成し、可動側と固定側との相対変位に伴い前記突極部との間の空隙長が変化するように配置される第2コアとを備え、
前記2次コイルより、前記相対変位量に応じて変化する交流信号を出力することを特徴とする。
【0009】
斯様に構成すれば、固定側と可動側との相対位置が変化すると、第1コアに巻装されているコイルと第2コアとの間の空隙長が変化するので、1次コイルが発生させた磁束に対して作用する磁気抵抗が変化する。その結果、2次コイルより出力される交流信号も変化するので、その信号変化は、固定側と可動側との相対変位量に相当する。したがって、2次コイルより出力される交流信号から、可動側の変位量を得ることができる。
【0010】
この場合、請求項5に記載したように、前記第1コアに、前記可動側が直交する2軸について変位する方向に沿ってそれぞれ配置される突極部,1次コイル及び2次コイルを備えると良い。斯様に構成すれば、固定側に対して、可動側が2軸方向に変位した量が検出できるので、各軸方向に配置されている2次コイルより出力される交流信号の変化により、可動側の変位状態を2次元的に得ることができる。
【0011】
更にこの場合、請求項6に記載したように、前記第1コアの突極部と前記第2コアとが対向する部位の形状を、それぞれ平面に形成するのが好ましい。斯様に構成すれば、第1,第2コアがそれぞれ平面で対向するようになり、可動側が変位した場合に磁気的なクロスカップリングの発生が防止される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の荷重センサによれば、歪みゲージやブリッジ回路を使用することなく荷重を検出できるので、測定環境の温度や、歪みゲージの取り付け位置に応じた補正を行う必要がなく、簡単な構成で高精度の荷重検出を行うことができる。
【0013】
請求項2記載の荷重センサによれば、可動コア取付部を可動側支持部及び補助支持部によって支持するので、可動部に印加される荷重に偏りがある場合でも可動コアをステータコアに対し平行を維持した状態で変位させることができ、荷重の検出精度を更に向上させることができる。
【0014】
請求項3記載の荷重センサによれば、変位制限部材により、可動部に過大な荷重が印加された場合に起歪体が不可逆的に変形することを防止できるので、強度を確保して信頼性を向上させることができる。
【0015】
請求項4記載の変位量センサによれば、第1コア,第2コア間の空隙長の変化によって、可動側の微小な変位量を高精度に検出することができる。
請求項5記載の変位量センサによれば、可動側の変位状態を、2次元的に、より多様に得ることが可能となる。
【0016】
請求項6記載の変位量センサによれば、磁気的なクロスカップリングの発生が防止されるので、変位量の検出精度を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例について図1乃至図5を参照して説明する。図1は、荷重センサ1の(a)外観平面図,(b)縦断側面図,(c)底面図である。荷重センサ1の本体(起歪体)2は、横長直方体状の鋼材を切り出し加工することで形成されており、基部3,起歪部4,可動部5などを有して一体で構成されている。
図1(b)に示すように、本体2の図中左右両側端には、縦長の凹部6が形成されており、その凹部6の内側には、所定の厚みを隔てて、凹部6の縦方向形成寸法と同じ長さの長穴部7が形成されている(図中の符号6,7は、凹部6,長穴部7として形成された空間を指示している)。そして、凹部6と長穴部7とを隔てている所定の厚み部分が、上記起歪部4となっている。
【0018】
長穴部7の内側中央部からは、本体2の中心方向に向かって水平に切り込み線が入れられており、その切り込み線は、正方形状に切り出されたストッパ配置部(空間部)8の下辺部につながっている。尚、図中では、ストッパ配置部に8後述するストッパ40を挿入した状態を示しているため、括弧付きの符号8を破線で引き出している。ストッパ配置部8の上辺部からは、更に本体2の中心方向に向かって水平に切り込み線が入れられており、その切り込み線は、弱い板バネ状の(すなわち、起歪部4よりも剛性が低い)センサ平行バネ部(補助支持部)9を形成する垂直方向の切り込み線につながっている。
【0019】
