説明

荷電粒子線装置、走査電子顕微鏡、および試料検査方法

【課題】数の検査レシピのなかから試料に適した検査レシピを容易且つ迅速に選択できるようにする。
【解決手段】演算装置14は、GUI16に複数の検査レシピを表示する。検査レシピは、試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子カラムを制御するための設定値と、複数の特性値とを含む。複数の検査レシピは、互いにトレードオフの関係にある特性値(帯電ロバスト性、欠陥検出速度、欠陥検出精度等)を持つ複数の軸により特定される座標系上に配置されて表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置および走査電子顕微鏡に関し、特に荷電粒子線装置および走査電子顕微鏡の検査レシピの選択を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、LSI(Large Scale Integration)などの微小構造形成における欠陥検出のために、種々の検査システムが使われている。例えば、光学式の検査システムでは、微小回路の光学像を生成し、その画像を異常検出のために検査する。しかし、光学像では、微小な形状特徴を特定するには解像度が不足しており、このため、回路形成上で有害な欠陥と無害な欠陥との区別が困難である。一方、帯電粒子線を用いた検査システムは、コンタクト孔、ゲート、および配線などの微小な形状特徴と、微小欠陥の形状特徴とを画像化するのに十分な解像度を有する。また、欠陥形状の陰影像コントラストに基づく重度の欠陥の分類検出に利用できる。したがって、荷電粒子線システムは、最小臨界寸法90nm以下で製造した微小回路を検査に用いる場合、光学式の検査システムに比べてはるかに有利である。
【0003】
2次電子の検出方位角、仰角を調整することにより、欠陥の陰影像を強調して効率的に欠陥を検出する荷電粒子線システムがある。しかし、LSI形成過程の塗布・現像後のレジスト膜や、絶縁膜などの検査を行うと、画像形成のための荷電粒子照射により帯電が発生する。この帯電により、2次電子の軌道が変化して、観察像に輝度斑(シェーディング)が発生することがある。欠陥検出感度の向上のために陰影像を強調すると、2次電子の軌道変化の観察像への影響が増大し、シェーディングがさらに発生しやすくなる。したがって、効率的に欠陥を検出するためには、シェーディングがなく且つ検出感度および検出速度が高くなるように、荷電粒子線システムを設定することが重要である。
【0004】
一般に、荷電粒子線システムは、ビーム電流、ランディング電位、ブースティング電位、像倍率、走査パターン、走査速度、および走査回数などの光学条件の設定を調節することにより帯電量を制御することができる。また、プリドーズ、ニュートライザ、UV照射、HOガス、フラットガン、プローブシャントなどの帯電抑制技術もある。荷電粒子線システムにおいて、この光学条件の設定と帯電抑制技術とを組合わせて、帯電を抑制することが従来より行われている。しかし、光学条件の設定と帯電抑制技術との組合わせ内容(検査レシピと呼ぶ)によって、荷電粒子線システムの欠陥検出効率(欠陥検出精度および欠陥検出速度)が大きく変化する。帯電ロバスト性(帯電のしやすさを示す性質、帯電ロバスト性が弱いものほど帯電抑制される)は、試料に依存する。このため、最適な検査レシピが試料毎に異なる。検査レシピは設定項目が多く、このため、検査レシピの作成には、高度な知識が必要である。
【0005】
特許文献1には、検査レシピを試料名、試料構造、あるいは検査レシピ名に対応付けてデータベースに登録しておくことで、試料に最適な検査レシピをデータベースから検索する技術が開示されている。この技術によれば、試料名などから試料に最適な検査レシピを検索できるので、オペレータは検査レシピを作成するための高度な知識を要求されない。
【0006】
また、特許文献2には、試料の観察像から帯電を判定し表示する技術が開示されている。この技術によれば、オペレータは試料の帯電状態を視認することができ、これにより検査レシピが適切か否かを判断できる。
【0007】
【特許文献1】特開2000−314710号公報
