説明

薄膜基板固定用粘接着シート

【課題】薄膜基板上に、効率的かつ安定的にパターンを形成する製造方法を提供する。
【解決手段】薄膜基板、薄膜基板固定用粘着シート、硬質基板の順に積層されており、該薄膜基板固定用粘接着シートのコア材となる多孔質基材が穿孔を有することで、予備加乾燥を施さなくても、薄膜基板のパターン形成時に薄膜基板と固定用粘着シート間での気泡を生じず、安定的かつ効率的にパターン形成を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜基板固定用粘接着シート及び薄膜基板へのパターン形成方法に関し、より具体的にはフレキシブル回路基板(FPC)や有機ELパネルのベース基板、あるいは電子ペーパーやフレキシブルディスプレイの駆動回路、パッシブマトリクスあるいはカラーフィルター、タッチパネルの回路基板や太陽電池の製膜プロセス等の製造における薄膜基板へのパターン形成の際に使用する薄膜基板固定用粘接着シート、及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板や有機ELパネルのベース基板、カラーフィルター等の基板は、厚みがあるために剛性があったため、これらの基板上へのパターン形成時において、基板の固定や移動等のハンドリングには苦慮せず、正確な位置に固定してこれらの基板上にパターン形成を行うことが可能であった。実際駆動回路やカラーフィルターはガラス基板上に形成するのが通常であり、このような十分な剛性を備えたガラス基板に対するパターン形成時にはなんら問題を生じなかった。
【0003】
しかしながら、最近、電子デバイス中の部品やディスプレイ、より具体的にはフレキシブル回路基板(FPC)や有機ELパネルのベース基板、あるいは電子ペーパーやフレキシブルディスプレイのTFT(駆動回路)、パッシブマトリクスあるいはカラーフィルター、タッチパネルの回路基板や太陽電池そのものにおいて、軽量かつ、衝撃をうけても破壊しにくく、しかも薄いことを特徴とするタイプの開発が進められている。
【0004】
この場合、駆動回路、パッシブマトリクス、カラーフィルター、タッチパネルの回路基板等は従来のガラス基板ではなく、いわゆる耐熱性のある金属箔やプラスチック基板上にパターンを形成する必要があるが、これら金属箔やプラスチック基板は薄膜のため、正確な固定および搬送が難しいという課題が山積している。
特にパターン形成を行う際には、基板のわずかなゆがみから位置ずれを起こしてしまい、結果的に大きく歩留まりを低下させてしまう。また、多孔質板を用いた吸着プレートを用いて基板を固定しても、その吸着部のわずかなくぼみが位置ずれを生じさせ、結果的に歩留まりを低下させてしまう等の課題が生じている。
【0005】
このためPhilips Corporationはα‐Si TFT- EPDディスプレイを開発するべく、ポリイミドをガラス上に塗布してから、転写技術を利用してポリイミド基板をガラスから引き離す方法を提案しているが、この場合、ガラス基板を取り去るのに、レーザーアニーリングを用いることが必要とされ、結果的に新機設備が必要であったり、耐熱の観点から、安価な薄膜基板を用いることができないという課題がある。
さらに最近ではRoll to Roll作成プロセスも試みられているが、この場合、従来のバッチプロセスではないため、既存のTFT設備を使用することができず新たな設備が必要になる。またロール巻きされた基板の回転と接触に起因するいくつかの問題を克服しなければならない。
【0006】
一方で、いわゆるベース基材をもつ粘着テープで一時的に固定し、パターン形成後に剥離する試みも始められているが、最も大きな課題は硬質基板に貼り付けられた粘着テープを介して薄膜基板を貼り合わせたのち、パターン形成のための加熱工程に投入すると薄膜基板と粘着テープ間において、気泡が発生し、パターン形成不良が生じてしまう可能性がある。このため、現状では粘着テープを硬質基板に貼り合わせたのち、粘着テープの基材中の水分を取り除くための予備乾燥工程を十分に通す必要がある。また、いったん予備乾燥をおこなったものでも30分〜1時間以内にパターン形成工程に通さなければテープ断面より吸湿し、再び予備乾燥を行わなければ上述の気泡問題が発生する深刻な課題が生じている。さらに、本分野でのパターン形成工程では、不要な部分を除去するための、いわゆる現像工程と呼ばれる薬液処理工程を各層を形成するたびに通す必要があり、この過程において、必ず吸湿してしまうため、各層のパターン形成前には必ず予備加熱工程を通す必要があり、結果として高価なパターン形成を行う設備の稼働率を下げてしまい、コストが非常に高くなってしまうという深刻な課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−39472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電子デバイス中の部品やディスプレイ等に用いられる薄膜基板上にパターンを形成させる方法において、薄膜基板を用いた場合でも該薄膜基板を正確に固定・搬送し、位置がずれることなくパターン形成できると共に両面テープを事前に乾燥しなくとも気泡やゆがみがなく固定でき、非常に効率的かつ安定的にパターン形成を行なうことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記のような従来の問題を解決しようとするものであり、薄膜基板を用いた場合でも硬質基板上に穿孔を有する多孔質基材を用いた粘接着性テープを介して固定することで、気泡なくゆがみなく固定できる。それにより、位置ずれを発生させず安定的にパターン形成を行え、また搬送後、ダメージなく取り出せることが可能となる方法を提供するものであり、そのために下記の手段を採用する。
【0010】
1.薄膜基板上にパターン形成を行う際に使用される薄膜基板固定用粘接着シートであって、パターン形成は薄膜基板、固定用粘接着シート、硬質基板を順に積層してなる状態においてなされ、ここで使用される固定用粘接着シートは多孔質基材を有し、その多孔質基材の空孔率は5〜95%であり、かつ孔径は0.01μm〜900μmの径を有する薄膜基板固定用粘接着シート。
2.該固定用粘接着シートの多孔質基材の孔面積は0.0001μm〜4mmである1に記載の薄膜基板固定用粘接着シート。
3.多孔質基材の多孔は穿孔からなり、かつその穿孔は多孔質基材から粘接着剤層に連続して貫通されてなる1又は2に記載の薄膜基板固定用粘接着シート。
4.多孔質基材の少なくとも1片に再剥離のための粘接着剤層を有する1〜3のいずれかに記載の薄膜基板固定用粘接着シート。
5.多孔質基材の150℃でのCTEが500ppm以下であることを特徴とする、1〜4のいずれかに記載の薄膜基板固定用粘接着シート。
6.80℃〜270℃にて行われる工程を含む薄膜基板上へのパターンの形成を行う際に使用される、1〜5のいずれかに記載の薄膜基板固定用粘接着シート。
7.1〜6のいずれかに記載の薄膜基板固定用粘接着シートを硬質基板上に積層させてなる薄膜基板固定用部材。
8.薄膜基板、固定用粘接着シート、硬質基板を順に積層してなる状態において、該薄膜基板上にパターンを形成する方法であって、該固定用粘接着シートとして1〜6のいずれかに記載の薄膜基板固定用粘接着シートを使用する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、前記に説明した手段により、以下に述べるような効果を奏する。
即ち、本発明に於ける多孔質基材となる基材が穿孔を有してなる薄膜基板固定用粘接着シートは、80〜270℃の高温雰囲気下において、パターン形成のための硬質基板と、薄膜基板を1次的に仮固定する材料であって、通常の粘着テープで必要とされる事前の加熱処理を行わなくてもパターン形成工程の加熱による浮きの不具合を生じさせないことで、効率的かつ安定的なパターン形成を可能とする。これにより装置稼働率をあげ、安価な回路部材を提供することができる。
