説明

菅状体のための音響変換器

【課題】菅状体上で使用するための改良型音響変換器を提供する。
【解決手段】菅状体の回りに並置して適合するようになった弓形又は弓状部材上に配置された変換器素子で構成された音響変換器。弓形部材は、導体によって電圧を変換器素子に供給するようになっている。一実施形態は、金属弓形部材を使用する。音響源として実施される実施形態を使用して、ボアホール音響モードが励起される。いくつかの実施形態は、フェーズドアレイ音響エネルギ励起/信号受信をもたらす。変換器は、液体のない構成で密封材によって覆われ、変換器を保護するためにシールドを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2004年1月8日出願の米国特許仮出願出願番号第60/535,062号及び2004年1月8日出願の米国特許仮出願出願番号第60/534,900号の合衆国法典35セクション119に従った優先権を請求するものである。
本発明は、一般的に音響変換器に関する。より具体的には、本発明は、菅状体上で使用するための改良型音響変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
石油及びガス業界では、地表下の累層の探査は、一般的に、累層特性を判断するためにボーリング検層機器によって行われる。これらの機器のうち、音波ツールは、累層に関する画像の生成又は関連特性の導出に使用することができる地表下音響特性に関する貴重な情報が得られることが分かっている。
音波は、地表下累層のような媒体の中を伝播する音響エネルギから生じる周期的な振動外乱である。音波は、一般的に、その周波数、振幅、伝播速度に関して特徴付けられる。累層に関連する音響特性は、圧縮波速度、剪断波速度、ボアホールモード、及び累層緩慢を含むことができる。更に、ボアホール壁の状態及びボアホールから離れた場所での他の地学的特徴を示すのに音響画像を使用することができる。これらの音響測定は、地震相関、油層岩石物理学、岩石力学、及び他の分野において用途がある。
【0003】
深度の関数としての音響特性の記録は、音波検層として公知である。音波検層から得られる情報は、井戸間の相関関係、間隙率の判断、岩質を示すための機械的又は弾性岩石パラメータの判断、過圧累層帯の検出、累層内の測定音速に基づく地震時間トレースの深度トレースへの変換を含む様々な用途で有用であろう。
地球の累層の音波検層は、音波検層機器又はツールを累層を横断するボアホール内に降ろすことを伴う。この機器は、一般的に、音響エネルギを地表下累層に発するための1つ又はそれ以上の音波源(すなわち、送信器)、及び音響エネルギを受け取るための1つ又はそれ以上の音響センサ又は受信器を含む。送信器は、音響エネルギのパルスをボアホール内に発するために周期的に作動され、パルスは、ボアホール内を進行して累層に入る。ボアホール及び累層内を伝播した後、音響エネルギの一部は受信器に伝わり、そこで検出される。検出された音響エネルギの様々な属性は、その後、関連の地表下又はツール特性と関連付けられる。
【0004】
図1は、従来のダウンホール音波ツールを示す。ツール10は、地球累層20を横断するボアホール12に配置された状態で示されている。ボアホール12は、一般的に、ボアホール掘削中に使用される掘削流体(掘穿泥水)が充填されている。ツール10は、通常、菅状支持体13で実施され、これは、ドリルカラーの場合は、掘削流体14が当業技術で公知のように掘削ストリング(図示せず)の底部の泥水モータ及び/又はドリルビットに到達するための内部通路13Aを含む。検層ツール10は、菅状体13上に配置された1つ又はそれ以上の音響源16及び複数の音響受信器18を含む。受信器18は、ツール10の縦軸線に沿って選択された距離hで互いに間隔の空いた状態で示されている。音響源16に最も近い受信器18の1つは、選択された距離aだけ音響源から軸線方向に間隔が空いている。また、ツール10は、当業技術で公知のような波形信号データを処理するためのマイクロプロセッサ、メモリ、及びソフトウエアを含む1つ又はそれ以上の従来のコンピュータモジュール21を収納する。同じく当業技術で公知のように、コンピュータモジュール21は、機器内か又は地表に配置するか、又は図1に示すようにこれら2つの間で組み合わせることができる。音響エネルギ波22は、ボアホールを伝播している状態で示されている。従来の音波ダウンホールツールは、米国特許第5,852,587号、第4,543,648号、第5,510,582号、第4,594,691号、第5,594,706号、第6,082,484号、第6,631,327号、第6,474,439号、第6,494,288号、第5,796,677号、第5,309,404号、第5,521,882号、第5,753,812号、第RE34,975号、及び第6,466,513号に説明されている。