【特許文献2】特開2005−191017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、特許文献1に記載の技術によれば、試料名などから試料に最適な検査レシピを検索できるので、オペレータは検査レシピを作成するための高度な知識を要求されない。しかし、データベースに登録されていない試料については、これに適した検査レシピを検索することができない。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術によれば、オペレータは試料の帯電状態を視認することで検査レシピが適切か否かを判断できる。しかし、この技術は帯電を判定する技術であり、試料に最適な検査レシピを選択できるようにするものではない。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、複数の検査レシピのなかから試料に適した検査レシピを容易且つ迅速に選択できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の制御パラメータ(検査レシピ)を表示する。制御パラメータは、試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子カラムを制御するための設定値と、複数の特性値とを含む。複数の制御パラメータは、各々が例えばオペレータより指定され特性値(帯電ロバスト性、欠陥検出速度、欠陥検出精度等)を持つ複数の軸により特定される座標系上に配置されて表示される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の制御パラメータが帯電ロバスト性、欠陥検出速度、欠陥検出精度等の特性値を軸とする座標系上に配置されて表示される。これらの特性値はトレードオフの関係を有しているので、オペレータは、座標系上に配置された複数の制御オペレータの中から試料に適した検査レシピを、容易且つ迅速に選択できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態が適用された荷電粒子線装置の概略図である。
【0015】
図示するように、本実施形態の荷電粒子線装置は、試料4に電子線を照射する電子光学系1と、試料室2と、試料室2に設置されたステージ3と、試料室2のステージ3上に試料4を搬送する搬送機構5と、制御装置6と、を備えている。
【0016】
電子光学系1は、電子ビームを生成する電子銃7と、電子ビームを集束する集束レンズ8と、電子ビームを偏向する偏向レンズ9と、試料4から2次的に放出される電子を検出する検出器11と、を有する。電子銃7および偏向レンズ9がSEMカラムを形成し、集束レンズ8が結像光学系を形成する。
【0017】
制御装置6は、電子ビームを減速してステージ3の試料4に照射するステージ電源10と、検出器11から出力された検出信号をA/D変換するA/D変換器12と、ステージ3の座標制御を行うステージコントローラ13と、演算装置14と、記憶装置15と、GUI(Graphical User Interface)16と、演算装置15から出力された電子光学系1の制御信号をD/A変換するD/A変換器17と、を有する。
【0018】
記憶装置14は、画像記憶部151と、レシピ記憶部152と、マップ記憶部153と、欠陥記憶部154と、検査プログラム155と、を有する。
【0019】
画像記憶部151には、試料4に荷電粒子線を走査することで得られた観察像の画像データが記憶される。レシピ記憶部152には、荷電粒子線装置による観察像の取得条件を定める検査レシピが検査レシピを識別するためのレシピIDに対応付けられて複数記憶されている。検査レシピについては後述する。マップ記憶部153には、検査に用いる複数の試料4各々のウエハマップデータが試料4を識別する試料IDに対応付けられて記憶されている。なお、本実施形態では、試料4に半導体ウエハを用いている。欠陥記憶部154には、検査に用いる複数の試料4各々の欠陥箇所を示す欠陥ファイルデータが試料IDに対応付けられて記憶されている。
【0020】
そして、検査プログラム154は、試料4の検査を行うためのプログラムである。演算装置15は、検査プログラム154に従い、オペレータに、マップ記憶部153および欠陥記憶部15から検査対象の試料4のウエハマップデータおよび欠陥ファイルデータを選択させると共に、レシピ記憶部152から試料4の検査に用いる検査レシピを選択させる。そして、選択したウエハマップデータにより特定される試料4に、検査レシピに示された観察像の取得条件で荷電粒子線を走査するように、D/A変器器17を介して荷電粒子線装置の各部に制御信号を出力する。そして、検出器11の検出信号をA/D変換器12を介して取得し、これに画像解析処理を行って観察像(SEM像)生成し、画像記憶部154に記憶する。また、この観察像にパターンマッチング処理を行って欠陥を検出し、検出した欠陥を、選択した欠陥ファイルデータが示す欠陥箇所と比較することで検査の特性情報を算出し、その結果をGUI16に表示する。
【0021】
図2は検査レシピを模式的に表した図である。図示するように、検査レシピは、プリドーズ設定値51と、観察像取得設定値71と、検査特性値91と、を有する。