ストッパ配置部8の上方には、所定の厚みを隔てて水平方向に切り込み線が延びることで、可動部5の一部をなし、本体2内部の中央よりやや上方に形成される可動コア取付ベース(以下、取付ベースと称す)10を両側から支持する弱い板バネ状のカップリング部(可動側支持部)11を形成している。取付ベース(可動コア取付部)10は、カップリング部11を両側の裾として、そこから上方に立ち上がる斜面を有する台形状をなすように、水平方向に切り出されている。すなわち、取付ベース10は、その両端がカップリング部11により水平方向(変位方向)について支持されることで可動部5の一部をなしていると共に、両端部が基部3に対してセンサ平行バネ部9により垂直方向について支持されている。
【0020】
可動部5の中心部には、後述するVR(Variable Reluctance)センサ部を構成する可動コアを取付ベース10に固定する作業を行うための縦穴12が形成されており、取付ベース10には、可動コアを底面側より挿入するため、縦穴12よりもやや径小の挿入穴13が形成されている。可動部5の縦穴12には、キャップ14が上方より埋め込まれている。
【0021】
一方、固定部3の中央には、底面側よりVRセンサ部を挿入してそのステータ部分を配置するためのステータ配置部15が形成されている。そのステータ配置部15の上端と、可動部5の取付ベース10との間には、両者を切り離すように水平に切り出し線が入れられており、その切り出し線は、左右両側でセンサ平行バネ部9の内側上方に形成されている略半円状の空間16につながっている。そして、センサ平行バネ部9の横幅寸法(厚み)は、起歪部4よりも十分薄くなっている。
【0022】
以上に述べた荷重センサ1の本体2は、基部3に対して、可動部5が、起歪部4及びセンサ平行バネ部9によって支持された構造となっている。そして、基部3を底面側よりねじ止めによって固定側に固定し、可動部5には、荷重が加えられる対象物がやはりねじ止めなどにより固定される。可動部5に対して図1(b)中左右方向に荷重が印加されると、その荷重に応じて起歪部4が弾性変形し、可動部5が基部3に対して左右方向に変位するようになっている。
【0023】
ストッパ配置部8は、上記のようにして可動部5が変位した場合に、図1(b)に示す縦断面形状に変形を生じる余地を残した空間であり、可動部5の最大変位量を制限するため、ストッパ配置部8に対して角柱状のストッパ(変位制限部材)40が挿入されている。すなわち、可動部5の変位量は、可動部5がストッパ40に側面から当接することで制限されるようになっている。
【0024】
図1(c)は、底面側のセンサカバー17と後述する基板24とを取り外して、本体2の内部に配置されるVRセンサ部(変位量検出センサ)18をステータ側から見た状態を示している。VRセンサ部18は、ステータコア(第1コア)19,1次コイル20,2次コイル21,可動コア(第2コア)22で構成されている。ステータコア19は、図1(c)に示すように円管状をなすヨークの内周側において、90度置きに設けられた4つの突極部19a〜19dを備えており、それらの内、可動コア22が本体2の可動部5と共に変異する方向(図中上下方向)にある突極部19a,19cに、1次コイル20a,20c及び2次コイル21a,21cがそれぞれ巻装されている。
【0025】
可動コア22は、概ね円柱状であり、ステータコア19における4つの突極部19a〜19dに囲まれている中心部に、それらの突極部19a〜19dとの間に僅かなギャップ(空隙長)を有するように挿入されており、その先端部は、上述したように取付ベース10の挿入穴13に挿入された状態で、ボルトなどにより可動部5に固定されている。尚、ステータコア19及び可動コア22は、例えば本体2をなす鋼材とほぼ同じ温度膨張特性の磁性体で構成されている。
【0026】
図2は、VRセンサ部18の動作原理を説明するもので、(a)は1次コイル20a,20cに交流信号が通電された場合に発生する磁束がステータコア19及び可動コア22を通る状態を示し、(b)はその等価回路を示す。尚、図2(a)において可動コア22が変位する方向は、図1(c)とは90度異なる左右方向となっている。
【0027】
1次コイル20a,20cに対しては、図2(b)に示すように励磁用の交流電源23より所定周波数の交流信号が与えられるが、それにより励磁されてステータコア19及び可動コア22を通る磁束は、ある時点で図2(a)に破線で示す方向となるよう、1次コイル20a,20cが巻装されている。
【0028】