【0005】
従来の音響ツールは、圧電素子のような音響変換器素子を装備している。一般的に、音響変換器は、エネルギを電気及び音響形態間で変換し、音響源又はセンサとして作用するように適応させることができる。音響変換器は、一般的に、図1に示すような検層器具の菅状体に取り付けられる。ダウンホール菅状体で使用される従来の音響源及びセンサは、米国特許第6,466,513号、第5,852,587号、第5,886,303号、第5,796,677号、第5,469,736号、及び第6,084,826号に説明されている。従来の掘削時検層(LWD)音波ツールは、全方向送信器を有する(すなわち、単極子音響源)(米国特許第5,796,677号、第5,852,262号を参照)。しかし、従来のワイヤライン音波ツールは、独立した音響源を使用してボアホールの音響モードを励起する(例えば、米国特許第5,852,587号、第6,102,152号、及び第6,474,439号を参照)。大きなボアホール及び遅い岩石形成条件においては、剪断波測定は、純粋な単極子音響ツールでは達成しにくい。これらの条件では、同時か又は独立してボアホールの音響モードを励起する音響源を有する異なる種類の検層ツールを使用することが必要である。米国特許第6,614,360号及び第6,084,826号は、音響変換器を装備したダウンホール菅状体を説明している。提案された変換器の欠点は、アセンブリ内でオイル補償を用いることであり、これは、構造を複雑にして信頼性に影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許仮出願出願番号第60/535,062号
【特許文献2】米国特許仮出願出願番号第60/534,900号
【特許文献3】米国特許第5,852,587号
【特許文献4】米国特許第4,543,648号
【特許文献5】米国特許第5,510,582号
【特許文献6】米国特許第4,594,691号
【特許文献7】米国特許第5,594,706号
【特許文献8】米国特許第6,082,484号
【特許文献9】米国特許第6,631,327号
【特許文献10】米国特許第6,474,439号
【特許文献11】米国特許第6,494,288号
【特許文献12】米国特許第5,796,677号
【特許文献13】米国特許第5,309,404号
【特許文献14】米国特許第5,521,882号
【特許文献15】米国特許第5,753,812号
【特許文献16】米国特許第RE34,975号
【特許文献17】米国特許第6,466,513号
【特許文献18】米国特許第5,886,303号
【特許文献19】米国特許第5,469,736号
【特許文献20】米国特許第6,084,826号
【特許文献21】米国特許第5,852,262号
【特許文献22】米国特許第6,102,152号
【特許文献23】米国特許第6,614,360号
【特許文献24】米国特許第6,351,127号
【特許文献25】米国特許第6,690,170号
【特許文献26】米国特許第6,667,620号
【特許文献27】米国特許第6,380,744号
【特許文献28】米国特許第6,208,031号
【特許文献29】米国特許第6,788,065号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に地表下累層に配置するようになっている菅状体を伴う用途に対する改良型音響変換器の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、菅状体上で使用するための音響変換器を提供する。変換器は、導体によって変換器素子に電圧を供給するようになった弓形部材と、列を形成して部材上に配置された複数の音響変換器素子とを含み、弓形部材及び変換器素子は、密封材料で覆われ、覆われた弓形部材は、液体を含まない。
本発明の態様は、菅状体上で使用するための音響変換器を提供する。変換器は、弓形金属部材と金属部材上に配置された複数の音響変換器素子とを含み、金属弓形部材は、そこに配置された変換器素子に電圧を供給するようになっており、変換器素子は、外部流体から保護するために覆われている。
【0009】