【0022】
プリドーズ設定値51は、観察像の取得に先立って試料14を予め帯電させるための荷電粒子線の照射量および照射時間を定めるための設定情報である。プリドーズ設定値51は、例えば、電子銃7およびステージ3の電位を設定するためのランディング電位52と、ビーム電流53と、集束レンズ8を設定するためのスティグマ設定55、レンズ設定56、およびブースティング電位57と、偏向レンズ9を設定するためのビームアライメント58と、ビーム走査方法を設定するための走査領域59、走査パターン60、走査周期61、ビーム滞在時間62、フレーム数63と、検出器11を設定するためのブライトネス64、およびコントラスト65と、を有する。
【0023】
本実施形態では、電子光学系1を用いてプリドーズを実施している。しかし、別の電子光学系を設けてプリドーズしてもよい。また、プリドーズの実施方法に合わせてプリドーズ設定値51の項目を絞り込むことができる。なお、プリドーズが不要な場合、プリドーズ設定値51を別段設けなくてもよい。また、プリドーズ設定値51を、ニュートライザ、UV照射、HOガス、フラットガン、プローブシャント等の帯電を抑制する帯電抑制技術の設定値に置き換えてもよい。
【0024】
観察像取得設定値71は、試料4の観察像を取得するために走査する荷電粒子線の照射量および照射時間を定めるための設定情報である。観察像取得設定値71は、例えば、電子銃7およびステージ3の電位を設定するためのランディング電位72と、ビーム電流73と、集束レンズ8を設定するためのスティグマ設定75、レンズ設定76、およびブースティング電位77と、偏向レンズ9を設定するためのビームアライメント78と、ビーム走査方法を設定するための走査領域79、走査パターン80、走査周期81、ビーム滞在時間82、およびフレーム数83と、検出器11を設定するためのブライトネス84およびコントラスト85と、を有する。
【0025】
検査特性値91は、プリドーズ設定値51および観察像取得設定値71に基づいて取得した観察像に対する検査の特性情報である。検査特性値91は、例えば、観察像に含まれている欠陥の欠陥検出速度92および欠陥検出精度93と、試料4の帯電ロバスト性94と、観察像から検出可能な最小欠陥サイズ95と、を有する。
【0026】
図3は欠陥検出速度92のビーム電流73に対する依存性を模式的に表した図である。荷電粒子線装置で、連続して短時間に試料4の観察像を取得し、観察像から欠陥を抽出する速度が欠陥検出速度92である。図示するように、ビーム電流73のみを変更すると、欠陥検出速度92がビーム電流73とともに増大する。欠陥検出速度92がより大きな値(例えば、2000〜3000個/時間(DPH))となる検査レシピがより効率的な検査レシピといえる。
【0027】
図4は帯電ロバスト性94のビーム電流73に対する依存性を模式的に表した図である。帯電ロバスト性94は、試料の帯電により発生する観察像の劣化の指標である。例えば、帯電ロバスト性94として観察像に発生するシェーディングを用いることができる。シェーディングの発生を抑制することにより、効率的な検査を連続して進めることができる。図示するように、ビーム電流73のみを増大させると、帯電ロバスト性73が低下し、シェーディングが発生しやすくなる。これはビーム電流73の増大により試料4の帯電が増大し、観察像取得の際にシェーディングが発生しやすくなるためである。帯電ロバスト性94がより強い検査レシピがより効率的な検査レシピといえる。なお、帯電ロバスト性94は、観察像に発生する問題に合わせて数値化しておくとよい。例えば、シェーディング発生の抑制の度合いを定量化する。
【0028】
図3および図4から理解されるように、観察像取得設定値71のビーム電流73を増大すると、欠陥検出速度92を速くすることができる一方、帯電ロバスト性94が弱くなりシェーディングが発生しやすくなる。すなわち、欠陥検出速度92と帯電ロバスト性94とは、トレードオフの関係にある。このトレードオフ関係は、プリドーズ設定値51のビーム電流53に対しても同様に成り立つ。このトレードオフ関係のために、検査特性値91の1つの構成要素のみを参照したのでは、最適な検査レシピを選択することができない。検査特性値91の複数の要素を同時に参照することで、最適な検査レシピの選択が可能となる。そこで、本実施形態では、レシピ記憶部152に記憶されている各検査レシピの欠陥検出速度92と帯電ロバスト性93とをオペレータに同時参照させることで、オペレータに適切な検査レシピを選択させるようにしている。
【0029】