2次コイル21a,21cは、直列逆相接続となるよう巻装されており、1次コイル20a,20cとは、突極部19aと可動コア22とのギャップδa,突極部19cと可動コア22とのギャップδcとを含む磁気回路を介して磁気的に結合されている。2次コイル21aより出力される交流信号をVaとすると、2次コイル21cより出力される交流信号Vcは交流信号Vaの逆相となり、これらの直列出力は(Va+Vc)である。
【0029】
そして、可動コア22が変位してギャップδa,δcの大小関係が変化すると、1次コイル20a/2次コイル21a,1次コイル20c/2次コイル21cの磁気的結合状態,すなわち、磁気回路のリラクタンス(磁気抵抗)が変化するため、2次側の出力信号(Va+Vc)も変化することになる。尚、上述したようにストッパ40を配置して可動部5の最大変位量を制限することで、最大に変位した場合でも、可動コア22が突極部19a,突極部19cと接触しない程度のギャップが確保されるように設定されている。
尚、上記のようなVRセンサ部18の原理説明と同様の説明は、例えば特開昭57−60212号公報や、特開平5−52588号公報などにも記載されている(但しこれらの公報では、VRセンサによって回転位置を検出する場合の原理が説明されている)。
【0030】
図1(b)に示すように、ステータコア19の下方には基板24が配置されており、1次コイル20,2次コイル21の両端は、基板24に形成されている図示しない配線パターンに接続されている。そして、これらのコイル20,21と外部との間における入出力信号は、基板24および本体2に接続される図示しないケーブルを介して行われる(尚、図1(a)にはケーブルを本体2に接続した状態で固定するためのナットを示しており、図1(c)にはケーブルを本体2に接続するための挿入穴を破線で示している)。すなわち、荷重センサ1は、本体2とVRセンサ部18との組み合わせによって構成されている。
【0031】
図3は、荷重センサ1を実際にテンションメータとして使用する場合の形態を例示しており、可動部5に取り付けられるローラ25で支持された搬送対象物Cにテンションが付与されつつ搬送される場合の荷重Fを検出する場合を示している。
【0032】
図4は、荷重センサ1に上述したケーブルを介して接続される信号入出力回路31の機能ブロック図である。1次SIN電圧発生回路32は、図2(b)に示す交流電源23と同様に、1次コイル20に対して交流信号(SIN波)VREFを出力する。2次信号入力回路33は、2次コイル21より出力される信号(Va+Vc)を増幅して、次段の同期検波回路34に出力する。同期検波回路34は、1次SIN電圧発生回路32より交流信号VREFが与えられ、2次信号入力回路33より出力される信号を同期検波すると、次段の整流回路35に出力する。整流回路35は、2次信号入力回路33より与えられる検波信号を整流及び平滑して、直流信号VOUTを出力する。
【0033】
次に、本実施例の作用について図5も参照して説明する。図5は、荷重センサ1に荷重が印加されて、突極部19と可動コア22とのギャップδa,δcの大小関係が変化した場合における、各部の信号波形を示している。図5(a)に示すように、信号入出力回路31より荷重センサ1の1次コイル20a,20cに入力される交流信号VREFは、常に周波数が一定で、且つ振幅の最大値が一定となっている。
そして、ケース(A)のように可動部5に荷重が印加されておらず、ギャップ
(δa=δc)である場合は、図5(b)に示すように、2次コイル21aより出力される正相信号Vaと、2次コイル21cより出力される逆相信号Vcとの振幅は等しいので、それらの合成信号(Va+Vc)はゼロになる(図5(c)参照)。したがって、信号入出力回路31より出力される信号VOUTもゼロレベルとなる(図5(f)参照)。
【0034】
この状態から、ケース(B)のように可動部5に荷重が印加されて、両ギャップの大小関係が(δa>δc)になると、図5(b)に示すように、2次コイル21aより出力される正相信号Vaの振幅はより小さく、2次コイル21cより出力される逆相信号Vcの振幅はより大きくなるように変化する。すると、それらの合成信号(Va+Vc)は、逆相信号Vcの振幅を僅かに小さくしたものとなり(図5(c)参照)、その信号を同期検波した出力は、ゼロレベルに対して負側となる成分が抽出される(図5(d)参照)。したがって、その成分を整流・平滑した信号VOUTは、ゼロレベル下回るように出力される(図5(f)参照)。
【0035】