さらに従来技術による方法とは異なり、該薄膜基板を正確に固定・搬送し、気泡を生じずに位置がずれることなく効率的かつ安定的にパターン形成できることで歩留まりの向上を図ることが可能であり、かつ、アニーリング工程を必要とせずに安価な耐熱基板を用いたバッチプロセスを採用できる方法を得て、これによりパターン形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の薄膜基板固定用粘接着シートを用いて薄膜基板を硬質基板に固定した断面図
【図2】本発明の薄膜基板固定用粘接着シート断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、薄膜基板上にパターンを形成させるにあたって、予め硬質基板を用意し、この表面に薄膜基板固定用粘接着シートを介して薄膜基板を固定させることにより、その後のパターン形成から該薄膜基板を該粘接着剤層から剥離する工程を円滑に行うための発明である。
【0014】
(パターン)
本発明におけるパターンとは、薄膜基板を、その用途であるフレキシブル回路基板(FPC)や有機ELパネルのベース基板、あるいは電子ペーパーやフレキシブルディスプレイの駆動回路、パッシブマトリクスあるいはカラーフィルター、さらにはタッチパネルの回路基板や太陽電池の製膜プロセス等の用途に使用するために、必要とされる該薄膜基板上に形成される回路や薄膜、素子等を示す。
このパターンとしては上記の用途に必要なものであれば良く、パターンの形状や材質は問わない。
【0015】
(硬質基板)
硬質基板として用いられるものとしては、ガラス、金属板、半導体ウエハのほか、なんら限定するものではない。十分な強度を有して、基板上に本発明中の薄膜基板固定用粘接着シートを形成することが可能で、かつ、その薄膜基板固定用粘接着シートの上に、さらにパターンを形成させる対象である薄膜基板を安定的に積層させることが可能であればよい。
硬質基板の厚みは0.01mm〜10mm、より好ましくは0.02mm〜7mm、さらにこのましくは0.03mm〜5mmであり、0.01〜10mmの厚みであれば、保持し搬送することが容易であり、かつ耐衝撃性を有する点で好ましい。保持・耐衝撃性を満たすものならばこの厚みの範囲においてもさらに薄いほうが軽量であるために搬送しやすくさらに好ましい。
【0016】
(薄膜基板)
薄膜基板として用いられるものとしては、少なくとも1層以上からなる基板であって、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリノルボルネン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ステンレス箔等が使用できる。
またこの他の材料であっても上述のフレキシブル回路基板(FPC)や有機ELパネルのベース基板、あるいは電子ペーパーやフレキシブルディスプレイの駆動回路、パッシブマトリクスあるいはカラーフィルター、タッチパネルの回路基板やフレキシブル太陽電池等の用途に使用可能であればなんら制限をうけない。
その薄膜基板の構成として、単層のみならず、複層や多層であってもなんら問題はなく、また耐摩耗性や平滑性の向上、防湿性の向上のためにいずれかの面に処理層が設けられてもなんら問題はない。
薄膜基板の表面粗さは特に制限はないが、パターンが形成される面は平滑であるほうが好ましく、この点においてRmaxが10μm未満、より好ましくは5μm未満であることが好ましい。
その厚みは、軽量・薄膜化と同時に最終的に組み立てできる厚みであることが必要なことから、5μm〜3mm厚、好ましくは7μm〜2.5mm厚、より好ましくは、10μm〜2.5mm厚である。
【0017】
薄膜基板の弾性率はパターン形成工程でのハンドリングによる折れ曲がり防止等を考慮すると、ある程度の弾性率を有するものが好ましく、具体的には100MPa以上 、より好ましくは200MPa以上である。100MPa以上のフィルムであれば、パターン形成後のハンドリングにおいて、薄膜基板のシワ・折れを頻繁に生じることなく、歩留まりが低下しない。さらに弾性率が低いフィルムのように、一般的に加熱により軟化溶融して使用が難しいという欠点が解消される。
また薄膜基板のガラス転移温度(Tg)は室温でのハンドリング性・ゆがみ制御を考慮すると、23℃以上であることが好ましい。
【0018】
特にTFT(駆動回路)やカラーフィルター、タッチパネルの回路基板の形成においては150℃以上の加熱工程下にて処理されることが一般的であり、CTE値(線膨張係数)が大きな材料を使用すると、硬質基板とのCTE値の差により、パターン形成時の膨張・収縮が生じ回路形成時のずれ等が発生し、結果として歩留まりが下がる等の問題が発生してしまうため、この値は重要である。
具体的には150℃でのCTE値が400ppm未満のものが使用でき、より好ましくは350ppm未満、さらに好ましくは300ppm未満の薄膜基板を使用するのがよい。150℃でのCTE値が400ppm以上の場合、150℃以上のパターン形成において、各回路層形成時の位置ずれが生じてしまい、結果的に歩留まりが低下する結果がみられた。
【0019】
(薄膜基板固定用粘接着シートの多孔質基材)
薄膜基板固定用粘接着シートの多孔質基材となる基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリノルボルネン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、フッ素樹脂などの少なくとも1層以上からなるフィルムや、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリマー繊維、レーヨンまたは酢酸セルロースなどの合成繊維、およびガラス繊維または炭素繊維などの無機繊維やこれらの混合体、紙からなる不織布および織布等が挙げられる。またこれより他の材料であってもなんら制限をうけない。基材の材料が繊維からなる場合、繊維-繊維間隙の結果として、自然に穿孔を有することになるが、いわゆる穿孔を初期から有さないフィルムに関しては例えば下記に示すような方法により、穿孔を形成することができる。
【0020】
例えばプレス機(トムソンプレス等)または回転ロール(パンチングマシン、針付き回転ロール)による打ち抜き、レーザー、重イオンビーム、ドリル、水ジェット処理、薬液によるエッチング処理等を挙げることができる。そのほか多孔質基材を工程フィルム上にいったん形成したのち、取り出す方法として、相転換法、延伸法、溶融法、焼結法等各種の方法を採用できる。
このような穿孔を有するフィルムの厚さは1μm〜3mm厚であることが好ましく、より好ましくは3μm〜2.5mm、さらに好ましくは5μm〜1mm厚であることが好ましい。1μmより厚い場合は、通気性能が十分であり、また、薄膜基板固定用粘接着シートの貼り合わせ時に十分な剛性を有するので、シワ・折れを生じにくく、薄膜基板固定用粘接着シートに必要な面内均一性を保つことができる。
【0021】
さらに多孔質基材は空孔率が5〜95%が好ましく、5〜90%がより好ましい。さらに好ましくは10〜80%である。空孔率が5%以上であれば、通気性能が十分であり、本明細で目的としている脱湿特性が得られる。また、95%以下の空孔率の場合、基材本来の剛性を保つことができ、粘接着剤層形成工程あるいは、硬質基板への貼り合わせ時に容易に変形することがなく、結果として固定材として必要な面内均一性を保つことができる。このような多孔質基材を採用することにより加熱時において発生する水等の気体が薄膜基板固定用粘接着シートと薄膜基板との間に滞留せず、薄膜基板に浮きが発生することもない。
また、孔径に関しては0.01μm〜900μmが好ましいが、さらに好ましくは0.01μm〜700μmである。0.01μm以上の場合には目的とする脱湿特性が得られる。また、900μm以下では、パターンを形成する薄膜基板を貼り合わせても、穿孔部分にくぼみが生じることがなく、面内の高さ均一性を保つことができる。また、孔面積は0.0001μm〜4mmの大きさが好ましい。さらに該穿孔は脱湿の観点より独立気泡ではなく、連続気泡であることが好ましい。