図5は本発明の一実施形態が適用された荷電粒子線装置の動作フローを説明するための図である。この動作フローは、演算装置14が検査プログラム153を実行することにより実施される。
【0030】
先ず、演算装置14は、マップ記憶部154および欠陥記憶部155のそれぞれにデータが記憶されている試料4各々の試料IDをGUI16に表示して、オペレータに検査対象の試料IDを選択させる。そして、選択された試料IDに対応付けられてマップ記憶部154、欠陥記憶部155に記憶されているウエハマップ、欠陥ファイルを検査対象のウエハマップ、欠陥ファイルに設定する(S101)。
【0031】
次に、演算装置14は、オペレータが搬送機構5を操作して検査対象を試料室2に搬入して、試料室2内に設置されたステージ3上に載置し、それから、位置合わせの指示をGUI16に入力するのを待つ(S102)。
【0032】
次に、演算装置14は、GUI16を介してオペレータより受け付けた操作内容に従い、ステージコントローラ13を介してステージ3の位置を調節する。これにより、ステージ3に載置された検査対象と電子光学系1との位置合わせを行う(S103)。
【0033】
次に、演算装置14は、検査対象の欠陥ファイルによって特定される検査対象の複数の欠陥箇所をGUI16に表示し、オペレータに検査対象の欠陥箇所を少なくとも一つ選択させる(S104)。それから、演算装置14は、後述する検査レシピの選択処理を行って、オペレータに検査対象の検査に用いる検査レシピを選択させる(S105)。
【0034】
さて、演算装置14は、以上のようにして、検査対象のウエハマップ、欠陥ファイルの選択処理、位置合わせ処理、欠陥箇所の選択処理、および検査レシピの選択処理が終了し、GUI16を介してオペレータより検査開始の指示が入力されたならば、検査対象の検査を開始する(S108)。
【0035】
先ず、演算装置4は、D/A変換器17を介して電子光学系1の各部に制御信号を出力することで、電子光学系1に、ステージ3上に載置された検査対象に検査レシピのプリドーズ設定値51に従った荷電粒子線を照射させると共に(S110)、ウエハマップおよび欠陥ファイルに従ってステージコントローラ13にステージ3を移動させる(S109)。これにより、検査対象の試料4の欠陥箇所を含むエリアに荷電粒子線を走査して試料4を帯電させる。
【0036】
次に、演算装置4は、D/A変換器17を介して電子光学系1の各部に制御信号を出力することで、電子光学系1に、ステージ3上に載置された検査対象に、検査レシピの観察像取得設定値71に従った荷電粒子線を照射させると共に、ウエハマップおよび欠陥ファイルに従ってステージコントローラ13にステージ3を移動させる。これにより、検査対象の欠陥箇所を含むエリアに荷電粒子線を走査する。そして、検出器11が検査対象の2次電子を検出する。演算装置4は、この検出信号をA/D変換器12を介して取得し、これに画像解析処理を施して観察像(SEM像)データを生成して画像記憶部151に記憶する(S111)。
【0037】
次に、演算装置4は、GUI16を介してオペレータより検査を続行するか否かの指示を受け付ける。この指示が検査続行ならばS108に戻って検査を再度行う。一方、検査終了ならば、後述する検査特性値の算出・表示(S114)が終了した後、オペレータからの更なる指示待ち状態となる。
【0038】
検査対象の試料4の検査終了後、オペレータは、搬送機構5を操作して検査対象の試料4を試料室2から搬出する(S115)。
【0039】
また、演算装置4は、観察像が画像記憶部151に記憶されると、例えば記憶装置15に予め登録されている検査対象パターンを用いて、この観察像に対してパターンマッチング処理を行い、観察像から欠陥を検出する(S113)。次に、この欠陥の検出結果を用いて検査特性値を算出し、GUI16に表示する(S114)。本実施形態では、検査特性値として、欠陥検出速度および欠陥検出精度を算出している。ここで、欠陥検出速度は検査での単位時間当たりの欠陥検出個数であり、S113で検出した欠陥の個数を、検査開始(S108)から検査終了(S112)までの時間で割り算することで算出される。また、欠陥検出精度は、S104で選択された検査対象の欠陥のうちのS113で実際に検出できた欠陥の割合(確率)を示す値である。
【0040】
なお、上記のフローにおいて、ウエハマップおよび欠陥ファイルの選択処理(S101)と、試料4の搬入処理(S102)はその順番を入れ替えてもよい。また、試料4の位置合わせ処理(S103)、検査欠陥の選択処理(S104)、および検査レシピの選択処理(S107)も同様に順番を入れ替えることができる。
【0041】