本発明の態様は、音響変換器を菅状体上に配備する方法を提供する。本方法は、弓形部材を菅状体の外面上に配置する段階を含み、弓形部材は、菅状体に対して独立に形成され、列を形成してそこに配置された複数の音響変換器素子を有し、弓形部材は、導体によって電圧を変換器素子に供給するようになっており、密封材料で覆われて液体を含まない。
本発明の態様は、音響変換器を菅状体上に配備する方法を提供する。本方法は、金属弓形部材を菅状体の外面上に配置する段階を含み、この弓形部材は、菅状体に対して独立に形成され、そこに配置された少なくとも1つの音響変換器素子を有し、この部材は、密封材料で覆われて液体を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来のダウンホール音響ツールの概略図である。
【図2A】一般的な変換器素子の概略図である。
【図2B】典型的な1−3圧電複合型変換器素子の概略図である。
【図3A】本発明による重質量材料を充填した変換器素子の概略図である。
【図3B】本発明による重質量材料を充填した1−3圧電複合型変換器素子の概略図である。
【図4】本発明による変換器素子を装備した弓形部材の二次元投影図である。
【図5】本発明による弓形音響変換器の断面図である。
【図6】本発明による2つの個々の弓形音響変換器の概略図である。
【図7】本発明により菅状体上に取り付けられた2つの個々の弓形音響変換器の概略図である。
【図8】図7で菅状体上に配置された弓形変換器の断面図である。
【図9】本発明により菅状体上に配置された円筒回転面の四分円を形成する4つの個々の弓形部材の上面図である。
【図10】本発明による絶縁変換器素子の組で構成された弓形部材の二次元投影図である。
【図11】図10に示す実施形態と類似の2つの弓形部材の概略図である。
【図12】本発明によるフェーズドアレイ励起/信号受信のために配置された絶縁変換器素子の組で構成された弓形部材の二次元投影図である。
【図13】本発明による金属弓形変換器の上面図である。
【図14】本発明による変換器電子機器モジュール及びマルチプレクサモジュールの概略図である。
【図15】本発明により菅状体上に取り付けられたシールド弓形変換器の概略図である。
【図16】本発明により嵌合シールドで菅状体上に配置されたマルチ部材弓形変換器の上面図である。
【図17】本発明による弓形変換器及び保護シールド実施形態を装備した菅状体の概略図である。
【図18】本発明による弓形変換器を含む掘削装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、任意の菅状体に適合するように複数の構成及び異なる直径で実施することができる音響変換器を開示する。本発明の実施形態は、単一変換器ユニットを使用して改良型モード純粋励起を用い、広い周波数範囲に亘って掘削孔の音響モードを励起することを可能にするものである。この変換器設計は、半円筒形又は弓形構成で実施される変換器素子に基づいている。
図2Aは、本発明で実施される一般的な変換器素子30を示す。変換器素子30は、音波放射及び出力音圧レベルを向上させるために単一素子又は多層(スタック)素子とすることができる。使用可能な素子30としては、圧電素子、チタン酸鉛(PT)素子、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)素子、1−3圧電複合型素子、又は当業技術で公知の任意の他の適切な材料が含まれる。素子30は、厚みモードにおいて分極化されることが好ましい。正電圧が素子30の平面に印加され、負電圧が対向する平面に印加された時、素子が膨張及び収縮することにより、音響エネルギが放射される。図2Bは、本発明で実施される一般的な1−3圧電複合型変換器素子30を示す。
【0012】
図3Aは、片側に重質量材料32を負荷した単一の矩形圧電素子30を示す。重質量材料32を配置して変換器素子30に裏打ちすることにより、質量負荷素子は、音響源として実施された時に望ましい向きで音の方向性を改善し、音波放射を改善する。図3Bは、片側に重質量材料32を負荷した単一矩形1−3圧電複合型素子30の実施形態を示す。
図4は、本発明の弓形又は弓状部材35の実施形態上に配置された複数の個々の変換器素子30を示す。弓形部材35は、分かりやすいように二次元つまり平面として投影された状態で示されているが、部材は、部際は断面形状が湾曲しているということから「弓形」である。また、弓形部材という用語は、例えば、扇形、四分円、又は回転半柱面、半円筒、又は湾曲四部分を含むことができる。実際に、「弓形部材」という用語は、互いに並列である時に半円筒を含むか又は構成するような任意の数の「湾曲形」部分を含むことができる。弓形部材35は、非導電材料で形成される。使用可能な材料としては、ファイバグラス、ゴム化合物、合成樹脂、「PEEK(登録商標)」、又は当業技術で公知の他の任意の適切な非導電材料が含まれる。
