説明

薄肉包装袋およびその製造方法

【課題】薄肉でかつバリア性の優れた包装袋及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】基材層A11と基材層B12とが積層された包装フィルム10であり、基材層A11が、包装袋の外面となる第1面とその反対面である第2面とを有し、基材層B12が、包装袋の内面となる第1面とその反対面である第2面とを有し、基材層A11の第2面または基材層B12の第2面には、金属または金属酸化物の蒸着層15が形成され、基材層A11および前記基材層B12が、延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層11、13を含み、少なくとも基材層B12が、延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層13に加え、厚さ5μm以下で融点が150℃以下の熱融着層14を第1面側に含み、かつ腰感が5(GPa)2以下であり、包装フィルムを横シールする際、リークしやすい部分に対して、他の部分よりも大きな圧力である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装フィルムから形成された包装袋およびその製造方法に関する。特に、薄いシーラント層の包装フィルムを強固にシールすることによりリークしにくく、かつ、高い水蒸気バリア性を有する薄肉包装袋およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スナック菓子などの食品を包装するための包装袋の材料に用いる包装材料は、強度的性質、ヒートシラブル性、少なくとも賞味期限までの品質保持に必要な外気遮断性(水蒸気・酸素バリア性)等の要求性能を満足するために、典型例としては、包装袋の外側表面から順に、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)20〜30μm/印刷層/押出ポリエチレン層(PE)15μm/蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(VMPET)12μm/押出ポリエチレン層(PE)15μm/無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)20〜30μmの5層構造の積層フィルムが用いられてきた。
これらの積層包装フィルムは、通常、全体で80〜100μm程度の厚みを有しているが、包装袋は包装された食品が消費された後には、廃棄物となるので、膨大な量の廃棄物の発生源となり、地球環境問題等から、包装材料の薄肉化が望まれている。
特許文献1には、バリア性の包装材料が開示されているが、シーラント層として、70μmのポリエチレン層が用いられている。
【特許文献1】特開2000−263722号公報
【0003】
このため、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)30μm/蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム(VMCPP)30μmの2層構造の積層フィルムが試みられたこともあったが、無延伸ポリプロピレンフィルムでは、水蒸気バリア性が不足して、実用的には不満足なものでしかなかった。
【0004】
一方、欧米では、日本ほど湿気の問題がないため、袋外面側にヒートシール層を有する二軸延伸ポリプロピレン(OPH)20〜30μm/印刷層/ドライラミネート接着剤/蒸着層/袋内面側にヒートシール層を有する二軸延伸ポリプロピレン(OPP)20〜30μmからなる薄肉包装材料が用いられてきた。
包装材料の薄肉化を図りながら、水蒸気バリア性を得るためには、欧米で用いられているように、袋外面側と袋の内面側の両方に、ヒートシラブル性の層を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いることが好ましいが、特に湿度の高い日本での使用においては、前記ヒートシール層が薄いとリークしやすいという問題が発生する。特に、縦シール部分と横シール部分がオーバラップする個所のリークが問題となる。このため、特に日本においては、包装材料の薄肉化を図りながら、水蒸気バリア性を確保するとともに、リークを防止することは、従来の包装材料では不十分である。
【0005】
一方、包装フィルムに横シールを行うための、横シール装置に用いられる横シールジョーとしては、従来よりフラットジョーまたはサーキュラージョーが用いられているが、十分なシール時間が得られるという点で、フラットジョーの方が一般的に使用されている。フラットジョーとしては、特許文献2および3に記載されているようなシールジョーが知られている。包装フィルムを加圧するシールジョー表面には、凹凸が設けられているが、通常、特許文献2および3に示されているように、シールジョー表面全体にわたって、同じ形状の凹凸が複数設けられている。このようなシールジョーを持つ横シール装置を用いて、上記のような薄い熱融着層しか持たない薄肉包装材料で包装袋を製造した場合、包装袋のシール部分からのリーク防止の点から、満足なシールができない。