また、プリドーズが不要な場合は、ステージ移動(S109)およびプリドーズ処理(S110)を省略してもよい。また、ステージ移動(S109)およびプリドーズ処理(S110)の代わりに、ニュートライザ、UV照射、HOガス、フラットガン、プローブシャント等の帯電を抑制する帯電抑制技術を用いてもよい。
【0042】
図6は図5に示す検査レシピの選択処理(S107)を説明するための図である。
【0043】
先ず、演算装置14は、横軸に帯電ロバスト性とし、縦軸を欠陥検出速度とする2次元座標系を生成し、これをGUI16に表示する(S1701)。次に、演算装置14は、レシピ記憶部152から検査レシピを1つ読み出し、この検査レシピのレシピIDを、GUI16に表示されている2次元座標系上の、この検査レシピの帯電ロバスト性94および欠陥検出速度92により定まる座標位置にプロットする(S1702)。
【0044】
次に、演算装置14は、レシピ記憶部152に記憶されている全ての検査レシピのレシピIDがGUI16に表示されている2次元座標系上にプロットされているか否かを判断する(S1703)。プロットされていない検査レシピがあるならば(S1703でNO)、S1702に戻ってこの検査レシピをプロットする。一方、全ての検査レシピをプロットした場合(S1703でYES)、演算装置14は、GUI16を介してオペレータより2次元座標上の座標位置が選択されるのを待つ(S1704)。
【0045】
さて、演算装置14は、GUI16を介してオペレータより2次元座標上の座標位置が選択されたならば(S1704でYES)、選択された座標位置上に表示されているレシピIDを特定する(S1705)。そして、特定したレシピIDを持つ検査レシピの詳細(プリドーズ設定値51、観察像取得設定値71、および検査特性値91の詳細)をGUI16に別ウインドウ等で表示する(S1706)。
【0046】
次に、演算装置14は、GUI16を介してオペレータより、GUI16に詳細を表示中の検査レシピを検査対象に用いる検査レシピに決定するか、それとも、別の検査レシピを再選択するかの指示を受け付ける(S1707)。別の検査レシピを再選択する旨の指示を受け付けた場合はS1704に戻る。一方、検査対象に用いる検査レシピに決定する旨の指示を受け付けた場合は、この検査レシピを検査対象に用いる検査レシピに決定する(S1708)。
【0047】
なお、S1071において、横軸を欠陥検出速度とし、縦軸を帯電ロバスト性とする2次元座標系を生成してGUI16に表示してもよい。
【0048】
図7は図6に示すフローにより作成される検査レシピの選択画面の一例を示す図である。この例では、横軸を帯電ロバスト性とし、縦軸を欠陥検出速度としている。図示するように、各検査レシピのレシピID1601が、このレシピIDを持つ検査レシピの帯電ロバスト性94および欠陥検査速度92により特定される座標位置にプロットされている。オペレータは、図示していないカーソルを操作するなどして所望のレシピID1601を選択すると、選択されたレシピID1601を持つ検査レシピの詳細が別ウインドウ等で表示される。オペレータは、この帯電ロバスト性-欠陥検出速度座標系に表示されている各レシピID1601から、検査ニーズに対応した欠陥検査速度および帯電ロバスト性に近い検査レシピを容易に把握することが可能となる。
【0049】
図8は図6のS1076で表示される検査レシピの詳細の一例を示す図である。図示するように、検査レシピに含まれているプリドーズ設定値51、観察像取得設定値71、検査特性値91が表示される。オペレータは、検査レシピの選択に際して検査レシピの詳細情報を参照することができるので、より効率的に検査レシピの選択を行うことができる。なお、検査レシピを構成する各項目の値(設定値、特性値)は、数値の範囲で示すようにしてもよい。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明した。
【0051】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0052】
例えば、本実施形態において、検査レシピの選択処理(図5のS107)の際に、観察像の像質を判断できるようにしてもよい。例えば検査レシピのそれぞれについて、検査レシピを用いて所定の試料4に荷電粒子線を走査することで取得した観察像データを、この検査レシピのレシピIDに対応付けてレシピ記憶部152に予め記憶しておく。そして、図6のS1076において、検査レシピの詳細に代えて、もしくは検査レシピの詳細と共に、この検査レシピの観察像をGUI16に表示する。
【0053】