このような穿孔を有する多孔質基材はコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理、下塗り(例プライマー)、フッ素処理、薬液による脱脂処理等、防湿や粘接着剤との密着性を高めるための処理を行ってもよい。特に、下塗り処理やコロナ処理がされていることが望ましい。
【0022】
(粘接着性組成物)
粘接着性組成物に関しては、薄膜基板固定用粘接着シートを介して硬質基板と薄膜基板を貼り合わせ・固定するというその役目により、薄膜基板を硬質基板に十分な粘接着性をもって固定できる組成物であることが必要である。本発明における粘接着剤は粘着剤あるいは接着剤として機能する剤を包含する。
ここで、このような粘接着剤としては、有機系接着剤、具体的には天然ゴム接着剤、α-オレフィン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤、エチレン−酢酸ビニルホットメルト接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、シリコーン系接着剤、スチレン−ブタジエンゴム溶剤系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、ニトロセルロース系接着剤、反応性ホットメルト接着剤、フェノール樹脂系接着剤、変性シリコーン系接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤、ポリオレフィン樹脂ホットメルト接着剤、ポリ酢酸ビニル樹脂溶剤系接着剤、ポリスチレン樹脂溶剤系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリビニルピロリドン樹脂系接着剤、ポリビニルブチラール系接着剤、ポリベンズイミダゾール接着剤、ポリメタクリレート樹脂溶剤系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、レゾルシノール系接着剤等及びこれらの樹脂からなる粘着剤を用いることができる。またその他の材料であってもなんら制限はない。
【0023】
粘接着性組成物は、より具体的にはゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系粘接着剤を用いてもその他の材料を用いても、なんら制限はない。ここでは具体例として、アクリル系粘接着剤を例にとるが、これ以外の材料においてもなんら制限がない。
また、粘接着性組成物は、粘着性成分(ベースポリマー)のほかに、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート、アルキルエーテル化メラミン化合物など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂など)、ゴム、可塑剤、充填剤、老化防止剤などの適宜な添加剤を含んでいてもよい。
【0024】
さらに多孔質基材を用いて薄膜基板固定用粘接着シートを作成する場合には、反対面にも同様の処理を行い両面の薄膜基板固定用粘接着シートを作成することができる。片面のみ接着層をほどこした薄膜基板固定用粘接着シートの場合、粘接着剤層を有さない面を硬質基板面と貼り合わせ、さらに貫通孔をほどこした硬質基板を用い、硬質基板面側より吸引することで、固定することができる。
上記のように、粘接着剤としては、より具体的にはゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系粘接着剤を用いても、あるいはその他の材料を用いても、なんら制限はない。ここでは具体例として、アクリル系粘接着剤を例にとるが、これ以外の材料においてもなんら制限がない。
特に薄膜基板を固定する面はパターン形成時には十分に粘着力が必要であるが、パターン形成後はストレス・ダメージなく、薄膜基板を取り出す必要があるため、接着剤と比較し、粘接着剤を用いる方がより好ましい。
このような粘接着剤は有機溶剤あるいは水中に適宜溶解させ、剥離ライナー上にバーコーターあるいはマイヤーバー、ロールコーターやダイコーター等の手段を用いて塗布し、必要に応じて乾燥工程を経ることで、粘接着剤層を形成できる。しかる後、多孔質基材と貼り合わせることで粘着シートを形成することが可能となる。両面に粘接着剤層を形成する場合には、本操作の繰り返しにより、両面に粘着層を有する薄膜基板固定用粘接着シートを形成することが可能となる。
【0025】
粘接着剤層の厚みとしては0.1μm〜800μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜700μmが好ましい。また多孔質基材を介して同様あるいは異種の粘接着剤を両面に塗布した両面テープの形であってもなんら問題はない。この際の総厚は1μm〜6mm、好ましくは1μm〜3mm、さらに好ましくは1μm〜2.5mmであり、1μmより厚いことにより、薄膜基板を固定するために十分な接着力を得ることができ、1mm以下であれば、パターン形成工程の後工程にあたる薬液工程にて粘接着剤および多孔質基材がダメージをうけることがないので、端部より薬液が浸入せず、固定の不具合やデラミの不具合を生じるおそれがない。また、脱湿特性の観点からみると、多孔質基材が穿孔を有していることは必須であるが、粘接着剤も穿孔を有していることがより好ましく、さらに好ましくは薄膜固定用粘接着シートの多孔質基材および粘接着剤層が同一位置で貫通している構造をなしている場合、より好ましい。この場合、本来目的としていた脱湿特性が得られるだけでなく、薄膜基板の剥離工程において、結果的に粘接着剤層が接触する面積が減少するため、結果的によりダメージ・ストレスなく、パターン形成後の薄膜基板を取り出すことができ歩留まりを向上させることができる。
粘接着剤層を多孔質基材上に設けるに際しては、粘接着剤の流動性が高いと多孔質基材が備えている孔を閉塞する可能性が高くなるので、そのようなことがないように、粘接着剤層を形成することが重要である。
【0026】
粘接着剤層を形成する組成物の貯蔵弾性率は23℃〜150℃の間で1×10〜1×10Paが好ましい。1×10Pa以上では、パターン形成時に粘接着剤層が薄膜基板の膨張・収縮を抑制することができ、結果的に変形しないので、パターンずれを発生させない。一方1×10Pa以下では、硬質基板や薄膜基板に対する接着性が得られ、浮きやはがれを生じない。これらの貯蔵弾性率は、架橋剤を含む硬化剤のほか、シリカ、粘着付与剤、可塑剤等の添加によっても調整可能であるから特に問題はない。
また、パターン形成過程が80℃〜270℃の加熱環境で20分〜3時間程度で処理されることが多いことから、本粘・接着シートは、本用途において150℃×1時間加熱後の粘着力の値が、加熱前測定値の3倍以内であることが望ましい。加熱後粘着力が3倍以内の粘・接着シートは薄膜基板の微小な凹凸に完全に追従することがないので、剥離が困難となることがない。
【0027】
薄膜基板に対する粘接着剤の加熱による濡れ性を抑制するため、アクリルポリマー中にグリシジルメタクリレートとアクリル酸を共重合させ、パターン形成時の加熱工程によって、熱硬化させることで濡れ性を抑制してもよい。そのほかの方法として、加熱前後での粘着力の上昇を抑制するために、重合時にアクリルモノマー全体に対するアクリル酸の重量比率を7%未満におさえることも効果的である。その他、可塑剤やワックス、界面活性剤、接触面積を減らすためのシリカといった成分を添加してもなんら問題はない。
【0028】
薄膜基板の剥離工程においてピール速度300mm/分での180度ピール粘着力は2N/10mm以下、好ましくは1.5N/10mm以下、さらに好ましくは1.0N/10mm以下である。
2N/10mm以上では、薄膜基板の剥離が容易ではなく、結果として剥離時にダメージを与えてしまい、薄膜基板やその上に形成したパターンを傷つけることになり、良品率が低下してしまう問題がある。剥離過程においては、実質剥離力がゼロに近ければ近いほど、剥離時のダメージが生じないため、これがより好ましい。
【0029】
このように、パターン形成プロセスでは粘着力が高いことが望ましい。しかしながら、薄膜基板上にパターンを形成した後には粘接着剤層から薄膜基板を剥離することが必要であるから、薄膜基板剥離時には過度に薄膜基板に力がかかることによるストレス・ダメージなく円滑に剥離させることが重要である。