一方、ケース(C)のように、ケース(B)とは逆方向となる荷重が印加されて、両ギャップの大小関係が(δa<δc)になると、各信号の大小関係も逆転する。すなわち、図5(b)に示すように、正相信号Vaの振幅はケース(A)を基準としてより大きく、逆相信号Vcの振幅はより小さくなるように変化するので、それらの合成信号(Va+Vc)は、正相信号Vaの振幅を僅かに小さくしたものとなり(図5(c)参照)、その信号を同期検波した出力は、ゼロレベルに対して正側となる成分が抽出される(図5(d)参照)。したがって、その成分を整流・平滑した信号VOUTは、ゼロレベル上回るように出力される(図5(f)参照)。
尚、実際に信号入出力回路31より出力される信号VOUTは単一電源Vpによるので、図5に示す「ゼロレベル」は、グランドレベルと電源電圧Vpとの中間レベルに設定される。
【0036】
また、この場合、可動部5に印加される荷重の大きさに応じて可動コア22が変位する特性は線形を示す。したがって、信号入出力回路31より出力される信号VOUTに本体2の変形応力に応じた係数を乗じれば、可動部5に印加された荷重を得ることができる。その際に、信号VOUTをA/D変換したデータをマイクロコンピュータに与えて演算させ、荷重の数値(即値)を表示器等に表示させるなどしても良いことは勿論である。
【0037】
また、本体2にセンサ平行バネ部9及びカップリング部11がない場合を想定すると、可動部5は、その両端部が起歪部4のみで支持されている状態で変位することになる。すると、可動部5に対してモーメント等により荷重が偏った状態で印加されると、起歪部4における歪み分布にも偏りが生じて、可動部5と基部3との平行が保てなくなり、可動コア22がステータコア19側に対して傾いた状態で変位するおそれがある。
そこで、可動部5の取付ベース10を、起歪部4に比べて十分に剛性が低いセンサ平行バネ部9及びカップリング部11で支持することで、荷重の偏りにより可動部5の変位に傾きが生じた場合でも、可動コア22と突極部19a,19cとが互いの対向部が平行を維持した状態で、両者間のギャップ長が変化するように作用させる。その結果、偏った荷重成分が出力信号に与える影響を打ち消すことができる。
【0038】
以上のように本実施例によれば、荷重センサ1は、固定側に取り付けられる基部3,及び基部3に対して弾性変形する起歪部4により両端部が支持され、印加される荷重に応じて基部3に対する相対位置が変位する可動部5を有してなる本体2と、VRセンサ部18との組み合わせにより構成した。
具体的には、1次コイル20及び2次コイル21を備えたステータコア19を基部3側、可動コア22を可動部5側にそれぞれ配置し、可動部5に荷重が加わり変位が生じると、ステータコア19側のコイル20及び21と可動コア22との位置関係を変化させて、1次コイル20が発生した磁束に対して作用する磁気抵抗を変化させ、それに応じて2次コイル21より出力される交流信号の変化が、印加された荷重に相当するようにした。
【0039】
すなわち、2次コイル21より出力される交流信号(Va+Vc)から可動部5に印加された荷重の大きさを得ることができるので、従来技術とは異なり、歪みゲージやブリッジ回路を使用することなく荷重を検出できる。したがって、測定環境の温度や、歪みゲージの取り付け位置に応じた補正を行う必要がなく、簡単な構成で高精度の荷重検出を行うことができる。また、歪みゲージを接着によって取り付けるような構成部分がなく、VRセンサ部18は、本体2に対して機械的に圧入結合されるので、信頼性や耐環境性を向上させることができる。更に、起歪部4の微小変位(微小歪み)を検出できるので、使用時の応力を、本体2をなす材料の降伏点に比較して十分低くでき、過荷重に対する余裕も大きくとることができる。
【0040】
そして、取付ベース10を、基部3に対してセンサ平行バネ部9で支持すると共に、可動部5においてカップリング部11により支持するので、可動部5に印加される荷重が偏った場合でも、可動コア22とステータコア19との平行状態を維持させて、荷重の検出精度を更に向上させることができる。また、可動部5の変位量を制限するストッパ40を、起歪部4とセンサ平行バネ部9との間に形成されたストッパ配置部8に配置したので、可動部5に対して想定した以上の過大な荷重が印加された場合に、本体2が不可逆的に変形することを防止し、荷重センサ1の強度を確保して信頼性を向上させることができる。
【0041】