図9は図6に示すフローにおいて検査レシピの選択画面と共に表示される観察像の一例を示す図である。この例では、図7に示す検査レシピの選択画面において、オペレータが選択した検索レシピのレシピIDが強調表示されると共に、この検索レシピによる観察像データ1602が別ウインドウで表示されている。オペレータは、検索した検査レシピによる観察像の像質を判断するこにより、検査ニーズから極端に離れた検査レシピを選択してしまう可能性をさらに低減できる。なお、図6のS1077において、上述の特許文献2に記載の技術を用いて像質の判断を自動化し、オペレータより受け付けた要求値を満たす像質でない場合はS1074に戻り、要求値を満たす像質である場合にS1078へ進むようにすることで、検査レシピの選択処理をオペレータの選択操作を介在させることなしで実行することが可能となる。
【0054】
また、上記の実施形態では、図6のS1071において、演算装置14が、横軸に帯電ロバスト性とし、縦軸を欠陥検出速度とする2次元座標系を生成し、これをGUI16に表示している。そして、図6のS1072において、この帯電ロバスト性-欠陥検出速度座標系上に検査レシピのレシピIDをプロットしている。しかし、本発明はこれに限定されない。互いのトレードオフの関係にある検査特性値を縦横の軸にして座標系を生成し、この座標系上に検査レシピのレシピIDをプロットするものであればよい。ここで、例えば図6のS1071において、互いにトレードオフの関係にある検査特性値91の組合わせのリストを予め記憶装置15に記憶しておき、これをGUI16に表示してオペレータに選択させるようにしてもよい。そして、選択された検査特性値91の組合わせを用いて座標系を生成するようにしてもかまわない。
【0055】
図10は図6に示すフローにより作成される検査レシピの選択画面の変形例を示す図である。この例では、横軸を欠陥検出精度とし、縦軸を欠陥検出速度としている。図示するように、各検査レシピのレシピID1601が、このレシピIDを持つ検査レシピの欠陥検出精度93および欠陥検査速度92により特定される座標位置にプロットされている。オペレータは、この欠陥検出精度-欠陥検出速度座標系に表示されている各レシピID1601から、検査ニーズに対応した欠陥検査速度および欠陥検出精度に近い検査レシピを容易に把握することが可能となる。
【0056】
図11は図6に示すフローにより作成される検査レシピの選択画面の他の変形例を示す図である。この例では、横軸を検出可能な最小欠陥サイズとし、縦軸を欠陥検出速度としている。図示するように、各検査レシピのレシピID1601が、このレシピIDを持つ検査レシピの検出可能な最小欠陥サイズ95および欠陥検査速度92により特定される座標位置にプロットされている。オペレータは、この検出可能な最小欠陥サイズ-欠陥検出速度座標系に表示されている各レシピID1601から、検査ニーズに対応した検出可能な最小欠陥サイズおよび欠陥検出精度に近い検査レシピを容易に把握することが可能となる。
【0057】
また、検査レシピに含まれる設定値および特性値は、図2に示すものに限定されない。図12は検査レシピの変形例を示す図である。この図に示す検査レシピでは、図2に示す検査レシピにおいて、検査特性値91に、検査レシピの実用性に関する抽出条件(欠陥検出速度25、欠陥検出精度93、帯電ロバスト性94、および検出可能な最小欠陥サイズ95)に加えて、試料に関する抽出条件(試料名96、工程名97、化学式98、誘電率99、膜厚100、および帯電傾向101)を含めている。図8に示す検査レシピの詳細には、この試料に関する抽出条件も含めて表示する。オペレータは、検査レシピの選択に際して試料に関する抽出条件も参照することができるので、さらにより効率的に検査レシピの選択を行うことができる。
【0058】
また、上記の実施形態において、図6のS1062で座標系上にプロットするレシピID1601の大きさを、例えば図13に示すように、検査レシピの採用回数の多いものものほど大きくするようにしてもよい。また、レシピID1601アイコン内に検査特性値91を表示するようにしてもよい。具体的には、レシピ記憶部152に記憶されている各検査レシピに採用回数を含める。そして、図6のS1072において、レシピID1601のアイコンの大きさを、このレシピID1601を持つ検査レシピの採用回数に比例した大きさとし、このアイコン内に検査レシピの検査特性値91を記載し座標系上にプロットする。また、図6のS1078において、演算装置14は、検査レシピが選択されると、レシピ記憶部152に記憶されているこの検査レシピの採用回数を1つインクリメントする。このようにするこで、採用回数の多い検査レシピに、オペレータの注意が向くように検査レシピを表示することができる。
【0059】