【0030】
こういった観点から、例えば紫外線や電子線等のエネルギー線を照射することにより粘接着力を低下させることができる粘接着性組成物や、加熱することにより粘接着力を低下させることができる組成物からなる粘接着性組成物を用いることができる。
紫外線や電子線等のエネルギー線を照射することにより粘接着力を低下させることができる粘接着性組成物として、例えばアクリル系を用いる場合、ポリマー骨格中にC=C結合導入されているポリマーを用いたり、アクリレート、ウレタンオリゴマーといわれるC=C2重結合を含む化合物を添加し、光重合開始剤と呼ばれる化合物を有機溶剤下で混合してなる粘接着性組成物を使用できる。
これを剥離ライナー上にバーコーターで塗布後、120℃×5分乾燥させることで所定の粘接着シートを得ることができる。このようにして得られた薄膜基板固定用粘接着シートは上述のように紫外線照射で容易に粘着力を低下させることができる。
そのほか、加熱により粘着力を低下させる方法として松本油脂等で販売されている「マイクロスフェアーシリーズ」等のマイクロカプセルを粘接着性組成物中に配合し・塗布することで、加熱による、マイクロカプセルの膨張により、粘接着剤‐被着体界面に物理的な凹凸を発生させ、結果粘接着力を極小まで変化させる方法を用いることもできる。
【0031】
また、加熱することにより粘接着力を低下させることができる粘接着性組成物としては、松本油脂等で販売されている「マイクロスフェアーシリーズ」等のマイクロカプセル等の発泡剤を粘接着剤中に配合した粘接着性組成物を採用する。これを塗布してなる粘接着剤層は加熱によるマイクロカプセルの発泡・膨張により、粘接着剤層‐被着体界面に物理的な凹凸が発生し、薄膜基板と粘接着剤層との接着面積が著しく減少するため、結果的に粘接着力を極小まで変化させることができ、この結果として薄膜基板を発泡した粘接着剤層から容易に剥離することができる。
なかでも、加熱することにより粘着力を低下させることができる粘接着性組成物としては、加熱時に熱膨張性微小球等の発泡剤の膨張及び/又は発泡を可及的に拘束しないようなものが好ましく、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリープ特性改良型粘着剤などの公知の粘接着剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記粘接着性組成物に架橋剤を添加する場合は、その添加量としては、ベースポリマー100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、さらに好ましくは0.01〜8 重量部である。なお、架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、チウラム系架橋剤、樹脂系架橋剤、金属キレートなどの架橋剤を用いることができる。
【0033】
前記熱膨張性微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球であればよい。前記殻は、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質で形成される場合が多い。前記殻を形成する物質として、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。熱膨張性微小球は、慣用の方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法などにより製造できる。なお、本発明の熱膨張性微小球としては、例えば、松本油脂製薬(株)製、商品名「マツモトマイクロスフェアー F30D、F50D」などの市販品を使用することも可能である。
【0034】
また、加熱処理により粘接着剤層の接着力を効率よく低下させるため、体積膨張率が5倍以上、なかでも7倍以上、特に10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有する熱膨張性微小球が好ましい。
【0035】
熱膨張性微小球等の発泡剤の配合量は、粘接着剤層の膨張倍率や粘着力(接着力)の低下性などに応じて適宜設定し得るが、一般には粘接着剤層を形成するベースポリマー(例えば、アクリル系の粘着剤である場合にはアクリルポリマー)100重量部に対して、例えば1〜150重量部、好ましくは5〜100重量部である。上記熱膨張性微小球等の発泡剤の配合量が1重量部未満では、十分な易剥離性を発揮することができない場合があり、一方、配合量が150重量部を超えると、粘接着剤層表面が凸凹して接着性が低下する場合がある。特に本発明においては、薄膜基材が破壊しない程度に容易に剥離できればよく、かつ、薄い粘接着剤層を形成する場合は、熱膨張性微小球等の発泡剤の配合量をある程度少なく抑えることが表面状態を安定的に形成する上で好ましい。この点から、完全剥離(粘着力がゼロとなる)のために必要な配合量の半分程度の配合量(30〜80重量部)が最適である。
【0036】
本発明の粘接着剤層の熱膨張開始温度は、薄膜基材およびその上に形成された層の耐熱性などに応じて適宜決定され、特に限定するものではない。なお、本発明における「熱膨張開始温度」とは、熱膨張性微小球等の発泡剤を熱分析装置(SII・ナノテクノロジー(株)製、商品名「TMA/SS6100」)を使用し、膨張法(荷重:19.6N、プローブ:3mmφ)にて測定した際の、熱膨張性微小球の膨張が開始した温度である。
【0037】
上記熱膨張開始温度は、熱膨張性微小球等の発泡剤の種類や粒径分布などによって適宜制御することができる。特に、熱膨張性微小球を分級し、使用する熱膨張性微小球の粒径分布をシャープにすることにより容易に制御することができる。分級方法としては、公知の方法を用いることができ、乾式・湿式のいずれの方法を用いてもよく、分級装置としては、例えば、重力分級機、慣性分級機、遠心分級機など公知の分級装置を用いることが可能である。
熱膨張性微小球を含有する場合の粘接着剤層の厚さとしては、例えば、3μm〜700μm、好ましくは5μm〜600μm程度である。
熱膨張性微小球を含有する粘接着剤層の場合は、含有する熱膨張性微小球の最大粒径より厚ければよく、この場合には熱膨張性微小球が粘接着性組成物からなる層表面に凹凸を形成させることがない。
【0038】
(セパレータ)
本発明において、粘接着剤層を形成した後、多孔質基材上に該粘接着剤層を積層させる前に、場合により該粘接着剤層表面の汚染防止の目的でセパレータとして剥離ライナーを積層させておくことができる。
用いられるセパレータとしては、特に限定されず、公知の剥離紙などを使用できる。例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン系等の剥離剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等の剥離層を有する基材;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等のフッ素系ポリマーからなる低接着性基材;オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等の無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。
また、セパレータ上に形成した粘接着剤層を多孔質基材に積層させた後にも、該セパレータを使用直前まで剥離しないこともできる。
【0039】
(薄膜基板固定用粘接着シートの製造方法)
本発明の薄膜基板固定用粘接着シートを製造する方法としては、前記に示す各種の薄膜基板固定用粘接着シートの多孔質基材を準備する。
この多孔質基材上に、バーコーター、マイヤーバー、ロールコーター、ダイコーター等の任意の塗布手段により塗布し、次いで乾燥を行うことにより粘接着剤層を形成することができ、また、前記のようにセパレータ上にバーコーター、マイヤーバー、ロールコーター、ダイコーター等の任意の手段により粘接着剤を塗布し、これを乾燥することにより粘接着剤層を形成し、形成された層を多孔質基材に転写することにより多孔質基材上に粘接着剤層を形成する手段を採用することができる。