【0013】
図5は、本発明の音響変換器の側端から見た断面図を示す。変換器素子30は、弓形部材35を形成する非導電材料内に入れられるか又は成形される。弓形部材35は、当業技術で公知の様々な製造技術を用いて形成することができる。例えば、1つの技術では、変換器素子30を収納するために弓形部材35内に空隙又は開口部を形成し、付加的な材料を用いて収納された素子を入れ込み、アセンブリを完成する。別の技術では、弓形部材35を変換器素子30及び導体37回りに成形する。尚、本明細書に示す実施形態は、分かりやすいように一般的に実際の尺度又は正確な寸法で示されていない。例えば、弓形部材35を形成する材料の壁は、任意の望ましい厚さで形成してもよいが、音響エネルギの伝播を改善するためにはより薄い壁が一般的に好ましい。
【0014】
電気導体37は、以下で更に説明するように、素子へ及び素子から電圧/信号をルーティングするために変換器素子30の表面と接触するように弓形部材35内に配置される。導体37は、弓形部材35の両端から延び、露出したリード線39で終端する。当業技術で公知の方法で任意の適切な導体を使用することができる。いくつかの実施形態は、変換器素子30を覆うように配置された「メッシュ」層を形成する一連のフィラメント導体を含む導電材料を使用する導体37で構成することができる。メッシュ型の導体37を実施するために使用することができる層又はフィルムを形成するように構成された導電材料は、市販されている(例えば、インターネット上のhttp://www.marianinc.comで入手可能な「MARIAN(登録商標)」製品を参照)。いくつかの実施形態は、化学蒸着技術、マスキング技術、又は他の公知の積層処理(図示せず)によって形成された導体37で実施することができる。本発明の更に他の実施形態は、フレックス回路と呼ばれるストリップを使用して形成された導体で実施することができる(米国特許第6,351,127号、第6,690,170号、第6,667,620号、及び第6,380,744号に説明されている)。フレックス回路型の実施形態は、導電性材料又は物質が含浸した適切な材料(例えば、ポリイミドフィルム、誘電フィルム基板、ポリエステルフィルム)で形成することができる。可撓性フィルムを形成するためのストリップを製造する技術は、米国特許第6,208,031号に説明されている。
【0015】
地表下用途に対して設計された本発明の弓形変換器の実施形態は、掘削環境に存在する厳しい状況に耐えることができるべきである。弓形部材35は、収納された変換器素子30と共に、保護及び音透過性バリアを形成する密封材料40でアセンブリをオーバーモールドするか又は覆うことによって保護することができる。使用可能な密封材料としては、ゴム化合物又は任意の他の適切な樹脂又は複合材料が含まれる。また、弓形部材35は、個々の変換器素子30を完全に入れ込むように形成することができる。間隙又は間隔を素子30との間に残す他の実施形態では、素子間の空間を埋めるように適切な非導電材料42(例えば、ゴム)を加えることができる。
【0016】
図6は、本発明の2つの個々の音響変換器の実施形態を示す。2つの弓形部材35は、部材上の変換器素子30の配置を示すために側面が断面図の状態で示されている。これらの音響源の実施形態は、重質量を負荷した変換器素子30を用いて実施される。図2に示すように、無負荷つまり単純な変換器素子で他の実施形態を実施することもできる。分かりやすいように、図6の変換器の実施形態は、2つの変換器素子30が各弓形部材35内に配置された状態で示されている。任意数の行又は列を必要に応じて形成するように任意数の変換器素子が弓形部材に配置された状態で他の実施形態を実施することもできる(図4を参照)。
【0017】
図6に示す変換器は、重質量材料32の部分が弓形部材35の凹状側面に向いて部材内に入るように変換器素子30の近くに配置された状態で実施される。各部材35は、防水ユニットを形成するように密封材料40で完全に覆われる。変換器素子30は、素子の表面と接触するように弓形部材35内に配置された導体37によって並列に電気的に接続され、端部リード線39のみがむき出し状態になる。負荷のある変換器素子30で実施された時、導体37が負荷変換器30の外面に沿って配置される場合、導電性の重質量材料32(例えば、タングステン)が使用される。導体が変換器素子と重質量材料の間に配置された状態で他の実施形態を実施することもできる(図示せず)。