【特許文献2】特開2002−104327号公報
【特許文献3】特開2006−123974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の第1の課題は、薄肉の包装フィルムから、水蒸気バリア性を有し、かつ、耐リーク性に優れた包装袋を得ることであり、本発明の第2の課題は、かかる包装フィルムから包装袋を製造する方法を確立することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記2つの課題を解決するため、包装フィルムを、筒状に成形した後、縦シールおよび横シールを行って形成された包装袋及びかかる形成を行う包装袋の製造方法において、本発明では、
前記包装フィルムは、基材層Aと基材層Bとが積層された積層フィルムであり、
前記基材層Aが、包装袋の外面となる第1面と前記第1面とは反対面である第2面とを有し、
前記基材層Bが、包装袋の内面となる第1面と前記第1面とは反対面である第2面とを有し、
前記基材層Aの第2面または前記基材層Bの第2面には、金属または金属酸化物蒸着層が形成されており、
前記基材層Aおよび前記基材層Bが、延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層を含み、
少なくとも前記基材層Bが、前記延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層に加え、厚さ5μm以下で融点が150℃以下の熱融着層を第1面側に含み、かつ、腰感が5(GPa)2以下であるフィルムであり、
前記横シールは、前記包装フィルムのうち、形成される包装袋のリークしやすい部分に対して、他の部分よりも大きな圧力をかけることにより行われることを最も主要な特徴とする。
【0008】
上記の第1の課題は、上記特徴を有する、バリア性に優れ、かつ、耐リーク性のある包装袋により解決され、また上記の第2の課題は、上記特徴を有する、バリア性に優れ、かつ耐リーク性のある包装袋を製造できる方法によって解決される。
【0009】
前記基材層Aの前記第2面側に、更に印刷層が形成されていることが、商業上好ましく、またこの様態では、前記印刷層にプライマー処理が施され、該プライマー処理された面に接して前記蒸着層が形成されていることが好ましい。
前記基材層Aと前記基材層Bとが、ドライラミネートにより積層されていることが好ましく、また、前記基材層Aおよび前記基材層Bは、それぞれ、40μm以下の厚みを有するフィルムであることが好ましい。
前記基材層Bの熱融着層は、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体から形成されていることが好ましく、また前記基材層Bのフィルムの腰感が、2(GPa)2以上であることが好ましい。
【0010】
なお、前記リークしやすい部分は、特に、筒状に成形されたフィルムの両端が重なって縦シールが行われる包装袋の中央部および包装袋の両端部である。
また、上記のように特定部位にのみ大きな圧力を与えるには、前記横シールが、前記包装フィルムを押圧する押圧面を持つ横シールジョーによって行われ、
前記押圧面には、複数の凹凸が形成され、該複数の凸部の少なくとも1つは、形成される包装袋の中央部および両端部に相当する部分を押圧する凸部(a)が、他の部分を押圧する凸部(b)よりも高さが高いか、或いは前記凸部(b)の先端面に比して角度が急角度である横シールジョーを用いて前記横シールされることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
包装フィルムの材質として、包装袋の内面を形成する前記基材層Bとして、薄い熱融着層を含む腰感の低いフィルムを用いて、かつ特定の個所にのみ局所的に大きなシール圧力を与えて横シールされた包装袋であるため、熱融着層が薄いにもかかわらず、リークが起こりにくい薄肉包装袋を得ることができる。
しかも、前記基材層Bの熱融着層が薄くできることにより、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)ではなく、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)のような、ポリプロピレン単独重合体層を含み、かつ延伸されたフィルムを設けることが可能になる。このため、形成された包装袋は、薄肉でありながら、水蒸気バリア性の優れたものとすることができる。
【0012】
上記のような特定の個所にのみ局所的に大きなシール圧力をかけるには、押圧面には、複数の凹凸が形成され、該複数の凸部の少なくとも1つは、形成される包装袋の中央部および両端部に相当する部分を押圧する凸部(a)が、他の部分を押圧する凸部(b)よりも高さが高いか、或いは前記凸部(b)の先端面に比して角度が急角度である横シールジョーを用いることで、失敗なく、かつ工業生産的に効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(包装フィルム)