【0040】
多孔質基材の片面に粘接着剤層を形成して薄膜基板固定用粘接着シートを作成することができ、さらに両面に接着剤層を形成して薄膜基板固定用粘接着シートを作成する場合には、反対面にも同様の処理を行い両面の薄膜基板固定用粘接着シートを作成することができる。片面のみ接着層をほどこした薄膜基板固定用粘接着シートの場合、粘接着剤層を有さない面を硬質基板面と貼り合わせ、さらに貫通孔をほどこした硬質基板を用い、硬質基板面側より吸引することで、固定することができる。
このような粘接着剤は前記のように有機溶剤あるいは水中に適宜溶解させ、剥離ライナー上にバーコーターあるいはマイヤーバーを用いて塗布し、必要に応じて乾燥工程を経ることで、粘接着剤層を形成できる。しかる後、多孔質基材と貼り合わせることで粘着シートを形成することが可能となる。両面に粘接着剤層を形成したい場合は、本操作の繰り返しにより、両面に粘着層を有する薄膜基板固定用粘接着シートを形成することが可能となる。
【0041】
また、脱湿特性の観点からみると、多孔質基材が穿孔を有していることは必須であるが、粘接着剤も穿孔を有していることがより好ましく、さらに好ましくは薄膜基板固定用粘接着シートの多孔質基材および粘接着剤が同一位置で貫通している構造をなしている場合がより好ましい。
このため、後で多孔質基材となるが、未だ穿孔を有しない基材を選択した場合、粘接着剤層を形成した後にその粘接着剤層と該基材に対して、前記の例えばプレス機(トムソンプレス等)または回転ロール(パンチングマシン、針付き回転ロール)による打ち抜き、レーザー、重イオンビーム、ドリル、水ジェット処理、薬液によるエッチング処理等を挙げることができる。
その穿孔を設ける工程において、工程フィルムを別に用意し、この工程フィルム上に粘着剤層を形成した基材を積層させ、続いて工程フィルムごと基材に穿孔し、最後に相転換、延伸、溶融、焼結等、公知の剥離手段を採用できる。
このような工程によれば、穿孔工程は粘接着剤層を設けた基材を対象にして行うことができ、得られる薄膜基板固定用粘接着シートは多孔質基材および粘接着剤が同一位置で貫通する構造とすることができる。
【0042】
また、多孔質基剤を用いる場合には、例えばセパレータ上に粘接着剤層を形成し、該粘接着剤層に対して該セパレータごと上記の手段を用いて穿孔を設け、得られた穿孔を有する粘接着剤層を多孔質基材に転写することにより薄膜基板固定用粘接着シートを形成することができる。
このとき、多孔質基材として合成繊維、およびガラス繊維または炭素繊維などの無機繊維やこれらの混合体、紙からなる不織布および織布等を選択した場合には、このような多孔質基材には穿孔である孔が不規則に多数存在するので、穿孔が設けられた粘接着剤層を転写した場合であっても、粘接着剤層の穿孔が多孔質基材の穿孔と連通することが可能となる。
【0043】
(薄膜基板固定用粘接着シートの使用方法)
本発明の薄膜基板固定用粘接着シートは図1に示すように、硬質基板1上に薄膜基板固定用粘接着シート2を設け、さらにその上に薄膜基板3を積層して、その薄膜基板3に対してパターン化Aを行うことにより、各種のフレキシブルディスプレーに必要な回路等を形成する。
その薄膜基板固定用粘接着シート2の中でも両面に粘接着剤層を形成してなるものは、図2にて示す構造を備えており、多孔質基材の両面に粘接着剤層4が設けられている。
そして、そのような薄膜基板固定用粘接着シート2を使用して薄膜基板3と硬質基板1を貼り合わせることにより薄膜基板を硬質基板上に固定し、このようにして固定された薄膜基板3上に任意の手段により回路や配線を形成するためのパターン化を行うことができる。
【0044】
(フレキシブル回路基板製造工程)
本発明の薄膜基板固定用粘接着シートを使用してフレキシブル回路基板を製造する場合には、図1に示すように、薄膜基板3であるフレキシブル回路基板の基材フィルムを硬質基板1上に設けた薄膜基板固定用粘接着シート2により仮固定した状態で、該フレキシブル回路基板の基材フィルム上に回路や素子を形成し、あるいは素子を実装することによりフレキシブル回路基板を製造する。
【0045】
具体的には、まず、薄膜基板3であるフレキシブル回路基板の基材フィルムを硬質基板1に薄膜基板固定用粘接着シート2を介して仮固定し、各種のパターン化Aの処理により仮固定されたフレキシブル回路基板の基材フィルム上に回路を形成し、次いで素子を固定することにより得られる。前記フレキシブル回路基板の基材フィルムを固定する硬質基板1としては、フレキシブル回路基板の基材フィルムを保持することができればよく、特に限定されないが、フレキシブル回路基板の基材フィルムより硬質材料のものが好ましく用いられ、例えば、シリコン、ガラス、SUS板、銅板、アクリル板などが挙げられる。硬質基板の厚さとしては、0.01〜10mm、さらに0.4mm以上(例えば、0.4〜5.0mm)が好ましい。
【0046】
硬質基板1上に薄膜基板固定用粘接着シート2を介してフレキシブル回路基板用フィルムを貼り合わせる方法としては、硬質基板1と薄膜基板固定用粘接着シート2とを密着させることができればよく、例えば、ローラーやヘラ、プレス機などを使用して貼り合わせることができる。
【0047】
フレキシブル回路基板を構成する基板材料としては、耐熱性、寸法安定性、ガスバリア性、表面平滑性を有する材料であれば特に限定されることはなく、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、環状オレフィン系ポリマー、ポリアリレート、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリエーテルスルホン、全芳香族ポリケトン、液晶ポリマー、ポリイミドなどからなるフィルムを使用することができる。また、これらのフィルムに、必要によりガスバリア性向上のための被膜形成を行ってもよい。
また、銅張積層板、メンブレン配線板、多層フレキシブル回路基板を基板材料として採用しても良く、ビアホール加工等を行ってなる基板も使用することができる。
【0048】
これらのフィルムの厚さとしては、配線部の厚さを除外して例えば800μm以下程度、好ましくは3μm〜700μm程度、特に好ましくは5μm〜700μm程度である。
フレキシブル回路基板としては、片面回路、両面回路、多層回路等の各フレキシブル回路基板とすることができ、回路の形成のみではなく、素子等を実装することもできる。薄膜基板の両面に回路を形成するには、片面に回路を形成した後、その回路形成面を薄膜基板固定用粘接着シートを介して硬質基板に固定して他面に回路を形成する手段を採用できる。
フレキシブル回路基板の基材フィルム上に形成する有機トランジスタ材料としては、特に限定されることがなく、低分子系有機半導体材料、高分子系有機半導体材料、有機・無機ハイブリッド半導体材料を使用でき、ゲート絶縁材料としては有機ポリマー材料や無機材料を使用できる。
【0049】
有機トランジスタを形成する手段としては、転写法などによることができるが、電極や配線はフィルム上に直接描画することにより形成することができる。それらの材料としては、銀等の金属ナノ粒子を含有する金属ナノペーストやインク、金属酸化物のナノ粒子を含有するペーストやインクを採用できる。また導電性ポリマーの溶液などを採用しても良い。
これらのトランジスタ、電極・配線の描画方法としては、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷、フレキソ印刷、ナノプリント技術を採用することができる。
さらにTFT回路等を転写によってフィルム上に形成しても良い。
【0050】
このようにして製造されるフレキシブル回路基板上に、さらに液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示層を形成させるために必要な層を形成させることが可能であり、それぞれのディスプレイに応じた層構造となるように加工される。
【0051】