【0018】
図7は、本発明の変換器の実施形態を示す。本発明の2つの独立した弓形部材35は、菅状体13の外周部回りに形成された窪み内に配置されている。米国特許第6,788,065号では、本発明の実施形態を実施するのに使用することができる窪み及びシールド構成で構成された様々な菅状体が説明されている。部材35の各々は、菅状体13を取り囲む回転柱面の半分を形成する。部材35からの導体リード線は、分かりやすいように図示されていない。部材35からのリード電線(図6のアイテム39)は、直接又は間接を問わず、無数の従来の手段を通じて電源と結合させることができることを当業者は理解するであろう。この2つの独立した弓形部材35は、従来の単一ユニット音響源を凌ぐ多くの利点を有する。個々の部材35は、組立て、トラブルシューティング、修理、及び変換器装置の交換を容易にする。
【0019】
図8は、図7の菅状体13上に配置された変換器の1つの断面図を示す。密封された弓形部材35は、音響源として作動させた時に広い周波数範囲で音響エネルギを放射するように、無負荷変換器素子30表面が露出した状態で菅状体13の外面と並置して配置される。重質量材料32と高感度変換器素子30との組合せは、菅状体内の振動を少なくするのを助け、音の方向性を改善する。負荷素子30は、一般的に金属である菅状体13の近くに配置されるので、音響エネルギの一部を菅状体表面から離れるように反射し、素子30の外面から放射された音響エネルギと組み合わせることによって音の方向性が向上する。菅状体13の方向への音響エネルギ伝播のこの減衰により、いわゆる「ツールモード」の励起が少なくなる。
【0020】
本発明の変換器の実施形態は、菅状体の回りに配置された複数の弓形部材で実施することができる。図9は、各々が菅状体13回りに配置された回転柱面の四分円を形成する本発明の4つの個々の弓形部材35の上面図を示す。導体及び変換器素子は、分かりやすいように全ての図において図示されていない。
また、本発明の弓形変換器は、任意の1つの弓形部材上の変換器素子のサブセットから別々で時限の励起又は受信を行うように電気的に構成することができる。図10は、側面A上の変換器素子が側面B上の変換器素子と絶縁されるように、付加的な組の導体で内部構成された二次元つまり平面として投影された本発明の弓形部材35を示す。
【0021】
図11は、回転柱面を形成するために互いに並列配置された、図10に示すものと類似の2つの弓形変換器を示す。2つの弓形部材35内の変換器素子サブセットは、ダウンホール菅状体の音響源として実施された時、必要に応じて掘削孔の音響モードを実質的に励起するために、選択されたパターンで別々に励起することができる。図11は、双極子モードによる励起を生成するために、1つの分極化で同時に励起される図の左側つまり「A」側の変換器素子と、反対の分極化で同時に励起される右側つまり「B」側の変換器素子とを示す。代替的に、図9に示す4つの四分円弓形変換器による実施形態を使用して望ましい励起を生成することができる。本発明の弓形変換器は、単極子、双極子、四極子、及びより高い次数のモードの掘削孔音響モードを励起するための音響源として作動させることができることを当業者は認めるであろう。また、検出された音響エネルギに関連する別々の信号を選択されたパターン又はタイミングシーケンスで生成するように弓形変換器を適応させることができることも理解される。
【0022】
図12は、セグメントA、B、C上の変換器素子が互いに絶縁されるように付加的な組の導体で内部構成された本発明の別の弓形部材35を示す。望ましいパターン又はタイミングシーケンスで素子を励起/使用可能にすることにより、音響エネルギ/信号のフェーズドアレイを取得することができる。例えば、図12の変換器の実施形態は、部分Aにおける素子30のサブセットが時間T1に、サブセットBがT2に、サブセットCがT3に励起/使用可能されるように構成することができる。従来の電子機器及びプロセッサ手段を弓形変換器とリンクさせ、当業技術で公知の方法でこれらの機能を達成することができることを当業者は理解するであろう。
【0023】