包装フィルムは、包装袋を構成する材料であって、筒状に成形し、縦シールおよび横シールを行って包装袋に形成される。前記包装フィルムは、包装袋に形成されたとき外側表面を構成する基材層Aと、内側を構成する基材層B、および前記基材層Aと前記基材層Bの間に設けられる金属または金属酸化物の蒸着層を有する。
前記基材層Aと前記基材層Bは、それぞれ包装袋の外側面(基材層Aの場合)または内側面(基材層Bの場合)となる第1面と、前記第1面とは反対面である第2面を有している。前記基材層Aまたは前記基材層Bの第2面には、前記金属または金属酸化物蒸着層層が形成されている。
前記基材層Aと前記基材層Bとは、前記第2面側どおしが、接着剤を介してドライラミネートされるか、または、ポリエチレン樹脂を押し出しながら、ドライラミネートされることに一体化して包装フィルムを形成していることが好ましい。なかでも、本発明の目的である薄肉包装袋の製造のためには、基材層AおよびBフィルムが接着剤を介して積層(ドライラミネート)されていることが、より好ましい。
【0014】
(基材層A)
前記基材層Aは、延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層を含む。前記層に用いられる好適なフィルムとしては、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを挙げることができる。延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層の更に外表面側である、前記基材層Aの第1面側には、形成する包装袋の様態によって、ヒートシラブル性を有する熱融着層を有していても、有していなくてもよい。すなわち、包装袋を形成するための縦シールを行うとき、包装フィルム基材層Bの内面どうしをあわせて縦シールを行う場合には、前記基材層Aの表面に熱融着層を設ける必要はない。しかしながら、前記基材層Bの内面を、包装袋の基材層Aの外面に重ねて縦シールを行場合には、前記基材層Aの外面にヒートシラブル性を持たせるために、基材層Aの第1面側には、熱融着層が形成される必要がある。
前記熱融着層を構成するポリマーとしては、プロピレンに他のオレフィンが共重合された低融点のオレフィン系ポリマー(例えば、プロピレン‐エチレン‐ブテン共重合体)が用いられ、前記基材層Aフィルム外面に薄く形成される。本発明において、前記基材層Aを構成するフィルムの厚さは、40μm以下、好ましくは、30μm以下、さらに好ましくは、20μ以下であり、また、熱融着層が形成される場合には、該熱融着層の厚さは5μm以下であることが好ましい。
【0015】
(基材層B)
一方、前記基材層Bには、包装袋の内面側がヒートシラブル性を有している必要があることから、前記基材層Bの第1面側には、熱融着層を有していることが求められる。
前記熱融着層を構成するポリマーとしては、融点が150℃以下のエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン等の炭素数が2〜10のα−オレフィン系モノマーから選ばれた2種以上を重合して得られたランダムまたはブロック共重合体、なかでも、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体(例えば、プロピレン‐エチレン‐ブテン共重合体、プロピレン‐ブテン共重合体)が好ましい。
【0016】
本発明においては、前記基材層Bは、前記熱融着層のみから構成されるのではなく、前記基材層A同様、延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層を含み、好適には二軸延伸ポリプロピレンフィルムが用いられる。
したがって、前記基材層Bの前記第1面側に熱融着層を有し、その反対面である前記第2面側に、延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層を有する。さらに、中間層として、ポリプロピレン単独重合体と低融点の熱融着層を構成する共重合体との中間的な性質を有するエチレン−プロピレン共重合体層が形成されていてもよい。
前記基材層B全体としての厚さは、40μm以下、好ましくは、30μm以下、さらに好ましくは、20μm以下であり、そのうち、前記熱融着層の厚みは5μm以下が好ましく、またこのように薄くても、本発明の包装袋の構成においては十分なヒートシラブル性も確保できる。下記で詳述するように、本発明においては、特定の横シールジョーを用いて、包装フィルムの横シールを行うので、前記熱融着層の厚みが5μm以下でも、耐リーク性の高い包装袋を形成することができるからである。
【0017】