フレキシブル回路基板の製造方法においてはフレキシブル回路基板製造工程後に、さらに、フレキシブル回路基板を硬質基板から剥離する工程を設けることが好ましい。剥離されたフレキシブル回路基板は、周知慣用の方法で回収される。
【0052】
また、フレキシブル回路基板剥離工程においては、薄膜基板固定用粘接着シートの粘接着剤層の粘接着力を低下させ、フレキシブル回路基板形成工程を経て得られたフレキシブル回路基板を支持板から剥離させることが好ましい。
【0053】
粘接着剤層として活性エネルギー線硬化型粘接着剤層を有する粘接着性組成物を使用して仮固定した場合、活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射することにより粘接着力を低下させることができる。活性エネルギー線照射の照射強度、照射時間等の照射条件は、特に限定されるものではなく、適宜必要に応じて設定することができる。
しかしながらフレキシブル回路基板の耐熱温度を考慮して、加熱により粘接着力を低下させることによりフレキシブル回路基板を支持板から剥離させる場合には、その加熱温度を該耐熱温度より低い温度とすべきであり、この点において、紫外線等の活性エネルギー線による剥離を行う手段が好ましい。
【0054】
粘接着剤層として熱剥離型粘接着剤層を有する薄膜基板固定用粘接着シートを使用して仮固定した場合、加熱することにより粘接着力を低下させることができる。加熱手段としては、粘接着剤層を加熱して、含有する熱膨張性微小球等の発泡剤を速やかに膨張及び/又は発泡させることができればよく、例えば、電熱ヒーター;誘電加熱;磁気加熱;近赤外線、中赤外線、遠赤外線などの電磁波による加熱;オーブン、ホットプレートなどを特に制限なく使用することができる。
加熱温度としては、粘接着剤層が含有する熱膨張性微小球が膨張及び/又は発泡する温度であり、かつ形成したフレキシブル回路基板を損傷しない温度であればよい。
【0055】
(有機ELパネル製造工程)
本発明の薄膜基板固定用粘接着シート2を使用して有機ELパネルを製造する場合には、薄膜基板3である有機ELパネル用支持フィルムを硬質基板1上に形成された薄膜基板固定用粘接着シート2により仮固定した状態で、該有機ELパネル用支持フィルム上に発光層及び波長を調整する層、カバー層等を形成することにより製造する。
【0056】
具体的には、本発明中の薄膜基板3として必要に応じて金属酸化物により被覆されてなる樹脂フィルムを採用する。これを硬質基板1に薄膜基板固定用粘接着シート2を介して仮固定し、仮固定された樹脂フィルム上に絶縁層、ITO,酸化インジウム、IZO,銀等の電極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、RGBカラーフィルター等を任意の順に形成することにより得られる。前記硬質基板1を構成する材料としては、貼り合わされる電子ペーパー支持フィルムを保持することができればよく、特に限定されないが、有機ELパネル用支持フィルムより硬質材料のものが好ましく用いられ、例えば、シリコン、ガラス、SUS板、銅板、アクリル板などが挙げられる。このような硬質基板の厚さとしては0.01mm〜10mm、さらには0.4mm以上(例えば、0.4mm〜5.0mm)が好ましい。
【0057】
硬質基板1上に固定用粘接着シート2を介して薄膜基板3である有機ELパネル用支持フィルムを貼り合わせる方法としては、硬質基板1と有機ELパネル用支持フィルムとを密着させることができればよく、例えば、ローラーやヘラ、プレス機などを使用して貼り合わせることができる。
【0058】
薄膜基板3である有機ELパネル用支持フィルムを構成する材料としては、平滑性、ガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れ、かつ発光に必要な各層を形成させた後においても柔軟性を発揮することができる材料であれば特に限定されることはなく、例えば、樹脂層、酸化シリコン層や窒化シリコン層等のバリア層により被覆されてもよいポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、芳香族ポリエーテルサルフォンからなるフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)さらに場合により極薄ガラスを使用することができる。
【0059】
このような有機ELパネル用支持フィルムの厚さとしては、例えば3mm以下程度、好ましくは5μm〜2.5mm程度、特に好ましくは7μm〜2.5mm程度である。
有機ELパネル用支持フィルム上に形成する有機EL用の各層としては、ガスバリア性、水蒸気バリア性向上のための層以外について、従来のガラス基板上に設ける有機ELのための積層構造と同様であり、その積層手段についてもガラス基板上への積層手段と同様の手段を採用することができる。
【0060】
得られる有機ELパネルとしては特に制限がなく、アクティブ方式フルカラーパネル、カラーフレキシブルパネル、高分子正孔輸送層を有するパネル、パッシブ型高分子有機ELパネル等公知の形式のいずれでも良い。
【0061】
有機ELパネルの製造方法においては有機ELパネル製造工程後に、さらに、有機ELパネルを硬質基板から剥離する工程を設けることが好ましい。剥離された有機ELパネルは、周知の方法で回収される。
【0062】
また、有機ELパネル剥離工程においては、薄膜基板固定用粘接着シートの粘接着剤層の粘接着力を低下させ、有機ELパネル形成工程を経て得られた有機ELパネルを硬質基板から剥離させることが好ましい。
【0063】
粘接着剤層として活性エネルギー線硬化型粘接着剤層を有する薄膜基板固定用粘接着シートを使用して仮固定した場合、活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射することにより粘接着力を低下させることができる。活性エネルギー線照射の照射強度、照射時間等の照射条件は、特に限定されるものではなく、適宜必要に応じて設定することができる。
しかしながら有機ELパネルの耐熱温度を考慮して、加熱により粘接着力を低下させることにより有機ELパネルを硬質基板から剥離させる場合には、その加熱温度を該耐熱温度より低い温度とすべきであり、この点において、紫外線等の活性エネルギー線による剥離を行う手段が好ましい。
【0064】
粘接着剤層として熱剥離型粘接着剤層を有する粘接着性組成物を使用して仮固定した場合、加熱することにより粘接着力を低下させることができる。加熱手段としては、粘接着剤層を加熱して、含有する熱膨張性微小球等の発泡剤を速やかに膨張及び/又は発泡させることができればよく、例えば、電熱ヒーター;誘電加熱;磁気加熱;近赤外線、中赤外線、遠赤外線などの電磁波による加熱;オーブン、ホットプレートなどを特に制限なく使用することができる。
加熱温度としては、粘接着剤層が含有する熱膨張性微小球などの発泡剤が膨張及び/又は発泡する温度であり、かつ形成した有機ELパネルを損傷しない温度であればよい。
【0065】
(電子ペーパー製造工程)
本発明の薄膜基板固定用粘接着シート2を使用して電子ペーパーを製造する場合には、薄膜基板3である電子ペーパー支持フィルムを硬質基板1上に貼り付けた薄膜基板固定用粘接着シート2により仮固定した状態で、該電子ペーパー支持フィルム上にTFTを形成してドライバ層を得、さらに、該ドライバ層上に画像表示機能を有する表示層を貼り合わせて電子ペーパーを製造する。
【0066】
具体的には、ドライバ層は、まず、薄膜基板3である電子ペーパー支持フィルムを硬質基板1に薄膜基板固定用粘接着シート2を介して仮固定し、仮固定された電子ペーパー支持フィルム上にTFTを形成することにより得られる。前記硬質基板1を構成する材料としては、貼り合わされる電子ペーパー支持フィルムを保持することができればよく、特に限定されないが、電子ペーパー支持フィルムより硬質材料のものが好ましく用いられ、例えば、シリコン、ガラス、SUS板、銅板、アクリル板などが挙げられる。このような硬質基板の厚さとしては0.01〜10mm、さらには0.4mm以上(例えば、0.4〜5.0mm)が好ましい。
【0067】