尚、荷重センサ1より出力される信号に基づいて、可動部5の変位量を求めることも可能である。また、VRセンサ部18は、本体2との組み合わせによって荷重センサ1を構成するものに限らず、可動側の変位量を検出する変位量センサとして用いることもできる。その場合には、上記実施例とは逆に、ステータコア19を可動側に取り付け(第2コア)、可動コア22を固定側に取り付けても良く(第1コア)、要は固定側と可動側との相対変位量に応じて、ステータコア19と可動コア22との空隙長を変化させれば良い。
【0042】
(第2実施例)
図6乃至図8は本発明の第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。第2実施例は、VRセンサ部を、変位量センサとして使用する場合の異なる実施形態を示す。図6に示すように、第2実施例のVRセンサ部41は、ステータコア19の突極部19b,19dにもそれぞれ、1次コイル20b及び2次コイル21b,1次コイル20d及び2次コイル21dが巻装されている。そして、これらの1次コイル20b及び20dには、1次コイル20a及び20cと同様に正弦波信号Vrefを与える。
【0043】
そして、検出ギャップδa及びδcが変化する変位方向をX方向,検出ギャップδb及びδdが変化する変位方向をY方向として、第1実施例と同様に可動コア22側が変位するものとすれば、可動コア22のX軸方向変位量,Y軸方向変位量をそれぞれ独立して得ることができる。尚、斯様に構成すると、各軸方向について磁気的なクロスカップリングが発生することで誤差が出るが、その影響は非常に小さく、例えば最大計測レンジの0.2%程度であるから実用上は無視することができる。
【0044】
図7は、第1実施例の図4相当図である。信号入出力回路42は、2軸方向に配置されている2次コイル21a,21c及び21b,21dより、それぞれのセンサ出力(Va+Vc),(Vb+Vd)が与えられ、2次信号入力回路43,同期検波回路44,整流回路45により、それらの信号を2系統で処理する。そして、整流回路45からは、X軸方向変位量に対応する直流信号VOUT_Xと、Y軸方向変位量に対応する直流信号VOUT_Yが出力される。
【0045】
従って、例えば信号VOUT_X,VOUT_Yより可動コア22のX軸方向変位量x1,Y軸方向変位量y1が得られたとすれば、図8に示すように、それらによって可動コア22の2次元的な変位状態を得ることができる。例えば、arctan(y1/x1)より、X軸からの変位角θを得ることも可能である。この場合も上述したように、可動コア(第1コア)22を固定側に取り付け、ステータコア(第2コア)19を可動側に取り付けても良い。
【0046】
以上のように第2実施例によれば、ステータコア19において、可動側が直交する2軸について変位する方向に沿って配置される突極部19a〜19dに、1次コイル20a〜20d及び2次コイル21a〜21dを備えたので、固定側に対して、可動側が2軸方向に変位した量が検出でき、各軸方向に配置されている2次コイル21より出力される交流信号の変化によって、可動側の変位状態を2次元的に得ることができる。
【0047】
(第3実施例)
図9は本発明の第3実施例を示すものであり、第2実施例と異なる部分について説明する。図9は図6相当図であり、第3実施例のVRセンサ部(変位量センサ)51は、第2実施例のVRセンサ部41と同様に、可動側の変位量を2軸方向について検出するもので、ステータコア19’における突極部19a’〜19d’が、可動コア22’と対向する部位の面形状が、第2実施例のように円弧をなす曲面ではなく、平面をなすように形成されている。また、可動コア22’が突極部19a’〜19d’と対向する部分も同様に平面をなすように形成されており、突極部19a’〜19d’と可動コア22とがなす各部の検出ギャップδa〜δdは、何れも平行をなしている。
【0048】
上記のように構成することで、検出ギャップδa〜δdは、ステータコア19’と可動コア22’との対向面が平行を維持した状態で変化するようになり、可動側が変位した場合に、第2実施例で説明したX軸方向,Y軸方向との間における磁気的なクロスカップリングの発生が防止される。したがって、変位量の検出精度をより一層向上させることができる。
【0049】
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
センサ平行バネ部9,カップリング部11やストッパ40は、想定される荷重の大きさや荷重の偏りの有無,可動部5の最大変位量などにより、必要に応じて設ければ良い。