本発明の包装袋においては、従来の包装袋とは異なり、包装袋内面に二軸延伸ポリプロピレンフィルムのような、延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層が設けられているのが特徴である。このような構成とすることにより、包装袋の内面にまで、延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層が存在していることにより、包装袋の水蒸気遮断性が格段に向上する。したがって、薄肉の包装袋でありながら、水蒸気遮断性が優れる。しかも、本発明においては、後述のとおり、包装フィルムの横シールは、前記包装フィルムのうち、形成される包装袋のリークしやすい部分に対して、他の部分よりも大きな圧力をかけることにより行われることから、基材層Bの熱融着層が薄いにもかかわらず、十分なシール性を有し、リークしにくい包装袋を得ることができる。
【0018】
本発明においては、前記基材層Bを構成するフィルムとしては、5(GPa)2以下の腰感の低いフィルムを用いることが必要である。腰感の低いフィルムを用いることにより、横シール時に、リークの起こりやすい部分である、包装袋の両端部または中央部に相当する部分において、包装フィルムが所望の形状に変形しやすく、しかも、離型時に元の形に復元しようとするスプリングバック現象の発生を抑制できるので、包装袋として十分なシールを行うことができる。この点、腰感が5(GPa)2を超える、腰感の強いフィルムでは、離型時にスプリングバック現象があるため、シールが不完全となり、リークが発生しやすくなる。
一方、本発明では、前記基材層Bは、延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層を含有させることから、無延伸ポリプロピレン単独フィルムを用いた場合よりも、どうしても腰感は高くなってしまう。このため、前記基材層Bの腰感は、2(GPa)2以上となり、通常は3(GPa)2以上を有することになる。
【0019】
ここで、(GPa)2とは、[縦方向引張り弾性率×横方向引張り弾性率]を意味し、この式により前記基材層Bの腰感を表すことができる。この値が高ければ、腰感が強くなり、低ければ腰感が弱くなる。フィルムの引張り弾性率は、JIS−K−7127記載の方法により測定できる。
【0020】
(蒸着層)
本発明においては、基材層AまたはBに金属または金属酸化物の蒸着層が形成される。前記蒸着層は、通常の蒸着法により、300〜1500Åの厚さの金属(金属アルミニウム、金属鉄等)または金属酸化物層(酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ケイ素等)が形成される。前記蒸着層は、基材層AまたはBのいずれかの第2面に形成されるが、好ましくは、基材層Aの第2面に形成される。
【0021】
(印刷層)
本発明の包装袋には、商業的側面から一般的にデザインが印刷されるのが普通であり、このため、前記包装フィルムには、印刷層が設けられるのが普通である。本発明において、かかる印刷層は、通常、前記基材層Aの第2面に形成される。その方法としては、まず、グラビア印刷等により印刷層が形成され、この印刷層の上に、定法によりプライマー処理(アンカー処理)が施されるのが一般的である。この場合、前記蒸着層は、プライマー処理された前記印刷層の上に形成される。そして前記基材層Aと前記基材層Bの積層に際しては、前記基材層Aの前記蒸着層面と、前記基材層Bの第2面が、接着剤を介して積層される。一方、基材層Aの第2面に印刷層が形成され、基材層Bの第2面に蒸着層が形成された場合には、基材層Aのプライマー処理された印刷層面と基材層Bの蒸着層面とが接着剤を介して積層される。
【0022】
(積層例)
本発明において用いられる包装フィルムは、以上のような構成となるが、その一例を図1に示す。図1において、上方が包装袋外側表面であり、下方が内側面である。本様態において、包装フィルム10は、基材層A11(延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層)/(アンカー処理された)印刷層16/蒸着層15/接着剤17/基材層B12の構成となっており、基材層B12は、その第2面側に、延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層13を有し、その第1面側(最内面)に熱融着層14を有する2層構造になっている。
【0023】
(装置)
本発明の包装袋を製造するための包装機(縦型包装機)の1例を図2に示す。図2に示されている縦型包装機20は、フィルムロールから供給された包装フィルム10を、筒状フォーマ21に沿わせることによって筒状に形成し、長手方向に重なり部分を縦シールし、ついで、筒状フィルムは下方に送られて、所定間隔で横シールされ、シール個所が切断されて、包装袋Bが完成する。
【0024】
このようにして包装袋を製造するために、縦型包装機は、筒状フォーマ21、フィルムをフォーマに沿わせて送るためのプルダウンベルト22、縦シールを行う縦シール機構23、横シールを行う横シール機構24から構成され、前記横シール機構24には、包装フィルムを切断する横シールジョー及びナイフ、該横シールジョーを支持し、包装フィルムに対して接触離反するための機構から構成されている。