硬質基板1上に薄膜基板固定用粘接着シート2を介して薄膜基板3である電子ペーパー支持フィルムを貼り合わせる方法としては、硬質基板1と電子ペーパー支持フィルムとを密着させることができればよく、例えば、ローラーやヘラ、プレス機などを使用して貼り合わせることができる。
【0068】
電子ペーパー支持フィルムを構成する材料としては、表示層と貼り合わせた後にも柔軟性を発揮することができる材料であれば特に限定されることはなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルからなるフィルムを使用することができる。また、電子ペーパー支持フィルムは、透明フィルムであってもよく、不透明フィルムであってもよい。さらに、色印刷フィルムや、色練り込みフィルム、必要に応じて金や銀、アルミニウムで蒸着した蒸着フィルムであってもよい。
【0069】
電子ペーパー支持フィルムの厚さとしては、例えば2mm以下程度、好ましくは3μm〜2mm程度、特に好ましくは5μm〜2mm程度である。
【0070】
電子ペーパー支持フィルム上に形成するTFTの型としては、特に限定されることがなく、例えば、スタガード(staggered)型、インバーテッド・スタガード(inverted staggered)型、コープレーナー(coplanar)型、インバーテッド・コープレーナー(inverted coplanar)型などを形成することができる。そして、トランジスタを構成する半導体層やゲート絶縁膜、電極、保護絶縁膜などは通常のTFT形成と同様に真空蒸着やスパッタリング、プラズマCVD、フォトレジストなどの方法により、電子ペーパー支持フィルム上に薄膜状に形成することができる。
【0071】
表示層は、画像表示機能を有する層である。表示層の画像表示形式としては、電気、磁気による表示機能を有するものであれば特に限定されることなく、例えば、ツイストボール方式や、電気泳動方式、帯電トナー表示方式などを採用することができる。
【0072】
表示層と、TFTが形成された電子ペーパー支持フィルムとを貼り合わせる方法としては、表示層と、TFTが形成された電子ペーパー支持フィルムとを密着させることができればよく、例えば、ローラーやヘラ、プレス機などを使用して貼り合わせることができる。
また、表示層背面に、TFTが形成された電子ペーパー支持フィルムと接着するために薄膜基板固定用粘接着シートが設けられている場合は特に必要としないが、表示層背面に粘接着剤層が設けられていない場合は、一般的な接着剤を使用して、TFTが形成された電子ペーパー支持フィルムを接着することができる。
【0073】
本発明に係る電子ペーパーの製造方法においては、電子ペーパー形成工程後に、さらに、電子ペーパーを硬質基板から剥離する工程を設けることが好ましい。剥離された電子ペーパーは、周知の方法で回収される。
【0074】
また、電子ペーパー剥離工程においては、薄膜基板固定用粘接着シートの粘接着力を低下させ、電子ペーパー形成工程を経て得られた電子ペーパーを硬質基板から剥離させることが好ましい。
【0075】
薄膜基板固定用粘接着シートの粘接着剤層として活性エネルギー線硬化型粘接着剤層を有する粘接着性組成物を使用して仮固定した場合、活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射することにより粘接着力を低下させることができる。活性エネルギー線照射の照射強度、照射時間等の照射条件は、特に限定されるものではなく、適宜必要に応じて設定することができる。
【0076】
粘接着剤層として熱剥離型粘接着剤層を有する薄膜基板固定用粘接着シートを使用して仮固定した場合、加熱することにより粘接着力を低下させることができる。加熱手段としては、該粘接着剤層を加熱して、含有する熱膨張性微小球等の発泡剤を速やかに膨張及び/又は発泡させることができればよく、例えば、電熱ヒーター;誘電加熱;磁気加熱;近赤外線、中赤外線、遠赤外線などの電磁波による加熱;オーブン、ホットプレートなどを特に制限なく使用することができる。
加熱温度としては、該粘接着剤層が含有する熱膨張性微小球等の発泡剤が膨張及び/又は発泡する温度であればよい。
【0077】
(測定方法)
多孔質基材となる基材の物性の測定
空孔率測定:空孔率(%)={(重量/密度)/容積}×100として、多孔質膜の容積と重量を測定し、多孔質膜素材の密度を用いて上式により、空孔率を求めた。
【0078】
孔径・孔面積測定:多孔質膜に関して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、写真撮影を行い、その写真の画像解析から平均孔径を求めた。また、同時に平均孔面積を算出した。
【0079】
CTE測定:穿孔を有する基材試料を各々3mmの短冊状に切削し、引っ張り用にチャックに挟み、MD方向とTD方向についてTMA測定を行った。装置はエスアイアイ・ナノテクノロジー製TMA/SS6000を用い、引っ張り法の測定モードを用い、荷重19.6mN、チャック間10mm、温度プログラム:室温⇒200℃、昇温速度:5℃/分、測定雰囲気:窒素(流量200ml/分)での140℃〜160℃のTD、MDの平均線膨張係数のMax値を150℃でのCTE値として算出した。
【0080】
(評価)
・加熱時薄膜基板浮き
硬質基板となるガラス(0.5mm厚)上に下記実施例に基づき作成した300mm×300mmの両面タイプの粘・接着シートを貼り合わせた。さらにその上に薄膜基板として東レ製カプトン150EN(厚み:37.5μm)を貼り合わせにより固定した。この後、150℃×1時間の条件で、ホットプレート上に置き、1時間経過までに面内に発生した気泡の面積の割合(%)を記載した。評価はN=3で行い、この平均値(%)を記載した。
【0081】
・加熱時基板位置ずれ
硬質基板となるガラス(0.5mm厚)上に下記実施例に基づき作成した600mm×600mmの両面タイプの粘・接着シートを貼り合わせた。さらにその上に薄膜基板として東レ製カプトン150EN(厚み:37.5μm)を貼り合わせにより固定した。0.5mm間隔で基板・ガラス上の同一位置上に標線を記入した。
この後、150℃×1時間の条件で、乾燥機に投入・取り出し、室温30分静置後に最外周の標線の位置が薄膜基板とフィルム間で1mm以上ずれているものを位置ずれあり、0.5mm以内であったものを位置ずれなしと評価した(N=3)。また、取り出した際に粘接着剤と薄膜基板の間で浮きが生じたものに関しては全体に対する浮き面積の割合(%)を記載した。
【0082】
・面内均一性
硬質基板となるガラス(0.5mm)上に下記実施例に基づき作成した50mm×50mmの両面タイプの粘・接着シートを貼り合わせた。さらにその上に薄膜基板として東レ製カプトン150EN(厚み:37.5μm)を貼り合わせにより固定した。本サンプルである薄膜基板表面に対し、中心から縦、横方向にそれぞれ10mmの距離を接触式表面粗さ測定機(KLA Tencor製 P-15)を用いて測定したA(N=3)。この際、高さの最大値と最小値の差が20μm未満の場合、面内均一性は良好、20μm以上の場合、不良として評価を行った。
【実施例】
【0083】
(粘着層A)
ブチルアクリレート40モルに対し、エチルアクリレート45モル、2−ヒドロキシエチルアクリレート20モルを酢酸エチル中で、常法により共重合させた。2−ヒドロキシエチルアクリレートの側鎖末端OH基の70%にし、2-メタクリロイルオキシエチレンイソシアネートのNCO基を付加反応させ、末端に炭素-炭素2重結合を付与した重量平均分子量50万のアクリル系共重合体を含有する溶液を得た。
次にアクリル系共重合体を含有する溶液100重量部に対し、光重合開始剤(商品名「イルガキュア127」BASF製3重量部及びポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン製3重量部を加えて、アクリル系の紫外線硬化型粘接着剤溶液を得た。
本粘接着剤溶液を離型処理されたポリエステルフィルム上に塗布した後、120℃で5分加熱架橋した。これにより厚さ15μm厚の粘接着剤層を得た。
【0084】
(粘着層B)