本発明の他の変換器実施形態を金属弓形部材で実施することができる。図13は、金属弓形部材の上面断面図を示す。部材35は、任意の適切な金属(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼)で形成することができる。部材35自体が電圧を変換器素子30に供給するための導体として使用することができるように、導電金属が好ましい。変換器素子30は、導電性接着剤を使用して金属部材35に貼り付けてもよく、又は、変換器を封入するために使用されるオーバーモールド法40によって所定の位置に単に入れ込むこともできる。素子30は、滑らかな面を有する金属部材35上に、又は金属部材35内に形成された空隙又は窪み(図示せず)内に配置することができる。上述のように素子30を覆って封入するために、任意の適切な非導電材料40を使用することもできる。導電性部材35については、部材と電源を連結するためにリード電線39が使用される。上述のように、導体37は、素子を電気的に並列に接続するために素子30の外面を覆うように配置される。非導電性金属弓形部材で構成された実施形態は、本明細書に説明するように電圧を変換器に供給するための別の導体を使用して実施することができる。金属部材35変換器は、望ましい音響エネルギの減衰をもたらし、負荷素子30を使用しなくても音の方向性を改善する。本発明の金属変換器実施形態は、非金属実施形態について説明したのと同じ方法及び同じ構成で菅状体上に配置することができる。
【0024】
本発明の弓形変換器は、菅状体(図示せず)の縦軸線に沿って特定領域又は千鳥の方位領域を取り囲むために、図7及び図9に示すように菅状体13の全周を取り囲むように配置することができる。配置された変換器の弓形設計は、大径又は小径の菅状体上に配置することを可能にするものである。従来の弓形変換器(例えば、オイル補償を用いるもの)とは異なり、開示する変換器の小型で液体のない構成により、変換器を当業技術で公知の任意の適切な手段を用いて菅状体上に取り付けて保持することができる。例えば、変換器は、それらは密封されて防水であるから、ワイヤライン器具又は磨耗が決定的な要素ではない他の用途で実施された時、菅状体の空洞内に適切な化合物を用いて単に入れ込むことができる。
【0025】
図14は、本発明の弓形変換器35による実施形態と連結させることができる電子機器モジュール100の全体的な概略配置図を示す。モジュール100は、前置増幅器段101、フィルタ段102、アナログ/デジタル変換器(ADC)段103、及び電力増幅器段106を含む。モジュール100は、リード線105を通じた出力のために1つのチャンネルに「n個」の信号を流すようになったn対1マルチプレクサ(MUX)ユニット44に接続された状態で示されている。弓形変換器35に接続されたスイッチ108は、位置1と位置2の間で切り換えを行う。位置1において、変換器素子35は、電力増幅器段106によって起動され、変換器は、音響源として実施される。本発明の変換器には、多相電圧を印加することができる。スイッチ108が位置2の状態で、前置増幅器段101は、受信器を実施するためのモジュール100を通じて処理するために、素子によって検出されたアナログ音響エネルギ信号を受信する。小型パッケージ及び低電力電子機器モジュール100は、電力消費量を最小限に抑え、デジタル信号はアナログ信号に比較するとクリーンなのでノイズ低減を改善する。また、デジタル化された信号データは、必要に応じて、不要なノイズのない付加的な処理を行うために遠距離にルーティングすることもできる。
【0026】
本発明の二重目的変換器35(すなわち、ソース−センサ)は、パルスエコー測定を考慮したものである。当業技術で公知のように、掘削孔壁から反射したパルスエコー信号の双方向移動時間の測定結果は、掘削孔幾何学形状、例えばその半径の判断に使用することができる。電子機器モジュール100を使用して、変換器は、掘削孔内でのパルスエコー測定結果を取得するためにモードの切換えを行うことができる。音響信号測定値データは、当業技術で公知の従来の技術を用いて処理することができる。
【0027】
当業者に公知のように、ダウンホール用途に対して設計された菅状体は、極端な温度及び圧力に加えて、累層切断が装置を損傷する可能性が高い皺のある角々しい掘削環境の影響を受ける。ダウンホール条件は、深くなれば徐々に過酷なものとなり、これは、外部つまり露出した構成要素の劣化を増幅する。更に、疲労荷重(すなわち、LWD作動における菅状体の曲げ及び回転)は、掘削作業において問題になる。図15に戻ると、弓形変換器を覆って保護するために、菅状体13上に1つ又はそれ以上のシールド44を配置することもできる。シールド44は、金属、プラスチック化合物(例えば、「PEEK(登録商標)」)、又は当業技術で公知の任意の適切な材料で形成することができる。シールド44は、ファスナ(例えば、ネジ)又は当業技術で公知の任意の適切な手段を用いて菅状体13上に取り付けることができる。図16は、本発明の弓形部材35を装備した菅状体13を含む掘削装置の上面図を示す。菅状体13はまた、4つの弓形変換器を覆う4つの個々のシールド44A、44B、44C、44Dを装備している。