【0025】
(横シールジョーの形状)
本発明における横シールジョーの形状としては、フラット型の押圧面に複数の凹凸(セレーション)が形成されたものが一般的に使用される。この点、本発明における包装フィルムに対しては、包装袋にしたときにリークの起こりやすい部位となる、形成により包装袋の中央部(縦シールのためフィルムの両端が重なる部分)および両端部(包装フィルムが折り重なる部分)に相当する部分に、より大きなシール圧をかけることのできるセレーションの横シールジョーを用いることが重要であることを見出した。
【0026】
本発明で用いられる横シールジョーは、フラットジョーであって、かつ包装フィルムの部分のうち、前記のリークしやすい部分により大きなシール圧がかかるようにジョー形状が調整されている。包装フィルムの上記所定の部分のみ大きなシール圧を与える方法としては、大きなシール圧を与える横シールジョー押圧面の凸部(a)を包装袋の他の部分を押圧する凸部(b)よりも高さを高くする方法と、前記凸部(b)の先端面に比して角度が急角度とする方法がある。
このうち、図3には、凸部(a)が、前記凸部(b)の先端面に比して角度が急角度とする方法を採用した横シールジョー25の押圧面形状の具体例を示した。図3に示したように、横シールジョー25の押圧面には複数の凹凸が形成され、その複数の凸部の頂部が、平坦なもの25bとナイフエッジ形状のもの25aの先端の勾配が相違する2種類の凸部から構成されている。そして、包装袋の中央部と両端部に相当する凸部(a)25aにおいて、先端がエッジとなっており、それ以外の部分の凸部(b)25bにおいて、先端が平坦となっている。
一方、横シールジョー押圧面の凸部(a)の高さを凸部(b)よりも高くする方法は、公知の手法を採用することができる。具体的な一例としては、下記特許文献4に記載されているようなセレーションを持つ横シールジョーが使用可能である。特許文献4に記載のシールジョーのセレーションは、複数の凸部の頂部すべてが同一平面上にあるのではなく、一部の凸部の頂部が他の凸部の頂部よりも若干高く形成されていて、局部的に大きな封止圧力がかかるようになっている。
【特許文献4】特開2006−502920号公報
【0027】
本発明においては、上記の先端角度を変化させる方法と、高さを変化させる方法のいずれの横シールジョーも使用可能であるが、凸部が同一高さの頂部を有し、頂部に平坦面と尖った面とを有する先端角度を変化させるの方法のほうが、より好適である。包装袋全幅に渡ってリークなくシールが行われるという本発明の効果を、より一層発揮できるからである。
【0028】
従来のフィルムでは,包装フィルムの内面側は、低融点フィルムでシーラント層(熱融着層)を含む構成を採用した場合、リークのないシールを行うためには、前記シーラント層の厚みとしては20〜30μm程度必要とした。しかし、本発明では、上記のような横シールを行うことにより、前記基材層Bの最内面(第1面)にある熱融着層の厚みが、5μm以下で十分である。このような薄い熱融着層でも、上記のように、リークを起こしやすい部分に、局部的に大きなシール圧がかかるため、厚みが薄くても十分なシール強度を有する包装袋が得られ、シール後、形成された包装袋を加圧しても、該包装袋のシール部分が破れて、包装袋内のエアーがリークするという問題が発生しにくい。本発明では、特定の構成の包装フィルムを用いて、上記のような横シールを行うことにより、薄地で、しかも十分なシール強度と耐リーク性を有し、加えて水蒸気バリアの高い包装袋を得ることができる。
特に、本発明においては、前記基材層Bが、熱融着層のほかに、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどの、延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層を含む構成であるので、包装袋の内面を低融点ポリマー層のみから形成されていた従来の包装袋に比べて、水蒸気透過性に優れている。
また、前記基材層Bは、腰感が5(GPa)2以下のフィルムであるため、シール時のスプリングバック現象が生じることなく、上記のような局部圧のかかる横シールの効果と相俟って、形成された包装袋は、完全なシールが行われたものとすることができる。
【0029】
なお、本発明における縦及び横シールは、定法のヒートシール装置により行われるが、ヒートシールの代替として、超音波シール機構や高周波誘導加熱方式が採用されてもよい。
【実施例】
【0030】
(1.包装フィルムの作製)
下記の構成の包装フィルムを作成し、バリア性能を測定した。
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)30μmに、包装袋として要求される通常の印刷を施して印刷層を設け、該印刷層に、大日精化社製のメジウムをプライマー処理し、ついで該プライマー処理面に蒸着層として金属アルミニウム蒸着(550Å)を行って、フィルムAを得た。フィルムAの腰感は、9.9(GPa)2であった。