また、上記の実施形態において、試料4の検査結果を検査レシピに反映させるようにしてもよい。図14は図5に示す荷電粒子線装置の動作フローの変形例を説明するための図である。この図の動作フローは、図5に示す動作フローにS116が追加されたものである。S116において、演算装置14は、レシピ記憶部152に記憶されている、S107で選択された検査レシピの検査特性値91を、S114で計算した検査特性値91に更新する。このようにするこで、検査レシピの検査特性値91が検査毎に更新され、より正確な検査レシピをレシピ記憶部152に記憶することができる。また、S107で選択された検査レシピの検査特性値91の更新を基に、学習機能により他の検査レシピの検査特性値91を自動更新することも可能である。
【0060】
本発明は、複数の設定パラメータを持つ装置において、前もって設定パラメータの効果を正確に予想できない場合に、既知の効果の情報より設定パラメータを抽出し、効果的に選択する技術に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は本発明の一実施形態が適用された荷電粒子線装置の概略図である。
【図2】図2は検査レシピを模式的に表した図である。
【図3】図3は欠陥検出速度92のビーム電流73に対する依存性を模式的に表した図である。
【図4】図4は帯電ロバスト性94のビーム電流73に対する依存性を模式的に表した図である。
【図5】図5は本発明の一実施形態が適用された荷電粒子線装置の動作フローを説明するための図である。
【図6】図6は図5に示す検査レシピの選択処理(S107)を説明するための図である。
【図7】図7は図6に示すフローにより作成される検査レシピの選択画面の一例を示す図である。
【図8】図8は図6のS1076で表示される検査レシピの詳細の一例を示す図である。
【図9】図9は図6に示すフローにおいて検査レシピの選択画面と共に表示される観察像の一例を示す図である。
【図10】図10は図6に示すフローにより作成される検査レシピの選択画面の変形例を示す図である。
【図11】図11は図6に示すフローにより作成される検査レシピの選択画面の変形例を示す図である。
【図12】図12は検査レシピの変形例を示す図である。
【図13】図13は図6に示すフローにより作成される検査レシピの選択画面の変形例を示す図である。
【図14】図14は図5に示す荷電粒子線装置の動作フローの変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0062】
1…電子光学系、2…試料室2、3…ステージ、4…試料、5…搬送機構、6…制御装置、7…電子銃、8…集束レンズ、9…偏向レンズ、10…ステージ電源、11…検出器、12…A/D変換器、13…ステージコントローラ、14…演算装置、15…記憶装置、16…GUI、17…D/A変換器、151…画像記憶部、152…レシピ記憶部、153…検査プログラム、154…マップ記憶部、155…欠陥記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子カラムと、
前記試料を載置するステージと、
前記荷電粒子線を前記試料に照射することにより前記試料から発生する粒子を検出する検出器と、
前記荷電粒子カラムを制御する荷電粒子制御手段と、
複数の特性値を持つ前記荷電粒子制御手段の制御パラメータをモニタに表示する表示制御手段と、
複数の軸の各々が採る特性値を指定する入力手段と、を備え、
前記表示制御手段は、
各々が前記入力手段により指定された特性値を持つ複数の軸により特定される座標系上に、複数の前記制御パラメータを配置して前記モニタに表示すること
を特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置であって、
前記複数の軸は、縦軸と横軸であり、
前記座標系は、前記縦軸および横軸より特定される2次元座標系であること
を特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2に記載の荷電粒子線装置であって、
前記縦軸を採る特性値および前記横軸を採る特性値は、前記制御パラメータの特性値として互いにトレードオフの関係にあること
を特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の荷電粒子線装置であって、
前記検出器の検出信号に画像解析処理を行って画像データを生成する画像解析手段と、
前記画像解析手段により生成された画像データにパターンマッチング処理を行って欠陥を検出する検査手段と、をさらに有すること
を特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項4に記載の荷電粒子線装置であって、