【0028】
シールド44は、シールドと弓形部材35の間の間隔内における掘削孔流体の通過を可能にするために、空隙又は開口(例えば、穴又は溝穴)から成ることが好ましい。図17は、図16に示すような4つ弓形部材35を取り囲むように菅状体上に配置された独立したシールド44A、44B、44C、44Dを含む本発明の実施形態を示す。説明を目的とした図17に示すように、開口46は、シールド44上の異なる位置に形成することができる。シールド44Aは、上下縁部の近くに形成された2つの開口46で構成される。シールド44Bは、上下縁部に形成された開口46で構成される。シールド44Cは、中心部に形成された開口46で構成される。また、シールド44Dは、側縁部に形成された状半月形開口46で構成される。弓形変換器は、図17では、分かりやすいように図示されていない。
【0029】
弓形変換器を覆うためのワンピースシールドを使用し、及び/又は開口なしのシールドを用いて、代替実施形態を構成することができる(図15を参照)。シールドは、当業技術で公知の任意の適切な手段を用いて菅状体13上に配置することができる。上述のように、本発明の弓形部材との信号/電力接続は、様々な公知の技術を用いて実施することができる。また、当業技術で公知のように、付加的な望ましい構成要素(例えば、電子機器、遠隔測定手段、メモリストレージ、その他)を本発明の実施形態と共に実施することができる。
【0030】
菅状体上に本発明の音響変換器を配置する方法は、弓形部材を菅状体の外面上に配置する段階を伴い、弓形部材は、菅状体に対して独立に形成され、列を形成してそこに配置された複数の音響変換器素子を有する。弓形部材は、導体によって電圧を変換器素子に供給するようになっており、液体のないユニットをもたらすために密封材料で覆われる。
菅状体上に本発明の音響変換器を配置する別の方法は、金属弓形部材を菅状体の外面上に配置する段階を伴い、弓形部材は、菅状体に対して独立に形成され、そこに配置された少なくとも1つの音響変換器素子を有する。金属弓形部材は、液体のないユニットをもたらすために密封材料で覆われる。
【0031】
図18は、本発明の別の実施形態を示す。本発明の弓形変換器は、各累層を貫通する掘削孔12に配置されたダウンホール装置90に取り付けられる。弓形部材35は、菅状体13上の浅い窪みに位置し、シールド44は、本明細書で説明するように変換器の上に取り付けられる。菅状体13はまた、地表下測定のための多軸電磁アンテナと適切な回路を有する電子機器92及び93とを含む。また、当業技術で公知のように、一連の従来の音響センサ94が菅状体13上に取り付けられる。菅状体13は、ワイヤラインシステムの場合は検層ケーブル59により、掘削時システムの場合は掘削ストリング95によって掘削孔12に支持された状態で示されている。ワイヤライン用途に関しては、菅状体13は、地表機器98によって制御されたウィンチ97によって掘削孔12内で昇降される。検層ケーブル又は掘削ストリング95は、信号及び制御通信のためにダウンホール電子機器92及び93を地表機器98に接続する導体99を含む。代替的に、これらの信号は、菅状体13内で処理又は記録され、処理されたデータは、当業技術で公知のように地表機器98に伝達することができる。本発明の弓形変換器実施形態のいずれも、本明細書で説明するように従来の菅状体上に取り付けることができる。当業技術で公知のように、従来の電子機器、リンク用構成要素、及びコネクタを使用して、測定及び通信装置上で本発明の弓形変換器を実施することができる。
【0032】
本発明は、音響変換器が使用される任意の分野に適用可能であってその分野で実施することができ、本発明は、地表下の菅状体関連の用途に限定されないことを当業者は認めるであろう。また、開示した変換器は、いかなる特定の周波数又は周波数範囲の作動にも限定されないことも認められるであろう。実施形態はまた、矩形素子以外に他の形状及び寸法で構成された変換器素子を用いて実施することもできる。
【符号の説明】
【0033】
30 単一矩形1−3圧電複合型素子
32 重質量材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状体上で使用するための音響変換器であって、
回転柱面部分を形成するよう構成され、複数の音響変換素子が配置され、前記音響変換素子に電圧を供給するよう構成された弓形部材を備え、