一方、片面に3μmの融点130℃の熱融着層を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムをフィルムBをとした。前記フィルムBに用いた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン27μm/ポリプロピレンとプロピレン‐エチレン‐ブテン共重合体(配合比1:1)との混合物10μm/プロピレン‐ブテン共重合体3μmを共押出して作成したフィルム30μmを二軸延伸して得られた。フィルムBの腰感は、4.7(GPa2)であった。
フィルムAを基材層A、フィルムBを基材層Bとして、前記フィルムAの蒸着層側の面(前記基材層Aの第2面)と、フィルムBの熱融着層と反対の面(前記基材層Bの第2面)とを、接着剤を用いてドライラミネートして、基材層A30μm/プライマー処理された印刷層/蒸着層/接着剤/基材層B30μm/の構成を有する包装フィルムを作成した。
【0031】
(2.水蒸気バリア性の測定)
上記で得られた包装フィルムと、下記の比較フィルムA及びBについて水蒸気バリア性を測定した。
・比較フィルムA(5層):OPP30μm/印刷面/PE/VMPET/PE/CPP30μm
・比較フィルムB(2層):OPP30μm/VMCPP30μm
なお、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム、PE:ポリエチレンフィルム、VMPET:蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、VMCPP:蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム
【0032】
〔測定方法〕
装置: MOCON社製 PERMATRAN W3/31
測定条件:40℃、90%RH
〔測定結果〕
実施例の包装フィルム 0.2g/m2・day
比較フィルムA 0.3g/m2・day
比較フィルムB 0.8g/m2・day
上記測定結果から、実施例の包装フィルムでは、薄肉でありながら、包装フィルムの内外両面に二軸延伸フィルムを用いているために、高い水蒸気バリア性が得られていることが分かる。
【0033】
(3.包装袋の作製)
上記で得られた実施例の包装フィルムをイシダ社製包装機ATLASに供給しながら、定法により縦シールを行い、次いで、シール面に図3に示す形状の凹凸を有するフラット型の横シールジョーを用いて横シールを行って、ポテトチップス70gを充填した包装袋(サイズ:32×20cm)を製作した。
上記実施例で製作した包装袋を、下記の方法によりリークの有無を調べた結果、リークはなかった。包装フィルムの外面・内面ともに、薄いシーラント層がコートされた二軸延伸フィルムを用いても、本発明の横シールジョーを用いることにより、耐リーク性の優れた包装袋を得ることができた。しかも、包装袋内面にも、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが用いられているため、水蒸気バリア性が高く、薄肉包装材料でありながら、高い品質の包装袋を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、水蒸気バリア性に優れ、リークのしにくい、高い性能を維持しながら、薄肉包装材料で包装された包装袋を得ることができるので、特に、包装材料製造分野、食品包装分野において、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る薄肉包装袋の全体構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る薄肉包装袋の製造方法に用いられる縦型包装機の全体構成を示す概略図である。
【図3】本発明に係る薄肉包装袋を製造するために用いられる横シールジョーの斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
10 包装フィルム
11 基材層A(延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層)
12 基材層B
13 基材層Bの延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層
14 基材層Bの熱融着層
15 蒸着層
16 印刷層
17 接着剤
20 縦型包装機
21 フォーマ
22 プルダウンベルト
23 縦シール機構
24 横シール機構
25 横シールジョー
25a 横シールジョー押圧面凸部分(a)
25b 横シールジョー押圧面凸部分(b)
C 包装袋に封入される商品
B 形成された包装袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装フィルムを、筒状に成形し、縦シールおよび横シールを行って形成された包装袋において、
前記包装フィルムは、基材層Aと基材層Bとが積層された積層フィルムであり、