本体2の具体的構成も一例であり、少なくとも基部,起歪部,可動部を備えており、VRセンサ部を取り付け可能に構成されていれば、その他の詳細部分については個別の設計に応じて適宜変更して良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施例であり、(a)は荷重センサの外観平面図,(b)は縦断側面図,(c)は底面図
【図2】(a)は1次コイルに交流信号が通電された場合に発生する磁束がステータコア及び可動コアを通る状態を示す図、(b)はその等価回路図
【図3】荷重センサを実際に使用する場合の形態を例示する図
【図4】信号入出力回路の機能ブロック図
【図5】荷重センサに荷重が印加された場合の各部の信号波形図
【図6】本発明の第2実施例を示す図2(a)相当図
【図7】図4相当図
【図8】可動側の2次元的な変位状態を示す座標図
【図9】本発明の第3実施例を示す図6相当図
【符号の説明】
【0051】
図面中、1は荷重センサ、2は本体(起歪体)、3は基部、4は起歪部、5は可動部、8はストッパ配置部(空間部)、9はセンサ平行バネ部(補助支持部)、10は取付ベース(可動コア取付部)、11はカップリング部(可動側支持部)、18はVRセンサ部(変位量センサ)、19はステータコア(第1コア)、19a〜19d突極部、20は1次コイル、21は2次コイル、22は可動コア(第2コア)、40はストッパ(変位制限部材)、41,51はVRセンサ部(変位量センサ)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側に取り付けられる基部,及びこの基部に対して弾性変形する起歪部により両端部が支持され、印加される荷重に応じて前記基部との相対位置が変位する可動部を有してなる起歪体と、
前記基部に配置され、ヨーク部の内周側に複数の突極部を有するステータコアと、
このステータコアにおいて、前記可動部の変位方向に沿って配置される突極部に巻装され、所定の交流信号が入力される1次コイルと、
この1次コイルと共に前記突極部に巻装される2次コイルと、
前記可動部に固定され、前記1次コイルが発生する磁束が通る磁気回路を前記ステータコアと共に形成し、前記可動部の変位に伴い前記突極部との間の空隙長が変化するように配置される可動コアとを備え、
前記2次コイルより、前記可動部の変位量に応じて変化する交流信号を出力することを特徴とする荷重センサ。
【請求項2】
前記可動部は、前記可動コアが取り付けられる可動コア取付け部と、この可動コア取付け部の両端を、前記起歪部よりも低い剛性で支持する可動側支持部とを有し、
前記基部に対して、前記可動コア取付け部の両端部を、前記起歪部よりも低い剛性で支持する補助支持部を設けたことを特徴とする請求項1記載の荷重センサ。
【請求項3】
前記可動部と前記基部との間に形成されて前記可動部の変位に伴い変形を生じる空間部に、前記可動部の変位量を制限する変位制限部材を配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の荷重センサ。
【請求項4】
ヨーク部の内周側に複数の突極部を有する第1コアと、
前記突極部に巻装され、所定の交流信号が入力される1次コイルと、
この1次コイルと共に前記突極部に巻装される2次コイルと、
前記1次コイルが発生する磁束が通る磁気回路を前記第1コアと共に形成し、可動側と固定側との相対変位に伴い前記突極部との間の空隙長が変化するように配置される第2コアとを備え、
前記2次コイルより、前記相対変位量に応じて変化する交流信号を出力することを特徴とする変位量センサ。
【請求項5】
前記第1コアは、前記可動側が直交する2軸について変位する方向に沿ってそれぞれ配置される突極部,1次コイル及び2次コイルを備えていることを特徴とする請求項4記載の変位量センサ。
【請求項6】
前記第1コアの突極部と、前記第2コアとが対向する部位の形状が、それぞれ平面に形成されていることを特徴とする請求項5記載の変位量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−151771(P2010−151771A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333632(P2008−333632)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000127949)株式会社エスジー (4)
【Fターム(参考)】