前記音響変換素子は、音響エネルギを受信し又は放射するよう選択的に動作可能であり、前記弓形部材は、これに配置された複数の変換素子のサブセットに他の変換素子とは逆の極性の電圧を供給するよう構成され、前記弓形部材及び変換素子は密封されて液体のない部材を構成していることを特徴とする音響変換器。
【請求項2】
前記弓形部材は、実質的に非導電性の材料で形成されている、請求項1に記載の音響変換器。
【請求項3】
前記弓形部材にはさらに、前記弓形部材の凹部表面近くの音響エネルギ伝播を減衰させるための重質量材料が前記音響変換素子に近接して設けられている、請求項1に記載の音響変換器。
【請求項4】
前記弓形部材はさらに、前記変換素子の平面に接触する第1の導体及び前記変換素子の第2の平面に接触する第2の導体を含んでいる、請求項1に記載の音響変換器。
【請求項5】
前記第1及び第2の導体は、それぞれがメッシュを構成する一連の導体を含んでいる、請求項4に記載の音響変換器。
【請求項6】
前記弓形部材は、時間的な順序で、前記変換素子の一部に電圧が供給されるように構成されている、請求項1に記載の音響変換器。
【請求項7】
二つの弓形部材を有し、それぞれが回転柱面の半分を形成している、請求項1の音響変換器。
【請求項8】
四つの弓形部材を有し、それぞれが回転柱面の4分の1を形成している、請求項1の音響変換器。
【請求項9】
前記弓形部材は、導電性材料により形成されている請求項1に記載の音響変換器。
【請求項10】
前記弓形部材は、そこに配置された変換素子の第1の平面に電気的に接続されている、請求項1に記載の音響変換器。
【請求項11】
前記弓形部材は、信号及び/又は電力の接続のために、遠隔測定手段に結合されている、請求項1に記載の音響変換器。
【請求項12】
管状体の回転柱面部分を形成する弓形部材を配置する段階有する管状体に音響変換器配備する方法であって、
前記弓形部材には複数の音響変換素子が配置され、前記弓形部材はそこに配置された音響変換素子に電圧を供給するよう構成され、
ここで前記音響変換素子は、音響エネルギを受信し又は放射するよう選択的に動作可能であり、前記弓形部材は、これに配置された複数の変換素子の一部に、他の変換素子とは逆の極性の電圧を供給するよう構成され、前記弓形部材及び変換素子は密封されて液体のない部材を構成していることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記弓形部材は、信号及び/又は電力の接続のために、遠隔測定手段に結合されている、請求項12に記載の音響変換器。
【請求項14】
地表下に配置される管状体上で使用される音響変換器であって、
前記管状体に配置される回転柱面部分として形成され、素子に電圧を供給するよう構成された弓形部材と、
前記弓形部材に配置され、音響エネルギを受信し又は放射する複数の音響変換素子と、
前記音響変換素子の第1の平面に接触する第1の導体と、
前記音響変換素子の第2の平面に接触する第2の導体と、を有し、
前記第1の平面の音響変換素子は、前記第2の平面の音響変換素子から電気的に分離されており、
前記弓形部材に配置された複数の音響変換素子のサブセットは、そこに配置された他の音響変換素子とは逆の極性の電圧で動作するよう構成され、
前記弓形部材及び音響変換素子は、液体のない音響変換器を形成するよう密封され、前記管状体は掘削環境と接触するよう構成された外側表面を有し、前記音響変換器は掘削環境と接触する管状体の外側表面の周囲に配置されるよう構成されていることを特徴とする音響変換器。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−16059(P2012−16059A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217176(P2011−217176)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【分割の表示】特願2005−29709(P2005−29709)の分割
【原出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(502210208)シュルンベルジェ テクノロジー ビー ブイ (3)
【氏名又は名称原語表記】Schlumberger Technology B.V.
【住所又は居所原語表記】Parkstraat 83−89,2514 JG The Hague,The Netherlands
【Fターム(参考)】