前記基材層Aが、包装袋の外面となる第1面と前記第1面とは反対面である第2面とを有し、
前記基材層Bが、包装袋の内面となる第1面と前記第1面とは反対面である第2面とを有し、
前記基材層Aの第2面または前記基材層Bの第2面には、金属または金属酸化物の蒸着層が形成されており、
前記基材層Aおよび前記基材層Bが、延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層を含み、
少なくとも前記基材層Bが、前記延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層に加え、厚さ5μm以下で融点が150℃以下の熱融着層を第1面側に含み、かつ、腰感が5(GPa)2以下であるフィルムであり、
前記横シールは、前記包装フィルムのうち、形成される包装袋のリークしやすい部分に対して、他の部分よりも大きな圧力をかけることにより行われたことを特徴とする、包装袋。
【請求項2】
前記基材層Aの前記第2面側に、更に印刷層が形成された、請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記印刷層には、プライマー処理が施され、該プライマー処理された面に接して前記蒸着層が形成されている、請求項2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記基材層Aと前記基材層Bとが、ドライラミネートにより積層された、請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項5】
前記基材層Aおよび前記基材層Bは、それぞれ、40μm以下の厚みを有するフィルムである、請求項1に記載の包装袋。
【請求項6】
前記基材層Bの前記熱融着層が、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体から形成されている、請求項1に記載の包装袋。
【請求項7】
前記基材層Bのフィルムの腰感が、2(GPa)2以上である、請求項1に記載の包装袋。
【請求項8】
前記リークしやすい部分が、前記包装袋の中央部および両端部である、請求項1に記載の包装袋。
【請求項9】
前記横シールは、前記包装フィルムを押圧する押圧面を持つ横シールジョーによって行われ、
前記押圧面には、複数の凹凸が形成され、該複数の凸部の少なくとも1つは、形成される包装袋の中央部および両端部に相当する部分を押圧する凸部(a)が、他の部分を押圧する凸部(b)よりも高さが高いか、或いは前記凸部(b)の先端面に比して角度が急角度である横シールジョーを用いて前記横シールされた、請求項1に記載の包装袋。
【請求項10】
包装フィルムを筒状に成形し、縦シール及び横シールを行って、包装袋を製造する方法において、
前記包装フィルムは、基材層Aと基材層Bとが積層された積層フィルムであり、
前記基材層Aが、包装袋の外面となる第1面と前記第1面とは反対面である第2面とを有し、
前記基材層Bが、包装袋の内面となる第1面と前記第1面とは反対面である第2面とを有し、
前記基材層Aの第2面または前記基材層Bの第2面には、金属または金属酸化物蒸着層が形成されており、
前記基材層Aおよび前記基材層Bが、延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層を含み、
少なくとも前記基材層Bが、前記延伸されたポリプロピレン単独重合体フィルム層に加え、厚さ5μm以下で融点が150℃以下の熱融着層を第1面側に含み、かつ、腰感が5(GPa)2以下であるフィルムであり、
前記横シールは、前記包装フィルムのうち、形成される包装袋のリークしやすい部分に対して、他の部分よりも大きな圧力をかけることにより行うことを特徴とする、包装袋の製造方法。
【請求項11】
前記リークしやすい部分が、前記包装袋の中央部および両端部である、請求項10に記載の包装袋の製造方法。
【請求項12】
前記横シールは、前記包装フィルムを押圧する押圧面を持つ横シールジョーによって行われ、
前記押圧面には、複数の凹凸が形成され、該複数の凸部の少なくとも1つは、形成される包装袋の中央部および両端部に相当する部分を押圧する凸部(a)が、他の部分を押圧する凸部(b)よりも高さが高いか、或いは前記凸部(b)の先端面に比して角度が急角度である横シールジョーを用いて前記横シールを行う請求項10に記載の包装袋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−207830(P2008−207830A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45782(P2007−45782)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【出願人】(505216346)サイチ工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】