制御パラメータは、前記荷電粒子制御手段の設定値、前記画像解析手段の設定値、および、前記複数の特性値として前記検査手段の検査特性値を含むこと
を特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項5に記載の荷電粒子線装置であって、
前記荷電粒子制御手段の設定値とは、プリドーズ設定値であり、
前記画像解析手段の設定値とは、SEM(scanning electron microscope)像取得設定値であること
を特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の荷電粒子線装置であって、
前記制御パラメータは、前記検査特性値として、欠陥検出速度、欠陥検出精度、および帯電ロバスト性のうちの少なくとも2つを含むこと
を特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の荷電粒子線装置であって、
前記入力手段は、
複数の軸の各々が採る特性値を選択させるための選択画面を前記モニタに表示すること
を特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の荷電粒子線装置であって、
複数の前記制御パラメータが記憶された記憶手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、
前記記憶手段に記憶されている複数の前記制御パラメータを前記座標系上に配置して前記モニタに表示すること
を特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
試料を載置するステージと、
前記ステージに載置された試料に一次電子線を走査するSEM(scanning electron microscope)カラムと、
前記走査により試料から発生する電子を結像して検出する結像光学系と、
前記結像光学系により検出される信号を画像化して表示する画像表示システムと、
前記SEMカラムを制御するSEMカラム制御装置と、
複数の特性値を持つ前記SEMカラム制御装置の制御情報を複数記憶する記憶手段と、
複数の軸の各々が採る特性値を指定する入力手段と、を備え、
前記画像表示システムは、
各々が前記入力手段により指定された特性値を持つ複数の軸により特定される座標系上に、前記記憶手段に記憶されている複数の制御情報を配置して表示すること
を特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項11】
請求項10に記載の走査電子顕微鏡であって、
前記複数の軸は、縦軸と横軸であり、
前記座標系は、前記縦軸および横軸より特定される2次元座標系であること
を特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項12】
請求項11に記載の走査電子顕微鏡であって、
前記縦軸を採る特性値および前記横軸を採る特性値は、前記制御パラメータの特性値として互いにトレードオフの関係にあること
を特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項13】
試料に荷電粒子線を走査することで得られる2次電子信号を用いた試料検査方法であって、
それぞれ複数の特性値を持つ複数の検査レシピを表示するための座標系を構成する複数の軸の各々が採る特性値の指定を要求する情報を表示し、
前記要求に応答して指定された特性値を持つ複数の軸により特定される座標系上に、前記複数の検査レシピを配置して表示して、検査レシピの選択を受付け、
前記選択された検査レシピに従い前記荷電粒子線の走査条件を調整し、
前記試料に前記調整された荷電粒子線を走査して前記2次電子信号を検出し、
前記検出した信号を処理することにより、前記試料の検査を行うこと
を特徴とする試料検査方法。
【請求項14】
請求項13に記載の試料検査方法であって、
前記複数の軸は、縦軸と横軸であり、
前記座標系は、前記縦軸および横軸より特定される2次元座標系であること
を特徴とする試料検査方法。
【請求項15】
請求項14に記載の試料検査方法であって、
前記縦軸を採る特性値および前記横軸を採る特性値は、前記制御パラメータの特性値として互いにトレードオフの関係にあること
を特徴とする試料検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−208202(P2007−208202A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28720(P2006−28720)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】