2−エチルへキシルアクリレート20重量部に対し、メチルアクリレート70重量部、アクリル酸15重量部を酢酸エチル中で、常法により共重合させ、重量平均分子量70万のアクリル系共重合体を含有する溶液を得た。次にアクリル系共重合体を含有する溶液100重量部に対し、エポキシ樹脂(商品名「TETRAD−C」、三菱ガス化学社製0.2重量部を加えて、アクリル系の粘接着剤溶液を得た。
本粘接着剤溶液を離型処理されたポリエステルフィルム上に塗布した後、120℃で5分加熱架橋した。これにより厚さ15μm厚の粘接着剤層を得た。
【0085】
(接着層C)
ジエン系ブロック共重合体(タフテックM1943:旭化成工業株式会社製)100重量部、ロジン樹脂(KE604:荒川化学工業株式会社製)10重量部、エポキシ樹脂(TETRAD−C:三菱ガス化学製)0.05重量部、シランカップリング剤(KBM-403:信越化学工業株式会社製)1重量部およびトルエン450重量部を混合して、接着剤ワニスを調整した。これを離型処理されたポリエステルフィルム上に塗布した後、130度に加熱して溶剤を除去し、厚さ15μmの接着剤層を得た。
【0086】
(接着層D)
アクリルニトリルブタジエンゴム(PNR−1H:JSR株式会社製)18重量部、エポキシ樹脂(YX−4000H:油化シェルエポキシ株式会社製)44重量部、フェノール樹脂(タマノールP−180:荒川化学工業株式会社製)30重量部、イミダゾール(キュアゾール2PZ-CN:四国化成工業株式会社製)0.5重量部およびメチルエチルケトン200重量部を混合して、接着剤ワニスを調整した。これを離型処理されたポリエステルフィルム上に塗布した後、130℃に加熱して溶剤を除去し、厚さ15μmの接着剤層を得た。
【0087】
(ポリイミド多孔質基材A)
BTC系ポリイミド(ブタンテトラカルボン酸とジアミノジフェニルエーテルを熱イミド化したポリマー、日東電工株式会社製)16重量部、ポリビニルピロリドン(K−90:アイエスピージャパン株式会社)7重量部、N−メチル−2−ピロリドン71重量部および水8重量部を混合して溶液を得た。
この溶液を50μmのポリエステルフィルム上に、塗布、流延した後、水中に浸漬して凝固させ、次いで洗浄、乾燥して相転換法によりコア材となる多孔質基材を厚み50μmにて形成した。
【0088】
(実施例1)
厚み150μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の多孔質基材の両面に、温度90℃の条件にて粘着剤層A、接着剤層Cをそれぞれ多孔質基材、粘接着剤層を接するように貼り合わせを実施し、穿孔を有する基材をもつ両面接着シートを作成した。なお、粘着剤層A、接着剤層Cをそれぞれ薄膜基板、硬質基板貼り合わせ面とした。
【0089】
(実施例2)
上述した、ポリイミド多孔質基材Aに対し、粘着剤層Bの粘着剤層の面を90℃にて貼り合わせした後、多孔質基材に接する工程フィルムを除去した。さらにこの面に対し、接着剤層Dが接するように、90℃にて同様に貼り合わせをおこない、両面接着シートを作成した。なお、粘着剤層B、接着剤層Dをそれぞれ薄膜基板、硬質基板貼り合わせ面とした。
【0090】
(実施例3)
東レ製カプトン150EN(厚み:37.5μm)の基材に対し、粘着剤層A、Bをそれぞれ60℃にて貼り合わせを行い、両面粘着シートを得た。このシートを精密フィルムパンチングマシーンRFP-S20(UHT社製)を用いて加工することで、0.2mmの円形の孔をシートの上面から下面に貫通させ、粘着剤層と基材が同一部分に貫通孔を有する両面接着シートを作成した。なお、粘着剤層A、粘着剤層Bをそれぞれ薄膜基板、硬質基板貼り合わせ面とした。
【0091】
(比較例1)
東レ製カプトン150EN(厚み:37.5μm)の基材に対し、粘着剤層A、Bをそれぞれ60℃にて貼り合わせを行い、両面粘着シートを得た。
【0092】
(比較例2)
厚み150μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の多孔質基材として空孔率96%のものを用いた他はすべて実施例1と同様の方法にて両面接着シートを作成した。
【0093】
(比較例3)
実施例3の両面シートを用い、このシートを精密フィルムパンチングマシーンRFP-S20(UHT社製)を用いて加工することで、5mmの円形の孔をシートの上面から下面に貫通させ、粘着剤層と基材が同一部分に貫通孔を有する両面接着シートを作成した他はすべて実施例3と同様の手順にて実施した。
【0094】
【表1】

【0095】
実施例1〜3においては、本発明にて規定する要件を満たす固定用粘接着シート及び薄膜基板を使用することにより、加熱時においても薄膜基板に位置ずれや浮きを生じることがなく、薄膜基板表面が平滑であるという顕著な効果を奏することを確認できる。
これに対し、比較例1のように多孔質基材を使用せず、単に粘接着剤層を設けただけでは加熱時浮きが90%で加熱時基板位置ずれがみられた。これは加熱時において発生する水等の気体が薄膜基板固定用粘接着シート上に滞留するため、薄膜基板がその気体によって浮き上がることを示している。
比較例2においては、多孔質基材の空孔率が96%と高すぎるために、加熱時浮きと加熱時基板位置ずれはみられないものの、面内均一性が不良であり薄膜基板の表面に凹凸が見られた。
比較例3においては、多孔質基材の孔面積を大きくしており、これにより加熱時浮きや加熱時基板ずれはないものの、面内均一性が不良であり薄膜基板の表面に凹凸が見られた。
【符号の説明】
【0096】
1・・・硬質基板
2・・・薄膜基板固定用粘接着シート
3・・・薄膜基板
A・・・パターン化
4・・・粘接着剤層
5・・・多孔質基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜基板上にパターン形成を行う際に使用される薄膜基板固定用粘接着シートであって、パターン形成は薄膜基板、薄膜基板固定用粘接着シート、硬質基板を順に積層してなる状態においてなされ、ここで使用される固定用粘接着シートは多孔質基材を有し、その多孔質基材の空孔率は5〜95%であり、かつ孔径は0.01μm〜900μmの径を有する薄膜基板固定用粘接着シート。
【請求項2】
該固定用粘接着シートの多孔質基材の孔面積は0.0001μm〜4mmである請求項1に記載の薄膜基板固定用粘接着シート。
【請求項3】
多孔質基材の多孔は穿孔からなり、かつその穿孔は多孔質基材から粘接着剤層に連続して貫通されてなる請求項1又は2に記載の薄膜基板固定用粘接着シート。
【請求項4】
多孔質基材の少なくとも1片に再剥離のための粘接着剤層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜基板固定用粘接着シート。
【請求項5】
多孔質基材の150℃でのCTEが500ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜基板固定用粘接着シート。
【請求項6】
80℃〜270℃にて行われる工程を含む薄膜基板上へのパターンの形成を行う際に使用される、請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜基板固定用粘接着シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜基板固定用粘接着シートを硬質基板上に積層させてなる薄膜基板固定用部材。
【請求項8】
薄膜基板、固定用粘接着シート、硬質基板を順に積層してなる状態において、該薄膜基板上にパターンを形成する方法であって、該固定用粘接着シートとして請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜基板固定用粘接着シートを使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−184324(P2012−184324A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48374(P2011−48374)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】